A.カラーフィルタの製造方法
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法について詳細に説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、吐出法によりインクを透明基板上に付着させて、複数色の画素部を所定のパターンで形成する画素部形成工程を少なくとも有し、かつ上記画素部形成工程で形成された画素部が凸状となるカラーフィルタの製造方法において、上記画素部形成工程の後に凸状である画素部を平坦化する画素部平坦化工程を有することを特徴とするものである。
本発明は、上述したように画素部平坦化工程を有するものであるので、画素部内もしくは画素部間における着色むらを防止することができ、さらにセルギャップを一定に保つことができる。まず、この画素部平坦化工程について詳しく説明する。
1.画素部平坦化工程
本発明における画素部平坦化工程は、大きく分けて二つの方法により行うことができる。その内の第1の方法は凸状である画素部を上方から圧力を加えて平坦化する方法であり、第2の方法は凸状の画素部の上方を除去する方法である。
上記第1の方法である上方から圧力を加える方法としては、線圧もしくは面圧により均一に凸状の画素部を押圧することが可能な方法であれば特に限定されるものではない。線圧により圧力を加える方法としては、例えば円筒状圧力ロールを用いる方法等を挙げることができる。また面圧により圧力を加える方法としては平面状のプレスを用いる方法等を挙げることができる。
これらの方法において、例えば円筒状圧力ロール表面もしくは平面状のプレス表面等の画素部と接触する部分については、接触した画素部が粘着しないような材料を用いることが好ましい。
具体的には、ジメチルポリシロキサンと、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−イソシアネートエチル、あるいはメタクリレートから選ばれる少なくとも1種の共重合物、あるいはジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、またはメチルフロロポリシロキサン等を挙げることができる。これらの物質の分子量は重量平均分子量で100000ないし1000000であることが好ましい。
そして、このようなシリコーン系共重合体においては、損失正接tanδが、0.01〜0.2であることが好ましく、また、複素弾性率が、106〜107dyne/cm2であることが好ましい。さらに、臨界表面張力は、17〜37dyne/cmであることが好ましく、20〜26dyne/cmであることがより好ましい。
また、円筒状圧力ロール表面もしくは平面状のプレス表面等の画素部と接触する部分に、フィルム等を介在させて画素部の凸部を押圧し、平坦化が終了した後フィルムを除去するような方法であってもよい。このような方法に用いることができるフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリアミド、芳香族ポリアミド等を挙げることができる。
一方、上記第2の方法である凸状の画素部の上方を除去する方法としては、具体的には、ドクターブレードを用いて画素部上方を掻き取る方法、カッターを用いて画素部上方を切り取る方法、さらには研磨により画素部上方を削り取る方法等を挙げることができる。
本発明における画素部平坦化工程においては、平坦化の方法によっても異なるものであるが、画素部を半硬化状態とした後、画素部平坦化工程を行うことが好ましい。具体的には、画素部のインクの粘度を、500cps〜300000cpsの範囲内とした後に、画素部平坦化工程を行うことが好ましい。
特に、上記画素部平坦化工程が凸状である画素部を上方から圧力を加えて平坦化する第1の方法である場合は、画素部が半硬化状態であることがより好ましく、この場合の粘度としては、上記範囲の中でも1000cps〜20000cpsの範囲内であることが好ましい。
この場合の半硬化状態のインクの粘度の測定方法は、半硬化状態としたインクをドクターブレードあるいはスクリーン印刷用スキージでかき集めて、R型粘度計(例えば、東機産業(株)製、RE500U)にて測定する方法が採られる。測定条件としては、ずり速度:10s-1で測定を行う。
2.画素部形成工程
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述した画素部平坦化工程を有する点に特徴を有するものであるが、その前提条件として、吐出法によりインクを透明基板上に付着させて、複数色の画素部を所定のパターンで形成する画素部形成工程を少なくとも有するカラーフィルタの製造方法であり、かつこの画素部形成工程で形成された画素部が凸状となるカラーフィルタの製造方法に適用される。
(吐出法)
本発明でいう吐出法としては、例えばマイクロシリンジ、ディスペンサー、インクジェット、針先より画素部形成用インクを電界などの外部刺激により飛ばす方法、外部刺激により振動するピエゾ素子などの振動素子を用いて素子より画素部形成用インクを飛ばす方法、針先に付着させた画素部形成用インクを基材表面に付着させる方法等を挙げることができる。
本発明では、上述した吐出法の中でも、塗布の正確性および迅速性等の観点からインクジェット方式で画素部を形成することが好ましい。この場合用いられるインクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、帯電したインクを連続的に噴射し磁場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の各種の方法を用いたインクジェット装置を用いることができる。
