JP4995617B2 - 熱伝導型センサとこれを用いた熱伝導型計測装置 - Google Patents

熱伝導型センサとこれを用いた熱伝導型計測装置 Download PDF

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本発明は、熱伝導型のセンサに関し、気圧、真空度、流速、濃度などの物理量を計測できる熱伝導型センサと、この熱伝導型のセンサを用いて、これらの被測定物理量を計測するための熱伝導型計測装置に関するものである。
従来、本出願人が発明した宙に浮いた薄膜を二分割し、更に互いに熱抵抗を持つように構成してあり、一方の薄膜10Aにヒータと温度センサ20Aとを形成し、他方の薄膜10Bに温度センサ20Bを形成して、周囲媒体である気体への熱伝導による温度変化を利用して気体の流れや真空度などを計測する熱伝導型のセンサがあった(特許文献1参照)。この熱伝導型センサ(特開2004-286492)を薄膜ピラニ型真空計に応用した場合、周囲の気体への熱伝導による温度変化を計測する薄膜20B側も、この薄膜20Bを支持するための梁が基板1との間に存在しても構わないものと考えていた。しかし、実際には、この梁を通して薄膜20Bから基板1への熱伝導が存在するために、高真空のために周囲の気体がなくなっても、周囲の気体への熱伝導による温度変化を計測する薄膜20Bの温度は、ヒータがある薄膜20Aと基板1との中間の不安定な温度になってしまうという問題および周囲温度が変化すると基板温度も変化するので、梁を通して薄膜20Bの温度も真空度に拘らず変化してしまうと言う問題に直面した。
また、半導体のプロセスガスの真空度制御には、低真空領域を利用するので、ピラニ真空計が用いられていた。この従来の白金ワイヤを用いたピラニ真空計を白金ワイヤの代わりに薄膜にして、真空中の気体との接触面積が増加させて感度を増加させた薄膜ピラニ型真空センサがあった。しかし、一気圧に近い真空度では、気体分子の平均自由行程がサブミクロンメートル領域となり極めて小さく、加熱された薄膜から熱エネルギーを得て、薄膜表面から飛び去る気体分子による熱の放散を利用する熱伝導型の薄膜ピラニ型真空計においても、真空圧の増加と平均自由行程の減少とが打ち消しあい、この加熱された薄膜からの熱の放散が飽和し、大気圧に近い領域の真空度が計測できないと言う問題に直面していた。
一方、高真空度側では、周囲気体のガス分子密度が極めて小さくなるので、加熱された宙に浮いた薄膜からのガス分子衝突による熱の逃げが少なくなり、宙に浮いた薄膜を支持している梁からの基板などの支持体への熱の逃げが主体になり、この支持体への熱の逃げの不確定さが、高真空度側の測定限界を決定していた。
また、従来、温度差のみ検出できる温度差センサとして、従来のサーモパイルや熱電対のほかに、本出願人が発明した電流検出型熱電対があった(特許文献2参照)。これは、一対の熱電対であるが、内部抵抗を極端に小さくして短絡電流としてのゼーベック電流を検出するようにしたもので、構造が単純であり超小型化できると共に高感度であるからサーモパイルの代わりに使用できるものである。
また、従来、熱の方程式からヒータによる温度上昇分ΔTは、定常状態では、ヒータへ供給する電力Pを、周囲への熱伝導を決める熱コンダクタンスGで割算した形で表現されることが知られている。したがって、熱コンダクタンスGが一定ならば、ヒータに電力Pを供給すると、ヒータが形成してある薄膜は、周囲温度よりΔTだけ温度上昇することが分かる。
一般に、ヒータの抵抗体が、その抵抗温度係数(TCR)が金属のように正の場合と半導体のように負の場合がある。TCRが正のヒータの場合は、温度が上がるとその抵抗が大きくなるので、一定電流を流すとどんどん時間と共に温度上昇する傾向にある。一方、TCRが負のヒータの場合は、温度が上がるとその抵抗が小さくなるので、一定電圧を印加するとどんどん時間と共に温度上昇する傾向にある。例えば、ダイオードヒータの場合、TCRが負のヒータであるので、時間と共に温度が上昇する傾向になるが、周囲温度からの温度差が大きくなるので、その分、放熱も多くなり、実際には、ある温度に落ち着くことになる。このように、TCRが正負のヒータでは、電流や電圧を所定の一定値に保つことにより、ヒータの温度の上昇が図れ、このヒータの温度の上昇分を周囲のガスなどへの放熱とのバランスで調節できることになり、センサとして用いれば、高感度なセンサとさせることができる。
特開2004-286492号公報 特開2005-221238号公報
本発明は、上述の問題点を解消するためになされたもので、気体や液体の流量、流速、真空度、濃度、放射線や赤外線量などの物理量を計測するための高感度で高精度、さらに計測できる範囲を拡大できるような熱型センサである熱伝導型センサとこれを用いた熱伝導型計測装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる熱伝導型センサは、基板1から熱分離した薄膜10が薄膜10Aと薄膜10Bとに分割され、互いに熱抵抗を有するように熱抵抗部45を設けた構造であり、一方の薄膜10Aにはヒータ25と温度センサ20Aとが備えてあり、他方の薄膜10Bには温度センサ20Bが備えてあり、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出する熱伝導型センサにおいて、薄膜10Bは、薄膜10Aから熱抵抗45を介してカンチレバ状に飛び出した構造であるか、もしくは、薄膜10Bは、薄膜10Aと完全に空間的に分離した形として熱抵抗部45を実現するとともに基板1から熱抵抗45を介してカンチレバ状に飛び出した構造であること、更に、薄膜10Bは、加熱された薄膜10Aから熱を受け取り加熱される構造であることを特徴とするものである。
薄膜10Bを、薄膜10Aからカンチレバ状に飛び出した構造にすることにより、例えば、この熱伝導型センサを薄膜ピラニ型真空計として実施した場合、極めて高真空では、周囲の気体分子がほとんどないので、ヒータ25により薄膜10Aを通して熱せられた薄膜10Bからの周囲への熱伝導がなくなり、薄膜10Aとほとんど同一の温度になる。すなわち、輻射が無視できるような100℃程度に熱せられた場合には、高真空で薄膜10Aと薄膜10Bとに温度差がほとんどゼロになり、薄膜10Bもほとんど100℃になる。このように、基準となる高真空で、本質的に薄膜20Aと薄膜20Bとの間に温度差が発生しないようにして、高真空でゼロ出力とする、すなわち、これをゼロ基準とする(この方法をゼロ基準法と呼ぶことにする)ことが出来るので、極めて高精度の薄膜ピラニ型真空計が提供できることになる。
また、ヒータ25で熱せられた薄膜10Aから薄膜10Bへの熱伝導が、主に周囲媒体としての気体などを媒介とした熱伝導になるようにすることもできる。この場合、上述のように薄膜10Aと薄膜10Bとを一枚の薄膜10にスリットを形成して熱抵抗が大きくなるようにし、薄膜10Bが薄膜10Aからカンチレバ状に飛び出した構造にしても良いし、薄膜10Bが、例えば、基板1からカンチレバ状に飛び出す構造として、薄膜10Aと薄膜10Bとを一枚の薄膜10を横断するスリットで完全に空間的に接触させずに分離して、互いに近接して配置形成しても良い。後者の場合、薄膜10Bの支持は、宙に浮いて基板1から支持されている薄膜10Aに対向している基板1からカンチレバ状に飛び出した構造にすると良い。更に、この薄膜10Bも微少の熱量でも温度上昇がしやすいように、支持している基板1との間にも熱抵抗部45を形成すると良い。もちろん、一般に宙に浮いている薄膜10Aも基板1から更に熱抵抗が大きくなるように、狭い梁により支持されている構造にすると良い。
本発明の請求項2に係わる熱伝導型センサは、分割された二つ以上の薄膜10Ba、10Bbから成り、例えば、二つの場合は、それぞれの薄膜10Baと薄膜10Bbには、少なくとも一つの温度センサ20Baと温度センサ20Bbとがそれぞれに備えてあり、これらの薄膜10Baと薄膜10Bbとは、例えば、薄膜10Aからカンチレバ状にそれぞれ飛び出した構造にした場合である。すなわち、請求項1において、薄膜10Bが複数個備えてある場合に相当する。
本発明の請求項3に係わる熱伝導型センサは、二つ以上の薄膜10Baと薄膜10Bbが被測定物理量を除く物理量に対して同等に構成してある場合である。
