JP4834910B2 - カラーフィルタの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面の濡れ性をエネルギー照射により容易にパターン状に変化させることが可能な光触媒含有層を用い、この光触媒含有層上にインクジェット装置を用いて画素部を形成するカラーフィルタの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴い、液晶ディスプレイ、とりわけカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、このカラー液晶ディスプレイが高価であることから、コストダウンの要求が高まっており、特にコスト的に比重の高いカラーフィルタに対するコストダウンの要求が高い。
【0003】
カラーフィルタを効率的にかつ高品質に製造する方法として、エネルギーの照射により表面の濡れ性が変化する光触媒含有層を用いたカラーフィルタの製造方法が本発明者等により提案されている(例えば、特開平11−337726号)。この方法によれば、光触媒とバインダーとを少なくとも有する光触媒含有層を透明基板上に塗布し、この光触媒含有層をパターン露光することにより親液性のパターンを形成し、この親液性のパターン上にインクを塗布することにより、画素部等を形成してカラーフィルタを製造するものである。
【0004】
この親液性のパターン上にインクを塗布する方法としては、インクジェット装置を用いる方法を挙げることができる。このインクジェット装置を用いて例えばストライプ状の画素部を形成する場合、通常ストライプ状に形成された親液性領域に沿ってインクジェット装置のヘッドを移動させ、このストライプ状の親液性領域内にインクを次々と塗布することにより画素部を形成する方法が採られる。
【0005】
しかしながら、このような方法ではヘッドに形成されたオリフィスの間隔と、インクを塗布する親液性領域のストライプの間隔を一致させる必要があることから、図2に示すようにヘッド1をストライプ状の親液性領域2に対して斜めに配置し、オリフィス3の間隔とストライプ状の親液性領域2の間隔とが一致するように調整する必要があり、この角度の調整が煩雑であるという問題がある。
【0006】
また、通常インクジェット装置においては、各オリフィスから吐出されるインクの吐出量は若干相違するものであることから、画素部間において、色むらが生じる可能性がある。
【0007】
したがって、このような問題を解決するために、図3に示すような上記ストライプ状の親液性領域2に対し垂直方向にヘッド1を移動させて画素部用のインクを塗布する方法が提案されている。そして、このように親液性領域2に対し垂直方向にヘッド1を移動させて画素部用インクを塗布する場合、図4に示すように、ヘッド1の長さに限界があるため、通常ヘッドは親液性領域2のストライプに沿うように配置された複数のヘッド1で構成される。
【0008】
このように親液性領域2のストライプに沿うように複数のヘッド1が直列状に配置された状態で画素部を形成すると、図4に示すように、形成された画素部において各ヘッド1間の繋ぎ目に相当する部分4がインクの混じり合い等により目立ってしまうケースがあり、品質不良とされるといった問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、インクジェット装置を用いて、光触媒含有層上に形成されたストライプ状の親液性領域にインクを塗布して画素部を形成する際に、複数のヘッドをストライプ状の親液性領域に沿うように直列状に配置して画素部を形成した場合でも、形成された画素部においてヘッド間の繋ぎ目が目立つことがなく、品質不良とされることのないカラーフィルタを得ることができるカラーフィルタの製造方法を提供することを主目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、光触媒含有層が表面に形成された透明基板の光触媒含有層側表面にストライプ状にエネルギーをパターン照射することにより、ストライプ状の親液性領域が形成され、この親液性領域にインクジェット装置でインクを塗布することにより画素部を形成する工程を少なくとも有するカラーフィルタの製造方法において、上記インクジェット装置でインクを塗布する工程が、上記親液性領域のストライプに対して垂直方向に上記インクジェット装置のヘッドが相対的に動いてインクを塗布する工程であり、かつ上記ヘッドが親液性領域のストライプに沿うように配置された複数のヘッドで構成されており、さらに隣り合う上記ヘッドの長手方向端部が重なるように配置され、またさらに上記隣り合うヘッドの長手方向端部の重なり合う領域に、上記親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部が配置され、これらの遮光部上の光触媒含有層の一部が上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であることを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0011】
本発明においては、このように複数のヘッドが親液性領域のストライプに沿うように配置されており、かつこれら隣り合うヘッドが、その長手方向端部が重なるように配置されている。したがって、隣り合うヘッドが重なり合う部分で、インクの吐出をいずれかのヘッドからとすることにより、ヘッドの繋ぎ目部分の位置を親液性領域毎に変えることが可能となる。これにより、形成された画素部においてヘッド間の繋ぎ目部分が一直線にならないようにすることができることから、繋ぎ目が目立つことを防止することができる。これにより、ヘッドの繋ぎ目部分が目立つことにより品質不良とされることの無いカラーフィルタを得ることができる。
【0012】
また、本発明においては、光触媒含有層が表面に形成された透明基板の光触媒含有層側表面にストライプ状にエネルギーをパターン照射することにより、ストライプ状の親液性領域が形成され、この親液性領域にインクジェット装置でインクを塗布することにより画素部を形成する工程を少なくとも有するカラーフィルタの製造方法において、上記インクジェット装置でインクを塗布する工程が、上記親液性領域のストライプに対して垂直方向に上記インクジェット装置のヘッドが相対的に動いてインクを塗布する工程であり、かつ上記ヘッドが親液性領域のストライプに沿うように配置された複数のヘッドで構成されており、さらに上記複数のヘッドの繋ぎ目に相当する位置を、上記親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部上の位置とし、上記遮光部上の光触媒含有層の一部が上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であることを特徴とするカラーフィルタの製造方法を提供する。