なお、本発明でいう「インクを透明基板上に付着させて、」とは、透明基板上に直にインクを付着させる場合のみならず、透明基板上に何らかの層が形成され、その上にインクを付着させる場合をも含む意味である。
(画素部)
このようにして、吐出法により形成される画素部は、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色で形成される。この画素部における着色パターン、着色面積は任意に設定することができる。
このような画素部を形成する場合は、上述したように吐出法の中でもインクジェット方式によることが好ましいが、このインクジェット方式に用いられるインクとしては、大きく水性、油性に分類される。本発明においてはいずれのインクであっても用いることができるが、表面張力の関係から水をベースとした水性のインクが好ましい。
本発明で用いられる水性インクには、溶媒として、水単独または水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を用いることがきる。一方、油性インクにはへッドのつまり等を防ぐために高沸点の溶媒をベースとしたものが好ましく用いられる。このようなインクジェット方式のインクに用いられる着色剤は、公知の顔料、染料が広く用いられる。また、分散性、定着性向上のために溶媒に可溶・不溶の樹脂類を含有させることもできる。その他、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤;防腐剤;防黴剤;pH調整剤;消泡剤;紫外線吸収剤;粘度調整剤:表面張力調整剤などを必要に応じて添加しても良い。
また、通常のインクジェット方式のインクは適性粘度が低いためバインダ樹脂を多く含有できないが、インク中の着色剤粒子を樹脂で包むかたちで造粒させることで着色剤自身に定着能を持たせることができる。このようなインクも本発明においては用いることができる。さらに、所謂ホットメルトインクやUV硬化性インクを用いることもできる。
本発明においては、中でもUV硬化性インクを用いることが好ましい。UV硬化性インクを用いることにより、インクジェット方式により着色して画素部を形成後、UVを照射することにより、素早くインクを硬化させることができ、すぐに次の工程に送ることができる。したがって、効率よくカラーフィルタを製造することができるからである。
このようなUV硬化性インクは、プレポリマー、モノマー、光開始剤及び着色剤を主成分とするものである。プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、シリコンアクリレート等のプレポリマーのいずれかを特に限定することなく用いることができる。
モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマー;n−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー;ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピペリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能アクリルモノマーを用いることができる。上記プレポリマー及びモノマーは単独で用いても良いし、2種以上混含しても良い。
光重合開始剤は、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−l,2−プロパジオン−2−オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン、ハロゲン置換アルキル−アリルケトン等の中から所望の硬化特性、記録特性が得られるものを選択して用いることができる。その他必要に応じて脂肪族アミン、芳香族アミン等の光開始助剤;チオキサンソン等の光鋭感剤等を添加しても良い。
(凸状の画素部について)
また、本発明は上記画素部形成工程で形成された上記画素部が凸状となる場合に適用される。ここで、画素部が凸状となるとは、画素部形成工程終了時の画素部の周囲の平均高さに比較して、内側の最も高い部位が少なくとも1μm以上、好ましくは2μm以上高い場合を示すものである。この程度の高さの差がなければ、上述した画素部平坦化工程を行う必要性があまり高くないからである。
このように、吐出法によりインクを透明基板上に付着させて画素部を形成し、さらに形成された画素部が凸状となる画素部形成法としては種々のものがあり、本発明では特に特定の画素部形成方法に限定されるものではない。具体的な方法としては、例えば、画素部を形成する前に予め画素部が形成される画素部形成部周囲に凸部を形成し、この凸部により囲まれた画素部形成部内に吐出法によりインクを付着させる方法、透明基板上に外部刺激により濡れ性が変化する濡れ性可変層を形成し、外部刺激をパターン状に加えて濡れ性を変化させ、濡れ性の良好な部分に吐出法によりインクを付着させて画素部を形成する方法等を挙げることができる。
本発明においては、特に上述した外部刺激により濡れ性を変化させることができる濡れ性可変層を形成し、この上に画素部を形成する方法が好ましい。この方法によればパターン状に外部刺激を加えることにより、容易に濡れ性の異なるパターンを形成することが可能であり、この内の濡れ性の良好な部分に吐出法でインクを付着させるだけで効率的に画素部を形成することができるからである。