本発明の請求項4に係わる熱伝導型センサは、二つ以上の薄膜10Baと薄膜10Bbとの間の温度差が測定できるように構成してある場合である。
二つ以上の薄膜10Ba、10Bbにおいて、一方を被測定物理量の検出用にし、他方を参照用に用いることができる。例えば、本発明の熱伝導型センサをガスフローセンサに適用した場合は、気流などの流速が被測定物理量に対応し、薄膜10Aからカンチレバ状に独立に飛び出した構造のうち、一方の薄膜10Baを流れに晒すようにして、他方の薄膜10Bbは流れに晒されないようにするが、流れを除く環境、例えば、薄膜10Baと薄膜10Bbの寸法や質量、更には周囲温度の影響などは全く同等になるように構成することである。このようにして、流速に基づくカンチレバ状の二つの薄膜10Ba、10Bbの温度差のみを検出することにより、上述のゼロ基準法が適用できることになる。従って、高精度のガスフローセンサが達成できる。
ここでは、これらの薄膜10Baと薄膜10Bbとの間の温度差は、それぞれに形成してある温度センサ20Baと温度センサ20Bbとを用いて測定できるように構成した場合である。
本発明の請求項5に係わる熱伝導型センサは、薄膜10Aと薄膜10B、10Ba、10Bbとの温度差をそれぞれに形成した温度センサ20Aと温度センサ20B、20Ba、20Bbとを用いて検出するようにした場合である。
薄膜10Aに形成した温度センサ20Aと、薄膜10B、10Ba、10Bbのそれぞれに形成した温度センサ20B、20Ba、20Bbとがサーミスタのような絶対温度センサである場合は、薄膜10Aと薄膜10B、10Ba、10Bbのそれぞれに形成した絶対温度センサを使用してそれらの温度差を計測する必要があるが、温度センサ20B、20Ba、20Bbが温度差のみを計測できる温度差検出型温度センサ(温度差センサ)である熱電対、サーモパイルや電流検出型熱電対である場合は、薄膜10Aの温度を基準として温度差を求めることもできる。
本発明の請求項6に係わる熱伝導型センサは、薄膜10Aなどを所定の場所として利用し、そこの温度を基準にして薄膜(10B、10Ba、10Bb)との温度差を検出するために、温度センサ20B、20Ba、20Bbとして、所定の場所からの温度差を検出する温度差センサとした場合である。熱の基本式から高温物体から低温物体への伝達熱量は、それらの物体間の温度差に比例する。もちろん、温度センサ20Aと温度センサ20Bとを、どちらも温度差のみ検出する温度差センサとしても良い。
温度センサ20Bや温度センサ20Baと温度センサ20Bbとして、それぞれサーミスタのような絶対温度を計測する温度センサとしても、もちろん良い。しかし、ここでは、温度センサ20Baと温度センサ20Bbとして、温度差のみ検出できる温度差センサである熱電対、サーモパイルや電流検出型熱電対を用いた方が良く、これらの冷接点と温接点とをそれぞれ薄膜10Aと薄膜10Ba、および薄膜10Aと薄膜10Bbとに配置する構造とし、それらの差動増幅をするようにした方が良い。なぜなら、上述のゼロ基準法が使用できるので、高精度の物理量計測が可能になるからである。なお、所定の場所からの温度差とは、熱電対、サーモパイルなどの冷接点を、例えば、所定の場所としての薄膜10Aに形成し、温接点を薄膜10Bや薄膜10Baなどに形成したときに、薄膜10Aと薄膜10Bや薄膜10Baとの温度差を意味し、この温度差を計測することである。また、所定の場所として、基板を利用すると電極形成などに好都合である。
本発明の請求項7に係わる熱伝導型センサは、温度差検出型温度センサとして電流検出型熱電対とした場合である。温度差センサとして、特に超小型で高感度となり得る電流検出型熱電対とした場合は、単純構造で高感度であるので好都合である。
一般に、熱電対といえば、サーモパイルと同様に開放起電力で温度を計測するが、電流検出型熱電対は、内部抵抗を小さくした熱電対の温度差による熱起電力に基づく短絡電流を計測して、温度差を検出するもので、サーモパイルのように沢山の熱電対を用いる必要がなく、一対で済むので、温度差センサを極めて小型化できるし、高感度で高精度となる。特に、本発明の熱伝導型センサを、薄膜ピラニ型真空センサのようにゼロ基準法が利用できるときに有利で、その特長を発揮する。
本発明の請求項8に係わる熱伝導型計測装置は、上述の請求項1から7のいずれかに記載の熱伝導型センサを備え、その熱伝導型センサの薄膜10Aの温度を所定の温度になるように、ヒータ25と温度センサ20Aとの組合せにより制御すると共に、少なくとも温度センサ20Bの出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とするものである。
ヒータ25として、不純物を拡散した拡散抵抗ヒータ25や白金などの薄膜ヒータでも良い。更に、ダイオードの順方向電圧印加によるダイオードヒータでも良いし、トランジスタやFETに電流を流して、ヒータ25として動作させても良い。
温度センサ20Aは、薄膜10Aに形成するのでIC技術で製作できるトランジスタサーミスタやダイオードサーミスタなどの絶対温度センサでもよく、基板1を冷接点として、薄膜10Aを温接点とする電流検出型熱電対でも良い。
所定の温度として、本熱伝導型計測装置の適用目的により異なるが、薄膜ピラニ型真空計に適用した場合には、例えば、薄膜10Aの温度が100℃になるように、温度センサ20Aで温度計測して、また、そこに形成してあるヒータ25を駆動するようにフィードバック制御するとよい。この制御は従来の公知の方法で容易に達成できる。
本発明の請求項9に係わる熱伝導型計測装置は、薄膜10Aの温度を少なくとも異なる所定の二つの温度になるように、周囲温度の変化が無視できる程度の短時間に制御して、薄膜10Aのこれらの異なる二つの温度での温度センサ20Aの出力とそれぞれに対応する温度センサ20Bの出力を利用して、周囲温度の効果を打ち消すようにした場合である。
本発明の熱伝導型計測装置を薄膜ピラニ型真空計に適用した場合には、実験によると、薄膜10Aの所定の二つの異なる温度として、100℃と80℃に設定し、温度センサ20Aとその近傍に形成されているヒータ25とを用いて、100ミリ秒毎に、これらの温度の切り替え制御をして、それぞれの温度に対応する薄膜10Bに形成されている温度センサ20Bの温度を計測して、それらの差動動作を行わせることにより、周囲温度の効果を除去することができた。
基板1や蓋が余り加熱されないように、矩形波パルスなどの所定の周期でヒータ25を短時間加熱するように制御した方が良い。
本発明の請求項10に係わる熱伝導型計測装置は、基板1から熱分離した薄膜10には、ヒータ25と温度センサ20とが備えてあり、この温度センサ20は、薄膜(10)でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されてあり、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出するようにした熱伝導型センサを備え、この熱伝導型センサのヒータ25を加熱するのに所定の一定の電力を供給するように制御すると共に、少なくとも温度センサ20の出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とするものである。
ヒータ25が形成してある薄膜の熱コンダクタンスGが一定ならば、ヒータ25に一定の電力Pを供給すると周囲温度よりΔTだけ温度上昇する。したがって、周囲温度が異なっても、その周囲温度を基準にして、それよりもΔTだけ温度上昇することになる。また、ΔTの温度上昇分は、宙に浮いた薄膜10に突起状のカンチレバから周囲への熱コンダクタンスGに反比例するから、突起状のカンチレバに形成した温度センサ20Bの温度に関する出力を利用して、真空度などの被測定物理量に関係する熱コンダクタンスGを知ることができるし、熱コンダクタンスGと真空度との対応から真空度を計測できる。もちろん、真空度ばかりでなく、気流や液体の流れによる熱コンダクタンスGの変化を利用すれば、被測定物理量として気流や液体の流速などを計測することもできる。
