JP4166407B2 - 珪藻類増殖用珪素溶出材料 - Google Patents

珪藻類増殖用珪素溶出材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、種々の形状及び大きさに成形し、あるいは、他の基体に担持させ、海中の有光層や陸上の培養設備等の海水中に散布し、配置し、あるいは人工漁礁等として設置し、その周辺に珪藻類を増殖させるために用いる材料に関し、特に、シャットネラ等のラフィド藻(緑色鞭毛藻類)やギムノディニウム等の渦鞭毛藻類等による有害赤潮の発生を防止したり、真珠貝(アコヤガイ、マベガイ、シロチョウガイ等)、カキ、ホタテ等の二枚貝の養殖に必要な珪藻類を増殖させたり、あるいは、ヘテロカプサ等の渦鞭毛藻類等による貝毒の発生を防止するのに有用な珪藻類増殖用珪素溶出材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、海水中に散布し、配置し、あるいは人工魚礁等として設置されて珪素分を溶出する材料として、幾つかのガラス質材料を提案した。
例えば、特許第 2,577,319号掲載公報においては、珪素(Si)、ナトリウム(Na)及び/又はカリウム(K) 、及び鉄(Fe)をそれぞれSiO2換算で30〜70重量%、Na2O及び/又はK2O (以下「Na2O:K2O」と略記する)換算で10〜50重量%、及び Fe2O3換算で5〜50重量%の割合で含有し、二価の鉄の含有量が1重量%以上であるガラス質材料(SiO2-Na2O:K2O-Fe2O3(FeO)系ガラス質材料)、あるいは、 このガラス質材料に対して更にP2O5換算で1〜30重量%のリン(P) を、 及び/又は、 MnO換算で0.1〜5重量%のマンガン(Mn)をそれぞれ添加してなるガラス質材料が提案されており、藻場に集まる魚介類の育成や増殖に有用であることが開示されている。
【0003】
また、特開平 10-94,341号公報には、(イ)珪素及びナトリウムをそれぞれSiO2換算で45〜75重量%及びNa2O換算で25〜55重量%の割合で含有するガラス質材料(SiO2-Na2O 系ガラス質材料)、(ロ)珪素、ナトリウム及び/又はカリウム、及び鉄をそれぞれSiO2換算で30〜70重量%、Na2O:K2O換算で10〜50重量%、及び Fe2O3換算で5〜50重量%の割合で含有し、二価の鉄の含有量が1重量%以上であるガラス質材料(SiO2-Na2O:K2O-Fe2O3(FeO)系ガラス質材料)、(ハ)上記(ロ)のガラス質材料に更にP2O5換算で1〜30重量%のリンを含有するガラス質材料(SiO2-Na2O:K2O-Fe2O3(FeO)-P2O5 系ガラス質材料)、(ニ)上記(ロ)又は(ハ)のガラス質材料に更に MnO換算で0.1〜5重量%のマンガンを含有するガラス質材料(SiO2-Na2O:K2O-Fe2O3(FeO)-MnO系又はSiO2-Na2O:K2O-Fe2O3(FeO)-P2O5-MnO 系ガラス質材料)、及び、(ホ)珪素、硼素(B) 、二価の鉄、三価の鉄、ナトリウム、及びカリウムをそれぞれSiO2換算で20〜50重量%、B2O3換算で40〜60重量%、 FeO換算で1〜10重量%、 Fe2O3換算で1〜10重量%、Na2O換算で0〜10重量%、及び K2O換算で0〜15重量%の割合で含有し、Na2OとK2O の合計量が5〜20重量%であるガラス質材料(SiO2-Na2O-K2O-FeO-Fe2O3-B2O3系ガラス質材料)が提案されており、これらのガラス質材料を使用して珪藻類の増殖を促進させ、また、優占させることにより鞭毛藻類の増殖を継続的に抑制せしめ、有害赤潮の発生を未然に防止することが開示されている。
