本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
この画像形成装置1は、被駆動素子(例えば、発光素子として3端子スイッチ素子である発光サイリスタ)を用いた3端子スイッチ素子アレイとしての発光素子アレイを有する露光装置(例えば、プリントヘッド)が搭載されたタンデム型電子写真カラープリンタであり、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体(例えば、感光体ドラム)11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置としてのプリントヘッド13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これらの定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
(実施例1のプリントヘッド)
図3は、図2中のプリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。図4は、図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
図3に示すプリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上に、図4に示す基板ユニットが固定されている。基板ユニットは、ベース部材13a上に固定されるプリント基板13bと、このプリント基板13b上に接着剤等で固定され、シフトレジスタが集積された複数の集積回路(以下「IC」という。)チップ100と、この各ICチップ100上に接着剤等で固定された複数のチップ状の発光素子列(例えば、発光サイリスタ列)からなる発光素子アレイ200とにより構成されている。各発光素子アレイ200と各ICチップ100とは、図示しない薄膜配線等により電気的に接続され、更に、各ICチップ100中の複数の端子とプリント基板13b上の図示しない配線パッドとが、ボンディングワイヤ13gにより電気的に接続されている。
複数の発光素子アレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるレンズアレイ(例えば、ロッドレンズアレイ)13cが配置され、このロッドレンズアレイ13cがホルダ13dにより固定されている。ベース部材13a、プリント基板13b及びホルダ13dは、クランプ部材13e,13fにより固定されている。
(実施例1のプリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印刷部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4つのプリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ50,52、用紙吸入口センサ54、用紙排出口センサ55、用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57、定着器用温度センサ58、帯電用高圧電源59、及び転写用高圧電源60等が接続されている。ドライバ50には現像・転写プロセス用モータ(PM)51が、ドライバ52には用紙送りモータ(PM)53が、帯電用高圧電源59には現像器14が、転写用高圧電源60には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ58によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ50を介して現像・転写プロセス用モータ51を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源59をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ53はドライバ52を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸入口センサ54が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データとして各プリントヘッド13に転送される。各プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた発光サイリスタを複数個略直線状に配列したものである。
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各プリントヘッド13によって印刷される情報は、負電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、負電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によって正電位に転写用高圧電源60がオン状態になり、転写ローラ27は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出口センサ55を通過してプリンタ外部へ排出される。
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ57、及び用紙吸入口センサ54の検知に対応して、用紙20が転写ローラ27を通過している間だけ転写用高圧電源60からの電圧を転写ローラ27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出口センサ55を通過すると、帯電用高圧電源59による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ51の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッド)
図1は、本発明の実施例1における図5中の印刷制御部40及びプリントヘッド13の概略の回路構成を示すブロック図である。
プリントヘッド13と印刷制御部40とは、例えば、複数の接続ケーブル70(=70−1〜70−3)及び接続コネクタ71(=71−1〜71−3),72(=72−1〜72−3)を介して、電気的に接続されている。
複数の接続ケーブル70(=70−1〜70−3)は、例えば、同軸構造を備えた同軸ケーブル、絶縁電線、ツイストペア電線(信号往路と信号復路の芯線を近接配置し、両者を捻りつつ組みとしたもの)、フレキシブルフラットケーブル、又は、フレキシブルプリント配線板等で構成されている。
プリントヘッド13は、ICチップ100内に形成されたシフトレジスタ110と、発光素子アレイ200とを有している。
シフトレジスタ110は、接続コネクタ72−3から入力されるクロック信号(以下単に「クロック」という。)としてのシリアルクロックSCKに基づき、接続コネクタ72−2からシリアルデータSIを入力し、複数のトリガ信号を順に複数の出力端子Q1〜Qn,・・・から出力し、発光素子アレイ200をオン/オフ動作させる回路であり、複数個のフリップフロップ回路(以下「FF」という。)111(=111−1〜111−n,・・・)を有している。各FF111は、データを入力する入力端子D、データを出力する出力端子Q、及びシリアルクロックSCKを入力するクロック端子CKをそれぞれ有し、初段のFF111−1の入力端子DがシリアルデータSIを入力し、このFF111−1の出力端子Qが、2段目のFF111−2の入力端子Dに接続され、以下同様に終段のFF111−n,・・・まで縦続接続されている。
このシフトレジスタ110では、印刷制御部40から接続コネクタ71−2,71−3、接続ケーブル70−2,70−3及び接続コネクタ72−2,72−3を介して、シリアルクロックSCK及びシリアルデータSIが供給されると、シリアルクロックSCKに同期して、シリアルデータSIを初段から終段のFF111−1〜111−n,・・・へと順次入力してシフトしていき、シフトしたデータを各段の出力端子Q1〜Qn,・・・から出力する構成になっている。
シフトレジスタ110は、例えば、シリコンウェハ基材上に公知のCMOS構造を用いて作成されるが、その他、ガラス基板上に公知の薄膜トランジスタ(TFT)技術を用いて製造することもできる。
