本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
(実施例1の画像形成装置)
図2は、本発明の実施例1における画像形成装置を示す概略の構成図である。
この画像形成装置1は、被駆動素子(例えば、発光素子として3端子スイッチ素子である発光サイリスタ)を用いた3端子スイッチ素子アレイとしての発光素子アレイを有する駆動装置(例えば、プリントヘッド)が搭載されたタンデム型電子写真カラープリンタであり、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)の各色の画像を各々に形成する4つのプロセスユニット10−1〜10−4を有し、これらが記録媒体(例えば、用紙)20の搬送経路の上流側から順に配置されている。各プロセスユニット10−1〜10−4の内部構成は共通しているため、例えば、マゼンタのプロセスユニット10−3を例にとり、これらの内部構成を説明する。
プロセスユニット10−3には、像担持体としての感光体(例えば、感光体ドラム)11が図2中の矢印方向に回転可能に配置されている。感光体ドラム11の周囲には、この回転方向上流側から順に、感光体ドラム11の表面に電荷を供給して帯電させる帯電装置12と、帯電された感光体ドラム11の表面に選択的に光を照射して静電潜像を形成する露光装置(例えば、プリントヘッド)13が配設されている。更に、静電潜像が形成された感光体ドラム11の表面に、マゼンタ(所定色)のトナーを付着させて顕像を発生させる現像器14と、感光体ドラム11上のトナーの顕像を転写した際に残留したトナーを除去するクリーニング装置15が配設されている。なお、これら各装置に用いられているドラム又はローラは、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
画像形成装置1の下部には、用紙20を堆積した状態で収納する用紙カセット21が装着され、その上方に、用紙20を1枚ずつ分離させて搬送するためのホッピングローラ22が配設されている。用紙20の搬送方向におけるホッピングローラ22の下流側には、ピンチローラ23,24と共に用紙20を挟持することによってこの用紙20を搬送する搬送ローラ25と、用紙20の斜行を修正し、プロセスユニット10−1に搬送するレジストローラ26とが配設されている。これらのホッピングローラ22、搬送ローラ25及びレジストローラ26は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達され回転する。
プロセスユニット10−1〜10−4の各感光体ドラム11に対向する位置には、それぞれ半導電性のゴム等によって形成された転写ローラ27が配設されている。各転写ローラ27には、感光体ドラム11上に付着されたトナーによる顕像を用紙20に転写する転写時に、各感光体ドラム11の表面電位とこれら各転写ローラ27の表面電位に電位差を持たせるための電位が印加されている。
プロセスユニット10−4の下流には、定着器28が配設されている。定着器28は、加熱ローラとバックアップローラとを有し、用紙20上に転写されたトナーを加圧・加熱することによって定着する装置であり、この下流に、排出ローラ29,30、排出部のピンチローラ31,32、及び用紙スタッカ部33が設けられている。排出ローラ29,30は、定着器28から排出された用紙20を、排出部のピンチローラ31,32と共に挟持し、用紙スタッカ部33に搬送する。これらの定着器28及び排出ローラ29等は、図示しない駆動源からギア等を経由して動力が伝達されて回転する。
このように構成される画像記録装置1は、次のように動作する。
先ず、用紙カセット21に堆積した状態で収納されている用紙20が、ホッピングローラ22によって、上から1枚ずつ分離されて搬送される。続いて、この用紙20は、搬送ローラ25、レジストローラ26及びピンチローラ23,24に挟持されて、プロセスユニット10−1の感光体ドラム11と転写ローラ27の間に搬送される。その後、用紙20は、感光体ドラム11及び転写ローラ27に挟持され、その記録面にトナー像が転写されると同時に感光体ドラム10−1の回転によって搬送される。同様にして、用紙20は、順次プロセスユニット10−2〜10−4を通過し、その通過過程で、各プリントヘッド13により形成された静電潜像を各現像器14によって現像した各色のトナー像が、その記録面に順次転写されて重ね合わされる。
このようにして記録面上に各色のトナー像が重ね合わされた後、定着器28によってトナー像が定着された用紙20は、排出ローラ29,30及びピンチローラ31,32に挟持されて、画像形成装置1の外部の用紙スタッカ部33に排出される。以上の過程を経て、カラー画像が用紙20上に形成される。
(実施例1のプリントヘッド)
図3は、図2中のプリントヘッド13の構成を示す概略の断面図である。図4は、図3中の基板ユニットを示す斜視図である。
図3に示すプリントヘッド13は、ベース部材13aを有し、このベース部材13a上に、図4に示す基板ユニットが固定されている。基板ユニットは、ベース部材13a上に固定されるプリント基板13bと、このプリント基板13b上に接着剤等で固定され、シフトレジスタが集積された複数の集積回路(以下「IC」という。)チップ100と、この各ICチップ100上に接着剤等で固定された複数のチップ状の発光素子列(例えば、発光サイリスタ列)からなる発光素子アレイ200とにより構成されている。各発光素子アレイ200と各ICチップ100とは、図示しない薄膜配線等により電気的に接続され、更に、各ICチップ100中の複数の端子とプリント基板13b上の図示しない配線パッドとが、ボンディングワイヤ13gにより電気的に接続されている。
複数の発光素子アレイ200上には、柱状の光学素子を多数配列してなるレンズアレイ(例えば、ロッドレンズアレイ)13cが配置され、このロッドレンズアレイ13cがホルダ13dにより固定されている。ベース部材13a、プリント基板13b及びホルダ13dは、クランプ部材13e,13fにより固定されている。
(実施例1のプリンタ制御回路)
図5は、図2の画像形成装置1におけるプリンタ制御回路の構成を示すブロック図である。
このプリンタ制御回路は、画像形成装置1における印刷部の内部に配設された印刷制御部40を有している。印刷制御部40は、マイクロプロセッサ、読み出し専用メモリ(ROM)、随時読み書き可能なメモリ(RAM)、信号の入出力を行う入出力ポート、タイマ等によって構成され、図示しない上位コントローラからの制御信号SGl、及びビデオ信号(ドットマップデータを一次元的に配列したもの)SG2等によってプリンタ全体をシーケンス制御して印刷動作を行う機能を有している。印刷制御部40には、プロセスユニット10−1〜10−4の4つのプリントヘッド13、定着器28のヒータ28a、ドライバ50,52、用紙吸入口センサ54、用紙排出口センサ55、用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57、定着器用温度センサ58、帯電用高圧電源59、及び転写用高圧電源60等が接続されている。ドライバ50には現像・転写プロセス用モータ(PM)51が、ドライバ52には用紙送りモータ(PM)53が、帯電用高圧電源59には現像器14が、転写用高圧電源60には転写ローラ27が、それぞれ接続されている。
このような構成のプリンタ制御回路では、次のような動作を行う。
印刷制御部40は、上位コントローラからの制御信号SGlによって印刷指示を受信すると、先ず、温度センサ58によって定着器28内のヒータ28aが使用可能な温度範囲にあるか否かを検出し、温度範囲になければヒータ28aに通電し、使用可能な温度まで定着器28を加熱する。次に、ドライバ50を介して現像・転写プロセス用モータ51を回転させ、同時にチャージ信号SGCによって帯電用高圧電源59をオン状態にし、現像器14の帯電を行う。
そして、セットされている図2中の用紙20の有無及び種類が用紙残量センサ56、用紙サイズセンサ57によって検出され、その用紙20に合った用紙送りが開始される。ここで、用紙送りモータ53はドライバ52を介して双方向に回転させることが可能であり、最初に逆転させて、用紙吸入口センサ54が検知するまで、セットされた用紙20を予め設定された量だけ送る。続いて、正回転させて用紙20をプリンタ内部の印刷機構内に搬送する。
印刷制御部40は、用紙20が印刷可能な位置まで到達した時点において、図示しない画像処理部に対してタイミング信号SG3(主走査同期信号、副走査同期信号を含む)を送信し、ビデオ信号SG2を受信する。画像処理部においてページ毎に編集され、印刷制御部40に受信されたビデオ信号SG2は、印刷データ信号として各プリントヘッド13に転送される。各プリントヘッド13は、それぞれ1ドット(ピクセル)の印刷のために設けられた発光サイリスタを複数個略直線状に配列したものである。
ビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。各プリントヘッド13によって印刷される情報は、負電位に帯電された図示しない各感光体ドラム11上において電位の上昇したドットとして潜像化される。そして、現像器14において、負電位に帯電された画像形成用のトナーが、電気的な吸引力によって各ドットに吸引され、トナー像が形成される。
その後、トナー像は転写ローラ27へ送られ、一方、転写信号SG4によって正電位に転写用高圧電源60がオン状態になり、転写ローラ27は感光体ドラム11と転写ローラ27との間隔を通過する用紙20上にトナー像を転写する。転写されたトナー像を有する用紙20は、ヒータ28aを内蔵する定着器28に当接して搬送され、この定着器28の熱によって用紙20に定着される。この定着された画像を有する用紙20は、更に搬送されてプリンタの印刷機構から用紙排出口センサ55を通過してプリンタ外部へ排出される。
印刷制御部40は、用紙サイズセンサ57、及び用紙吸入口センサ54の検知に対応して、用紙20が転写ローラ27を通過している間だけ転写用高圧電源60からの電圧を転写ローラ27に印加する。印刷が終了し、用紙20が用紙排出口センサ55を通過すると、帯電用高圧電源59による現像器14への電圧の印加を終了し、同時に現像・転写プロセス用モータ51の回転を停止させる。以後、上記の動作を繰り返す。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッド)
図1は、本発明の実施例1における図5中の印刷制御部40及びプリントヘッド13の概略の回路構成を示すブロック図である。
印刷制御部40とプリントヘッド13との間には、接続ケーブル70が配置され、この接続ケーブル70の両端が、接続コネクタ71,72を介して印刷制御部40とプリントヘッド13とに電気的に接続されている。
プリントヘッド13は、ICチップ100内に形成されたシフトレジスタ110と、発光素子アレイ200と、スイッチ手段(例えば、スイッチ回路)230等とを有している。
シフトレジスタ110は、発光素子アレイ200にトリガ信号(例えば、トリガ電流)を与えてオン/オフ動作させる回路であり、複数個のフリップフロップ回路(以下「FF」という。)111(=111−1〜111−n)を有している。各FF111は、データを入力する入力端子D、データを出力する出力端子Q、及びシリアルクロック信号(以下単に「シリアルクロック」という。)SCKを入力するクロック端子CKをそれぞれ有し、初段のFF111−1の入力端子DがシリアルデータSIを入力し、このFF111−1の出力端子Qが、2段目のFF111−2の入力端子Dに接続され、以下同様に終段のFF111−nまで縦続接続されている。印刷制御部40から接続ケーブル70及び接続コネクタ71,72を介してシリアルクロックSCK及びシリアルデータSIが供給されると、このシフトレジスタ110では、シリアルクロックSCKに同期して、シリアルデータSIを初段から終段のFF111−1〜111−nへと順次入力してシフトしていき、シフトしたデータを各段の出力端子Q1〜Qnから出力する構成になっている。
シフトレジスタ110は、例えば、シリコンウェハ基材上に公知のCMOS構造を用いて作成されるが、その他、ガラス基板上に公知の薄膜トランジスタ(TFT)技術を用いて製造することもできる。
発光素子アレイ200は、複数の発光サイリスタ210(=210−1〜210−n,・・・)を有し、これらの各発光サイリスタ210の第1端子(例えば、アノード)が電源端子(例えば、電源電圧VDD端子)に接続され、第2端子(例えば、カソード)が共通端子INに接続され、第3端子(例えば、ゲート)がシフトレジスタ110の各出力端子Q1〜Qnに接続されている。各発光サイリスタ210は、アノード・カソード間に電源電圧VDDが印加された状態で、ゲートにトリガ電流が入力されると、アノード・カソード間がオン状態になってカソード電流Ikが流れ、発光する素子である。発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・の総数は、例えば、A4サイズの用紙に1インチ当たり600ドットの解像度で印刷可能なプリントヘッドの場合、4992個であり、これらが配列されることになる。
スイッチ回路230は、印刷制御部40から与えられる正論理のオン/オフ指令信号DRVON−P(但し、「−P」は正論理を意味する。)に基づき、VDD端子と共通端子INとの間を接続/遮断(オン/オフ)する回路であり、オン/オフ指令信号DRVON−Pを反転するインバータ231と、そのオン/オフ指令信号DRVON−P及びインバータ231の出力信号によりVDD端子及び共通端子IN間を導通/遮断するトランスミッションゲート232とにより構成されている。トランスミッションゲート232は、ゲート端子に与えられるオン/オフ指令信号DRVON−Pによりソース端子・ドレーン端子間がオン/オフ動作するPチャネルMOSトランジスタ(以下「PMOS」という。)と、ゲート端子に与えられるインバータ231の出力信号によりソース端子・ドレーン端子間がオン/オフ動作するNチャネルMOSトランジスタ(以下「NMOS」という。)とを有し、これらのPMOS及びNMOSが、VDD端子と共通端子INとの間に並列に接続されている。トランスミッションゲート232がオン状態の時に、これに電流Ioが流れる。なお、PMOS及びNMOSのゲート端子、ソース端子、ドレーン端子を、以下単に「ゲート」、「ソース」、「ドレーン」という。
印刷制御部40は、発光素子アレイ200のオン/オフを指令するオン/オフ指令信号DRVON−P、シフトレジスタ110に対する制御信号であるシリアルデータSI及びシリアルクロックSCKをプリントヘッド13へ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200を時分割に駆動する複数の駆動回路41と、図示しない電源端子やグランド端子等とを有している。図1においては、説明を簡略化するために1個の駆動回路41のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41によってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
一例として典型的な設計例を挙げると、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4のプリント基板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13に必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、駆動回路41は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらの駆動回路41における出力端子の総数が26である。なお、駆動回路41は、図1においては印刷制御部40の内部に配置されているが、プリントヘッド13の内部に配置しても良い。
駆動回路41は、駆動源(例えば、定電流源回路)42により構成されている。定電流源回路42は、NMOS43を有し、このNMOS43を飽和領域で動作させて半導通状態とさせる構成となっている。即ち、NMOS43は、ゲートにバイアス電圧Vbが印加され、ドレーンがデータ端子Dに接続され、ソースがグランドGNDに接続され、飽和領域で動作して、略定電流特性を有する駆動電流Ioutをデータ端子Dに流す。データ端子Dは、接続コネクタ71、接続ケーブル70及びコネクタ72を介して、プリントヘッド13側の共通端子INに接続されている。
(実施例1の発光サイリスタ)
図6(a)〜(d)は、図1中の発光サイリスタ210を示す構成図である。
図6(a)は、発光サイリスタ210の回路シンボルを示し、アノードA、カソードK、及びゲートGの3つの端子を有している。
図6(b)は、発光サイリスタ210の断面構造を示す図である。発光サイリスタ210は、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD(Metal Organic-Chemical Vapor Deposition)法により、GaAsウェハ基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211と、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213とを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハ形成する。次いで、公知のフォトリソグラフィ法を用いて、最上層であるN型層213の一部に、選択的にP型不純物領域214を形成する。更に、公知のエッチング法により、図示しない溝部を形成することで、素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。これと同時に、P型領域214とP型領域212にも、それぞれアノードAとゲートGが形成される。