【0004】
更に、WO98/24,298号公報には、水中に二価の鉄イオンを溶出可能であって、SiO2:15〜50重量%、Na2O:K2O:1〜35重量%、B2O3:30〜70重量%、及び、FeO 及び/又はFe2O3 (以下「FeO:Fe2O3 」と表記する):1〜40重量%を主成分とするガラス質材料(SiO2-Na2O:K2O-FeO:Fe2O3-B2O3系ガラス質材料)が提案されており、有用な海藻類や植物プランクトン等の藻類を増殖させることが開示されている。
【0005】
そして、これらのガラス質材料は、特開平 10-94,341号公報記載の珪素溶出を目的としたSiO2-Na2O 系ガラス質材料を除き、そのいずれも藻類を増殖させるのに有効な成分、 特に珪素分や鉄分を海水中に溶出させ、これによって藻場に集まる魚介類の育成や増殖に有用な藻類を増殖させたり、あるいは、珪藻類の増殖を促進させ、鞭毛藻類の増殖を抑制して有害赤潮の発生を未然に防止したり、更には、有用な海藻類や植物プランクトン等の藻類を増殖させるものであって、それぞれ初期の目的を達成するものである。
【0006】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、SiO2-Na2O 系ガラス質材料においては、周囲の海水中の水素イオン濃度がpH9未満であると、ナトリウムイオンと水素イオンとのイオン交換が優先して珪素分の溶出が低調であり、また、水素イオン濃度がpH9以上になると、周囲の水酸化物イオン(OH- )によるガラス骨格への攻撃が始まって急激に珪素分の溶出が進むようになる。
【0007】
このため、SiO2-Na2O 系ガラス質材料については、海流等の影響にもよるが、海水中に浸漬後3〜5日間は珪素分の溶出が少なく、珪素分の溶出が始まるまでに約1週間程度のタイムラグが生じてしまい、例えば有害赤潮の発生の兆候がみられて早急に珪素分を供給する必要があるような場合には全く対応できないこともあり、また、海水中に浸漬後1週間程度経過して珪素分の溶出が始まると、急激に珪素分の溶出が始まって周囲の海水中に溶けきれなくなり、その結果ゲル状シリカが発生し、例えば水槽で使用する場合にはその底部に堆積して汚染の原因になり、また、使用場所によっては配管等を閉塞する等の問題も引き起こす場合もあり、珪素分を溶出させるための材料としては使い難いという問題がある。
【0008】
また、藻類は、海水中に含まれる各種の成分を摂取して増殖するが、この様な成分として窒素やリンの他に珪素分、鉄分、マンガン等の成分も必要であるといわれており、特に二価の鉄イオンが溶存しているとその増殖効果が大きいとされている。このため、珪素分や鉄分等を海水中にバランス良く溶出するSiO2-Na2O 系以外のガラス質材料については、特に藻類の生育に有効であるといわれる鉄分が溶出されるため、一般的には良好な藻類の増殖が達成される。
【0009】
しかるに、海水中に珪素分が豊富に存在する環境下では殻の形成に珪素を必要とする珪藻類が優占的に増殖し、珪素分が優先的に消費されて徐々に珪素分が不足してくる傾向にあり、加えて、沿岸海域においては生活廃水や工業排水に起因して海水中の窒素やリン等の栄養塩が増加し、富栄養化が進んでいると共に陸上から雨水等に伴って供給される珪素分も低下しており、一般に窒素やリン等の栄養塩に対して相対的に珪素分が過度に不足し、鞭毛藻類や渦鞭毛藻類が増殖し易い環境になっている。
【0010】
このため、藻類増殖に有効な成分、特に鉄分を溶出するガラス質材料を比較的富栄養化が進んだ沿岸海域で用いると、珪素分が枯渇し、また、珪素分以外の他の栄養塩が相対的に過剰になり、用いたガラス質材料から溶出される鉄分が引き金となって鞭毛藻類や渦鞭毛藻類が異常に増殖し、結果として有害赤潮の発生や貝毒の発生が起こり易いという問題がある。
