JP4993009B2 - A/d変換方法及び装置 - Google Patents

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本発明は、入力電圧に応じた遅延時間でパルス信号を遅延させる遅延ユニットを複数段縦続接続してなるパルス遅延回路を用いてアナログ入力信号をA/D変換するA/D変換方法及び装置に関する。
従来より、構成が簡単で高分解能のデジタル値が得られるA/D変換装置として、各種ゲート回路からなる複数の遅延ユニットをリング状に接続してなるパルス遅延回路に対して、電源電圧としてA/D変換対象となるアナログ入力信号を供給すると同時に、伝送用のパルス信号を入力することにより、パルス遅延回路内で、各遅延ユニットの遅延時間に対応した速度でパルス信号を周回させ、そのパルス信号の周回中、所定のサンプリング時間内にパルス遅延回路内でパルス信号が通過した遅延ユニットの個数をカウントすることにより、アナログ入力信号を数値データに変換するA/D変換装置が知られている(例えば、特許文献1等、参照)。
また、この種のA/D変換装置では、遅延ユニットの遅延時間をアナログ入力信号で変化させ、その時間変化を、パルス信号が通過した遅延ユニットの個数をカウントすることにより検出しているので、最終的に得られるA/D変換データは、アナログ入力信号の変化に対して1対1に変化せず、A/D変換の入出力特性は曲線になってしまう。
そこで従来より、アナログ入力信号の電圧範囲を複数の領域に分割して、各領域毎に入出力特性を直線近似し、その近似直線上の任意の座標点を理想直線上の座標点に変換する変換式を導出して、A/D変換時には、各電圧領域毎に、対応する変換式を用いてA/D変換データを補正することが提案されている(例えば、特許文献2等、参照)。
またこの特許文献2によれば、実際にA/D変換することによりM個の座標点を求め、その座標点に従って入出力特性をn次(n≦M−1)の多項式で表し、その多項式に基づき、A/D変換データを理想直線上の値に補正する変換式を求めることも提案されている。
特開平5−259907号公報 特開2004−274157号公報
しかしながら、上記提案のように、A/D変換データを補正するための変換式を求めるには、直線近似でもn次関数の近似でも、多数の基準電圧を実際にA/D変換して、各基準電圧に対応した座標点でのA/D変換データを求め、その多数のA/D変換データを用いて変換式を設定しなければならず、変換式を設定するのに時間がかかるという問題があった。
また特に、n次の多項式で変換式を求めるには、演算処理能力の高い高価な演算装置が必要となるため、コストがかかるという問題もある。
本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、入力電圧に応じた遅延時間でパルス信号を遅延させる遅延ユニットを複数段縦続接続してなるパルス遅延回路を用いてアナログ入力信号をA/D変換するA/D変換装置において、多数の基準電圧をA/D変換することにより求めた変換式を利用することなく、アナログ入力信号とA/D変換データとの関係を表す入出力特性を理想特性(直線)に設定できるようにすることを目的とする。
まず、本発明におけるA/D変換方法の前提となる技術は、基準となるオフセット電圧にアナログ入力信号を加えた第1電圧と、そのオフセット電圧からアナログ入力信号を減じた第2電圧とをそれぞれ生成し、その生成した第1電圧及び第2電圧をパルス遅延回路にそれぞれ入力することにより、符号化回路に第1電圧及び第2電圧を数値化させ、その数値化により得られた第1電圧の数値データと第2電圧の数値データとの差を、アナログ入力信号のA/D変換データとして求める、というものである。
この前提技術において、パルス遅延回路と符号化回路とで構成されるA/D変換部の入出力特性が2次関数で近似できるとすると、アナログ入力信号VのA/D変換結果DTは、次のように記述できる。
DT=f(V)=a・V2 +b・V+c
そして、A/D変換すべきアナログ入力信号をVin、オフセット電圧をVoffとすると、第1電圧V1(=Voff+Vin)のA/D変換結果DT1と、第2電圧V2(=Voff−Vin)のA/D変換結果DT2は、それぞれ、次式のようになる。
DT1=f(V1)
=a・(Voff+Vin)2 +b・(Voff+Vin)+c
DT2=f(V2)
=a・(Voff−Vin)2 +b・(Voff−Vin)+c
そして、本発明では、これら各A/D変換結果DT1、DT2の差を、最終的なA/D変換データとして求めることから、そのA/D変換データDT0(=DT1−DT2)は、 DT0=f(V1)−f(V2)
=2(2・Voff+b)・Vin
となり、2次の項がなくなり、アナログ入力信号Vinに比例した線形特性となる。
このため、上記前提技術では、A/D変換部の入出力特性のうち、2次関数で近似し得る領域内にて、アナログ入力信号をA/D変換するようにすれば、最終的に得られるA/D変換特性を、アナログ入力信号とA/D変換データとが1対1で対応する理想特性(直線)にすることができるようになり、従来のように変換式を用いて補正演算等を行うことなく、アナログ入力信号の電圧変化に比例して変化するA/D変換結果を得ることができる。
よって、上記前提技術によれば、A/D変換部の入出力特性を理想特性(直線)に補正するための変換式を設定する必要がなく、極めて簡単且つ低コストで、所望のA/D変換結果が得られるA/D変換装置を実現できる。
なお、上記前提技術によれば、A/D変換部の入出力特性のうち、2次関数で近似できない領域でアナログ入力信号をA/D変換すると、最終的に得られるA/D変換データの入出力特性を理想特性(直線)にすることはできない。
このため、より確実に理想特性を実現するには、A/D変換の中心電圧となるオフセット電圧を、A/D変換部の入出力特性を2次関数で近似できる電圧範囲内で略中心電圧となる電圧値に設定し、測定可能な電圧範囲(つまりダイナミックレンジ)を、A/D変換部の入出力特性を2次関数で近似できる電圧範囲内に設定するとよい。