図6(c)は、発光サイリスタ210の他の形態を示す断面構造図である。この断面構造では、例えば、GaAsウェハ基材を用い、公知のMO−CVD法により、そのGaAs基材の上層に所定の結晶をエピタキシャル成長させることで製造される。
即ち、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層211、P型不純物を含ませ成層したP型層212と、N型不純物を含ませたN型層213と、P型不純物を含ませ成層したP型層215とを順に積層させたPNPNの4層構造のウェハを形成する。更に、公知のエッチング法を用いて、図示しない溝部を形成することで素子分離を行う。又、前記エッチングの過程で、発光サイリスタ210の最下層となるN型領域211の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してカソードKを形成する。同様に、最上層となるP型領域215の一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してアノードAを形成する。これと同時に、P型領域212にゲートGが形成される。
図6(d)は、図6(b)、(c)と対比させて描いた発光サイリスタ210の等価回路図である。発光サイリスタ210は、PNPトランジスタ(以下「PNPTR」という。)221とNPNトランジスタ(以下「NPNTR」という。)222とからなり、PNPTR221のエミッタ端子(以下単に「エミッタ」という。)が発光サイリスタ210のアノードAに相当し、NPNTR222のベース端子(以下単に「ベース」という。)が発光サイリスタ210のゲートGに相当し、NPNTR222のエミッタが発光サイリスタ210のカソードKに相当している。又、PNPTR221のコレクタ端子(以下単に「コレクタ」という。)は、NPNTR222のベースに接続され、PNPTR221のベースが、NPNTR222のコレクタに接続されている。
なお、図6に示す発光サイリスタ210では、GaAsウェハ基材上にAlGaAs層を構成したものであるが、これに限定されるものではなく、GaP、GaAsP、AlGaInPといった材料を用いるものであっても良く、更には、サファイヤ基板上にGaNやAlGaN、InGaNといった材料を成膜したものであっても良い。
図6の発光サイリスタ210は、例えば、エピタキシャルフィルムボンディング法を用いて、シフトレジスタ110を集積したICウェハと接着され、両者の接続端子間がフォトリソグラフィ法を用いて配線される。更に、公知のダイシング法を用いて複数のチップに分離することで、図4に示すように、ICチップ100及び発光素子アレイ200からなる複合チップが形成される。
(比較例のプリントヘッド及び印刷制御部)
図7は、比較例である従来のプリントヘッド及び印刷制御部を示す概略の構成図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
実施例1の構成及び動作を明確にするために、以下、図7に示す比較例のプリントヘッド13A及び印刷制御部40Aにおける構成及び動作を説明する。
比較例のプリントヘッド13Aは、印刷制御部40Aにより制御されるものであり、実施例1のプリントヘッド13と同様のシフトレジスタ110及び発光素子アレイ200を有しているが、実施例1とは異なり、スイッチ回路230が省略されている。印刷制御部40Aは、実施例1の駆動回路41とは異なる構成の駆動回路41Aを有している。駆動回路41Aは、インバータ44及び電流制限用抵抗47により構成されている。インバータ44は、PMOS45及びNMOS46を有し、このPMOS45及びNMOS46がVDD端子とグランドGNDとの間に直列に接続されている。インバータ44は、オン/オフ指令信号DRVON−Pを反転する回路であり、この出力端子に、抵抗47を介してデータ端子Dが接続されている。データ端子Dは、実施例1と同様の接続コネクタ71、接続ケーブル70及び接続コネクタ72を介して、プリントヘッド13A側の共通端子INに接続されている。
例えば、駆動回路41Aにおいて、オン/オフ指令信号DRVON−Pが低レベル(以下「Lレベル」という。)の場合、PMOS45がオン、NMOS46がオフし、インバータ44の出力端子が高レベル(以下「Hレベル」という。)となる。すると、抵抗47を介してデータ端子Dの電位が、略電源電圧VDDとなり、接続コネクタ71、接続ケーブル70及び接続コネクタ72を介して、プリントヘッド13A側における共通端子INの電位が略電源電圧VDDとなる。この結果、発光素子アレイ200における各発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)のアノード・カソード間電圧が略0Vとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nがオフ状態となる。この時、共通端子INに流れる駆動電流Ioutもゼロとなり、発光サイリスタ210−1〜210−nは全て非発光状態となる。
これに対し、オン/オフ指令信号DRVーON−PがHレベルの場合、PMOS45がオフ、NMOS46がオンし、インバータ46の出力端子がLレベルとなる。すると、抵抗47を介してデータ端子Dの電位が、グランド電位(=0V)となり、接続コネクタ71、接続ケーブル70及び接続コネクタ72を介して、プリントヘッド13A側における共通端子INの電位が0Vとなる。この結果、各発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)のアノード・カソード間電圧が略電源電圧VDDとなる。この時、発光指令されているシフトレジスタ110における出力端子(例えば、Q1)がHレベルとなり、発光サイリスタ210−1のゲートにトリガ電流が流れて、この発光サイリスタ210−1がターンオン状態となる。これにより、発光サイリスタ210−のカソードからアノード、共通端子IN、接続コネクタ72、接続ケーブル70、及び接続コネクタ71を介して、駆動回路41A側のデータ端子Dへ、駆動電流Ioutが流れ込み、この駆動電流Ioutの電流値に応じた発光出力が得られる。
ここで、駆動電流Ioutを計算してみる。発光状態にある発光サイリスタ(例えば、210−1)のアノード・カソード間電圧をVf、抵抗47の抵抗値をRとし、簡単化のためにNMOS46のオン電圧(VoL)を無視すると、駆動電流Ioutは、
Iout=(VDD−Vf)/R ・・・(1)
となる。この式(1)を変形すると、所望の駆動電流Ioutに対する抵抗値Rが次式(2)のようになる。
R=(VDD−Vf)/Iout ・・・(2)
例えば、電源電圧VDD=3.3V、Vf=1.7V、Iout=8mAの場合を計算してみると、抵抗47の抵抗値Rは、
R=(3.3−1.7) /8E−3=200[Ω]
となる。この抵抗47は、発光サイリスタ210の駆動電流を主として決定する電流制限用抵抗であるが、この抵抗47の抵抗値Rは、前記計算のように殆ど一意的に定まってしまう。
一方、接続ケーブル70の特性インピーダンスは、このケーブルに用いられる絶縁材料の誘電率や導体寸法、その断面形状等により決まるものであるが、その特性インピーダンスの値は、50Ωや75Ω、あるいは100Ωといった線材毎に代表的な規格値が定められており、自由な値に選択することができない。
このため、駆動回路41Aの出力インピーダンスは、抵抗47の抵抗値Rに略等しく、前記のように200Ωであるのに対して、接続ケーブル70の特性インピーダンスが50Ωといった値であると、両者の値にミスマッチを生じて、伝送線路に特有な信号反射の問題を生じてしまう。この信号反射の問題を図8(a)〜(c)を参照しつつ以下説明する。
図8(a)〜(c)は、図7の発光素子アレイ200における1つの発光サイリスタ210と駆動回路41Aをモデル化した等価回路とこの動作電流波形を示す図であり、同図(a)は等価回路図、及び同図(b)、(c)は動作電流の波形図である。
図8(a)において、図7と等価な駆動回路41Aは、インバータ44に対応する駆動源44Aと電流制限用抵抗47に対応する出力抵抗47Aとにより構成されている。出力抵抗47Aには、電流Isが流れる。接続ケーブル70は、特性インピーダンスZo、信号伝達遅延時間Tdを有している。被駆動素子である発光素子アレイ200における1つの発光サイリスタ210のアノード・カソード間には、接合容量Cjが生じ、この発光サイリスタ210に、電流Idが流れる。なお、図8(a)では、便宜上、発光サイリスタ210のアノードとカソードを入れ替えて表現しているが、このようにしても高周波的な等価回路としては一般性を失わない。