【0013】
この場合は、ヘッドの繋ぎ目部分が遮光部上とされ、さらにこの遮光部上の光触媒含有層の一部が撥液性領域とされているため、両側のヘッドからのインクがこの撥液性領域の存在により混じり合うことがない。したがって、ヘッドの繋ぎ目に相当する部分が、インクの混じり合いにより、画素部において目立つことがなく、品質不良とされることの無いカラーフィルタを得ることができる。
【0014】
本発明においては、上記隣り合うヘッドの長手方向端部の重なり合う領域に、上記親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部が複数配置され、これらの遮光部上の光触媒含有層の一部が上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であることが好ましい。このような構成とすることにより、ヘッドが重なり合う部分においてインクの吐出をいずれかのヘッドからとすることにより、ヘッドの繋ぎ目部分の位置を親液性領域毎に変えることが可能であり、さらにこのヘッドの繋ぎ目部分に相当する位置に撥液性領域を配置するようにすることにより、ヘッドの繋ぎ目部分でインクが混じり合わないようにすることができる。したがって、ヘッドの繋ぎ目部分が一直線となることを防ぎ、さらにこのヘッドの繋ぎ目部分でインクが混じり合わないことから、画素部におけるヘッドの繋ぎ目部分が目立つことをより完全に防止することができる。
【0015】
本発明においては、上記親液性領域のストライプに対して交差するように形成された透明基板上の全ての遮光部上の光触媒含有層の一部が上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であることが好ましい。このようにすることにより、ヘッドの繋ぎ目部分、もしくは隣り合うヘッドの重なり合う部分に対して、確実に撥液性領域を配置することが可能となるからである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のカラーフィルタの製造方法は、光触媒含有層が表面に形成された透明基板の光触媒含有層側表面にストライプ状にエネルギーをパターン照射することにより、ストライプ状の親液性領域が形成され、この親液性領域にインクジェット装置でインクを塗布することにより画素部を形成する工程を少なくとも有するカラーフィルタの製造方法において、上記インクジェット装置でインクを塗布する工程が、上記親液性領域のストライプに対して垂直方向に上記インクジェット装置のヘッドが相対的に動いてインクを塗布する工程であり、かつ上記ヘッドが親液性領域のストライプに沿うように配置された複数のヘッドで構成されており、さらに隣り合う上記ヘッドの長手方向端部が重なるように配置されていることを特徴とするものである。
【0017】
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、まず、透明基板上に少なくとも光触媒含有層が形成されており、さらにこの光触媒含有層表面がストライプ状にエネルギーがパターン照射されているものである。これらの各要素については、後で詳述する。なお、本発明においては、遮光部(ブラックマトリックス)が形成されていてもよく、この場合は通常透明基板上に遮光部が形成され、その上に全面にわたって光触媒含有層が形成される。
【0018】
本発明においては、このように光触媒含有層上にストライプ状に形成された親液性領域内にインクジェット装置でインクを塗布して画素部を形成する工程が、上記親液性領域のストライプに対して垂直方向にインクジェット装置のヘッドが相対的に動いてインクを塗布するものである。しかしながら、この際、インクジェット装置のヘッドの長さに制限があることから一つのヘッドでストライプ状に形成された親液性領域の長手方向全面をカバーすることができない。したがって、複数のヘッドを親液性領域のストライプに沿うように配置して塗布するようにしている。ここで、親液性領域のストライプに沿うようにとは、ストライプに対して直列状に複数のヘッドが配置されている状態を示すものであり、複数のヘッドが一直線上に並んでいる状態のみを示すものではなく、例えば図4に示すように、複数のヘッドが前後にずれた状態で長手方向に並んだ状態をも示すものである。
【0019】
本発明は、このような状態でインクを塗布した場合に生じる問題点、すなわち図4に示すように画素部における各ヘッド1の繋ぎ目に相当する部分4が目立ってしまいカラーフィルタとしての品質に問題が生じる点を改良したものであり、大きく分けて以下の二つの手段により解決したものである。以下、それぞれの解決方法について説明する。
【0020】
なお、ここで画素部を形成した際のヘッド間の繋ぎ目が目立つ現象とは、ヘッド間繋ぎ目に相当する画素部上においては、一方のヘッドからのインクが塗布された上に他方のヘッドからのインクが塗布されることになり、結果としてヘッドの繋ぎ目部分に相当する画素部が他の画素部と異なる状態となり、これが一直線上に並ぶと目立つ現象である。
【0021】
また、「ヘッドが相対的に動く」とは、インクの塗布に際してヘッドが固定され、基板が移動する場合、基板が固定されヘッドが動く場合、さらには両者が動く場合の全ての場合を含む旨である。
【0022】
1.第1の方法
本発明における第1の方法は、隣り合うヘッドの長手方向端部が重なるように配置するようにしたものである。図1は、この第1の方法を説明するための概略平面図であり、隣り合うヘッド1、1が、その長手方向端部で重なり合うように配置されている。このように隣り合うヘッド1、1をその長手方向で重なり合うように配置することにより、図1に示すように画素部上のヘッド1の境界部分に相当する部分を直線状でなく、ランダムな状態とすることが可能となり、これにより画素部を形成した際にヘッド間の繋ぎ目が目立つという不具合を防止することができる。
【0023】
すなわち、このヘッド1、1が重なっている部分において、各ヘッド1のオリフィス3からのインクの吐出状態を制御することにより、各ヘッド1からのインクの塗布範囲をストライプ状の親液性領域毎に変化させることが可能となり、これにより画素部上における各ヘッドの繋ぎ目部分を一直線でなくランダムとすることが可能となり、これにより各ヘッドの繋ぎ目部分を目立たなくすることができるのである。
【0024】
本発明において、この隣り合うヘッドの長手方向の重なり合う部分の長さは、ヘッドの長さ等により変化するものではあるが、2mmから20mm程度、好ましくは5mmから10mm程度であることが好ましい。重なり合う部分の長さが上記範囲より小さい場合は、ヘッド間の繋ぎ目部分をランダムにした場合でも、繋ぎ目部分が目立つ可能性が残されるためである。一方、重なり合う部分の長さが上記範囲より大きい場合は、一つのヘッドで塗布できる親液性領域の幅が狭くなることから、コスト面で問題が生じる可能性があるからである。
