本発明は、複数の発光素子を配列した発光素子アレイ、発光素子を駆動するための駆動制御装置、該発光素子を有する記録ヘッド並びに該記録ヘッドを有する画像形成装置に関する。
従来の画像形成装置、例えば電子写真プリンタにおいては、帯電した感光体ドラムをプリント情報に応じて選択的に光照射して静電潜像を形成し、該静電潜像にトナーを付着させて現像を行ってトナー像を形成し、該トナー像を用紙に転写し、定着させるようにしている。このような電子写真プリンタにおいては、光源として発光ダイオード(LED)のほかに、発光サイリスタを用いたものが知られている。
光源に発光ダイオードを用いたものでは、駆動回路と発光素子とが1対1に対応するように設けられ、直接アノード端子とカソード端子間に電流を流すか否かにより、発光/非発光の状態を切り替えるようにしている。これに対し、発光サイリスタを用いたものでは、駆動回路と発光素子とが1対N(N>1)に対応するように設けられ、ゲート端子を用いて発光させる素子を指定し、アノード端子とカソード端子間に流す電流により発光パワーを制御するようにしている。また上記駆動回路と発光素子とは異なる基板ユニットとして構成され、両者は接続ケーブルにより電気的に接続されている。このような発光サイリスタを用いた画像形成装置を開示するものとして、例えば、特許文献1(特開2007−81081号公報)が挙げられる。
特開2007−81081号公報
しかしながら、発光サイリスタを発光素子として用いた場合には、アノード端子とカソード端子との間に流れる電流により発光パワーが与えられるのであるが、駆動回路と発光素子とは別の基板ユニットとして構成され、両者間は接続ケーブルを用いて電気的に接続されているので、接続ケーブルが長い場合には駆動回路と発光素子との間で信号反射が多重に発生し、駆動電流波形の立ち上がり時間や立下り時間が増大し、発光素子を高速にスイッチングする制御を行うことができないという問題がある。
本発明は、発光素子を駆動する駆動電流の立ち上がり時間を短縮し、以って発光素子を高速にスイッチングすることを可能にした発光素子アレイ、駆動制御装置、記録ヘッドおよび画像形成装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明の発光素子アレイは、三端子スイッチ素子からなる発光素子が複数配列され、接続部材により接続された駆動部により前記発光素子を発光させる発光素子アレイにおいて、前記三端子スイッチ素子の第1端子は前記接続部材を介して駆動部に接続され、第2端子はグランドに接続され、第3端子は制御回路に接続され、前記三端子スイッチ素子の第1端子と前記接続部材との間に抵抗を配設したことを特徴とするものである。
また本発明の駆動制御装置は、三端子スイッチ素子からなる発光素子に、接続部材を介して接続された駆動部から駆動電流を与え、前記三端子スイッチ素子に接続されて制御回路により発光素子を制御して発光させる駆動制御回路において、前記三端子スイッチ素子の第1端子は前記接続部材を介して駆動部に接続され、第2端子はグランドに接続され、第3端子は制御回路に接続され、前記三端子スイッチ素子の第1端子と前記接続部材との間に抵抗を配設し、前記抵抗は、前記制御回路に設けられることを特徴とする。
本発明の記録ヘッドは、三端子スイッチ素子からなる発光素子が複数配列され、接続部材を介して接続された駆動部により前記発光素子を発光させる記録ヘッドにおいて、前記三端子スイッチ素子の第1端子は前記接続部材を介して駆動部に接続され、第2端子はグランドに接続され、第3端子は制御回路に接続され、前記三端子スイッチ素子の第1端子と前記接続部材との間に抵抗を配設したことを特徴とする。
また本発明の画像形成装置は、三端子スイッチ素子からなる発光素子が複数配列され、接続部材を介して接続された駆動部により前記発光素子を発光させる記録ヘッドを有する画像形成装置において、前記三端子スイッチ素子の第1端子は前記接続部材を介して駆動部に接続され、第2端子はグランドに接続され、第3端子は制御回路に接続され、前記三端子スイッチ素子の第1端子と前記接続部材との間に抵抗を配設したことを特徴とする。
上記構成を有する本発明に拠れば、発光素子の三端子スイッチの第1端子と接続部材との間に抵抗を配設したので、立ち上がり時に駆動部と発光素子の間で信号反射を生じることがなくなり、短い立ち上がり時間でスイッチングすることが可能となる。
以下、本発明に係る実施の形態を図面を用いて説明する。なお各図に共通する要素には同一の符号を付す。図1は本発明に係る電子写真プリンタを示すブロック図、図2は実施例1の光プリントヘッドおよび制御部を示す回路図である。以下に説明する各実施例では、画像形成装置として電子写真プリンタを例として説明する。
図1において、1はマイクロプロセッサ、ROM、RAM、入出力ポート、タイマ等によって構成される印刷制御部であり、プリンタの印刷部の内部に配設され、図示しない上位コントローラからの制御信号SG1、ビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御し、印刷動作を行う。
制御信号SG1によって印刷指示を受信すると、印刷制御部1は、先ず定着器温度センサ23によってヒータ22aを内蔵した定着器22が使用可能な温度範囲内にあるか否かを検出し、該温度範囲内になければヒータ22aに通電し、使用可能な温度まで定着器22を加熱する。次に、ドライバ2を介して現像・転写プロセス用モータ(PM)3を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用電圧電源25をオンにし、現像器27の帯電を行う。
そして、セットされている図示しない用紙の有無およびサイズが用紙残量センサ8、用紙サイズセンサ9によって検出され、該用紙に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ(PM)5はドライバ4を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸入口センサ6が検知するまで、セットされた用紙を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
印刷制御部1は、用紙が印刷可能な位置に到達した時点において、上位コントローラに対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、上位コントローラからビデオ信号SG2を受信する。上位コントローラにおいてページ毎に編集され、印刷制御部1に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データ信号HD−DATAとして光プリントヘッド(記録ヘッド)19に転送される。光プリントヘッド19はそれぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた発光サイリスタを複数個線上に配列したものである。
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。光プリントヘッド19によって印刷される情報は、マイナス電位に帯電させられた図示しない感光体ドラム上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器27において、マイナス電位に帯電させられた画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって潜像化されたドットに吸引され、トナー像が形成される。
その後、トナー像は転写器28に送られ、一方、転写信号SG4によってプラス電位に転写用高圧電源26がオンになり、転写器28は感光体ドラムと転写器28との間を通過する用紙上にトナー像を転写する。トナー像が転写された用紙は、ヒータ22aを内蔵する定着器22に当接して搬送され、該定着器22の熱によって用紙にトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出口センサ7を通過してプリンタの外部に排出される。
印刷制御部1は用紙サイズセンサ9、用紙吸入口センサ6の検知に対応して、用紙が転写器28を通過している間だけ転写用高圧電源26からの電圧を転写器28に印加する。そして、印刷が終了し、用紙が用紙排出口センサ7を通過すると、帯電用高圧電源25による現像器27への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ3の回転を停止させる。以後、前記の動作を繰り返す。
次に、光プリントヘッド19について説明する。本実施例においては、光プリントヘッド19は発光素子として発光サイリスタを使用している。発光サイリスタはLEDやLD(Laser Diode)と同様の発光メカニズムを有し、化合物半導体(GaAs, GaP, AlGaAs, InGaAsP, InGaAlAs等)でPNPN構造を作るものであり、シリコンではサイリスタ、SCR(Silicon Controlled Rectifier)として実用化されているものである。
次に図2により光プリントヘッドの構成を説明する。なお図2では説明を簡単にするために発光素子を8個のみとして記載しているが、たとえばA4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能な光プリントヘッドにおいては、発光素子の総数は4992個であり、図2の構成からなる回路素子が総数で4992段配列されることになる。
図2において、19は光プリントヘッドで、光プリントヘッド19は接続ケーブル60により印刷制御部1と接続されている。図中に―>>―として示す回路シンボルは接続コネクタを示す。光プリントヘッド19のD入力端子と発光サイリスタd1等のアノード端子の間には抵抗81が接続されている。接続ケーブル60の特性インピーダンスをZo、抵抗81の抵抗値をRLとするとき、抵抗値RLは、RL=Zoとなるように設定する。あるいは、発光サイリスタの駆動電流波形の遷移状態において多少のリップル波形を許容できる場合には、
(Zo/2)≦RL≦(2×Zo) となるようにしてもよい。
光プリントヘッド19を説明すると、破線にて囲んで示す30はシフトレジスタであって、31〜38はフリップフロップ回路、41〜48はバッファ回路である。シフトレジスタ30はシリコンウェハー基材上に公知のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)構造を用いて作成されるが、このほかにガラス基板上に公知のTFT(Thin Film Transistor)技術を用いて製造することもできる。