ヒータ25への所定の一定電力の供給方法は、ヒータ25への印加電圧Vと流れる電流Iとの積が一定になるように制御すればよく、例えば、それぞれの成分を公知の対数変換回路と逆対数変換回路を用いた掛け算回路を用いて掛け算をして、その出力が一定になるように制御することにより容易に達成できる。
ここでは、熱伝導型センサのヒータ25に所定の一定の電力を供給するように制御する場合、必ずしもヒータ25の温度を制御するために、ヒータ25の温度を計測する専用の温度センサを必要としない。薄膜10のカンチレバ状に飛び出した部分に形成された温度センサ20があり、この温度センサ20の温度に関する出力を利用して、真空度などの被測定物理量を計測する。被測定物理量と温度センサ20の出力との関係の校正曲線を求めておくことにより、被測定物理量の計測ができる。
なお、温度センサ20として、基板1を基準にして、薄膜10のカンチレバ状に飛び出した部分に形成された温度センサ20との温度差のみ検出する温度差センサを用いると良い。これは周囲温度が変化しても、その周囲温度からの温度上昇分である温度差は、熱時定数よりも充分長い時間経過後では、供給電力と熱コンダクタンスにより決定され、供給電力を指定すると被測定物理量に係る周囲への熱伝導だけで冷却されるからである。したがって、周囲温度依存性のない被測定物理量の計測が可能になる。
本発明の請求項11に係わる熱伝導型計測装置は、基板1から熱分離した薄膜10には、ヒータ25と温度センサ20とが備えてあり、この温度センサ20は、薄膜(10)でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されており、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出するようにした熱伝導型センサを備え、この熱伝導型センサのヒータ25を加熱するのに所定の一定の電流を流すように制御すると共に、少なくとも温度センサ20の出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする場合である。
ヒータ25をpn接合やショットキ接合などの半導体ダイオードとし、その順方向に電圧を印加すると、印加電圧はそれほど変化しないで、電流だけを大きく変化させることができる。すなわち、半導体ダイオードに流す順方向電流の大きさで、ほぼヒータ25への供給電力が決まる。このように例えば、定電流回路を用いて、一定の順方向電流を半導体ダイオードに流すと、請求項10に記述のように、ほぼ熱伝導型センサのヒータ25に所定の一定の電力を供給するように制御した場合と同等になる。実際には、多少、一定の電力を供給するように制御した場合と異なるが、一定の順方向電流を半導体ダイオードに流した状態で真空度などの被測定物理量と温度センサ20Bの出力との関係の校正曲線を求めておくことにより、被測定物理量の計測ができる。
金属的のように抵抗温度係数(TCR)が正であるヒータ25の場合には、所定の一定電流を流すことにより、ヒータ25の温度が上昇すれば、一層、消費電力が大きくなり、一層温度上昇するように作用する。しかし、周囲温度との温度差が大きくなるので、放熱が大きくなり、ある温度に落ち着く。この温度上昇分は、気体、液体の密度や流れなどの周囲の環境によるので、高感度になり、これらの物理量を計測するセンサには好適である。
本発明の請求項12に係わる熱伝導型計測装置は、基板1から熱分離した薄膜10には、ヒータ25と温度センサ20とが備えてあり、この温度センサ20は、薄膜(10)でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されており、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出するようにした熱伝導型センサを備え、この熱伝導型センサのヒータ25を加熱するのに所定の一定の電圧を印加するように制御すると共に、少なくとも温度センサ20の出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする場合である。
ヒータ25のTCRが負の場合、所定の一定の電圧を印加して加熱すると時間と共に温度が上昇する傾向になる。しかし、周囲温度からの温度差が大きくなるので、その分、放熱も多くなり、実際には、ある温度に落ち着く。このように、TCRが負のヒータ25では、電圧を所定の一定値に保つことにより、ヒータ25の温度が上昇し、真空度や気体や液体流の変化などで、ヒータ25からの放熱状態が変わるので、その上昇分が変化する。このような熱伝導型センサとして用いれば、高感度なセンサとさせることができる。
本発明の請求項13に係わる熱伝導型計測装置は、ヒータ25に少なくとも所定の異なる少なくとも二つの電圧を周囲温度の変化が無視できる程度の短時間に印加し、薄膜10のこれらの異なる二つの電圧印加での温度センサ20の出力を利用して、周囲温度の効果を打ち消すようにした場合である。
熱伝導型センサでは、周囲温度との温度差に基づいてヒータ25からの熱放散が行われることが多い。周囲温度は変動するので、これを補正することは困難なことである。周囲温度が変動した場合、マイクロヒータのように極めて高速に温度上昇する(熱時定数が小さい)ヒータ25であれば、ヒータ加熱の時間を短くすると周囲温度が変動していないと見做すことができる。このように、二つのパルス加熱で差動動作させることにより共通となる周囲温度効果を除去することができる。
本発明の請求項14に係わる熱伝導型計測装置は、基板1から熱分離した薄膜10には、ヒータ25と温度センサ20とが備えてあり、この温度センサ20は、薄膜10でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されており、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化をこの温度センサ20で検出するようにした熱伝導型センサを備え、この熱伝導型センサのヒータ25を、この温度センサ20の温度が周囲温度に対して所定の一定温度分だけ上昇するように制御すると共に、少なくとも、そのときのヒータ25に流す電流、ヒータ25の印加電圧もしくはヒータ25の供給電力を計測し、この計測出力を利用して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする場合である。
上述の周囲温度の基準として基板1を利用すると便利である。また、ヒータ25により加熱された薄膜10は、周囲温度に対して熱伝導するので、その熱伝導は薄膜10を基板1から支持している梁と周囲媒体により行われる。支持している梁を通した熱伝導に寄与する熱コンダクタンスは、ほぼ一定と考えられる。したがって、薄膜10を所定の一定温度上昇に加熱するための供給電力の変動は、被測定物理量に関わる周囲媒体の熱コンダクタンスの変化と見ることができる。供給電力は電流や電圧で表示することもできるので、供給電力を直接計測しなくとも、ヒータ25に流す電流や印加する電圧を計測しても良い。このように、本請求項は、薄膜10を周囲温度から所定の一定温度上昇になるようにヒータ25を制御することで被測定物理量を計測する場合である。
本発明の請求項15に係わる熱伝導型計測装置は、ヒータ25として半導体ダイオードを用いた場合である。
半導体ダイオードは、半導体であるので抵抗温度係数が負であり、これをヒータ25として用い、所定の一定順方向電圧で駆動すると、温度上昇すれば、一層、接合抵抗が小さくなり、一層電流が流れるようになる。基板や周囲気体などへの熱伝導でやがて一定温度に落ち着く。しかし、周囲気体などの密度や流れなどに温度上昇は極めて敏感であるから、高感度のセンシングシステムが構築できる。例えば、熱伝導型計測装置を薄膜ピラニ型真空計として使用すると、高真空になると気体の密度が小さくなるので、気体への熱伝導が少なくなり、ヒータ25の温度上昇が大きくなる。この温度上昇分が真空度により異なり、謂わば、熱増幅機構が働いた形で、高真空側でも高感度となる薄膜ピラニ型真空計が提供できる。
薄膜10に形成される温度センサも半導体ダイオードにした場合には、ヒータ25をも半導体ダイオードにすると、同一工程で一緒に形成できるので、安価な熱伝導型計測装置が提供できる。
