JP6114390B2 - アナログデジタル変換器 - Google Patents

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Description

本発明は、アナログデジタル変換器に関し、例えば、デジタル補正で精度を高められるアナログデジタル変換器に関する。
例えば、非特許文献1に開示されたデジタル補正型アナログデジタル変換器では、補正対象のアナログデジタル変換器の入力に、補正対象のアナログデジタル変換器より低速かつ高精度の参照用アナログデジタル変換器を並列に接続し、上記の参照用アナログデジタル変換器のデジタル出力を基準信号として補正を行っている。また、非特許文献2には、このような精度が要求される基準信号を用いずにデジタル補正を実施できるアナログデジタル変換器が開示されている。
Y. Chiu, C. W. Tsang, B. Nikolic and P. R. Gray, "Least mean square adaptive digital background calibration of pipelined analog-to-digital converters," IEEE Transactions on Circuits and Systems I, Vol. 51, pp. 38-46, Jan. 2004. W. Liu, P. Huang and Y. Chiu, "A 12b 22.5/45MS/s 3.0mW 0.059mm2 CMOS SAR ADC achieving over 90dB SFDR," 2010 IEEE International Solid-State Circuits Conference Digest of Technical Papers, pp. 380-381, Feb. 2010.
デジタル補正型アナログデジタル変換器は、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換部と、アナログデジタル変換部のデジタル出力を受け、このデジタル出力をデジタル補正するデジタル補正部より構成される。デジタル補正型アナログデジタル変換器は、アナログ回路部の性能不足をデジタル補正により補うことで、高い変換精度を維持できる。低性能のアナログ回路でよいため、消費電力や回路面積を著しく削減できる利点がある。
例えば、パイプラインアナログデジタル変換器やサイクリックアナログデジタル変換器の場合は、オペアンプのオープンループ利得不足と非線形性による影響で、アナログデジタル変換部のアナログデジタル変換特性の線形性が低下し、変換精度が劣化する。上記の影響をデジタル補正することで、低性能のオペアンプを採用できる。また、容量素子の容量値バラツキも変換特性の線形性を低下させるが、デジタル補正することで容量値バラツキを許容できるため、小さな容量値の容量素子を採用できる。これにより、アナログデジタル変換器の消費電力や回路面積を著しく低減できる。
逐次比較アナログデジタル変換器の場合は、容量素子の容量値バラツキが変換特性の線形性を低下させるが、デジタル補正により容量値バラツキを許容できるため、小さな容量値の容量素子を採用できる。これにより、アナログデジタル変換器の消費電力や回路面積を著しく低減できる。
しかし、従来の一般的な方法でデジタル補正を行う場合、補正用に何らかの基準信号が必要である。基準信号は高精度である必要があり、補正後のアナログデジタル変換器の変換精度は、この基準信号の信号品質で制約される。例えば、非特許文献1に開示されたデジタル補正型アナログデジタル変換器を用いた場合、補正後のアナログデジタル変換器の変換精度は、参照用アナログデジタル変換器の変換精度で制約される。そのため、これらの基準信号を利用した補正では、例えば13ビット程度以上の変換精度を得るのは困難であると考えられる。
そこで、基準信号を用いずにデジタル補正を行う方法として、例えば、非特許文献2に示されるような方法を用いることが考えられる。図1は、本発明の前提として検討したアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。図1に示すアナログデジタル変換器では、アナログデジタル変換部(ADC)に対して、本来の入力信号に加えて、正の直流電圧シフト「+Δ」と負の直流電圧シフト「−Δ」が交互に印加される。この直流電圧シフトの印加機構は、例えば、アナログデジタル変換部(ADC)の内部回路に容量素子やスイッチを追加することで、等価的に実現することができる。
奇数サンプル側デジタル補正部と偶数サンプル側デジタル補正部は、アナログデジタル変換部(ADC)の奇数番目のサンプルに対応するデジタル出力と偶数番目のサンプルに対応するデジタル出力のそれぞれに対して、補正係数を用いてデジタル補正を行う。偶数サンプル側デジタル補正部の補正後出力と奇数サンプル側デジタル補正部の補正後出力の差分が、入力から期待される「2Δ」となるように補正係数を探索することで、探索された補正係数を用いて上記のデジタル補正を実施することができる。この方法では、直流電圧シフト値が常に一定でありさえすれば、値自体は設計値からずれていても問題ない。
しかし、図1のような方法では、上記の直流電圧シフト機構を実装するために、アナログデジタル変換部の内部回路やレイアウトを変更する必要があり、既存のアナログデジタル変換部の回路やレイアウトを適用することができない。また、アナログデジタル変換部の内部に直流電圧シフト機構を実装せず、アナログデジタル変換部の前段で直流電圧シフトを実装する場合は、オペアンプによるアナログ加算回路が必要である。その結果、オペアンプの歪特性や応答特性により直流電圧シフトを一定に保てなくなり補正精度が低下する恐れがある。また、例えば、市販の低精度のアナログデジタル変換器をボードに実装し、その出力をボード上でFPGA(Field Programmable Gate Array)やマイコンなどを用いてデジタル補正するような場合でも、ボード上にオペアンプ加算回路を実装する必要があるため、同様に補正精度が低下する恐れがある。
後述する実施の形態は、このようなことを鑑みてなされたものであり、その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
本実施の形態によるアナログデジタル変換器は、減衰回路と、第1選択回路と、アナログデジタル変換部と、補正ユニットと、を有する。減衰回路は、それぞれ電圧値が異なる複数の第1アナログ電圧が順次入力され、複数の第1アナログ電圧を所定の減衰率で減衰させることで複数の第2アナログ電圧を順次出力する。第1選択回路は、第1アナログ電圧とそれを減衰した第2アナログ電圧とを組とする複数組の第1および第2アナログ電圧が順次入力され、複数組の第1および第2アナログ電圧の中のそれぞれのアナログ電圧を異なるタイミングで選択して出力する。アナログデジタル変換部は、第1選択回路から出力される複数組の第1および第2アナログ電圧を複数組の第1および第2デジタル信号にそれぞれ変換する。補正ユニットは、複数組の第1および第2デジタル信号に基づいて、複数組の第1および第2デジタル信号のM(Mは1以上の整数)個のビットに対してそれぞれ乗算するM個の補正係数を探索する。
本願において開示される発明のうち、代表的な実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すると、アナログデジタル変換器における変換精度の向上が実現可能になる。
本発明の前提として検討したアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。 本発明の実施の形態1によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。 図2Aのアナログデジタル変換部に入力されるアナログ信号の一例を示す波形図である。 本発明の実施の形態2によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。 図3Aにおける主要部の動作例を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態3によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。 図4Aにおける主要部の動作例を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態4によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。 図5Aにおける主要部の動作例を示すタイミングチャートである。 本発明の実施の形態5によるアナログデジタル変換器において、それに含まれる補正用信号生成部の構成例を示す概略図である。 本発明の実施の形態6によるアナログデジタル変換器において、それに含まれる補正用信号生成部周りの構成例を示す概略図である。 本発明の実施の形態7によるアナログデジタル変換器において、その一部の構成例を示す概略図である。 図2Aのアナログデジタル変換器に対するシミュレーション結果の一例と、その比較例として図2Aの中のアナログデジタル変換部単体に対するシミュレーション結果の一例を示す図である。 本発明の実施の形態8によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。 本発明の実施の形態9によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