またd1〜d8は発光サイリスタであって、アノード、カソード、ゲートの三つの端子を備える。光プリントヘッド19はD、SI、SCKの3個の入力信号端子を備えており、SIはシフトレジスタ30へのシリアルデータ入力端子、SCKはシフトレジスタ30のクロック端子、Dは発光サイリスタのアノード端子と接続され、発光サイリスタが駆動されるときのアノード電流を供給するデータ端子である。
シリアルデータ端子SIはフリップフロップ31のD入力端子と接続され、フリップフロップ31のQ出力端子は次段のフリップフロップ32のD入力端子と接続される一方で、バッファ回路41の入力端子とも接続される。バッファ回路41の出力はシフトレジスタ回路30のQ1出力となって、発光サイリスタd1のゲート端子と接続される。シフトレジスタ30の他の出力端子Q2〜Q8についても同様である。シフトレジスタ30のクロック端子SCKはフリップフロップ31〜38のクロック端子と接続され、光プリントヘッド19のデータ端子Dは発光サイリスタd1〜d8のアノードと接続されている。また発光サイリスタd1〜d8のカソード端子はグランドに接続される。
印刷制御部1には、駆動出力回路(駆動部)71として、PMOSトランジスタ73、74、NMOSトランジスタ75、76、インバータ回路77および制御電圧発生回路78が設けられている。PMOSトランジスタ73のソースは電源VDDに接続され、そのドレーンはNMOSトランジスタ75のドレーン端子と接続されるとともにPMOSトランジスタ74のゲート端子とも接続される。NMOSトランジスタ75のソースは制御電圧発生回路78の出力である制御電圧Vcont電位と接続されている。
また、DRV−ON信号は発光サイリスタの実際の発光/非発光のタイミングを指令する信号であって、PMOSトランジスタ73、NMOSトランジスタ75のゲート端子と接続される一方で、インバータ回路77の入力とも接続されている。PMOSトランジスタ74のソースは電源VDDと接続され、PMOSトランジスタ74のドレーン端子は光プリントヘッド19のD端子と接続されるとともに、NMOSトランジスタ76のドレーン端子とも接続されている。また、NMOSトランジスタ76のソース端子はグランドと接続され、そのゲート端子はインバータ回路77の出力と接続されている。
いま、DRV−ON信号がLowレベルにある場合を考える。インバータ回路77の出力はHighレベルとなり、NMOSトランジスタ76はオンとなる。また、NMOSトランジスタ75はオフ状態、PMOSトランジスタ73はオン状態であり、PMOSトランジスタ74のゲート・ソース間電圧は略0Vとなって該トランジスタ74はオフとなる。この結果、光プリントヘッド19のデータ端子Dは略0Vの出力となり発光サイリスタの各アノード端子へ流れる電流IOUT2もゼロとなり、発光サイリスタd1〜d8は全て非発光状態とすることができる。
また別の場合として、DRV−ON信号がHighレベルとなる場合を考える。このとき、インバータ回路77の出力はLowレベルとなり、NMOSトランジスタ76はオフとなる。また、NMOSトランジスタ75はオン状態、PMOSトランジスタ73はオフ状態であり、PMOSトランジスタ74のゲート電位は図2に示すVcont電位と略等しい値となって、PMOSトランジスタ74にはドレーン電流が流れる。この結果、光プリントヘッド19のデータ端子Dから発光サイリスタのアノード端子へ流れる電流IOUT2が流れ得ることになり、発光サイリスタd1〜d8のうち発光指令されている素子のみが選択的に発光状態となる。
PMOSトランジスタ74は飽和領域で動作するように、制御電圧発生回路78の出力Vcontの電位が設定されており、電子デバイス物理の理論により良く知られている様に、このときのドレーン電流Idは次式で与えられる。即ち、
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vt)2
ここで、Kは定数、WはPMOSトランジスタのゲート幅、Lはゲート長、Vgsはゲート・ソース間電圧、Vtは閾値電圧である。なお、このときのゲート・ソース間電圧Vgsは電源電位VDDと制御電圧Vcont間の電位差に等しく、
Vgs=VDD−Vcont
である。このように、PMOSトランジスタ74のドレーン電流Id、すなわち発光サイリスタの駆動電流IOUT2は制御電圧Vcontの電位を調整することで所望の値とすることができる。
それに加えて、前記したPMOSトランジスタ74のように、飽和領域で動作するMOSトランジスタにおいては、その素子サイズを適切に設定することでドレーン電位が多少変動したとしてもドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性はMOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには前記ゲート長を大きめに設定する一方で、ゲート・ソース間電圧Vgsは小さく設定される。
図3は図2で示した発光サイリスタの構成を示す図である。図3(a)は回路シンボルを示し、アノード端子A、カソード端子K、ゲート端子Gの三つの端子を備えている。図3(b)は図3(a)にて示した発光サイリスタの断面構造を示す図である。本図にて示す発光サイリスタはGaAsウェハー基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic-Chemical Vapor Deposition)法により前記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。
まず、所定のバッファ層や犠牲層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型不純物を含ませたN型層103と、P型不純物を含ませ成層したP型層102と、N型不純物を含ませたN型層101とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハーを構成する。次いで、最上層のN型層の一部に公知のフォトリソグラフィー法により選択的にP型不純物領域104を形成する。さらに、公知のドライエッチング法により溝部を形成することで素子分離を行う。また、前記エッチングの過程でサイリスタの最下層となるN型領域103の一部を露出させ、該領域103に金属配線を形成してカソード電極を形成する。それと同時にP型領域104とN型領域101にもそれぞれアノード電極とゲート電極が形成される。
図3(c)は発光サイリスタの別の形態を示す。本構成においては、GaAsウェハー基材を用い、公知のMO−CVD法により前記基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで作成される。まず、所定のバッファ層や犠牲層(図示しない)をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs基材にN型不純物を含ませたN型層103と、P型不純物を含ませ成層したP型層102と、N型不純物を含ませたN型層101と、P型不純物を含ませ成層したP型層105を順に積層させたPNPNの4層構造のウェハーを構成する。
さらに、公知のドライエッチング法により溝部を形成することで素子分離を行う。また、前記エッチングの過程で発光サイリスタの最下層となるN型領域103の一部を露出させ、該領域103に金属配線を形成してカソード電極を形成する。同様に、最上層となるP型領域105の一部を露出させ、該領域105に金属配線を形成してアノード電極を形成する。それと同時にN型領域101にゲート電極が形成される。
図3(d)は図(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタの等価回路である。発光サイリスタはPNPトランジスタ111とNPNトランジスタ112とからなり、PNPトランジスタ111のエミッタがサイリスタのアノード端子Aに相当し、PNPトランジスタ111のベースがサイリスタのゲート端子Gに対応しており、該端子はNPNトランジスタ112のコレクタとも接続される。またPNPトランジスタ111のコレクタはNPNトランジスタ112のベースと接続され、NPNトランジスタ112のエミッタはサイリスタのカソード端子Kに相当している。
前述したサイリスタ素子は、たとえば特開2007−81081号で開示されているエピタキシャルフィルムボンディング法を用いてシフトレジスタを集積したICウェハーと接着され、両者の接続端子間がフォトリソグラフィー法を用いて配線される。さらに公知のダイシング法を用いて複数のチップに分離することで発光素子・駆動素子からなる複合チップが形成される。
図4は前記の発光素子・駆動素子複合チップをプリント配線板上に配列してなる光プリントヘッドの基板ユニットの斜視図である。図4において、121はプリント配線板、122はシフトレジスタが集積されたICチップであり、123はICチップ122上に配置された発光サイリスタ列を示す。また124はボンディングワイヤーを示し、ICチップ122のシフトレジスタの各端子とプリント配線板121上の図示しない配線パッドとを接続している。
図5は光プリントヘッドの構成を概略的に示す断面図である。図5に示されるように、光プリントヘッド19は、ベース部材131と、ベース部材131にて固定されたプリント配線板121と、柱状の光学素子を多数配列してなるロッドレンズアレイ132と、ロッドレンズアレイ132を保持するホルダ133と、プリント配線板121、ベース部材131およびホルダ133とを固定するクランプ部材134、135とで構成される。また122はシフトレジスタが集積されたICチップであり、123はICチップ122上に配置された発光サイリスタ列を示す。
次に実施例1の動作を説明する。図6は図2で示した光プリントヘッドの駆動時の動作を示すタイムチャートである。本図ではプリンタでの印刷動作時における1ライン走査の状況を示し、図2の発光サイリスタd1〜d8を順次点灯させる場合の動作を示している。なお本図では示していないが、プリンタ電源投入時の予備動作としてシフトレジスタのプリセット処理が行われる。この処理では、図2のSI端子をHighレベルとしておきクロック端子SCKにシフトレジスタ30の段数に相当する個数のクロックパルスを入力する。これにより、シフトレジスタ30のQ1〜Q8の全出力はHighレベルとなる。
