JP4983339B2 - 化粧シートおよび化粧材 - Google Patents

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Description

本発明は、住宅等の建築物の内外装材、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器、家電製品などの表面化粧等に使用するための化粧シートおよび化粧材に関するものであり、さらに詳しくは、柔軟性に優れラッピングラミネートまたは真空成型ラミネート等の立体成形用途にも好適であり、燃焼エネルギーが小さいことにより難燃性を損なうことなく、好ましくは植物由来プラスチックのポリサクシネート樹脂を主原料とし焼却時にも有毒ガスを発生せず地球環境と人体に優しい化粧シートおよび化粧材に関するものである。
係る樹脂系の化粧シートとしては、絵柄の印刷を熱可塑性樹脂シート基材の表面側又は裏面側に施した単層構成の化粧シートと、絵柄層をその裏面側の熱可塑性樹脂シート基材と表面側の透明樹脂層との間に挟持した複層構成の化粧シートとがある。前者は構造が単純なので安価かつ簡便に製造可能である利点があり、後者は製造面や価格面からはやや不利ではあるが、絵柄が表裏両面から保護されているので、絵柄の耐磨耗性、耐溶剤性、耐候性等の表面物性と、被貼着基材への接着時に使用する接着剤に対する耐性とを兼ね備え、また意匠面からも、シート基材の着色による高隠蔽化と、透明樹脂層へのエンボス加工による高意匠化とを両立できる等、性能面では多くの利点がある。係る関係により、両者は用途により要求される性能や価格に応じて使い分けられている。
従来この種の化粧シートに使用される熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル共重合体樹脂などが該化粧シートのシート基材又はそのシート基材表面の透明樹脂層などとして使用される。例えば化粧シートのシート基材には、紙または熱可塑性樹脂シートを使用し、これに印刷を施してなる印刷シートがそのまま用いられたり、表面保護層および/または意匠表現層として前述の透明樹脂層が設けられたりして、木材合板、木質繊維板、パーティクルボードなど木質系基材の表面に貼合され使用される。また特にラッピング加工適性としての化粧シートの柔軟性を必要とするパネル材および縁材には塩化ビニル樹脂やポリオレフィン樹脂などの柔軟性に優れる樹脂材料が使用されてきた。
上記した各種の樹脂系の化粧シートのシート基材や透明樹脂層の構成材料としては従来、安価で加工適性や物性にも優れたポリ塩化ビニル樹脂が最も多用されて来たが、近年では環境問題に対する社会的な関心の高まりを受けて、環境への悪影響の少ないポリ塩化ビニル樹脂以外の樹脂、例えばポリオレフィン系熱可塑性樹脂を使用した化粧シート等も開発され、提案されている(特許文献1参照)。
上記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を使用した化粧シートは、化粧シートの被貼着基材へのラミネート加工やVカット加工等の二次加工上要求される柔軟性や耐白化性等の面では、従来のポリ塩化ビニル樹脂とほぼ同等の性能が比較的容易に得られるので、現在では各種のポリ塩化ビニル樹脂の代替材料の中では最も有望視されている。しかしながらその反面、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂は同等の柔軟性のポリ塩化ビニル樹脂と比較して表面硬度が低く、表面の耐傷付き性に劣る傾向がある。
これに対し、ポリエステル系熱可塑性樹脂を使用した化粧シートも各種提案されている。ポリエステル系熱可塑性樹脂として最も一般的なポリエチレンテレフタレート樹脂等は、引っ張り弾性率が4GPa前後と、化粧シート用としては柔軟性に乏し過ぎ加工性が劣るため、各種の共重合成分の添加による軟質化の為の改質が試みられており、例えば冷結晶化温度とガラス転移温度との差が60℃以下の共重合ポリエステルからなり冷結晶化温度以上融点以下の準結晶融解ピーク温度を有し引っ張り弾性率が1〜500MPaである柔軟性ポリエステルフィルムを使用した化粧シートが提案されている(特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
しかし、上記した柔軟性ポリエステルフィルムは、Vカット等の折り曲げ加工による白化や破断等の問題は解消されたものの、その柔軟性ゆえに表面硬度が低く、耐傷付き性に劣るものであった。また、係る化粧シートの貼着対象である基材は必ずしも単なる平板状には限らず、各種の立体形状を有する基材も例えば浴室壁面用等の様々な用途において増加しつつあるが、係る立体形状の基材にラッピング法や真空成形法等により貼着する際に、上記した柔軟性ポリエステルフィルムは柔らか過ぎて、しわや傷等が発生しやすい等の問題点があった。
近年では、ポリ乳酸樹脂は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス材料の一つになり、また生分解性ポリマーであることから大きな注目を集めている。その一方ではポリブチレンサクシネート樹脂もバイオマス原料から生産する試みがなされている。これらの樹脂は、炭酸ガスと水とから光合成により作られる澱粉を原料とするバイオマス材料であり、しかも土中や水中で自然に加水分解し、次いで微生物により無害な分解物となる生分解性樹脂でもある。さらには燃焼により発生する熱量も少なく、また燃焼時に発生する炭酸ガスは、もともとこれらの樹脂の原料となる澱粉や糖を光合成する時に吸収した大気中の炭酸ガスであり、環境に優しい最も有望な生分解性バイオマス樹脂であるといわれている。
またポリサクシネート樹脂は生分解性樹脂としても知られているが、生分解性樹脂による積層シートは、表面強度に優れるものもあるが、耐熱性に劣る、耐久性に劣る(生分解性)、耐薬品性に劣るなどの理由によりこれまで化粧シートとして実用化されるに至らなかった。またその一方では、従来の化粧シートが木質基材に貼合された化粧材は、廃棄時にはその化粧シートと木質基材の分別が困難であり、また表面化粧シートの材質が判別できない、などの問題により、原料リサイクルは困難であり、また有害ガス発生の問題から焼却処理も困難であり、埋め立て処理といった廃棄処理方法をとらざるを得ないという現状の問題がある。