一方、本発明のA/D変換方法では、請求項1に記載のように、基準となるオフセット電圧にアナログ入力信号を加えた第1電圧を生成し、その生成した第1電圧を遅延ユニットの正の電源電圧としてパルス遅延回路に入力することにより第1電圧を数値化させると共に、その第1電圧を遅延ユニットの負の電源電圧、オフセット電圧の2倍の電圧を遅延ユニットの正の電源電圧として、パルス遅延回路に入力することにより、オフセット電圧の2倍の電圧から第1電圧を減じた第2電圧を数値化させ、その数値化により得られた第1電圧の数値データと第2電圧の数値データとの差を、アナログ入力信号のA/D変換データとして求める。
つまり、本発明のA/D変換方法では、上記前提技術のように、オフセット電圧からアナログ入力信号を減じることで第2電圧を生成し、この第2電圧を、第1電圧のA/D変換時と同様にパルス遅延回路に入力するのではなく、第1電圧(Voff+Vin)を遅延ユニットの負の電源電圧、オフセット電圧の2倍の電圧(2・Voff)を遅延ユニットの正の電源電圧としてパルス遅延回路に入力することにより、パルス遅延回路への入力電圧(つまり遅延ユニットへの印加電圧)が最終的に第2電圧(2・Voff−(Voff+Vin)=Voff−Vin)となるようにして、その第2電圧を数値化させる。
よって本発明のA/D変換方法によれば、上記前提技術と同様の効果が得られるだけでなく、オフセット電圧からアナログ入力信号を減じることで第2電圧を生成する必要がないので、本発明方法を実現する際の装置構成を簡単にすることができる、という本発明特有の効果を得ることができる。
次に請求項2に記載のA/D変換方法では、アナログ入力信号として基準電圧をA/D変換することにより得られるA/D変換データを、温度補正用の基準データとして記憶しておき、その後、アナログ入力信号のA/D変換データとして得られる数値データをその基準データで除算することにより、アナログ入力信号のA/D変換データを補正する。
つまり、請求項1に記載のA/D変換方法によれば、A/D変換の入出力特性を理想特性(直線)にすることはできるものの、遅延ユニットの温度変化によって遅延時間が変化すると、A/D変換の入出力特性(直線の傾き)も温度によって変化してしまう。
そこで、請求項2に記載のA/D変換方法では、基準電圧のA/D変換結果を補正用の基準データとして記憶しておき、アナログ入力信号のA/D変換時には、得られたA/D変換データを基準データで除算することで、A/D変換データを温度補正するようにしているのである。
そして、こうした温度補正を行う場合、従来では、少なくとも2つの基準電圧に対してA/D変換を行い、その測定した2点を結ぶ直線を、そのときの温度条件化での温度補正用データとして記憶しておき、その後得られるA/D変換データを、温度補正用データを用いて真の電圧値を表すデータ値に補正するようにしているが、本発明方法によれば、A/D変換特性を理想特性(直線)にすることができ、アナログ入力信号が0Vであれば、A/D変換データも値0となる(つまりA/D変換の入出力特性が原点0を通る直線となる)ので、1つの基準電圧をA/D変換して得られる1つの基準データだけで、A/D変換データを温度補正することができるようになる。
次に、請求項3〜請求項12に記載の発明は、上述した本発明のA/D変換方法を実現するのに好適なA/D変換装置に関する発明である。
ここで、まず、請求項3に記載のA/D変換装置においては、第1電圧生成手段が、基準となるオフセット電圧にA/D変換対象となるアナログ入力信号を加えた第1電圧を生成し、第1入力手段が、その生成された第1電圧を遅延ユニットの正の電源電圧としてパルス遅延回路に入力することにより、符号化回路に第1電圧を数値化させる。
また、このA/D変換装置では、第2入力手段が、第1電圧生成手段にて生成された第1電圧を遅延ユニットの負の電源電圧、オフセット電圧の2倍の電圧を遅延ユニットの正の電源電圧、としてパルス遅延回路に入力することにより、符号化回路に第2電圧を数値化させ、減算手段が、符号化回路により数値化された第1電圧の数値データと第2電圧の数値データとの差を、最終的なA/D変換結果として演算する。
従って、このA/D変換装置によれば、上述した請求項1に記載の発明方法を実現することができ、請求項1と同様の効果を得ることができる。
なお、符号化回路は、パルス遅延回路を構成する各遅延ユニットからの出力を監視して、その出力変化から、パルス信号が通過した遅延ユニットの個数を検出するものであることから、請求項3に記載のA/D変換装置のようにパルス遅延回路への入力電圧(つまり遅延ユニットの電源電圧)を設定すると、符号化回路でパルス信号の通過を判定するためのしきい値電圧が、パルス遅延回路の各遅延ユニットから出力されるパルス信号に対応しなくなり、パルス信号が通過した遅延ユニットの個数を正確に検出できなくなることが考えられる。
このため、請求項3に記載のA/D変換装置においては、請求項4に記載のように、第1入力手段は、第1電圧を正の電源電圧として符号化回路にも入力し、第2入力手段は、第1電圧を負の電源電圧として符号化回路にも入力すると共に、オフセット電圧の2倍の電圧を正の電源電圧として符号化回路にも入力するよう構成するとよい。
なお、第1入力手段が第1電圧を正の電源電圧としてパルス遅延回路及び符号化回路に入力する場合、これら各回路の負の電源ラインは、グランド等に接地して、その電位を0Vに固定しておくことが望ましい。
また次に、請求項5に記載のA/D変換装置は、請求項3又は請求項4に記載のものに、パルス遅延回路と符号化回路とからなる2つのA/D変換部を設け、第1入力手段及び第2入力手段が、これら各A/D変換部にぞれぞれ電圧を入力することにより、第1電圧及び第2電圧をそれぞれA/D変換させる。