図2、図6において、1ライン分の走査に先立ち、時刻t1においてシフトデータ入力端子SIはLowレベルとされる。次いで時刻t2においてクロック信号SCKの第1パルスが入力される。SCK信号が立ち上がると、前記SI信号はシフトレジスタの第1段のフリップフロップ回路31に取り込まれ、これより僅かに遅れて第1段のフリップフロップ回路31の出力であるQ1はLowレベルへと遷移する。クロック信号SCKが立ち上がったあとで、時刻t3にてシフトデータ入力端子SIは再びHighレベルに戻される。
さて、Q1出力がLowレベルになると、発光サイリスタd1のゲート電位を低下させる。次いで時刻t4にてデータ入力端子Dの信号がHighとされる。これにより発光サイリスタd1のアノード・ゲート間に電位差を生じ、これによるトリガ電流によって発光サイリスタd1はターンオンして発光状態となる。発光サイリスタd1による発光状態は主としてアノード・カソード間に流れる電流によるので、一度ターンオンした発光サイリスタd1をオフさせるためにはアノード・カソード間に印加される電圧をゼロとさせることになる。このため、時刻t5においてデータ端子Dの電位をLowとしている。
また前述したように、発光サイリスタd1〜d8の発光出力は主としてそのアノード・カソード間に流れる電流値によるので、図2のD端子の駆動源として定電流特性を備える駆動出力回路71を用いることで、発光サイリスタ発光時におけるアノード・カソード間電圧に多少の素子バラツキを生じていたとしても、その駆動電流は所定値に保つことができ、電源電圧等に多少の変動があったとしても発光出力を所定値に維持することができる。
なお図6では発光サイリスタd1を発光させるために時刻t4でデータ端子DをHighレベルとし、消灯させるために時刻t5でLowレベルとしているが、発光サイリスタd1を発光させる必要がない場合には時刻t4からt5の間もデータ入力DをLowレベルのままとすれば良い。このように、データ入力Dの値により発光サイリスタd1の発光/非発光状態を切り替えることができる。
次いで、時刻t6においてクロック信号SCKが立ち上がる。このときシフトデータ入力端子SIはHighレベルとなっているので、これより僅かに遅れてQ1端子出力はHighレベルへと遷移する一方で、Q2端子出力はLowレベルに変化する。次いで時刻t7においてデータ入力端子Dの信号がHighとされる。これにより発光サイリスタd2のアノード・ゲート間に電位差を生じ、これによるトリガ電流によって発光サイリスタd2はターンオンして発光状態となる。発光サイリスタd2による発光状態は主としてアノード・カソード間に流れる電流値によるので、一度ターンオンした発光サイリスタd2をオフさせるためにはアノード・カソード間に印加される電圧をゼロとさせることになる。このため時刻t8においてデータ端子Dの電位をLowとしている。
上記説明で明らかなように、図6に示すSCKクロック信号1、2、3、4、5、6、7、8の立ち上がりごとに、Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6、Q7、Q8の各出力は順次1出力だけがLowレベルとなり、他の出力はHighレベルである。このためデータ信号DがHighレベルのとき、Q1からQ8の端子に接続される発光サイリスタd1〜d8のうち、対応するQ1〜Q8出力がLowレベルとなっているものだけが選択的に発光させられることになる。
上述の説明において、発光サイリスタd1〜d8をオンさせるためには、これらの素子のアノード・ゲート間を順方向にバイアスさせる電位差を与え、アノード電流を供給させるだけで良く、オフ状態のままとするためには、アノード・ゲート間の電位差を順方向電圧以下としておくだけで十分であり、電位差をゼロとしたり、逆方向へ電圧を印加したりすることもできる。
また、発光サイリスタd1の駆動時間T1、発光サイリスタd2の駆動時間T2等は異なる時間であってもよく、発光サイリスタd1〜d8等の発光効率にバラツキを生じていたとしても、これを補正して所定の露光エネルギー量が得られるように、各駆動タイミング毎に駆動電流を変化させたりして、駆動時間T1、T2等を異なる値に制御することは容易である。
図7は図2に示した回路から代表して1つの発光サイリスタd1を選び、等価回路モデル化して示した回路図である。図7において、図2に示す回路のうち、駆動出力回路71を定電流源シンボルに置き換え、その電流値をIsとし、印刷制御部1と光プリントヘッド19の間を接続する接続ケーブル60を、特性インピーダンスZo、信号伝達遅延時間Tdを有する伝送路として示している。また抵抗81の抵抗値をRLと記号している。
また82は光プリントヘッドの発光素子のうち代表して1つの発光サイリスタd1を選び、等価回路モデル化したものである。発光サイリスタd1をオン状態とするため、ゲート・カソード間に抵抗Rgを接続している。これによりアノード端子から流入させられるアノード電流Idのうち、一部の電流成分がゲート電流として抵抗Rgを介してグランドへ流れ、該ゲート電流により発光サイリスタd1はオン状態とされる。また、Cjはコンデンサであって、発光サイリスタd1、d2、...等のアノード・カソード間に生じる接合容量をモデル化したものである。
図8は発光サイリスタへの駆動電流波形を示すタイムチャートであり、図8(a)は信号源である駆動出力回路71からの駆動電流Isの波形を示し、そのオン時間、オフ時間をTon、Toffとして図中に記載している。また図8(b)、図8(c)は接続ケーブル60を通過した後の駆動電流の波形を示し、図8(b)は、比較のために、従来技術による構成と同様に抵抗RLをゼロとした場合における発光サイリスタの駆動電流波形を示したもので、図8(c)は実施例1における駆動電流波形を示したものである。
前記接続ケーブル60において、ケーブル長をL、ケーブル内の信号伝搬速度をVoとするとき、ケーブルの信号伝達遅延時間Tdは次式で与えられる。
Td=L/Vo
ここで、信号伝搬速度Voは
Vo=Co/√εr
であり(“√εr”は比誘電率εrの平方根を表わす)、Coは真空中における光速度であって
Co≒3×108[m/s]
で、εrは前記ケーブル内で用いられる絶縁材料の比誘電率である。
これより信号伝達遅延時間Tdは
Td=L/Vo=(L/Co)×√εr
となる。
典型的な例としてケーブルの比誘電率を4、ケーブル長を1[m]とするとき、
Td≒6.7[nS]
となる。
また従来の回路においては、図8(b)に示したように、駆動源波形Isが立ち上がると、前記遅延時間Td分遅れて駆動信号が発光サイリスタd1に到達し、被駆動素子である発光サイリスタd1に電流波形Idが立ち上がり始める。このとき、発光サイリスタd1のアノード・カソード間は等価的にコンデンサCjと同様に動作し、該素子により信号反射を生じ、接続ケーブル60内を駆動信号源方向へ向かう反射波を生じる。該反射波は駆動信号源の内部インピーダンス(定電流源とみなせる場合、そのインピーダンスは無限大)により反射して、再び接続ケーブル60内を光プリントヘッド19方向へ向かって反射を生じる。このように、接続ケーブル60を介して駆動信号源と負荷(発光サイリスタ)の間で多重に信号反射を生じ、2×Tdを周期とするリップルを生じつつ、立ち上がり時間Trで立ち上がる電流波形が得られる。
図8(a)の波形と図8(b)の波形とを比較して明らかなように、駆動信号源波形の立ち上がりが急峻であったとしても、発光サイリスタd1の駆動電流波形の立ち上がり時間Trは大きくなってしまう。多重反射波形はケーブル内を往復する毎に反射量を減じていくが、ケーブル内を多重反射しながら例えば10往復の後に反射成分が消滅する場合を考えると、駆動信号の立ち上がり時間Trは
Tr=2×Td×10≒6.7×20=134[nS]
となる。発光サイリスタの駆動電流の立ち下がりにおける、立下り時間Tfにおいても同様である。
駆動信号の立ち上がり時間Trは駆動信号源の立ち上がり時間と比べて大きな値であって、これは主として接続ケーブルによる伝搬遅延時間、すなわちケーブル長により決まってしまい、光プリントヘッドの点灯スイッチング速度を向上させるためにはケーブル長を短くせざるを得ないことになる。ところがケーブル長はプリンタ装置内における部品配置の状況により制約され、短くすることは困難である。とくにブラック、イエロー、マゼンタ、シアン等の各色トナーユニットを順に配置して構成されるタンデムカラープリンタにおいては、各色ごとにケーブル長が異なり、長いものでは1m以上となってしまう場合さえある。この結果、発光サイリスタの駆動電流の立ち上がり時間や立下り時間は増大してしまい、それを用いる光プリントヘッドのスイッチング速度を増加させることが出来ないという課題があったのである。
これに対して実施例1においては、光プリントヘッド19の側のデータ端子に直列に抵抗81を挿入する構成としている。図8(c)は接続ケーブル60の特性インピーダンスをZo、抵抗81の抵抗値をRLとするとき、RL=Zoとなるように、その抵抗値を設定した場合の発光サイリスタの駆動電流の波形である。この場合においては、図8(b)において見られたような、信号遷移時におけるリップル波形や、遷移時間が増加するといった現象は解消しており、比較的短い立ち上がり時間Trや立下り時間Tfでもってスイッチングが可能となっていることが判る。
上記の例では抵抗81の抵抗値をRLとするとき、RL=Zoとなるように設定したが、発光サイリスタの駆動電流波形の遷移状態において多少のリップル波形を許容できる場合には
Zo/2 ≦ RL ≦ 2×Zo
としても同様の効果を得ることができる。
以上説明したように実施例1によれば、駆動出力回路71と発光素子とを別の基板ユニットとして構成し、両者間は接続ケーブル60を用いて電気接続されており、接続ケーブル60が長い場合においても、駆動出力回路71と発光素子との間で信号反射が多重に発生して駆動電流波形の立ち上がり時間や立下り時間が増大という課題を解決して、前記発光素子のスイッチング制御を高速に行うことができる。
[変形例]
次に実施例1の変形例を説明する。この変形例は、光プリントヘッドに用いる複数のサイリスタチップを並行して動作させ、さらに高速動作を図ったものである。図9は実施例1の変形例を示す回路図である。本変形例は光プリントヘッドに用いる発光サイリスタを複数の半導体チップにより構成し、該チップを同時並行的に動作させ、さらに高速に動作できるようにしたものである。
