JP4989852B2 - 乳酸系ポリマーの延伸積層フィルム - Google Patents
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Description
それに加え、本発明の延伸積層フィルムは、原料はポリ乳酸であるので生分解性を有し、かつ植物由来の原料を用いており、石油に依存しない。本フィルムの使用済みのプリンター用紙、包装材料はコンポスト処理ができる。
基材層(I)
基材層(I)は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、マイカおよびカオリンからなる群から選ばれる少なくとも1種類以上の微粒子を5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の割合で、かつ酸化チタンの微粒子を3〜20質量%、好ましくは4〜15質量%の割合で含有する乳酸系ポリマーからなる。
基材層(I)の乳酸系ポリマーに配合される炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、シリカ、マイカおよびカオリンから選ばれる微粒子の平均粒径は0.1〜12μmが好適である。この微粒子の平均粒径が0.1μm未満では延伸積層フィルムのボイドの形成が充分でなく、12μmより大きいと凝集して押出機のメッシュで目詰まりするおそれがある。
被覆層(II)の乳酸系ポリマーには0〜1質量%の割合でシリカの微粒子が配合されている。
被覆層(II)の乳酸系ポリマーに配合されるシリカの微粒子の平均粒径は1〜12μmの範囲が好適である。シリカの微粒子の平均粒径が0.1μm未満では表面に凹凸を与える機能が充分でなく、またハンドリングが悪く混練時に不均一を起こすおそれがあり、12μmより大きいと延伸積層フィルムのグロスが劣るおそれがある。
本発明で使用される乳酸系ポリマーには、(1)乳酸のホモポリマー、(2)乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、(3)多官能多糖類および乳酸単位を含む脂肪族ポリエステル、(4)脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価アルコール単位および乳酸単位を含む脂肪族ポリエステル、およびこれらの混合物がある。なお、ここで乳酸には、L−乳酸とD−乳酸のいずれを指す場合とL−体とD−体の乳酸が種々の割合で存在するポリ(DL−乳酸)がある。
乳酸系ポリマーの重量平均分子量はフィルム成形能がある限り特に限定はされないが、MFR(ASTM D−1238による、荷重2160g、温度190℃)が、通常、0.1〜100g/10分、好ましくは1〜50g/10分、特に好ましくは2〜10g/10分のものが使用される。
これらの乳酸系ポリマーの重合法としては、縮合重合、開環重合法など公知のいずれの重合法も採用することができる。例えば、縮合重合ではL−乳酸またはD−乳酸あるいはこれらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を持ったポリ乳酸を得ることができる。
炭酸カルシウム
炭酸カルシウムは、結晶形として、カルサナイト、アラゴナイト、バテライトのいずれもが使用できる。平均粒径は通常0.3〜6μmのものが好ましく用いられる。市販品として、NCC〔日東粉化工業(株)製、商品名〕、サンライト〔竹原化学(株)製、商品名〕等が挙げられる。
硫酸バリウムとしては、重晶石から化学反応により製造した沈降性硫酸バリウムが好適である。平均粒径は0.1〜2μmのものが好適である。市販品としては、沈降性硫酸バリウムTH、沈降性硫酸バリウムST〔バライト工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
タルク
タルクは、天然に産出する含水ケイ酸マグネシウムで、平均粒径が0.1〜10μmのものが好適である。市販品として、PK、LMS〔富士タルク工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