半導体ダイオードをヒータ25とすると電気抵抗となる接合部が極めて小さくできるので、局部発熱が可能であり、接合部を広くすると面発熱ができる。また、シリコン(Si)で作成したときには、特に、接合部を含めて表面を熱酸化膜SiOで覆うことができるので、絶縁性及び耐熱性に富むことから好適である。
本発明の請求項16に係わる熱伝導型計測装置は、少なくとも電源回路、演算回路および制御回路を備えた場合である。電源回路は、ヒータ25の駆動や他の回路への電源の供給に関わる回路であり、演算回路は、温度センサ20Aや温度センサ20Bからの出力を利用し、更にメモリ回路との組み合わせにより被測定物理量、例えば、真空度を算出するために用いることを主にした回路である。また、制御回路は、ヒータ25の温度制御やヒータ25のパルス駆動時の通電時間と間隔などの制御を行う回路である。
本発明の熱伝導型センサでは、ヒータ25が備えてある薄膜10Aから薄膜10Bをカンチレバ状に飛び出した構造にすることにより、薄膜10Aから薄膜10Bを通して基板1に逃げる熱は、周囲気体などの周囲を取り巻く物質を通してのみ伝導することになり、例えば、この熱伝導型センサを薄膜ピラニ型真空計として実施した場合には、極めて高真空では、薄膜10Aと薄膜10Bとに温度差がほとんどゼロになるので、ゼロ基準法が適用できるから高精度で高感度の薄膜ピラニ型真空計が提供できるという利点がある。
本発明の熱伝導型センサでは、薄膜10Bを分割された二つ以上の薄膜10Ba、10Bbとして、薄膜10Aからカンチレバ状にそれぞれ飛び出した構造にできるので、一方を物理量の検出用にし、他方を参照用に用いることができる。これらは同等な構造にすることによりすることにより、温度差検出を利用したゼロ基準法が適用できるから高精度で高感度の熱伝導型センサが提供できるという利点がある。
本発明の熱伝導型センサでは、薄膜10Aと薄膜10Bまたは、薄膜10Aと分割したそれぞれの薄膜10Ba、10Bbとの温度差を検出するので、温度差だけを検出する温度センサが適用できる。特に、超小型で高感度の電流検出型熱電対が利用できるので小型で、高精度で高感度の熱伝導型センサが提供できるという利点がある。
薄膜10Aと薄膜10Bとに形成されたそれぞれの温度センサ20A、20Bのどちらも電流検出型熱電対のような温度差センサを用いると、薄膜10Aの温度は、温度センサ20Aを用いて、例えば基板1との温度差を高精度で計測できるし、薄膜10Bの温度も、温度センサ20Bを用いて、薄膜10Aを基準とする温度差を、周囲温度に寄らず精度よく計測することができるという利点がある。
本発明の熱伝導型計測装置では、使用している熱伝導型センサのセンシング部が、超小型の宙に浮いた薄膜であり、熱容量が小さく、低消費電力で高速応答であること、しかも物理量を温度変化として検出する温度センサがカンチレバ状薄膜に形成されているので、基板の温度の影響を直接受けないこと、しかも物理量を高速に計測できるばかりでなく、周囲温度の緩慢な変化の間に、二つ以上の短時間加熱が可能であることから、異なる二つ以上の設定温度におけるデータを利用して周囲温度の効果を消去できるという利点がある。
本発明の熱伝導型計測装置では、ヒータ25が備えてある薄膜10をカンチレバ状に飛び出した構造にし、そこに温度センサ20を形成してあり、また、ヒータ25への一定電力の供給制御を行うと、薄膜10から周囲への熱コンダクタンスGにより薄膜10の温度上昇分ΔTが決定されるので、特に温度センサ20を温度差センサにして、周囲温度からの温度差に関する温度出力を利用すれば、簡単に周囲温度変化による誤差を極めて小さくさせて被測定物理量を計測する熱伝導型計測装置を提供できるという利点がある。
本発明の熱伝導型計測装置では、ヒータ25を半導体ダイオードとし、その所定の一定順方向電流を流すことにより、ほぼ一定の電力をヒータ25に供給したことと等価になり、単純な回路構成の熱伝導型計測装置を提供できるという利点がある。
本発明の熱伝導型計測装置では、極めて熱容量と熱コンダクタンスの小さい宙に浮いた薄膜にマイクロヒータ25と温度センサが形成されており、ヒータ25の抵抗温度係数(TCR)の正であるか、または負であるか、に応じて、それぞれ、所定の一定電流を流してヒータ加熱するか、または所定の一定電圧を印加してヒータ加熱するか、することにより、高感度で高速センシングの物理量計測装置が提供できると言う利点がある。
本発明の熱伝導型計測装置では、例えば、基板1の温度を周囲温度と見做し、ヒータ25が備えてある薄膜10をカンチレバ状に飛び出した構造にして、そこに形成してある温度センサ20を用いて、その温度が基板1の温度より所定の一定温度だけ温度上昇するように制御することができるので、真空度などの被測定物理量の変化に基づくヒータ25への電力供給量、ヒータ25に流れる電流または印加電圧などを計測することにより、被測定物理量を求めることができる。したがって、単純な回路構成になると言う利点がある。特に、温度センサ20として、電流検出型熱電対などの温度差センサが好適である。
以下、本発明の熱伝導型センサは、成熟した半導体集積化技術とMEMS技術を用いて、シリコン(Si)基板で形成できる。このシリコン(Si)基板を用いて製作した場合の図面を参照して、実施例に基づき詳細に説明する。また、本発明の熱伝導型センサを用いた熱伝導型計測装置は、そのブロック図を用いて説明する。
図1は、本発明の熱伝導型センサの一実施例を示す平面概略図である。ここでは、基板1としてSOI基板を用いて実施した場合であり、基板1からの熱分離のために宙に浮いた構造にしてある薄膜10は、薄膜10Aと薄膜10Bとに二分割した場合であり、薄膜10Bが薄膜10Aから熱抵抗部45を介してカンチレバ状に飛び出した構造になっている。熱抵抗部45は、薄膜10Aと薄膜10Bとの間に設けたスリット41により熱伝導がし難い構造にして、熱抵抗を持たせている。
また、ここでは、薄膜10Aに形成した温度センサ20Aと薄膜10Bに形成した温度センサ20Bとも、ダイオードサーミスタとしても良いし、サーモダイオードのように絶対温度に直線的な出力(順電圧の大きさ)が取出せるようにしても良い。また、一方をダイオードサーミスタ、他方をサーモダイオードのようにしても良い。ここでは高感度であるダイオードサーミスタとして利用した場合を例にする。更に、ヒータ25もpn接合ダイオードの順方向電流により薄膜10を加熱するようにした場合である。ここで、ダイオードサーミスタとは、pn接合ダイオードに所定の順方向バイアス(例えば、0.55V)を印加して固定したときの順方向電流の温度依存性を観測するもので、サーミスタと同様に、絶対温度の逆数と順方向電流の対数とが直線関係であり、高感度で絶対温度Tが計測できる温度センサである。なお、このダイオードサーミスタは、順方向バイアス電圧の大きさによりその温度係数が調整できるという特徴がある。もちろん、ヒータ25として不純物拡散による半導体拡散抵抗や白金薄膜抵抗などを用いても良い。
薄膜10を薄膜10Aと薄膜10Bとの二分割すると共に、薄膜10Bをカンチレバ状に飛び出した構造とする場合、上述の実施例では、薄膜10に形成したスリット41により熱抵抗部45を形成し、薄膜10Aと薄膜10Bとに熱抵抗を持たせて分割し、薄膜10からカンチレバ状に飛び出した構造としたが、他の方法として、薄膜10Aと薄膜10Bとは、宙に浮いた薄膜10ではあるが、一枚ではなく、薄膜10を切断するスリット41を介して完全に分離した状態で近接配置してあり、薄膜10Aと薄膜10Bのそれぞれを基板1からの梁18を介して支持すると共に、薄膜10Bは基板1からカンチレバ状に飛び出す構造とすることもできる。これらの方法の違いにより、薄膜10Aから薄膜10Bへの熱伝達が、次のように異なると予想される。例えば、この熱伝導型センサを薄膜ピラニ型真空センサに適用すると、薄膜10Aに形成されているヒータ25を熱したときに、前者では、真空中の気体とスリット41の周囲の狭い梁部である熱抵抗部45を通して熱伝達が行われるのに対して、後者では、ほとんど、真空中の気体を通して熱伝達が行われることになる。このように、後者は、真空度に極めて敏感な真空センサとなる。後者については、更に実施例5で詳述する。