発光素子アレイ200は、3端子発光素子である例えば複数のNゲート型発光サイリスタ210(=210−1〜210−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210の第1端子(例えば、カソード)が第1電源(例えば、グランドGND=0V)に接続され、第2端子(例えば、アノード)が駆動電流Ioutを流す共通端子INに接続され、第1制御端子(例えば、ゲート)がシフトレジスタ110の各出力端子Q1〜Qn,・・・に接続されている。各発光サイリスタ210は、アノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートに“L”レベルのトリガ信号が入力されると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。シフトレジスタ110のFF111−1〜111−n,・・・の総数と、発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・の総数とは、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッドの場合、それぞれ4992個であり、これらが配列されることになる。
印刷制御部40は、発光素子アレイ200のオン/オフを指令する駆動信号としてのオン/オフ指令信号DRVON−N(但し、「−N」は負論理を意味する。)、シフトレジスタ110に対する制御信号であるシリアルデータSI及びシリアルクロックSCKをプリントヘッド13へ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200を時分割に駆動する複数の駆動回路41等とを有している。図1においては、説明を簡略化するために1個の駆動回路41のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41によってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
印刷制御部40側の駆動回路41等と、プリントヘッド13側のシフトレジスタ110とにより、本実施例1の駆動装置が構成されている。
一例として典型的な設計例を挙げると、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4のプリント基板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、駆動回路41は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらの駆動回路41における出力端子の総数が26である。なお、駆動回路41は、図1においては印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13の内部に配置しても良い。
駆動回路41は、入力されるオン/オフ指令信号DRVON−Nを反転してデータ端子DAに出力するCMOSインバータ42により構成されている。CMOSインバータ42は、第1導電型の第1MOSトランジスタ(例えば、PチャネルMOSトランジスタ、以下「PMOS」という。)43と、第2導電型の第2MOSトランジスタ(例えば、NチャネルMOSトランジスタ、以下「NMOS」という。)44とを有し、これらが第2電源(例えば、電源電圧VDD電源)とグランドGNDとの間に直列に接続されている。
即ち、PMOS43は、第2制御端子(例えば、ゲート)にオン/オフ指令信号DRVON−Nが入力され、第3端子(例えば、ソース)がVDD電源に接続され、第4端子(例えば、ドレーン)がデータ端子DAに接続され、サブストレート端子がVDD電源の電位とは異なる電位(例えば、VDD電源より高い電位)の第3電源(例えば、電源電圧VDD5電源)に接続されている。NMOS44は、ゲートにオン/オフ指令信号DRVON−Nが入力され、ソースがグランドGNDに接続され、ドレーンがデータ端子DAに接続されている。データ端子DAは、接続コネクタ71−1、接続ケーブル70−1、及び接続コネクタ72−1を介して、発光素子アレイ200側の共通端子INに接続されている。
(実施例1の発光サイリスタ)
図6(a)〜(d)は、図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
図6(a)は、発光サイリスタ210の回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
図6(b)は、発光サイリスタ210の断面構造を示す図である。発光サイリスタ210は、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic-Chemical Vapor Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハを形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層213の一部に、選択的にP型不純物領域214を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域214とN型領域213にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
図6(c)は、発光サイリスタ210の他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層215とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域215の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、N型領域213にゲートGが形成される。
図6(d)は、図6(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210の等価回路図である。発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTR」という。)221とNPNトランジスタ(以下「NPNTR」という。)222とからなり、PNPTR221のエミッタが発光サイリスタ210のアノードAに相当し、PNPTR221のベースが発光サイリスタ210のゲートGに相当し、NPNTR222のエミッタが発光サイリスタ210のカソードKに相当している。又、PNPTR221のコレクタは、NPNTR222のベースに接続され、PNPTR221のベースが、NPNTR222のコレクタに接続されている。
なお、図6に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
図6の発光サイリスタ210は、例えば、エピタキシャルフィルムボンディング法を用いて、シフトレジスタ110を集積したICウェハと接着され、両者の接続端子間がフォトリソグラフィ法を用いて配線される。更に、公知のダイシング法を用いて複数のチップに分離することで、図4に示すように、ICチップ100及び発光素子アレイ200からなる複合チップが形成される。
(図1中のPMOS)
図7(a)、(b)は、図1中のPMOS43を示す構成図である。
図7(a)は、PMOS43の回路シンボルを示し、ドレーンD、ゲートG、ソースS、及びサブストレート端子subの4つの端子を有している。図7(b)は、PMOS43のチャネル方向への縦断面を示す断面図である。
図7(b)に示すように、PMOS43は、図1中のNMOS44と共に、例えば、P型シリコンウェハからなる基板300に形成されている。基板300の表面内には図示しないNMOS44が形成され、このNMOS44に対してPMOS43を電気的に分離するために、PMOS形成用のサブストレート領域(例えば、Nウェル領域(Nwell))301が、基板300内に形成されている。Nウェル領域301は、基板300内にN型不純物を島状に拡散して形成される。Nウェル領域301内には、P型不純物を拡散してソース領域302とドレーン領域303とが対向して形成されている。