図8(b)において、横軸は時刻t、縦軸は電流値であり、駆動源44Aから出力される電流Isの動作波形が示されている。駆動源44Aのオン時間はTon、オフ時間はToffである。
図8(c)において、横軸は時刻t、縦軸は電流であり、接続ケーブル70から出力される電流Idの動作波形が示されている。電流Idの立ち上がり時間はTr、立ち下がり時間はTfである。
図8(a)において、例えば、接続ケーブル70のケーブル長をL、接続ケーブル70内の信号伝搬速度をVoとするとき、この接続ケーブル70の信号伝達遅延時間Tdは、次式(3)で与えられる。
Vo=Co/√(εr) ・・・(3)
但し、Co;真空中における光速度、Co≒3×108[m/s]
εr;接続ケーブル70内で用いられる絶縁材料の比誘電率
そのため、信号伝達遅延時間Tdは、
Td=(L/Co)×√(εr) ・・・(4)
典型的な例として、接続ケーブル70においける絶縁材料の比誘電率εrを4、ケーブル長Lを1[m]とするとき、信号伝達遅延時間Tdは、式(4)から、
Td=6.7[ns]
となる。
図8(b)、(c)に示すように、駆動源44Aから出力される電流Isが立ち上がると、接続ケーブル70から出力される電流Idが、信号伝達遅延時間Td分遅れて被駆動素子である発光サイリスタ210に到達し、電流Idが立ち上がり始める。この時、発光サイリスタ210のアノード・カソード間は、等価的に接合容量Cjと同様に動作し、この発光サイリスタ210により信号反射を生じ、接続ケーブル70内を駆動源44A方向へ向かう反射波が生じる。この反射波は、駆動源44Aの内部インピーダンスにより反射して、再び接続ケーブル70内を発光素子アレイ200方向へ向かつて反射が生じる。
前記反射波は、駆動回路41Aに到達すると、接続ケーブル70の特性インピーダンスZoと出力抵抗47Aの値の不整合に起因する信号反射を生じ、再び発光素子アレイ200側に反射波を生じる。
このように、図8(c)に示す発光サイリスタ210の電流Idの波形は、元になった駆動源44Aの波形とは様相が異なったものとなってしまい、電流Id波形の立ち上がり部分や立ち下がり部分において波形の歪みを生じる。この結果、実質的な電流Isのパルス幅が変動することで、図2の画像形成装置1における感光体ドラム11への露光エネルギー量が変化してしまい、画像形成装置1の印刷濃度にむらを生じる原因となる。
それに加えて、前記の信号反射があると、プリントヘッド13Aの駆動動作が高速化できない問題も生じる。これにつき更に説明する。
図8に示すように、接続ケーブル70を介して、駆動源44Aと被駆動素子である発光サイリスタ210との間で多重に信号反射を生じる結果、(2×Td)を周期とするリップルを生じつつ、電流Idの波形は立ち上がり時間Trで立ち上がることになる。
図8(b)と図8(c)とを比較して明らかなように、駆動源44Aから出力される電流Isの波形の立ち上がりが急峻であったとしても、発光サイリスタ210を駆動する電流Idの波形の立ち上がり時間Trが大きくなってしまう。
前記多重反射波形が接続ケーブル70内を往復する毎に反射量を減じていき、例えば、10往復の後に反射成分が消滅する時、電流Idの立ち上がり時間Trは、
Tr=2×Td×10≒6.7×20=134[ns]
となる。
発光サイリスタ210を駆動する電流Idの立ち下がりにおける立ち下がり時間Tfにおいても同様である
発光サイリスタ210を駆動する電流Idの立ち上がり時間Trは、駆動源44Aから出力される電流Isの立ち上がり時間と比べて大きな値であって、これは主として接続ケーブル70による信号伝達遅延時間Td(即ち、接続ケーブル70のケーブル長L)により決まってしまい、プリントヘッド13Aの点灯スイッチング速度を向上させるためには、ケーブル長Lを短くせざるを得ないことになる。
ところが、接続ケーブル70のケーブル長Lは、画像形成装置1内における部品配置の状況により制約され、短くすることが困難である。特に、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の4色のプロセスユニット10−1〜10−4を順に配置して構成されるタンデム型電子写真カラープリンタにおいては、各色のケーブル長Lがそれぞれ異なったものとなり、長いものでは1m以上となってしまうことが不可避である。この結果、発光サイリスタ210を駆動する電流Idの立ち上がり時間Trや立ち下がり時間Tfが増大してしまい、それを用いるプリントヘッド13Aのスイッチング速度を増加させることができないという問題もある。
信号反射を軽減するためには、接続ケーブル70の特性インピーダンスZoと駆動源44Aの出力抵抗47Aとを整合させると良いが、接続ケーブル70の特性インピーダンスZoは、ほぼ一意的に定まるのに対して、駆動源44Aの出力抵抗47Aは、200Ω程度と定まってしまうため、両者を一致させることが困難であった。
このように、比較例の構成のものにおいては、信号反射に起因して露光エネルギー量が変動することによる印刷濃度むらや、発光サイリスタ210を駆動するための電流Idの波形の遷移時間が増大して、スイッチング速度を増加させることができないという問題を内在しており、その解決が切望されていた。そこで、本実施例1では、図1のような構成を採用することにより、前記問題を巧みに解決している。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図1において、例えば、印刷制御部40におけるオン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルの場合、接続コネクタ71、接続ケーブル70及び接続コネクタ72を介して、プリントヘッド13側におけるスイッチ回路230内のインバータ231の出力信号がHレベルとなって、トランスミッションゲート232を構成するPMOS及びNMOSが共にオン状態となる。これにより、VDD端子からトランスミッションゲート232を介して共通端子IN、接続コネクタ72、接続ケーブル70、接続コネクタ71及び印刷制御部40側のデータ端子Dを通り、定電流源回路42に至る電流路が形成される。
この時、定電流源回路42内の駆動回路41には駆動電流Ioutが流れるが、この駆動電流Ioutは、トランスミッションゲート232により構成されるスイッチ回路230の電流経路中を流れ、
Iout=Io
となって、発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・のカソード電流Ikが、
Ik=0
となる。この際、カソード電流Ikは、発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・には流れないので、発光素子アレイ200が消灯状態になっている。
これに対し、印刷制御部40におけるオン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルの場合、スイッチ回路230内におけるインバータ231の出力信号がLレベルとなって、トランスミッションゲート232を構成するPMOS及びNMOSが共にオフ状態となる。これにより、VDD端子からトランスミッションゲート232、共通端子IN、接続コネクタ72、接続ケーブル70、及び接続コネクタ71を介して、印刷制御部40側のデータ端子Dを通り、定電流源回路42に至る電流路が遮断される。
一方、プリントヘッド13側において、シフトレジスタ110からの点灯指示が与えられた発光サイリスタ(例えば、210−1)のゲートには、Hレベルのトリガ信号が与えられ、これにより生じる電流が、発光サイリスタ210−1のカソード、アノード、共通端子IN、接続コネクタ72、接続ケーブル70、接続コネクタ71、印刷制御部40側のデータ端子D、及び駆動回路41を経由して流れることで、発光サイリスタ210−1がターンオンする。そのため、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間にカソード電流Ikが流れ、このカソード電流Ikが図1中の駆動電流Ioutとなって駆動回路41に流入する。
この時、
Iout=Ik
となって、トランスミッションゲート232を流れる電流Ioは、
Io=0
である。この際、共通端子INを流れる駆動電流Ioutは、発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・のうち、点灯指示された発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間にカソード電流Ikとして流れるので、この発光サイリスタ210−1が発光状態となって、駆動電流Ioutの値に応じた発光出力が得られることになる。
(実施例1の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図9は、図1のプリントヘッド13及び印刷制御部40の詳細な動作を示すタイムチャートである。