【0025】
2.第2の方法
本発明における第2の方法は、上記複数のヘッドの繋ぎ目に相当する位置を、上記親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部上の位置とし、上記遮光部上の光触媒含有層の一部が上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域とする方法である。
【0026】
このように、各ヘッドの繋ぎ目に相当する位置と、親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部の位置とを一致させ、この遮光部上の光触媒含有層の一部が親液性領域を区切るように形成された撥液性領域とすることにより、ヘッドの繋ぎ目に相当する位置に撥液性領域が配置される。したがって、一方のヘッドから吐出されたインクと、他方のヘッドから吐出されたインクとが混じり合うことがなく、よってこの部分がインクの混じり合い等により目立つことがない。また、この部分は遮光部上であるので、インクが着色されない撥液性領域とした場合であっても問題が生じない。
【0027】
この第2の方法においては、親液性領域のストライプに対して交差するように形成された透明基板上の全ての遮光部上における光触媒含有層の一部が、上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であるようにしてもよい。より確実にヘッドの繋ぎ目に相当する位置に撥液性領域が配置できる点、ヘッドの継ぎ目に相当する部分の遮光部上のみを選択して撥液性領域とすることは、マスク設計上煩雑である点、およびインクを塗布する親液性領域を小さく形成した方がインクの膜厚が均一化する可能性が高い点等の理由によるものである。
【0028】
なお、このように撥液性領域を形成した場合は、インクジェット装置のヘッドにおけるノズル(オリフィス)のピッチによっては、この撥液性領域上にインクが塗布されてしまう可能性がある。このような場合は、ヘッドを親液性領域のストライプに対して傾斜させることにより調整し、撥液性領域上にインクが塗布されないようにすることが好ましい。
【0029】
3.第1の方法と第2の方法との組合せ
本発明においては、上記第1の方法と第2の方法とを組み合わせてもよい。すなわち、隣り合うヘッドの長手方向端部が重なるように配置され、かつこの隣り合うヘッドの長手方向端部の重なり合う領域に、上記親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部が複数配置され、これらの遮光部上における光触媒含有層の一部が上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域としたものであってもよいのである。
【0030】
このように、第1の方法と第2の方法とを組み合わせることにより、第1の方法によるヘッドの繋ぎ目部分をランダムにする効果と、第2の方法による隣り合うヘッドからのインクを混ざり合わないようにさせる効果との両方の効果が得られ、これにより、より効果的にヘッドの繋ぎ目に相当する画素部上の部分が目立たなくなり、得られるカラーフィルタが品質不良とされる可能性を大きく低減させることができるからである。
【0031】
またこの場合も、第2の方法の場合と同様にかつ同様の理由から、親液性領域のストライプに対して交差するように形成された透明基板上の全ての遮光部上における光触媒含有層の一部が、上記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であるようにしてもよい。
【0032】
この場合も第2の方法の場合と同様に、インクジェット装置のヘッドにおけるノズルのピッチにより、撥液性領域にインクが塗布されてしまうような場合は、ヘッドを親液性領域のストライプに対して傾斜させ、ノズルのピッチを調整するようにしてもよい。
【0033】
4.各構成について
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法に用いられる各構成について、それぞれ説明する。
【0034】
(光触媒含有層)
本発明において用いられる光触媒含有層は、少なくとも光触媒とバインダーとからなり、エネルギーの照射により液体との接触角が低下するように形成された層である。このように、露光(本発明においては、光が照射されたことのみならず、エネルギーが照射されたことをも意味するものとする。)により液体との接触角が低下するように濡れ性が変化する光触媒含有層を設けることにより、エネルギーのパターン照射等を行うことにより容易に濡れ性を変化させ、液体との接触角の小さい親液性領域とすることができ、例えば上記ストライプ状の画素部が形成される部分のみ容易に親液性領域とすることが可能となる。したがって、効率的にカラーフィルタが製造でき、コスト的に有利となるからである。なお、この場合のエネルギーとしては、通常紫外光を含む光が用いられる。
【0035】
ここで、親液性領域とは、液体との接触角が小さい領域であり、インクジェット装置によるインクに対する濡れ性の良好な領域をいうこととし、本発明においては光触媒含有層上にエネルギー照射することにより親液性領域とすることができる。また、撥液性領域とは、液体との接触角が大きい領域であり、インクジェット装置によるインクに対する濡れ性が悪い領域をいうこととし、本発明においては、光触媒含有層上にエネルギーが照射されていない部分が撥液性領域となる。
【0036】
上記光触媒含有層は、露光していない部分においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10度以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10度以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10度以上であることが好ましい。これは、露光していない部分は、本発明においては撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、インクが残存する可能性が生じるため好ましくないからである。
【0037】
また、上記光触媒含有層は、露光すると液体との接触角が低下して、表面張力40mN/mの液体との接触角が10度未満、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10度以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10度以下となるような層であることが好ましい。露光した部分の液体との接触角が高いと、この部分でのインクの広がりが劣る可能性があり、画素部での色抜け等が生じる可能性があるからである。
