JP4989205B2 - 電動車両用の漏電検出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主として、ハイブリッドカーや電気自動車等の電動車両を走行させるモーターを駆動する電源装置の漏電を検出する電動車両用の漏電検出方法に関する。
電動車両を走行させる電源装置は、出力を大きくするために電圧を高くする必要がある。出力が電圧と電流の積に比例するからである。たとえば、ハイブリッドカーや電気自動車を走行させる電源装置の出力電圧は200V以上と極めて高い。高電圧の電源装置は、漏電による人体への感電を防止するため、車両アース及び低圧電源(一般には鉛蓄電池)から絶縁されており、かつ、この漏電抵抗の低下を検出して高圧電源出力を切り離す装置が設けられている。漏電抵抗は、電源装置とアースとの間の抵抗である。この漏電抵抗値が小さすぎると感電しやすくなることから、漏電抵抗値は、たとえば500Ω/Vと規定され、この場合、出力電圧が300Vの組電池にあっては、許容される漏電抵抗値は150kΩとなる。漏電抵抗値がこの値よりも小さくなると、たとえば、組電池の出力側のコンタクタをオンに切り換えずにオフに保持して、感電を防止している。
本発明者は、漏電抵抗値を正確に検出する技術を開発した。(特許文献1参照)
特開2005−338010号公報
本出願人が先に出願した電動車両用の漏電検出方法は、図1において、組電池10を構成する直列に接続された複数の電池11の内、任意の高電圧側と低電圧側との2箇所の電池の直列接続点B、Aとシャーシアースとの間に、それぞれ直列に接続された漏電検出抵抗Ra、Rbと、それぞれの漏電検出抵抗Ra、Rbに直列に接続された漏電検出スイッチSW1、SW2とを備える電動車両用漏電検出回路の、高電圧側の電池の直列接続点Bに接続された一方の漏電検出スイッチSW1をtのタイミングで閉じ、他方の漏電検出スイッチSW2を開いたとき漏電検出抵抗Raに発生する電圧Vl11(t)を測定するステップと、低電圧側の電池の直列接続点Aに接続された他方の漏電検出スイッチSW2をtのタイミングで閉じ、一方の漏電検出スイッチSW1を開いたとき漏電検出抵抗Raに発生する電圧Vl12(t)を測定するステップと、高電圧側の電池の直列接続点Bでの電圧をVg11(t)、低電圧側の電池の直列接続点Aでの電圧をVg12(t)として測定するステップと、異なる時間tを、t1、t2とするなら、ステップにより測定された値に基づき、漏電抵抗値の合成値Rlを
に基づいて演算するステップとを有する。
以上の電動車両用の漏電検出方法は、漏電抵抗値を正確に検出できる。ただ、この方法は、図1に示すように、負荷側に雑音を除去する等の目的でコンデンサ18を漏電抵抗と並列に接続する状態では、漏電抵抗値を正確に検出できない。それは、図2に示すように、漏電検出スイッチSW1、SW2を切り換えて、所定の電圧になるまでの時間をコンデンサ18が遅らせるからである。以上の数4で漏電抵抗値を演算するには、漏電検出スイッチSW1、SW2を切り換えた後、所定の電圧に飽和する電圧を検出する必要がある。変化する電圧が一定の電圧に飽和する時間は、漏電抵抗値が大きくなるにしたがって長くなる。このため、漏電検出スイッチSW1、SW2を切り換えた後、相当の時間、たとえば1秒以上も待って電圧を検出する必要があり、漏電を速やかに検出できない。
また、車両の状態は、時々刻々と変化する。例えば、高圧電池の電圧は充放電により大きく変化するため、検出のための時間が長いと、漏電抵抗の検出精度が低下するおそれがある。
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、負荷側に上記コンデンサを接続する状態で組電池の漏電を速やかに検出できる電動車両用の漏電検出方法を提供することにある。
本発明の電動車両用の漏電検出方法は、負荷側にコンデンサを接続している電動車両用の組電池1の漏電を検出するための漏電検出方法であって、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