ソース領域302とドレーン領域303との間のチャネル形成予定領域上には、図示しないゲート絶縁膜を介して、ポリシリコンからなるゲート部305が形成されている。ソース領域302とドレーン領域303とは、ゲート部305をマスクとして、P型不純物を基板300中に拡散させることにより形成される。これらのソース領域302、ドレーン領域303、及びゲート部305により、PMOS43が構成されており、このPMOS43を図示しない他の素子と電気的に分離するために、ソース領域302及びドレーン領域303の周囲にフィールド酸化膜304が形成されている。
ソース領域302、ドレーン領域303、及びゲート部305上のコンタクト領域には、図示しない金属電極が形成され、Nウェル領域301にサブストレート端子subが、ソース領域302にソースSが、ドレーン領域303にドレーンDが、ゲート部305にゲートGが、それぞれ接続されている。全体は、図示しないパッシベーション膜により覆われている。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図1において、例えば、印刷制御部40におけるオン/オフ指令信号DRVON−Nが“H”レベルの場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオフ状態、NMOS44がオン状態となり、出力側のデータ端子DAは、“L”レベル(≒0V)となる。この結果、接続コネクタ71−1、接続ケーブル70−1及び接続コネクタ72−1を介して、プリントヘッド13側の共通端子INも略0Vとなり、各発光サイリスタ210のアノードへ流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nが全て非発光状態となる。
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−N信号が“L”レベルの場合、CMOSインバータ42を構成するPMOS43がオン状態、NMOS44がオフとなり、出力側のデータ端子DAが“H”レベルとなる。この結果、接続コネクタ71−1、接続ケーブル70−1、接続コネクタ72−1及びプリントヘッド13側の共通端子INを介して、発光サイリスタ210のアノードへ駆動電流Ioutが流れ、発光サイリスタ210−1〜210−nの内、シフトレジスタ110により発光指令されている発光サイリスタ210のゲートに“L”レベルのトリガ信号が与えられて選択的に発光状態となる。
ここで、PMOS43は、ソースがVDD電源と接続され、サブストレート端子がVDD5電源と接続されており、典型的な設計例においては、VDD電源の電圧は3.3V、VDD5電源の電圧は5Vに設定される。このように、PMOS43のソース・サブストレート端子間には電位差が設定されているので、このPMOS43においては基板バイアス効果を生じ、その電位差に応じて閾値電圧Vtpが増加するようになっている。
この結果、PMOS43が飽和領域で動作するようになって、電子デバイス物理の理論により良く知られているように、この時のドレーン電流Idは次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtp)2
但し、K;定数
W;PMOS43のゲート幅
L;PMOS43のゲート長
Vtp;PMOS43の閾値電圧
Vgs;PMOS43のゲート・ソース間電圧(≒電源電圧VDD)
この式から明らかなように、PMOS43のドレーン電流Id、即ち発光サイリスタ210の駆動電流Ioutは、VDD電源及びVDD5電源の電圧を調整することで変化させることができる。その上、PMOS43のように、飽和領域で動作するMOSトランジスタにおいては、その素子サイズを適切に設定することで、ドレーン電位が多少変動したとしてもドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性はMOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには前記ゲート長Lを大きめに設定することが望ましい。
なお、図1における駆動回路41においては、データ端子DAを“L”レベルとするためにNMOS44を設けているが、PMOS43をオフすることで、駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210−1〜210−8をターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210のスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、NMOS44を省略することも可能である。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図8は、図1のプリントヘッド13及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイムチャートである。
この図8では、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図1の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
先ず、画像形成装置1のおける電源投入時の予備動作として、図1のシフトレジスタ110のリセット処理が行われる。このリセット処理では、シリアルデータSIを“H”レベルとしておき、シフトレジスタ110の段数(例えば、n=8)に相当する個数のシリアルクロックSCKのクロックパルスを、接続コネクタ71−3、接続ケーブル70−3及び接続コネクタ72−3を介して、シフトレジスタ110に入力する。これにより、“H”レベルのシリアルデータSIが、接続コネクタ71−2、接続ケーブル70−2及び接続コネクタ72−2を介して、全シフトレジスタ111−1〜111−8へ入力され、この全出力端子Q1〜Q8が“H”レベルとなる。
1ライン分の走査に先立ち、図8の時刻t1において、シリアルデータSIが“L”レベルに設定される。次いで時刻t2において、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1が入力される。第1パルスSCK1が立ち上がると、シリアルデータSIは、接続コネクタ71−2、接続ケーブル70−2及び接続コネクタ72−2を介して、シフトレジスタ110内の第1段FF111−1に取り込まれ、これより僅かに遅れて、第1段FF111−1の出力端子Qlが“L”レベルへと遷移する。第1パルスSCK1が立ち上がった後で、時刻t3にてシリアルデータSIが再び“H”レベルに戻される。
第1段FF111−1の出力端子Q1が“L”レベルとなることで、発光サイリスタ210−1のゲート電位が低下する。次いで時刻t4にて、オン/オフ指令信号DRVON−Nが“H”レベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のNMOS44がオン状態になってデータ端子DAが“L”レベルになり、接続コネクタ71−1、接続ケーブル70−1、接続コネクタ72−1及び共通端子INを介して、発光サイリス210−1のアノード・ゲート間に電位差を生じる。この結果、シフトレジスタ110による“L”レベルのトリガ信号によって、発光サイリスタ210−1がターンオンして発光状態となる
発光サイリスタ210−1による発光状態は、主としてアノード・カソード間に流れる電流によるので、一度ターンオンした発光サイリスタ210−1をオフさせるためには、アノード・カソード間に印加される電圧を略0Vにする必要がある。そのため、時刻t5において、オン/オフ指令信号DRVON−Nが“H”レベルにされる。すると、CMOS42のNMOS44がオン状態になってデータ端子DAの電位が“L”レベルとなり、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間電圧が略0Vとなり、この発光サイリスタ210−1がオフする。