【0038】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0039】
本発明の光触媒含有層は、上述したように少なくとも光触媒とバインダとから構成されていることが好ましい。このような層とすることにより、光照射によって光触媒の作用で臨界表面張力を高くすることが可能となり、液体との接触角を低くすることができる。
【0040】
また、本発明においてこのような光触媒含有層を用いた場合、この光触媒含有層が少なくとも光触媒とフッ素とを含有し、さらにこの光触媒含有層表面のフッ素含有量が、光触媒含有層に対しエネルギーを照射した際に、上記光触媒の作用によりエネルギー照射前に比較して低下するように上記光触媒含有層が形成されていてもよい。
【0041】
このような特徴を有するカラーフィルタの製造方法においては、エネルギーをパターン照射することにより、容易にフッ素の含有量の少ない部分からなるパターンを形成することができる。ここで、フッ素は極めて低い表面エネルギーを有するものであり、このためフッ素を多く含有する物質の表面は、臨界表面張力がより小さくなる。したがって、フッ素の含有量の多い部分の表面の臨界表面張力に比較してフッ素の含有量の少ない部分の臨界表面張力は大きくなる。これはすなわち、フッ素含有量の少ない部分はフッ素含有量の多い部分に比較して親液性領域となっていることを意味する。よって、周囲の表面に比較してフッ素含有量の少ない部分からなるパターンを形成することは、撥液性域内に親液性領域のパターンを形成することとなる。
【0042】
したがって、このような光触媒含有層を用いた場合は、エネルギーをパターン照射することにより、撥液性領域内に親液性領域のパターンを容易に形成することができるので、この親液性領域のみに画素部等を形成することが容易に可能となり、品質の良好なカラーフィルタを製造することができる。
【0043】
上述したような、フッ素を含む光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量において、エネルギーが照射されて形成されたフッ素含有量が低い親液性領域におけるフッ素含有量は、エネルギー照射されていない部分のフッ素含有量を100とした場合に10以下、好ましくは5以下、特に好ましくは1以下であることが好ましい。
【0044】
このような範囲内とすることにより、エネルギー照射部分と未照射部分との親液性に大きな違いを生じさせることができる。したがって、このような光触媒含有層に画素部等を形成することにより、フッ素含有量が低下した親液性領域のみに正確に画素部等を形成することが可能となり、精度良くカラーフィルタを製造することができるからである。なお、この低下率は重量を基準としたものである。
【0045】
このような光触媒含有層中のフッ素含有量の測定は、一般的に行われている種々の方法を用いることが可能であり、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy, ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)とも称される。)、蛍光X線分析法、質量分析法等の定量的に表面のフッ素の量を測定できる方法であれば特に限定されるものではない。
【0046】
本発明で使用する光触媒としては、光半導体として知られる例えば酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化ビスマス(Bi2O3)、および酸化鉄(Fe2O3)を挙げることができ、これらから選択して1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0047】
本発明においては、特に酸化チタンが、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定で毒性もなく、入手も容易であることから好適に使用される。酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
【0048】
このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
【0049】
光触媒の粒径は小さいほど光触媒反応が効果的に起こるので好ましく、平均粒径か50nm以下が好ましく、20nm以下の光触媒を使用するのが特に好ましい。また、光触媒の粒径が小さいほど、形成された光触媒含有層の表面粗さが小さくなるので好ましく、光触媒の粒径が100nmを越えると光触媒含有層の中心線平均表面粗さが粗くなり、光触媒含有層の非露光部の撥液性が低下し、また露光部の親液性の発現が不十分となるため好ましくない。
【0050】
本発明のカラーフィルタは、上述したように光触媒含有層表面にフッ素を含有させ、この光触媒含有層表面にエネルギーをパターン照射することにより光触媒含有層表面のフッ素含有量を低下させ、これにより撥液性領域中に親液性領域のパターンを形成し、ここに画素部等を形成して得られるカラーフィルタであってもよい。この場合であっても、光触媒として上述したような二酸化チタンを用いることが好ましいが、このように二酸化チタンを用いた場合の、光触媒含有層中に含まれるフッ素の含有量としては、X線光電子分光法で分析して定量化すると、チタン(Ti)元素を100とした場合に、フッ素(F)元素が500以上、このましくは800以上、特に好ましくは1200以上となる比率でフッ素(F)元素が光触媒含有層表面に含まれていることが好ましい。
【0051】
フッ素(F)が光触媒含有層にこの程度含まれることにより、光触媒含有層上における臨界表面張力を十分低くすることが可能となることから表面における撥液性を確保でき、これによりエネルギーをパターン照射してフッ素含有量を減少させたパターン部分における表面の親液性領域との濡れ性の差異を大きくすることができ、最終的に得られるカラーフィルタの品質を向上させることができるからである。
【0052】
さらに、このようなカラーフィルタにおいては、エネルギーをパターン照射して形成される親インク領域におけるフッ素含有量が、チタン(Ti)元素を100とした場合にフッ素(F)元素が50以下、好ましくは20以下、特に好ましくは10以下となる比率で含まれていることが好ましい。
【0053】
光触媒含有層中のフッ素の含有率をこの程度低減することができれば、画素部等を形成するためには十分な親液性を得ることができ、上記エネルギーが未照射である部分の撥液性との濡れ性の差異により、画素部等を精度良く形成することが可能となり、品質の良好なカラーフィルタを得ることができる。