この図9では、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図1の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
先ず、画像形成装置1における電源投入時の予備動作として、図1のシフトレジスタ110のリセット処理が行われる。このリセット処理では、シリアルデータSIをLレベルとしておき、シフトレジスタ110の段数に相当する個数のシリアルクロックSCKのクロックパルスをシフトレジスタ110に入力する。これにより、シフトレジスタ110の全出力端子Q1〜QnがLレベルとなる。
1ライン分の走査に先立ち、図9の時刻t1において、シリアルデータSIがHレベルに設定される。次いで時刻t2において、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1が入力される。第1パルスSCK1が立ち上がると、シリアルデータSIはシフトレジスタ110内の第1段FF111−1に取り込まれ、これより僅かに遅れて、第1段FF111−1の出力端子Q1がHレベルへと遷移する。第1パルスSCK1が立ち上がった後で、時刻t3にてシリアルデータSIが再びLレベルに戻される。
第1段FF111−1の出力端子Q1がHレベルとなることで、発光サイリスタ210−1のゲート電位が上昇する。次いで時刻t4にて、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルにされる。これにより、スイッチ回路230内のインバータ231の出力信号がLレベルになり、トランスミッションゲート232がオフ状態に遷移し、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間に電位差が生じる。この結果、発光サイリスタ210−1はターンオンし、カソード電流Ikが流れて発光サイリスタ210−1が発光状態となる。
ターンオンした発光サイリスタ210−1をオフさせるために、時刻t5において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルにされる。すると、スイッチ回路230内のインバータ231の出力信号がHレベルになり、トランスミッションゲート232がオン状態になる。これにより、発光サイリスタ210−1のアノード・カソード間電圧が略0Vになり、この発光サイリスタ210−1がオフする。
前述したように、発光サイリスタ210−1〜210−8の発光出力は、主としてそのアノード・カソード間に流れるカソード電流Ikの電流値によるので、図1において駆動源としての定電流源回路42を有する駆動回路41を用いることで、発光サイリスタ210の発光時におけるアノード・カソード間電圧に多少の素子ばらつきを生じていたとしても、その駆動電流であるカソード電流Ikを所定値に保つことができる。
なお、図9では、発光サイリスタ210−1を発光させるために、時刻t4でオン/オフ指令信号DRVON−PをHレベルとし、消灯させるために、時刻t5でオン/オフ指令信号DRVON−PをLレベルにしているが、発光サイリスタ210−1を発光させる必要がない場合には、時刻t4〜t5の間もオン/オフ指令信号DVON−PをLレベルのままとすれば良い。このように、オン/オフ指令信号DRVON−Pの論理レベルに応じて、発光サイリスタ210−1の発光状態/非発光状態を切り替えることができる。
次いで、時刻t6において、シリアルクロックSCKの第2パルスSCK2が立ち上がる。この時、シリアルデータSIはLレベルとなっているので、これより僅かに遅れて、シフトレジスタ110内における第1段FF111−1の出力端子Q1がLレベルへと遷移する一方で、第2段FF111−2の出力端子Q2がHレベルに変化する。時刻t7において、オン/オフ指令信号DRVON−PがHレベルにされる。これにより、スイッチ回路230がオフ状態となって、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間に電位差が生じ、この時、発光サイリスタ210−2のゲートに入力されているトリガ電流により、発光サイリスタ210−2がターンオンして発光状態となる。
ターンオンした発光サイリスタ210−2をオフさせるために、時刻t8において、オン/オフ指令信号DRVON−PがLレベルにされる。これにより、スイッチ回路230がオン状態になり、発光サイリスタ210−2のアノード・カソード間の電位差が略0Vになる。
このように、シリアルクロックSCKの第1パルスSCK1、第2パルスSCK2、第3パルスSCK3、第4パルスSCK4、第5パルスSCK5、第6パルスSCK6、第7パルスSCK7、及び第8パルスSCK8の立ち上がり毎に、シフトレジスタ110の第1段出力端子Q1、第2段出力端子Q2、第3段出力端子Q3、第4段出力端子Q4、第5段出力端子Q5、第6段出力端子Q6、第7段出力端子Q7、及び第8段出力端子Q8が順に1出力端子QだけがHレベルとなり、他の出力端子QがLレベルとなる。このため、シリアルデータSIがLレベルの時、出力端子Q1〜Q8に接続される発光サイリスタ210−1〜210−8の内、対応する出力端子Q1〜Q8がHレベルとなっているものだけが択一的に発光する。
この際、発光サイリスタ210−1〜210−8をオンさせるためには、これらの発光サイリスタ210−1〜210−8のゲート・カソード間のPN接合部を順方向にバイアスさせる電位差を与え、ゲート電流を供給させるだけで良い。又、発光サイリスタ210−1〜210−8をオフ状態のままとするためには、ゲート・カソード間の電位差を順方向電圧以下としておくだけで十分であり、電位差を0Vにしたり、逆方向へ電圧を印加することもできる。
更に、図9の発光サイリスタ210−1における時刻t4〜t5間の駆動時間T1、発光サイリスタ210−2における時刻t7〜t8間の駆動時間T2等は、異なる時間であっても良く、発光サイリスタ210−1〜210−8等の発光効率にばらつきを生じていたとしても、これを補正して所定の露光エネルギー量が得られるようにするため、駆動時間T1,T2等を異なる値に制御することは容易である。
又、前述したように、スイッチ回路230に流れる電流Ioと発光サイリスタ210のカソード電流Ikとは、オン/オフ指令信号DRVON−Pにより切り替わって流れるものであり、その電流値は主として駆動回路41によって定まる駆動電流Ioutである。換言すれば、印刷制御部40側のデータ端子Dに接続された接続ケーブル70中を流れる駆動電流は常にIoutであって、略直流と見なすことができる。このため、本実施例1の図1のプリントヘッド13は、比較例の図7のプリントヘッド13Aとは異なり、接続ケーブル70中には発光サイリスタ210の駆動オン、オフに伴って生じる過渡信号が伝達されないので、信号反射も生じることがなくなり、比較例において生じた問題が解消されていることが判る。
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(i)、(ii)のような効果がある。
(i) 本実施例1のプリントヘッド13によれば、駆動回路41と発光素子アレイ200とを別の基板ユニットとして構成し、両者間を接続ケーブル70により電気的に接続する構成とした場合においても、駆動回路41と発光素子アレイ200との間を信号反射が多重に発生して、駆動波形に歪みを生じて露光エネルギー量が変動して印刷濃度むらを生じる不具合を解消することができる。それに加えて、発光サイリスタ210に対する駆動電流Iout波形の立ち上がり時間や立ち下がり時間が増大するという問題を解決して、発光サイリスタ210のスイッチング制御を高速に行うことができる。
(ii) 本実施例1の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13を採用しているので、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。即ち、プリントヘッド13を用いることにより、本実施例1のフルカラーの画像形成装置1に限らず、モノクロ、マルチカラーの画像形成装置においても効果が得られるが、特に、露光装置を数多く必要とするフルカラーの画像形成装置1において一層大きな効果が得られる。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッド)
図10は、本発明の実施例2における印刷制御部及びプリントヘッドの概略の回路構成を示すブロック図であり、実施例1を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
実施例1と同様に、印刷制御部40Bとプリントヘッド13Bとの間には、接続ケーブル70が配置され、この接続ケーブル70の両端が、接続コネクタ71,72を介して印刷制御部40Bとプリントヘッド13Bとに電気的に接続されている。