【0011】
このため、有害赤潮が発生し易い海域や二枚貝の養殖を行なう海域等においては、ゲル状シリカを生成することなく海水中に安定してかつ効率的に珪素分のみを溶出し、特に鉄分については実質的に溶出しない珪藻類増殖用の珪素溶出材料が必要であり、かかる珪素溶出材料の開発が要請されていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、この様な珪藻類増殖用珪素溶出材料について鋭意検討した結果、Na2O及び/又はK2O を所定の割合で含むと共にSiO2とB2O3とを所定のモル比(SiO2/B2O3)で含有する特定のSiO2-B2O3-Na2O:K2O系ガラス質材料が、海水中での珪素分の溶出性に優れていると共に、ゲル状シリカを生成せずに使用し易く、また、実質的に鉄分を溶出しないことを見出し、本発明を完成した。
【0013】
従って、本発明の目的は、使い易くしかも実質的に鉄分を溶出せず、海水中で珪素分を効率良く溶出する珪藻類増殖用珪素溶出材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、SiO2-B2O3-Na2O:K2O系ガラス質材料からなり、Na2O及び/又はK2O を5モル%以上20モル%以下の割合で含むと共にSiO2とB2O3とのモル比(SiO2/B2O3)が0.5以上2.0以下であって、実質的に鉄分を含まない珪藻類増殖用珪素溶出材である。
【0015】
本発明において、ガラス質材料を構成するNa2O及び/又はK2O 、すなわちアルカリ分(Na2O:K2O)は、このガラス質材料中に5モル%以上20モル%以下の割合で含まれていることが必要であり、好ましくは7モル%以上12モル%以下の割合で含まれているのがよい。このアルカリ分の割合が5モル%より少ないと、ガラス質材料が硬くなり過ぎ、溶融し難くなり、珪藻類増殖用珪素溶出材料として所定の形状に成形するのが難しくなり、反対に、20モル%より多くなると、珪素分の溶出量が低下して目的とする珪藻類増殖用珪素溶出材料とするのが難しくなる。
【0016】
また、ガラス質材料を構成するSiO2とB2O3については、これら両者間のモル比(SiO2/B2O3)が0.5以上であって2.0以下である必要があり、好ましくは0.75以上1.5以下であるのがよい。このモル比(SiO2/B2O3)が0.5より小さくなると、海水中への珪素分の溶出速度は増すものの、ガラス質材料中に含まれる珪素分の含有量が少なくなり過ぎ、必然的に寿命が短くなって長期間に亘って安定的に珪素分を溶出させるのが難しくなり、反対に、2.0より大きくなると、海水中への珪素分の溶出速度が低下し、一定の海域に所定量の珪素分を溶出させるのにあまりにも多量のガラス質材料が必要になり、現実的でない。
【0017】
従って、本発明のガラス質材料を構成するSiO2とB2O3とは、計算上概ね、SiO2が26〜64モル%、好ましくは34〜57モル%の割合であって、B2O3が64〜26モル%、好ましくは54〜32モル%の割合である。
上記アルカリ分(Na2O:K2O)及びSiO2とB2O3との間のモル比(SiO2/B2O3)を三元系組成図で示すと、図1の通りであり、斜線部分が本発明のガラス質材料の範囲であって、この斜線部分の中の網かけ部分が好ましい範囲である。
【0018】
