上述した補強土構造物は、従来のコンクリートによる重力式擁壁に比べ、経済性および力学的安定性に優れるという利点を有している。
しかしながら、このような補強土構造物(擁壁構造物)に地震力が作用した場合の挙動を考えると、想定される地震力が大きくなるにつれて安全性の確保が難しくなり、大きな地震力に対し剛な構造で抵抗させるためには、非常に大きな剛性が必要となり経済性が損なわれるという問題がある。
従来、表面材と補強材はねじで結合する場合が多いが、局所応力が生じやすいため、例えば特許文献3のように壁面内に溝を設け,補強材を架橋させたりしている。しかし、架橋するには十分な長さが必要で、先端が固定されていないため抜ける恐れがあった。
本発明は、上述のような課題の解決を図ったものであり、経済性に優れ、かつ有害な外力、特に大きな地震力に対する安定性を向上させることのできる耐震補強土構造物を提供することを目的としている。
上記の課題を解決するため、本発明では、表面材を複数積み重ね、その背面部に盛土を充填するとともに、盛土内に補強材を複数埋設してなる補強土構造物において、前記補強材は前記表面材に対し、表面材に設けた溝部または孔部に挿入して連結されており、前記表面材と補強材の連結部を、表面材に対し固定される固定部と、表面材に対し補強材長手方向の限定された範囲内で前後方向または左右方向に可動である非固定部とで構成し、前記固定部を硬化材による固定手段または機械的な固定手段の何れかにより、または両者の併用により固定してあることを特徴とする。
表面材は、基本的には、例えば特許文献1〜3に示されるような従来の補強土構造物で用いられているもの同様の各種形状のものを用いることができ、無筋コンクリート製、または鉄筋や補強繊維などで補強された補強コンクリート製で、そのままでも安定して自立できる形状のものが好ましい。
補強材も、従来の補強土構造物で用いられているものと同様の各種形状のものを用いることができ、例えば丸鋼や異形棒鋼などの鉄筋などを利用することができる。
表面材と補強材の連結は、上端面に凹部を有する表面材を用い、屈曲させた補強材の端部をその凹部内に配する場合に限らず、例えば、表面材の背面側から設けた連結孔に補強材を挿入し、その先端部のみを固化材等で固定することで、固定部と非固定部を形成させることもできる。
固定部で補強材の抜け出しを抑えつつ、非固定部UFがあることで補強材のある程度の動きを許容し、非常に大きな地震があった場合などにも耐震補強土構造物が一気に崩壊するのを防止することができる。
固定部については、グラウト材などの固化材や接着剤などを用いて固着あるいは接着させるなどの硬化材による固定手段を用いる場合、表面材に形成した溝部あるいは孔部に対し、嵌合あるいは係合したり、あるいは別途、固定用金物等を用いて固定するなど機械的な固定手段を用いる場合、さらにはそれらを併用する場合がある。
固定部における補強材の固定には、例えば、一端に前記補強材の端部が挿入される挿通孔を有し、表面材の溝部または孔部の一部に固定される筒状部と、筒状部内で補強材の端部を把持する外径が前記挿通孔の径より大きい把持部材とを有し、筒状部内に把持部材が軸方向に移動可能な余裕空間が形成された支持装置などを用いることもできる。
その場合、支持装置内の余裕空間においても補強材の端部の移動が許容されることになり、非固定部による緩衝作用とともに、2段の緩衝機能を持たせることができる。
また、補強材の非固定部については、例えば表面材の上面に形成され、補強材の直径に比べ幅および深さが大きい連結溝内での補強材の挙動に対し、補強材の少なくとも一部を弾性材質の被覆材(後述するローリングパイプ等)で被覆することで、緩衝作用により損傷を防ぐとともに擁壁構造物の弾性挙動にも寄与させることができる。
表面材に関しては、上端部に溝部としての凹部を有し、補強材の端部がその凹部内に配され、固定部を硬化材による固定手段または機械的な固定手段の何れかにより、または両者の併用により固定して連結される構造とすれば、補強材による架橋効果を得つつ、固定部において補強材の抜け出しが防止され、かつ非固定部の存在による緩衝効果が得られる。
また、本発明の耐震補強土構造物において、盛土内に敷設された補強材の前記表面材側と反対側の端部は、盛土中の支圧材(アンカー)、あるいは地山に打設した補強材と連結することもできる。
さらに、補強材の前後方向または左右方向の動きに対し、補強材の一部に、スプリングその他による弾性印加部を介在させることも擁壁構造物の弾性挙動に寄与し、地震等による急激な荷重に対し緩衝作用をさせつつ、所定限界以上の変形を制限するようにすることで、基本的な構造的安定性を保つ機能を向上させることができる。
以上の耐震補強土構造物においては、必要に応じ、壁面を構成する表面材どうしを結合してもよい。