プリントヘッド13Bは、実施例1のシフトレジスタ110とは異なる構成の自己走査型シフトレジスタ110Bと、実施例1と同様の発光素子アレイ200と、実施例1とは異なる構成のスイッチ手段(例えば、NPNTR)233等とを有している。
自己走査型シフトレジスタ110Bは、発光素子アレイ200にトリガ電流を与えてオン/オフ動作させる回路であり、自己走査サイリスタを用いた複数段の回路120(=120−1〜120−n)により構成されている。各段の回路120(=120−1〜120−n、例えばn=4992)は、アノードがVDD端子に接続された自己走査サイリスタ121と、カソードが自己走査サイリスタ121のゲートに接続されたダイオード122と、自己走査サイリスタ121のゲート及びグランドGND間に接続された抵抗123とにより構成されている。奇数段目の各回路120−1,120−3,・・・,120−(n−1)における自己走査サイリスタ121は、アノードがVDD端子に接続され、カソードが抵抗124−1を介して接続コネクタ72に接続され、ゲートが抵抗123を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード122のカソード・アノードと抵抗124−2を介して他の接続コネクタ72に接続されている。偶数段目の各回路120−2,120−4,・・・,120−nにおける自己走査サイリスタ121は、アノードがVDD端子に接続され、カソードが抵抗124−2を介して他の接続コネクタ72に接続され、ゲートが抵抗123を介してグランドGNDに接続されると共に、そのゲートがダイオード122のカソード・アノードと抵抗124−1を介して接続コネクタ72に接続されている。更に、各段の自己走査サイリスタ121のゲートは、自己走査型シフトレジスタ110Bの各出力端子Q1〜Qnにそれぞれ接続されている。
各段の回路120−1〜120−nにおける自己走査サイリスタ121は、発光素子アレイ200における発光サイリスタ210と同様なレイヤ構造を有し、且つ同様な回路動作を行う素子であるが、発光サイリスタ210のような発光機能を必要としないので、上層がメタル膜等で覆われ、遮光して用いられる。各段の自己走査サイリスタ121におけるゲートにカソードが接続されたダイオード122は、各段の自己走査サイリスタ121のゲート間を接続するものであって、発光サイリスタ210−1〜210−nが順次点灯する時の走査方向(例えば、図10において右方向)を決定するために設けられている。
NPNTR233は、負論理のオン/オフ指令信号DRVON−N(但し、「−N」は負論理を意味する。)に基づき、発光素子アレイ200をオン/オフ動作させる素子であり、コレクタ端子(以下単に「コレクタ」という。)がVDD端子に接続され、エミッタ端子(以下単に「エミッタ」という。)が共通端子INに接続されている。例えば、チップ基材はGaAsウェハが用いられるため、実施例1のスイッチ回路230のMOSトランジスタを利用することができなくなるので、GaAs構成のNPNTR233を使用している。
印刷制御部40Bは、発光素子アレイ200のオン/オフを指令するオン/オフ指令信号DRVON−Nをプリントヘッド13Bへ供給する図示しない回路と、複数の発光素子アレイ200を時分割に駆動するための実施例1と同様の複数の駆動回路41と、自己走査型シフトレジスタ110Bに対してクロック信号(以下単に「クロック」という。)を供給するクロック駆動回路44と、図示しない電源端子やグランド端子等とを有している。図10においては、図1と同様に、説明を簡略化するために1個の駆動回路41のみが図示されている。複数の発光素子アレイ200は、例えば、総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を有し、これらの発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・が複数の発光サイリスタ210−1〜210−nの組にグループ化され、各グループ毎に設けられた駆動回路41によってそれらが同時並行的に分割駆動が行われる構成になっている。
一例として典型的な設計例を挙げると、実施例1と同様に、発光サイリスタ210(=210−1〜210−n)を192個配列してアレイ化した発光素子アレイ200のチップを図4のプリント基板13b上に26個整列する。これにより、プリントヘッド13Bに必要な総数4992個の発光サイリスタ210−1〜210−n,・・・を構成している。この際、駆動回路41は前記26個の発光素子アレイ200に対応して設けられ、これらの駆動回路41における出力端子の総数が26である。これに対し、クロック駆動回路44は、前記アレイ化したチップを並列に駆動することができ、回路を共用することができる。なお、駆動回路41やクロック駆動回路44は、図10においては印刷制御部40Bの内部に配置されているが、プリントヘッド13Bの内部に配置しても良い。
クロック駆動回路44は、クロックを出力する複数の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cを有し、これらの出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cが、図示しないスリーステート型バッファに接続されている。スリーステート型バッファは、CMOS出力駆動部を備えた回路であって、Hレベル出力状態、Lレベル出力状態の他に、他の出力状態であるハイインピーダンス(以下「Hi−Z」という。)出力状態を有している。
クロック駆動回路44の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cには、抵抗45−1、コンデンサ46−1、抵抗45−2、及びコンデンサ46−2の一端がそれぞれ接続されている。抵抗45−1の他端及びコンデンサ46−1の他端は、クロック端子CK1に接続され、このクロック端子CK1が、接続コネクタ71、接続ケーブル70及び接続コネクタ72を介してプリントヘッド13B側の抵抗124−1に接続されている。抵抗45−2の他端及びコンデンサ46−2の他端は、クロック端子CK2に接続され、このクロック端子CK2が、他の接続コネクタ71、接続ケーブル70及び接続コネクタ72を介してプリントヘッド13B側の抵抗124−2に接続されている。
(実施例2のNPNTR)
図11(a)〜(c)は、図10中のNPNTR233を示す構成図である。
図11(a)は、NPNTR233の回路シンボルを示し、コレクタC、エミッタE、及びゲートGの3つの端子を有している。
図11(b)、(c)は、NPNTR233の断面構造を示す図である。NPNTR233は、下層から上層へ積層されたN型層233a、P型層233b、及びN型層233cにより構成されている。
このNPNTR233では、図11(b)に示すように、例えば、図示しない所定のバッファ層や犠牲層をエピタキシャル成長させた後、AlGaAs材料にN型不純物を含ませたN型層233aと、P型不純物を含ませ成層したP型層233bと、N型不純物を含ませたN型層233cとを順に積層させたNPNの3層構造からなるウェハを形成する。これに、公知のエッチング法により溝部を形成することで、素子分離を行う。更に、図11(c)に示すように、前記エッチングの過程でNPNTR233の最下層となるN型層233aの一部を露出させ、この露出領域に金属配線を形成してエミッタEを形成する。それと同時に、P型層233bとN型層233cにもそれぞれ、ベースBとコレクタCが形成される。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの概略動作)
図10において、例えば、印刷制御部40Bにおけるオン/オフ指令信号DRVON−NがHレベルの場合、接続コネクタ71、接続ケーブル70及び接続コネクタ72を介して、NPNTR233のベースからエミッタに向かう向きにベース電流を生じてこのNPNTR233がオン状態になる。すると、NPNTR233のコレクタ・エミッタ間に電流Ioが流れて発光サイリスタ210のカソード電位が上昇し、この発光サイリスタ210−1のエミッタ・カソード間電位差が減少してカソード電流Ikがゼロになる。これにより、全ての発光サイリスタ210−1〜210−8が非発光状態となる。
これに対し、オン/オフ指令信号DRV−ON−NがLレベルの場合、NPNTR233のベース電流が流れなくなり、このNPNTR233がオフ状態となる。発光サイリスタ210のアノードには電源電圧VDDが印加されており、そのカソードに、接続コネクタ72、接続ケーブル70、接続コネクタ71及びデータ端子Dを介して接続されているNMOS43が略導通状態である。そのため、発光サイリスタ210のカソード電位がプルダウンし、この発光サイリスタ210のアノード・カソード間に略電源電圧VDDが印加される。この時、シフトレジスタ110Bにより、発光サイリスタ210−1〜210−8の内の発光指令されている発光サイリスタ210のゲートのみが選択的にHレベルになると、この発光サイリスタ210のゲートにはトリガ電流が生じ、発光指令されている発光サイリスタ210がターンオンする。