本発明の請求項1の漏電検出方法は、組電池1を構成する直列に接続された複数の電池2の任意の直列接続点3を、漏電検出抵抗4を介してシャーシアースに接続した後、漏電検出抵抗4の両端の電圧VL(t)を所定のサンプリング周期Δtで検出すると共に、検出した少なくとも三つの漏電検出抵抗4の両端の電圧VL(t)を使って時定数τを演算する。そしてこの時定数τと、コンデンサの容量C1、C2と、前記漏電検出抵抗4の値Rとを使って漏電抵抗値RLを演算する。
さらに、本発明の請求項2の漏電検出方法は、請求項1に加えて、所定のサンプリング周期(Δt)で検出される電圧(VL(t))の変化から、以下の数5に基づいて漏電抵抗値(RL)を演算する。
ただし、これらの式において、V1は時間(t)における漏電検出抵抗の両端の電圧VL(t)、V2は時間(t+Δt)における漏電検出抵抗の両端の電圧VL(t+Δt)、V3は時間(t+2Δt)における漏電検出抵抗の両端の電圧VL(t+Δt)であり、
Rは漏電検出抵抗の合成抵抗値、C1とC2は負荷と並列に接続している上記コンデンサの静電容量である。
本発明の請求項の漏電検出方法は、組電池1を構成する直列に接続された複数の電池のうち、任意の高電圧側と低電圧側との2箇所の電池の直列接続点3とシャーシアースとの間に、それぞれ直列に接続された漏電検出抵抗4と、該漏電検出抵抗4にそれぞれ直列に接続される漏電検出スイッチSW1,SW2とを備える漏電検出回路の、前記所定のサンプリング周期Δtで検出した三つの漏電検出抵抗4の両端の電圧を使って、漏電抵抗値RLを演算する電動車両用の漏電抵抗方法であって、一方の漏電スイッチSW1を閉じ、他方の漏電スイッチSW2を開いた状態と、一方の漏電スイッチSW1を開き、他方の漏電スイッチSW2を閉じた状態の各状態において検出した三つの漏電検出抵抗4の両端の電圧VL(t)を使って、漏電抵抗値RLを演算する。
本発明の電動車両用の漏電検出方法は、負荷側にコンデンサを接続する状態で、組電池の漏電抵抗値を速やかに検出できる。
本発明の請求項1の漏電検出方法は、電池を直列に接続している組電池の任意の直列接続点を、漏電検出抵抗を介してシャーシアースに接続した後、漏電検出抵抗のシャーシアースに対する電圧VL(t)を所定のサンプリング周期(Δt)で検出し、検出される電圧変化から漏電抵抗値を演算する。図2は組電池の漏電抵抗値が変化すると漏電検出抵抗の電圧が変化する状態を示す。この図に示すように、漏電抵抗値が変化すると電圧が変化する特性が変化する。この図において、漏電抵抗値が小さくなると、曲線Aから曲線Bに示すように、電圧が所定の電圧に飽和する時間が短くなる。このように、漏電抵抗値が電圧変化の特性を特定するので、電圧変化から漏電抵抗値は検出される。この方法は、電圧が変化する状態を検出して、漏電抵抗値を演算するので、コンデンサで電圧が飽和するまで待つことなく、漏電抵抗値を速やかに検出できる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための電動車両用の漏電検出方法を例示するものであって、本発明は電動車両用の漏電検出方法を以下のものに特定しない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
図3は、本発明の電動車両用の漏電検出方法に使用する漏電検出回路の一例を示す。この図に示す漏電検出回路は、複数の電池2を直列に接続した組電池1と、この組電池1を構成する電池2の任意の高電圧側と低電圧側の2箇所の直列接続点3とシャーシアース(=車両アース)との間に、それぞれ直列に接続された漏電検出抵抗4a、4bと、高電圧側の直列接続点3Aに接続される漏電検出抵抗4a、4bに直列に接続された漏電検出スイッチSW1と、低電圧側の直列接続点3Bに接続される漏電検出抵抗4a、4bに直列に接続された漏電検出スイッチSW2と、電池接続点3の電圧と漏電検出抵抗4a、4bの電圧を検出する電圧検出回路5とを備える。ここで、電池2の直列接続点3は、組電池1の両端でも良い。また、漏電検出スイッチSW1、SW2は個別のタイミングで開閉可能とする。