従って、この請求項5に記載のA/D変換装置によれば、第1電圧及び第2電圧は、それぞれ専用のA/D変換部(第1A/D変換部及び第2A/D変換部)にて同時にA/D変換されることになり、一つのA/D変換部がA/D変換を1回行うのに要する時間と略同じ時間で、アナログ入力信号のA/D変換を行うことができ、A/D変換の高速化を図ることが可能となる。
次に、請求項6に記載のA/D変換装置は、第1A/D変換部、第2A/D変換部、第1電圧生成手段、第1入力手段、第2入力手段、及び減算手段からなるA/D変換ユニットを複数備え、これら各A/D変換ユニットにて得られたA/D変換データを加算手段で加算するように構成されている。
このため、この請求項6に記載のA/D変換装置においては、請求項5に記載のA/D変換装置を一つのA/D変換ユニットで構成した場合に比べて、A/D変換データのビット数(換言すればそのデータの電圧分解能)を高めることができる。
また次に、請求項7に記載のA/D変換装置は、第1A/D変換部と第2A/D変換部との2種類のA/D変換部を備えた請求項5に記載のA/D変換装置において、これら2種類のA/D変換部を更に複数設け、複数の第1A/D変換部にて数値化された第1電圧の数値データ、及び、複数の第2A/D変換部にて数値化された第2電圧の数値データを、それぞれ加算手段にて加算し、その加算された各数値データの差を、減算手段にて演算するようにされている。
従って、この請求項7に記載のA/D変換装置によれば、単体でA/D変換装置として機能するA/D変換ユニットを複数設けた請求項6に記載のA/D変換装置と同様、A/D変換データのビット数(換言すればそのデータの電圧分解能)を高めることができる。
また、この請求項7に記載のA/D変換装置では、複数の第1A/D変換部、及び、複数の第2A/D変換部には、それぞれ、一つの電圧生成手段にて生成された共通の電圧が入力されるので、A/D変換ユニットを複数設けたA/D変換装置に比べ、装置構成を簡単にし、高分解能のA/D変換データが得られるA/D変換装置を、より低コストで実現することが可能となる。
ところで、請求項5〜請求項7に記載のA/D変換装置のように、パルス遅延回路と符号化回路とからなるA/D変換部として、第1A/D変換部と第2A/D変換部との2種類のA/D変換部を備える場合、A/D変換の際にペアとなる第1A/D変換部と第2A/D変換部とのA/D変換特性にずれがあると、最終的に得られるA/D変換データのA/D変換特性が理想特性(直線)からずれてしまう。
このため、請求項5〜請求項7に記載のA/D変換装置においては、請求項8に記載のように、第1A/D変換部と第2A/D変換部とを同一構成とし、しかも、これら各A/D変換部は、同一基板上に、パルス遅延回路同士が最も接近し、且つ、構成部品が線対称となるように組み付けるようにするとよい。
つまりこのようにすれば、A/D変換特性の理想特性からのずれの原因となる遅延ユニットの遅延時間のバラツキを抑えて、各A/D変換部でのA/D変換特性を互いに近づけることができ、各A/D変換部の特性のバラツキによって生じるA/D変換特性の非線形化を抑制して、A/D変換データの線形性を確保することができるようになる。
次に、請求項9に記載のA/D変換装置は、請求項3又は請求項4に記載のものに、パルス遅延回路に第1入力手段からの電圧を入力して符号化回路に第1電圧を数値化させるか、或いはパルス遅延回路に第2入力手段からの電圧を入力して符号化回路に第2電圧を数値化させるかを、間隔を空けて交互に切り換える入力切換手段を設け、減算手段が、符号化回路にて順次数値化される前後の数値データの差を演算することで、A/D変換データを生成するように構成される。
つまり、この請求項9に記載のA/D変換装置は、請求項3又は請求項4に記載のA/D変換装置を、パルス遅延回路と符号化回路とにより構成される一つのA/D変換部だけで構成できるようにしたものであり、A/D変換データを得るのに要する時間は、請求項5〜請求項8のA/D変換装置の略2倍になるが、A/D変換装置の構成を簡素化して、請求項3又は請求項4に記載のA/D変換装置を低コストで実現できる。
なお、請求項9に記載のA/D変換装置のように、A/D変換装置を一つのA/D変換部だけで構成するために入力切換手段を設けた場合、アナログ入力信号の最終的なA/D変換データを得るのに要する時間は、A/D変換部で要するA/D変換時間の約2倍になることから、入力切換手段がパルス遅延回路への電圧入力を切り換える間隔は、請求項10に記載のように、A/D変換対象となるアナログ入力信号の変動周期の4分の1以下の周期に設定することが望ましい。
つまり、アナログ入力信号が周期的に変動している場合、A/D変換は、その周期の2分の1の周期で実行する必要がある(サンプリング定理)ことから、請求項9に記載のA/D変換装置のように、A/D変換装置を一つのA/D変換部だけで構成するために入力切換手段を設けた場合には、この入力切換手段が電圧入力を切り換える間隔を、少なくともアナログ入力信号の変動周期の4分の1以下の周期に設定する必要があるのである。
次に、請求項11に記載のA/D変換装置は、上述した本発明(請求項3〜請求項10)のA/D変換装置に、外部からの指令に従い当該A/D変換装置に基準電圧を入力してA/D変換させる基準電圧入力手段と、この基準電圧入力手段の動作によって当該A/D変換装置が基準電圧をA/D変換した際に得られたA/D変換データを、温度補正用の基準データとしてラッチするラッチ手段とを設け、通常のアナログ入力信号のA/D変換時には、補正手段が、減算手段から出力されるA/D変換データをラッチ手段にラッチされた基準データで除算することにより、A/D変換データを補正するようにしている。
従って、この請求項11に記載のA/D変換装置によれば、請求項2に記載のA/D変換方法に則って、A/D変換データを温度補正することができるようになり、複数の基準電圧のA/D変換データを基準データとして温度補正を行う従来装置に比べて、温度補正のための装置構成を簡素化して、温度補正可能なA/D変換装置を低コストで実現できることになる。