図9は変形例の光プリントヘッド19および印刷制御部1とその周辺の構成を示しており、発光素子として発光サイリスタ(d1〜d8)が用いられている。なお図9では説明を簡単にするために、発光サイリスタの一部のみを図示し、他を省略して記載しているが、たとえばA4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッドにおいては、発光サイリスタの総数は4992個であり、図9の構成からなる各回路素子が総数でそれぞれ4992段配列されることになる。
図9において、 1は印刷制御部、71、72は図2に示す実施例1の駆動出力回路71と同様の構成を有する駆動出力回路(駆動出力回路72の内部は図示省略してあるが、駆動出力回路71と同様の構成を有する)、60は光プリントヘッド19と印刷制御部1とを接続する接続ケーブル、81、82は抵抗である。また30、147はシフトレジスタ回路を示し、例えばシフトレジスタ30ではQ1〜Q4の4個の出力端子を備えるものとして省略して記載しているが、前述したような実際の構成においては、192個の出力端子を備え、前記したシフトレジスタ30と同様構成の素子を26個カスケードに接続することで総数4992(=192×26)の駆動出力を持ち、前記駆動出力のそれぞれに対応させて発光サイリスタのゲート端子を接続することで総数4992個の発光サイリスタの駆動制御を可能としている。
さらに図9において、31〜34はフリップフロップ回路、141、142はバッファ回路、143、144はシフトレジスタ30の入力端子であって、SIで示す入力端子143はシリアルデータ信号SIと接続され、該端子を介してフルップフロップ回路31のD端子と接続される。またCKIで示す入力端子144はシフトレジスタ30のクロック入力端子であって、該端子にはシリアルクロック信号SCKが入力されており、該端子はバッファ回路141の入力と接続される。また、SOで示す出力端子145はシフトレジスタ30のシリアルデータ出力端子であり、フリップフロップ回路34のQ出力とは図示しないバッファ回路を介して接続されている。
さらにCKOで示す出力端子146はシフトレジスタ30のシリアルクロック出力端子であり、バッファ回路142の出力端子と接続されている。またバッファ回路141の出力はフリップフロップ回路31〜34のクロック端子と接続される一方で、バッファ回路142の入力端子とも接続されている。シフトレジスタ回路30からの出力信号端子(シリアルデータ出力SO、シリアルクロック出力CKO)は同様構成を備えたシフトレジスタ回路147の入力端子(シリアルデータ入力SI、シリアルクロック入力CKI)とは図示しないプリント配線板の配線パターンやボンディングワイヤー等を介して相互に接続されている。
図9における発光サイリスタd1〜d4はシフトレジスタ30によって指定制御されるものであり、発光サイリスタd1〜d4のアノード端子はアノード駆動出力回路71のデータ端子D1と抵抗81を介して接続され、同様に発光サイリスタd5〜d8はシフトレジスタ147によって指定制御されるものであり、発光サイリスタd5〜d8のアノード端子はアノード駆動出力回路72のデータ端子D2と抵抗82を介して接続されている。図示を省略した発光サイリスタ列やシフトレジスタ回路においても同様に、それぞれ対応するアノード駆動出力回路(図示を省略)に接続されている。
前述したように、実際の構成においては、シフトレジスタ30、147等はそれぞれ192個の出力端子を備え、前記したシフトレジスタ30と同様構成のシフトレジスタを26個備えており、各シフトレジスタ毎に発光サイリスタの群を備え、各群のアノード端子は接続され、それぞれが前述のアノード駆動出力回路に接続され、このようなアノード駆動出力回路が総数で26個同時並行的に動作することで、プリンタ装置による1ライン分の露光処理が行われることになる。
図10、図11は図9に示す変形例の回路の動作を示すタイムチャートである。本図ではプリンタでの印刷動作時における1ライン走査の状況を示し、図9の発光サイリスタd1〜d4、d5〜d8の各群をそれぞれ順次点灯させる場合の動作を示し、またプリンタ電源投入時の予備動作として行われるシフトレジスタのプリセット処理を示す。
図10において、時刻t1でSI端子をLowレベルとしてから時刻t2でクロック端子SCKにクロックパルス(第1パルス)を与える。次いで時刻t3でSI端子をHighレベルに戻し、時刻t6で示す様に、総数でシフトレジスタの段数に相当する個数となるようクロックパルスSCKを入力する(第2パルス〜第4パルス部)。これによりシフトレジスタのQ1〜Q4の出力はそれぞれ、High、High、High、Lowレベルとなる。
このあと前述したのと同様に、再びSI端子をLowレベルとしてからクロック端子SCKにクロックパルス(第5パルス)を与える。次いでSI端子をHighレベルに戻してから、総数でシフトレジスタの段数に相当する個数となるようクロックパルスSCKを入力する(第6パルス〜第8パルス部)。これによりシフトレジスタのQ1〜Q4の出力はそれぞれ、High、High、High、Lowレベルとなり、シフトレジスタのQ5〜Q8の出力はそれぞれ、High、High、High、Lowレベルとなる。
図11は図10の処理の後に行われる発光素子の走査駆動の状況を示すタイムチャートである。図11による動作時には前述したプリセット処理が行われており、シフトレジスタのQ1〜Q4の出力はそれぞれ、High、High、High、Lowレベルとなり、シフトレジスタのQ5〜Q8の出力はそれぞれ、High、High、High、Lowレベルとなっている。図11において、1ライン分の走査に先立ち、時刻t1においてシフトデータ入力端子SIはLowレベルとされる。次いで時刻t2においてクロック信号SCKの第1パルスが入力される。SCK信号が立ち上がると、前記SI信号はシフトレジスタの第1段のフリップフロップ回路31に取り込まれ、これより僅かに遅れて第1段のフリップフロップ回路の出力であるQ1はLowレベルへと遷移する。これと同様に第5段に相当するフリップフロップ回路の出力であるQ5もLowレベルへと遷移する。
この結果、シフトレジスタのQ1〜Q4の出力はそれぞれ、Low、High、High、Highレベルとなり、シフトレジスタのQ5〜Q8の出力はそれぞれ、Low、High、High、Highレベルとなる。なお、クロックSCKが立ち上がったあとで、時刻t3にてシフトデータ入力は再びHighレベルに戻されている。
さて、Q1、Q5出力がLowレベルとなると図9に示す発光サイリスタd1、d5のゲート電位を低下させる。次いで時刻t4にてデータ端子D1の信号がHighとされ(a部)、略同時にデータ端子D2の信号もHighレベルとされる(i部)。これにより発光サイリスタd1、d5のアノード・ゲート間に順方向の電位差を生じ、これによるトリガ電流によって発光サイリスタd1、d5はターンオンして発光状態となる。発光サイリスタd1、d5による発光状態は主としてアノード・カソード間に流れる電流によるので、発光駆動のため一度ターンオンした発光サイリスタd1、d5をオフさせるためにはアノード・カソード間に印加される電圧をゼロとさせることになる。このため時刻t5においてデータ端子D1、D2の電位をLowとしている。
また前述したように、発光サイリスタd1〜d8の発光出力は主としてそのアノード・カソード間に流れる電流値によるものであり、図9で用いられるアノード駆動出力回路(71、72)のように定電流特性を備える駆動回路を用いることで、発光サイリスタ発光時におけるアノード・カソード間電圧に多少の素子バラツキを生じていたとしても、その駆動電流は所定値に保つことができ、また電源電圧等に多少の変動があったとしてもその発光出力を所定値に維持することができる。
なお図11では、発光サイリスタd1、d5を発光させるために、時刻t4でデータ端子D1、D2をHighレベルとし、消灯させるために時刻t5でLowレベルとしているが、発光サイリスタd1を発光させる必要がない場合には時刻t4からt5の間もデータ端子D1をLowレベルのままとすれば良く、また発光サイリスタd5を発光させる必要がない場合には時刻t4からt5の間もデータ端子D2をLowレベルのままとすれば良い。このように、データ端子D1、D2の値により、発光サイリスタd1、d5の発光/非発光状態を切り替えることができる。
以下同様に、図11のSCK信号の第2パルスにより、シフトレジスタのQ1〜Q4の出力はそれぞれ、High、Low、High、Highレベルとなり、シフトレジスタのQ5〜Q8の出力はそれぞれ、High、Low、High、Highレベルとなる。次いで時刻t7で示す様に、データ端子D1、D2をb部、j部にて示す様にHighレベルとすることで、発光サイリスタd2、d6のアノード・ゲート間に順方向の電位差を生じ、これによるトリガ電流によって発光サイリスタd2、d6はターンオンして発光状態となる。
以下同様に、SCK信号の第4パルス目まで動作が完了し、データ信号D1、D2による発光サイリスタの駆動制御が完了することで、発光サイリスタd1〜d4、d5〜d8の一連の発光駆動は完了しており、この時点でシフトレジスタのQ1〜Q4の出力はそれぞれ、High、High、High、Lowレベルとなり、シフトレジスタのQ5〜Q8の出力はそれぞれ、High、High、High、Lowレベルとなっていて、図10において説明したプリセット処理の完了時と同様の状態となっている。このため、引き続く1ラインの走査駆動においても、図11と同様の処理を繰り返すことで、発光サイリスタ列d1〜d4、d5〜d8の発光駆動をそれぞれ同時並行して順次行うことができる。
次に実施例2を説明する。図12は実施例2における光プリントヘッド19および印刷制御部1とその周辺の構成を示しており、発光素子として発光サイリスタが用いられている。なお図12では説明を簡単にするため、発光素子を8個のみとして記載しているが、たとえばA4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なヘッドにおいては、発光素子の総数は4992個であり、図12の構成からなる各回路素子が総数でそれぞれ4992段配列されることになる。
図12において、19は光プリントヘッド、1は印刷制御部、60は印刷制御部1とLEDヘッド19とを接続する接続ケーブルを示している。また図中に−>>−として示す回路シンボルは接続コネクタを示している。光プリントヘッド19のD端子入力と発光サイリスタd1等のアノード端子の間に抵抗201が接続されており、この抵抗201は後述するシフトレジスタ部に配設されている。なお後述するように、接続ケーブル60の特性インピーダンスをZo、抵抗201の抵抗値をRLとするとき、望ましくはRL=Zoとなるように、その抵抗値が設定される。あるいは、発光サイリスタの駆動電流波形の遷移状態において多少のリップル波形を許容できる場合には