【0054】
本発明において、光触媒含有層に使用するバインダは、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば、(1)ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、(2)撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
【0055】
上記の(1)の場合、一般式:
YnSiX(4-n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上の加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合物であるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。なお、ここでYで示される基の炭素数は1〜20の範囲内であることが好ましく、また、Xで示されるアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基であることが好ましい。
【0056】
具体的には、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン;エチルトリクロルシラン、エチルトリブロムシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリt−ブトキシシラン;n−プロピルトリクロルシラン、n−プロピルトリブロムシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリt−ブトキシシラン;n−ヘキシルトリクロルシラン、n−へキシルトリブロムシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−へキシルトリイソプロポキシシラン、n−へキシルトリt−ブトキシシラン;n−デシルトリクロルシラン、n−デシルトリブロムシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、n−デシルトリイソプロポキシシラン、n−デシルトリt−ブトキシシラン;n−オクタデシルトリクロルシラン、n−オクタデシルトリブロムシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−オクタデシルトリイソプロポキシシラン、n−オクタデシルトリt−ブトキシシラン;フェニルトリクロルシラン、フェニルトリブロムシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリt−ブトキシシラン;テトラクロルシラン、テトラブロムシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン;ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン;ジフェニルジクロルシラン、ジフェニルジブロムシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン;フェニルメチルジクロルシラン、フェニルメチルジブロムシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン;トリクロルヒドロシラン、トリブロムヒドロシラン、トリメトキシヒドロシラン、トリエトキシヒドロシラン、トリイソプロポキシヒドロシラン、トリt−ブトキシヒドロシラン;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリブロムシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリt−ブトキシシラン;トリフルオロプロピルトリクロルシラン、トリフルオロプロピルトリブロムシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メタアクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−アミノプロピルトリt−ブトキシシラン;γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリt−ブトキシシラン;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン;および、それらの部分加水分解物;および、それらの混合物を使用することができる。
【0057】
また、バインダとして、特にフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンが好ましく用いることができ、具体的には、下記のフルオロアルキルシランの1種または2種以上の加水分解縮合物、共加水分解縮合物が挙げられ、一般にフッ素系シランカップリング剤として知られたものを使用することができる。
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si(OCH3)3;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si(OCH3)3;
CF3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4Si(OCH3)3;
CF3(CF2)3CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)9CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)4CH2CH2SiCH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)6CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2Si CH3(OCH3)2;
CF3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)5(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)7(C6H4)C2H4SiCH3(OCH3)2;
CF3(CF2)3CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)9CH2CH2Si(OCH2CH3)3;
CF3(CF2)7SO2N(C2H5)C2H4CH2Si(OCH3)3
上記のようなフルオロアルキル基を含有するポリシロキサンをバインダとして用いることにより、光触媒含有層の非露光部の撥液性が大きく向上し、遮光部用塗料やインクジェット方式用インクの付着を妨げる機能を発現する。