シリカは、天然または合成で得られるケイ酸で、平均粒径が1〜12μmのものが好適である。市販品としては、サイリシア〔富士シリシア化学(株)製、商品名〕、ヒューズレックスクリスタライト〔タツモリ(株)製、商品名〕等が挙げられる。
マイカ
マイカは天然マイカ、合成マイカのいずれも使用することができる。
カオリンは、天然に産出する含水ケイ酸アルミニウムで、平均粒径が0.5〜10μmのものが好適である。また、結晶水を除去したタイプも使用できる。市販品として、NNカチオンクレー〔土屋カチオン工業(株)製、商品名〕、ASP、サテントン〔エンゲルハルト(株)製、商品名〕等が挙げられる。
酸化チタンは、その結晶形からアナタース型、ルチル型、ブルカイト型に分類されるが、これらのいずれも使用することができる。その平均粒径は0.1〜3μm、特に0.1〜1μm、中でも0.15〜0.5μmであることが望ましい。また、ポリ乳酸への分散性を向上させるために、表面をアルミナ、シリカ、酸化亜鉛等の酸化物で被覆したり、脂肪族ポリオール等で表面処理した酸化チタンを用いることも行われる。これらの市販品として、タイペーク〔石原産業(株)製、商品名〕、タイトン〔堺化学工業(株)製、商品名〕等が挙げられる。
本発明の延伸積層フィルムは、基材層(I)とその片面あるいは両面の被覆層(II)からなる延伸積層フィルムである。本発明の延伸積層フィルムは、共押出、ドライラミなどの多層成形法により成形された積層フィルムを少なくともー軸方向に延伸することによって製造される。少なくともー軸方向に1.3〜5倍延伸することにより調製することが望ましい。尚、基材層(I)と被覆層(II)の間には、必要に応じて他の層を積層する態様も含む。
本発明の延伸積層フィルムは一軸延伸の場合と二軸延伸の場合を含む。以下に二軸延伸の場合について説明する。
本発明の二軸延伸積層フィルムは、上記の積層フィルムを二軸延伸処理して調製される。
二軸延伸積層フィルムはその基材層(I)が乳酸系ポリマー組成物(A)からなり、得られる二軸延伸積層フィルムは隠蔽性、化粧性、紫外線カット性に優れている。また、基材層(I)の少なくとも片面に積層される被覆層(II)は、シリカの微粒子を0〜1質量%配合した乳酸系ポリマー組成物(B)からなり、印刷適性、プリンター適性に優れており、実用的なラミ強度、溶断シール強度を有する。
二軸延伸積層フィルムの基材層(I)及び被覆層(II)の厚さは用途に応じて種々決め得るが、通常、基材層(I)となる二軸延伸フィルムの厚さは5〜500μm、好ましくは10〜200μm、被覆層(II)の厚さは0.1〜5μm、好ましくは0.3〜2μmの範囲にあり、二軸延伸積層フィルムの厚さは約5〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲である。
二軸延伸の条件は、ポリ乳酸を延伸し得る条件、例えば、逐次二軸延伸法では、縦延伸温度を60〜100℃、延伸倍率を2〜6倍の範囲、横延伸温度を60〜120℃、延伸倍率を2〜12倍の範囲にすればよい。また、同時二軸延伸法では、延伸温度を60〜120℃、延伸倍率を2〜12倍(面倍率で4〜150倍)の範囲にすればよい。
二軸延伸後は二軸延伸積層フィルムの用途に応じて種々の条件でヒートセット(熱処理)を行うことにより、得られる二軸延伸積層フィルムの熱収縮率を任意の範囲、例えば80℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を1〜5%、横方向の熱収縮率を5〜10%の範囲に、また100℃、15分の条件下における縦方向の熱収縮率を5〜15%、横方向の熱収縮率を10〜20%の範囲にすることができる。
二軸延伸積層フィルムを製造する方法としては前記共押出し積層シートを延伸せずに、予め前記方法で乳酸系ポリマー組成物(A)を用いて二軸延伸フィルムを製造した後、かかる二軸延伸フィルムからなる基材層(I)の片面あるいは両面に乳酸系ポリマー組成物(B)を押出し被覆する方法(押出しラミ法)、あるいは予め乳酸系ポリマー組成物(B)からなるフィルムを得た後、二軸延伸フィルム基材層(I)と貼り合せる方法(ラミ法)をとり得る。これらの中では、共押出し積層シートを延伸する方法が、押出しラミ法と比べると一工程で多層にできるのでコストが安く、またラミ法に比べても加工工程が少なく、また被覆層を例えば0.5〜2μmという厚みまで薄くできるので好ましい。