(実施の形態1)
《アナログデジタル変換器の概略構成》
図2Aは、本発明の実施の形態1によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。図2Bは、図2Aのアナログデジタル変換部に入力されるアナログ信号の一例を示す波形図である。図2Aにおいて、補正用信号印加端子には減衰回路21が接続され、経路切換えマルチプレクサ(第1選択回路)22の2個の入力ノードには、それぞれ補正用信号印加端子と減衰回路21の出力ノードが接続される。経路切換えマルチプレクサ22の出力は、アナログデジタル変換部(ADC)23に入力される。減衰回路21は、この例では、抵抗分圧回路で構成される。
アナログデジタル変換部23のMビットのデジタル出力D(i=1,2,…,M)は奇数サンプル側デジタル補正部24と偶数サンプル側デジタル補正部25に入力される。奇数サンプル側デジタル補正部24は、アナログデジタル変換部23の奇数番目のデジタル出力(第1デジタル信号)D ODD(i=1,2,…,M)と補正係数探索部26より供給される補正係数Wにもとづいて、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果(第1補正後デジタル信号)を出力する。偶数サンプル側デジタル補正部25は、アナログデジタル変換部23の偶数番目のデジタル出力(第2デジタル信号)D EVEN(i=1,2,…,M)と補正係数探索部26より供給される補正係数Wにもとづいて、偶数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果(第2補正後デジタル信号)を出力する。
乗算部27は、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果と補正係数探索部26から供給される減衰率推定値(減衰係数)aESTの乗算結果を出力する。減算部(誤差検出部)28は、偶数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果から乗算結果を減算した結果を出力する。当該減算結果は「誤差e」として補正係数探索部26に入力される。補正係数探索部26は、誤差eと、アナログデジタル変換部23のデジタル出力D(i=1,2,…,M)と、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果とにもとづいて、補正係数Wと減衰率推定値aESTを探索し、当該探索結果を奇数サンプル側デジタル補正部24と偶数サンプル側デジタル補正部25と乗算部27に出力する。
奇数サンプル側デジタル補正部24、偶数サンプル側デジタル補正部25、補正係数探索部26、乗算部27および減算部28は、補正ユニット20aを構成する。補正ユニット20aは、特に限定はされないが、例えば、FPGAやプロセッサ等のデジタル演算回路によって実現可能である。また、アナログデジタル変換部23の入力ノードには、経路切換えマルチプレクサ22と並列に入力経路用スイッチ(入力スイッチ)29が接続される。入力経路用スイッチ29は、オンに制御された際に、本来の入力信号電圧(アナログ入力電圧)VINをアナログデジタル変換部23に入力する。入力経路用スイッチ29のオン・オフや経路切換えマルチプレクサ22の選択は、制御部30によって制御される。
《アナログデジタル変換器の補正係数探索動作》
補正用信号(第1アナログ信号)は、図2Bに示した「補正用信号波形」の通り、階段状に変化する複数(この例では3通り)のアナログ電圧(第1アナログ電圧)V〜Vを持ち、各アナログ電圧の値は、アナログデジタル変換周期の2周期間ずつ正確に保持される。アナログデジタル変換部23には、図2Bに示した「ADC入力波形」の通り、アナログデジタル変換周期の奇数番目では補正用信号の電圧(V〜V)が直接入力され、偶数番目では、減衰回路21を介して補正用信号をa倍に減衰した電圧(第2アナログ電圧)(aV〜aV)が入力される。制御部30は、このような「ADC入力波形」となるように、経路切換えマルチプレクサ22を選択する。具体的には、制御部30は、補正用信号の各サイクル毎に、各サイクル内の一部(ここでは半分)の期間で補正用信号を選択し、残りの期間で減衰回路21からの出力信号(第2アナログ信号)を選択する。
アナログデジタル変換部23に対して、図2Bに示したような入力を行った場合、隣接する奇数番目サンプルと偶数番目サンプルのアナログデジタル変換部23への入力電圧比は、常に厳密に一定値aになる。このような状況を意図的に作り出すことで、アナログデジタル変換部23の変換に伴う非線形性を補償するための補正係数Wを探索可能としている。具体的には、奇数/偶数サンプル間の関係性を踏まえて、補正係数探索部26は、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果に減衰率推定値aESTを乗算した値が、そのペアとなる偶数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果と等しくなるように、以下の適応制御アルゴリズムで補正係数Wと減衰率推定値aESTを探索する。
奇数サンプル側デジタル補正部24は、前述したように、アナログデジタル変換部23の奇数番目のデジタル出力(第1デジタル信号)D ODD(i=1,2,…,M)と補正係数探索部26より供給される補正係数Wにもとづき、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果(第1補正後デジタル信号)DOUT ODDを式(1)で算出する。
Figure 0006114390
同様に、偶数サンプル側デジタル補正部25は、アナログデジタル変換部23の偶数番目のデジタル出力(第2デジタル信号)D EVEN(i=1,2,…,M)と補正係数探索部26より供給される同じ補正係数Wにもとづき、偶数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果(第2補正後デジタル信号)DOUT EVENを式(2)で算出する。
Figure 0006114390
乗算部27は、DOUT ODDとaESTを乗算し、乗算結果を得る。減算部(誤差検出部)28は、DOUT EVENと当該乗算結果の差分を誤差eとして式(3)の通り算出する。
Figure 0006114390
補正係数探索部26は、前述したように、誤差eと、アナログデジタル変換部23のデジタル出力D ODD,D EVENと、DOUT ODDとにもとづいて、補正係数Wと減衰率推定値aESTを探索する。一例として、探索をLMS(Least Mean Square)アルゴリズムで行う場合は、例えば、式(4)でWを、式(5)でaESTを探索できる。aは、減衰回路21の減衰率の設計値である。
Figure 0006114390
Figure 0006114390
ここで、μWiおよびμは、LMSアルゴリズムのステップサイズであり、探索速度と探索精度のトレードオフを考慮して適当な値に設定すればよい。また、探索結果の不定性(例えばWの解に対してWの定数倍も解になり得る)を排除するため、MSBの補正係数Wは1/2に固定した状態で上記の動作を行う。これにより、探索後の補正係数値Wは真の値に対して一律に1/2/W倍(WはMSB補正係数の真値とする。)となり、その結果として、1/2/W倍の変換利得誤差を生じる。しかし、各W値間の相対的な比率は真値間の比率と等しくなるため、アナログデジタル変換の線形性は完全に補償される。また、aESTはaに収束する。
なお、アナログデジタル変換部23は、例えばパイプライン型を用いる場合は、MDAC(Multiplying DAC)回路の直列接続構成となる。この場合、初段のMDAC回路に使用されているオペアンプの3次歪や5次歪を補正することで、更にアナログデジタル変換の線形性を高めることも可能である。例えば3次歪を補正する場合、奇数サンプル側デジタル補正部24は、アナログデジタル変換部23の奇数番目のデジタル出力D ODD(i=1,2,…,M)と、補正係数探索部26より供給される補正係数Wと、3次歪補正係数Bとにもとづいて、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果DOUT ODDを式(6)の通り算出する。
Figure 0006114390
同様に、偶数サンプル側デジタル補正部25は、アナログデジタル変換部23の偶数番目のデジタル出力D EVEN(i=1,2,…,M)と、補正係数探索部26より供給される同じ補正係数Wと、Bとにもとづき、偶数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果DOUT EVENを式(7)の通り算出する。
Figure 0006114390
以下、上記と同様に誤差eが算出され、補正係数探索部26は、誤差eと、アナログデジタル変換部23のデジタル出力D ODD,D EVENと、DOUT ODDとにもとづいて、式(4)で補正係数Wを、式(5)で減衰率推定値aESTを、式(8)で3次歪補正係数Bを探索する。ここで、μB3は探索速度と探索精度のトレードオフを考慮して適当な値に設定すればよい。
