JP4985042B2 - 農水産廃棄物を利用した、水域へのケイ素補給用栄養塩組成物の製造システム及び水域の栄養塩環境の改変方法 - Google Patents

農水産廃棄物を利用した、水域へのケイ素補給用栄養塩組成物の製造システム及び水域の栄養塩環境の改変方法 Download PDF

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Description

本発明は、農水産廃棄物等を利用した、水域へのケイ素補給用栄養塩組成物に関するものであり、更に詳しくは、水域の栄養塩環境を珪藻が増殖しやすい環境に改変するための、農産廃棄物であるもみ殻灰と水産廃棄物である貝殻を利用した新しい水域へのケイ素補給用栄養塩組成物の製造システム(製造方法)及び該組成物による水域環境の改変方法に関するものである。本発明は、農産廃棄物であるもみ殻を利用したもみ殻発電の残さとなるもみ殻灰、及び水産廃棄物である貝殻等の炭酸カルシウム資源を利用した水域補給用ケイ素材料を提供するものであり、ケイ素不足水域に該ケイ素材料を供給することにより、水域の生態系において重要な基礎生産者であり、高次生産者の有用な餌である珪藻が増殖しやすい環境にすることが可能な水域へのケイ素補給用材料を提供するものである。
ケイ素は、水域の優先微細藻類である珪藻の必須元素である。大規模ダムの建設や、海域への窒素、リンの負荷増大により、相対的なケイ素欠損が問題視されつつある(非特許文献1−11)。珪藻は、種類にもよるが、海域ではケイ素濃度が2−5μmol/L以下になると、他の栄養塩類(窒素、リン)が十分量あってもその増殖が妨げられる(非特許文献11)。
鞭毛藻類の窒素、リンの取込み速度は、一般に、珪藻よりも低いが、ケイ素が不足すると、珪藻の増殖がさまたげられ、その増殖にケイ素を必要としない鞭毛藻類等にとって有利な環境となる(非特許文献9、10、11)。鞭毛藻類には、魚介類にダメージを与える種が多く、結果として水域の生態系に悪影響を及ぼし、ひいては魚介類の生産低下を引き起こす可能性がある。
水域のケイ素のほとんどは、河川由来であり、粘土鉱物の風化作用等によって、水域へと運ばれる。しかしながら、大規模なダム等が建設されると、ダムの止水中で淡水性の珪藻が増殖し、それまで海域へと運ばれていたケイ素が、ダム湖にトラップされ、海域へのケイ素供給が減少してしまう。
ケイ素が不足した水域へケイ素を供給してやれば、鞭毛藻類の増殖を抑制し、水域の生態系において有用な珪藻を増殖させることが可能であると考えられる。従来、水域へのケイ素及びリンの補給については、先行技術として、例えば、鉄鋼スラグを用いる方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、鉄鋼スラグは、鉱工業の産業廃棄物であるため、その精錬過程において、有害重金属等が混入する恐れがあり、実際の海域への散布には、注意を要する。一方、もみ殻灰及び貝殻は、天然生物由来の材料であり、自然界に回帰させても、問題はないと考えられる。
瀬戸内海では、冨栄養化を防止するために、COD、リン、窒素の総量規制が実施され、一部の海域を除き、冨栄養化は沈静化しつつある。しかしながら、窒素の総量規制に先立ち、リンの総量規制が先行して行われたため、海域全体では植物プランクトンの増殖に必要な栄養塩である窒素が過剰で、リンが不足する事態になっている(非特許文献1)。
また、ダム等の開発により、海域へのケイ素の流入量が減少し、ケイ素不足の海域も増加すると考えられる(非特許文献4−11)。このような栄養塩類の不均衡は、海域生態系の基礎生産に悪影響を与え、有害鞭毛藻類の発生や漁業生産を低下させている一因でもある。
また、東南アジア諸国において盛んに行われている水産養殖の水産養殖場においては、溶存態無機窒素及び溶存態無機リンが過剰であり、溶存態ケイ素が不足しやすい状況となっている(三島、未発表データ)。この様な状況では、珪藻よりも有害な鞭毛藻類や、藍藻が増殖しやすいと考えられる。