このように、近年の環境意識の高まりから、非石油系ポリマーとして普及し始めたポリ乳酸フィルムを化粧シートに使用した例が、特許文献4、5に見られる。しかしながら、これらの文献にはフィルムに関して特に具体的な記述はなく、切削加工、印刷、ラミネートなどの加工に適したフィルムの開示が望まれていた。
また、二軸延伸ポリエステルフィルムの破断伸度、破断強度を低下させる方法の例が、特許文献6、7に見られる。しかしながらこれらの例はいずれも包装材料を意図したフィルムに関するものであり、化粧シート用としての具体的な記述はなく、本発明の課題を解消するには十分とは言えない。
特開平6−166159号公報 特開平7−17005号公報 特開平7−137205号公報 特開平11−129426号公報 特開平11−227147号公報 特開平5−104618号公報 特開2001−191407号公報
本発明は、従来の技術における以上の様な問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、平面状基材へのラミネート加工は勿論のこと、立体形状の基材へのラッピング加工や真空成形加工等の立体成形にも耐えることができ、しかも耐傷付き性等の表面物性にも優れた化粧シートおよび化粧材を提供することにある。
請求項1に記載の発明は、少なくとも絵柄インキ層と熱可塑性ポリエステル系樹脂層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、ポリブチレンサクシネート樹脂からなり、且つ、該熱可塑性ポリエステル系樹脂層のガラス転移点が−32℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%であることを特徴とする化粧シートである。
請求項2に記載の発明は、熱可塑性樹脂シート基材上に、少なくとも絵柄インキ層と透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、ポリブチレンサクシネート樹脂からなり、且つ、該透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層のガラス転移点が−32℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%であることを特徴とする化粧シートである。
請求項3に記載の発明は、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂層または透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、2軸延伸されたシートであることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シートである。
請求項4に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリサクシネート樹脂を含有してなるポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項に記載の化粧シートである。
請求項5に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項に記載の化粧シートである。
請求項6に記載の発明は、少なくとも請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シートを木質基材に貼合されてなることを特徴とする化粧材である。
請求項1に記載の発明は、少少なくとも絵柄インキ層と熱可塑性ポリエステル系樹脂層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、ポリブチレンサクシネート樹脂からなり、且つ、該熱可塑性ポリエステル系樹脂層のガラス転移点が−32℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%であることにより、通常のシートラッピング加工における十分な柔軟性が得られ、適度な腰強度や表面強度をも備えているのでシートラッピング加工時のしわの発生もしにくく、表面の耐傷付き性等の表面物性も十分な水準の化粧シートを得ることが可能となる。また、真空成形等の立体成形における加熱温度における十分な立体成形性が得られ、内部応力の残留も少なく、適度な柔軟性と共に適度な腰や表面硬度をも備えているので、立体成形時にしわやドローダウン等を発生することもなく、表面の耐傷付き性等の表面物性も十分な水準の化粧シートを得ることが可能となる。
請求項2に記載の発明は、熱可塑性樹脂シート基材上に、少なくとも絵柄インキ層と透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、ポリブチレンサクシネート樹脂からなり、且つ、該透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層のガラス転移点が−32℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%であることにより、通常のシートラッピング加工における十分な柔軟性が得られ、適度な腰強度や表面強度をも備えているのでシートラッピング加工時のしわの発生もしにくく、表面の耐傷付き性等の表面物性も十分な水準の化粧シートを得ることが可能となる。また、真空成形等の立体成形における加熱温度における十分な立体成形性が得られ、内部応力の残留も少なく、適度な柔軟性と共に適度な腰や表面硬度をも備えているので、立体成形時にしわやドローダウン等を発生することもなく、表面の耐傷付き性等の表面物性も十分な水準の化粧シートを得ることが可能となる。