Zo/2 ≦ RL ≦ 2×Zo
としても良い。
光プリントヘッド19において、破線で囲んで示す30はシフトレジスタであって、31〜38はそれを構成するフリップフロップ回路、41〜48はバッファ回路である。シフトレジスタ30はシリコンウェハー基材上に公知のCMOS(Complementary Metal Oxcide Semiconductor)構造を用いて作成されるが、このほかガラス基板上に公知のTFT(Thin Film Transistor)技術を用いて製造することもできる。接続ケーブル60を介して伝達されたデータ信号はヘッド19中に入力され、シフトレジスタチップ中に配置された抵抗201を通る。前記シフトレジスタ30は例えばCMOS構造をもつモノリシックに集積回路化されたものである。上述のように抵抗201の一端は光プリントヘッド19のD端子と接続され、抵抗201の他端は公知のフォトリソグラフィー法を用いて形成されるメタル配線を用いて、前記シフトレジスタチップ上に貼付された発光サイリスタチップd1等のアノード端子と接続される。d1〜d8は発光サイリスタであって、アノード、カソード、ゲートの三つの端子を備える。
光プリントヘッド19にはD、SI、SCKの3個の入力信号端子を備えており、SIはシフトレジスタ30へのシリアルデータ入力端子、SCKはシフトレジスタのクロック端子、Dは前記発光サイリスタのアノード端子と接続され、発光サイリスタが駆動されるときのアノード電流を供給するデータ端子である。シリアルデータ端子SIはフリップフロップ31のD入力端子と接続され、フリップフロップ31のQ出力端子は次段のフリップフロップ32のD入力と接続される一方で、バッファ回路41の入力とも接続される。
バッファ回路41の出力はシフトレジスタ回路30のQ1出力となっていて、発光サイリスタd1のゲート端子と接続される。シフトレジスタのQ2〜Q8についても同様である。シフトレジスタ30のクロック端子SCKはフリップフロップ31〜38のクロック端子と接続され、光プリントヘッド19のデータ端子Dは発光サイリスタd1〜d8のアノードと接続されている。また、発光サイリスタd1〜d8のカソード端子はグランドに接続される。
印刷制御部1において、破線で囲んで示す71は駆動出力回路であって、73、74はPMOSトランジスタ、75、76はNMOSトランジスタ、77はインバータ回路、78は制御電圧発生回路であって、図中Vcontとして示した制御電圧を発生させる。PMOSトランジスタ73のソースは電源VDDに接続され、そのドレーンはNMOSトランジスタ75のドレーン端子と接続されるとともにPMOSトランジスタ74のゲート端子とも接続される。NMOSトランジスタ75のソースは前記Vcont電位と接続されている。
またDRV−ON信号は発光サイリスタの実際の発光/非発光のタイミングを指令する信号であって、PMOSトランジスタ73、NMOSトランジスタ75のゲート端子と接続される一方で、インバータ回路77の入力端子とも接続されている。PMOSトランジスタ74のソースは電源VDDと接続され、ドレーン端子は光プリントヘッド19のD端子と接続されるとともに、NMOSトランジスタ76のドレーン端子とも接続されている。またNMOSトランジスタ76のソース端子はグランドと接続され、そのゲート端子は前記インバータ回路77の出力と接続されている。
いま、DRV−ON信号がLowレベルにある場合を考える。インバータ回路77の出力はHighレベルとなり、NMOSトランジスタ76はオンとなる。またNMOSトランジスタ75はオフ状態、PMOSトランジスタ73はオン状態であり、PMOSトランジスタ74のゲート・ソース間電圧は略0Vとなって該トランジスタ74はオフとなる。この結果、光プリントヘッド19のデータ端子Dは略0Vの出力となり、発光サイリスタd1〜d8の各アノード端子へ流れる電流IOUT2もゼロとなり、発光サイリスタd1〜d8は全て非発光状態とすることができる。
別の場合として、DRV−ON信号がHighレベルとなる場合を考える。このとき、インバータ回路77の出力はLowレベルとなり、NMOSトランジスタ76はオフとなる。また、NMOSトランジスタ75はオン状態、PMOSトランジスタ73はオフ状態であり、PMOSトランジスタ74のゲート電位は制御電圧発生回路78の出力であるVcont電位と略等しい値となって、該トランジスタ74にはドレーン電流が流れる。この結果、光プリントヘッド19のデータ端子Dから発光サイリスタd1〜d8のアノード端子へ流れる電流IOUT2が流れ得ることになり、発光サイリスタd1〜d8のうち発光指令されている素子のみが選択的に発光状態となる。
PMOSトランジスタ74は飽和領域で動作するように、制御電圧発生回路78の出力であるVcontの電位が設定されており、電子デバイス物理の理論により良く知られている様に、このときのドレーン電流Idは次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vt)2
ここで、Kは定数、WはPMOSトランジスタ74のゲート幅、Lはゲート長、Vgsはゲート・ソース間電圧、Vtは閾値電圧である。なお、このときのVgs電圧は電源電位VDDと制御電圧Vcont間の電位差に等しく、
Vgs=VDD−Vcont
である。
このように、PMOSトランジスタ74のドレーン電流Id、すなわち発光サイリスタd1〜d8の駆動電流IOUT2は、前記Vcont電位を調整することで所望の値とすることができる。それに加えて、前記したPMOSトランジスタ74のように、飽和領域で動作するMOSトランジスタにおいては、その素子サイズを適切に設定することでドレーン電位が多少変動したとしてもドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性はMOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには前記ゲート長を大きめに設定する一方で、前記Vgs電圧は小さく設定される。
図13は図12において用いる抵抗201の構成を説明するものである。図13(a)は前記したシフトレジスタチップ30の所定箇所に配置される抵抗素子の上面図である。図13(a)において、抵抗素材としてポリシリコンが用いられ、202は抵抗を構成するポリシリコン部、203は前記ポリシリコン領域の上面に配設され、図示しないパッシベーション膜上に開口されたコンタクト開口部を示す。
また図13(b)は図13(a)のA−A’断面図である。図13(b)において、204はシリコンのウェハー基材であり、前記したシフトレジスタ30と共通のICチップとして形成されている。205はSiO2素材を用いた絶縁膜(フィールド酸化膜)で、206は絶縁膜205上に形成されたポリシリコン膜、207は層間絶縁膜、208はメタル配線、209はIC上面を覆うパッシベーション保護膜である。
前記ポリシリコン領域の幅をW、前記コンタクト部間の距離をLとし、前記ポリシリコンのシート抵抗をRs[Ω/□]、図13(a)のコンタクト間の抵抗をRLと記号するとき、RLは次式で与えられる。
RL=(L/W)×Rs
上式を参照して明らかなように、図12にて示した抵抗201は、図13の構成のように作成されるので、前記ポリシリコン幅W、コンタクト間隔Lを適切に設定することで所望の値に設定することができる。
図14(a)、(b)は図13(a)、(b)のポリシリコンに代えて不純物の拡散領域を用いて抵抗素子を形成する場合の構成例である。図14(a)は抵抗素子(201)の上面図で、図14(b)はそのA−A’断面図である。図において、204はシリコンのウェハー基材であり、前記したシフトレジスタ30と共通のICチップとして形成されている。前記ウェハー基材(204)としてN型不純物を含むものを用いる場合、その所定箇所にP型不純物を拡散させて抵抗素子211を形成する。あるいは、前記ウェハー基材(204)としてP型不純物を含むものを用いる場合、その所定箇所にN型不純物を拡散させて抵抗素子211を形成する。別の方法として、N型ウェハー基材の所定箇所にP型ウェル部を形成して、該ウェル内の所定部にN型不純物を拡散させたN拡散抵抗としても良いし、あるいは、P型ウェハー基材の所定箇所にN型ウェル部を形成して、該ウェル内の所定部にP型不純物を拡散させたP拡散抵抗として形成することもできる。207は層間絶縁膜、208はメタル配線、209はIC上面を覆うパッシベーション保護膜である。
前記拡散抵抗領域の幅をW、前記コンタクト部間の距離をLとし、前記拡散抵抗のシート抵抗をRs[Ω/□]、図14(a)のコンタクト間の抵抗をRLと記号するとき、RLは次式で与えられる。
RL=(L/W)×Rs
上式を参照して明らかなように、図12にて示した抵抗201は、図14の構成のように作成されるので、前記拡散領域の幅W、コンタクト間隔Lを適切に設定することで所望の値に設定することができる。
図15は図12に示した回路から代表して1つの発光サイリスタd1を選び、等価回路モデル化したものである。図15は図12に示す回路のうち、駆動出力回路71を定電流源シンボルに置き換え、その電流値をIsとしている。60は印刷制御部1と光プリントヘッド19との間を接続する接続ケーブルであって、特性インピーダンスをZo、信号伝達遅延時間をTdとしてもつ伝送路として示している。また抵抗201の抵抗値をRLと記号している。82は光プリントヘッドの発光素子のうち代表して1つの発光サイリスタd1を選び、等価回路モデル化して示したものである。
発光サイリスタd1をオン状態とするため、ゲート・カソード間に抵抗Rgを接続している。これによりアノード端子から流入させられるアノード電流Idのうち、一部の電流成分がゲート電流として抵抗Rgを介してグランドへ流れ、該ゲート電流により発光サイリスタd1はオン状態とされる。また、Cjはコンデンサであって、発光サイリスタd1、d2、...等のアノード・カソード間に生じる接合容量をモデル化したものである。
図16(a)は信号源である駆動源電流Isの波形を示し、そのオン時間、オフ時間をそれぞれTon、Toffとして図中に記載している。図16(b)は、比較のために、従来技術による構成と同様に抵抗RLをゼロとした場合における発光サイリスタの駆動電流波形を示したものである。