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このような状況の中で、本発明者は、上記従来技術に鑑みて、水域の状況に応じ、ケイ素を補給し、栄養塩状態を是正し、珪藻が増殖しやすい環境を整えることを可能とする水域へのケイ素補給材を開発することを目標として鋭意研究を重ねた結果、農産廃棄物のもみ殻灰と水産廃棄物の貝殻粉砕物を利用して作製したケイ素補給用栄養塩組成物からなるケイ素補給材が有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、水域へケイ素を補給して珪藻の増殖を促進する水域補給用栄養塩組成物の製造システム(製造方法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、上記組成物を水域へ供給して、水域の栄養塩環境を珪藻が増殖しやすい環境に改変する方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)水域の優先微細藻類である珪藻の増殖を促進するために水域に補給するケイ素補給用栄養塩組成物であって、主成分としてもみ殻灰と炭酸カルシウム資源の粉砕物である水産廃棄物としての貝殻粉砕物を配合した水域補給用栄養塩組成物を製造する方法であって、もみ殻灰又は硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と炭酸カルシウム源の粉砕物の混合物を焼成することにより水域補給用栄養塩組成物を製造する工程と、酸処理もみ殻灰の作製時に排出される薄い濃度の硝酸含有廃液をCaCO乃至貝殻で中和して液体肥料を製造する工程からなる水域補給用栄養塩組成物の製造方法
(2)もみ殻灰が、農産廃棄物のもみ殻灰又はそれを硝酸で処理した酸処理もみ殻灰である、前記(1)に記載の水域補給用栄養塩組成物の製造方法
(3)もみ殻灰が、もみ殻発電残さのもみ殻灰である、前記(1)に記載の水域補給用栄養塩組成物の製造方法
(4)貝殻ともみ殻灰の混合比が重量比で10:6に調整されている、前記(1)に記載の水域補給用栄養塩組成物の製造方法
(5)前記(1)から(4)のいずれかに記載のもみ殻灰又は硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と炭酸カルシウム源の粉砕物の混合物を焼成することにより水域補給用栄養塩組成物を製造する工程と、酸処理もみ殻灰の作製時に排出される薄い濃度の硝酸含有廃液をCaCO乃至貝殻で中和して液体肥料を製造する工程からなる水域補給用栄養塩組成物の製造方法で製造した水域補給用栄養塩組成物をケイ素源として適用水域に供給し、当該適用水域中に存在する珪藻の増殖を促進させる水域環境に改変することを特徴とする水域の栄養塩環境の改変方法。
(6)リンが過剰である水域においては、硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と貝殻粉砕物の混合物から作製した水域補給用栄養塩組成物をケイ素源として水域に供給する、前記(5)に記載の水域の栄養塩環境の改変方法。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明で用いる組成物は、水域の優先微細藻類である珪藻の増殖を促進するために水域に補給する栄養塩組成物であって、主成分としてもみ殻灰と炭酸カルシウム資源の粉砕物を配合したことを特徴とするものである。
本発明では、もみ殻灰が、農産廃棄物のもみ殻灰又はそれを硝酸で処理した酸処理もみ殻灰であること、もみ殻灰が、もみ殻発電残さのもみ殻灰であること、炭酸カルシウム源の粉砕物が、水産廃棄物である貝殻粉砕物であること、貝殻ともみ殻灰の混合比が重量比で10:6に近づくように調整されていること、を好ましい実施の態様としている。この場合、材料中の可溶性のケイ素濃度に応じて、これらの混合比率を若干変えることも適宜可能である。
