JP4998061B2 - 圧延用ロールの残留応力測定方法 - Google Patents
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Description
機械、機器、構造物等を構成する金属材料の残留応力測定法として、一般に、非破壊測定法であるX線回折を用いた残留応力測定法が知られており、圧延用ロールの残留応力測定法としても利用されている。しかし、X線回折を用いた方法では、炭化物や結晶粒の大きさや、結晶配列といった材料組織の影響を受け易く、測定精度が極端に低下する場合がある。
本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、圧延用ロールの製品領域に傷をつけることなく、残留応力を高精度で測定できる、圧延用ロールの残留応力測定方法を提案することを目的とする。
圧延用ロールでは、外層に耐摩耗性に優れる極めて高硬度の材料が用いられることからその加工は難しく、加工負荷軽減の観点から、余肉の厚みは薄く、通常10mm程度、多くとも20〜30mm程度とするのが一般的である。外層にハイス系鋳鉄材を用い内層に黒鉛鋼やダクタイル鋳鉄を用いた圧延用ロールでは、製品ロールの残留応力は、主に熱処理後の収縮量の差に起因して発生するが、外層の高温強度が極めて高いことに起因して、外層内の径方向に対する応力変化は緩やかである。そして、本発明者らは、ハイス系鋳鉄ロールでは、例えば、水焼入れのような急速な冷却を伴う熱処理を行った場合であっても、薄い余肉の内部では表面に平行な残留応力成分はほぼ一定とみなせるという事実を見出した。これにより、ハイス系鋳鉄ロールのような圧延用ロールでは、薄い余肉内部の残留応力を少なくとも一点測定しておけば、製品ロールの表面や内部の応力を容易に推測できるという結論に達した。
応力解放のために小片に切り出す方法として、切削工具を用いた従来の一般的な加工方法を用いると、切断部の周辺に大きな加工歪が生じ、得られる残留応力値に影響を及ぼす。このため、切断面と被測定位置との間の距離を十分に確保しなければならないという制約が生じる。また、ハイス系鋳鉄ロールのような、ショア硬さで概ね70HS以上と非常に硬い外層を有する圧延用ロールで、しかも薄い余肉の範囲内で、応力解放のために小片に切り出すことは、一般的な加工方法では極めて困難である。たとえ、無理に切り出しを行っても、切断面と測定位置との間の距離を十分に確保することができず、加工歪の影響が顕著となり、残留応力の測定精度が極端に低下するという問題があった。
このウォータージェットを用いた切断法は、超高圧のノズルに水と硬質粒子(研磨材)を供給し、硬質粒子とともに水を噴出させた、高速でかつ高圧の水流により切断を行う方法である。この切断法では、加工発熱に起因する熱歪が発生せず、さらに通常、直径1mm程度の細い水流を用いるため、切断時の加工代(切削幅)が狭く、また、ノズルを移動するだけで切断が可能であり、ハイス系鋳鉄ロールのような硬い圧延用ロールで、しかも薄い余肉の領域内でも、従来の切削工具等による一般的な加工方法と比較して加工歪を大幅に低減でき、残留応力の測定値に影響するような加工歪を伴うことなく小片への切断加工が可能になると、本発明者らは考えた。また、本発明者らは、ウォータージェットを用いた切断法に代えて、細線(ワイヤ)を用いた放電切断法を用いても同様に、残留応力の測定値に影響するような加工歪を伴うことなく小片への切断加工が可能になることを知見した。
(1)圧延用ロールの残留応力を測定するに当り、前記圧延用ロールを、製品ロールへの仕上加工過程にあり、径方向に余肉部を有する圧延用ロールとし、該余肉部の外表面でロール胴部相当位置を応力弛緩法による測定位置とし、該余肉部内で応力を解放する加工を施し、該測定位置の残留応力を算出することを特徴とする圧延用ロールの残留応力測定方法。
(3)(2)において、前記ウォータージェット切断法における前記高圧水流を、前記測定位置の外表面とほぼ平行に入射させ、移動しながら、該測定位置の余肉部を外表面とほぼ平行に薄く切り取ることを特徴とする圧延用ロールの残留応力測定方法。
(5)(1)において、前記応力を解放する加工が、放電切断法を用いる加工であることを特徴とする圧延用ロールの残留応力測定方法。
(7)(2)ないし(6)のいずれかにおいて、前記測定位置に保護カバーを設けることを特徴とする圧延用ロールの残留応力測定方法。
(9)(1)ないし(7)のいずれかに記載の圧延用ロールの残留応力測定方法を用いて得られた残留応力値に基づき、製品ロール表面における残留応力を推定し、該推定した残留応力を製品ロールの品質指標とすることを特徴とする圧延用ロールの品質評価方法。
ウォータージェット切断法をハイス系鋳鉄ロールのような硬質な材料に適用すると、切断する肉厚が厚くなるにしたがい、切断速度が急激に低下する場合がある。このため、切断速度の確保の観点から、高圧水のノズル圧力を200MPa以上好ましくは300MPa以上とすることが望ましく、また、混入する硬質粒子(研磨材)を、ガーネット、SiC、アルミナ等の硬質粒子とすることが望ましい。またその混入量は、切断速度の確保と硬質粒子の詰まり防止の観点から、100〜1000g/minとすることが好ましい。
また、大径の圧延用ロールを測定対象とした場合には、高圧水の噴出用ノズルと余肉部表面(ロール表面)とが干渉する場合があり、ロール表面との距離が適正ノズル間隔となるように、ノズルをロールに近づけることができない場合がある。ノズル間隔は、通常1〜3mm程度であるが、最適なノズル間隔から離れるに従い、高圧水流は拡散し、そのため、切断幅が大きくなるとともに、切断速度も低下する。