Figure 0006114390
補正係数探索部26は、さらに、アナログデジタル変換部23の直流オフセット電圧の影響を取り除いて補正係数を探索することも可能である。その場合は、誤差eから直流補正係数ΔVDCを減算したもの(式(9))を誤差e’として、式(4)、式(5)のeをe’で置き換えた式(10)、(11)で補正係数Wと減衰率推定値aESTを探索する。また、直流補正係数ΔVDCは式(12)で探索する。
Figure 0006114390
Figure 0006114390
Figure 0006114390
Figure 0006114390
《本実施の形態のアナログデジタル変換器の主な効果》
以上のような方式を用いた場合、例えば、減衰回路21の減衰率が設計値aからばらついてaREALとなったとしても、隣接する奇数番目サンプルと偶数番目サンプルのアナログデジタル変換部23への入力電圧比は厳密に一定値aREALになる。ここで、本実施の形態の方式では、減衰率推定値(減衰係数)aESTも探索しているため、減衰回路21の減衰率がaREALとなったとしても、減衰率推定値aESTがaREALに収束することで、減衰率ばらつきの影響を吸収し、補正係数Wの正確な探索を維持できる。その結果、減衰回路21は、線形性さえ良好であれば、減衰率が設計値からばらついても特に問題は無く、この線形性は、抵抗分圧回路を代表とする受動素子を用いた減衰回路21では十分に保証される。
つまり、本実施の形態の方式では、精度が要求される素子を特に用いずに、パイプライン、サイクリック、逐次比較アナログデジタル変換器などで生じ得るアナログデジタル変換の非線形性を高精度にデジタル補正することができる。その結果、アナログデジタル変換器における変換精度の向上が実現可能になる。また、この際に、アナログデジタル変換部23の内部回路に変更を加える必要はない。したがって、例えば、部品として完成している市販のアナログデジタル変換器を対象として高精度なデジタル補正を行うようなことも可能である。さらに、別の観点として、ある目標とする変換精度を実現するにあたり、アナログデジタル変換器の消費電力や回路面積を著しく低減することができる。
具体的には、例えば、パイプラインアナログデジタル変換器やサイクリックアナログデジタル変換器の場合は、オペアンプのオープンループ利得不足と非線形性による影響が高精度にデジタル補正されるため、低性能のオペアンプを採用できる。さらに、容量素子の容量値バラツキや直流オフセット電圧による影響も高精度にデジタル補正されるため、小さな容量値の容量素子や小さなゲート幅のMOSトランジスタを採用できる。また、逐次比較アナログデジタル変換器の場合は、容量素子の容量値バラツキや直流オフセット電圧による影響が高精度にデジタル補正されるため、やはり、小さな容量値の容量素子や小さなゲート幅のMOSトランジスタを採用できる。その結果、アナログデジタル変換器の消費電力や回路面積を著しく低減することができる。
なお、図2Bの例では、便宜上、補正用信号の電圧バリエーションとしてV,V,Vの3通りの場合を示したが、最小限として、探索する係数の数以上の電圧バリエーションが必要であり、例えば、補正係数W〜W16と減衰率推定値aESTを探索する場合には、17以上が必要となる。ただし、実際には、各補正係数をより高精度に探索するためには、数十通り以上のバリエーションを設けることが望ましい。また、ここでは、減衰回路21として、複数の抵抗素子からなる抵抗分圧回路を用いたが、その代わりに、例えば、複数の容量素子を直列接続した容量分圧回路を用いることも可能である。
また、図2BにおけるV,V,Vの各値は、原理上は、それぞれ異なる値であれば、任意に定めることが可能である。電圧の条件として必要なことは、図2Bを例として、奇数番目サンプルと偶数番目サンプルのアナログデジタル変換部23への入力電圧比を必ず一定値aに保つことである。この条件は、「a」の値は不変であることが保証されるため、奇数番目サンプルの期間とそれに続く偶数番目サンプルの期間(すなわち補正用信号の各サイクル内)で単に電圧(V,V,V)を一定に保つことで満たすことができる。
ここで、比較例として、仮に、図1の方式を用いた場合、補正用信号として、例えば、V1’±Δ,V2’±Δ,V3’±Δ,…等が入力されることになる。この際に、V1’,V2’,V3’,…の各値は、本実施の形態の方式と同様に、それぞれ異なる値であれば任意に定めることが可能であるが、Δの電圧値は必ず不変である必要がある。しかしながら、このような補正用信号を生成することは、実際上、容易でない。特に、アナログデジタル変換器と同一チップ内で生成するのではなく、チップ外部で生成する場合、例えば、オペアンプを用いたアナログ加算回路等を用いることが考えられるが、この場合、オペアンプの歪み特性等に応じて、V1’時の2Δの電圧値とV2’時の2Δの電圧値とに誤差が生じる恐れがある。一方、本実施の形態の方式では、このように様々な電圧バリエーションで不変性が必要とされるパラメータとして電圧値「Δ」を用いるのではなく、減衰率(例えば抵抗分圧比)「a」を用いているため、不変性を容易に保証することができる。
《補正ユニットの変形例》
図2Aの補正ユニット20aでは、奇数サンプル側デジタル補正部24の出力においてaESTを乗算する構成としたが、偶数サンプル側デジタル補正部25の出力においてaESTを乗算してもよい。その場合、aESTの探索値は、減衰回路21の減衰率aではなく、その逆数1/aになるが、所望の補正係数Wを同様に探索できる。また、この場合、式(3)〜(5)のかわりに、以下の式(13)〜(15)のアルゴリズムで探索を行えばよい。
Figure 0006114390
Figure 0006114390
Figure 0006114390
《アナログデジタル変換器の通常動作》
以上の説明は、アナログデジタル変換器が例えば補正動作モードで動作する場合の説明である。補正動作モードでは、図2Aの制御部30は、入力経路用スイッチ(入力スイッチ)29をオフに制御した状態で、経路切換えマルチプレクサ(第1選択回路)22の選択を行い、補正ユニット20aに補正係数Wの探索を行わせる。本実施の形態によるアナログデジタル変換器は、このような補正動作モードに加えて、通常動作モードを備える。
制御部30は、通常動作モードでは、入力経路用スイッチ29をオンに制御し、経路切換えマルチプレクサ22内の各スイッチをオフ(すなわち経路切換えマルチプレクサ22の出力を開放状態)に制御する。これにより、本来の入力信号電圧(アナログ入力電圧)VINがアナログデジタル変換部23へ入力される。アナログデジタル変換部23は、入力信号電圧VINに対してアナログデジタル変換を行い、対応するMビットのデジタル出力(デジタル信号)D(i=1,2,…,M)を得る。補正ユニット20aは、当該デジタル出力Dと補正動作モード時に探索して得られた補正係数値Wを用いて、偶数サンプル側デジタル補正部25において式(16)の演算を行う。
Figure 0006114390
偶数サンプル側デジタル補正部25は、奇数番目のサンプルか偶数番目のサンプルかに依らず、全サンプルに対して式(16)の演算を行い、その出力(補正後デジタル出力信号)DOUTが、通常動作時のデジタル補正型アナログデジタル変換器全体としての出力になる。
図9は、図2Aのアナログデジタル変換器に対するシミュレーション結果の一例と、その比較例として図2Aの中のアナログデジタル変換部単体に対するシミュレーション結果の一例を示す図である。この例では、11 bit 1.5−bit/Stageのパイプラインアナログデジタル変換部23を用い、その内の7ビットに対する補正係数Wと3次歪補正係数Bとを探索したのち、正弦波の入力信号電圧VINを用いて出力スペクトルを観測している。デジタル補正を行わない場合(アナログデジタル変換部23を単体で用いた場合)には、線形性の精度が6.6ビットであったが、本実施の形態の方式を用いてデジタル補正を行うことで線形性の精度が12.0ビットに向上している。なお、上記はあくまでも一例であり、本実施の形態の補正方式は、様々な分解能のアナログデジタル変換器に対して効果がある。
以上のように、本実施の形態1のアナログデジタル変換器は、ある電圧とそれを固定の減衰率で減衰させた電圧をそれぞれアナログデジタル変換し、それらの変換結果と適応制御アルゴリズムにもとづいて、アナログデジタル変換部の補正係数を探索し、探索した補正係数を用いてアナログデジタル変換部のデジタル出力を補正する。これによって、デジタル補正を行うアナログデジタル変換器において、高精度な基準信号を用いずに、かつ、アナログデジタル変換部に回路変更を加えることなく、例えば13ビット程度以上の変換精度を実現可能になる。また、高速・高精度・低消費電力のアナログデジタル変換を、オンチップ補正、オンボード補正のいずれの場合においても実現できる。すなわち、本実施の形態1のアナログデジタル変換器は、図2Bの「ADC入力波形」を外部で生成するオンボード補正を用いる場合に特に有益となるが、これに限らず、「ADC入力波形」をアナログデジタル変換器内で生成するオンチップ補正を用いる場合でも有益な効果が得られる。