また、本発明は、上記の水域補給用栄養塩組成物を製造するシステムであって、もみ殻灰又は硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と炭酸カルシウム源の粉砕物の混合物を焼成することにより水域補給用栄養塩組成物を製造する工程と、酸処理もみ殻灰の作製時に排出される薄い濃度の硝酸含有廃液をCaCO乃至貝殻で中和して液体肥料を製造する工程からなることを特徴とするものである。
また、本発明は、水域の栄養塩環境を改変する方法であって、上記の水域補給用栄養塩組成物をケイ素源として適用水域に供給し、当該適用水域中に存在する珪藻の増殖を促進させる水域環境に改変することを特徴とするものである。本発明では、リンが過剰である水域においては、硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と貝殻粉砕物の混合物から作製した水域補給用栄養塩組成物をケイ素源として水域に供給すること、を好ましい実施の態様としている。
ケイ酸植物である稲は、全世界で栽培され、特にアジア地域では主食として重要な農産物であり、副産物として、稲藁、もみ殻等が産出される。この副産物の中で、もみ殻は、収集コストを削減できることから、タイ、インドネシア等では発電に使用されている。しかしながら、もみ殻には多量のケイ酸が含まれており、発電後に多量のもみ殻灰が残る。また、世界各地では、貝類の漁労、養殖が行われているが、その貝殻の多くは産業廃棄物として処理されている。
本発明では、農産廃棄物であるもみ殻灰と水産廃棄物である貝殻を利用し、水域の栄養塩環境を珪藻が増殖しやすい環境に改変するケイ素補給用材料を作製することであり、作製に当たり、排出される酸性廃液も、液体肥料に変換し、これらの廃棄物を余す所無く利用する方法を提案するものである。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)農産廃棄物であるもみ殻灰及び水産廃棄物である貝殻を有効利用し、水域へケイ素を補給するための水域補給用栄養塩組成物を提供することが可能である。
(2)水域へのケイ素供給は、水域の有用な基礎生産者である珪藻が増殖しやすい環境を整えることを可能とする。
(3)本発明では、ケイ素供給材料を作製する際に排出される酸廃液も肥料として有効利用することが可能である。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
本実施例では、もみ殻発電に利用したもみ殻灰等として、広島県の農家から入手したもみ殻を電気炉中で900℃、2時間燃焼処理したもの使用した。また、貝殻は、広島県産のカキ殻を利用した。両者を、乳鉢、乳棒及びフードミキサーで粉砕した。
(1)酸処理もみ殻灰の作製
もみ殻灰に重量の10倍量の0.1N−HNOを加え、24時間室温で放置した後、遠心分離により上澄みを除去した。その後、蒸留水で3回洗浄し、90℃のオーブンで乾燥させて酸処理もみ殻灰を作製した。
(2)もみ殻灰とカキ殻の混合割合
もみ殻の乾重量当たりの灰分、ケイ酸(SiO)濃度は、22.5%及び21.8%であるので、もみ殻灰当たりのケイ酸含有量は96.9%となる。また、貝殻の主成分はCaCOである。
SiOとCaCOを混合し、強熱処理した場合の化学反応は、以下であると考えられる。
CaCO→CaO+CO
CaO+SiO→CaSiO+CO
よって
CaCO+SiO→CaSiO+CO
本化学式通りであれば、貝殻ともみ殻灰の混合比率は重量比で10:6となる。CaCOは約900℃でCaOとCOに解離する。しかしながら、CaOの融点は2570℃、SiO(石英ガラス)の軟化点は1650℃であり、完全に反応を進行させるには、非常に高温で反応させなければならない。このような高温での反応はコスト的にも非現実的であり、もみ殻発電などで発生する熱を利用する場合900℃程度が現実的であると考えられる。
本実施例では、これら化学反応が完全には進まないであろうが、貝殻ともみ殻灰の混合比率は重量比で10:6として、ケイ素供給材料を作製した。
(3)ケイ素供給材料の作製