本発明の補強土構造物では、土中に敷設した補強材で安定させているため、壁面を形成する表面材どうしは独立して挙動することになるが、大きな変動が生じた場合には、壁面が抜け落ちる危険性が考えられる。そのため、表面材間に凹凸を設けるか、もしくはエポキシ樹脂等の接着剤により壁面間を結合して抜け落ちを防止することが考えられる。
しかし抜け落ちを防止した構造では、表面材間のたわみ効果がなくなるため、壁面の微小変位により壁面全体が強制変位をすることがある。そのとき、補強材には微小変位に耐え得る強度を持つとともに、変位に対して順応できることが要求される。
このようなことから、本発明の一形態としては、少なくとも上部の一部分の表面材どうしを結合してあることを特徴とする。
図52は、鉛直方向のプレートアンカーの引抜き抵抗と変位との関係を示す既知のグラフである。この場合のプレートアンカーは、本発明における盛土中に埋設された補強材と盛土中の支圧板に対応するものである。ただし、図は水平方向ではなく鉛直方向のアンカーの場合である。
図に示されるように浅層アンカーでは引抜き抵抗にピークがあらわれ、引き抜きに対する抵抗が失われて抜け出しの恐れがあるのに対し、深層アンカーでは変曲点Aに達し抜け出しが生じない。
図53は、補強土構造物における支圧板を備えた水平方向の補強材(アンカー)に引張力が作用したときの挙動を調べるために、発明者らが過去に行った引抜き実験の結果を示したもので、(a)が浅層アンカーの場合、(b)が深層アンカーの場合である。
この実験では、透明ガラスの薄いボックス(250×300×25mm)を作り、その中に、図に示すように、棒(補強材のモデル)につけた30×25×5mmのパネル(支圧板のモデル)を設置し、砂を15〜20mm程度入れて締め固め、赤いチョークの粉で層の区別をつけ、これを繰り返して150mmの高さの引抜き挙動実験モデルを作った。
このパネルを引き抜き、周辺の砂の挙動を観察することにより、引抜き抵抗力がどのようなメカニズムで作用するかを調べた。
実験は引抜き量10mmおよび20mmについて行ったが、図53には視覚的に分かりやすい引抜き量20mmの場合を示す。(a)が表層部のモデルで、(b)は深層部の土圧に相当する載荷を行った深層部のモデルである。
(a) 表層部(無載荷状態)
表層部においてはクーロン土圧の考え方と同じようにすべり面が発生し、パネルが図53(a)の斜線部分の三角形状の砂を押し上げる。
(b) 深層部(載荷状態)
深層部では表層部のようにはっきりしたすべり面が発生しなかった。パネルが引かれ、パネル前面の砂が圧縮され、逆にパネル工法は疎になるため、砂は工法に巻き込まれるように挙動した。この場合は、パネル前面には動かない斜線部分のくさび状の砂とその周辺の砂の間にせん断抵抗が働き、引抜き抵抗力になると考えられる。
このように、補強土構造物の上部では、上載荷重が小さく補強材の抵抗力が十分に発揮されない恐れがあるため、転倒に伴う抜け落ち防止として、少なくとも上部の表面材どうしを結合させることで、大きな変動が生じたときの補強土構造物の安定性を高めることができる。
上部の定義としては、例えば、支圧板一辺の長さBに対して、壁高Hとの関係がH<8Bとなる範囲を設定することができる。H<8Bでは、浅層アンカーとして大変形時に破壊面が表面に露出する恐れがあるが、H>8Bとなる深層アンカーでは、すべり面の範囲がアンカーパネル近辺に限定される。
本発明の耐震補強土構造物では、表面材に定着される補強材の抜け出しを固定部で抑えつつ、非固定部があることで補強材のある程度の動きを許容し、非常に大きな地震があった場合などにも耐震補強土構造物が一気に崩壊するのを防止することができる。
また、従来の補強土構造物に比べ、結合強度が増し、地震力などが作用したときに、補強材の定着部が抜け出して外れてしまうのを防止し、補強土構造物の安全性を保つことができる。また、補強材の定着長を短くすることができる。
すなわち、補強土構造物にある程度の変形を許容しつつ、緩衝機能を持たせているため、地震時などに構造体に過大な応力が発生するのを防止しつつ、地震エネルギーを吸収することができる。
また、仮に設計荷重を超える非常に大きな地震力が作用した場合でも、所定の範囲での補強土構造物の変形を許容し、構造物が一気に崩壊すること防ぐことができる。
以下、本発明を図示した実施例に基づいて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
図6、図7は、本発明の実施例1を示したもので、図6は概略平面図、図7はその要部の詳細を示す断面図である。
この例では、多段に積層され補強土構造物の表面を構成するコンクリート製の表面材1の上面に連結溝1dが形成されており、背面側に充填し転圧される盛土(図示省略、従来例としての図1参照)中に埋設される補強材3の定着部3aを連結溝1d内に嵌め込んでいる。