また次に、請求項12に記載のA/D変換装置は、上述した本発明(請求項3〜請求項11)のA/D変換装置において、オフセット電圧を、パルス遅延回路と符号化回路とで実現されるA/D変換の入出力特性を2次関数で近似可能な電圧範囲内の略中心の電圧値に設定したことを特徴とする。
従って、このA/D変換装置によれば、パルス遅延回路と符号化回路とで構成されるA/D変換部の入出力特性のうち、2次関数で近似し得る領域でアナログ入力信号をA/D変換することができるようになり、最終的に得られるA/D変換データの入出力特性を、より確実に理想特性(直線)に近づけることができる。
第1参考例のA/D変換装置の構成を表すブロック図である。 A/D変換部の構成を表すブロック図である。 遅延ユニットの構成例を表す説明図である。 A/D変換部の入出力特性及び装置全体の入出力特性を表す説明図である。 2つのA/D変換部の配置例を表す説明図である。 複数のA/D変換ユニットから構成されるA/D変換装置の構成例を表す説明図である。 複数のA/D変換部を用いてA/D変換装置を構成した例を表す説明図である。 図7に示したA/D変換装置の変形例を表す説明図である。 第2参考例のA/D変換装置の構成及び動作を表す説明図である。 第2参考例のA/D変換装置の変形例を表す説明図である。 本発明が適用された実施形態のA/D変換装置の構成を表すブロック図である。 実施形態のA/D変換装置の変形例を表す説明図である。 実施形態のA/D変換装置で温度補正を行う際の構成例を表す説明図である。
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1参考例)
まず図1は本発明の前提となる第1参考例のA/D変換装置全体の構成を表す概略構成図である。
図1に示す如く、本参考例のA/D変換装置は、アナログ入力信号Vinを2系統に分離して、増幅率Kが逆符号で絶対値が等しくなるように設定された2つの増幅回路12、22でそれぞれ増幅し、加算回路14、24にて、その増幅後のアナログ入力信号Vinに、基準となるオフセット電圧Voffを加えることで、オフセット電圧Voffに増幅後のアナログ入力信号Vinを加えた第1電圧(Voff+Vin)と、オフセット電圧Voffから増幅後のアナログ入力信号Vinを減じた第2電圧(Voff−Vin)を生成するように構成されている。
またこのように生成された第1電圧(Voff+Vin)、及び、第2電圧(Voff−Vin)は、それぞれ、第1A/D変換部16、第2A/D変換部26に入力され、数値データDT1、DT2に変換される。そして、これら各数値データDT1、DT2は、減算手段としての減算器6に入力される。
減算器6は、値「−1」を乗じる乗算器4にて、第2電圧(Voff−Vin)の数値データDT2の符号を反転し、加算器5にて、符号反転後の数値データDT2と、第1電圧(Voff+Vin)の数値データDT1とを加算することで、数値データDT1から数値データDT2を減じ、その演算結果(DT1−DT2)を、アナログ入力信号VinのA/D変換データDT0として出力する。
次に、第1A/D変換部16及び第2A/D変換部26は、所謂パルス位相差符号化回路(換言すれば時間A/D変換回路:TAD)から構成されている。
すなわち、図2に示すように、これら各A/D変換部16、26には、遅延ユニットとして、一方の入力端にパルス信号PAを受けて動作する1つの否定論理積回路NANDと、反転回路としての多数(偶数個)のインバータINVとをリング状に連結してなるリングディレイライン(RDL:所謂パルス遅延回路)30が設けられている。
また、各A/D変換部16、26には、符号化回路として、このRDL30内の否定論理積回路NANDの後段に設けられたインバータINVの出力レベルの反転回数から、RDL30内でのパルス信号の周回回数をカウントして、数値データを発生するカウンタ32と、カウンタ32から出力される数値データをラッチするラッチ回路34と、RDL30を構成する遅延ユニット(即ち否定論理積回路NAND及びインバータINV)の出力を取り込み、その出力レベルからRDL30内を周回中のパルス信号を抽出して、その位置を表す信号を発生するパルスセレクタ36と、パルスセレクタ36からの出力信号に対応した数値データを発生するエンコーダ38と、ラッチ回路34からの数値データを上位ビット,エンコーダ38からの数値データを下位ビットとして入力し、下位ビットのデータと上位ビットのデータを加算することにより、パルス信号PBの周期で決まる所定時間内にパルス信号が通過した遅延ユニット(NAND、INV)の数を表す数値データDTを生成する信号処理回路39とが設けられており、外部の制御回路7からパルス信号PA及びPBを受けて動作するように構成されている。
なお、このA/D変換部16、26は、パルス位相差符号化回路或いは時間A/D変換回路(TAD)として従来より周知であり、上述した特許文献1、2等にも開示されているので、詳細な動作説明等は省略するが、パルス遅延回路としてのRDL30を構成する遅延ユニット(NAND、INV)は、図3に例示すように、Pチャネルトランジスタ(FET)とnチャネルトランジスタ(FET)とからなるCMOSインバータINV及びCMOSナンドゲートにて構成されている。
そして、これら各遅延ユニット(NAND、INV)には、正の電源ライン及び負の電源ラインが接続されており、各遅延ユニット(NAND、INV)は、電源端子VDDRに正の電源電圧を印加し、グランド端子GNDRを電源端子VDDRよりも低電位に設定することにより、これら各端子間電圧に応じた遅延時間でパルス信号PAを遅延させつつ伝送する。
そして、本参考例では、増幅回路12、22と加算回路14、24とで生成された第1電圧及び第2電圧を、各A/D変換部16、26を構成する遅延ユニット(NAND、INV)の電源端子VDDRに印加し、遅延ユニット(NAND、INV)のグランド端子GNDRは、各A/D変換部16、26を構成している他のロジック回路のグランド端子GNDLと共に、A/D変換装置のグランド(電位:0V)に接地されている。