図1に示した本発明の熱伝導型センサにおける基板1の加工の製作工程の概要を説明すると次のようである。基板1のSOI層11がn 型を用いた場合、温度センサ20Aと温度センサ20B及びヒータ25としてのpn接合ダイオードは、公知の半導体微細加工技術によりp型拡散領域22を熱拡散により形成し、さらに良好なオーム性接触を得るためにn型拡散領域21を形成する。その後、アルミニウム(Al)系の金属のスパッタリング薄膜形成とフォトリソグラフィにより、電極60a、60b、61a、61b、62a、62bの形成、配線110と電極パッド70a、70b、71a、71b、72a、72bの形成を行う。 更に、スリット41、42となるべき箇所をBOX層までエッチング除去する。次に、基板1の裏面からDRIEにより空洞40を形成して、上記スリット41、42の貫通も達成させる。このようにして、宙に浮いた薄膜10がスリット41による熱抵抗部45を介して二分割されて薄膜10Aと薄膜10Aからカンチレバ状にと飛び出した構造の薄膜10Bが形成され、また、ヒータ25としてのpn接合ダイオードと温度センサ20Aとしてのpn接合ダイオードとが薄膜10Aに形成され、pn接合ダイオードの温度センサ20Bが薄膜10Bに形成される。これらの薄膜10Aと薄膜10Bからなる薄膜10は、狭い梁18で基板1から支持された構造となっている。また、真空センサに適用した場合には、薄膜10Bは、真空度に応答して放熱する領域であるので、薄膜10Aからカンチレバのような構造にして、基板1への熱の伝達がし難い構造にしている。
また、ここでは、薄膜10Aと薄膜10Bに形成してあるそれぞれの温度センサ20Aと温度センサ20Bとは、pn接合ダイオードをサーミスタのようにして用いており、更にヒータ25としてもpn接合ダイオードの順方向電流により加熱するようにしている。これらは同一の工程で形成できるので、好都合である。これらの温度センサ20Aと温度センサ20Bとの電気的な配線は、薄膜10Aを支えている梁18の上の絶縁膜であるシリコン酸化膜51に形成した配線110により基板1に形成した電極パッド71a、71b、72a、72bに導かれている。
図2は、本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図である。ここでは、上述の実施例1と同様に基板1としてSOI基板を用いて実施した場合であり、基板1からの熱分離のために宙に浮いた構造にしてある薄膜10は、薄膜10Aと薄膜10Bとに二分割した場合であり、薄膜10Bが薄膜10Aから熱抵抗部45を介してカンチレバ状に飛び出した構造になっている。上述の実施例1との違いの主体は、熱抵抗部45は、薄膜10Aと薄膜10Bとの間に設けたスリット41により括れた構造になっており、熱伝導がし難い構造にしていること、薄膜10Bに形成した温度センサ20Bが、温度差のみを検出する電流検出型熱電対を使用していること、SOI基板としてp型のSOI層11を使用して、不純物拡散によるn型SOI層とした電流検出型熱電対の一方の熱電対導体120aとは、pn接合による電気的分離をしていること、などである。
電流検出型熱電対は、温度差に基づく熱起電力(ゼーベック電圧)により流れる短絡電流(短絡時のゼーベック電流)を計測するために、極めて低抵抗にする必要がある。このために、p型のSOI層11を使用して、薄膜10Bの全部と、薄膜10Aのうち薄膜10Bに近い領域の一部とに、n型不純物を縮退するほど高濃度に熱拡散などで添加してn型拡散領域21を形成して、熱電対の一つの導体の役割としていると共に、薄膜10Aに形成してあるヒータ25や温度センサ20Aと電気的分離するためにpn接合が形成されるようにしている。ここでは、温度センサ20Bとしての電流検出型熱電対の温接点はカンチレバ上の薄膜10Bの先端部に形成されたオーミック性の電極62aであり、冷接点は薄膜10Aのうち薄膜10Bに近く、しかも薄膜10Bから連続しているn型拡散領域21である。
本発明の熱伝導型センサを薄膜ピラニ型真空センサとして使用した場合の動作を説明すると次のようである。宙に浮いた薄膜10Aに形成されているヒータ25で、薄膜10Aを加熱したとき、やはり、薄膜10Aに形成されている温度センサ20Aが、ここではダイオードサーミスタとしての絶対温度センサであるので、薄膜10Aの絶対温度が計測できる。ヒータ25への矩形波パルス電流で、周囲温度よりも高い温度、例えば100℃になるように加熱する。このとき薄膜10Bに形成されている温度センサ20Bの温度は、周囲気体の圧力、すなわち真空度に依存して熱が奪われるので、温度センサ20Aの100℃より小さな温度となる。しかし、薄膜10Bは、薄膜10Aからカンチレバ状に飛び出した構造であること、さらに、100℃程度では、輻射による熱放射は極めて小さいので、高真空度の下では、温度センサ20Aの温度と温度センサ20Bの温度とは、ほぼ等しい温度となる。すなわち、高真空度では、温度センサ20Aの温度と温度センサ20Bの温度差は、ほぼゼロとなる。また、温度センサ20Bとして、薄膜10Aを基準とした温度差のみ計測する電流検出型熱電対を使用しており、ゼロ基準法が適用できるので、特に高真空度において高精度に真空度が計測できる。
なお、温度センサ20Bとしての電流検出型熱電対における基板1への二本の配線110は、薄膜10Aのうちの等しい温度として認められる熱抵抗部45に近い部分から同一の金属材料を用いて分岐するようにすると良い。ここでの実施例では、電流検出型熱電対の一方の熱電導体120aである高濃度のn型拡散領域21からオーム性接触となる電極62bからの配線110を、他方の熱電導体120bと同一の材料であるニッケル(Ni)を用いている。Niはシリコンの異方性エッチング時に使用するヒドラジンに耐久性があること、また、n型半導体と逆符号のゼーベック係数であることにより使用された。しかし、n型半導体のゼーベック係数が、Niのゼーベック係数より桁違いに大きいので、n型半導体のゼーベック係数と同一符号であるアルミニウム(Al)を使用してもそれほど変わらない。ヒドラジンなどの異方性エッチャントを用いずDRIEによる薄膜10の形成では、アルミニウム(Al)を使用しても差し支えない。AlはIC技術では、配線材料として多く利用されているので、集積化の目的では、配線110をアルミニウム(Al)としても良い。
上述では、薄膜10Aの温度を100℃一定に維持して、薄膜ピラニ型真空センサとして、実施する場合を述べたが、薄膜10は、極めて熱容量が小さいので、その熱時定数が例えば、20ミリ秒程度となる。このような薄膜10を用いているので、ヒータ25に流す電流も50ミリ秒程度の矩形波パルスでも充分応答する。したがって、一般に周囲温度の変化は緩慢なので、このような短いパルス電流で周期的に薄膜10Aの温度を例えば、100℃一定と80℃一定になるような異なる二つの温度に設定して、ヒータ25をパルス加熱駆動する。そして薄膜10Aがそれぞれの温度になったときの薄膜10Bの温度のデータを利用して、周囲温度の効果を差し引くようにして除去することにより、周囲温度に無関係に真空度のみを測定するようにできる。温度差を求めることになるので、温度センサ20Bとして、本質的に温度差のみ検出する温度差検出温度センサ、特に電流検出型熱電対が最適である。
図3は、本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図である。上述の実施例2に記述した場合の図2との大きな違いは、薄膜10Bを薄膜10Baと薄膜10Bbとに二分割してあり、同等の形状にしてある点、また、それぞれに形成した温度センサ20Baと温度センサ20Bbとは、図2と同様に電流検出型熱電対であるが、薄膜10Baと薄膜10Bbとの温度差が直接計測できるように直列接続している点である。このようにして、薄膜10Baと薄膜10Bbのそれぞれに形成した温度センサ20Baと温度センサ20Bbとを、種々の物理量の計測において、熱に関してゼロ基準法が適用できるようにしている。
ここには図示していないが、電流検出型熱電対である温度センサ20Baと温度センサ20Bbとは、図3のように直列接続せずに、それぞれから配線110を引き出し、並列接続して、これらの短絡電流がOPアンプとの組み合わせで互いに差し引かれるように構成をして、薄膜10Baと薄膜10Bbとの温度差が直接計測できるようにすることもできる。