ここで、ガラス質材料におけるガラス構造に着目してみると、本発明のSiO2-B2O3-Na2O:K2O系ガラス質材料の場合、その種々の物性がB2O3とNa2O:K2Oとの比に影響される。 すなわち、 ガラス構造に着目すると、 SiO2-B2O3-Na2O:K2O系ガラス質材料は、そのアルカリ分(Na2O:K2O)の増加に伴って、一部の硼素の配位数が3配位→4配位→3配位と変化するが、4配位硼素の割合が最大のとき((Na2O:K2O)/B2O3が約0.4のとき)に構造が最も丈夫になって珪素分が溶出し難くなり、また、非架橋酸素の生成により3配位化した場合には結晶化が起こってガラス化が困難になる。そこで、このSiO2-B2O3-Na2O:K2O系ガラス質材料においては、硼素分の溶出性を考慮すると、結果としてアルカリ分(Na2O:K2O)とB2O3のモル比((Na2O:K2O)/B2O3)が0.4未満であるのがよく、通常は0.1≦(Na2O:K2O)/B2O3<0.4の範囲内であり、好ましくは0.1≦(Na2O:K2O)/B2O3≦0.35の範囲内であるのがよい。
【0019】
従って、本発明のガラス質材料の設計に際しては、その使用目的や海域の環境を考慮して、基本的には上記アルカリ分(Na2O:K2O)の含有量及びSiO2とB2O3とのモル比(SiO2/B2O3)の範囲内で決定されるが、好ましくは上記アルカリ分(Na2O:K2O)とB2O3のモル比((Na2O:K2O)/B2O3)を考慮して決定するのがよい。
【0020】
本発明の珪藻類増殖用珪素溶出材においては、ガラス質材料中に実質的に鉄分(FeO:Fe2O3) を含まないことが必要である。ここで、「実質的に含まない」とは、ガラス質材料の製造の際に意識的に添加しないという意味であり、使用するガラス製造用原料やガラス製造工程から不可避的に混入する鉄分を排除するものではないが、その含有量はガラス質材料の一般的な製造上不可避的に混入する可能性のある量の0.05モル%以下であるのが好ましい。鉄分が珪素濃度の低い海水中に添加されると、鞭毛藻類や渦鞭毛藻類が異常増殖し、その結果として有害赤潮が発生する原因にもなりかねない。
【0021】
また、本発明の珪藻類増殖用珪素溶出材においては、リン、マンガン、マグネシウム等のその他の第四成分について、適用される海域の海水中に藻類の増殖にとって足りない成分を添加することが可能である。
【0022】
本発明のガラス質材料は、珪素、硼素、ナトリウム及び/又はカリウムを含む公知のガラス製造用原料を用い、これらを所定の割合で混合した後、例えば1200〜1500℃の高温で20〜120分間加熱する等の高温加熱下の条件で溶融し、次いで冷却するという公知の方法により製造することができる。
【0023】
また、このガラス質材料については、多孔質化してその表面積を大きくし、これによって更に溶出速度を高めるようにしてもよく、この多孔質化の方法としても公知の方法を採用することができ、例えば、上記の方法で形成されたガラス質材料の粉末に炭化珪素粉末、炭素粉末、炭酸カルシウム粉末等の発泡性材料を所定の割合で配合し、これを600〜900℃で5〜60分程度加熱溶融する方法や、上記の方法でガラス質材料を形成する際に空気や、窒素等の不活性ガスを吹き込む方法等が挙げられる。
【0024】
この様なガラス質材料を用いて形成される本発明の珪藻類増殖用珪素溶出材は、その使用目的や海水中に浸漬した際の寿命等を考慮し、所定の形状及び大きさに成形され、あるいは、他の基体に担持させることにより製造される。例えば、粒径1〜100mmφ、好ましくは2〜10mmφの球状あるいは破砕形状に形成したり、あるいは、粉末状、粒状、塊状等の形状やその他適当な大きさのプレート状、シート状等の形状に形成したり、若しくは、コンクリート構造物、鋼材、石材、建築廃棄物、天然岩場等の適当な基体に担持させ、海中の有光層や陸上の培養設備等の海水中に散布し、配置し、あるいは人工魚礁等として設置し、その周辺に珪藻類を増殖させるために用いられる。