なお、図2Bでは、奇数番目のサンプルでV〜V、偶数番目のサンプルでaV〜aVを入力する例を示したが、この入力の順序は、適宜変更することが可能である。例えば、偶数番目のサンプルでV〜V、奇数番目のサンプルでaV〜aVを入力してもよく、場合によって、連続するサンプルでV〜Vを順次入力し、それに続く連続するサンプルでaV〜aVを順次入力してもよい。例えば、補正ユニット20aは、アナログデジタル変換部23からのデジタル信号を一時的に保持するメモリ等を備えていれば、V〜VおよびaV〜aVに対するデジタル信号がアナログデジタル変換部23からどのような順番で入力されても、例えばVとaVを組として探索処理を行うことができる。ただし、この際には、前述したように、アナログデジタル変換部23に対してVを入力する際と、aVを入力する際とで、Vの値は不変である必要がある。
また、ここでは、減衰率推定値(減衰係数)aESTを探索する方式を用いたが、場合によっては、固定値を用いることも可能である。具体的には、減衰回路21の減衰率aのばらつきを高精度に制御できるのであれば、aESTを固定値とすることも可能である。この場合、探索する係数が減るため、例えば、探索速度の高速化等が図れる。ただし、実際には、減衰回路21を構成する各受動素子(抵抗または容量)のばらつきを制御することは容易でなく、特に、オンボード補正を行う際には更に困難となり得るため、aESTを探索する方式を用いる方が望ましい。
(実施の形態2)
《補正用信号の生成方式[1]》
図3Aは、本発明の実施の形態2によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。図3Bは、図3Aにおける主要部の動作例を示すタイミングチャートである。図3Aのアナログデジタル変換器は、図2Aの構成例と比較して、その補正用信号を生成する方式の詳細が示されたものとなっている。アナログデジタル変換部23やその後段の補正ユニット20aの構成および動作に関しては、図2Aと図3Aとで特に違いはないため、詳細な説明は省略する。
図3Aにおいて、抵抗ラダー型マルチ電圧生成部(補正用抵抗分圧回路)31のN個の抵抗分圧ノードにおけるN個の出力がセレクタ(第2選択回路)32に入力され、セレクタ32の出力ノードが、実施の形態1で説明した補正用信号印加端子になる。すなわち、セレクタ32の出力ノードは減衰回路21に接続され、セレクタ32の出力ノードと減衰回路21の出力ノードはそれぞれ経路切換えマルチプレクサ22の2個の入力ノードに接続される。経路切換えマルチプレクサ22の出力は、アナログデジタル変換部23に入力される。
減衰回路21は、図3Aの通り、RとRの抵抗値を持つ抵抗素子で構成され、R/(R+R)の減衰率を実現する抵抗分圧回路となっている。また、セレクタ32の選択信号と経路切換えマルチプレクサ22の経路切換え信号は、選択信号生成部33により生成される。アナログデジタル変換部23への本来の入力信号電圧VINは、入力経路用スイッチ29を介して、アナログデジタル変換部23へ入力される。
抵抗ラダー型マルチ電圧生成部31は、(N+1)個の直列接続された抵抗素子を電源電圧とグランドの間に挿入した構造である。各抵抗素子の抵抗値に応じて、図3Aの通り、N個の抵抗分圧ノードにN通りの電圧V〜Vが生成される。セレクタ32は、その内の一つを選択信号生成部33からの選択信号φ〜φにより選択する。これにより、セレクタ32の出力ノードには、図2Bに示した階段状の補正用信号波形が生成される。なお、抵抗ラダー型マルチ電圧生成部31およびセレクタ32は、補正用信号生成部34aを構成する。
補正用信号を例えば図2Bのような階段状の波形にする場合は、抵抗ラダー型マルチ電圧生成部31内の各抵抗素子の抵抗値を同一とし、選択信号φからφまでを順次活性化し、かつそれを巡回させればよい。そのために、図3Bのタイミングチャートに示した通り、選択信号φからφが順次かつ繰返しハイ電圧になり、セレクタ32内の対応するスイッチがオンに制御される。各選択信号がハイ電圧の期間をアナログデジタル変換部23の変換用クロック(サンプリングクロック)φの2変換周期分とすることで、実施の形態1の場合と同様に、2周期間ずつ電圧値が正確に保持された補正用信号波形を生成できる。経路切換えマルチプレクサ22の経路切換え信号φMUXは、選択信号生成部33において、アナログデジタル変換部23の変換用クロックφを2分周することで生成できる。
図3Bのタイミングチャートにおいて、経路切換え信号φMUXがハイ電圧の時は、経路切換えマルチプレクサ22の上側のスイッチがオンになり、セレクタ32の出力電圧V〜Vがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとして印加される。一方、経路切換え信号φMUXがロー電圧の時は、経路切換えマルチプレクサ22の下側のスイッチがオンになり、減衰回路21の出力電圧aV〜aVがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとして印加される。抵抗ラダー型マルチ電圧生成部31の出力電圧V〜Vは、設計値からずれても補正ユニット20aによる補正精度には特に影響しないため、各抵抗素子の抵抗値がある程度ばらついても特に問題は生じない。
アナログデジタル変換器は、このような補正動作モードを経たのち、通常動作モードで動作する。通常動作モードでは、入力経路用スイッチ29がオンになり、セレクタ32内の各スイッチと経路切換えマルチプレクサ22内の各スイッチはオフになる。すなわち、経路切換えマルチプレクサ22の出力ノードは、開放状態となる。これにより、図3Bのタイミングチャートの示す通り、本来の入力信号電圧VINがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとなる。
以上、本実施の形態2のアナログデジタル変換器を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果に加え、抵抗ラダー型マルチ電圧生成部31およびセレクタ32からなる補正用信号生成部34aを設けることで、補正用信号を容易に生成することが可能になる。
(実施の形態3)
《補正用信号の生成方式[2]》
図4Aは、本発明の実施の形態3によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。図4Bは、図4Aにおける主要部の動作例を示すタイミングチャートである。図4Aのアナログデジタル変換器は、図2Aの構成例と比較して、その補正用信号を生成する方式の詳細が示されたものとなっている。アナログデジタル変換部23やその後段の補正ユニット20aの構成および動作に関しては、図2Aと図4Aとで特に違いはないため、詳細な説明は省略する。
図4Aにおいて、デジタルアナログ変換部(DAC)41には補正用デジタル信号DCALが入力され、デジタルアナログ変換部41の出力電圧VDACがDAC経路用スイッチ42を介して補正用信号として印加される。DAC経路用スイッチ42の右端のノードは、実施の形態1における補正用信号印加端子になる。すなわち、DAC経路用スイッチ42の右端のノードは、減衰回路21に接続され、DAC経路用スイッチ42の右端のノードと減衰回路21の出力ノードはそれぞれ経路切換えマルチプレクサ22の2個の入力ノードに接続される。経路切換えマルチプレクサ22の出力は、アナログデジタル変換部23に入力される。なお、デジタルアナログ変換部41およびDAC経路用スイッチ42は、補正用信号生成部34bを構成する。
減衰回路21は、図4Aの通り、RとRの抵抗値を持つ抵抗素子で構成され、R/(R+R)の減衰率を実現する抵抗分圧回路となっている。デジタルアナログ変換部41の変換用クロック(サンプリングクロック)φDACと経路切換えマルチプレクサ22の経路切換え信号φMUXは、アナログデジタル変換部23の変換用クロック(サンプリングクロック)φを2分周器43で2分周することで生成できる。デジタルアナログ変換部41は、その1変換周期の間、出力電圧を保持する性質があるため、その変換用クロックφDACの周波数をアナログデジタル変換部23の変換用クロックφの1/2とすることで、実施の形態1の場合と同様に、φの2周期間ずつ電圧値が正確に保持された補正用信号波形V〜Vを生成できる。
これにより、図4Bのタイミングチャートにおいて、経路切換え信号φMUXがハイ電圧の時は、経路切換えマルチプレクサ22の上側のスイッチがオンになり、デジタルアナログ変換部41の出力電圧V〜Vがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとして印加される。一方、経路切換え信号φMUXがロー電圧の時は、経路切換えマルチプレクサ22の下側のスイッチがオンになり、減衰回路21の出力電圧aV〜aVがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとして印加される。なお、このような補正動作モードの期間では、DAC経路導通信号φDACOによりDAC経路用スイッチ42がオンに制御される。
一方、通常動作モード時は、制御信号φINにより入力経路用スイッチ29がオンになり、DAC経路用スイッチ42と経路切換えマルチプレクサ22内の各スイッチはオフになる。すなわち、経路切換えマルチプレクサ22の出力ノードは、開放状態となる。これにより、図4Bのタイミングチャートの示す通り、本来の入力信号電圧VINがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとなる。