また、ここには図示していないが、本発明の熱伝導型センサを気流センサに適用する場合、基板1に形成された薄膜10には直接接触しないように空隙を設けて、基板1を二枚の蓋でサンドイッチするように張り合わせて使用する。そして二枚の蓋に、例えば、薄膜10Baの箇所に対応する位置に、穴を開けて、被測定気流がこの穴を通して薄膜10Baにのみ当たるようにして、気流センサを構成することができる。この場合、薄膜10Baと薄膜10Bbとの隙間に当たるスリット42の箇所に二枚の蓋のうち少なくともどちらかから延びた隔壁で、気流の流れを一方の薄膜10Baのみに当たり、薄膜10Bbにはこの隔壁のために当たらないようにする。
図4は、本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図の部分拡大図である。本実施例4の図4において、前述の図3との大きな違いは、薄膜10のうち、薄膜10Baと薄膜10Bbとに二分割してある薄膜10Bを中心に、薄膜10Aとの接合部付近を部分的に拡大してあること、薄膜10Aからカンチレバ状に飛び出した構造の薄膜10Baと薄膜10Bbとを形成してあるが、これらの薄膜10Baと薄膜10Bbの先端部の先には基板1が存在しないように、基板1の一部がエッチング除去した構造であり、文字通りカンチレバ状の薄膜10Baと薄膜10Bbが基板1から飛び出した構造にしていること、更に、薄膜10Bの一方の薄膜10Baには、被検出ガスや液体などの物質に反応して発熱や吸熱を生じる感応物質210を例えば薄膜状に形成し、他方の薄膜10Bbには、感応物質210を形成した薄膜10Baと同一の質量になるように被検出ガスや液体には反応しない物質であるバランス膜220を形成して、ヒートサイクルに対して被検出ガスや液体がないときにはほぼ等しい温度となり、ゼロ基準法が適用できるようにした点である。
感応物質210として、例えば、グルコースオキシダーゼという酵素を薄膜状に固定形成すると、これはグルコースに選択的に反応し、40℃程度の温度の下で酸化される。このときの発熱反応を利用して、血糖値や、尿や汗などの体液からの糖の検出などに適用することができる。
感応物質210として、他の被検出ガスや被検出液体などに選択性のある物質を採用するとガスセンサや液体の濃度センサとして利用できる。
また、感応物質210やバランス膜220を用いなくとも、カンチレバ状の薄膜10Baと薄膜10Bbが基板1から飛び出した構造と蓋との組み合わせにより、被検出ガスや液体にカンチレバ状の一方の薄膜10Baだけを容易に晒すような構造にする事ができる。
図5は、本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図である。これは、上述の実施例2における図2に示した場合との大きな違いは、薄膜10を薄膜10Aと薄膜10Bとに二分割するに当たり、熱抵抗を持たせるためのスリット41を拡大し、薄膜10Aと薄膜10Bを完全に空間的に分離した形として熱抵抗部45を実現したこと、薄膜10Bの支持を基板1とし、カンチレバ状に基板1から飛び出した薄膜10Bをスリット42により熱抵抗部45をここにも形成して基板1への熱伝導を困難にさせたこと、更に、基板1の絶対温度を計測するために、基板1にも絶対温度センサとしての温度センサ20Cを形成したことである。温度センサ20Cとして、温度センサ20Aやヒータ25と同一工程で作製できるpn接合ダイオードとしてある。本実施例では、薄膜10Aと薄膜10Bを完全に分離した形なので、加熱された薄膜10Aからの熱を周囲の気体や液体を介して薄膜10Bに熱伝達されることになる。例えば、薄膜ピラニ型真空センサとして実施した場合には、高真空では、加熱された薄膜10Aから薄膜10Bへの熱伝達がほとんど行われないので、薄膜10Bの温度は基板1の温度にほぼ等しくなり、本実施例では、温度センサ20Bを温度差センサ、特に、電流検出型熱電対としているので、基板1の温度を基準としたゼロ基準法が適用できる。高精度で高感度の薄膜ピラニ型真空センサが提供できる。
実施例2の図2に示す熱伝導型センサを用いて、このヒータ25としてのpn接合ダイオード23に所定の一定電力となるように順方向印加電圧Vと順方向電流Iとを制御する場合を示す。pn接合ダイオード23の順方向電圧が0.7V以上であれば、順方向電圧が余り変化しなくとも流れる電流は大きく変化するので、ほぼ定電流回路を用いて電流Iを制御することになる。例えば、1.0Vの順方向電圧Vを加えたときに電流I=100mA流れたとすると、消費電力Pは100mWとなる。実験では、このP=100mWの電力供給で約200℃の温度上昇ΔTが達成された。このとき、薄膜10の温度上昇ΔTや温度センサ20Bが搭載されている薄膜10Bの温度上昇ΔTは、熱伝導型センサを真空センサとして用いた場合、真空度が同一であれば、周囲温度に拘わらずそれぞれ一定であった。もちろん、被測定物理量として真空度とすれば、その真空度に応じて薄膜から周囲の真空ガスへの熱コンダクタンスGが変化するので、薄膜10の温度が変化し、特に温度センサ20Bが搭載されているヒータ25から熱抵抗を有する薄膜10Bの温度変化が大きくなる。
図2に示す熱伝導型センサでは、薄膜10Bに形成されている温度センサ20Bが熱電対であるので、薄膜10Aを基準にした薄膜10Bの温度差が検出される。したがって、温度センサ20Bの出力は、薄膜10Aを基準にした薄膜10Bの温度差に関する情報である。この薄膜10Bの薄膜10Aとの温度差は、薄膜10Bが薄膜10Aからカンチレバ状に飛び出した構造であるので、極めて高真空ではゼロになる。真空度が低下すると真空中のガスへの熱伝導により熱コンダクタンスGが大きくなるので、薄膜10Bの温度が下がり、薄膜10Bの薄膜10Aとの温度差は大きくなる。ヒータ25への一定電力Pを供給しているときのこの温度差を温度センサ20Bで計測して、この出力データを利用して、真空度に対する校正曲線を作成すれば、温度センサ20Bの出力を利用した周囲温度に依らない真空度の計測ができる。
上述では、薄膜10Bに形成されている温度センサ20Bが熱電対である場合であったが、温度センサ20Bとして図1に示すようにダイオードサーミスタを用い、絶対温度を計測しても良い。この場合、ダイオードサーミスタは、絶対温度センサであるので、ヒータ25への一定電力Pを供給しているときの薄膜10Bの温度上昇分ΔTが計測できない。温度上昇分ΔTを計測するために、ヒータ25への一定電力Pを供給していないときの薄膜10Bの温度をダイオードサーミスタである温度センサ20Bで計測しておくと良い。真空度を計測する場合で、例えば、時々刻々真空度が変化したり、周囲温度が変化したりする場合には、ヒータ25への一定電力Pを供給していないときの薄膜10Bの温度計測とヒータ25への一定電力Pを供給しているときの温度計測とを交互に、しかも真空度や周囲温度の変化が無視できる程度の短時間に温度センサ20Bを用いて計測を終了するようにすると良い。幸い本発明の熱伝導型センサは、宙に浮いた微小の薄膜10を用いているので、熱応答速度も10ミリ秒程度であるから好都合である。これらの温度上昇分ΔTに関するデータと真空度との関係に関する校正曲線を作成しておき、これを利用して真空度を計測すると良い。
また、上述の実施例における図1や図2に示す熱伝導型センサのヒータ25に、一定の電力供給を行う場合には、薄膜10の周囲への熱コンダクタンスGが一定であれば周囲温度に関係なく、温度上昇分ΔTが一定になるので、必ずしも、薄膜10Aに形成されている温度センサ20Aが不必要である。すなわち、図示しないが、薄膜10Aにはヒータ25だけを作成し、薄膜10Bに温度センサ20Bを形成しておくだけで良いし、更には、薄膜10を二分割せずに、薄膜10にヒータ25と温度センサ20を形成するだけでも良い。もちろん、この場合、ヒータ25と温度センサ20とを兼用にすることもできる。
図6には、本発明の熱伝導型計測装置のセンシングデバイスである本発明の熱伝導型センサに関して、実施例2の図2における薄膜10Aに形成された温度センサ20Aを、温度差センサである電流検出型熱電対とした場合を示している。冷接点としての基板1に電極71aと電極71bを形成している。温接点として薄膜10Aにオーム性の電極61aが形成されており、そこではニッケルやクロムなどの熱電対導体120bと他の熱電対導体120aとしての高濃度のn型拡散領域21の薄膜半導体(SOI層を利用)が接合している。この電流検出型熱電対としての温度センサ20Aの構造は、ほぼ、実施例2における電流検出型熱電対としての温度センサ20Bと同様であるので、詳細は省略する。