実施例1における補強材3は、異形棒鋼などの鉄筋の端部をL字状に折曲させて定着部3aとし、その定着部3aを横方向に隣接する表面材1の連結溝1dに跨るように配置している。
定着部3aの先端部には、支持装置10としての金具が取り付けられており、この支持装置10は連結溝1dに連続して形成された拡幅部1e内に嵌め込んで固定されている(固定部F)。固定部F以外の部分は非固定部UFとしてある程度の可動性を有している。
支持装置10は、図7に示すように、筒状部11とその内側に収納されるコーン状の楔部12等からなる。
筒状部11は、前部11aと後部11bとが、ねじ接合部11cで分離可能になっており、後部11bを外した状態で、前部11aに形成された挿通孔11eから補強材3の端部を挿入し、補強材3の端部に楔部12を固定して後部11bを取り付けるようになっている。
補強土構造物に非常に大きな外力が作用した場合、従来の構造では、補強材3の抜け出す恐れがあるのに対し、本発明の場合補強材3の定着部3aが納まる連結溝1dの溝幅より幅の広い支持装置10で確実に支持していることで、補強材3の抜け出しおよびそれに伴う補強土構造物の崩壊を防止することができる。
図8、図9は、それぞれ実施例1の応用例を示したものである。
図6では補強材3の端部をL字状に折曲させた定着部3aを支持装置10で支持しているのに対し図8の例では補強材3の端部を折曲させずにそのまま支持装置10で支持し、図9の例では補強材3の端部をT字状とし、その両端を定着部3aとして、支持装置10で支持している。
図10、図11は、本発明の実施例2を示したもので、図10は概略平面図、図11はその要部の詳細を示す断面図である。
この例では、多段に積層され補強土構造物の表面を構成するコンクリート製の表面材1の上面に連結溝1dが形成されており、背面側に充填し転圧される盛土中に埋設される補強材3の定着部3aを連結溝1d内に嵌め込んでいる。
実施例2における補強材3は、異形棒鋼などの鉄筋の端部をL字状に折曲させて定着部3aとし、その定着部3aを横方向に隣接する複数の表面材1の連結溝1dに跨るように配置している。
定着部3aの先端部には、弾性支持装置10Eとしての金具が取り付けられており、この弾性支持装置10Eは連結溝1dに連続して形成された拡幅部1e内に嵌め込んで固定されている(固定部F)。固定部F以外の部分は非固定部UFとしてある程度の可動性を有している。
弾性支持装置10Eは、図11に示すように、筒状部11とその内側に収納されるコーン状の楔部12、楔部12の表面を被覆する合成ゴム13、楔部12を軸方向に付勢する(弾性支持する)コイルバネ14からなる。
筒状部11は、前部11aと後部11bとが、ねじ接合部11cで分離可能になっており、後部11bを取り外した状態で、前部11aに形成された挿通孔11dから補強材3の端部を挿入し、補強材3の端部に楔部12を固定し、コイルばね14を設置して後部11bを取り付けるようになっている。
弾性支持装置10Eを組立てた状態において、楔部12のコイルばね14側には、楔部12の移動を許容する余裕空間11eが形成されているが、常時はコイルばね14の付勢力により楔部12が挿通孔11d側へ押圧されている。このとき、弾性体としての合成ゴム13はコイルばね14と逆向きの付勢力(弾性支持力)を与えている。
地震時に補強土構造物に地震力が作用した場合、剛に近い支持構造では、表面材や盛土、補強材に作用する応力が構造的な限界を超えたときに、表面材の損壊や、連結部の破断などにより一気に崩壊する恐れがあるのに対し、本発明の場合には補強材3を弾性支持装置10Eで弾性的に支持していることで、緩衝作用とエネルギーの吸収作用が発揮される。
また所定の範囲での補強材3の変動(変位・振動)を許容しているため、仮に部分的な損壊等が生じた場合でも、補強土構造物が一気に崩壊することが防げる。
実施例2の弾性支持装置10Eの作用について説明すると、筒状部11内に補強材3の端部を把持する楔部12が収納され、筒状部11の余裕空間11e内での軸方向の移動を許容しつつ、軸方向の移動に対し弾性体が抵抗する構造となっており、筒状部11内への土砂等の侵入が阻止されることで、補強土構造物の構築後も安定して機能させることができる。
また、楔部12部材を、挿通孔11d側にすぼまるコーン形状とすることで、筒状部11から補強材3を引き抜こうとする引抜力に対し、コーン形状のテーパー部分で抵抗させることができ、地震時などに大きな地震力が作用したときには、コーン形状の表面部分を被覆する合成ゴム13などの弾性材料が潰れる形で弾性変形することで、緩衝材としての機能を発揮する。
一方、反対側においては、常時はコイルばね14が楔部材を挿通孔11dに向けて付勢(弾性支持)しており、地震時はコイルばね14が伸縮しながら緩衝機能を発揮する。