前記接続ケーブルについて、ケーブル長をL、ケーブル内の信号伝搬速度をVoとするとき、ケーブルの信号伝達遅延時間Tdは次式で与えられる。
Td=L/Vo
ここで、信号伝搬速度Voは
Vo=Co/√εr
であり、Coは真空中における光速度であって
Co≒3×108[m/s]
で、εrは前記ケーブル内で用いられる絶縁材料の比誘電率である。
これより信号伝達遅延時間Tdは
Td=L/Vo=(L/Co)×√εr
となる。
典型的な例としてケーブルの比誘電率を4、ケーブル長を1[m]とするとき、
Td≒6.7[nS]
となる。
また、図15において、破線で囲んで示す82は光プリントヘッドをモデル化したものであって、d1は発光サイリスタのうちの1素子分を示し、ゲート端子とカソード端子間に接続された抵抗Rgは前記発光サイリスタをオン状態とするため挿入している。またCjはコンデンサであって、前記発光サイリスタ列のアノード・カソード間に生じる静電容量をモデル化したものである。
図16(b)に示したように、従来技術においては、駆動源波形Isが立ち上がると、前記Td分遅れて駆動信号が発光サイリスタd1に到達し、被駆動素子である発光サイリスタd1には電流波形Idが立ち上がり始める。このとき、発光サイリスタd1のアノード・カソード間は等価的にコンデンサCjと同様に動作し、該素子により信号反射を生じ、接続ケーブル60内を駆動信号源方向へ向かう反射波を生じる。前記反射波は駆動信号源の内部インピーダンスにより反射して、再び接続ケーブル60内を光プリントヘッド19方向へ向かって反射を生じる。このように、接続ケーブル60を介して、駆動信号源と負荷(サイリスタ)の間で多重に信号反射を生じ、2×Tdを周期とするリップルを生じつつ、立ち上がり時間Trで立ち上がる電流波形が得られる。
図16(a)の波形と図16(b)の波形とを比較して明らかなように、駆動信号源波形の立ち上がりが急峻であったとしても、発光サイリスタの駆動電流波形の立ち上がり時間Trは大きくなってしまう。前記多重反射波形がケーブル60内を往復する毎に反射量を減じていき、10往復の後に反射成分が消滅するとき、前記信号の立ち上がり時間Trは
Tr=2×Td×10≒6.7×20=134[nS]
となる。発光サイリスタの駆動電流の立ち下がりにおける、立下り時間Tfにおいても同様である。
前記立ち上がり時間Trは駆動信号源の立ち上がり時間と比べて大きな値であって、これは主として接続ケーブル60による伝搬遅延時間、すなわちケーブル長により決まってしまい、プリントヘッドの点灯スイッチング速度を向上させるためにはケーブル長を短くせざるを得ないことになる。ところがケーブル長はプリンタ装置内における部品配置の状況により制約され、短くすることは困難である。とくにブラック、イエロー、マゼンタ、シアン等の各色トナーユニットを順に配置して構成されるタンデムカラープリンタにおいては、各色ごとにケーブル長が異なり、長いものでは1m以上となってしまう。この結果、発光サイリスタの駆動電流の立ち上がり時間や立下り時間は増大し、それを用いるプリントヘッドのスイッチング速度を増加させることが出来ないという課題があった。
それに対して実施例2においては、光プリントヘッド19の側のデータ端子に直列に抵抗201を挿入する構成としている。図16(c)は、実施例2において、接続ケーブル60の特性インピーダンスをZo、前記抵抗201の抵抗値をRLとするとき、RL=Zoとなるように、その抵抗値を設定した場合の駆動電流波形を示す。この場合においては、図16(b)において見られたような、信号遷移時におけるリップル波形や、遷移時間の増加といった現象は解消しており、比較的短い立ち上がり時間Trや立下り時間Tfでもってスイッチングが可能となっていることが判る。
上記実施例2では、抵抗201の抵抗値をRLとするとき、RL=Zoとなるように設定したが、発光サイリスタの駆動電流波形の遷移状態において多少のリップル波形を許容できる場合には
Zo/2 ≦ RL ≦ 2×Zo
としても同様の効果を得ることができる。
以上詳細に説明したように、実施例2においては、発光サイリスタd1〜d8、シフトレジスタ30からなる光プリントヘッド19およびその駆動出力回路71において、駆動出力回路71と光プリントヘッド19とを別の基板ユニットとして構成し、両者間は接続ケーブル60を用いて電気接続されており、該接続ケーブル60が長い場合においても、駆動出力回路71と発光サイリスタとの間で信号反射が多重に発生して駆動電流波形の立ち上がり時間や立下り時間が増大という課題を解決して、発光サイリスタのスイッチング制御を高速に行うことができる。
それに加えて実施例2の構成においては、発光サイリスタは前記シフトレジスタチップ30上に貼付されるとともに、前記発光サイリスタのデータ信号を終端するための終端抵抗201もまたシフトレジスタIC上に設けることでモノリシックに集積することができ、個別に設ける必要がなく、低コスト化するうえで有利なものとなっている。なお実施例2における終端抵抗201は、ポリシリコンや不純物拡散抵抗としてシフトレジスタIC上に設ける構成としているが、これ以外にもシフトレジスタチップ上に公知のエピフィルムボンディング法を用いてAlGaAs等の化合物半導体薄膜を貼付しておき、前記膜をフォトリソグラフィー法により所定部位をパターン形成することでも構成可能なことは勿論である。
次に実施例3を説明する。図17は実施例3における光プリントヘッド19および印刷制御部1とその周辺の構成を示しており、発光素子として発光サイリスタが用いられている。図17では説明を簡単にするために発光素子を8個のみとして記載しているが、たとえばA4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なヘッドにおいては、発光素子の総数は4992個であり、図17の構成からなる各回路素子が総数でそれぞれ4992段配列されることになる。
図17において、19は光プリントヘッド、1は印刷制御部、60は印刷制御部1とプリントヘッド19とを接続する接続ケーブルを示している。また図中に−>>−として示す回路シンボルは接続コネクタを示している。光プリントヘッド19のD端子入力とサイリスタd1等のアノード端子の間には抵抗201が接続されており、抵抗201は後述するシフトレジスタ部に配設されている。抵抗201には中点タップ301、302、303が設けられており、それぞれの区間抵抗を図17においてはR0、R1、R2として図中に記載している。
抵抗201の一端(抵抗R0の一端)は光プリントヘッド19のデータ端子Dと接続されており、抵抗R0の他端は抵抗R1の一端と中点タップ端子301に接続され、抵抗R1の他端は抵抗R2の一端と中点タップ端子302に接続され、抵抗R2の他端もまた中点タップ端子303に接続されている。なお上記中点タップ端子301、302、303は、例えば図13に示した実施例2のコンタクト部203に対応するものであって、抵抗部を形成するポリシリコン領域(202)上にあってパッシベーション膜に開口された開口部203に相当するものである。
また、後述するように、前記接続ケーブル60の特性インピーダンスをZo、前記抵抗201の抵抗値(図17においては抵抗R0と抵抗R1と合計したもの)をRLとするとき、望ましくはRL=Zoとなるように、その抵抗値が設定される。あるいは、発光サイリスタの駆動電流波形の遷移状態において多少のリップル波形を許容できる場合には
Zo/2 ≦ RL ≦ 2×Zo
としても良い。
図17における接続ケーブル60は、同軸ケーブル状のものであっても、ツイストペア電線であっても良く、フレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板であっても構わない。しかしながら、前述したような接続手段においてはその特性インピーダンスは種々異なるものとなってしまい、一義的に定めることができない。そのため前記特性インピーダンスZoに合致できるよう終端抵抗値を調整する必要がある。そこで前記抵抗201には中点タップ301、302、303を予め設けておき、所望抵抗値に近いタップ位置に接続することで種々のケーブル構造に応じた光プリントヘッド19を作り分けることが可能となる。
さて光プリントヘッド19において、破線で囲んで示す30はシフトレジスタであって、31〜38はそれを構成するフリップフロップ回路、41〜48はバッファ回路である。シフトレジスタ30はシリコンウェハー基材上に公知のCMOS構造を用いて作成されるが、このほかガラス基板上に公知のTFT技術を用いて製造することもできる。接続ケーブル60を介して伝達されたデータ信号は光プリントヘッド19中に入力され、シフトレジスタチップ中に配置された抵抗201の一端に接続される。シフトレジスタ30は例えばCMOS構造をもつモノリシックに集積回路化されたものである。抵抗201の他端もしくは中点タップ303から前記シフトレジスタチップ上に貼付された発光サイリスタチップのアノード端子とはメタル配線により接続される。前記メタル配線は公知のフォトリソグラフィー法を用いることで容易に作成可能である。
d1〜d8は発光サイリスタであって、アノード、カソード、ゲートの三つの端子を備える。光プリントヘッド19はD、SI、SCKの3個の入力信号端子を備えており、SIはシフトレジスタ30へのシリアルデータ入力端子、SCKはシフトレジスタのクロック端子、Dは前記発光サイリスタのアノード端子と接続され、発光サイリスタが駆動されるときのアノード電流を供給するデータ端子である。シリアルデータ端子SIはフリップフロップ31のD入力端子と接続され、Q出力端子は次段のフリップフロップ32のD入力と接続される一方で、バッファ回路41の入力とも接続される。バッファ回路41の出力はシフトレジスタ回路30のQ1出力となっていて、発光サイリスタd1のゲート端子と接続される。シフトレジスタのQ2〜Q8についても同様である。シフトレジスタのクロック端子SCKはフリップフロップ31〜38のクロック端子と接続され、光プリントヘッド19のデータ端子Dは発光サイリスタd1〜d8のアノードと接続されている。また発光サイリスタd1〜d8のカソード端子はグランドに接続される。