図の漏電検出回路は、2組の電圧検出回路5を備える。各々の電圧検出回路5は、時間(t)のタイミングで直列接続点3の電圧Vg(t)と漏電検出抵抗4aの電圧Vl(t)を検出する。プラス側の電圧検出回路5Aは、高電圧側の直列接続点3Aを基準点として、また、マイナス側の電圧検出回路5Bは、低電圧側の直列接続点3Bを基準点として、それぞれこれらに対する電圧を検出する。プラス側の電圧検出回路5Aは、時間(t)のタイミングで、高電圧側の直列接続点3Aの電圧Vg1(t)として、高電圧側の直列接続点3Aに対する中間接続点6の電圧を検出する。また、マイナス側の電圧検出回路5Bは、時間(t)のタイミングで、低電圧側の直列接続点3Bの電圧Vg2(t)として、低電圧側の直列接続点3Bに対する中間接続点9の電圧を検出する。
さらに、プラス側の電圧検出回路5Aは、時間(t)のタイミングで、高電圧側の直列接続点3Aに接続された一方の漏電検出スイッチSW1を閉じ、低電圧側の直列接続点3Bに接続された他方の漏電検出スイッチSW2を開いたとき、高電圧側の直列接続点3Aに接続される漏電検出抵抗4aの両端に発生する電圧Vl1(t)を検出する。また、マイナス側の電圧検出回路5Bは、時間(t)のタイミングで、低電圧側の直列接続点3Bに接続された他方の漏電検出スイッチSW2を閉じ、高電圧側の直列接続点3Aに接続された一方の漏電検出スイッチSW1を開いたとき、低電圧側の直列接続点3Bに接続される漏電検出抵抗4aの両端に発生する電圧Vl2(t)を検出する。
漏電検出回路は、異なる時間(t1)、(t2)において、検出された電圧Vg1(t1)、Vg2(t1)、Vl1(t1)、Vg1(t2)、Vg2(t2)、Vl2(t2)から、漏電抵抗値(RL)を以下の数8で演算する。電圧検出回路5が電圧Vg1(t1)、Vg2(t1)、Vl1(t1)、Vg1(t2)、Vg2(t2)、Vl2(t2)を検出して漏電抵抗値(RL)を演算するために、漏電検出スイッチSW1、SW2は、図4に示すタイミングでオンオフに切り換えられる。
図4に示すように、電圧検出回路5は、漏電検出スイッチSW1をON、漏電検出スイッチSW2をOFFとする状態から、漏電検出スイッチSW1をOFFに切り換える直前に、電圧データ組{Vg1(t1)、Vg2(t1)、Vl1(t1)}を検出する。続いて、漏電検出スイッチSW1をOFF、漏電検出スイッチSW2をONとする状態から、漏電検出スイッチSW2をOFFに切り換える直前に、電圧データ組{Vg1(t2)、Vg2(t2)、Vl1(t2)}を取得する。得られた電圧から、数8で漏電抵抗値(RL)が演算される。
ただし、この式において、Raは電流検出抵抗4aの抵抗値、Rbは電流検出抵抗4bの抵抗値である。
組電池1の負荷にコンデンサ8が接続される電動車両用は、図2に示すように電圧検出回路5が検出する漏電検出抵抗4aの両端の電圧Vl1(t)、Vl2(t)が、時間(t)と共に変化し、時間(t)が経過すると、所定の電圧値に飽和する。数8は、検出される電圧Vl1(t)、Vl2(t)が所定の電圧に飽和したときの電圧から正確な漏電抵抗値(RL)を演算できる。ただ、電圧検出回路5が検出する電圧Vl1(t)、Vl2(t)が飽和するまでに時間がかかる。電圧Vl1(t)、Vl2(t)が飽和する時間は、負荷に接続されるコンデンサ8の静電容量(C1、C2)と漏電抵抗値(RL)と漏電検出抵抗4a、4bの抵抗値(Ra、Rb)で変化する。すなわち、コンデンサ8と、漏電検出抵抗4a、4bと、漏電抵抗値(RL)により、電圧Vl1(t)、Vl2(t)の検出に対して時定数τが発生する。時定数τ(CR積)は、以下の数9で規定される。
ただし、この式において、Rは漏電検出抵抗4a、4bの合成抵抗であり、漏電検出抵抗4の全抵抗R=Ra+Rbである。