なお、本発明で用いることができる弾性支持装置一般について言えば、表面材1に固定された状態で、補強材3の端部(定着部3a)を弾性的に支持できるものであればよく、通常は定着用の金具とばねあるいはゴムなどの弾性材料との組合せによって構成されるが、材質や形態は特に限定されない。
この場合、支持装置で補強材の端部を固定するのではなく、弾性的に支持し、その弾性の範囲で軸方向の変動(軸方向前後への変位、振動)を許容することで、補強土構造物に地震力などが作用したときに、補強材の定着部に過大な応力が発生するのを防止しつつ、地震エネルギーの一部を吸収し、補強土構造物全体としての安全性を保つことができる。
補強土構造物を構成する全ての補強材について、弾性支持装置で弾性的に支持する必要はなく、実施例1のような弾性支持機能を有さない支持装置、あるいは従来の定着構造と併用する形で分散配置することで、支持装置に要する費用を節減することができる。
図12および図13は、本発明の実施例3を示したもので、図12は概略平面図、図13はその要部の詳細を示す断面図である。
実施例3における補強材3は、異形棒鋼などの鉄筋の端部をT字状に接続して定着部3aとし、その定着部3aを横方向に隣接する表面材1の連結溝1dに跨るように配置している。
この例では、弾性支持装置として、実施例2で用いた弾性支持装置10Eを2つ突き合わせてカップラー状とした弾性支持装置20Eを用い、端部をT字状とした2本の補強材3を1つの弾性支持装置20Eで定着させている。
その他の基本的な構成や作用は実施例2の場合と同様である。
図14および図15は、本発明の実施例4を示したもので、図14は概略平面図、図15はその要部の詳細を示す断面図である。
実施例4では、補強材3を金具等の固定装置でなく、グラウト材7などの固化材で固定し、固定部Fとしている。固定部F以外の部分は非固定部UFとしてある程度の可動性を持たせている。
この場合も、補強土構造物に非常に大きな外力が作用した場合に、固定部Fで補強材3の抜け出しを抑えつつ、非固定部UFがあることである程度の動きを許容し、一気に崩壊するのを防止することができる。
なお、実施例4では、図15に示すように、PC鋼材などからなる補強材3の外周を合成ゴム製の被覆材8で被覆し、緩衝機能を持たせている。
図16および図17は、本発明の実施例5を示したもので、図16は概略平面図、図17は概略背面図である。
実施例1〜4では、補強材3の定着部3aを表面材1の上面に形成された連結溝1dとしての凹部内に嵌め込んでいるのに対し、実施例5では補強材3の端部を表面材1の内部に向かう連結孔1mに差し込み、その先端部をグラウト材7などの固化材で固定して固定部Fとし、それ以外の部分を非固定部(可動部)UFとしている。
図18以下に示されるように、本実施例は前述の固定部Fの具体的実施例として、端部に長手方向に延びる少なくとも1つの挿入孔102が形成された補強材3と、補強材3の端部外側に嵌められたグリップ部材120と、グリップ部材120とともに補強材3の端部を圧着できるように補強材3の挿入孔102へ挿入される少なくとも1つの芯材110を含んで構成される。
すなわち、グリップ部材120と芯材110は補強材3より相対的に高強度(高結体)であり、グリップ部材120と芯材110が補強材3の内外側から補強材3を圧着することができる。
従って、補強材3に対する圧着力が増大するように、補強材3が長手方向に方向性を持っているが、補強材3のスリップが防止されて、それによって補強材3の施工性が 顕著に向上されるという効果を得ることができる。
このとき、芯材110は補強材3の方向性に起因するスリップの問題をより確実に防止できるように、無方向性または多方向性または補強材3と方向が相違する固化体などスリップを防止できるものであればどのようなものでも構わないが、特に建設、土木分野で補強筋として多用されている鉄筋によりスリップを効果的に防止することができる。
一方、補強材3の挿入孔102は、図18〜図28に示されるように、補強材3の中心部に1つ形成するのでもよいが、図29に示されるように、必要に応じて補強材3に2以上形成することもできる。
補強材3の挿入孔102と芯材110は、図18〜図20、図29に示されるように長手方向に向かって直径が一定の直線形に形成されることができ、その他図21〜図26に示されるように挿入孔102と芯材110の少なくともいずれか1つが凹凸部を有するように形成させることができる。
後者の場合、補強材3の挿入孔102と芯材110の内の芯材110だけその外側面に少なくとも1つの凹凸部(以下、説明を簡単にするため、「芯材側凹凸部132」とする)が形成されることができる。このとき、芯材側凹凸部132は突出部でだけ構成することもでき、溝部でだけ構成することもでき、突出部と溝部の組合せによって構成することもできる。