前述したように、発光サイリスタ210−1〜210−8の発光出力は、主としてそのアノード・カソード間に流れる駆動電流Ioutの電流値によるので、図1において駆動信号源として定電流特性を有する駆動回路41を用いることで、発光サイリスタ210の発光時におけるアノード・カソード間電圧に多少の素子ばらつきを生じていたとしても、その駆動電流Ioutを所定値に保つことができる。
なお、図8では、発光サイリスタ210−1を発光させるために、時刻t4でデータ端子DAを“H”レベルとし、消灯させるために時刻t5で“L”レベルとしているが、発光サイリスタ210−1を発光させる必要がない場合には、時刻t4〜t5の間もデータ端子DAを“L”レベルのままとすれば良い。このように、データ端子DAの論理レベルにより、発光サイリスタ210−1の発光状態/非発光状態を切り替えることができる。
次いで、時刻t6において、シリアルクロックSCKの第2パルスSCK2が立ち上がる。この時、シリアルデータSIは“H”レベルとなっているので、これより僅かに遅れて、シフトレジスタ110内における第1段FF111−1の出力端子Q1が“H”レベルへと遷移する一方で、第2段FF111−2の出力端子Q2が“L”レベルに変化する。時刻t7において、オン/オフ指令信号DRVON−Nが“L”レベルにされる。これにより、CMOS42のPMOS43がオン状態になってデータ端子DAが“H”レベルになる。この結果、発光サイリスタ210−2のアノード・ゲート間に電位差を生じ、シフトレジスタ110による“L”レベルのトリガ信号によって発光サイリスタ210−2がターンオンして発光状態となる。
発光サイリスタ210−2による発光状態は、主としてアノード・カソード間に流れる駆動電流Ioutの電流値によるので、一度ターンオンした発光サイリスタ210−2をオフさせるためには、アノード・カソード間に印加される電圧を略0Vにすることが必要になる。そのため、時刻t8において、オン/オフ指令信号DRVON−Nが“H”レベルにされる。これにより、CMOSインバータ42のNMOS44がオン状態になってデータ端子DAの電位が“L”レベルになり、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間電圧が略0Vになって発光サイリスタ210−2がオフ状態になる。
このように、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1、第2パルスSCK2、第3パルスSCK3、第4パルスSCK4、第5パルスSCK5、第6パルスSCK6、第7パルスSCK7、第8パルスSCK8及び第9パルスSCK9が立ち上がる毎に、シフトレジスタ110の第1段出力端子Q1、第2段出力端子Q2、第3段出力端子Q3、第4段出力端子Q4、第5段出力端子Q5、第6段出力端子Q6、第7段出力端子Q7、及び第8段出力端子Q8が順次1出力端子Qだけが“L”レベルとなり、他の出力端子Qが“H”レベルとなる。このため、シリアルデータSIが“H”レベルの時、出力端子Q1〜Q8に接続される発光サイリスタ210−1〜210−8の内、対応する出力端子Q1〜Q8が“L”レベルとなっているものだけが択一的に発光する。
この際、発光サイリスタ210−1〜210−8をオンさせるためには、これらの発光サイリスタ210−1〜210−8のアノード・ゲート間を順方向にバイアスさせる電位差を与え、“L”レベルのゲート信号を与えるだけで良い。又、発光サイリスタ210−1〜210−8をオフ状態のままとするためには、アノード・ゲート間の電位差を順方向電圧以下としておくだけで十分であり、電位差を0Vにしたり、逆方向へ電圧を印加することもできる。
更に、図8の発光サイリスタ210−1における時刻t4〜t5間の駆動時間T1、発光サイリスタ210−2における時刻t7〜t8間の駆動時間T2等は、異なる時間であっても良く、発光サイリスタ210−1〜210−8等の発光効率にばらつきを生じていたとしても、これを補正して所定の露光エネルギー量が得られるようにするため、駆動時間T1,T2等を異なる値に制御することは容易である。
(実施例1の発光サイリスタの動作)
図9(a)〜(d)は、図6の発光サイリスタ210におけるターンオン過程の動作説明図であり、同図(a)は発光サイリスタ210のシンボルと各端子の電圧、電流の記号を示す図、同図(b)は同図(a)の等価回路を示す図、及び同図(c)、(d)は動作波形を示す図である。
図9(a)に示す発光サイリスタ210において、Vaはアノード電圧、Vgkはゲート・カソード間電圧、Iaはアノード電流、及び、Igはゲート電流である。
図9(b)において、破線で囲まれた発光サイリスタ210の等価回路は、PNPTR221及びNPNTR222により構成されている。
例えば、発光サイリスタ210のターンオン過程を説明するために、ゲートが“L”レベルになっている場合を考える。
発光サイリスタ210を駆動するために図示しないゲート駆動回路の出力電圧が“H”レベルとされ、アノード電流Iaが発生する。この時、アノード電流Iaは、発光サイリス210のアノード・ゲート間のPN接合、即ちNPNTR221のエミッタ・ベース間を順方向電流となって流れ、ゲート電流Igを生じる。ゲート電流Igが流れる結果、発光サイリスタ210にはアノード電圧Vaを生じる。
ゲート電流Igは、発光サイリスタ210の内部にあるPNPTR221のベース電流Ibに相当するものであり、このベース電流Ibが流れることで、PNPTR221がオン状態への移行を開始して、このPNPTR221のコレクタにはコレクタ電流を生じる。このコレクタ電流は、NPNTR222のベース電流となり、このNPNTR222をオン状態へと移行させる。これにより生じたコレクタ電流は、PNPTR221のベース電流Ibを増強し、このPNPTR221のオン状態への移行を加速させることになる。
一方、NPNTR222が完全にオン状態に移行した後には、そのコレクタ・エミッタ間電圧、即ち、ゲート・カソード間電圧Vgkが低下して、図示しないゲート駆動回路の“L”レベル出力電圧(VoL)以下となると、発光サイリスタ210のゲートからゲート駆動回路の出力端子側に流れるゲート電流Igが略ゼロとなる。この結果、発光サイリスタ210のカソードには、アノード電流Iaと略等しいカソード電流Ikが流れることになり、発光サイリスタ210は完全にオン状態となる。
図9(c)は、発光サイリスタ210のターンオン過程を説明する図であって、横軸にアノード電流Ia、縦軸にアノード電圧Vaを示している。
発光サイリスタ210の消灯状態において、アノード電流Iaは略ゼロであり、図9(c)のグラフの原点(0,0)の状態にある。発光サイリスタ210のターンオン開始に伴い、アノード駆動が行われると、図9(c)中の矢印で示したようにアノード電圧Vaが上昇して、ピーク点のアノード電圧Vpに到達する。
発光サイリスタ210のアノード・ゲート間電圧Vagは、PNPTR221のエミッタ・ベース間電圧Vbeと等しく、ゲート駆動回路の“L”レベル出力電圧(VoL)とピーク点のアノード電圧Vpとの間には、
Vp=Vag+VoL
の関係がある。ピーク点のアノード電圧Vpが順方向に印加されることで、ゲート電流Ig(=PNPTR221のベース電流Ib)を生じる。図9(c)において、丸印を付して示すポイント(Ip,Vp)は、発光サイリスタ210のオフ領域AR1とオン遷移領域AR2との境目に相当している。
ポイント(Ip,Vp)におけるピーク点のアノード電流Ipから、更にアノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電圧Vaが低下していき、丸印を付して示すポイント(Iv,Vv)に到達する。このポイント(Iv,Vv)は、発光サイリスタ210のオン遷移領域AR2とオン領域AR3との境目に相当しており、この時のゲート電流Igが略ゼロにまで低下していて、図示しないゲート駆動回路は、実質的に発光サイリスタ210のゲートから切り離されたのと等価な状態にある。
ポイント(Iv,Vv)から更にアノード電流Iaが増加するに伴い、アノード電圧Vaが増加していき、丸印を付して示すポイント(Il,Vl)に到達する。このポイント(Il,Vl)は、発光サイリスタ210の発光駆動の最終動作ポイントであり、図1の駆動回路41から供給される駆動電流Ioutに等しいアノード電流Ia(=Il)により、所定の発光パワーで発光駆動が行われる。