このように構成された本参考例のA/D変換装置によれば、図4に示すように、各A/D変換部16、26におけるA/D変換特性(入出力特性)が非線形であっても、オフセット電圧Voffを、その入出力特性のうち、2次関数で近似できる領域内(より好ましくはその領域内の中心)の電圧に設定することで、減算器6で最終的に得られるA/D変換データDT0を、アナログ入力信号Vinに比例させることができる。
なお、この理由は、「課題を解決するための手段」の項で数式を挙げて詳細に説明しているので、ここでは説明を省略する。
従って、本参考例のA/D変換装置によれば、A/D変換部16、26の入出力特性を理想特性(直線)に補正するための変換式を設定する必要がなく、極めて簡単且つ低コストで、所望のA/D変換結果が得られるA/D変換装置を実現できる。
ところで、本参考例のように、第1A/D変換部16と第2A/D変換部26とを同時に動作させてアナログ入力信号VinをA/D変換する場合、これら各A/D変換部16、26のA/D変換特性にずれがあると、最終的に得られるA/D変換データDT0のA/D変換特性が理想特性(直線)からずれてしまう。
このため、第1A/D変換部16と第2A/D変換部26とは、単に同一の構成にするだけでなく、図5に例示するように、各A/D変換部16、26のA/D変換特性に最も影響を与えるRDL30を、同一基板上で最も接近させ、更に、他のロジック(パルスセレクタ36、エンコーダ38等)を、同一基板上で違いに線対称となるように配置するとよい。
つまり、各A/D変換部16、26をこのように構成すれば、A/D変換特性の理想特性からのずれの原因となる遅延ユニット(NAND、INV)の遅延時間のバラツキを抑えて、各A/D変換部16、26でのA/D変換特性を互いに近づけることができ、各A/D変換部16、26の特性のバラツキによって生じるA/D変換特性の非線形化を抑制して、A/D変換データの線形性を確保することができる。
なお、A/D変換部16、26同士の入出力特性のバラツキを抑えるためには、例えば、A/D変換部16、26に加わるオフセット電圧Voffに差をつけるようにしてもよく、そのためには、図1に点線で示すように、少なくとも一方のA/D変換部16、26に加わるオフセット電圧Voffを調整するための電圧調整回路29を、オフセット電圧Voffの入力経路に設けるようにするとよい。
一方、A/D変換の分解能を高めるためには、例えば、図6に示すように、図1に示したA/D変換装置をA/D変換ユニットとして複数(n個)用意し、各A/D変換ユニット2a、2b、…2nにアナログ入力信号Vinを入力して、同時にA/D変換させ、各A/D変換ユニット2a、2b、…2nから出力されるA/D変換データDTa、DTb、…DTnを、加算器8で加算することで、最終的なA/D変換結果であるA/D変換データDT0を生成するようにしてもよい。
そして、このようにすれば、図1に示した一つのA/D変換装置でアナログ入力信号VinをA/D変換した場合に比べて、A/D変換データDT0のビット数を多くして、その電圧分解能を高めることができる。
またこのようにA/D変換データDT0の分解能を高めるためには、必ずしも、図1に示したA/D変換装置を複数用いる必要はなく、例えば、図7又は図8に示すように、第1A/D変換部16及び第2A/D変換部26を複数(n個)用意し、増幅回路12と加算回路14とで生成される第1電圧を各第1A/D変換部16a、16b、…16nに入力して数値化させ、増幅回路22と加算回路24とで生成される第2電圧を各第2A/D変換部26a、26b、…26nに入力して数値化させるようにしてもよい。
そしてこの場合、各第1A/D変換部16a、16b、…16nで得られた数値データDT1a、DT1b、…DT1nは加算器8aで加算し、各第2A/D変換部26a、26b、…26nで得られた数値データDT2a、DT2b、…DT2nは加算器8bで加算し、各々の加算結果DT1、DT2を減算器6に入力するように構成すれば、図6に示したA/D変換装置と同様、A/D変換データDT0のビット数を多くして、その電圧分解能を高めることができる。
また図7、図8に示すようにA/D変換装置を構成した場合、増幅回路12と加算回路14、及び、増幅回路22と加算回路24は、複数設ける必要がないので、図6に示したA/D変換装置に比べて、装置構成を簡単にし、高分解能のA/D変換データDT0が得られるA/D変換装置をより低コストで実現することができる。
なお、図7に示すA/D変換装置と図8に示すA/D変換装置との異なる点は、図7に示したものでは、第1A/D変換部16と第2A/D変換部26とをそれぞれのグループに分けて配置しているのに対し、図8に示したものでは、第1A/D変換部16と第2A/D変換部26と一つのペアとして隣接配置し、これら各ペアを連続的に並べることで、各A/D変換部16、26を櫛歯状に配置したことである。
そして、これらの配置は、第1A/D変換部16と第2A/D変換部26との特性のバラツキを抑えるための工夫であり、回路設計時に特性のバラツキを考慮して、適宜選択すればよい。
(第2参考例)
次に、図9は、本発明の前提となる第2参考例のA/D変換装置の構成及びその動作を表す説明図である。
図9(a)に示すように、このA/D変換装置は、図1に示した第1参考例のA/D変換装置から第2A/D変換部26を削除した構成になっている。そして、増幅回路12と加算回路14とで生成される第1電圧、及び、増幅回路22と加算回路24とで生成される第2電圧は、入力切換手段としてのスイッチ41を介して、選択的に第1A/D変換部16に入力される。
また、このスイッチ41は、周期的に変化するクロック信号CK1を受けて動作し、クロック信号CK1がハイレベルのときには、第2電圧を第1A/D変換部16に入力し、クロック信号CK2がローレベルのときには、第1電圧を第1A/D変換部16に入力するように構成されている。