後者の他の実施例として、図24に図示されるように、補強材3の挿入孔102だけ凹凸部(以下、説明を簡単にするため補強材側凹凸部102Aとする)を有するように形成させることができる。このときにも補強材側凹凸部102Aも、芯材側凹凸部132と同様、1または2以上の突出部または溝部、または突出部と溝部の組合せによって構成することができる。
後者のさらに他の実施例として、図25および図26に図示されるように、補強材3と芯材110が両方とも凹凸部を有するように形成されることができる。このとき、補強材3と芯材110を互いに容易に恭子に結合するため、芯材110の少なくとも一部はねじ構造を取り入れたねじ部134を構成し、補強材3の挿入孔102または芯材110のねじ部134と対応するねじ部102Bが形成されることで、補強材3と芯材110はお互いにねじ結合されることができる。
これと同様、補強材3の挿入孔102と芯材110の内、少なくともいずれか一方が凹凸部を有するように形成れれば、次のような効果をさらに得ることができる。
まず、凹凸部によって補強材3と芯材110間の摩擦応力はもちろん、補強材3とグリップ部材120間の摩擦応力が大きくなることで、補強材3に対する圧着力がさらに増大されるため、補強材3の施工性がさらに向上する。また、凹凸部が長手方向に係合顎の役割をすることで、補強材3のスリップがより確実に防止され、補強材3と芯材110の結合力が向上する。
また、図27に示されるように、補強材3の挿入孔102は、長手方向にその直径が漸進的に変化するテーパー(taper)構造とし、芯材110は直径が一定の直線形構造としてもよい。もちろん、図27に示されるものと反対に、図示しないが補強材3の挿入孔102を直線形構造とし、芯材110をテーパー形状としてもよい。
また、図28に示されるように、補強材3の挿入孔102および芯材110の両法ともテーパー形状としてもよい。このとき、図示したように、補強材3の挿入孔102は長手方向にその端部から内側へ行くにしたがって、直径が小さくなるように形成されるとともに、これに対応して芯材110も形成されることで、グリップ部材120が補強材3の端部側へ抜け出すことをより効果的に防止することができるといった点でより望ましい。
図27および図28に示されるような実施例によれば、テーパーによる楔作用によって補強材3と芯材110をお互いに強固に結合させることができ、テーパーによるグリップ部材120に対する係止作用により、グリップ部材120の長手方向のスリップをより効果的に防止でき、補強材3に対する圧着力が増大する。
一方、グリップ部材120は補強材3の継ぎ足し、緊張力の付与等により圧着することができれば、どんな構造でも構わず、図18〜図20に示されるように、補強材3の外側に嵌めて外側面にねじ結合のためのねじ部が形成されたウェッジ(Wedge)122と、ウェッジ122の外側にねじ結合されるナット124を含めることができる。
図30〜図34に示されるように、本発明による耐震補強土構造物の実施例7は基本的に、前述の表面材1の上面に左右方向および前後方向に連結溝1dが形成され、連結溝1dは底面が湾曲した構造を有するように形成されるとともに、連結溝1dの内部の幅および深さが補強材3の直径に比べ大きいことを特徴とする。
ここで、表面材1の連結溝1dは底面が湾曲した構造(例えば、U字形断面構造)を有するように形成されるとともに、連結溝1dの内部の幅および深さが補強材3の直径に比べ大きいことが特徴である。
すなわち、図32に図示されるように、地震による縦方向荷重が加わった場合、幅および深さが大きい連結溝1d内部で補強材3がある程度振動可能であるため、このような構造が多数積層され全体的に弾性挙動が可能になるものである。
従来の補強土構造物の場合には、背後土砂の土圧に対する設計荷重以上の地震荷重が加わると、そのまま降伏するしかなかったのに比べ、本発明による補強土構造物は弾性挙動による緩衝作用により、ある程度の地震荷重が加わっても擁壁構造物が降伏しないという効果がある。
また、非常に大きな地震荷重によって構造物の破壊を免れることができない場合であったとしても、緩衝作用によって、構造物の急激な破壊(脆性破壊)を回避することで、周囲の人に退避する時間を十分に与えることができるという長所がある(延性破壊)。
表面材1の連結溝1d内部で補強材3が動くとき、補強材3外面と連結溝1d内面との間の摩擦によって表面材1または補強材3に損傷が発生し得る。これを防止するためには図33に示すように補強材3を保護するために、補強材3の外周がローリングパイプ210によって覆われる構造をとることが望ましい。
これは図34に示されるように、表面材1連結溝1d内部で補強材3が動くとき、回転しながら補強材3とともに動くことで、上のような表面材1または補強材3の損傷を確実に防止することができるという効果がある。
さらには、ローリングパイプ210が弾性材質によって形成される場合、それ自身の弾性力および弾性復元力によって緩衝作用が可能であり、擁壁構造物の弾性挙動にさらに寄与することができる。