カキ殻ともみ殻灰、及びカキ殻と酸処理もみ殻灰を、それぞれ、少量の蒸留水とともによく混合し、磁製るつぼに入れ、900℃で1時間焼成した。焼成後、これらを乳ばち、乳棒で粉砕した。カキ殻ともみ殻灰を混合した物を材料A、カキ殻と酸処理もみ殻灰を混合した物を材料Bとした。もみ殻灰、酸処理もみ殻灰、カキ殻、材料A及び材料Bの写真を図1に示した。
図1に示した様に、もみ殻灰のみかけの比重は低く、酸処理をすることにより、約0.5g/cmから、約0.6g/cmへと若干減容できた。また、焼成後の材料A及びBともに、約0.6g/cmであり、貝殻ともみ殻灰の重量比率10:6であるにもかかわらず、みかけの比重は酸処理もみ殻灰とほぼ同程度であった。
(4)各材料及びケイ素供給材料の元素組成
本実施例に用いた材料の元素組成を表1に示す。表より、これら実験材料に含まれる有害重金属類(鉛、カドミウム、クロム)の濃度は非常に低いことが解る。特に、酸処理を行うことにより、もみ殻の重金属及びリンの濃度は減少した。また、ケイ素供給材料中の硝酸可溶性のケイ素濃度は40mg/g程度となった。
(5)ケイ素供給材料の海水中への溶出実験1
材料A及びBを広島湾海水(塩分濃度31.2psu)に25mg/Lになるように加え、室温(20℃程度)24時間振とうし、重金属類、リン、ケイ素の溶出量を測定した。その結果を表2に示す。材料A,Bともに重金属類の溶出は検出限界以下であった。
また、25mg中に存在する硝酸可溶性ケイ素は、約1mgであるので、そのほとんどが24時間以内で海水中へと溶出することが分かった。1mg/LのSiはモル濃度に換算すると、35μmol/Lとなり、水域で珪藻が増殖するためには十分なケイ素濃度(2μmol/L以上、非特許文献11)となる。
一方、材料Aでは、リンの溶出は、0.08mgであり、モル濃度に換算すると、2.6μmol/Lとなってしまう。リンが過剰である水域においてケイ素を供給する場合は、材料Bを用いなければならない。
(5)ケイ素供給材料の海水中への溶出実験2
2Lポリ瓶に、もみ殻灰、酸処理もみ殻灰、貝殻粉砕物、貝殻焼成物(CaOを主成分とする)、材料A、材料Bを広島湾ろ過海水中(初期pH=8.08、溶存態無機リン(DIP)=0.80μmol/L、溶存態ケイ素(D−Si)=34.8μmol/L)に25mg/Lとなるように加え、室温(20℃程度)において、マグネチックスターラーで撹拌しながら培養し、定期的に海水試料を採取し、海水のpH、DIP、D−Si濃度を測定した。
結果を、図2に示す。図中のpH、DIP、D−Si濃度は、ブランク実験との差で示している。D−Si濃度は、材料A,Bで培養開始直後からすみやかに溶出し、他の物はほとんど溶出しなかった。材料A,B中の可溶性ケイ素の濃度は、約40mg/gであるので、25mg中には1mg(36μmol)のケイ素が含まれている。20時間で可溶性ケイ素の約60%が、1週間で約80%が溶出したことになる。
DIP濃度は、材料A,Bで、培養直後(5時間)に若干溶出したが、その後はほとんど溶出しなかった。材料A,B中のリンの濃度は、それぞれ1.5、0.61mg/gであるので、25mg中には、それぞれ37.5μg(1.2μmol)、15.3μg(0.49μmol)のリンが含まれている。5時間で可溶性リンのそれぞれ約20%、32%が、1週間で約29%、40%が溶出したことになる。もみ殻灰では、リン濃度が徐々に上昇し、1週間で0.8μmol/L上昇した。
pHは、材料A,Bで、培養直後(1−5時間)に0.2程度上昇したが、その後はほぼ一定の値であった。海水のpHは現場の植物プランクトンによる生産等で容易に変化する。0.2程度の変化は、水域生態系にダメージを与えるほど大きな変化ではないと考えられる。
本実施例におけるケイ素及びリンの溶出挙動は、表2に示した結果とは若干異なる結果である。表2の結果は、24時間激しく振とう、抽出した結果であり、現場海域では、本実施例の様に、比較的ゆるやかな、溶出挙動を示すと考えられる。