図9(d)は、図9(c)に対応する図であって、横軸にアノード電流Ia、縦軸にゲート電流Igを示しており、前記発光サイリスタ210のターンオン過程において生じる発光サイリスタ210のゲート電流Igとそのピーク値Ig1と前記アノード電圧Vpとアノード電流Ipとの関係を示している。
なお、図9(c)に示すオン遷移領域AR2においては、アノード電流Iaの増加によりアノード電圧Vaが低下する特性を示しており、このオン遷移領域AR2でアノード・カソード間は負性抵抗を示す。図9(c)において一点鎖線で示すのは、前記負性抵抗領域における特性線の接線であって、この接線の傾きが負性抵抗値に対応しており、その負性抵抗値は、発光サイリスタ210の製造ばらつきやチップ温度等により変動するが、典型例では数kΩに達するものである。
これに対し、従来の駆動回路(図1の駆動回路41に相当)は、PMOS及びNMOSからなるCMOSインバータ(図1のCMOSインバータ42に対応)と、このCMOSインバータの出力側と発光サイリスタのアノード(図1の発光サイリスタ210のアノードに相当)との間に接続された電流制限抵抗とにより構成され、その電流制限抵抗の抵抗値の典型例が、例えば180Ωに設定されている。そのため、従来の駆動回路を用いて図9の特性の発光サイリスタ210を駆動する場合を考えると、そのターンオン過程は、図9(c)のグラフの原点(0,0)を出発して図9(c)中の矢印で示す通り、ポイント(Ip,Vp)を経由してポイント(Iv,Vv)に至り、最終的にポイント(Il,Vl)で発光駆動が行われることになる。その途中でオン遷移領域AR2にて示す負性抵抗領域を経由することになるが、前記駆動回路の出力抵抗値(これは前記電流制限抵抗の抵抗値に略等しい)は、発光サイリスタ210の負性抵抗値よりも小さいため、そのオン遷移領域AR2で発振してしまうという間題点があった。
このような従来の問題点を解決するために、本実施例1の駆動回路41では、従来の電流制限抵抗を省略し、CMOSインバータ42におけるPMOS43を図7のような構成にしている。以下、本実施例1におけるPMOS43のトランジスタ特性を説明する。
(実施例1のPMOSのトランジスタ特性)
図10(a)、(b)は、図7のPMOS43のトランジスタ特性を示す図である。
図10(a)は、PMOS43のゲート電圧とドレーン電流の関係を示す図であって、横軸はゲート・ソース間電圧Vgsを示し、縦軸にドレーン電流の平方根をSQRT(Id)として示している。
図10(a)において、例えば、曲線TC1はゲート・ソース間電圧Vgsの増加に対して略直線的に変化しており、この曲線TC1の接線と横軸との交点が、PMOS43の閾値電圧Vt1となっている。なお、曲線TC1は、図1においてソース・サブストレート端子間の電位差がない場合を示しており、通常のPMOSの特性と等しい。これに対し、図1のようにPMOS43のソース電位VDDよりもサブストレート端子電位VDD5を高くした場合には、曲線TC2のように、閾値電圧Vt1が大きくなる方向にシフトしていく(この時の閾値電圧はVt2)。このような特性変動は、基板バイアス効果として知られている現象である。PMOS43のソース電圧VDDよりもサブストレート端子電圧VDD5を更に高くし、例えば、VDD=3.3V、VDD5=5Vとすると、曲線TC3の状態となる。
図10(b)は、PMOS43において、ゲート・ソース間電圧Vgsを電源電圧VDDに略等しくした場合におけるドレーン電圧とドレーン電流の関係を模式的に示す図であって、横軸はドレーン・ソース間電圧Vdsを示し、縦軸にドレーン電流Idを示している。
図10(b)において、曲線TC10は図10(a)の曲線TC1と、曲線TC20は図10(a)の曲線TC2と、曲線TC30は図10(a)の曲線TC3とに対応するものであって、例えば、曲線TC10においてはドレーン電流Idとして大きな値が得られる一方で、ドレーン・ソース間電圧Vdsが増加するに従いドレーン電流Idもまた増加する特性となる。又、曲線TC30においては、曲線TC10の場合よりもドレーン電流Idが小さくなってしまうものの、ドレーン・ソース間電圧Vdsが所定値以上であれば、ドレーン電流Idが略一定とみなせて駆動電流Ioutとなり、ドレーン・ソース間電圧Vdsによらない定電流特性が得られることが判る。
以上の関係を定量的に説明すると、電子デバイス物理の理論により良く知られているように、PMOS43のドレーン電流Idは、次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtp)2
但し、K;定数
W;PMOS43のゲート幅
L;PMOS43のゲート長
Vgs;PMOS43のゲート・ソース間電圧
Vtp;PMOS43の閾値電圧
図1及び図7を用いて説明したように、本実施例1の駆動回路41において、PMOS43のソースとサブストレート端子は切り離され、両者間には電位差が設定され、ソース電圧(=VDD)よりもサブストレート端子電圧(=VDD5)が高い電圧に設定される。そのため、それにより生じる基板バイアス効果により、PMOS43の閾値電圧Vtpを増加させることができて、サブストレート端子電圧(=VDD5)によってドレーン電流Idを調整することができる。
この時、PMOS43のゲート・ソース間に印加される電圧は、電源電圧VDDに略等しく、たかだか3.3V程度であるため、前述した閾値電圧Vtpの増加によって、オーバドライブ電圧ΔV(=Vgs−Vt)が減少していき、PMOS43は飽和領域で動作するようになる。
PMOS43のゲート幅Wとゲート長Lの比は、PMOS43の設計段階で比較的自由に、広範囲に渡って変化させることが可能であり、前述したように前記閾値電圧Vtpもまた調整することが可能であって、前記ドレーン電流Idもまた比較的自由に調整することができる。
又、PMOS43においては、このゲート長Lを比較的大きめに設定することで、ドレーン電圧が多少変動したとしても、ドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性はPMOSの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには、PMOS43のゲート長Lを大きめに設定することが望ましい。
前記PMOS43が定電流動作する場合、その出力抵抗値は非常に大きくなり(理想的には無限大)、図9に示す発光サイリスタ210の特性曲線に引いた負荷線は略縦線となって、発光サイリスタ210の特性曲線とは唯一点でのみ交わることになる。
このようにすることで、本実施例1の駆動回路41では、発光サイリスタ210の負性抵抗に起因して発振するという従来の問題を解決することができる。
(本実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(1)〜(3)のような効果がある。
(1) 本実施例1の駆動回路41を有する駆動装置とこれを用いたプリントヘッド13によれば、駆動回路41におけるPMOS43に基板バイアス効果を与えることで、閾値電圧Vtpを増加させ、飽和領域動作させることでPMOS43による定電流駆動を実現している。そのため、駆動回路41の出力抵抗値を発光サイリスタ210の負性抵抗値よりも大きくすることができ、負性抵抗に起因する発振現象を未然に防止することができる。
(2) 駆動回路41と発光サイリスタ210との間には、接続ケーブル70−1が介在しており、その配線抵抗に起因する電圧降下が生じる。しかし、本実施例1における駆動回路41は、略定電流特性を有するので、接続ケーブル70−1による電圧降下に変動を生じたとしても、駆動電流値を略一定のままとすることができ、発光サイリスタ210の駆動エネルギー量には変動を生じないという効果も得られる。
(3) 本実施例1の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13を採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。即ち、プリントヘッド13を用いることにより、本実施例1のフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に、露光装置としてのプリントヘッド13を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッド)