【0025】
本発明の珪藻類増殖用珪素溶出材については、有害赤潮の発生防止、二枚貝養殖のための珪藻類プランクトンの増殖、貝毒の発生防止等の使用目的によっても異なるが、例えば有害赤潮の発生防止のためには、これを効果的に達成するために、2〜3カ月間に亘って海水中に所定の濃度を例えば5μM/リットル以上の濃度に保つ。
【0026】
また、本発明の珪藻類増殖用珪素溶出材は、その使用目的や周辺海域の海水中溶存元素の種類とその量等に応じて、鉄分や、リン、マンガン、マグネシウム等の他の成分(第四成分)を溶出するガラス質材料と併用し、珪素分に加えて海水中に制御された量の鉄分や第四成分を溶出させるようにしてもよい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
【0028】
〔実施例1〜12及び比較例1〜5〕
ガラス製造用原料として珪砂、炭酸ナトリウム、及び酸化ホウ素を使用し、得られたガラス質材料中のSiO2、B2O3、及びNa2Oが表1に示す組成となるようにミキサー中で混合し、この混合物を予め1200〜1500℃に予熱しておいた電気炉に入れて60分間加熱溶融させ、次いで得られた溶融物を鉄板上に流延して冷却し、更に1.0〜1.4mmφの大きさに粉砕し、SiO2-B2O3-Na2O系ガラス質材料からなる破砕形状の実施例1〜12及び比較例1〜5に係る珪藻類増殖用の珪素溶出材を調製した。
【0029】
【表1】
Figure 0004166407
【0030】
得られた各実施例及び比較例の珪素溶出材について、Na2O:15,500ppm、 K2O:1,100ppm 、 CaO:740ppm、 MgO:1,900ppm、 Cl:20,400ppm、 及びSO4:2,900ppmの組成を有する人工海水中に5g/リットルの割合で、また、20℃の条件で浸漬し、各珪素溶出材から溶出される珪素分(SiO2)を経時的に測定した。
【0031】
表1に示す実施例1及び比較例1の各珪素溶出材について、1日後、3日後、7日後、14日後、及び28日後にそれぞれ測定された溶出珪素分(SiO2)濃度を図2に示す。
【0032】
この図2に示す結果から明らかなように、比較例1の珪素溶出材は、3日後迄は珪素分の溶出が少なく、その後7日後まで急激に珪素分の溶出が起こり、21日目に飽和状態に近ずいて溶出速度が小さくなってきたのに対し、実施例1の珪素溶出材は、浸漬後1日後から28日後までほぼ一定の速度で珪素分が溶出されている。
また、比較例1の珪素溶出材については、5日後から難溶解性のゲル状シリカの発生が観察されたのに対し、実施例1の珪素溶出材においてはこの様なゲル状シリカの発生は皆無であった。
【0033】
次に、表1に示す実施例1〜6及び比較例2〜5の各珪素溶出材について、アルカリ分(Na2O)含有量を横軸に、また、浸漬3日後の溶出珪素分(SiO2)濃度を縦軸にしてそれぞれプロットし、ガラス質材料中のアルカリ分(Na2O)含有量が溶出珪素分(SiO2)濃度に及ぼす影響を調べた。結果を図3に示す。
【0034】
この図3の結果から、アルカリ分含有量と溶出珪素分濃度との関係はほぼ逆比例し、アルカリ分含有量が低いと珪素溶出速度が速く、アルカリ分含有量が増すにつれて珪素溶出速度が低下することが判明した。
【0035】
更に、表1に示す実施例1〜12及び比較例2〜5の各珪素溶出材について、SiO2とB2O3のモル比(SiO2/B2O3)を横軸に、また、浸漬3日後の溶出珪素分(SiO2)濃度を縦軸にしてそれぞれプロットし、ガラス質材料中のSiO2とB2O3のモル比(SiO2/B2O3)が溶出珪素分(SiO2)濃度に及ぼす影響を調べた。結果を図4に示す。