このような二軸延伸積層フィルムの被覆層(II)の表面のグロスは10〜90%の範囲であることをが望ましい。また、被覆層(II)の表面粗さ(SRa)は0.02〜0.5μmの範囲にあることが望ましい。
また、被覆層(II)の表面のラミ強度は10N/15mm幅以上であることが好ましい。さらに、被覆層(II)を内面としたときの溶断シール強度が10N/15mm幅以上であることが好ましい。
本発明の二軸延伸積層フィルムは、合成紙の用途に好適である。本発明の二軸延伸積層フィルムの被覆層(II)の表面にインク受容層を塗布することにより、合成紙としての利用範囲をさらに広くすることができる。
インク受容層は、例えばヒドロキシプロピルセルロース、メチロール化メラミンなどを1〜10μm程度の厚さで塗布して形成することができる。
本発明の二軸延伸積層フィルムの被覆層(II)は、適度に凹凸を制御でき、これにより従来の紙に比べて耐水性、対摩耗性は勿論、ポリ乳酸樹脂を原料としていることから、生分解性、植物由来性も有する合成紙であり、種々の用途、例えばインクジェットプリンター用紙として使用できる。また凹凸を抑えることによりレーザープリンター用紙としても使用できる。
本発明の二軸延伸積層フィルムは、溶断シール強度に優れており、溶断シール袋として各種の用途に用いることができる。本発明の二軸延伸積層フィルムの隠蔽性を利用して冷凍食品、チョコレート、ガム、キャンデー等の菓子類、化粧品等の嗜好品、カセットテープ、ビデオテープ、CD、CDR、DVD、ゲームソフト等の記録材料の包装として好適である。
本発明の二軸延伸積層フィルムは、また、即席カップ麺食品、乳酸菌飲料のような飲料デザート類カップ食品の個別あるいは複数個等の包装用フィルム、エアゾール製品、インテリア製品の包装、一般シュリンク包装、缶・瓶詰飲料、プラスチック容器、ガラス瓶などの胴張りシュリンクラベル、ワイン、ウイスキー等の瓶のキャップシール等に用いことができる。
実施例及び比較例等で使用した原料は次の通りである。
(イ)ポリ乳酸(PLAC)
D−乳酸含有量:1.9質量%、MFR(温度190℃、荷重2160g):6.7g/10分、融点(Tm):168.0℃、Tg:59.8℃、密度:1.3g/cm3。
日東粉化化学工業株式会社製 NCC410
比表面積:13,000(cm3/g)、平均粒径:1.71(μm)、比重:2.7
(ハ)酸化チタン
石原産業株式会社製 タイペークPF739
比表面積:10(m3/g)、平均粒径:0.21(μm)、比重:4.2
(ニ)シリカ
富士シリシア化学社製、商品名サイリシア730(平均粒径3μm)
チバスペシャリティケミカルズ社製、商品名ATMER SA1753
本発明における各種測定方法は以下のとおりである。
(1)光学特性
日本電色工業社製ヘイズメーター300Aを用いて、ヘイズ(HZ:%)、平行光線透過率(PT:%)及びグロス(%)を測定した。測定値は5回の平均値である。
株式会社小坂研究所製三次元表面粗さ測定器SE−30Kを用いてフィルム表面の中心表面粗さ(SRa)を求めた。
(3)引張り試験
試験片として、フィルムから縦方向(MD)及び横方向(TD)に短冊状フィルム片(長さ:150mm、幅:15mm)を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用い、チャック間距離:100mm、クロスヘッドスピード:300mm/分(但し、ヤング率の測定は5mm/分)の条件で引張試験を行い、破断点における強度(MPa)、伸び(%)、ヤング率(MPa)を求めた。なお、伸度(%)はチャック間距離の変化とした。測定値は5回の平均値である。
二軸延伸多層フィルムから長さ:120mm、幅:15mmのサンプルを切出し、100mm間隔で標線を記入した。次いで、該当フィルムを120℃に設定したオーブン内に15分放置した後、取り出し室温に15分以上放置し、標線間の長さ(L:mm)を測定した。〔(100―L)/100〕×100(%)の値を加熱収縮率(%)とした。