漏電検出抵抗4と漏電抵抗9は並列に接続される状態となり、コンデンサ8A、8Bは、2並列となる。ここで漏電抵抗値(RL)以外は、全て設計で決まる値である。仮に漏電が発生していない場合(漏電抵抗値RL=∞)、C1=C2=0.22μF、R=550kΩとすると、数9から時定数τ=0.242secとなる。電圧検出回路5が検出する電圧Vl1(t)、Vl2(t)を充分に飽和させるために、図4において、漏電検出スイッチSW1、SW2を切り換えた後、電圧を検出する測定禁止時間(T)を、時定数(τ)の0.242secよりも長く(例えば1/1000まで安定するまで待つ場合は、時定数の7倍)、例えば1.694sec以上を設定しないと正しい漏電抵抗値(RL)が求まらない。漏電抵抗値(RL)は、システムが漏電状態にあるかどうかを判定するために使用する値であり、あまり測定に長時間をかけるのは好ましくない。
本発明は、漏電抵抗値(RL)を検出する時間を短縮するために、以下の[1]ないし[3]の方法で漏電抵抗値を検出する。
[1]組電池1を構成する直列に接続された複数の電池2の任意の直列接続点3を、漏電検出スイッチSW1をオンに切り換えて、漏電検出抵抗4を介してシャーシアースに接続した後、時間(t)のタイミングで漏電検出抵抗4の両端の電圧VL(t)を所定のサンプリング周期(Δt)で検出し、検出される電圧値から漏電抵抗値(RL)を演算する。この方法は、電圧検出回路5が検出する電圧の変化量から時定数(τ)を求め、この時定数(τ)より漏電抵抗値(RL)を求める。
数9において、時定数(τ)が求まれば、漏電検出抵抗4の抵抗値(R)とコンデンサ8の静電容量(C1、C2)が定数であるため漏電抵抗値(RL)を算出することができる。漏電検出スイッチSW1、SW2を図5に示すように切り換え、漏電検出スイッチSW1がONに切り換えられたとき、所定のサンプリング周期(Δt)毎に、電圧検出回路5でもって漏電検出抵抗4の両端の電圧VL(t)をサンプリングする。このとき、各時間において、
時間t1(=Δt)にて、電圧V1(=VL(t1))
時間t2(=t1+Δt)にて、電圧V2(=VL(t1+Δt))
時間t3(=t1+2Δt)にて、電圧V3(=VL(t1+2Δt))
を計測する。電圧の変化量は時定数(τ)に従う減衰式で表現可能であり、以下と仮定する。
ただし、a、bは任意の定数
ここで各時間とデータ組(t1,V1)、(t1+Δt,V2)、(t1+2Δt,V3)にて、以下の3式を構成する。
上式からb項を消去する。
さらに、上式からa項を消去する。
この式より共通項e−t1/RCを消去する。
この式を、e−Δt/RCについて整理する。
この式を、e−Δt/RCについて解く。
この式の自然対数をとる。
これより、時定数τ=RCを求める。
数18の(τ)は、数9と等価であるため、数9を(RL)について解き、得られた数19に、数18で求められる(τ)を代入して漏電抵抗値(RL)が演算される。
この方法は、電圧検出回路5でもって、所定のサンプリング周期(Δt)で漏電検出抵抗4の両端の電圧を検出して、漏電抵抗値(RL)を検出できる。この方法は、原理的には、サンプリング周期(Δt)を短くしても漏電抵抗値(RL)を検出できる。ただ、サンプリング周期(Δt)が短すぎると、電圧検出回路5が検出する電圧変化が小さく、漏電抵抗値(RL)の検出精度が低下する。反対にサンプリング周期(Δt)を長くすると、漏電抵抗値(RL)の検出に時間がかかる。したがって、電圧検出回路5が電圧を検出するサンプリング周期(Δt)は、検出される漏電抵抗値(RL)の精度と、検出時間とを考慮して、たとえば、10msec〜300msec、好ましくは、50msec〜200msecとする。
[2]この方法は、数6を使用して漏電抵抗値(RL)を検出する。ただし、検出すべき漏電抵抗値(RL)の値を時定数上限として測定禁止時間(T)を規定して、漏電抵抗値(RL)を検出する。