測定位置における歪解放を、ウォータージェット切断法を適用して行なうことにより、切断面の加工歪が低減するため、加工に伴う歪が激減する。また、加工に伴う歪は、切断装置の水圧、ノズル口径、硬質粒子の粒サイズ、硬質粒子混入量等の切断条件を一定にしておけば、切り出す小片の厚みにのみに依存する。このため、加工に伴う歪量を容易に把握でき、把握した加工に伴う歪を補正することにより、さらに残留応力の測定精度を高精度化することも可能となる。
また、放電切断法を用いて切断する場合にも切断を容易にするため、ウォータージェット切断法と同様に、予め、余肉部表面(ロール表面)に削り込み加工を施しておいてもよい。削り込み加工は、ウォータージェット切断法と同様に、切取り部の全周またはその一部に施すことが好ましい。
ついで、切り出された小片について、歪量を測定し、切り出し前後の歪の変化量を求め、る。そして、得られた歪の変化量から該測定位置の残留応力を算出する。なお、歪量の測定方法や歪変化量からの応力算出の方法は、常用の方法を適用すればよい。
本発明の残留応力測定方法を適用して得た、余肉部の残留応力は、毎回一定の条件で測定することにより、それ自体を製品ロールの品質評価の指標として活用することが可能である。なお、製品ロールの品質評価としては、例えば、ロールの胴部中央表面の圧縮応力値や、ロール軸芯部における長手方向の引張応力値等がある。
このようにして推定して得た、製品ロール表面の応力(残留応力)を、ロールの品質評価の指標とすることができる。また、推定により得られた製品ロール表面の応力(残留応力)が所定の範囲内にあれば、製品として使用可能であると評価できる。
また、ウォータージェット切断法における高圧水入射側の余肉部表面には、図3に示すように、予め、深さ:4〜5mmのグラインダーによる削り込み加工を施した。これにより、ノズル間隔を2mmに設定できた。なお、比較のため一部の測定では、この削り込み加工を行わなかった。また他の一部の測定では、削り込み加工に代えて、歪ゲージに鉄製の保護カバーを設置した。削り込み加工を行なわず、かつ保護カバーも設置しなかった場合には歪ゲージが破損した。なお、切断速度確保の観点から、切り取り部における高圧水流の出側にもグラインダーにより削り込み加工を施し、ウォータージェット切断時の厚みの低減を図った。
なお、予め、製品ロールと同種のロールを用いて、余肉部の残留応力と製品領域の表面および内部の残留応力分布との関係を応力弛緩法を用いて測定して、余肉部表面の残留応力と製品ロール表面の残留応力の比は1.06であることを得ておいた。この余肉部表面の残留応力と製品ロール表面の残留応力の比を用いて、得られた各被測定ロールの余肉部表面の残留応力から製品ロール表面の残留応力を推定した。
ついで、各ロール(被測定ロール)を700℃に予熱した高温の加熱炉内に15min間装入して一定の熱歪を強制的に付与し、ロールの破壊の有無を調査した。得られた結果を、本発明の測定方法で得た余肉部残留応力値から推定した製品ロール表面の残留応力値と、比較として製品ロール表面でX線回折法にて実測した残留応力値との関係を、ロール破壊の有無ともに図1に示す。
また、各ロールで、ウォータージェット切断を用いて小片の切り出しを行った場合とワイヤを用いた放電切断を用いて小片の切り出しを行った場合について、得られた残留応力値を比較して図4に示す。図4から、両者は、ほぼ同一の残留応力値を得ていることがわかる。
Claims (9)
- 圧延用ロールの残留応力を測定するに当り、前記圧延用ロールを、製品ロールへの仕上加工過程にあり、径方向に余肉部を有する圧延用ロールとし、該余肉部の外表面でロール胴部相当位置を応力弛緩法による測定位置とし、該余肉部内で応力を解放する加工を施し、該測定位置の残留応力を算出することを特徴とする圧延用ロールの残留応力測定方法。
- 前記応力を解放する加工が、硬質粒子を混入した高圧水流を用いたウォータージェット切断法を用いる加工であることを特徴とする請求項1に記載の圧延用ロールの残留応力測定方法。
- 前記ウォータージェット切断法における前記高圧水流を、前記測定位置の外表面とほぼ平行に入射させ、移動しながら、該測定位置の余肉部を外表面とほぼ平行に薄く切り取ることを特徴とする請求項2に記載の圧延用ロールの残留応力測定方法。
- 前記高圧水流の入射を、前記測定位置の近傍に予め形成した、該測定位置の余肉部の外表面とは異なる傾斜を有する高圧水流入射用面に、行なうことを特徴とする請求項3に記載の圧延用ロールの残留応力測定方法。
- 前記応力を解放する加工が、放電切断法を用いる加工であることを特徴とする請求項1に記載の圧延用ロールの残留応力測定方法。
- 前記放電切断法を用いる加工が、前記測定位置の余肉部を外表面とほぼ平行に薄く切り取る加工であることを特徴とする請求項5に記載の圧延用ロールの残留応力測定方法。
- 前記測定位置に保護カバーを設けることを特徴とする請求項2ないし6のいずれかに記載の圧延用ロールの残留応力測定方法。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の圧延用ロールの残留応力測定方法を用いて得られた残留応力値を、製品ロールの品質指標とすることを特徴とする圧延用ロールの品質評価方法。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の圧延用ロールの残留応力測定方法を用いて得られた残留応力値に基づき、製品ロール表面あるいは内部における残留応力を推定し、該推定した残留応力を製品ロールの品質指標とすることを特徴とする圧延用ロールの品質評価方法。
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