【0058】
また、上記の(2)の反応性シリコーンとしては、下記一般式で表される骨格をもつ化合物を挙げることができる。
【0059】
【化1】
【0060】
ただし、nは2以上の整数であり、R1,R2はそれぞれ炭素数1〜10の置換もしくは非置換のアルキル、アルケニル、アリールあるいはシアノアルキル基であり、モル比で全体の40%以下がビニル、フェニル、ハロゲン化フェニルである。また、R1、R2がメチル基のものが表面エネルギーが最も小さくなるので好ましく、モル比でメチル基が60%以上であることが好ましい。また、鎖末端もしくは側鎖には、分子鎖中に少なくとも1個以上の水酸基等の反応性基を有する。
【0061】
また、上記のオルガノポリシロキサンとともに、ジメチルポリシロキサンのような架橋反応をしない安定なオルガノシリコン化合物をバインダに混合してもよい。
【0062】
本発明のカラーフィルタにおいては、このようにオルガノポリシロキサン等の種々のバインダを光触媒含有層に用いることができる。本発明においては、上述したように、このようなバインダおよび光触媒を含む光触媒含有層にフッ素を含有させ、エネルギーをパターン照射することにより光触媒含有層表面のフッ素を低減させ、これにより撥液性領域内に親液性領域を形成するようにしてもよい。この際、光触媒含有層中にフッ素を含有させる必要があるが、このようなバインダを含む光触媒含有層にフッ素を含有させる方法としては、通常高い結合エネルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比較的弱い結合エネルギーで結合させる方法、比較的弱い結合エネルギーで結合されたフッ素化合物を光触媒含有層に混入させる方法等を挙げることができる。このような方法でフッ素を導入することにより、エネルギーが照射された場合に、まず結合エネルギーが比較的小さいフッ素結合部位が分解され、これによりフッ素を光触媒含有層中から除去することができるからである。
【0063】
上記第1の方法、すなわち、高い結合エネルギーを有するバインダに対し、フッ素化合物を比較的弱い結合エネルギーで結合させる方法としては、上記オルガノポリシロキサンにフルオロアルキル基を置換基として導入する方法等を挙げることができる。
【0064】
例えば、オルガノポリシロキサンを得る方法として、上記(1)として記載したように、ゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサンを得ることができる。ここで、この方法においては、上述したように上記一般式:
YnSiX(4-n)
(ここで、Yはアルキル基、フルオロアルキル基、ビニル基、アミノ基、フェニル基またはエポキシ基を示し、Xはアルコキシル基、アセチル基またはハロゲンを示す。nは0〜3までの整数である。)
で示される珪素化合物の1種または2種以上を、加水分解縮合物もしくは共加水分解縮合することによりオルガノポリシロキサンを得るのであるが、この一般式において、置換基Yとしてフルオロアルキル基を有する珪素化合物を用いて合成することにより、フルオロアルキル基を置換基として有するオルガノポリシロキサンを得ることができる。このようなフルオロアルキル基を置換基として有するオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、エネルギーが照射された際、光触媒含有層中の光触媒の作用により、フルオロアルキル基の炭素結合の部分が分解されることから、光触媒含有層表面にエネルギーを照射した部分のフッ素含有量を低減させることができる。
【0065】
この際用いられるフルオロアルキル基を有する珪素化合物としては、フルオロアルキル基を有するものであれば特に限定されるものではないが、少なくとも1個のフルオロアルキル基を有し、このフルオロアルキル基の炭素数が4から30、好ましくは6から20、特に好ましくは6から16である珪素化合物が好適に用いられる。このような珪素化合物の具体例は上述した通りであるが、中でも炭素数が6から8であるフルオロアルキル基を有する上記珪素化合物、すなわちフルオロアルキルシランが好ましい。
【0066】
本発明においては、このようなフルオロアルキル基を有する珪素化合物を上述したフルオロアルキル基を有さない珪素化合物と混合して用い、これらの共加水分解縮合物を上記オルガノポリシロキサンとして用いてもよいし、このようなフルオロアルキル基を有する珪素化合物を1種または2種以上用い、これらの加水分解縮合物、共加水分解縮合物を上記オルガノポリシロキサンとして用いてもよい。
【0067】
このようにして得られるフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサンにおいては、このオルガノポリシロキサンを構成する珪素化合物の内、上記フルオロアルキル基を有する珪素化合物が0.01モル%以上、好ましくは0.1モル%以上含まれていることが好ましい。
【0068】
フルオロアルキル基がこの程度含まれることにより、光触媒含有層上の撥液性を高くすることができ、エネルギーを照射して親液性領域とした部分との濡れ性の差異を大きくすることができるからである。
【0069】
また、上記(2)に示す方法では、撥水牲や撥油性に優れた反応性シリコーンを架橋することによりオルガノポリシロキサンを得るのであるが、この場合も同様に、上述した一般式中のR1,R2のいずれかもしくは両方をフルオロアルキル基等のフッ素を含有する置換基とすることにより、光触媒含有層中にフッ素を含ませることが可能であり、またエネルギーが照射された場合に、シロキサン結合より結合エネルギーの小さいフルオロアルキル基の部分が分解されるため、エネルギー照射により光触媒含有層表面におけるフッ素の含有量を低下させることができる。
【0070】
一方、後者の例、すなわち、バインダの結合エネルギーより弱いエネルギーで結合したフッ素化合物を導入させる方法としては、例えば、低分子量のフッ素化合物を導入させる場合は、フッ素系の界面活性剤を混入する方法等を挙げることができ、また高分子量のフッ素化合物を導入させる方法としては、バインダ樹脂との相溶性の高いフッ素樹脂を混合する等の方法を挙げることができる。
【0071】
本発明において光触媒含有層には上記の光触媒、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOLBL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることかでき、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
【0072】