以上、本実施の形態3のアナログデジタル変換器を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果に加え、デジタルアナログ変換部41を利用することで、補正用信号を容易に生成することが可能になる。この際に、デジタルアナログ変換部41の出力電圧は、設計値からある程度ずれていても特に問題はなく、各出力電圧がφDACの1変換周期の間、一定に保たれてさえいればよい。したがって、低精度のデジタルアナログ変換部を適用することが可能である。また、例えば、マイクロコンピュータ等を含んだシステムに本実施の形態を適用する場合には、マイクロコンピュータ内に搭載されているデジタルアナログ変換部を利用することで、補正信号生成部34bに伴う部品の追加も特に不要となる。
(実施の形態4)
《補正用信号の生成方式[3]》
図5Aは、本発明の実施の形態4によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。図5Bは、図5Aにおける主要部の動作例を示すタイミングチャートである。図5Aのアナログデジタル変換器は、図2Aの構成例と比較して、その補正用信号を生成する方式の詳細が示されたものとなっている。アナログデジタル変換部23やその後段の補正ユニット20aの構成および動作に関しては、図2Aと図5Aとで特に違いはないため、詳細な説明は省略する。
図5Aにおいて、サンプルアンドホールド回路(S/H)51には、例えば、正弦波等の補正用のアナログ信号VCALが印加され、サンプルアンドホールド回路51の出力電圧VSHはS/H経路用スイッチ52を介して補正用信号として印加される。S/H経路用スイッチ52の右端のノードが実施の形態1で述べた補正用信号印加端子になる。すなわち、S/H経路用スイッチ52の右端のノードは減衰回路21に接続され、S/H経路用スイッチ52の右端のノードと減衰回路21の出力ノードはそれぞれ経路切換えマルチプレクサ22の2個の入力ノードに接続される。経路切換えマルチプレクサ22の出力は、アナログデジタル変換部23に入力される。なお、サンプルアンドホールド回路51およびS/H経路用スイッチ52は、補正用信号生成部34cを構成する。
減衰回路21は、図5Aの通り、RとRの抵抗値を持つ抵抗素子で構成され、R/(R+R)の減衰率を実現する抵抗分圧回路となっている。サンプルアンドホールド回路51の動作用クロックφSHと経路切換えマルチプレクサ22の経路切換え信号φMUXは、アナログデジタル変換部23の変換用クロックφを2分周器43で2分周することで生成できる。サンプルアンドホールド回路51は、その1変換周期の間(厳密には1変換周期からサンプリング期間を除いた期間)、出力電圧を保持する性質がある。このため、その動作用クロックφSHの周波数をアナログデジタル変換部23の変換用クロック(サンプリングクロック)φの1/2とすることで、実施の形態1の場合と同様に、2周期間ずつ電圧値が正確に保持された補正用信号波形V〜Vを生成できる。
これにより、図5Bのタイミングチャートにおいて、経路切換え信号φMUXがハイ電圧の時は、経路切換えマルチプレクサ22の上側のスイッチがオンになり、サンプルアンドホールド回路51の出力電圧V〜Vがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとして印加される。一方、経路切換え信号φMUXがロー電圧の時は、経路切換えマルチプレクサ22の下側のスイッチがオンになり、減衰回路21の出力電圧aV〜aVがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとして印加される。なお、このような補正動作モードの期間では、S/H経路導通信号φSHOによりS/H経路用スイッチ52がオンに制御される。
一方、通常動作モード時は、制御信号φINにより入力経路用スイッチ29がオンになり、S/H経路用スイッチ52と経路切換えマルチプレクサ22内の各スイッチはオフになる。すなわち、経路切換えマルチプレクサ22の出力ノードは、開放状態となる。これにより、図5Bのタイミングチャートの示す通り、本来の入力信号電圧VINがアナログデジタル変換部23への入力電圧VADCとなる。
以上、本実施の形態4のアナログデジタル変換器を用いることで、実施の形態1で述べた各種効果に加え、サンプルアンドホールド回路51を利用することで、補正用信号を容易に生成することが可能になる。この際に、サンプルアンドホールド回路51の出力電圧は、設計値からある程度ずれていても特に問題はなく、各出力電圧がφSHの1変換周期の間、一定に保たれてさえいればよい。したがって、低精度のサンプルアンドホールド回路を適用することが可能である。
(実施の形態5)
《補正用信号の生成方式[4]》
図6は、本発明の実施の形態5によるアナログデジタル変換器において、それに含まれる補正用信号生成部の構成例を示す概略図である。図6に示す補正用信号生成部34dは、抵抗ラダー型の構成となっており、実施の形態2の図3Aに示した補正用信号生成部34aの変形例となっている。
図6において、初段抵抗ラダー61に含まれるN個の抵抗分圧ノードからのN個の出力は、それぞれセレクタ[1]62に入力され、その出力電圧VOUT1は、次段抵抗ラダー63の上端電圧として入力される。次段抵抗ラダー63に含まれるM個の抵抗分圧ノードからのM個の出力は、それぞれセレクタ[2]64に入力され、その出力電圧VOUT2が実施の形態1で述べた補正用信号の電圧となる。
初段抵抗ラダー61は、(N+1)個の直列接続された抵抗素子を電源電圧とグランドの間に挿入した構造である。各抵抗素子の抵抗値に応じて、図6の通り、N個の抵抗分圧ノードにN通りの電圧が生成される。その内の一つをセレクタ[1]62で選択信号φ11〜φ1Nにより選択することで、出力電圧VOUT1が得られる。次段抵抗ラダー63は、(M+1)個の直列接続された抵抗素子をVOUT1とグランドの間に挿入した構造である。この構造により、セレクタ[1]62で選択された出力電圧VOUT1にもとづいて、さらにM通りの電圧が生成され、その内の一つがセレクタ[2]64で選択信号φ21〜φ2Mにより選択される。
したがって、セレクタ[2]64の出力電圧VOUT2は、(N×M)通りの値をとることができる。そのため、補正用信号に要求される電圧バリエーション数を実現するのに必要な抵抗素子数を、実施の形態2の場合よりも低減できるメリットがある。なお、選択信号φ11〜φ1Nやφ21〜φ2Mは、他の実施の形態と同様に、補正用信号となる出力電圧VOUT2がアナログデジタル変換周期の2周期間ずつ保持された階段状の電圧になるように、適切に制御されればよい。また、ここでは、次段抵抗ラダー63の下端をグランドとしたが、初段抵抗ラダー61のN個の抵抗分圧ノードに選択的に接続されるように構成してもよい。すなわち、セレクタ[1]62と同様なセレクタを別途設け、初段抵抗ラダー61の隣接する抵抗分圧ノード間を次段抵抗ラダー63でさらに分圧する。
(実施の形態6)
《補正用信号の生成方式[5]》
図7は、本発明の実施の形態6によるアナログデジタル変換器において、それに含まれる補正用信号生成部周りの構成例を示す概略図である。図7に示す補正用信号生成部34eは、抵抗ラダー型の構成となっており、実施の形態2の図3Aに示した補正用信号生成部34aの変形例となっている。ここでは、図3Aの場合と異なり、アナログデジタル変換部23が差動回路構成である場合を例としている。
図7において、電源電圧VDDに接続されたセレクタ[P](第3選択回路)71Pと、その各出力に接続された並列抵抗[P]72Pは、正相側の補正用信号を生成する。また、グランドに接続されたセレクタ[N](第3選択回路)71Nと、その出力に接続された並列抵抗[N]72Nは逆相側の補正用信号を生成する。正相側の補正用信号の電圧と逆相側の補正用信号の電圧との差が、実施の形態1における補正用信号の電圧となる。正相側の補正用信号は、減衰回路用の抵抗[A]73Aおよび抵抗[B]73Bからなる抵抗分圧型の減衰回路と、経路切換えマルチプレクサ74の正相側の上側の入力ノードにそれぞれ入力される。同様に、逆相側の補正用信号は、減衰回路用の抵抗[C]73Cおよび抵抗[D]73Dからなる抵抗分圧型の減衰回路と、経路切換えマルチプレクサ74の逆相側の下側の入力ノードにそれぞれ入力される。
正相側の減衰回路と逆相側の減衰回路の他端には、電源電圧の1/2の電圧、すなわち、VDD/2が印加されており、これにより、補正用差動信号の同相電圧(平均電圧)をVDD/2に保つことができる。正相側の減衰回路の出力ノードは、経路切換えマルチプレクサ74の正相側の下側の入力ノードに接続されている。同様に、逆相側の減衰回路の出力は、経路切換えマルチプレクサ74の逆相側の上側の入力ノードに接続されている。さらに、経路切換えマルチプレクサ74の正相側の出力ノードは、反転用マルチプレクサ75の正相側の上側の入力ノードと逆相側の上側の入力ノードとに接続されている。同様に、経路切換えマルチプレクサ74の逆相側の出力ノードは、反転用マルチプレクサ75の逆相側の下側の入力ノードと正相側の下側の入力ノードとに接続されている。