図30〜図34の実施例は、表面材1の連結溝1dがT字形構造をなし、補強材3は左右方向に形成された定着部3aおよび前後方向に形成された延長部3bによるL字形構造をなす場合を図示したものであり、その他補強材3の前端がT字形またはコ字形構造等をなしても構わない。
ローリングパイプ210は補強材3の定着部3aに結合され表面材1の連結溝1dに挿入され、上述のような作用を十分に遂行することができ、さらにはローリングパイプ210が補強材3の延長部3bに結合される場合、表面材1または補強材3の左右方向の挙動に対しても弾性を付与することができるといった長所が追加される。
図35〜図40に示されるように、本実施例による耐震補強土構造物は、基本的に、前述の表面材1が複数層に築造され、補強材3は複数層の表面材1の内の一部の層1Aを後方に支持するように設置され、複数層の表面材1中の他の一部の層1Bで上下方向に隣り合う表面材1相互の接触部には相互の振動を許容する一方、所定限界以上の変形を制限するように形成された振動許容部300が形成されていることを特徴とする。
すなわち、表面材1の築造構造における一部の層1Aは鋼材、ジオグリッドのような補強材3によって支持される構造をなすようにして、他の一部の層1Bは補強材3とは関係なく振動許容部300によって所定限界以上変形を制限する範囲で、相互の振動を許容するようにしたものである。
従って、一般的な荷重下では補強材3による剛性構造によって構造的安定性をなす一方、地震荷重が加わる場合には上記振動許容部300による緩衝作用を付加するようにして、全体的に弾性挙動が可能なようにしたものである。
従来の補強土構造物の場合には、背後土砂の土圧についての設計荷重以上の地震荷重が加わると、そのまま降伏するしかなかったのに比べ、本発明による補強土構造物は上記緩衝作用によってある程度の地震荷重が加わっても擁壁構造物が降伏しないといった効果がある。
また、非常に大きな地震荷重によって構造物の破壊を免れることができない場合であっても、上述の緩衝作用によって、構造物の急激な破壊(脆性破壊)を回避することで、周囲の人に退避する時間を十分に与えることができるという長所がある(延性破壊)。
補強材3は基本的に本発明による補強土構造物の骨格をなす構成であるため、表面材1から抜け出さないように堅固な構造をなすことが必要である。
そのために、表面材1の上面または底面には連結溝1dが形成され、補強材3はその連結溝1dに挿入されて固定され、連結溝1dが形成された表面材1の上面または底面はその下側の表面材1の底面またはその上側のブロックの上面と接着手段301によって結合することで、鋼製補強材3の抜け出しが防止される構造をとることが望ましい(図36、図37)。
補強材3が表面材1の連結溝1dに挿入され、固定される構造は多様な方法によって具現化することができ、表面材1の連結溝1dはT字形構造を含み、鋼製補強材3の前端はT字形、L字形またはコ字形構造によって形成されるが、上記T字形連結溝1dに挿入されるのが最も無難な構造である。
連結溝1dに挿入された補強材3の抜け出しを防止するため、その連結溝1dがなす面と他のブロックの面を接着する接着手段301はいろいろな方法によって具現化することができるが、エポキシ樹脂等の接着剤を塗布する方式をとるのが施工の便宜および構造的安定性の面で最も望ましい。
振動許容部300は地震荷重の発生時、表面材1相互のある程度の振動を許容し、擁壁構造物全体に対して弾性を付与する役割をするものとして、多様な方法によって具現化することができる。
まず、上述の振動許容部300は表面材1の上面または底面に、隣接する表面材1との衝撃を緩衝するように形成された緩衝部310を含む構成とすることができるが、これは次のような効果を得るようにする。
1つ目は、上下方向の衝撃の衝撃に対し緩衝作用をするので、これによる擁壁の損傷破壊を防止できるようにする。
2つ目は、緩衝部310とこれに面接触する表面材1の面との間で、摩擦力によって相互の縦方向の動きが拘束されるが、地震のような大きな縦方向荷重の発生時には、ある程度の相互の縦方向の動きを許容するため、擁壁構造物全体の急激な破壊(脆性破壊)を防止できるようにする。
このような緩衝部310は緩衝剤の塗布によって形成することもでき、ゴム材質等による弾性パッド311を表面材1の上面または底面に結合することで形成することもできる。
擁壁の表面を形成する表面材1には上述した補強材3が挿入支持されるように連結溝1dが形成されることが一般的であるが、上述の弾性パッド311の下部および/または上部にこのような連結溝1dに挿入されるように、突出部312が形成された構造を採用する場合、弾性パッド311および突出部312の複合構造が表面材1の連結溝1dによって支持されつつ弾性力および弾性復元力を発揮することで、さらに安定的な緩衝効果を得ることができる(図38、図39)。