以下、このような濡れ性可変層について説明する。
(濡れ性可変層)
本発明において用いられる濡れ性可変層は、その表面の濡れ性を、外からの刺激、例えば物理的刺激、化学的刺激等により変化させることができる層であれば特に限定されるものではない。例えば、酸またはアルカリ等により表面の粗さの状態が変化し、濡れ性が変化する層等であってもよいし、また紫外線や可視光、さらには熱等のエネルギーの照射により濡れ性可変層内の物質が変化して濡れ性が変化する層等であってもよい。
また濡れ性の変化に関しては、刺激が加えられる前が液体との接触角が大きく、刺激が加えられた後に液体との接触角が小さくなるように変化するような濡れ性可変層であってもよいし、また逆に刺激が加えられる前が液体との接触角が小さく、刺激が加えられた後に液体との接触角が大きく変化するような濡れ性可変層であってもよい。
(光触媒含有層)
本発明においては、この濡れ性可変層が、エネルギーの照射により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層であることが好ましい。このように、露光(本発明においては、光が照射されたことのみならず、エネルギーが照射されたことをも意味するものとする。)により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層を設けることにより、エネルギーのパターン照射等を行うことにより容易に濡れ性を変化させ、液体との接触角の小さい親インク性領域とすることができ、例えば画素部が形成される部分のみ容易に親インク性領域とすることが可能となる。したがって、効率的にカラーフィルタが製造でき、コスト的に有利となるからである。なお、この場合のエネルギーとしては、通常紫外光を含む光が用いられる。
ここで、親インク性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、吐出法によるインク等に対する濡れ性の良好な領域をいうこととする。また、撥インク性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、吐出法によるインク等に対する濡れ性が悪い領域をいうこととする。
上記光触媒含有層は、露光していない部分においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10度以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10度以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10度以上であることが好ましい。これは、露光していない部分は、本発明においては撥インク性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥インク性が十分でなく、インクが残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
また、上記光触媒含有層は、露光すると液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が10度未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10度以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10度以下となるような層であることが好ましい。露光した部分の液体との接触角が高いと、この部分でのインクの広がりが劣る可能性があり、画素部での色抜け等が生じる可能性があるからである。
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
本発明の光触媒含有層は、少なくとも光触媒とバインダとから構成されていることが好ましい。このような層とすることにより、光照射によって光触媒の作用で臨界表面張力を高くすることが可能となり、液体との接触角を低くすることができる。
このような光触媒含有層における、後述するような酸化チタンに代表される光触媒の作用機構は、必ずしも明確なものではないが、光の照射によって生成したキャリアが、近傍の化合物との直接反応、あるいは、酸素、水の存在下で生じた活性酸素種によって、有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。
本発明において濡れ性可変層として光触媒含有層を用いた場合、光触媒により、バインダの一部である有機基や添加剤の酸化、分解等の作用を用いて、露光部の濡れ性を変化させて親インク性とし、非露光部との濡れ性に大きな差を生じさせることができる。よって、吐出法によるインクとの受容性(親インク性)および反撥性(撥インク性)を高めることによって、品質の良好でかつコスト的にも有利なカラーフィルタを得ることができる。
また、本発明においてこのような光触媒含有層を用いた場合、この光触媒含有層が少なくとも光触媒とフッ素とを含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていてもよい。