通常、検出すべき漏電抵抗値(RL)は、予めシステム電圧から決定される。例えば許容される漏電抵抗値(RL(max))が500Ω/Vを基準とする場合、組電池1の定格電圧が300Vであると、許容される漏電抵抗値(RL(max))は150kΩとなり、この値よりも小さいときに、電動車両用は漏電状態にあると判定して、システムは異常を発令する。このため、組電池1に漏電が発生した場合、発生しうる時定数(τ)は予め見積もることができる。
図3の回路例にて、漏電検出抵抗4の抵抗値R=550kΩ、コンデンサ8の静電容量C1=C2=0.22μF、許容される漏電抵抗値RL(max)=150kΩとした場合、時定数(τ)は、数9より0.051secとなる。許容される漏電抵抗値(RL(max))を正確に検出するために、時定数(τ)の7倍を測定禁止時間(T)とした場合、測定禁止時間(T)を0.363secと見積もることができる。すなわち、漏電検出スイッチSW1、SW2をオンオフに切り換えた後、0.363sec経過した後、電圧検出回路5でもって電圧Vl1(t)、Vl2(t)を検出することで、数6を使用して、漏電抵抗値(RL)を正確に検出することができる。
この漏電検出方法は、計算方法として、従来の数4をそのまま適用可能であり、比較的簡単な式で許容される漏電抵抗値(RL)を求めることができる。この方法は、測定禁止時間(T)は、長くして許容される漏電抵抗値よりも大きな漏電抵抗値(RL)を検出できるが、測定禁止時間(T)を長くすると、測定に時間がかかる。したがって、測定禁止時間(T)はコンデンサ8と、漏電検出抵抗4及び許容される漏電抵抗値(RL(max))で規定される時定数(τ)の3〜10倍、好ましくは5〜10倍とする。
[3]漏電検出抵抗の両端の電圧変化量を求め、検出される電圧変化量が所定の電圧値に飽和するまでの収束時間(S)を検出し、この収束時間(S)から漏電抵抗値(RL)を検出する。
図6のタイミングにおいて短時間のサンプリングを実施し、毎回差分を求める。この図にて、漏電がない場合、毎回のサンプリング(例えば100msec毎)では時定数が長いため取得データが飽和しない。例えば1/1000を閾値として、変化量がこの範囲内である場合、すなわち、数20を満足する場合、飽和したと仮定する。
ただし、この式において、Vnは時間(tn)における漏電検出抵抗4の両端の電圧VL(tn)、Vn+1は時間(tn+1)における漏電検出抵抗4の両端の電圧VL(tn+1)である。
電圧変化量が所定値に飽和したことを検出すると、飽和までの収束時間(S)を検出する。図2に示すように、電圧が所定の電圧に飽和する収束時間(S)は、漏電抵抗値(RL)の関数となる。したがって、収束時間(S)を検出して、漏電抵抗値(RL)を検出できる。さらに、この漏電検出方法は、検出した収束時間(S)を設定時間に比較して、すなわち、検出する漏電検出抵抗(RL)の電圧が飽和するまでの時間を、許容される漏電抵抗値(RL(max))の状態で電圧が飽和するまでの時間に比較して、漏電抵抗値(RL)が許容される漏電抵抗値(RL(max))よりも大きいか小さいかを判定することができる。
さらに、この漏電検出方法では、漏電検出抵抗4の両端の電圧変化量が前述の数20を満足するときに、飽和したとして、前述の数7に基づいて漏電抵抗値(RL)を求めることもできる。この漏電検出方法も、計算方法として、従来の数4をそのまま適用可能であり、比較的簡単な式で許容される漏電抵抗値(RL)を求めることができる。この方法は、漏電検出抵抗4の電圧変化の飽和を検出した時点で漏電抵抗値(RL)を求めるので、常に正確な漏電抵抗値(RL)を演算できる。
さらに、この漏電検出方法では、漏電が発生しない間は時定数が長いため、長めの周期でサンプリングと漏電抵抗値(RL)の計算を行う。図6に示すように、漏電発生点にて漏電が発生したとする。このとき、抵抗分が小さくなるため時定数が短くなり、例えば図6において時間(tm)の結果が数20を満足した場合、飽和したとして漏電検出サイクルをこの時点まで短縮する。これにより、漏電が発生しない間は長周期でのサンプリングとし、漏電が発生した場合は短周期でのサンプリングとして、これらを自動的に切り換えることができる。この方法は、漏電状態を短時間で確実に判定することができるため、より安全なシステムが構築できる。