この際、発光サイリスタ210のアノード・カソード間に流れるカソード電流Ikは、データ端子Dに流入する駆動電流Ioutである。そのため、前記発光サイリスタ210が発光状態となり、その駆動電流Ioutの値に応じた光出力を生じる。
(実施例2の印刷制御部及びプリントヘッドの詳細動作)
図12は、図10のプリントヘッド13B及び印刷制御部40Bの詳細な動作を示すタイムチャートである。
この図12では、実施例1と同様に、図2の画像形成装置1での印刷動作時における1ライン走査において、図10の発光サイリスタ210−1〜210−n(例えば、n=8)を順次点灯させる場合の動作波形が示されている。
本実施例2のように、自己走査サイリスタ121を用いた自己走査型シフトレジスタ110Bの場合、2つのクロック端子CK1,CK2から供給される2相クロックが用いられ、この2相クロックを生成するために、クロック駆動回路44には、各クロック毎に2種の出力端子CK1C,CK1RとCK2C,CK2Rが設けられている。これらの出力端子CK1R,CK1CとCK2R,CK2Cとは、図示しないスリーステート出力型バッファによって駆動される。即ち、スリーステート型バッファは、CMOS出力駆動部を備えた回路であって、Hレベル出力状態、Lレベル出力状態の他に、他の出力状態であるHi−Z出力状態を切り替える機能を有している。
図12のタイムチャートにおいて、左端部に示す状態においては、出力端子CK1C,CK1R,CK2C,CK2Rの各信号はHレベルとされる。
クロック駆動回路44の出力端子CK1R,CK1C,CK2R,CK2Cの内、出力端子CK1R,CK1Cは、抵抗45−1とコンデンサ46−1をそれぞれ介してクロック端子CK1に接続され、出力端子CK2R,CK2Cは、抵抗45−2とコンデンサ46−2をそれぞれ介してクロック端子CK2に接続されている。そのため、図12のタイムチャートの左端部に示す状態においては、クロック端子CK1,CK2の各信号は共にHレベルとなって、第1段、第3段、第5段、第7段回路120−1,120−3,120−5,120−7の各自己走査サイリスタ121の組と、第2段、第4段、第6段、第8段回路120−2,120−4,120−6,120−8の各自己走査サイリスタ121の組とのいずれも、そのカソードがHレベルとされ、オフ状態となっている。
この時、オン/オフ指令信号DRVON−NはHレベルにされており、NPNTR233はオン状態であって駆動電流Ioutに略等しい電流Ioを生じる一方で、発光サイリスタ210−1〜210−8は、オフとなってカソード電流Ikがゼロとなっている。
以下、第1段、第2段、第3段回路120−1,120−2,120−3における各自己走査サイリスタ121のターンオン過程(1)〜(3)を説明する。
(1) 第1段回路120−1における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
図12の時刻t1において、クロック駆動回路44の出力端子CKlRがLレベルとされる。すると、コンデンサ46−1には、出力端子CK1Cからコンデンサ46−1、抵抗45−1、及び出力端子CK1Rに向かう方向に充電電流を生じ、このコンデンサ46−1の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK1の電位がa部のようにグランドGND電位へと降下していく。
時刻t2において、出力端子CK1CがLレベルとされ、出力端子CK1Rが、図12の中間電位の横破線で示されたHi−Z状態とされる。時刻t2で前記Hi−Z状態に遷移したことで、クロック端子CK1には、図12のb部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ46−1の充電電圧により生じる。
図10のクロック駆動回路44において、図示しないスリーステート出力型バッファには、寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、その寄生ダイオードに電流が流れ、前記b部の負電圧レベルがクランプされる。この結果、b部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ46−1の充電電荷が自己放電して、コンデンサ46−1の両端電圧が減少していく。そのため、b部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
クロック端子CK1にb部のアンダシュートを生じることで、第1段回路120−1におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK2はHレベルとなっており、第1段回路120−1のダイオード122を介して、そのサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、サイリスタ121がターンオンする。このサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK1におけるカソード電位波形がHレベルとなるまで継続する。
次の時刻t3において、出力端子CK1CがHi−Z状態とされ、クロック端子CK1がLレベルになる。これにより、クロック端子CK1は、グランドGND電位に略等しくなる。
一方、時刻t4において、発光サイリスタ210−1の発光指令のためにオン/オフ指令信号DRVON−NがLレベルとされ、NPNTR233がオフ状態になる。この時、NMOS43が半導通状態になっているので、データ端子DはLレベルのままである。更に、第1段回路120−1のサイリスタ121はオン状態となっていて、カソード・ゲート間には順電圧相当の電位差を生じており、そのサイリスタ121のゲート電位がカソード電位よりも上昇する。
発光サイリスタ210−1と第1段回路120−1におけるサイリスタ121とは、ゲート同士が接続されているので、発光サイリスタ210−1のゲートにトリガ電流が流れ、この発光サイリスタ210−1がターンオンする。発光サイリスタ210−1のオン状態は、時刻t6において、オン/オフ指令信号DRVON−NがHレベルとされてNPNTR233がオンし、カソード電流Ikを遮断するまで継続される。
(2) 第2段回路120−2における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
時刻t5において、出力端子CK2RがLレベルとされる。これにより、コンデンサ46−2には、出力端子CK2Cからコンデンサ46−2、抵抗45−2、及び出力端子CK2Rに向かう方向に充電電流を生じ、コンデンサ46−2の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK2の電位は、図12のC部に示すように、グランドGND電位へと降下していく。
その後、時刻t7において、出力端子CK2CがLレベルとされ、出力端子CK2Rが、中間電位の横破線で図示されたHi−Z状態とされる。時刻t7で前記状態に遷移したことで、クロック端子CK2には、図12のd部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ46−2の充電電圧により生じる。図10のクロック駆動回路44において、図示しないスリーステート型バッファには寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、前記寄生ダイオードに電流が流れ、前記負電圧レベルがクランプされる。この結果、d部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−0.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ46−2の充電電荷が自己放電して、このコンデンサ46−2の両端電圧が減少していく。これにより、d部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
クロック端子CK2にd部のアンダシュートを生じることで、第2段回路120−2におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には、比較的大きな電圧が印加される。この時、クロックCK2はHレベルとなっており、第1段回路120−1のサイリスタ121は未だオン状態にあって、そのゲート電位が高くなっている。そのため、第2段回路120−2のダイオード122を介して、第2段回路120−2におけるサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、そのサイリスタ120−2がターンオンする。第2段回路120−2におけるサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK2におけるカソード電位波形がHレベルとなるまで継続される。