このような特徴を有するカラーフィルタにおいては、エネルギーをパターン照射することにより、容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親インク性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥インク性域内に親インク性領域のパターンを形成することとなる。
したがって、このような光触媒含有層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥インク性領域内に親インク性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親インク性領域のみに画素部等を形成することが容易に可能となり、品質の良好なカラーフィルタとすることができる。
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量は、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親インク性領域におけるフッ素含有量は、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親インク性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有層に画素部等を形成することにより、フッ素含有量が低下した親インク性領域のみに正確に画素部等を形成することが可能となり、精度良くカラーフィルタを得ることができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
このような光触媒含有層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
本発明においては、特に酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。また、光触媒の粒径が小さいほど、形成された光触媒含有層の表面粗さが小さくなるので好ましく、光触媒の粒径が100nmを越えると光触媒含有層の中心線平均表面粗さが粗くなり、光触媒含有層の非露光部の撥インク性が低下し、また露光部の親インク性の発現が不十分となるため好ましくない。
本発明のカラーフィルタは、上述したように光触媒含有層表面にフッ素を含有させ、この光触媒含有層表面にエネルギーをパターン照射することにより光触媒含有層表面のフッ素含有量を低下させ、これにより撥インク性領域中に親インク性領域のパターンを形成し、ここに画素部等を形成して得られるカラーフィルタであってもよい。この場合であっても、光触媒として上述したような二酸化チタンを用いることが好ましいが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有層表面に含まれていることが好ましい。
フッ素(F)が光触媒含有層にこの程度含まれることにより、光触媒含有層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥インク性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親インク性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られるカラーフィルタの品質を向上させることができるからである。
さらに、このようなカラーフィルタにおいては、エネルギーをパターン照射して形成される親インク領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
光触媒含有層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、画素部等を形成するためには十分な親インク性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である部分の撥インク性との濡れ性の差異により、画素部等を精度良く形成することが可能となり、品質の良好なカラーフィルタを得ることができる。
本発明において、光触媒含有層に使用するバインダは、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
上記の(1)の場合、一般式:YnSiX(4-n)(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−へキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;および、それらの部分加水分解物;および、それらの混合物を使用することができる。
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層の非露光部の撥インク性が大きく向上し、遮光部用塗料やインクジェット方式用インクの付着を妨げる機能を発現する。
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