反転用マルチプレクサ75の正相側の出力電圧VADC_Pと逆相側の出力電圧VADC_Nとの電圧差がアナログデジタル変換部23への差動入力電圧VADCとなる。なお、ここでは、差動回路構成である場合を例としているが、勿論、シングル回路構成である場合にも同様に適用することが可能である。この場合、例えば、反転用マルチプレクサ75を省き、前述した正相側の各回路のみを設け、正相側の減衰回路の他端をグランドとすればよい。
ここで、特に限定はされないが、減衰回路用の抵抗[A]73A,[B]73B,[C]73C,[D]73Dは、例えば、それぞれ同一の抵抗値であるものとする。この場合、減衰回路の減衰率は1/2となる。また、特に限定はされないが、並列抵抗[P]72Pおよび並列抵抗[N]72Nのそれぞれは、同じ抵抗値の組合せからなる6個の抵抗(R〜R)を備えるものとし、R,R,R,R,Rの抵抗値は、例えば、Rの抵抗値を基準として、それぞれ、2倍、4倍、8倍、16倍、32倍であるものとする。
アナログデジタル変換部23(図示省略)の変換用クロックφは分周器76に入力され、セレクタ[P]71Pとセレクタ[N]71N内の各6個の選択スイッチは、分周器76の例えば4分周、8分周、16分周、32分周、64分周、128分周の各分周出力φDIVによってオン/オフが制御される。上記の制御により正相側の並列抵抗値と逆相側の並列抵抗値は同一値REFFとなるように制御される。これにより、補正用差動信号電圧は、「VDD×2R/(REFF+2R)」となる。この際には、上記のφDIVによる制御に伴い、REFFは、Rの抵抗値の1倍,2倍,3倍,…,64倍といったように順次変化する。その結果、補正用差動信号として64通りの電圧バリエーションが得られ、補正係数Wの正しい探索を行うのに十分な電圧バリエーション数が得られる。
また、反転用マルチプレクサ75は、正/負の補正用信号の電圧を得て、さらに補正係数Wの探索能力を高める目的で設けられる。すなわち、アナログデジタル変換部23の差動信号の入力レンジに対して、その半分ではなく全体をカバーした上で補正係数Wの探索を行えるようにする。反転用マルチプレクサ75の反転制御信号φSWAPがハイ電圧の時は、反転用マルチプレクサ75によって正相側の上側のノードと逆相側の下側のノードが選択され、補正用差動信号の電圧がそのまま出力されるので、最終的な補正用信号の電圧は正電圧である。一方、反転制御信号φSWAPがロー電圧の時は、反転用マルチプレクサ75によって正相側の下側のノードと逆相側の上側のノードが選択され、補正用差動信号の電圧が反転して出力されるため、最終的な補正用信号の電圧は負電圧である。経路切換えマルチプレクサ74の経路切換え信号φMUXは、実施の形態2などと同様に、アナログデジタル変換部23の変換用クロックφを2分周することで生成できる。
図7のような構成を用いることで、実施の形態5の場合と同様に、補正用信号に要求される電圧バリエーション数を実現するのに必要な抵抗素子数を、実施の形態2の場合と比較して低減できる効果が得られる。
(実施の形態7)
《アナログデジタル変換器の概略構成(変形例[1])》
図8は、本発明の実施の形態7によるアナログデジタル変換器において、その一部の構成例を示す概略図である。本実施の形態8では、例えば、市販のチップ部品となるパイプラインアナログデジタル変換器に、本実施の形態によるデジタル補正方式を適用する場合の一例について説明する。図8において、アナログデジタル変換部81よりも前段の構成は、他の実施の形態の構成と同様である。
本実施の形態8のアナログデジタル変換器は、パイプラインアナログデジタル変換部81を含んでいる。パイプラインアナログデジタル変換部81は、通常、アナログデジタル変換ユニット811とその出力に接続されたデジタル出力生成部(DEC)812からなる。パイプラインアナログデジタル変換部81のデジタル出力bは、デジタル出力生成逆処理部(RDEC)82に入力され、その出力は、奇数サンプル側デジタル補正部83と偶数サンプル側デジタル補正部84に入力される。
奇数サンプル側デジタル補正部83は、デジタル出力生成逆処理部82の奇数番目のデジタル出力と補正係数探索部85より供給される補正係数にもとづいて、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果を出力する。偶数サンプル側デジタル補正部84は、デジタル出力生成逆処理部82の偶数番目のデジタル出力と補正係数探索部85より供給される補正係数にもとづいて、偶数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果を出力する。
乗算部86は、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果と補正係数探索部85から供給される減衰率推定値aESTの乗算結果を出力する。減算部87は、偶数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果から乗算結果を減算した結果を出力する。当該減算結果は「誤差e」として補正係数探索部85に入力される。補正係数探索部85は、誤差eと、デジタル出力生成逆処理部82のデジタル出力と、奇数サンプル側補正後アナログデジタル変換結果とにもとづいて、補正係数と減衰率推定値aESTを探索し、探索結果を奇数サンプル側デジタル補正部83と偶数サンプル側デジタル補正部84と乗算部86に出力する。なお、奇数サンプル側デジタル補正部83、偶数サンプル側デジタル補正部84、補正係数探索部85、乗算部86および減算部87は、補正ユニット20bを構成する。
パイプライン型やサイクリック型など、変換方式に冗長性を持つアナログデジタル変換器の市販のチップ部品では、図8の通り、アナログデジタル変換ユニット811の生出力D(3値:±1,0、i=1,2,…,M)がチップ内のデジタル出力生成部812により処理されてバイナリデータbとして出力されることが多い。その場合、デジタル出力生成部812における情報縮退により、全ビットのDを完全に復元させることは困難となる。ただし、同図の通り、デジタル出力生成逆処理部82により、少なくとも上位ビットの生出力(例えばD〜D)と、下位ビットの生出力のバイナリ合成値DBE(D BackEnd)に分離して算出することは可能である。
そこで、図8では、これらを用いて、実施の形態1等と同様に補正係数W〜W,WBEを探索し、その結果で補正を行う。何ビット目まで生出力Dを正確に算出できるかは、アナログデジタル変換ユニット811の内部回路における比較電圧のバラツキや直流オフセット電圧に依存する。これらは、パイプラインアナログデジタル変換器が市販のチップ部品の場合でも、データシートや補正前の補助的なシーケンスにより推定できるため、十分多くの上位ビットのDを算出でき、高い補正精度を実現できる。
なお、市販のチップ部品となる逐次比較アナログデジタル変換器を補正対象とする場合は、逐次比較アナログデジタル変換器の出力は、アナログデジタル変換ユニットの生出力D(2値:±1)そのものであるため、図8のようなデジタル出力生成逆処理部82は不要である。この場合、他の実施の形態の場合(例えば図2Aの場合)と同様にして補正を行うことができる。
《アナログデジタル変換器の補正係数探索動作(変形例[1])》
図8の構成において、補正動作モード時には、実施の形態1などと同様に、補正係数W,WBEと減衰率推定値aESTの探索を、式(17)〜(19)および式(3)、(5)によるアルゴリズムで行う。
Figure 0006114390
Figure 0006114390
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通常動作モード時は、図示は省略するが、実施の形態1などと同様に、本来の入力信号電圧VINがパイプラインアナログデジタル変換部81へ入力される。パイプラインアナログデジタル変換部81は、入力信号電圧VINに対してアナログデジタル変換を行い、そのデジタル出力bは、デジタル出力生成逆処理部(RDEC)82に入力される。デジタル出力生成逆処理部(RDEC)82は、例えば、D〜Dと、下位ビットの生出力のバイナリ合成値DBEを出力する。偶数サンプル側デジタル補正部84は、これらの出力と補正動作モード時に探索して得られた補正係数W,WBEを用いて式(20)の演算を行う。
Figure 0006114390
偶数サンプル側デジタル補正部84は、奇数番目のサンプルか偶数番目のサンプルかに依らず、全サンプルに対して式(20)の演算を行い、その出力DOUTが通常動作モード時のデジタル補正型アナログデジタル変換器全体としての出力になる。
(実施の形態8)
《アナログデジタル変換器の概略構成(変形例[2])》
図10は、本発明の実施の形態8によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。図10のアナログデジタル変換器は、補正ユニット20cにおいて、実施の形態1の図2Aにおける奇数サンプル側デジタル補正部24と偶数サンプル側デジタル補正部25を一つのデジタル補正部101で置換した構成となっている。前述した実施の形態1〜4および7では、奇数サンプル側デジタル補正部と偶数サンプル側デジタル補正部を別々に備えているが、これらは、実際に実装する際には、図10のように、一つのデジタル補正部として実装することが可能である。これによって、実装上の補正ユニットの回路規模を低減することなどが可能になる。