なお、クロック信号CK1の周期は、第1A/D変換部16がA/D変換動作を行うパルス信号PBの周期の2倍に設定されており、スイッチ41は、第1A/D変換部16のA/D変換動作に同期して、第1A/D変換部16への入力電圧を切り換える。
また、このA/D変換装置には、クロック信号CK1の立上がりタイミング(換言すれば第1A/D変換部16によるA/D変換の2回に1回の割合)で、第1A/D変換部16から出力されている数値データをラッチするラッチ回路42が設けられており、減算器6は、このラッチ回路42にてラッチされた数値データDTB(図9(b)に示すDTA0、DTA2、DTA4、…;第1電圧に対応)と、第1A/D変換部16から出力される数値データDTB(図9(b)に示すDTA1、DTA3、DTA5、…;第2電圧に対応)との差DTC(図9(b)に示すDTA0−DTA1,DTA0−DTA2,DTA2−DTA3,DTA2−DTA4,…)を演算する。
またこのように減算器6にて得られる数値データDTCは、第1電圧から第2電圧を減じた数値データ(DTA0−DTA1,DTA2−DTA3,…)と、A/D変換の一周期前に算出された第1電圧から一周期後に算出された第1電圧を減じた数値データ(DTA0−DTA2,DTA2−DTA4,…)との何れかに交互に変化することから、本参考例のA/D変換装置には、減算器6から出力される数値データDTCの内、第1電圧から第2電圧を減じた数値データ(DTA0−DTA1,DTA2−DTA3,…)のみを選択的に出力するためのラッチ回路43が設けられている。
つまり、このラッチ回路43は、図9(b)に示すように、クロック信号CK1の立下がりタイミングで減算器6からの出力DTCをラッチすることにより、第1電圧から第2電圧を減じた数値データ(DTA0−DTA1,DTA2−DTA3,…)のみを、アナログ入力信号VinのA/D変換結果(つまりA/D変換データDT0)として選択的に出力するようにされている。
このように構成された本参考例のA/D変換装置によれば、複数のA/D変換部16、26を設けて第1電圧と第2電圧とを同時にA/D変換するA/D変換装置に比べて、A/D変換に要する時間が長くなるが、A/D変換部は1個でよいため、A/D変換装置の構成を簡素化して、そのコストを低減することができる。
ここで、図9(a)に示したA/D変換装置では、第1A/D変換部16のA/D変換動作の2回に1回の割合でA/D変換データDT0が更新されることになるが、図9(a)に示したA/D変換装置は、更に、図10(a)に示すように変形すれば、第1A/D変換部16のA/D変換動作に同期して、A/D変換データDT0を更新することのできるA/D変換装置とすることができる。
つまり、図10(a)に示したA/D変換装置は、図9(a)に示したA/D変換装置に対して、クロック信号CK1を周波数逓倍(2倍)することによりクロック信号CK1の2倍の周波数を有するクロック信号CK2を生成する逓倍回路45と、減算器6から出力される数値データDTCに値「−1」を乗じることで数値データDTCの符号を反転する乗算器46と、この乗算器46からの出力と減算器6からの出力との何れかを選択してラッチ回路43に出力するスイッチ47と、を追加し、ラッチ回路42、43が、逓倍回路45にて生成されたクロック信号CK2の立上がりタイミングで動作し、スイッチ47が、クロック信号CK1がローレベルであるときに乗算器46からの出力を選択し、クロック信号CK1がハイレベルであるときに減算器6からの出力を選択するように構成したものである。
このように構成されたA/D変換装置によれば、図10(b)に示すように、ラッチ回路42では、クロック信号CK2に同期して、第1A/D変換部16から出力される数値データDTAが順次ラッチされ、減算器6からは、そのラッチされた数値データ(DTB:前回値)から第1A/D変換部16で得られた最新の数値データ(DTA:最新値)を減じた数値データDTCが順次出力されるようになる。
そして、このように減算器6にて得られる数値データDTCは、第1電圧から第2電圧を減じた数値データ(DTA0−DTA1,DTA2−DTA3,…)と、第2電圧から第1電圧を減じた数値データ(DTA1−DTA2,DTA3−DTA4,…)との何れかに交互に変化することになるが、このうち、第2電圧から第1電圧を減じた数値データ(DTA1−DTA2,DTA3−DTA4,…)については、乗算器46にてその符号が反転されてからスイッチ47で選択されることになるため、ラッチ回路43では、第1電圧から第2電圧を減じた数値データ(DTA0−DTA1,DTA2−DTA1,DTA2−DTA3,DTA4−DTA3,DTA4−DTA5,…)が順次ラッチされ、その数値データが、アナログ入力信号VinのA/D変換結果(つまりA/D変換データDT0)として出力されることになる。
よって、図10(a)に示したA/D変換装置によれば、図9(a)に示したA/D変換装置に比べて、A/D変換データDT0をより早く更新することができるようになり、アナログ入力信号Vinが変動するような場合に、より有効なA/D変換装置となる。
なお、図9(a)、図10(a)に示したA/D変換装置において、クロック信号CK1によるスイッチ41(47)の切換周期△T(図9(b)、図10(b)参照)は、上述したサンプリング定理を考慮すると、A/D変換対象となるアナログ入力信号の変動周期の4分の1以下の周期に設定する必要はある。
(実施形態)
次に、図11は、本発明を適用した実施形態のA/D変換装置の構成を表す説明図である。
図11に示すように、本実施形態のA/D変換装置は、図1に示した第1参考例のA/D変換装置から増幅回路22と加算回路24とを削除すると共に、第1電圧生成手段を加算回路14だけで構成し、この加算回路14にて生成された第1電圧(Voff+Vin)を、2系統に分離して、第1A/D変換部16及び第2A/D変換部26に入力するよう構成されている。