本発明のカラーフィルタにおいては、このようにオルガノポリシロキサン等の種々のバインダを光触媒含有層に用いることができる。本発明においては、上述したように、このようなバインダおよび光触媒を含む光触媒含有層にフッ素を含有させ、エネルギーをパターン照射することにより光触媒含有層表面のフッ素を低減させ、これにより撥インク性領域内に親インク性領域を形成するようにしてもよい。この際、光触媒含有層中にフッ素を含有させる必要があるが、このようなバインダを含む光触媒含有層にフッ素を含有させる方法としては、通常高い結合エネルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比較的弱い結合エネルギーで結合させる方法、比較的弱い結合エネルギーで結合されたフッ素化合物を光触媒含有層に混入させる方法等を挙げることができる。このような方法でフッ素を導入することにより、エネルギーが照射された場合に、まず結合エネルギーが比較的小さいフッ素結合部位が分解され、これによりフッ素を光触媒含有層中から除去することができるからである。
上記第1の方法、すなわち、高い結合エネルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比較的弱い結合エネルギーで結合させる方法としては、上記オルガノポリシロキサンにフルオロアルキル基を置換基として導入する方法等を挙げることができる。
例えば、オルガノポリシロキサンを得る方法として、上記(1)として記載したように、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサンを得ることができる。ここで、この方法においては、上述したように上記一般式:YnSiX(4-n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)で示される珪素化合物の1種または2種以上を、加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合することによりオルガノポリシロキサンを得るのであるが、この一般式において、置換基Yとしてフルオロアルキル基を有する珪素化合物を用いて合成することにより、フルオロアルキル基を置換基として有するオルガノポリシロキサンを得ることができる。このようなフルオロアルキル基を置換基として有するオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、エネルギーが照射された際、光触媒含有層中の光触媒の作用により、フルオロアルキル基の炭素結合の部分が分解されることから、光触媒含有層表面にエネルギーを照射した部分のフッ素含有量を低減させることができる。
この際用いられるフルオロアルキル基を有する珪素化合物としては、フルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されるものではないが、少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、このフルオロアルキル基の炭素数が4から30、好ましくは6から20、特に好ましくは6から16である珪素化合物が好適に用いられる。このような珪素化合物の具体例は上述した通りであるが、中でも炭素数が6から8であるフルオロアルキル基を有する上記珪素化合物、すなわちフルオロアルキルシランが好ましい。
本発明においては、このようなフルオロアルキル基を有する珪素化合物を上述したフルオロアルキル基を有さない珪素化合物と混合して用い、これらの共加水分解縮合物を上記オルガノポリシロキサンとして用いてもよいし、このようなフルオロアルキル基を有する珪素化合物を1種または2種以上用い、これらの加水分解縮合物、共加水分解縮合物を上記オルガノポリシロキサンとして用いてもよい。
このようにして得られるフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンにおいては、このオルガノポリシロキサンを構成する珪素化合物の内、上記フルオロアルキル基を有する珪素化合物が0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上含まれていることが好ましい。
フルオロアルキル基がこの程度含まれることにより、光触媒含有層上の撥インク性を高くすることができ、エネルギーを照射して親インク性領域とした部分との濡れ性の差異を大きくすることができるからである。
また、上記(2)に示す方法では、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋することによりオルガノポリシロキサンを得るのであるが、この場合も同様に、上述した一般式中のR1,R2のいずれかもしくは両方をフルオロアルキル基等のフッ素を含有する置換基とすることにより、光触媒含有層中にフッ素を含ませることが可能であり、またエネルギーが照射された場合に、シロキサン結合より結合エネルギーの小さいフルオロアルキル基の部分が分解されるため、エネルギー照射により光触媒含有層表面におけるフッ素の含有量を低下させることができる。
一方、後者の例、すなわち、バインダの結合エネルギーより弱いエネルギーで結合したフッ素化合物を導入させる方法としては、例えば、低分子量のフッ素化合物を導入させる場合は、例えばフッ素系の界面活性剤を混入する方法等を挙げることができ、また高分子量のフッ素化合物を導入させる方法としては、バインダ樹脂との相溶性の高いフッ素樹脂を混合する等の方法を挙げることができる。
本発明において光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOLBL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
また、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