本発明の電動車両用の漏電検出方法は、負荷にコンデンサを接続している電気自動車やハイブリッド自動車の電源装置に好適に利用できる。
本出願人が先に出願した電動車両用の漏電検出方法に使用する漏電検出回路の回路図である。 漏電抵抗値によって漏電検出抵抗の電圧が変化する状態を示すグラフである。 本発明の一実施例にかかる電動車両用の漏電検出方法に使用する漏電検出回路の回路図である。 図3に示す漏電検出回路が漏電検出スイッチを切り換えて電圧を検出するタイミングを示す図である。 図3に示す漏電検出回路が所定のサンプリング周期で電圧を検出する一例を示す図である。 図3に示す漏電検出回路が所定のサンプリング周期で電圧を検出する他の一例を示す図である。
符号の説明
1…組電池
2…電池
3…直列接続点 3A…高電圧側の直列接続点
3B…低電圧側の直列接続点
4…漏電検出抵抗 4a…漏電検出抵抗
4b…漏電検出抵抗
5…電圧検出回路 5A…プラス側の電圧検出回路
5B…マイナス側の電圧検出回路
6…中間接続点
8…コンデンサ 8A…コンデンサ
8B…コンデンサ
9…漏電抵抗
10…組電池
11…電池
18…コンデンサ
SW1…漏電検出スイッチ
SW2…漏電検出スイッチ

Claims (3)

  1. 負荷側にコンデンサ(8)を接続している電動車両用の組電池(1)の漏電を検出するための電動車両用の漏電検出方法であって、
    組電池(1)を構成する直列に接続された複数の電池(2)の任意の直列接続点(3)を、漏電検出抵抗(4)を介してシャーシアースに接続した後、漏電検出抵抗(4)の両端の電圧(VL(t))を所定のサンプリング周期(Δt)で検出すると共に、検出した少なくとも三つの漏電検出抵抗(4)の両端の電圧(VL(t))を使って時定数(τ)を演算し、
    該時定数(τ)と、前記コンデンサの容量(C1)、(C2)と、前記漏電検出抵抗(4)の値(R)とを使って漏電抵抗値(RL)を演算する電動車両用の漏電検出方法。
  2. 組電池(1)を構成する直列に接続された複数の電池(2)の任意の直列接続点(3)を、漏電検出抵抗(4)を介してシャーシアースに接続した後、漏電検出抵抗(4)の両端の電圧(VL(t))を所定のサンプリング周期(Δt)で検出し、検出される電圧(VL(t))の変化から以下の数1に基づいて漏電抵抗値(RL)を演算する請求項1に記載される電動車両用の漏電検出方法。

    ただし、これらの式において、V1は時間(t)における漏電検出抵抗の両端の電圧VL(t)、V2は時間(t+Δt)における漏電検出抵抗の両端の電圧VL(t+Δt)、V3は時間(t+2Δt)における漏電検出抵抗の両端の電圧VL(t+2Δt)であり、
    Rは漏電検出抵抗の合成抵抗値、C1とC2は負荷と並列に接続しているコンデンサの静電容量である。
  3. 請求項1または請求項記載の漏電検出方法であって、
    組電池(1)を構成する直列に接続された複数の電池のうち、任意の高電圧側と低電圧側との2箇所の電池の直列接続点(3)とシャーシアースとの間に、それぞれ直列に接続された漏電検出抵抗(4)と、該漏電検出抵抗(4)にそれぞれ直列に接続される漏電検出スイッチ(SW1)、(SW2)とを備える漏電検出回路の、
    前記所定のサンプリング周期(Δt)で検出した三つの漏電検出抵抗(4)の両端の電圧(VL(t))を使って、漏電抵抗値(RL)を演算する電動車両用の漏電抵抗方法であって、
    一方の漏電スイッチ(SW1)を閉じ、他方の漏電スイッチ(SW2)を開いた状態と、一方の漏電スイッチ(SW1)を開き、他方の漏電スイッチ(SW2)を閉じた状態の各状態において検出した三つの漏電検出抵抗(4)の電圧(VL(t))を使って、漏電抵抗値(RL)を演算する電動車両用の漏電抵抗方法。
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