補正動作モード時は、実施の形態1などと同様に、補正用信号がアナログデジタル変換部23に入力され、デジタル補正部101は、アナログデジタル変換部23のデジタル出力D(i=1,2,…,M)と補正係数探索部26より供給される補正係数Wにもとづいて、補正後アナログデジタル変換結果を出力する。乗算部27は、補正後アナログデジタル変換結果の内、奇数番目のサンプルに対応する補正後アナログデジタル変換結果と補正係数探索部26から供給される減衰率推定値aESTとの乗算結果を出力する。
減算部28は、補正後アナログデジタル変換結果の内、偶数番目のサンプルに対応する補正後アナログデジタル変換結果から乗算部27の乗算結果を減算した結果を出力する。当該減算結果は「誤差e」として補正係数探索部26に入力される。補正係数探索部26は、誤差eとアナログデジタル変換部23のデジタル出力D(i=1,2,…,M)と奇数番目のサンプルに対応する補正後アナログデジタル変換結果にもとづいて、補正係数Wと減衰率推定値aESTを探索し、探索結果をデジタル補正部101と乗算部27に出力する。また、通常動作モード時の動作は、実施の形態1の場合と同様であり、奇数番目のサンプルおよび偶数番目のサンプルに関わらず、デジタル補正部101によって補正が行われる。
(実施の形態9)
《アナログデジタル変換器の概略構成(変形例[3])》
図11は、本発明の実施の形態9によるアナログデジタル変換器において、その構成例を示す概略図である。本実施の形態9では、2つのアナログデジタル変換部を持つシステムに対して本実施の形態のデジタル補正方式を適用する場合について説明する。この場合、図11に示すように、補正動作モード時に、一方のアナログデジタル変換部には補正用信号の電圧を、他方のアナログデジタル変換部には補正用信号の電圧を減衰回路で減衰した電圧を印加することで、実施の形態1などと同様の原理にもとづいて補正係数の探索を行うことが可能である。なお、図11では、補正動作モード時に関連する構成が示されており、2つのアナログデジタル変換部への本来の入力信号電圧の印加機構などは、実施の形態1などと同様であるので省略されている。
図11において、補正用信号印加端子には、減衰回路(例えば抵抗分圧回路)21が接続される。補正動作モード時には、補正用信号の電圧(第1アナログ電圧)がアナログデジタル変換部[1](第1アナログデジタル変換部)111に、減衰回路21の出力電圧(第2アナログ電圧)がアナログデジタル変換部[2](第2アナログデジタル変換部)112に入力される。アナログデジタル変換部[1]111のMビットのデジタル出力(第1デジタル出力信号)D (1)(i=1,2,…,M)は、デジタル補正部[1](第1デジタル補正部)113に入力される。アナログデジタル変換部[2]112のMビットのデジタル出力(第2デジタル出力信号)D (2)(i=1,2,…,M)は、デジタル補正部[2](第2デジタル補正部)114に入力される。
デジタル補正部[1]113は、アナログデジタル変換部[1]111のデジタル出力D (1)と補正係数探索部26より供給される補正係数[1](第1補正係数)W (1)にもとづいて、補正後アナログデジタル変換結果[1](第1補正後デジタル信号)を出力する。デジタル補正部[2]114は、アナログデジタル変換部[2]112のデジタル出力D (2)と補正係数探索部26より供給される補正係数[2](第2補正係数)W (2)にもとづいて、補正後アナログデジタル変換結果[2](第2補正後デジタル信号)を出力する。乗算部27は、補正後アナログデジタル変換結果[1]と補正係数探索部26から供給される減衰率推定値aESTの乗算結果を出力する。減算部(誤差検出部)28は、補正後アナログデジタル変換結果[2]から乗算部27の乗算結果を減算した結果を出力する。当該減算結果は「誤差e」として補正係数探索部26に入力される。
補正係数探索部26は、誤差eと、アナログデジタル変換部[1]111のデジタル出力D (1)と、アナログデジタル変換部[2]112のデジタル出力D (2)と、補正後アナログデジタル変換結果[1]とにもとづいて、補正係数[1]W (1)と補正係数[2]W (2)と減衰率推定値aESTを探索する。そして、当該探索結果をデジタル補正部[1]113とデジタル補正部[2]114と乗算部27に出力する。これにより、実施の形態1などと同様に、補正係数[1]W (1)と補正係数[2]W (2)と減衰率推定値aESTは、以下の式(21)〜(26)のアルゴリズムにより探索される。
Figure 0006114390
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通常動作モード時は、本来の各々の入力信号電圧がアナログデジタル変換部[1]111とアナログデジタル変換部[2]112へ各々入力される。デジタル補正部[1]113は、補正動作モード時に探索して得られた補正係数[1]W (1)を用いて式(21)による補正を行い、その補正結果となる補正後デジタル出力信号Dout (1)を第1のアナログデジタル変換出力として出力する。同様に、デジタル補正部[2]114は、補正動作モード時に探索して得られた補正係数[2]W (2)を用いて式(22)による補正を行い、その補正結果となる補正後デジタル出力信号Dout (2)を第2のアナログデジタル変換出力として出力する。
以上、本実施の形態9のアナログデジタル変換器を用いることで、実施の形態1の場合と同様の効果が得られ、特に、アナログデジタル変換部[1]111とアナログデジタル変換部[2]112の消費電力や回路面積を著しく低減することが可能になる。なお、ここでは、便宜上、アナログデジタル変換部[1]111の分解能とアナログデジタル変換部[2]112の分解能を同一のMビットとしたが、これらの分解能は同一である必要は無く、様々な分解能の組合せに対しても同様に有効である。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、ここでは、補正係数を探索する適応制御アルゴリズムとして、LMSアルゴリズムにもとづく具体的な数式例を示したが、これ以外の様々な探索アルゴリズムを適用してもよい。また、ここでは、補正動作モードと通常動作モードを設けたが、場合によっては、通常動作モードの中で補正係数を探索するように構成することも可能である。すなわち、本来の入力信号電圧VINに対して、減衰回路21でその減衰信号電圧を生成し、入力信号電圧VINと減衰信号電圧を入力として、実施の形態1などと同様にして補正係数の探索、更新、反映を適宜行えばよい。ただし、この場合、減衰回路21が入力信号電圧VINの電圧レベルに影響を与える恐れや、入力信号電圧VINの振幅等によっては補正係数の精度が不十分となる恐れ等があるため、この観点では、補正動作モードを設ける方が望ましい。
さらに、各実施の形態では減衰回路21として、抵抗分圧回路を用いたが、実施の形態1でも述べたように、容量分圧回路を用いてもよい。また、上記の各実施の形態において、デジタル出力を構成する各ビット値Dは2値とは限らない。例えば、パイプラインアナログデジタル変換器の場合、3値(1、0、−1)、7値(3、2、1、0、−1、−2、−3)などをとる。
20a〜20d 補正ユニット
21 減衰回路
22 経路切換えマルチプレクサ
23 アナログデジタル変換部
24 奇数サンプル側デジタル補正部
25 偶数サンプル側デジタル補正部
26 補正係数探索部
27 乗算部
28 減算部
29 入力経路用スイッチ
30 制御部
31 抵抗ラダー型マルチ電圧生成部
32 セレクタ
33 選択信号生成部
34a〜34e 補正信号生成部
41 デジタルアナログ変換部
42 DAC経路用スイッチ
43 2分周器
51 サンプルアンドホールド回路
52 S/H経路用スイッチ
61 初段抵抗ラダー
62 セレクタ[1]
63 次段抵抗ラダー
64 セレクタ[2]
71P セレクタ[P](セレクタ正相側)
71N セレクタ[N](セレクタ逆相側)
72P 並列抵抗[P](並列抵抗正相側)
72N 並列抵抗[N](並列抵抗逆相側)
73A〜73D 減衰回路用の抵抗
74 経路切換えマルチプレクサ
75 反転用マルチプレクサ
76 分周器
81 パイプラインアナログデジタル変換部
811 アナログデジタル変換ユニット
812 デジタル出力生成部
82 デジタル出力生成逆処理部
83 奇数サンプル側デジタル補正部
84 偶数サンプル側デジタル補正部
85 補正係数探索部
86 乗算部
87 減算部
101 デジタル補正部
111 アナログデジタル変換部[1]
112 アナログデジタル変換部[2]
113 デジタル補正部[1]
114 デジタル補正部[2]

Claims (15)

  1. それぞれ電圧値が異なる複数の第1アナログ電圧が順次入力され、前記複数の第1アナログ電圧を所定の減衰率で減衰させることで複数の第2アナログ電圧を順次出力する減衰回路と、
    前記第1アナログ電圧と前記第1アナログ電圧を減衰した前記第2アナログ電圧とを組とする複数組の第1および第2アナログ電圧が順次入力され、前記複数組の第1および第2アナログ電圧の中のそれぞれのアナログ電圧を異なるタイミングで選択して出力する第1選択回路と、