上記光触媒含有層は、光触媒とバインダを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
(透明基板)
本発明のカラーフィルタの製造方法に用いられる透明基板としては、従来よりカラーフィルタに用いられているものであれば特に限定されるものではないが、例えば石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可とう性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可とう性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。本発明において、透明基板は通常透明なものを用いるが、反射性の基板や白色に着色した基板でも用いることは可能である。また、透明基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものを用いてもよい。
3.その他
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、その他必要に応じて種々のカラーフィルタを構成する部材を製造する工程を有するものであってもよい。
(遮光部形成工程)
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、遮光部(ブラックマトリックス)を形成する遮光部形成工程を有するものであってもよい。この遮光部形成工程は、上述した画素部形成工程より前に行われてもよいし、画素部形成工程が行われた後に行われてもよい。
このような遮光部形成工程としては、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成される方法であってもよく、このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた遮光部を形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
(保護層形成工程)
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、さらに画素部上に保護層を形成する保護層形成工程を行ってもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部、あるいは、画素部と光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。
保護層の厚みは、使用される材料の光透過率、カラーフィルタの表面状態等を考慮して設定することができ、例えば、0.1〜2.0μmの範囲で設定することができる。保護層は、例えば、公知の透明感光性樹脂、二液硬化型透明樹脂等の中から、透明保護層として要求される光透過率等を有するものを用いて形成することができる。
4.製造方法の一例
以下、図1を用いて、本発明のカラーフィルタの製造方法の一例について説明する。
この例においては、まず遮光部1が形成された透明基板2が準備される(図1A)。次いで、この透明基板2の遮光部1が形成された側の表面に光触媒含有層3が形成される。次いで、上記光触媒含有層3上の画素部が形成される位置である画素部形成部のみに露光されるように、マスク4を用いて露光を行う(図1B)。光触媒含有層3上の画素部形成部は、露光されて親インク性の画素部用露光部5とされる(図1C)。この画素部用露光部5上に吐出法によりインク6を付着させる(図1D)。ここで、インク6は必要に応じて半硬化状態とされる。そして、インク6は、この例では平面状のプレス7により押圧される(図1E)。最後にインク6の硬化処理を施すことにより、平坦な画素部8が形成される(図1F)。その後、必要に応じて透明電極層、保護層等が形成されてカラーフィルタとされる。
B.カラーフィルタ
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、透明基板と、この透明基板上に吐出法によりインクを付着させて、複数色が所定のパターンで形成されてなる画素部とを少なくとも有し、上記各画素部の厚みの差が±0.5μmの範囲内、好ましくは±0.3μmの範囲内、特に好ましくは±0.1μmの範囲内であることを特徴とする。
本発明のカラーフィルタは、特に各画素部の厚みの差が上述した範囲内であるので、カラー液晶表示装置とした場合にセルギャップを均一とすることが可能となり、また色むら等のない高品質なカラーフィルタとすることができる。
このような各画素部の厚みの差が少ないカラーフィルタは、例えば上述したカラーフィルタの製造方法により製造することができる。
なお、本発明のカラーフィルタの透明基板、吐出法、および画素部等に関しては、上記カラーフィルタの製造方法で説明したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。また、カラーフィルタの製造方法において説明したものと同様に、本発明のカラーフィルタにおいても遮光部(ブラックマトリックス)が形成されたものであってもよい。さらに、画素部が、インクジェット法により形成されていることが好ましい点、画素部がUV硬化性インクにより形成されていることが好ましい点等に関しても、上記カラーフィルタの製造方法で説明した通りである。
C.カラー液晶表示装置について