そして、本実施形態では、第1A/D変換部16を構成しているRDL30の電源端子VDDRと他のロジック回路の電源端子VDDLには、第1入力手段としての信号経路を介して、第1電圧(Voff+Vin)を印加すると共に、これらのグランド端子GNDR及びGNDLは、電位0Vのグランドに接地することにより、これら各部の動作用の電源電圧が第1電圧(Voff+Vin)となるようにしている。
また、第2A/D変換部26を構成しているRDL30の電源端子VDDRと他のロジック回路の電源端子VDDLには、第2入力手段としての信号経路を介して、オフセット電圧Voffの2倍の電圧(2・Voff)を印加し、これらのグランド端子GNDR及びGNDLには、第1電圧(Voff+Vin)を印加することにより、これら各部の動作用の電源電圧が、オフセット電圧Voffからアナログ入力信号Vinを減じた第2電圧(Voff−Vin)となるようにしている。
従って、このA/D変換装置においても、A/D変換特性が図4に示した理想特性(曲線)となり、上述した各A/D変換装置と同様の効果を得ることができる。そして、本実施形態によれば、オフセット電圧Voffからアナログ入力信号Vinを減じた第2電圧を生成するための回路構成(増幅回路12、22及び加算回路24)が不要となるため、上記各参考例に比べて装置構成を簡素化して、A/D変換装置の低コスト化を図ることができる。
なお、本実施形態のA/D変換装置は、第1参考例のA/D変換装置と同様、第1A/D変換部16と第2A/D変換部26とを対称に配置(図5参照)したり、オフセット電圧Voff調整用の電圧調整回路29を設けることによって、A/D変換精度をより向上することができる。
また、本実施形態のA/D変換装置は、第1参考例のA/D変換装置と同様、図11に示したA/D変換装置をA/D変換ユニットとして複数設け、各A/D変換ユニットによるA/D変換結果を加算するようにしても、或いは、第1A/D変換部16及び第2A/D変換部26を複数設けて、各A/D変換部16,26から出力を加・減算するようにしても、A/D変換の分解能を高めることができる。
また、本実施形態において、A/D変換装置の構成を更に簡素化して、低コスト化を図るには、図12(a)に示すように、第2A/D変換部26を削除して、図9(a)に示した第2参考例のA/D変換装置と同様のラッチ回路42、43と、クロック信号CK1にて切り換えられる2つのスイッチ48、49を設け、スイッチ48では、第1A/D変換部16の電源端子VDDR及びVDDLへの印加電圧を、第1電圧(Voff+Vin)とオフセット電圧の2倍の電圧(2・Voff)とに交互に切り換え、スイッチ49では、スイッチ48の電圧切り換えに同期して、グランド端子GNDR及びGNDLへの印加電圧を、接地電位0Vと第1電圧(Voff+Vin)とに交互に切り換えるようにすればよい。なお、この2つのスイッチ48、49は、本発明(詳しくは請求項9)の入力切換手段に相当する。
また更に、図12(a)に示したA/D変換装置に対して、図10(a)に示したA/D変換装置と同様の逓倍回路45、乗算器46、及びスイッチ47を設けるようにすれば、A/D変換データDT0をより早く更新することができるようになる。
以上、本発明を適用した各種A/D変換装置を説明したが、本発明を適用したA/D変換装置によれば、A/D変換の入出力特性を、原点0を通る理想的な比例直線にすることができることから、A/D変換データを温度補正させるには、A/D変換装置の周囲に図13(a)に示す周辺回路を設けることで、A/D変換データの温度補正を極めて簡単に行うことができる。
つまり、図13(a)に示すように、上記実施形態のA/D変換装置の周囲に、A/D変換装置への入力電圧を、A/D変換対象となるアナログ入力Vin(Vs)から、電圧値が既知の基準電圧Vrに切り換えるスイッチ52と、このスイッチ52が基準電圧Vr側に切り換えられているときにA/D変換装置から出力されるA/D変換データDTsを基準データDTrとしてラッチするラッチ回路54と、このスイッチ52が通常のアナログ入力信号Vin側に切り換えられているときに、A/D変換装置から出力されるA/D変換データDTsをラッチ回路54にてラッチされた基準データDTrで除算することにより、最終的なA/D変換データDT0を生成する除算回路56とを設け、温度補正が必要なときに、適宜入力切換信号(ハイレベル)をスイッチ52とラッチ回路54に入力して、基準データを生成・ラッチさせれば、A/D変換データの温度補正を正確に行うことができる。
なお、この理由は、図13(b)に示すように、本発明のA/D変換装置では、A/D変換の入出力特性が原点0を通る理想的な比例直線となるため、温度変化によってその傾きが変化しても、基準電圧Vrと被測定電圧Vsとの比(Vs/Vr)は常に一定となるためである。
2a〜2n…A/D変換ユニット、4…乗算器、5…加算器、6…減算器、7…制御回路、8,8a,8b…加算器、12,22…増幅回路、14,24…加算回路、16…第1A/D変換部、26…第2A/D変換部、29…電圧調整回路、30…RDL(リングディレイライン:パルス遅延回路)、32…カウンタ、34…ラッチ回路、36…パルスセレクタ、38…エンコーダ、39…信号処理回路、41,47,48,49,52…スイッチ、42,43,54…ラッチ回路、45…逓倍回路、46…乗算器、56…除算回路。

Claims (12)

  1. 入力電圧に応じた遅延時間でパルス信号を遅延させる遅延ユニットを複数段縦続接続してなるパルス遅延回路と、
    予め設定された測定時間の間に前記パルス信号が通過する前記遅延ユニットの段数を検出し、その段数に対応した数値データを出力する符号化回路と、
    を用いてアナログ入力信号をA/D変換する方法であって、
    基準となるオフセット電圧に前記アナログ入力信号を加えた第1電圧を生成し、
    該生成した第1電圧を前記遅延ユニットの正の電源電圧として前記パルス遅延回路に入力することにより、前記符号化回路に第1電圧を数値化させると共に、