    前記第1選択回路から出力される前記複数組の第1および第2アナログ電圧を複数組の第1および第2デジタル信号にそれぞれ変換するアナログデジタル変換部と、
    前記複数組の第1および第2デジタル信号に基づいて、前記複数組の第1および第2デジタル信号のM(Mは1以上の整数)個のビットに対してそれぞれ乗算するM個の補正係数を探索する補正ユニットと、
    を有する、アナログデジタル変換器。
  2. 請求項1記載のアナログデジタル変換器において、
    前記減衰回路は、抵抗分圧回路または容量分圧回路で構成される、アナログデジタル変換器。
  3. 請求項2記載のアナログデジタル変換器において、
    前記補正ユニットは、
    前記複数組の第1および第2デジタル信号の各組毎に、前記第1および第2デジタル信号の前記M個のビットに対してそれぞれ前記M個の補正係数を乗算することで第1および第2補正後デジタル信号を生成するデジタル補正部と、
    前記第1補正後デジタル信号か前記第2補正後デジタル信号のいずれか一方に前記減衰率に対応して設けられた減衰係数を乗算することで第3デジタル信号を生成する乗算部と、
    前記第1補正後デジタル信号に前記減衰係数を乗算する場合は前記第3デジタル信号と前記第2補正後デジタル出力信号との誤差を検出し、前記第2補正後デジタル信号に前記減衰係数を乗算する場合には前記第3デジタル信号と前記第1補正後デジタル出力信号との誤差を検出する誤差検出部と、
    前記複数組の第1および第2デジタル信号の各組毎に前記誤差検出部で検出される誤差がゼロに近づくように前記M個の補正係数を探索する補正係数探索部と、を有する、アナログデジタル変換器。
  4. 請求項3記載のアナログデジタル変換器において、
    前記補正係数探索部は、さらに、前記複数組の第1および第2デジタル信号の各組毎に前記誤差検出部で検出される誤差がゼロに近づくように前記減衰係数を探索する、アナログデジタル変換器。
  5. 請求項3記載のアナログデジタル変換器において、
    前記第1選択回路は、各入力サイクル毎にそれぞれ組が異なる前記第1および第2アナログ電圧が入力され、前記各入力サイクル内の一部の期間で前記第1アナログ電圧を選択し、残りの期間で前記第2アナログ電圧を選択する、アナログデジタル変換器。
  6. 請求項3記載のアナログデジタル変換器において、さらに、
    前記複数の第1アナログ電圧を生成する補正用信号生成部と、
    オンに制御された際に、前記アナログデジタル変換部に所定のアナログ入力電圧を入力する入力スイッチと、
    補正動作モードおよび通常動作モードと、を備え、
    前記アナログデジタル変換器は、
    前記補正動作モードでは、前記入力スイッチをオフに制御し、前記アナログデジタル変換部に前記第1選択回路で選択されたアナログ電圧を入力することで前記M個の補正係数を探索し、
    前記通常動作モードでは、前記第1選択回路の出力を開放状態に、前記入力スイッチをオンにそれぞれ制御し、前記アナログデジタル変換部を用いて前記所定のアナログ入力電圧を所定のデジタル信号に変換し、前記デジタル補正部を用いて前記所定のデジタル信号を前記補正動作モードで探索された前記M個の補正係数で補正し、当該補正結果となる補正後デジタル出力信号を出力する、アナログデジタル変換器。
  7. 請求項6記載のアナログデジタル変換器において、
    前記補正用信号生成部は、
    所定の固定電圧を分圧する補正用抵抗分圧回路と、
    前記補正用抵抗分圧回路に含まれる複数の抵抗分圧ノードのいずれかを順次選択することで前記複数の第1アナログ電圧を順次生成する第2選択回路と、を備える、アナログデジタル変換器。
  8. 請求項6記載のアナログデジタル変換器において、
    前記補正用信号生成部は、
    複数の選択スイッチを含み、所定の固定電圧を複数のノードに選択的に印加する第3選択回路と、
    一端が前記減衰回路の入力ノードに共通に接続され、他端が前記第3選択回路の前記複数のノードにそれぞれ接続される複数の並列抵抗と、を備え、
    前記複数の選択スイッチの中からオンに制御する単数または複数の選択スイッチを順次定めることで前記減衰回路の入力ノードに前記複数の第1アナログ電圧を順次生成する、アナログデジタル変換器。
  9. 請求項6記載のアナログデジタル変換器において、
    前記補正用信号生成部は、デジタルアナログ変換部で構成される、アナログデジタル変換器。
  10. それぞれ電圧値が異なる複数の第1アナログ電圧が順次入力され、前記複数の第1アナログ電圧を所定の減衰率で減衰させることで複数の第2アナログ電圧を順次出力する減衰回路と、
    前記第1アナログ電圧と前記第1アナログ電圧を減衰した前記第2アナログ電圧とを組とする複数組の第1および第2アナログ電圧の中の複数の前記第1アナログ電圧を複数の第1デジタル信号にそれぞれ変換する第1アナログデジタル変換部と、
    前記複数組の第1および第2アナログ電圧の中の複数の前記第2アナログ電圧を複数の第1デジタル信号にそれぞれ変換する第2アナログデジタル変換部と、
    前記第1および第2アナログデジタル変換部で変換された前記複数組の第1および第2デジタル信号に基づいて、前記複数の第1デジタル信号のM(Mは1以上の整数)個のビットに対してそれぞれ乗算するM個の第1補正係数と、前記複数の第2デジタル信号のM個のビットに対してそれぞれ乗算するM個の第2補正係数とをそれぞれ探索する補正ユニットと、
    を有する、アナログデジタル変換器。
  11. 請求項10記載のアナログデジタル変換器において、
    前記減衰回路は、抵抗分圧回路または容量分圧回路で構成される、アナログデジタル変換器。
  12. 請求項11記載のアナログデジタル変換器において、
    前記補正ユニットは、
    前記複数組の第1および第2デジタル信号の各組毎に、前記第1デジタル信号の前記M個のビットに対してそれぞれ前記M個の第1補正係数を乗算することで第1補正後デジタル信号を生成する第1デジタル補正部と、
    前記複数組の第1および第2デジタル信号の各組毎に、前記第2デジタル信号の前記M個のビットに対してそれぞれ前記M個の第2補正係数を乗算することで第2補正後デジタル信号を生成する第2デジタル補正部と、
    前記第1補正後デジタル信号か前記第2補正後デジタル信号のいずれか一方に前記減衰率に対応して設けられた減衰係数を乗算することで第3デジタル信号を生成する乗算部と、
    前記第1補正後デジタル信号に前記減衰係数を乗算する場合は前記第3デジタル信号と前記第2補正後デジタル出力信号との誤差を検出し、前記第2補正後デジタル信号に前記減衰係数を乗算する場合には前記第3デジタル信号と前記第1補正後デジタル出力信号との誤差を検出する誤差検出部と、
    前記複数組の第1および第2デジタル信号の各組毎に前記誤差検出部で検出される誤差がゼロに近づくように前記M個の第1および第2補正係数を探索する補正係数探索部と、を有する、アナログデジタル変換器。
  13. 各サイクル毎に異なる電圧値に設定される第1アナログ信号が入力され、前記第1アナログ信号を所定の減衰率で減衰させることで第2アナログ信号を生成する減衰回路と、
    前記第1および第2アナログ信号が入力され、前記各サイクル毎に、前記各サイクル内の一部の期間で前記第1アナログ信号を選択して出力し、残りの期間で前記第2アナログ信号を選択して出力する第1選択回路と、
    前記各サイクル毎に、前記第1選択回路から出力される前記第1アナログ信号を第1デジタル信号に変換し、前記第1選択回路から出力される前記第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換するアナログデジタル変換部と、
    前記各サイクル毎の前記第1および第2デジタル信号に基づいて、前記第1および第2デジタル信号のM(Mは1以上の整数)個のビットに対してそれぞれ乗算するM個の補正係数を探索する補正ユニットと、
    を有する、アナログデジタル変換器。
  14. 請求項13記載のアナログデジタル変換器において、
    前記減衰回路は、抵抗分圧回路または容量分圧回路で構成される、アナログデジタル変換器。
  15. 請求項14記載のアナログデジタル変換器において、
    前記補正ユニットは、
    前記各サイクル毎に、前記第1および第2デジタル信号の前記M個のビットに対してそれぞれ前記M個の補正係数を乗算することで第1および第2補正後デジタル信号を生成するデジタル補正部と、
    前記第1補正後デジタル信号か前記第2補正後デジタル信号のいずれか一方に前記減衰率に対応して設けられた減衰係数を乗算することで第3デジタル信号を生成する乗算部と、
    前記第1補正後デジタル信号に前記減衰係数を乗算する場合は前記第3デジタル信号と前記第2補正後デジタル出力信号との誤差を検出し、前記第2補正後デジタル信号に前記減衰係数を乗算する場合には前記第3デジタル信号と前記第1補正後デジタル出力信号との誤差を検出する誤差検出部と、
    前記各サイクル毎に、前記誤差検出部で検出される誤差がゼロに近づくように前記M個の補正係数を探索する補正係数探索部と、を有する、アナログデジタル変換器。
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