上述したカラーフィルタと、このカラーフィルタに対向する対向基板とを組み合わせ、この間に液晶化合物を封入することによりカラー液晶表示装置が形成される。このようにして得られるカラー液晶表示装置は、本発明のカラーフィルタが有する利点、すなわち、セルギャップを均一化することが可能であり、かつ色むら等の不具合を低減することができるという利点を有するものである。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、本発明について、実施例を通じてさらに詳述する。
1.光触媒含有層の形成
イソプロピルアルコール3gとフルオロアルキルシラン(トーケムプロダクツ(株)製、商品名:MF−160E、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N−エチルパーフルオロオクタンスルホンアミドのイソプロピルエーテル50重量%溶液)0.001g、酸化チタンゾル(石原産業(株)製、商品名:ST−K01)2gを混合し、100℃で20分間撹拌した。
この溶液を厚さ0.7mm、開口部が90μm×300μmで線幅30μmのクロム薄膜パターンからなるブラックマトリックス(遮光部)を有するソーダガラス製の透明基板上にスピンコーティングによりコートし、20分間150℃で加熱後、厚さ0.15μmの光触媒含有層を得た。
この光触媒含有層の40mN/mの濡れ指数標準液(純正化学株式会社製)に対する接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定した結果、70°であった。
次いで、この光触媒含有層表面に超高圧水銀ランプにより20mW/cm2(365nm)の照度で紫外線照射を行った結果、40mN/mの濡れ指数標準液に対する接触角を0°になるまでに120秒要した。
2.画素部の形成
上記光触媒含有層が形成された透明基板を、赤色パターン、緑色パターン、および青色パターン用のマスクを介して水銀灯(波長365nm)により照射(70mW/cm2で50秒間)して、赤色パターン、緑色パターン、および青色パターンの照射部位を一括で親インク性領域(水の接触角に換算して10°以下)とした。
このマスク上の赤色パターン、緑色パターン、および青色パターンは隣接して形成されており、各色のパターン間隔はブラックマトリックス線幅以下で形成されている。
一方、1gのC.I.ピグメントレッド168を、水系エマルジョンシリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:K−768)を水で3倍に希釈した水溶液10gに混合し、得られた混合物を3本ロールで練肉分散した後、12000 r.p.m.で遠心分離を行い、その後、1μmのグラスフィルターで濾過した。得られた水性着色樹脂溶液に、硬化触媒としてCatalyst PM-6A : Catalyst PM-6B =4:6(信越化学工業(株)製)を0.1g添加して、赤色パターン用の塗布液(熱硬化性樹脂組成物)を調製した。
次に、上記赤色パターン用塗布液を吐出ノズルにより、光触媒含有層上の赤色パターンの親インク性領域に選択的に滴下した。その後、100℃、30秒間の加熱処理を施して赤色パターンを半硬化状態にした。
次に、1gのC.I.ピグメントブルー60を、水系エマルジョンシリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:K−768)を水で3倍に希釈した水溶液10gに混合し、上記赤色パターン用の塗布液と同様にして、青色パターン用の塗布液(熱硬化性樹脂組成物)を調製した。そして、上記青色パターン用塗布液を吐出ノズルにより、光触媒含有層上の青色パターンの親インク性領域に選択的に滴下した。その後、100℃、30秒間の加熱処理を施して青色パターンを半硬化状態にした。
次に、1gのリオノールグリーン2Y−301(東洋インク製造(株)製)をポリビニルアルコール(平均重合度1750、ケン化度88モル%)の10重量%水溶液10gに混合し、得られた混合物を3本ロールで練肉分散した後、12000r.p.m.で遠心分離を行い、その後、1μmのグラスフィルターで濾過した。得られた水性着色樹脂溶液に、架橋剤として重クロム酸アンモニウムを1重量%添加して、緑色パターン用の塗布液(感光性樹脂組成物)を調製した。
次に、上記緑色パターン用塗布液を吐出ノズルにより、光触媒含有層上の緑色パターンの親インク性領域に選択的に滴下した。その後、100℃、30秒間の加熱処理を行い、緑色パターンを半硬化状態にした。
3.画素部平坦化工程
次いで、ガラス基板上における上記半硬化状態の3色パターンをロール圧:1kg/cm2、搬送速度:5m/min、ロール表面温度:23℃、の条件下のブランケットロール中を通過させ、均一な線圧をガラス基板全面に行き渡るように一定速度、一定圧力を加えて押し潰した。このブランケットロール表面の材質は、1mm厚のフェニル−メチルシリコーンゴムであり、ゴム表面粗度Ra 1μm以下、硬度50〜80°であった。上記着色パターンの押し潰し後に、180℃、20分間の硬化処理を行い、ガラス基板上に画素部を形成した。
4.カラーフィルタの形成およびその評価
次に、保護層として二液混合型熱硬化剤(日本合成ゴム(株)製、商品名:SS7265)をスピンコーターにて着色層上に塗布し、200℃、30分間の硬化処理を施して保護層を形成し、本発明のカラーフィルタを得た。
得られたカラーフィルタは、画素部の色むらのない高品質のものであった。また、各画素部間の厚みの差を測定したところ、0.2μm以内であり、平坦な表面を有するカラーフィルタであることが明らかとなった。