図11は、本発明の実施例2における印刷制御部及びプリントヘッドの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例3の画像形成装置1では、プリントヘッド13Aの回路構成が、実施例1のプリントヘッド13と異なる。本実施例3のプリントヘッド13Aは、実施例1と同様のシフトレジスタ110及び発光素子アレイ200と、新たに追加された終端回路120とを有している。
終端回路120は、発光素子アレイ200の終端部に配置され、共通端子INに接続されている。この終端回路120は、複数の終端抵抗130(=130−1〜130−3,・・・)とコンデンサ140との直列回路で構成され、特定の終端抵抗の接続点(例えば、終端抵抗130−1及び130−2の接続点)が共通端子INに接続され、この共通端子INと接地電位端子(グランド)との間に、終端抵抗130−1及びコンデンサ140が直列に接続されている。
その他の構成は、実施例1と同様である。
(実施例2の終端抵抗)
図12(a)〜(d)は、図11中の終端抵抗130を示す構成図である。
図12(a)、(c)は、図4中のICチップ100の所定箇所に形成された終端抵抗130の構成例を示す平面図、図12(b)は図12(a)中のX1−X2線断面図、及び、図12(d)は図12(c)中のY1−Y2線断面図である。
図12(a)、(b)に示される終端抵抗130は、図1中のシフトレジスタ110が形成された図4中のICチップ100内に配置され、ポリシリコン素材であるポリシリコン膜により形成されている。
即ち、ICチップ100内において、シフトレジスタ110が形成された半導体基板(例えば、シリコン基板)101上には、フィールド酸化膜102が形成され、このフィールド酸化膜102上に、ポリシリコン膜からなる終端抵抗130が形成されている。終端抵抗130は、層間絶縁膜131により覆われ、この層間絶縁膜131上に、金属配線132が形成されている。終端抵抗130の両端は、層間絶縁膜131に開口されたコンタクト開口部131a,131bを介して、上層の金属配線132と電気的に接続されている。金属配線132は、保護膜であるパッシベーション膜133により覆われている。
終端抵抗130を形成しているポリシリコン膜の幅をW、このポリシリコン膜の両端に位置するコンタクト開口部131a,131b間の距離をLとし、ポリシリコン膜のシート抵抗をRs[Ω/□]、コンタクト開口部131a,131b間の抵抗値である終端抵抗130の抵抗値をRLとした場合、この抵抗値RLは次式で与えられる。
RL=(L/W)×Rs
この式から明らかなように、終端抵抗130は、ポリシコン膜にて形成されるので、ポリシリコン膜の幅W、及びコンタクト開口部131a,131b間の距離Lを適切に設定することで、所望の抵抗値RLに設定することができる。
図12(c)、(c)に示される終端抵抗130は、図1中のシフトレジスタ110が形成された図4中のICチップ100内に配置され、前記ポリシリコン膜に代えて、不純物を拡散して形成した拡散抵抗素材からなる拡散抵抗領域により形成されている。
即ち、ICチップ100内において、シフトレジスタ110が形成されたシリコン基板101内には、拡散抵抗領域からなる終端抵抗130が形成されている。拡散抵抗領域は、シリコン基板101がP型不純物を含むP型シリコン基板の場合、このP型シリコン基板内にN型不純物を拡散させて形成し、シリコン基板101がN型不純物を含むN型シリコン基板の場合、このN型シリコン基板内にP型不純物を拡散させて形成する。あるいは、N型シリコン基板内にP型ウェル部を形成して、このP型ウェル部内にN型不純物を拡散させて拡散抵抗領域を形成したり、P型シリコン基板内にN型ウェル部を形成して、このN型ウェル部内にP型不純物を拡散させて拡散抵抗領域を形成しても良い。
拡散抵抗領域からなる終端抵抗130が形成されたシリコン基板101は、層間絶縁膜131により覆われ、この層間絶縁膜131上に、金属配線132が形成されている。終端抵抗130の両端は、層間絶縁膜131に開口されたコンタクト開口部131a,131bを介して、上層の金属配線132と電気的に接続されている。金属配線132は、パッシベーション膜133により覆われている。
終端抵抗130を形成している拡散抵抗領域の幅をW、この拡散抵抗領域の両端に位置するコンタクト開口部131a,131b間の距離をLとし、拡散抵抗領域のシート抵抗をRs[Ω/□]、コンタクト開口部131a,131b間の抵抗値である終端抵抗130の抵抗値をRLとした場合、この抵抗値RLは次式で与えられる。
RL=(L/W)×Rs
この式から明らかなように、終端抵抗130は、拡散抵抗領域にて形成されるので、拡散抵抗領域の幅W、及びコンタクト開口部131a,131b間の距離Lを適切に設定することで、所望の抵抗値RLに設定することができる。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの動作)
図13(a)〜(d)は、図11における印刷制御部40及びプリントヘッド13Aの動作を示す図であり、同図(a)は図11における駆動回路41と1つの発光サイリスタ210と終端回路120との等価回路をモデル化した図、及び、同図(b)〜(d)はその動作時の電流波形図である。
図13(a)において、図11中の駆動回路41は、駆動電流Isを出力する定電流の駆動信号源のシンボルにて示されている。この駆動回路41は、接続ケーブル70−1を介して、プリントヘッド13Aに接続されている。接続ケーブル70−1は、特性インピーダンスがZoで、信号伝達遅延時間をTdとして持つ伝送路として示されている。
プリントヘッド13A側において、発光サイリスタ210をオン状態にするため、このゲート・カソード間に抵抗Rgが接続されている。これにより、発光サイリスタ210のアノードから流入するアノード電流Idの内、一部の電流成分がゲート電流として抵抗Rgを介してグランドGNDへ流れ、このゲート電流により発光サイリスタ210がオン状態になる。発光サイリスタ210のアノード・カソード間には、接合容量Cjが生じる。
終端回路120は、抵抗値RLの終端抵抗130とコンデンサ140との直列回路により構成されている。コンデンサ140は、駆動信号源である駆動回路41から出力される駆動電流Ioutの内、終端抵抗130及びコンデンサ140を介して流れる直流成分をカットして、発光サイリスタ210に流れるアノード電流Idが減少することを防止するために設けられている。
図13(b)において、駆動信号源である駆動回路41から出力される駆動電流Isの波形が示されている。駆動電流Isのオン時間はTon、オフ時間はToffである。
図13(c)は、本実施例1の比較例として、抵抗値RLの終端抵抗130が無い場合(即ち、RL=∞とした場合)における発光サイリスタ210のアノード電流Idの波形図を示したものである。アノード電流Idの立ち上がり時間はTr、立ち下がり時間はTfである。
接続ケーブル70−1において、ケーブル長をL、ケーブル内の信号伝搬速度をVoとするとき、接続ケーブル70−1の信号伝達遅延時間Tdは、次式で与えられる。
Vo=Co/√εr
但し、Co;真空中における光速度、Co≒3×108[m/s]
εr;接続ケーブル70−1内で用いられる絶縁材料の比誘電率
この式より、信号伝達遅延時間Tdは、
Td=(L/Co)×√εr
となる。典型的な例として、接続ケーブル70−1の比誘電率εrを4、ケーブル長Lを1[m]とするとき、
Td≒6.7[ns]
となる。
図13(c)に示すように、駆動信号源である駆動回路41から出力される駆動電流Isが立ち上がると、前記信号伝搬遅延時間Td分遅れて、その駆動電流Isが被駆動素子である発光サイリスタ210に到達し、この発光サイリスタ210には、アノード電流Idの波形が立ち上がり始める。この時、発光サイリスタ210のアノード・カソード間は、等価的にコンデンサCjと同様に動作し、このコンデンサCjにより信号反射を生じ、接続ケーブル70−1内を駆動回路41方向へ向かう反射波を生じる。この反射波は、駆動回路41の内部インピーダンスにより反射して、再び接続ケーブル70−1内をプリントヘッド13A方向へ向かつて反射を生じる。