薄膜ピラニ型真空センサ(ピラニ真空センサ)として適用した場合、基板1を周囲温度とほぼ等しくなるように真空チャンバなどと熱接触を良好にしておき、公知の掛け算回路を用いるなどして、ヒータ25に所定の一定電力の供給をすると、ヒータ25と温度センサ20Aが形成されている薄膜10Aの温度は、薄膜10Aを基板1から支持している梁18を通しての基板1への熱伝導の熱コンダクタンスGbと真空中のガスへの熱伝導の熱コンダクタンスGaとで決まる温度上昇ΔTが定まる。熱コンダクタンスGbは一度真空センサが製作されると構造のみによるので、既知の一定値となる。極めて高真空の場合は、熱コンダクタンスGaはゼロと考えることができるので、このときの温度上昇ΔT=ΔTは一定値となる。真空度が低下するように変化したときは、温度上昇ΔT=ΔTより小さな温度上昇となる。このときのΔT=ΔTからの温度変化分を計測することにより真空度を校正曲線も用いて計測する。
上述の実施例7では、図6において、ヒータ25に所定の一定電力を供給する場合であったが、本実施例は、薄膜10Aの温度が、周囲温度から所定の一定の温度上昇分だけ昇温するように、温度差センサである電流検出型熱電対を温度センサ20Bとして用いて、ヒータ25を制御すると共に、このときのヒータ25への供給電力または、ヒータ25への供給電圧や電流である計測出力を利用して真空度などの被測定物理量を計測する場合である。温度センサ20Bは、必ずしも温度差センサである必要がないが、温度差を検出したいので、温度差センサが好適である。なお、温度差センサとしては、サーモパイルや熱電対でも良い。また、周囲温度の基準として、薄膜10Aが形成してある基板1が最適である。
上述の実施例では、図2や図6に示す熱伝導型センサを用いて、このヒータ25としてのpn接合ダイオード23に所定の一定電力となるように順方向印加電圧Vと順方向電流Iとを制御したり、周囲温度から所定の一定の温度上昇分だけ昇温するように、制御する場合を示したが、ここでは、所定の一定順方向電圧を印加して、薄膜ピラニ型真空センサなどとしての熱伝導型計測装置を実現する場合を示す。pn接合ダイオード23であるヒータ25に、例えば、1.40Vの電圧と1.25Vの順方向電圧を印加すると、消費電力Pは、実験によると、それぞれ、125mWと75mWになり、それぞれ1気圧中の大気中では、約120℃と70℃程度になる。しかし、真空中では、ヒータ25からの周囲気体への熱放散が少なくなるので、5℃程度の温度上昇が得られる。この温度上昇分は、高真空であればあるほど大きくなり、特に、熱放散が少なくなるので、高温になるが、最終的には薄膜10を支持している梁18による基板1への熱伝導により決まる。また、pn接合ダイオード23であるヒータ25が負の抵抗温度係数(TCR)を有しているので、それぞれ一定の電圧である1.40Vの電圧と1.25Vの順方向電圧を保持すると、高真空である程高温になり、それだけヒータ電流が多く流れて、更に高温になると言う熱増幅作用が生じる。しかし、やはり周囲温度(ほとんど基板1の温度)との温度差が大きくなるので、ある程度の温度上昇で落ち着く。この温度上昇分は、高真空ほど大きく、真空度に依存するので、特に、感度が小さくなってしまう高真空側での感度の増大が期待できる。もちろん、この温度上昇分は、温度センサ20や温度センサ20Bで計測する。
ヒータ25に、それぞれ一定の電圧である二つの異なる電圧、1.40Vの電圧と1.25Vの順方向電圧を、例えば、矩形パルスで印加し、その保持時間を薄膜10の熱時定数より大きくしておき、更に、これらの二つの異なる電圧を印加する時間間隔を周囲温度の変化が無視できる程度に短くする。そして、これらの出力の差を求めれば、周囲温度の効果を差し引き、除去することができるので、このときの真空度などの物理情報を周囲温度に無関係に得ることができる。この場合、一定温度になるように温度制御をしなくて済むので、SNの大きい計測ができる。
上述の実施例では、本発明の熱伝導型センサの薄膜10を薄膜10Aと薄膜10Bとに分割してある場合を例にしたが、ヒータへの電力供給を一定にしたり、所定の一定電圧や一定電流を供給して加熱した場合は、必ずしも、薄膜10を分割せずに、カンチレバの先端付近に温度センサ20を1個形成し、ヒータ25の温度を専用に計測するための温度センサ(上述では、温度センサA)は、必ずしも必要としない。すなわち、薄膜10には、1個のヒータ25と1個の温度センサ20だけで済む。
また、上述では、本発明の熱伝導型センサの薄膜10を薄膜10Aと薄膜10Bとに分割してある場合、ヒータ25と温度センサAとの配置において、温度センサAと温度センサBとが接近してあり、ヒータ25が温度センサBから離れている場合の実施例の図面にしてある。しかし、ここでは図示しないが、ヒータ25と温度センサAとの位置関係が逆の配置、すなわち、ヒータ25が温度センサBに近い方に配置する形でも良い。この方が、むしろ、カンチレバの部分に形成してある温度センサBの根元の温度がヒータ25により固定されやすいので、周囲温度の補正において有利であることが多い。
図7には、本発明の熱伝導型計測装置のブロック概略図を示している。適用目的により異なるが、そこには、少なくとも、上述の本発明の熱伝導型センサや他の回路に電力を供給するための電源回路、熱伝導型センサからの出力を利用して真空度などの物理量を求める演算回路、熱伝導型センサの駆動のための制御回路を有しており、ここでは、更に、真空度などの物理量を表示する表示部も備えた場合を示している。
長時間ヒータ25を加熱しているとシリコンの基板1やここには図示しないが、基板1をサンドイッチにして接合する二枚の蓋(必要に応じて通気用の多くのスリットを形成しておく)も加熱されて温度上昇してしまい測定に誤差が生じやすいこと、低消費電力化のためにも、薄膜10の熱時定数程度の短い時間のヒータ加熱となるように、矩形波パルス電流によるヒータ加熱の駆動にした方が良い。
薄膜ピラニ型真空計に適用した場合には、本発明の熱伝導型センサを用いて、薄膜10Aの温度が100℃と80℃に交互になるように、ヒータ25を50ミリ秒程度ごとにパルス加熱して、温度センサ20Aで温度計測して、また、そこに形成してあるヒータ25を駆動するようにフィードバック制御するとよい。この制御は従来の公知の方法で容易に達成できる。これらの薄膜10Aの温度100℃と80℃に対応するそれぞれの薄膜10Bの温度を計測する。薄膜10Aと薄膜10Bの温度差の計測や、異なる時間での薄膜10Bの温度差の計測(温度センサ20Bの出力を、ピークホールド回路などを利用して計測する)によるデータを利用して周囲温度の影響を除去することができる。なお、熱伝導型センサの温度センサ20Bとして、温度差のみ検出する電流検出型熱電対が好適である。
本発明の熱伝導型センサとこれを用いた熱伝導型計測装置は、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうる。
本発明の熱伝導型センサは、気体や液体の流量、流速、特定物質の濃度、真空度、更に放射線や赤外線量などの物理量を、温度変化として高感度で、しかも高精度で計測するための熱型センサである。例えば、本発明の熱伝導型センサを薄膜ピラニ型真空センサに適用した場合、カンチレバ状の宙に浮いた薄膜に温度差のみを高感度で、しかも高精度で検出する、超小型の電流検出型熱電対が使用できるので、極めて広帯域、特に高真空側に測定域を延ばした真空センサとして利用できる。更に、ゼロ基準測定法により極めて微小な温度差を検出できるので、微量の特定ガスなどの濃度や微流量計測に適する。また、本発明の熱伝導型センサを搭載した熱伝導型計測装置は、制御系を含み、例えば、真空計や流速計などに好適である。