本実施例の様に、材料A及びBを用いることにより、水域で珪藻が増殖するためには、十分なケイ素濃度(2μM以上、非特許文献11)にすることが可能である。一方、両者ともリンの溶出は非常に小さい値であったが、材料Aでは表2に示す様に、潜在的には、多量にリンを溶出させる能力があるので、リンが過剰である水域においてケイ素を供給する場合は、材料Bを用いなければならない。
(7)もみ殻灰酸処理廃液の利用
もみ殻灰の酸処理は、薄い硝酸を使用している。廃液はCaCOが主成分である貝殻で簡単に中和することが可能である。表2に示した様に、もみ殻灰、貝殻中には有害金属類(鉛、カドミウム、クロム)がほとんど含まれておらず、鉄、亜鉛、銅等の必須微量金属類を若干含有している。酸処理廃液の中和液は、窒素、リン、カリウム及び微量金属類を含有し、液体肥料として、農業へ利用することが可能である。
以上詳述したように、本発明は、農水産廃棄物等を利用した、水域へのケイ素補給用組成物の製造システムに係るものであり、本発明により、農産廃棄物であるもみ殻灰及び水産廃棄物である貝殻を有効利用し、水域へケイ素を補給するための水域補給用栄養塩組成物を提供することが可能である。水域へのケイ素供給は、水域の有用な基礎生産者である珪藻が増殖しやすい環境を整えることを可能とする。しかも、本発明では、ケイ素供給材料を作製する際に排出される酸廃液も肥料として有効利用することが可能である。本発明は、水域の生態系において重要な基礎生産者であり、高次生産者の有用な餌である珪藻が増殖しやすい環境にするためのケイ素補給用栄養塩組成物の製造システム及び水域改変方法を提供するものとして有用である。
もみ殻灰、酸処理もみ殻灰、ガキ殻、材料A及び材料Bの写真を示す。 ケイ素供給材料の海水中への溶出実験の結果(海水のケイ素、リンの濃度、pH値)を示す。

Claims (6)

  1. 水域の優先微細藻類である珪藻の増殖を促進するために水域に補給するケイ素補給用栄養塩組成物であって、主成分としてもみ殻灰と炭酸カルシウム資源の粉砕物である水産廃棄物の貝殻粉砕物を配合した水域補給用栄養塩組成物を製造する方法であって、もみ殻灰又は硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と炭酸カルシウム源の粉砕物の混合物を焼成することにより水域補給用栄養塩組成物を製造する工程と、酸処理もみ殻灰の作製時に排出される薄い濃度の硝酸含有廃液をCaCO乃至貝殻で中和して液体肥料を製造する工程からなる水域補給用栄養塩組成物の製造方法
  2. もみ殻灰が、農産廃棄物のもみ殻灰又はそれを硝酸で処理した酸処理もみ殻灰である、請求項1に記載の水域補給用栄養塩組成物の製造方法
  3. もみ殻灰が、もみ殻発電残さのもみ殻灰である、請求項1に記載の水域補給用栄養塩組成物の製造方法
  4. 貝殻ともみ殻灰の混合比が重量比で10:6に調整されている、請求項1に記載の水域補給用栄養塩組成物の製造方法
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のもみ殻灰又は硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と炭酸カルシウム源の粉砕物の混合物を焼成することにより水域補給用栄養塩組成物を製造する工程と、酸処理もみ殻灰の作製時に排出される薄い濃度の硝酸含有廃液をCaCO乃至貝殻で中和して液体肥料を製造する工程からなる水域補給用栄養塩組成物の製造方法で製造した水域補給用栄養塩組成物をケイ素源として適用水域に供給し、当該適用水域中に存在する珪藻の増殖を促進させる水域環境に改変することを特徴とする水域の栄養塩環境の改変方法。
  6. リンが過剰である水域においては、硝酸で処理した酸処理もみ殻灰と貝殻粉砕物の混合物から作製した水域補給用栄養塩組成物をケイ素源として水域に供給する、請求項5に記載の水域の栄養塩環境の改変方法。
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