このように、接続ケーブル70−1を介して、駆動信号源である駆動回路41とこの負荷である発光サイリスタ210との間で多重に信号反射を生じ、2×Tdを周期とするリップルを生じつつ、立ち上がり時間Trで立ち上がるアノード電流Idの電流波形が得られる。
図13(b)と図13(c)とを比較して明らかなように、駆動回路41から出力される駆動電流Isの波形の立ち上がりが急峻であったとしても、発光サイリスタ210におけるアノード電流Idの波形の立ち上がり時間Trが大きくなってしまう。
前記多重反射波形が接続ケーブル70−1内を往復する毎に反射量を減じていき、例えば、10往復の後に反射成分が消滅する時、前記アノード電流Idの立ち上がり時間Trは、
Tr=2×Td×10≒6.7×20=134[ns]
となる。発光サイリスタ210におけるアノード電流Idの波形の立ち下がりにおける立ち下がり時間Tfにおいても同様である。
前記アノード電流Idの立ち上がり時間Trは、駆動回路41から出力される駆動電流Isの立ち上がり時間と比べて大きな値であって、これは主として接続ケーブル70−1による信号伝搬遅延時間Td、即ちケーブル長Lにより決まってしまい、プリントヘッド13Aの点灯スイッチング速度を向上させるためには、接続ケーブル70−1のケーブル長Lを短くせざるを得ないことになる。
ところが、接続ケーブル70−1のケーブル長Lは、画像形成装置1内における部品配置の状況により制約され、短くすることは困難である。特に、図2に示すようなブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、及びシアン(C)の各色のプロセスユニット10−1〜10−4を順に配置して構成されるタンデム型電子写真カラープリンタにおいては、各色のケーブル長Lがそれぞれ異なったものとなり、長いものでは1m以上となってしまうことがある。この結果、発光サイリスタ210におけるアノード電流Idの波形の立ち上がり時間Trや立ち下がり時間Tfが増大してしまい、それを用いるプリントヘッド13Aのスイッチング速度を向上させることができないという問題があった。
この問題を解決するために、本実施例2では、発光素子アレイ200の終端部において、終端抵抗130及びコンデンサ140から成る終端回路120を共通端子INに接続している。
図13(d)は、接続ケーブル70−1の特性インピーダンスをZo、終端抵抗130の抵抗値をRLとするとき、RL=Zo(あるいはRL≒Zo)となるように、その抵抗値RLを設定した場合の例を示す発光サイリスタ210のアノード電流Idの波形図である。
この図13(d)の場合においては、図13(c)において見られたような信号遷移時におけるリップル波形や、遷移時間の増加といった現象は解消しており、アノード電流Idの比較的短い立ち上がり時間Trや立ち下がり時間Tfで持ってプリントヘッド13Aのスイッチングが可能となっていることが判る。
なお、図13(d)の例では、終端抵抗130の抵抗値をRLとするとき、RL=Zo(あるいはRL≒Zo)となるように設定したが、発光サイリスタ130の駆動電流波形の遷移状態において多少のリップル波形を許容できる場合には、
Zo/2≦RL≦2×Zo
と設定しても、同様の効果を得ることができる。
前記式の条件を満足させるため、本実施例2の構成を示す図11の回路においては、発光素子アレイ200の終端部に、複数の終端抵抗130−1〜130−3,・・・の直列回路を設け、その終端抵抗間の接続点をタップとする接続予定ポイントを設ける構成としている。
このようにすることで、種々の接続ケーブル70−1の使用品種による特性インピーダンスZoの違いに対しても、発光サイリスタ210側の共通端子INと終端抵抗130の接続タップとの接続を行うための例えば薄膜配線の形状を変更することで、実質的な終端抵抗130の抵抗値RLを変えて前記式を満足させることが可能となる。従って、シフトレジスタ110や終端回路120が形成されたICチップ100を1種類のみを準備しておくことで、種々の特性インピーダンスZoを持つ接続ケーブル70−1にも対応することができる。
又、図11において、直列接続された複数の終端抵抗130−1〜130−3,・・・は、シフトレジスタ110や終端回路120が形成されたICチップ100の製造段階で予め直列接続されているように図示されているが、発光サイリスタ210−1〜210−nの各端子とシフトレジスタ110の各部を薄膜配線で接続する工程において、複数の終端抵抗130−1〜130−3,・・・間を接続するようにしても良い。
一方、図12に示す終端抵抗130では、ポリシリコン膜や拡散抵抗領域としてICチップ100上に設ける構成にしているが、これ以外にも、発光サイリスタ210と同一素材をパターニングして形成した素材により終端抵抗130を形成しても良い。例えば、ICチップ100上に公知のエピフィルムボンデイング法を用いてAlGaAs等の化合物半導体薄膜を貼付しておき、この化合物半導体薄膜をフォトリソグラフィ法により所定部位をパターン形成することで、終端抵抗130を形成しても良い。
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、実施例1と同様の効果があり、更に、次の(4)、(5)のような効果もある。
(4) 本実施例2では、発光素子アレイ200の終端部に終端回路120を設けたので、例えば、駆動回路41とプリントヘッド13Aとを別の基板ユニットとして構成し、両者間を接続ケーブル70−1を用いて電気的に接続する場合、その接続ケーブル70−1が長いときでも、駆動回路41と発光サイリスタ210との間で信号反射が多重に発生して駆動電流波形の立ち上がり時間や立ち下がり時間が増大するといった問題を解決でき、発光素子アレイ200のスイッチング制御を高速に行うことができる。
(5) 本実施例2の構成においては、シフトレジスタ110が形成されたICチップ100上に、発光素子アレイ200を貼付すると共に、終端回路120もまたそのICチップ100内に設けることで、モノリシックに集積することができ、終端回路120を個別に設ける必要がなく、より小型化及び低コスト化が可能になる。
(実施例3の印刷制御部及びプリントヘッド)
図14は、本発明の実施例3における印刷制御部及びプリントヘッドの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
本実施例3の画像形成装置1では、プリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの回路構成が、実施例1のプリントヘッド13及び印刷制御部40と異なっている。
本実施例3のプリントヘッド13Bは、実施例1と同様のシフトレジスタ110と、実施例1の発光素子アレイ200とは異なる構成の発光素子アレイ200Bとを有している。
発光素子アレイ200Bは、3端子発光素子である例えば複数のPゲート型発光サイリスタ210B(=210B−1〜210B−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210Bの第1端子(例えば、アノード)が第1電源(例えば、電源電圧VDD電源)に接続され、第2端子(例えば、カソード)が駆動電流Ioutを流す共通端子INに接続され、第1制御端子(例えば、ゲート)がシフトレジスタ110の各出力端子Q1〜Qn,・・・に接続されている。各発光サイリスタ210Bは、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートに“H”レベルのトリガ信号が入力されると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流が流れ、発光する素子である。