本発明の熱伝導型センサの一実施例を示す平面概略図である。(実施例1、実施例6、実施例9) 本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例2、実施例6、実施例9) 本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例3、実施例9) 本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図の部分拡大図である。(実施例4) 本発明の熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例5) 本発明の熱伝導型計測装置に用いる熱伝導型センサの他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例7、実施例8、実施例9) 本発明の熱伝導型計測装置のブロック概略図を示している。(実施例10)
符号の説明
1 基板
10、10A、10B 薄膜
11 SOI層
18 梁
20、20A、20B、20C 温度センサ
21 n型拡散領域
22 p型拡散領域
23 pn接合ダイオード
25 ヒータ
40 空洞
41、42 スリット
45 熱抵抗部
51 シリコン酸化膜
60a、60b 電極
61a、61b 電極
62a、62b 電極
63a、63b 電極
70a、70b 電極パッド
71a、71b 電極パッド
72a、72b 電極パッド
73a、73b 電極パッド
110 配線
120a, 120b 熱電対導体
210 感応物質
220 バランス膜

Claims (16)

  1. 基板(1)から熱分離した薄膜(10)が薄膜(10A)と薄膜(10B)とに分割され、互いに熱抵抗を有するように熱抵抗部(45)を設けた構造であり、一方の薄膜(10A)にはヒータ(25)と温度センサ(20A)とが備えてあり、他方の薄膜(10B)には温度センサ(20B)が備えてある、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出する熱伝導型センサにおいて、薄膜(10B)は、薄膜(10A)から熱抵抗(45)を介してカンチレバ状に飛び出した構造であるか、もしくは、薄膜(10B)は、薄膜(10A)と完全に空間的に分離した形として熱抵抗部(45)を実現するとともに基板(1)から熱抵抗(45)を介してカンチレバ状に飛び出した構造であること、更に、薄膜(10B)は、加熱された薄膜(10A)から熱を受け取り加熱される構造であることを特徴とする熱伝導型センサ。
  2. 薄膜(10B)は、分割された二つ以上の薄膜(10Ba、10Bb)から成り、それぞれの薄膜(10Ba、10Bb)には、少なくとも一つの温度センサ(20Ba、20Bb)をそれぞれ備えている請求項1記載の熱伝導型センサ。
  3. 二つ以上の薄膜(10Ba、10Bb)は、被測定物理量を除く物理量に対して同等になるように構成してある請求項2記載の熱伝導型センサ。
  4. 二つ以上の薄膜(10Ba、10Bb)間の温度差が、それぞれに形成してある温度センサ(20Ba、20Bb)を用いて測定できるように構成した請求項2または3のいずれかに記載の熱伝導型センサ。
  5. 薄膜(10A)と薄膜(10B、10Ba、10Bb)との温度差をそれぞれに形成した温度センサ(20A)と温度センサ(20B、20Ba、20Bb)とを用いて検出するようにした請求項1から4のいずれかに記載の熱伝導型センサ。
  6. 所定の場所を基準として、その場所と温度センサ(20B、20Ba、20Bb)が形成されている薄膜(10B、10Ba、10Bb)との温度差を、温度差検出型温度センサとして動作する温度センサ(20B、20Ba、20Bb)で検出するようにした請求項1から5のいずれかに記載の熱伝導型センサ。
  7. 温度差検出型温度センサとして電流検出型熱電対とした請求項6記載の熱伝導型センサ。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の熱伝導型センサを備え、その熱伝導型センサの薄膜(10A)の温度を所定の温度になるように、ヒータ(25)と温度センサ(20A)との組合せにより制御すると共に、少なくとも温度センサ(20B)の出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする熱伝導型計測装置。
  9. 薄膜(10A)の温度を、少なくとも異なる所定の二つの温度になるように、周囲温度の変化が無視できる程度の短時間に制御して、薄膜(10A)の上記の異なる二つの温度での温度センサ(20A)の出力とそれぞれに対応する温度センサ(20B)の出力を利用して、周囲温度の効果を打ち消すようにした請求項8記載の熱伝導型計測装置。
  10. 基板(1)から熱分離した薄膜(10)には、ヒータ(25)と温度センサ(20)とが備えてあり、該温度センサ(20)は、薄膜(10)でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されてあり、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出するようにした熱伝導型センサを備え、該熱伝導型センサのヒータ(25)を加熱するのに所定の一定の電力を供給するように制御すると共に、少なくとも温度センサ(20)の出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする熱伝導型計測装置。
  11. 基板(1)から熱分離した薄膜(10)には、ヒータ(25)と温度センサ(20)とが備えてあり、該温度センサ(20)は、薄膜(10)でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されており、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出するようにした熱伝導型センサを備え、該熱伝導型センサのヒータ(25)を加熱するのに所定の一定の電流を流すように制御すると共に、少なくとも温度センサ(20)の出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする熱伝導型計測装置。
  12. 基板(1)から熱分離した薄膜(10)には、ヒータ(25)と温度センサ(20)とが備えてあり、該温度センサ(20)は、薄膜(10)でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されており、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出するようにした熱伝導型センサを備え、該熱伝導型センサのヒータ(25)を加熱するのに所定の一定の電圧を印加するように制御すると共に、少なくとも温度センサ(20)の出力を利用して、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化を検出して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする熱伝導型計測装置。
  13. ヒータ(25)に少なくとも所定の異なる二つの電圧を周囲温度の変化が無視できる程度の短時間に印加し、薄膜(10)のこれらの異なる二つの電圧印加での温度センサ(20)の出力を利用して、周囲温度の効果を打ち消すようにした請求項12記載の熱伝導型計測装置。
  14. 基板1から熱分離した薄膜(10)には、ヒータ(25)と温度センサ(20)とが備えてあり、この温度センサ(20)は、薄膜(10)でヒータ(25)より先端部のカンチレバ状に飛び出した部分に形成されており、周囲媒体への熱伝導に基づく温度変化をこの温度センサ(20)で検出するようにした熱伝導型センサを備え、この熱伝導型センサのヒータ(25)を、この温度センサ(20)の温度が周囲温度に対して所定の一定温度分だけ上昇するように制御すると共に、少なくとも、そのときのヒータ(25)に流す電流、ヒータ(25)の印加電圧もしくはヒータ(25)の供給電力を計測し、この計測出力を利用して被測定物理量を計測するようにしたことを特徴とする熱伝導型計測装置。
  15. ヒータ(25)として半導体ダイオードを用いた請求項から14のいずれかに記載の熱伝導型計測装置。
  16. 少なくとも電源回路、演算回路および制御回路を備えた請求項8から15のいずれかに記載の熱伝導型計測装置。
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