    前記第1電圧を前記遅延ユニットの負の電源電圧、前記オフセット電圧の2倍の電圧を前記遅延ユニットの正の電源電圧として、前記パルス遅延回路に入力することにより、前記符号化回路に前記オフセット電圧の2倍の電圧から前記第1電圧を減じた第2電圧を数値化させ、
    該数値化により得られた前記第1電圧の数値データと前記第2電圧の数値データとの差を、前記アナログ入力信号のA/D変換データとして求めることを特徴とするA/D変換方法。
  2. 前記アナログ入力信号として基準電圧をA/D変換することにより得られるA/D変換データを、温度補正用の基準データとして記憶しておき、その後、前記アナログ入力信号のA/D変換データとして得られる数値データを該基準データで除算することにより、前記アナログ入力信号のA/D変換データを補正することを特徴とする請求項1に記載のA/D変換方法。
  3. 入力電圧に応じた遅延時間でパルス信号を遅延させる遅延ユニットを複数段縦続接続してなるパルス遅延回路と、
    予め設定された測定時間の間に前記パルス信号が通過する前記遅延ユニットの段数を検出し、その段数に対応した数値データを出力する符号化回路と、
    を備えたA/D変換装置であって、
    基準となるオフセット電圧にA/D変換対象となるアナログ入力信号を加えた第1電圧を生成する第1電圧生成手段と、
    該第1電圧生成手段にて生成された第1電圧を前記遅延ユニットの正の電源電圧として前記パルス遅延回路に入力することにより、前記符号化回路に第1電圧を数値化させる第1入力手段と、
    前記第1電圧生成手段にて生成された第1電圧を前記遅延ユニットの負の電源電圧、前記オフセット電圧の2倍の電圧を前記遅延ユニットの正の電源電圧として、前記パルス遅延回路に入力することにより、前記符号化回路に前記オフセット電圧の2倍の電圧から前記第1電圧を減じた第2電圧を数値化させる第2入力手段と、
    前記符号化回路により数値化された前記第1電圧の数値データと前記第2電圧の数値データとの差を演算する減算手段と、
    を備えたことを特徴とするA/D変換装置。
  4. 前記第1入力手段は、前記第1電圧を正の電源電圧として前記符号化回路にも入力し、
    前記第2入力手段は、前記第1電圧を負の電源電圧として前記符号化回路にも入力すると共に、前記オフセット電圧の2倍の電圧を正の電源電圧として前記符号化回路にも入力することを特徴とする請求項3に記載のA/D変換装置。
  5. 前記パルス遅延回路と前記符号化回路とからなる2つのA/D変換部を備え、
    前記第1入力手段は、前記2つのA/D変換部の一方である第1A/D変換部のパルス遅延回路に対し、前記第1電圧を前記遅延ユニットの正の電源電圧として入力し、
    前記第2入力手段は、前記2つのA/D変換部の他方である第2A/D変換部のパルス遅延回路に対し、前記第1電圧を前記遅延ユニットの負の電源電圧、前記オフセット電圧の2倍の電圧を前記遅延ユニットの正の電源電圧として入力し、
    前記減算手段は、前記各A/D変換部の符号化回路にて生成された数値データの差を演算することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のA/D変換装置。
  6. 前記第1A/D変換部、前記第2A/D変換部、前記第1電圧生成手段、前記第1入力手段、前記第2入力手段、及び前記減算手段からなるA/D変換ユニットを複数備えると共に、これら各A/D変換ユニットにて得られたA/D変換データを加算する加算手段を備えたことを特徴とする請求項5に記載のA/D変換装置。
  7. 前記第1A/D変換部及び前記第2A/D変換部をそれぞれ複数備えると共に、
    該複数の第1A/D変換部にて数値化された第1電圧の数値データ、及び、該複数の第2A/D変換部にて数値化された第2電圧の数値データを、それぞれ加算する2つの加算手段を備え、
    前記減算手段は、前記各加算手段にて加算された数値データの差を演算することを特徴とする請求項5に記載のA/D変換装置。
  8. 前記第1A/D変換部と第2A/D変換部とは、同一構成であり、しかも、同一基板上に、前記パルス遅延回路同士が最も接近し、且つ、構成部品が線対称となるように組み付けられていることを特徴とする請求項5〜請求項7の何れか1項に記載のA/D変換装置。
  9. 前記パルス遅延回路に前記第1入力手段からの電圧を入力して前記符号化回路に第1電圧を数値化させるか、或いは前記パルス遅延回路に前記第2入力手段からの電圧を入力して前記符号化回路に第2電圧を数値化させるかを、間隔を空けて交互に切り換える入力切換手段を備え、
    前記減算手段は、前記符号化回路にて順次数値化される前後の数値データの差を演算することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のA/D変換装置。
  10. 前記入力切換手段は、A/D変換対象となるアナログ入力信号の変動周期の4分の1以下の周期で前記パルス遅延回路への電圧入力を切り換えることを特徴とする請求項9に記載のA/D変換装置。
  11. 外部からの指令に従い当該A/D変換装置に基準電圧を入力してA/D変換させる基準電圧入力手段と、
    当該A/D変換装置が前記基準電圧をA/D変換した際に得られたA/D変換データを、温度補正用の基準データとしてラッチするラッチ手段と、
    前記減算手段から出力されるA/D変換データを前記ラッチ手段にラッチされた基準データで除算することにより、前記A/D変換データを補正する補正手段と、
    を備えたことを特徴とする請求項3〜請求項10の何れか1項に記載のA/D変換装置。
  12. 前記オフセット電圧は、前記パルス遅延回路と前記符号化回路とで実現されるA/D変換の入出力特性を2次関数で近似可能な電圧範囲内の略中心の電圧値に設定されていることを特徴とする請求項3〜請求項11の何れか1項に記載のA/D変換装置。
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