【0036】
この図4の結果から、ガラス中の硼酸濃度が高いとガラスは海水に溶け易く、逆に、珪素濃度が高いとガラスの構造が強くなり、溶出しずらくなることがわかる。また、SiO2とB2O3のモル比(SiO2/B2O3)が0.5未満では、硼酸濃度が高くて溶け易く、初期の溶出濃度は高くなるが、長期間にわたる計算の溶出が期待できなくなり、反対に、このモル比(SiO2/B2O3)が2を超えると、海水中の珪酸濃度を所定の濃度にすることが難しくなる。
【0037】
Na2Oの含有量では、4モル%では液相温度が高く、ガラス生産時の生産効率が悪く、また、25モル%では珪酸の溶出量が少なく、珪藻の増殖を図るには大量のガラスが必要になる。
以上のことから、経済的で生産性がよく、溶出効果に優れた範囲は、アルカリ分(Na2O:K2O)が5モル%以上20モル%以下の範囲であって、SiO2とB2O3のモル比(SiO2/B2O3)が0.5以上2.0以下の範囲である。
【0038】
〔試験例1〕
上記実施例1、4、及び7で得られた珪藻類増殖用珪素溶出材を使用し、粒度1.0〜1.4mmの大きさの粒状に調製し、人工海水中に5g/リットルの割合で添加し、保管温度20℃で7日間、14日間及び21日間に各珪素溶出材から溶出される珪素分(SiO2)を測定した。
結果を図5に示す。
この図5の結果から明らかなように、各実施例の珪素溶出材は安定して珪素分(SiO2)を溶出することが判明した。
【0039】
【発明の効果】
本発明の珪藻類増殖用珪素溶出材料は、海水中での珪素分の溶出性に優れていると共に、ゲル状シリカを生成せずに使用し易く、また、実質的に鉄分を溶出しないので、この珪素溶出材料を単体で、あるいは、他の第四成分を溶出するガラス質材料等と組み合わせて使用することにより、藻類を増殖させ、優占させることによって鞭毛藻類や渦鞭毛藻類等による有害赤潮の発生を防止したり、二枚貝の養殖に必要な珪藻類プランクトンの増殖に用いたり、あるいは、貝毒の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のガラス質材料のアルカリ分(Na2Oとして)及びSiO2とB2O3との間のモル比(SiO2/B2O3)の関係を示す三元系組成図である。
【図2】 図2は、実施例1及び比較例1の各珪素溶出材における溶出珪素分濃度の経時変化を示すグラフ図である。
【図3】 図3は、実施例1〜6の各珪素溶出材におけるガラス質材料中アルカリ分(Na2O)含有量と浸漬3日後溶出珪素分濃度との関係を示すグラフ図である。
【図4】 図4は、各実施例及び比較例の珪素溶出材におけるSiO2とB2O3のモル比(SiO2/B2O3)と浸漬3日後溶出珪素分濃度との関係を示すグラフ図である。
【図5】 図5は、実施例1、4、及び7の各珪素溶出材における溶出珪素分濃度の経時変化を示すグラフ図である。

Claims (3)

  1. SiO2-B2O3-Na2O/K2O系ガラス質材料からなり、Na2O及び/又はK2O を5モル%以上20モル%以下の割合で含むと共に、SiO2とB2O3のモル比(SiO2/B2O3)が0.5以上2.0以下であって、実質的に鉄分を含まないことを特徴とする珪藻類増殖用珪素溶出材料。
  2. Na2O及び/又はK2O とB2O3のモル比が0.4未満である請求項1に記載の珪藻類増殖用珪素溶出材料。
  3. 鉄分がFeO 及び/又はFe2O3 であり、その含有量が0.05モル%以下である請求項1又は2に記載の珪藻類増殖用珪素溶出材料。
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