印刷制御部1において、破線で囲んで示す71は駆動出力回路であって、73、74はPMOSトランジスタ、75、76はNMOSトランジスタ、77はインバータ回路、78は制御電圧発生回路であって図中Vcontとして示した制御電圧を発生させる。PMOSトランジスタ73のソースは電源VDDに接続され、そのドレーンはNMOSトランジスタ75のドレーン端子と接続されるとともにPMOSトランジスタ74のゲート端子と接続される。NMOSトランジスタ75のソースはVcont電位と接続される。またDRV―ON信号は発光サイリスタの実際の発光/非発光のタイミングを指令する信号であって、PMOSトランジスタ73、NMOSトランジスタ75のゲート端子と接続される一方で、インバータ回路77の入力とも接続される。PMOSトランジスタ74のソースは電源VDDと接続され、そのドレーン端子は光プリントヘッドヘッド19のD端子と接続されるとともに、NMOSトランジスタ76のドレーン端子とも接続されている。NMOSトランジスタ76のソース端子はグランドと接続され、そのゲート端子はインバータ回路77の出力と接続されている。
いま、DRV−ON信号がLowレベルにある場合を考える。インバータ回路77の出力はHighレベルとなり、NMOSトランジスタ76はオンとなる。またNMOSトランジスタ75はオフ状態、PMOSトランジスタ73はオン状態であり、PMOSトランジスタ74のゲート・ソース間電圧は略0Vとなって該トランジスタ74はオフとなる。この結果、光プリントヘッド19のデータ端子Dは略0Vの出力となり発光サイリスタの各アノード端子へ流れる電流IOUT2もゼロとなり、発光サイリスタd1〜d8は全て非発光状態とできる。
別の場合として、DRV−ON信号がHighレベルとなる場合を考える。このとき、インバータ回路77の出力はLowレベルとなり、NMOSトランジスタ76はオフとなる。またNMOSトランジスタ75はオン状態、PMOSトランジスタ73はオフ状態であり、PMOSトランジスタ74のゲート電位は制御電圧発生回路78の出力であるVcont電位と略等しい値となって、該トランジスタ74にはドレーン電流が流れる。この結果、光プリントヘッド19のデータ端子Dから発光サイリスタのアノード端子へ流れる電流IOUT2が流れ得ることになり、発光サイリスタd1〜d8のうち発光指令されている素子のみが選択的に発光状態となる。
PMOSトランジスタ74は飽和領域で動作するように、制御電圧発生回路78の出力であるVcontの電位が設定されており、電子デバイス物理の理論により良く知られている様に、このときのドレーン電流Idは次式で与えられる。
Id=K・(W/L)・(Vgs−Vt)2
ここで、Kは定数、WはPMOSトランジスタ74のゲート幅、Lはゲート長、Vgsはゲート・ソース間電圧、Vtは閾値電圧である。なお、このときのVgs電圧は電源電位VDDと制御電圧Vcont間の電位差に等しく、
Vgs=VDD−Vcont
である。
このように、PMOSトランジスタ74のドレーン電流Id、すなわち発光サイリスタの駆動電流IOUT2は、制御電圧発生回路78の出力であるVcont電位を調整することで所望の値とすることができる。それに加えて、前記したPMOSトランジスタ74のように飽和領域で動作するMOSトランジスタにおいては、その素子サイズを適切に設定することでドレーン電位が多少変動したとしてもドレーン電流値を所定値に保つことが可能である。このような特性はMOSトランジスタの定電流特性として公知であり、良好な特性を得るためには前記ゲート長を大きめに設定する一方で、前記Vgs電圧は小さく設定される。
次に実施例3の動作を説明する。図18は図17に示した回路から代表して1つの発光サイリスタd1を選び、等価回路モデル化したもので、図17に示す回路のうち、駆動出力回路71を定電流源シンボルに置き換え、その電流値をIsとしている。また60は印刷制御部1と光プリントヘッド19の間を接続する接続ケーブルで、特性インピーダンスZo、信号伝達遅延時間Tdをもつ伝送路として示している。また抵抗201の抵抗値をRLと記号している。82はヘッド19の発光素子のうち代表して一つの発光サイリスタd1を選び、等価回路モデル化したものである。
発光サイリスタd1をオン状態とするため、ゲート・カソード間に抵抗Rgを接続している。これによりアノード端子から流入させられるアノード電流Idのうち、一部の電流成分がゲート電流として抵抗Rgを介してグランドへ流れ、該ゲート電流により発光サイリスタd1はオン状態とされる。またCjはコンデンサであって、発光サイリスタd1、d2、...等のアノード・カソード間に生じる接合容量をモデル化したものである。
図19(a)は信号源である駆動源電流Isの波形を示し、そのオン時間、オフ時間をTon、Toffとして図中に記載している。図19(b)は比較のために従来技術による構成として抵抗RLをゼロとした場合におけるサイリスタの駆動電流波形を示したものである。前記接続ケーブルについて、ケーブル長をL、ケーブル内の信号伝搬速度をVoとするとき、ケーブルの信号伝達遅延時間Tdは次式で与えられる。
Td=L/Vo
ここで、信号伝搬速度Voは
Vo=Co/√εr
であり、Coは真空中における光速度であって
Co≒3×108[m/s]
で、εrは前記ケーブル内で用いられる絶縁材料の比誘電率である。
これより信号伝達遅延時間Tdは
Td=L/Vo=(L/Co)×√εr
となる。
典型的な例としてケーブルの比誘電率を4、ケーブル長を1[m]とするとき、
Td≒6.7[nS]
となる。
図19(b)は前記終端抵抗をゼロとした場合のものであるが、駆動源波形Isが立ち上がると、信号伝達遅延時間Td分遅れて駆動信号が発光サイリスタd1に到達し、被駆動素子である発光サイリスタには電流波形Idが立ち上がり始める。このとき、発光サイリスタd1のアノード・カソード間は等価的にコンデンサCjと同様に動作し、該素子により信号反射を生じ、接続ケーブル60内を駆動信号源方向へ向かう反射波を生じる。反射波は駆動信号源の内部インピーダンスにより反射して、再び接続ケーブル60内を光プリントヘッド19方向へ向かって反射を生じる。このように、接続ケーブル60を介して、駆動信号源と負荷(サイリスタ)の間で多重に信号反射を生じ、2×Tdを周期とするリップルを生じつつ、立ち上がり時間Trで立ち上がる電流波形が得られる。
図19(a)の波形と図19(b)の波形とを比較して明らかなように、駆動信号源波形の立ち上がりが急峻であったとしても、発光サイリスタの駆動電流波形の立ち上がり時間Trは大きくなってしまう。前記多重反射波形がケーブル内を往復する毎に反射量を減じていき、10往復の後に反射成分が消滅するとき、前記信号の立ち上がり時間Trは
Tr=2×Td×10≒6.7×20=134[nS]
となる。発光サイリスタの駆動電流の立ち下がりにおける、立下り時間Tfにおいても同様である。
発光サイリスタの駆動電流の立ち上がり時間Trは駆動信号源の立ち上がり時間と比べて大きな値であって、これは主として接続ケーブルによる伝搬遅延時間、すなわちケーブル長により決まってしまい、光プリントヘッドの点灯スイッチング速度を向上させるためにはケーブル長を短くせざるを得ないことになる。ところがケーブル長はプリンタ装置内における部品配置の状況により制約され、短くすることは困難である。とくにブラック、イエロー、マゼンタ、シアン等の各色トナーユニットを順に配置して構成されるタンデムカラープリンタにおいては、各色ごとにケーブル長が異なったものとなり、長いものでは1m以上となってしまうのが不可避である。この結果、発光サイリスタの駆動電流の立ち上がり時間や立下り時間は増大してしまい、それを用いる光プリントヘッドのスイッチング速度を増加させることが出来ないという課題があった。
これに対して実施例3においては、光プリントヘッドの側のデータ端子に複数の抵抗の直列接続回路を挿入して中点タップを取り出す構成としている。図19(c)は前記接続ケーブルの特性インピーダンスをZo、前記抵抗201の抵抗値をRLとするとき、RL=Zoとなるように、その抵抗値を設定した場合の例である。この場合においては、図19(b)において見られたような、信号遷移時におけるリップル波形や、遷移時間の増加といった現象は解消しており、比較的短い立ち上がり時間Trや立下り時間Tfでもってスイッチングが可能となっていることが判る。
上記の例では前記抵抗81の抵抗値をRLとするとき、RL=Zoとなるように設定したが、サイリスタの駆動電流波形の遷移状態において多少のリップル波形を許容できる場合には
Zo/2 ≦ RL ≦ 2×Zo
としても同様の効果を得ることができる。
図19(d)は前記接続ケーブルの特性インピーダンスをZo、前記抵抗201の抵抗値をRLとするとき、RL≫Zoとなるように、その抵抗値を設定した場合の例である。この場合においては、図19(b)において見られたような、信号遷移時におけるリップル波形は解消しているものの、立ち上がり時間Trや立下り時間Tfが増加してしまっており、発光サイリスタのスイッチング動作を高速化するうえで望ましくない。
図19(b)、図19(c)および図19(d)のそれぞれの波形を比較して明らかなように、接続ケーブルの特性インピーダンスに対して終端抵抗値が過小な場合(図19(b))には信号遷移時にリップル波形を生じ、その整定時間が長く必要になる。また接続ケーブルの特性インピーダンスに対して終端抵抗値が過大な場合(図19(d))には信号遷移時にリップル波形を生じないものの、その遷移時間が長くなってしまう。
これに対して、接続ケーブルの特性インピーダンスに対して終端抵抗値を調整して適切に設定した場合(図19(c))には、信号遷移時にリップル波形を生じず、しかも同時に遷移時間も短くすることができる。これにより、発光サイリスタのスイッチング動作を高速化するうえで望ましい。
以上説明したように実施例3においては、発光サイリスタd1〜d8およびその駆動出力回路71において、駆動出力回路71と発光サイリスタとを別の基板ユニットとして構成し、両者間は接続ケーブル60を用いて電気的に接続され、前記接続ケーブル60が長い場合においても、駆動出力回路71と発光サイリスタとの間で信号反射が多重に発生して駆動電流波形の立ち上がり時間や立下り時間が増大という課題を解決して、発光サイリスタのスイッチング制御を高速に行うことができる。
また実施例3においては、発光サイリスタは前記シフトレジスタチップ上に貼付されるとともに、前記発光サイリスタのデータ信号を終端するための終端抵抗201もまたシフトレジスタIC上に設けることでモノリシックに集積することができ、個別に設ける必要がなく、低コスト化するうえで有利なものとなっている。それに加えて実施例3においては、前記終端抵抗201には予め中点タップ301、302、303が設けられており、種々の接続ケーブルの特性インピーダンスに応じた終端抵抗値に調整することができる。これにより、光プリントヘッドのデータ信号の信号遷移時にリップル波形を生じず、遷移時間を最小化することができ、発光サイリスタのスイッチング動作を高速化することができて、それを搭載してなるプリンタの印刷速度を高速化が可能となる。