また、光触媒含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
【0073】
光触媒含有層中の光触媒の含有量は、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%の範囲で設定することができる。また、光触媒含有層の厚みは、0.05〜10μmの範囲内が好ましい。
【0074】
上記光触媒含有層は、光触媒とバインダを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディッブコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより光触媒含有層を形成することかできる。
【0075】
(透明基板)
本発明のカラーフィルタの製造方法に用いられる透明基板としては、従来よりカラーフィルタに用いられているものであれば特に限定されるものではないが、例えば石英ガラス、パイレックスガラス、合成石英板等の可とう性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可とう性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。この中で特にコーニング社製7059ガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり寸法安定性および高温加熱処理における作業性に優れ、また、ガラス中にアルカリ成分を含まない無アルカリガラスであるため、アクティブマトリックス方式によるカラー液晶表示装置用のカラーフィルタに適している。本発明において、透明基板は通常透明なものを用いるが、反射性の基板や白色に着色した基板でも用いることは可能である。また、透明基板は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものを用いてもよい。
【0076】
(インクジェット装置)
本発明に用いられるインクジェット装置としては、特に限定されるものではないが、帯電したインクを連続的に噴射し磁場によって制御する方法、圧電素子を用いて間欠的にインクを噴射する方法、インクを加熱しその発泡を利用して間欠的に噴射する方法等の各種の方法を用いたインクジェット装置を用いることができる。中でも、上記圧電素子(ピエゾ素子)を用いたインクジェット装置が好適に用いられる。
【0077】
(画素部)
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、上記光触媒含有層に対してエネルギーをパターン照射することにより、画素部を形成する位置を親液性領域とし、ここに上述したような方法によりインクジェット装置を用いてインクを塗布して画素部を形成するところに特徴を有する。
【0078】
このようなインクジェット装置により形成される画素部は、通常、赤(R)、緑(G)、および青(B)の3色で形成される。本発明において、画素部はストライプ状の画素部が好適に用いられる。また必要に応じてこのストライプ状の画素部は、開口部以外の場所、すなわち遮光部に該当する場所において区切られていてもよい。
【0079】
そして、上述したようなインクジェット装置に用いられるインクとしては、大きく水性、油性に分類される。本発明においてはいずれのインクであっても用いることができる。本発明において好ましい溶剤としては、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートを主成分としたものや、インク反発性を向上させるためジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを主成分としたものが好適に用いられる。
【0080】
本発明で用いられる水性インクには、溶媒として、水単独または水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を用いることがきる。一方、油性インクにはへッドのつまり等を防ぐために高沸点の溶媒をベースとしたものが好ましく用いられる。このようなインクジェット方式のインクに用いられる着色剤は、公知の顔料、染料が広く用いられる。また、分散性、定着性向上のために溶媒に可溶・不溶の樹脂類を含有させることもできる。その他、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤;防腐剤;防黴剤;pH調整剤;消泡剤;紫外線吸収剤;粘度調整剤:表面張力調整剤などを必要に応じて添加しても良い。
【0081】
また、通常のインクジェット方式のインクは適性粘度が低いためバインダ樹脂を多く含有できないが、インク中の着色剤粒子を樹脂で包むかたちで造粒させることで着色剤自身に定着能を持たせることができる。このようなインクも本発明においては用いることができる。さらに、所謂ホットメルトインクやUV硬化性インクを用いることもできる。
【0082】
本発明においては、中でもUV硬化性インクを用いることが好ましい。UV硬化性インクを用いることにより、インクジェット方式により着色して画素部を形成後、UVを照射することにより、素早くインクを硬化させることができ、すぐに次の工程に送ることができる。したがって、効率よくカラーフィルタを製造することができるからである。
【0083】
このようなUV硬化性インクは、プレポリマー、モノマー、光開始剤及び着色剤を主成分とするものである。プレポリマーとしては、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート、オリゴアクリレート、アルキドアクリレート、ポリオールアクリレート、シリコンアクリレート等のプレポリマーのいずれかを特に限定することなく用いることができる。
【0084】
モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル等のビニルモノマー;n−ヘキシルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー;ジエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピペリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能アクリルモノマーを用いることができる。上記プレポリマー及びモノマーは単独で用いても良いし、2種以上混含しても良い。
【0085】
光重合開始剤は、イソブチルベンゾインエーテル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、1−フェニル−l,2−プロパジオン−2−オキシム、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−メチルチオキサントン、塩素置換ベンゾフェノン、ハロゲン置換アルキル−アリルケトン等の中から所望の硬化特性、記録特性が得られるものを選択して用いることができる。その他必要に応じて脂肪族アミン、芳香族アミン等の光開始助剤;チオキサンソン等の光鋭感剤等を添加しても良い。