このような突出部312は、弾性パッド311と同じ弾性材質によって形成され、表面材1の連結溝1dに圧縮されて挿入する方式によって固定されことが、上述の緩衝効果のためにはさらに望ましい。
一方、振動許容部300は表面材1の上面および底面にそれぞれ形成された凸部320と凹部330を含み、凹部330の内部の幅は上記凸部320の外部の幅に比べて大きい構成によって具現化することもできる(図40)。
この場合、上記凸部320と凹部330の間の余裕空間によって上述したような緩衝効果を得ることができる。そのためには、凸部320および凹部330は台形断面形状とすることが望ましい。
図41以下に示されるように、本実施例は基本的に、上述の補強材3の前後方向または左右方向の動きに対し、弾性を付与する一方、所定限界以上の変形を制限するように、上記補強材3に設置された弾性印加部400をさらに含むことを特徴とする。
すなわち、補強材3に対し弾性印加部400を設置し、補強材3の前後方向の動きに対し弾性を付与することで、地震による縦方向荷重に対し、緩衝作用をするようにする一方、所定限界以上の変形を制限するようにすることで、基本的な構造的安定性を持たせるようにしたものである。
従って、従来の補強土構造物の場合には、背後土砂の土圧に関する設計荷重以上の地震荷重が加わったら、そのまま降伏するしかなかったのに比べ、本発明による補強土構造物は上述の緩衝作用によってある程度の地震荷重が加わっても擁壁構造物が降伏しないという効果がある。
また、非常に大きな地震荷重によって構造物の破壊を免れることができない場合であっても、上述の弾性印加部400の作用によって、構造物の急激な破壊(脆性破壊)を回避することで、周囲の人に退避する時間を十分に与えることができるという長所がある(延性破壊)。
上術の表面材1とは、補強土構造物の露出面を形成する部材を言い、築造構造を構成する補強土擁壁の表面ブロック、一般擁壁の壁体等を全て総称する意味である。
以下、上記弾性印加部400の具体的実施例について説明する。
1つ目として、弾性印加部400を補強材3の延長部3bの中央部領域に設置することができる(図41、図44)。
すなわち、補強材3の延長部3bは前端が上記表面材1に連結される前方延長部31b、後端がアンカー500に連結される後方延長部32bを含む構成をなし、弾性印加部400は前方延長部31bの後端と後方延長部32bの前端との間の領域に設置された中央領域弾性印加部410を含む構造がそれである。
図44に示されるように、中央領域弾性印加部410として強いスプリング構造等を適用する場合、前方延長部31bと後方延長部32bの前後方向の動きに対し弾性を付与する一方、所定限界以上の変形を制限することができる(スプリングの圧縮および引張による長さ変形には限界があるため)。
これは補強材3の前端の表面材1および後端のアンカー500との結合構造と関係なく、従来の構造で補強材3を交替するだけで耐震効果を得ることができるという長所がある。
図45は中央領域弾性印加部410として、後方延長部32bの前端が挿入されるように、前方延長部31bの後端に形成された後方補強材挿入部411、前方延長部31bの後端が挿入されるように、後方延長部32bの前端に形成された前方補強材挿入部412、および後方補強材挿入部411と前方補強材挿入部412との間に弾性を付与する一方、所定限界以上の変形を制限するように設置された中央領域弾性部材413を含む実施例を図示したものである。
ここで、後方補強材挿入部411および前方補強材挿入部412は、それぞれ前方延長部31bおよび後方延長部32bが相互に挿入されるとともに、中央領域弾性部材413が設置されることができる構造であればどのようなものでも構わない。
図45では後方補強材挿入部411および前方補強材挿入部412の構造として、前方延長部31bおよび後方延長部32bの長手方向について実質的に直角方向に形成されたリング形構造をなす実施例を図示している。
図46は補強材3の延長部3bが可撓性材質(鋼撚線等)によって形成された場合の実施例として、上記中央領域弾性印加部410は前方延長部31bの後端に形成された前方折曲部414と、後方延長部32bの後端に形成された後方折曲部415と、前方折曲部414および後方折曲部415のオーバーラップ領域に挿入されたオーバーラップ領域弾性部材416とを含む構造を図示したものである。
すなわち、補強材3の延長部3bが鋼撚線の端部に折曲部が形成された場合であって、その折曲部414、415のオーバーラップによって形成されたオーバーラップ領域に弾性部材416を設置することで、前方延長部31bおよび後方延長部32bが、それぞれ前方および後方に引張力を受けるときに、オーバーラップ領域弾性部材416の弾性復元力によってこれに抵抗する一方、その弾性部材416の弾性力によって緩衝作用が働くようにしたものである。