前述したように光プリントヘッドの接続ケーブルとしては同軸ケーブル状のもの、ツイストペア電線、フレキシブルフラットケーブル、フレキシブルプリント基板などが用いられる。ところが前述した接続手段においては、その特性インピーダンスは種々異なるものとなってしまい、一義的に定めることができない。そのため前記特性インピーダンスZoに合致できるよう終端抵抗値を設定しておく必要がある。実施例3の構成においては、前記抵抗201には中点タップ301、302、303を予め設けておき、所望抵抗値に近いタップ位置に接続することで種々のケーブル構造に応じた光プリントヘッド19を作り分けることが可能となり、前述したようなケーブルの特性インピーダンスと終端抵抗値とが大きく異なる駆動波形の遷移時間が増大するという課題を解消することができる。
なお、実施例3における終端抵抗201はポリシリコンや不純物拡散抵抗としてシフトレジスタIC上に設ける構成としているが、これ以外にもシフトレジスタチップ上に公知のエピフィルムボンディング法を用いてAlGaAs等の化合物半導体薄膜を貼付しておき、前記膜をフォトリソグラフィー法により所定部位をパターン形成することでも構成可能なことは勿論である。
以上実施例1〜3で説明した発光素子アレイは、電子写真プリンタにおける露光工程で光源として利用することができる。以下その一例としてタンデムカラープリンタをとりあげ、図20を用いて説明する。図20は本発明の半導体複合装置を搭載したサイリスタヘッドを用いたタンデムカラープリンタを示す概略構成図である。
図20において、タンデムカラープリンタ600は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)およびシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット601〜604を有し、これらが記録媒体605の搬送経路の上流側から順に配置されている。これらプロセスユニット601〜604の内部構成は共通しているため、例えばマゼンタのプロセスユニット603を例に取り、その内部構成を説明する。
プロセスユニット603には、像担持体としての感光体ドラム603aが矢印方向に回転可能に配置され、この感光体ドラム603aの周囲には、その回転方向上流側から順に、感光体ドラム603aの表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置603b、帯電された感光体ドラム603aの表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置603cが配設され、露光装置603cとしては上記各実施例で説明した光プリントヘッド(19)が用いられる。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム603aの表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像装置603d、及び感光体ドラム603a上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置603eが配設される。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギアなどを経由して動力が伝達され回転する。
またタンデムカラープリンタ600は、その下部に、紙などの記録媒体605を堆積した状態で収納する用紙カセット606を装着し、その上方には記録媒体605を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ607が配設されている。更に、記録媒体605の搬送方向におけるホッピングローラ607の下流側には、ピンチローラ608と共に記録媒体605を挟持することによって記録媒体を搬送する搬送ローラ610と、ピンチローラ609と共に記録媒体605を挟持して記録媒体605の斜行を修正し、プロセスユニット601に搬送するレジストローラ611を配設している。これらのホッピングローラ607、搬送ローラ610及びレジストローラ611は図示されない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
プロセスユニット601〜604の各感光体ドラムに対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成され、感光ドラム603a上に付着されたトナーによる顕像を記録媒体605に転写する転写ローラ612が配設されている。これら転写ローラ612には感光ドラム603a上のトナーによる顕像を記録媒体605に転写する転写時に、感光体ドラム601a〜604aの表面電位とこれら各転写ローラ612の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加される。
定着装置613は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、記録媒体605上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する。定着装置613の下流側に配設される排出ローラ614、615は、定着装置613から排出された記録媒体605を、排出部のピンチローラ616、617と共に挟持し、記録媒体スタッカ部618に搬送する。これら定着装置613、排出ローラ614等は図示しない駆動源からギアなどを経由して動力が伝達され回転される。
つぎに上記構成のタンデムカラープリンタ600の動作を説明する。まず、用紙カセット606に堆積した状態で収納されている記録媒体605がホッピングローラ607によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて記録媒体605は、搬送ローラ610とピンチローラ608およびレジストローラ611とピンチローラ609に挟持されて、イエローのプロセスユニット601の感光体ドラム601aと転写ローラ612の間に搬送される。その後記録媒体605は、感光体ドラム601a及び転写ローラ612に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム601aの回転によってさらに下流方向に搬送される。
同様にして、記録媒体605は、順次プロセスユニット602〜604を通過し、その通過過程で、各露光装置601c〜604cにより形成された静電潜像を現像装置601d〜604dによって現像した各色のトナー像がその記録面に順次転写され、重ね合わせられる。そしてその記録面上に各色のトナー像が重ね合わせられた後、定着装置613によってトナー像が定着され、定着後の記録媒体605は、排出ローラ614とピンチローラ616および排出ローラ615とピンチローラ617に挟持されて、タンデムカラープリンタ600の外部の記録媒体スタッカ部618に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が記録媒体605上に形成される。
以上の様に、本発明の画像形成装置によれば、発光素子として発光サイリスタを有する光プリントヘッドを採用するため、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置(プリンタ,コピー機など)を提供することができる。即ち、上記実施例1〜3の光プリントヘッドを用いることにより、上記説明したフルカラーの画像形成装置に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に露光装置を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置において一層大きな効果が得られる。
以上述べたように、上記各実施例では光源として用いられる発光サイリスタを用いた場合について説明したが、本発明は、スイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子、例えば有機EL素子や発熱抵抗体への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば有機EL素子のアレイで構成される有機ELヘッドを備えたプリンタや発熱抵抗体の列で構成されるサーマルプリンタにおいて利用することができる。さらに、表示素子、例えば列状或いはマトリクス状に配列された表示素子の駆動(電圧印加の制御)のためにスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。本発明はまた、3端子構造を備えたサイリスタのほか、第1と第2の2つのゲート端子を備えた4端子サイリスタSCS:(Silicon)Semiconductor Controlled Switchの場合にも適用可能である。
本発明に係る電子写真プリンタを示すブロック図である。
実施例1の光プリントヘッド及び制御部を示す回路図である。
実施例1の発光サイリスタを示す図である。
光プリントヘッドの基板ユニットの斜視図である。
光プリントヘッドの構成を示す断面図である。
光プリントヘッドの動作を示すタイムチャートである。
実施例1の発光サイリスタの等価回路モデルを示す回路図である。
実施例1の発光サイリスタへの駆動電流波形を示すタイムチャートである。
実施例1の変形例の光プリントヘッド及び制御部を示す回路図である。
変形例の動作を示すタイムチャートである。
変形例の動作を示すタイムチャートである。
実施例2の光プリントヘッド及び制御部を示す回路図である。
実施例2の抵抗の構成を示す図である。
実施例2の抵抗の構成を示す図である。
実施例2の発光サイリスタの等価回路モデルを示す回路図である。
実施例2の発光サイリスタへの駆動電流波形を示すタイムチャートである。
実施例3の光プリントヘッド及び制御部を示す回路図である。
実施例3の発光サイリスタの等価回路モデルを示す回路図である。
実施例3の発光サイリスタへの駆動電流波形を示すタイムチャートである。
タンデムカラープリンタを示す概略構成図である。
符号の説明
1 印刷制御部
19 光プリントヘッド
30 シフトレジスタ
60 接続ケーブル
81、201 抵抗
301、302、303 中点タップ
d1〜d8 発光サイリスタ