次に、時刻t8において、出力端子CK2CがHi−Z状態とされ、出力端子CK2RがLレベルとされる。これにより、クロック端子CK2の電位がグランドGND電位に略等しくなる。これと同時に、時刻t8において、出力端子CK1C,CI1Rが共にHレベルとされ、クロック端子CK1もHレベルとなる。この結果、第1段回路120−1におけるサイリスタ121がターンオフする。
一方、時刻t9において、発光サイリスタ210−2の発光指令のためにオン/オフ指令信号DRVON−N号がLレベルとされ、NPNTR233がオフ状態になる。この時、NMOS43が半導通状態になっているので、データ端子DはLレベルのままである。更に、第2段回路120−2におけるサイリスタ121はオン状態となっていて、カソード・ゲート間には順電圧相当の電位差を生じており、そのゲート電位がカソード電位よりも上昇している。
発光サイリスタ210−2と第2段回路120−2のサイリスタ121とは、ゲート同士が接続されているので、発光サイリスタ210−2のゲートにトリガ電流が流れて、この発光サイリスタ210−2がターンオンする。発光サイリスタ210−2のオン状態は、時刻t11において、オン/オフ指令信号DRVON−NがHレベルとされてNPNTR233がオンとなり、発光サイリスタ210−2の電流が遮断されるまで継続される。
(3) 第3段回路120−3における自己走査サイリスタ121のターンオン過程
時刻t10において、出力端子CK1RがLレベルとされると、コンデンサ46−1には、出力端子CK1Cからコンデンサ46−1、抵抗45−1、及び出力端子CK1Rに向かう方向に充電電流を生じ、このコンデンサ46−1の両端電圧が上昇していく。これに伴い、クロック端子CK1の電位は、図12のe部のように降下していく。
次に、時刻t12において、出力端子CK1CがLレベルとされ、出力端子CK1Rが、図12の中間電位の横破線にて図示されるHi−Z状態とされる。時刻t12で前記状態に遷移したことで、クロック端子CK1には、図12のf部に示すようなアンダシュート波形を生じる。このアンダシュート波形は、コンデンサ46−1の充電電圧により生じる。
図10のクロック駆動回路44において、図示しないスリーステート型バッファには、寄生ダイオードが生じており、前記アンダシュート波形を生じることで、その寄生ダイオードに電流が流れ、前記負電圧レベルがクランプされる。この結果、f部に示すアンダシュート波形の極小部は、略−O.6V程度の負電圧にとどまる。その後、コンデンサ46−1の充電電荷が自己放電して、このコンデンサ両端電圧が減少していく。これにより、f部に示すアンダシュートは、時間経過と共に解消していく。
クロック端子CK1にf部のアンダシュートを生じることで、第3段回路120−3におけるサイリスタ121のアノード・カソード間には、比較的大きな電圧が印加される。この時、クロック端子CK1はHレベルとなっており、第2段回路120−2のサイリスタ121は未だオン状態にあって、そのゲート電位が高くなっている。そのため、第3段回路120−3におけるダイオード122を介して、第3段回路120−3におけるサイリスタ121のゲートにトリガ電流が流れ、このサイリスタ121がターンオンする。第3段回路120−3におけるサイリスタ121のオン状態は、クロック端子CK1におけるそのカソード電位波形がHレベルとなるまで継続される。
次に、時刻t13において、出力端子CK1CがHi−Z状態とされ、出力端子CK1RがLレベルとされる。そのため、クロック端子CK1の電位は、グランドGND電位に略等しくなる。それと同時に、時刻t13において、出力端子CK2C,CK2Rが共にHレベルとされ、クロック端子CK2もHレベルとなる。この結果、第2段回路120−2におけるサイリスタ121がターンオフする。
以上、図12を参照して詳細に説明したように、クロック端子CK1,CK2から供給される2つのクロックは、異なる位相をもって同様の波形が繰り返す形状を有しており、この波形の2つのクロックが、第1段、第3段、第5段、第7段回路120−1,120−3,120−5,120−7における各サイリスタ121の組と、第2段、第4段、第6段、第8段回路120−2,120−4,120−6,120−8における各サイリス121の組とに順次入力されることで、第1段〜第8段回路120−1〜120−8における各サイリスタ121が、第1段回路120−1から第8段回路120−8の方向へ順次オンしていく。
オン状態にあるサイリスタ121のゲート電位は、略Hレベルであり、オフ状態にある走査サイリスタ121のゲート電位は、グランドGND電位に略等しいLレベルである。又、第1段〜第8段回路120−1〜120−8における各サイリスタ121のゲート電位は、シフトレジスタ110Bにおける各出力端子Q1〜Q8の信号となっている。この結果、実施例1の図9において示したのと同様の出力端子Ql〜Q8の信号を得ることができ、シフトレジスタ110Bからの点灯指令によって選択される発光サイリスタ210−1〜210−8の順次点灯を行うことが可能となる。
図12における電流Io,Ikの波形から明らかなように、その電流値は駆動回路41の駆動電流Ioutと等しく、電流を生じるタイミングは相補の関係にあり、電流Ioが生じる時には電流Ikは略ゼロであり、電流Ikが生じる時には電流Ioは略ゼロとなっていて、両者の合算値は、駆動回路44の駆動電流Ioutに略等しい。この結果、図10の駆動回路44におけるデータ端子Dには、時間による変動のない直流的な電流を生じており、発光サイリスタ210−1〜210−8の駆動オン、オフの状態には依存しないスタチックな状態を維持している。
比較例を示す図7の構成では、駆動回路41Aにおけるデータ端子Dが、発光サイリスタ210−1〜210−8の駆動オン、オフに従い、スイッチング電流が断続するので、接続ケーブル70に過渡信号の伝達を生じ、それが駆動回路41Aとプリントヘッド13Aとの間を多重に信号反射を繰り返すことで、電流波形の歪みや、遷移時間の増大といった問題があった。これに対し、本実施例2の構成では、駆動回路41におけるデータ端子Dに、前述した時間による変動のない直流的な電流を生じており、発光サイリスタ210−1〜210−8の駆動オン、オフの状態には依存しないスタチックな状態を維持している。この結果、接続ケーブル70に過渡信号の伝達を生じることが無くなり、それが駆動回路41とプリントヘッド13Bとの間を多重に信号反射を繰り返すことで、電流波形の歪みや、遷移時間の増大といった問題を解決している。
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、次の(i)、(ii)のような効果がある。
(i) 本実施例2のプリントヘッド13Bによれば、実施例1と同様に、駆動回路41と発光素子アレイ200とを別の基板ユニットとして構成し、両者間を接続ケーブル70により電気的に接続する構成とした場合においても、駆動回路41と発光素子アレイ200との間を信号反射が多重に発生して、駆動波形に歪みを生じて露光エネルギ一量が変動して印刷濃度むらを生じる不具合を解消することができる。それに加えて、発光サイリスタ210に対する駆動電流Iout波形の立ち上がり時間や立ち下がり時間が増大するという問題を解決して、発光サイリスタ210のスイッチング制御を高速に行うことができる。
(ii) 本実施例2の画像形成装置1によれば、プリントヘッド13Bを採用しているので、実施例1と同様に、スペース効率及び光取り出し効率に優れた高品質の画像形成装置1を提供することができる。
(変形例)
本発明は、上記実施例1、2に限定されず、種々の利用形態や変形が可能である。この利用形態や変形例としては、例えば、次の(I)、(II)のようなものがある。
(I) 実施例1、2において、光源として用いられる発光サイリスタ210に適用した場合について説明したが、本発明は、サイリスタをスイッチング素子として用い、このスイッチング素子に例えば直列に接続された他の素子(例えば、有機エレクトロルミネセンス素子(以下「有機EL素子」という。)、発熱抵抗体、表示素子等)への電圧印加制御を行う場合にも適用可能である。例えば、有機EL素子のアレイで構成される有機ELプリントヘッドを備えたプリンタ、発熱抵抗体の列で構成されるサーマルプリンタ、表示素子の列を有する表示装置等において利用することができる。
(II) 表示素子(例えば、列状あるいはマトリクス状に配列された表示素子)の駆動(即ち、電圧印加の制御)のためスイッチング素子としても用いられるサイリスタにも適用可能である。又、本発明は、3端子構造を備えたサイリスタの他、第1と第2の2つのゲートを備えた4端子サイリスタSCS(Silicon Semiconductor Controlled Switch)の場合にも適用可能である。