この場合、オーバーラップ領域弾性部材416は、図46に示されるような外周が弾性変形可能な円筒形構造等を採用して構成することができる。以上、補強材3の延長部3bについて説明したが、このような構造は補強材の定着部3aについてもそのまま適用することができる。
すなわち、定着部3aは相対的に左側に設置される左側定着部31aと、相対的に右側に設置される右側定着部32aとを含み、弾性印加部400は左側定着部31aの右側端部と右側定着部32aの左側端部との間の領域に設置された中央領域弾性印加部410を含む構造がそれである(図42、図43)。
ここで、定着部3aは複数の表面材1の内、左右方向に隣接する表面材1相互を支持するように設置される構造として、表面材1に形成された支持溝110に挿入された構造等を採用することができ、延長部3bと一体に形成することもでき(図42)、別個に設置することもできる(図43)。
定着部3aが延長部3bと別個に設置される場合には、延長部3bの前端に設置されたリング部材501等に挿入される構成を採用することになる(図43)。
また、上述した図45〜図47の実施例も定着部3aについてそのまま適用することができる。
2つ目として、弾性印加部400を表面材1と結合する補強材3の前端部領域に形成された前端部領域弾性印加部420によって具現化することができる(図48、図49)。
すなわち、図49に示されるように、前端部領域弾性印加部420は、表面材1に形成された連結溝1dに挿入される前端部補強材固定部材421と、補強材3の前端を固定する前端部補強材グリップ部材422と、前端部補強材グリップ部材422を内部に収容した状態で、前端部補強材固定部材421の後端に結合する前端部補強材離脱防止部材423と、前端部補強材固定部材421と前端部補強材グリップ部材422との間に弾性を印加するように設置された前端部弾性部材424とを含む構成とすることができる。
この場合、前端部補強材グリップ部材422は補強材3の前端を固定した状態で前端部補強材固定部材421と前端部補強材離脱防止部材423との間の収容空間に収容され抜け出しが防止され、前端部補強材固定部材421と前端部補強材グリップ部材422との間に設置された前端部弾性部材424によって補強材3の前後方向の弾性的な動きが可能となる。
前端部補強材固定部材421は表面材1に形成された連結溝1dに挿入され、補強材3の前端を支持する構造であればどのようなものでも可能であり、図48、図49は前端部補強材固定部材421および連結溝1dがT形構造を含む実施例を図示したものである。
この場合、前端部補強材固定部材421の頭部に左右方向補強材301の挿入溝421aを形成し、その挿入溝421aに左右方向補強材301を挿入する一体型構造を構成することができるという長所がある。
3つ目として、弾性印加部400をアンカー500と結合する補強材3の後端部領域に形成された後端部領域弾性印加部430を含む構造によって具現化することができる(図50、図51)。
すなわち、図51に図示されるように、後端部領域弾性印加部430は、アンカー500の後面によって支持される後端部補強材固定部材431と、補強材3の後端を固定する後端部補強材グリップ部材432と、後端部補強材グリップ部材432を内部に収容した状態で、後端部補強材固定部材431の後端に結合する後端部補強材離脱防止部材433と、後端部補強材離脱防止部材433と後端部補強材グリップ部材432との間に弾性を印加するように設置された後端部弾性部材434とを含む構成を採用することができる。
この場合、後端部補強材グリップ部材432は、補強材3の後端を固定した状態で、後端部補強材固定部材431と後端部補強材離脱防止部材433との間の収容空間に収容され抜け出しが防止され、後端部補強材離脱防止部材433と後端部補強材グリップ部材432との間に設置された後端部弾性部材434によって補強材3の前後方向の弾性的な動きを可能とする。
以上の3種類の実施例(中央領域弾性印加部410、前端部領域弾性印加部420、後端部領域弾性印加部430)は相互独立的であり、これらの内の1つだけを擁壁に適用することでも本発明の目的を十分に達成することができるものであるが、これらの内の2つまたは3つの組合せによって補強構造を具現する場合、さらに優れた効果を期待することができる。
特に、前端部領域弾性印加部420と後端部領域弾性印加部430は、お互いに大同小異の材質および構造によって具現することができるので、同時に適用することが施工の便宜および構造的安定性の面でさらに望ましい。
以上は、本発明によって具現される好ましい実施例について説明したものに過ぎず、本発明の範囲は以上の実施例に限定解釈されてはならないものであり、上に説明した本発明の技術的思想とその根本を共通にする技術的思想は全て本発明の範囲に含まれるものである。