二軸延伸多層フィルムの評価面にウレタン系接着剤(武田薬品工業製:タケラックA310(60%)+タケラックA3(5%)+酢酸エチル(35%))を用い、約7g/m2の量で30μmの生分解性無延伸フィルム(東セロ社製:パルシールGE)コロナ処理面とドライラミネートして厚さ80〜82μmの積層フィルムを得た。
得られた積層フィルムの生分解性無延伸フィルム面同士を重ね合わせた後に、テスター産業株式会社製TP−701−B HEATSEALTESTERを用いて、所定の温度で、温度:140℃、シール面圧:1kg/cm2、時間:1秒の条件下で熱融着した。
尚、加熱は上側のみとした。次いで、熱融着した二軸延伸積層フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、剥離面の確認し、ドライラミネートした層間で剥離した場合はその最大強度を熱融着強度とした。一方、生分解性無延伸フィルム面間で剥離した場合は、ドライラミネートした層間はついているので、剥離せずとした。
延伸フィルムの評価面同士を重ね合わせた後に、協和電機株式会社製L型シュリンクシステムLS−600のL型溶断バーを用いて、出力1.0A、1.0秒の条件で溶断シールした。次いで、溶断シールした延伸フィルムから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(オリエンテック社製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度を溶断シール強度とした。
<基材層(I)用組成物(A1)の製造>
PLAC:炭酸カルシウム:酸化チタンを70:20:10(質量%)で計量し、二軸押出機を用いて180℃で溶融混練して基材層(I)用の組成物(A1)を得た。
<被覆層(II)用の組成物(B)の製造>
PLAC:シリカ:エルカ酸アミドを99.85:0.1:0.05(質量%)で計量し、二軸押出機を用いて180℃で溶融混練して被覆層(II)用の組成物(B)を得た。
<基材層(I)用フィルムの製造>
組成物(A1)を一軸押出機を用いて、200℃でマルチマニホールド式のT−ダイより200℃で押出し基材層(I)とした。
この溶融押出した共押出シート(400μ)を30℃のキャスティングロールで急冷し、設定温度65℃でMD方向に3倍延伸し、次に68℃でTD方向に3倍の逐時延伸した。更に165℃の雰囲気中で6秒間ヒートセットし、総厚さ45μm(基材層35μm、被覆層が各5μm)の三層構成の二軸延伸積層フィルムを得た。フィルムの構成を表1に、評価結果を表2に示す。
実施例1の組成物(A1)に代えてPLAC1:炭酸カルシウム:酸化チタンを85:10:5(質量%)(組成物(A2))とした以外は実施例1と同様に行った。
比較例1
実施例1の3層に代えて組成物(A1)の単層とした以外は実施例1と同様に行った。
比較例2
実施例2の3層に代えて組成物(A2)の単層とした以外は実施例2と同様に行った。
参考例1
実施例1の組成物(A1)に代えてPLACの単層とした以外は実施例1と同様に行った。
Claims (3)
- 炭酸カルシウムの微粒子を10〜30質量%、および酸化チタンの微粒子を4〜15質量%の割合で含む乳酸系ポリマーからなる基材層(I)の少なくとも片面に、シリカの微粒子を0.1〜1質量%の割合で含む乳酸系ポリマーからなる被覆層(II)が積層され、少なくとも一軸方向に延伸されてなることを特徴とする延伸積層フィルム。
- ポリ乳酸(PLAC)からなる被覆層1が更に積層されたことを特徴とする、請求項1に記載の延伸積層フィルム。
- 前記炭酸カルシウムの微粒子が10〜20質量%であり、前記酸化チタンの微粒子が5〜10質量%であり、シリカの微粒子が0.10質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の延伸積層フィルム。
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