印刷制御部40Bは、発光素子アレイ200Bのオン/オフを指令するオン/オフ指令信号DRVON−P(但し、「−P」は正論理を意味する。)、シフトレジスタ110に対する制御信号であるシリアルデータSI及びシリアルクロックSCKをプリントヘッド13Bへ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200Bを時分割に駆動する複数の駆動回路41B等とを有している。図14においては、実施例1と同様に、説明を簡略化するために1個の駆動回路41Bのみが図示されている。複数の発光素子アレイ200Bは、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210B−1〜210B−n,・・・が複数の発光サイリスタ210B−1〜210B−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41Bによってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
なお、駆動回路41Bは、図14においては印刷制御部40Bの内部に配置されているが、プリントヘッド13Bの内部に配置しても良い。
駆動回路41Bは、入力されるオン/オフ指令信号DRVON−Pを反転してデータ端子DAに出力するCMOSインバータ42Bにより構成されている。CMOSインバータ42は、第2導電型の第2MOSトランジスタ(例えば、PMOS)43Bと、第1導電型の第1MOSトランジスタ(例えば、NMOS)44Bとを有し、これらが第1電源(例えば、電源電圧VDD電源)と第2電源(例えば、接地電位のグランドGND)との間に直列に接続されている。
即ち、PMOS43Bは、ゲートにオン/オフ指令信号DRVON−Pが入力され、ソースがVDD電源に接続され、ドレーンがデータ端子DAに接続されている。NMOS44Bは、第2制御端子(例えば、ゲート)にオン/オフ指令信号DRVON−Pが入力され、第3端子(例えば、ソース)がグランドGND(=0V)に接続され、第4端子(例えば、ドレーン)がデータ端子DAに接続され、サブストレート端子がグランド電位とは異なる電位(例えば、低いサブストレート電位Vsub)に設定されている。このNMOS44Bには、ソース・サブストレート端子間に電位差が設定されており、この電位差に応じて閾値電圧Vtnが増加している。
データ端子DAは、実施例1と同様に、接続コネクタ71−1、接続ケーブル70−1、及び接続コネクタ72−1を介して、発光素子アレイ200B側の共通端子INに接続されている。
印刷制御部40B側の駆動回路41B等と、プリントヘッド13B側のシフトレジスタ110とにより、本実施例3の駆動装置が構成されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
(実施例3の印刷制御部及びプリントヘッドの動作)
図14において、例えば、印刷制御部40Bにおけるオン/オフ指令信号DRVON−Pが“L”レベルの場合、CMOSインバータ42Bを構成するPMOS43Bがオン状態、NMOS44Bがオフ状態となり、出力側のデータ端子DAは、“H”レベル(≒電源電圧VDD)となる。この結果、プリントヘッド13B側の共通端子INも略電源電圧VDDとなり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間電圧は略0Vとなって、そこに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210B−1〜210B−nが全て非発光状態となる。
これに対し、オン/オフ指令信号DRVON−Pが“H”レベルの場合、CMOSインバータ42Bを構成するPMOS43Bがオフ状態、NMOS44Bがオン状態となって、出力側のデータ端子DAが“L”レベルとなる。この結果、プリントヘッド13B側の共通端子INも“L”レベルとなり、各発光サイリスタ210Bのアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。この際、発光サイリスタ210B−1〜210B−nのうち、発光指令されている発光サイリスタ210Bのゲートのみをシフトレジスタ110により選択的にHレベルとすることで、発光指令されているサイリスタ210Bがターンオンすることになる。ターンオンした発光サイリスタ210Bのカソードに流れる電流は、共通端子INを介してデータ端子DAに流入する電流(即ち、駆動電流Iout)であり、発光サイリスタ210Bは発光状態となってその駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
ここで、駆動回路41Bにおいて、NMOS44BのソースがグランドGNDに接続され、サブストレート端子がサブストレート電位Vsubに設定されている。具体的な設計例を考えると、例えば、電源電圧VDDを3.3V、グランドGNDの接地電位を0V、サブストレート電位Vsubを−2Vに設定することができる。この際、NMOS44Bのソース・サブストレート端子間には電位差(=2V)が設定されており、このNMOS44Bにおいては基板バイアス効果を生じ、その電位差に応じて閾値電圧Vtnが増加する。NMOS44Bがオンする時、このゲート・ソース間には電源電圧VDDが印加されるが、この電圧値はたかだか3.3Vであって、NMOS44Bを飽和領域で動作させることができる。
電子デバイス物理の理論により良く知られているように、この時のNMOS44Bのドレーン電流Idは、次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vtn)2
但し、K;定数
W;NMOS44Bのゲート幅
L;NMOS44Bのゲート長
Vtn;NPMOS44Bの閾値電圧
Vgs;NMOS44Bのゲート・ソース間電圧(≒電源電圧VDD)
NMOS44の閾値電圧Vtnは、サブストレート端子に設定されるサブストレート電位Vsubに依存して変化する。そのため、前記式から明らかなように、NMOS44Bのドレーン電流1d、即ち、発光サイリスタ210Bの駆動電流Ioutは、電源電圧VDD、及びサブストレート電位Vsubを調整することで変化させることができる。
なお、図14における駆動回路41Bにおいては、データ端子DAを“H”レベルとするためにPMOS43Bを設けているが、NMOS44Bをオフ状態にすることで駆動電流Ioutを遮断して発光サイリスタ210B−1〜210B−nをターンオフさせることができるので、発光サイリスタ210Bのスイッチング速度に高速性を要求されないケースにおいては、PMOS43Bを省略することも可能である。
(実施例3の効果)
本実施例3によれば、実施例1とほぼ同様の効果がある。又、実施例2における図11の終端回路120をプリントヘッド13B側に設ければ、実施例2とほぼ同様の効果が得られる。
(変形例)
本発明は、上記実施例1〜3に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(I)、(II)のようなものがある。
(I) 実施例1〜3において、光源として用いられる発光サイリスタ210,210Bに適用した場合について説明したが、本発明は、サイリスタをスイッチング素子として用い、このスイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子(例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)、表示素子等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELプリントヘッドを備えたプリンタ、表示素子の列を有する表示装置等において利用することができる。
(II) 表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子)の駆動(即ち、電圧印加の制御)のためスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。又、本発明は、3端子構造を備えたサイリスタの他、第1と第2の2つのゲートを備えた4端子サイリスタSCS(Silicon Semiconductor Controlled Switch)の場合にも適用可能である。