【0086】
5.その他
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、その他必要に応じて種々のカラーフィルタを構成する部材を製造する工程を有するものであってもよい。
【0087】
(遮光部形成工程)
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、遮光部(ブラックマトリックス)を形成する遮光部形成工程を有するものであってもよい。この遮光部形成工程は、上述した画素部形成工程より前に行われてもよいし、画素部形成工程が行われた後に行われてもよい。
【0088】
このような遮光部形成工程としては、例えばスパッタリング法、真空蒸着法等により厚み1000〜2000Å程度のクロム等の金属薄膜を形成し、この薄膜をパターニングすることにより形成される方法であってもよく、このパターニングの方法としては、スパッタ等の通常のパターニング方法を用いることができる。
【0089】
また、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた遮光部を形成する方法であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。このような樹脂製遮光部の厚みとしては、0.5〜10μmの範囲内で設定することができる。このよう樹脂製遮光部のパターニングの方法は、フォトリソ法、印刷法等一般的に用いられている方法を用いることができる。
【0090】
(保護層形成工程)
本発明のカラーフィルタの製造方法においては、さらに画素部上に保護層を形成する保護層形成工程を行ってもよい。この保護層は、カラーフィルタを平坦化するとともに、画素部、あるいは、画素部と光触媒含有層に含有される成分の液晶層への溶出を防止するために設けられるものである。
【0091】
保護層の厚みは、使用される材料の光透過率、カラーフィルタの表面状態等を考慮して設定することができ、例えば、0.1〜2.0μmの範囲で設定することができる。保護層は、例えば、公知の透明感光性樹脂、二液硬化型透明樹脂等の中から、透明保護層として要求される光透過率等を有するものを用いて形成することができる。
【0092】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0093】
【発明の効果】
本発明においては、このように複数のヘッドが親液性領域のストライプに沿うように配置されており、かつこれら隣り合うヘッドが、その長手方向端部が重なるように配置されている。したがって、隣り合うヘッドが重なり合う部分で、インクの吐出をいずれかのヘッドからとすることにより、ヘッドの繋ぎ目部分の位置を親液性領域毎に変えることが可能となる。これにより、形成された画素部においてヘッド間の繋ぎ目が一直線にならないようにすることができることから、繋ぎ目が目立つことを防止することができる。これにより、ヘッドの繋ぎ目部分が目立つことにより品質不良とされることの無いカラーフィルタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一例を示す概略平面図である。
【図2】従来のカラーフィルタの製造方法の他の例を示す概略平面図である。
【図3】カラーフィルタの製造方法の一例を示す概略平面図であるる。
【図4】従来のカラーフィルタの製造法を説明するための概略平面図である。
【符号の説明】
1…ヘッド
2…親液性領域
3…オリフィス
Claims (5)
- 光触媒含有層が表面に形成された透明基板の光触媒含有層側表面にストライプ状にエネルギーをパターン照射することにより、ストライプ状の親液性領域が形成され、この親液性領域にインクジェット装置でインクを塗布することにより画素部を形成する工程を少なくとも有するカラーフィルタの製造方法において、前記インクジェット装置でインクを塗布する工程が、前記親液性領域のストライプに対して垂直方向に前記インクジェット装置のヘッドが相対的に動いてインクを塗布する工程であり、かつ前記ヘッドが前記親液性領域のストライプに沿うように配置された複数のヘッドで構成されており、さらに隣り合う前記ヘッドの長手方向端部が水平方向に重なるように配置され、またさらに前記隣り合うヘッドの長手方向端部の重なり合う領域に、前記親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部が配置され、これらの遮光部上の光触媒含有層の一部が前記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
- 光触媒含有層が表面に形成された透明基板の光触媒含有層側表面にストライプ状にエネルギーをパターン照射することにより、ストライプ状の親液性領域が形成され、この親液性領域にインクジェット装置でインクを塗布することにより画素部を形成する工程を少なくとも有するカラーフィルタの製造方法において、前記インクジェット装置でインクを塗布する工程が、前記親液性領域のストライプに対して垂直方向に前記インクジェット装置のヘッドが相対的に動いてインクを塗布する工程であり、かつ前記ヘッドが親液性領域のストライプに沿うように水平方向に配置された複数のヘッドで構成されており、さらに前記複数のヘッドの繋ぎ目に相当する位置を、前記親液性領域のストライプに対して交差するように透明基板上に形成された遮光部上の位置とし、前記遮光部上の光触媒含有層の一部が前記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
- 前記親液性領域のストライプに対して交差するように形成された透明基板上の全ての遮光部上の光触媒含有層の一部が、前記親液性領域を区切るように形成された撥液性領域であることを特徴とする請求項2に記載のカラーフィルタの製造方法。
- 前記光触媒含有層が、フッ素を含有し、エネルギー照射によって表面のフッ素含有量が低下するものであることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
- 前記光触媒含有層が、光触媒と、フルオロアルキル基を含有するポリシロキサンとを含むものであることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれかに記載のカラーフィルタの製造方法。
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