請求項3に記載の発明は、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂層または透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、2軸延伸されたシートであることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シートである。前記熱可塑性ポリエステル系樹脂層または透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が2軸延伸されたシートとすることにより、その樹脂配向によりさらに表面強度がより優れる化粧シートを得ることができる。
請求項4に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリサクシネート樹脂を含有してなるポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項に記載の化粧シートである。前記熱可塑性樹脂シート基材が少なくともポリサクシネート樹脂を含有してなるポリエステル系樹脂からなることにより、さらに環境問題への適応を考慮し、さらに、柔軟性がより優れる化粧シートとすることが可能になり、適度の柔軟性と強度のバランスや、表面強度の向上等の強度物性の各種側面に好適な化粧シートを得ることができる。また透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層と熱変形温度を近づけることができ真空成形ラッピング法等での成形性を向上させることができる。さらには、燃焼エネルギーをさらに小さく抑えることができ、化粧シートの難燃性を向上させることができる。
請求項5に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂シート基材が、ポリオレフィン系樹脂を含有してなることを特徴とする請求項に記載の化粧シートである。熱可塑性樹脂シート基材が少なくともポリオレフィン系樹脂を含むことにより、適度の柔軟性と強度のバランスや、折り曲げや切断等の加工適性、耐候性等の各種側面に好適な化粧シートを得ることができる。
請求項6に記載の発明は、少なくとも請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シートを木質基材に貼合されてなることを特徴とする化粧材である。表面の耐傷付き性等の表面物性が十分であり、表面の意匠性に優れた化粧材が得られる。
以下に本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の化粧シートの一例の積層構造を示す模式断面図である。図1に示す例では、本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂シート基材3上に絵柄インキ層2及び透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1が順次積層されて構成されるものであって、本発明では特に、前記透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1が、少なくともポリサクシネート樹脂を含み、且つ、ガラス転移点が0℃以下、引っ張り弾性率が20MPa以上60MPa以下、引っ張り破断伸び率が200%以上900%以下であることを特徴とするものである。なお、引っ張り弾性率および引っ張り破断伸び率は、JIS K6781に従い測定された値である。なお好ましい上記ガラス転移点は−50〜−20℃、引っ張り弾性率は30〜60MPa、引っ張り破断伸び率は200〜700%である。
透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1のガラス転移点、引っ張り弾性率および引っ張り破断伸び率を上記数値範囲に限定する理由は、通常のシートラッピング加工における十分な柔軟性が得られ、適度な腰強度や表面強度をも備えているのでシートラッピング加工時のしわの発生もしにくく、表面の耐傷付き性等の表面物性も化粧シートとして十分な水準のものが得られるからである。また、真空成形等の立体成形における加熱温度における十分な立体成形性が得られ、内部応力の残留も少なく、適度な柔軟性と共に適度な腰や表面硬度をも備えているので、立体成形時にしわやドローダウン等を発生することもなく、表面の耐傷付き性等の表面物性も化粧シートとして十分な水準のものが得られるからである。
ガラス転移点が0℃を超える樹脂は、立体成形時の軟化が不十分であったり不均一であったりすることがある。特に成形温度域の80℃〜90℃近傍の60℃〜80℃にガラス点移転がある樹脂材料では、成形シートの軟化が不均一になることがあり、成形不良や内部応力の残留、割れ、白化等の原因となる。引っ張り弾性率が20MPaに満たないと、樹脂が柔軟過ぎて表面の耐傷付き性が不十分である他、ラミネート加工時のしわや傷、また加熱成形時のドローダウン等の原因となり、一方60MPaを越えると、樹脂の柔軟性が不十分なためシートラッピング加工適性に劣り、成形不良や内部応力の残留、割れ、白化、端部のハネによる接着不良等の原因となる。また引っ張り破断伸び率が200%に満たないとラミネート加工時のしわなど加工性を著しく低下させる原因となり、一方900%を越えるとその低い引っ張り弾性率によりラミネート加工された化粧板での絵柄の伸びなどをまねいてしまう原因となる。
なお、上記透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の「透明」であるとは、必ずしも厳密な意味での透明に限定されるものではなく、半透明や着色透明等であっても良い。また、本発明は上記の様な複層構成の化粧シートに限定されるものではなく、例えば、図1における熱可塑性樹脂シート基材3を有せず、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の表面又は裏面に絵柄インキ層2が設けられた単層構成の化粧シート等をも包含するものであり、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の表面に絵柄インキ層2を設ける場合には、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1は不透明であっても良い。その他、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1と絵柄インキ層2との間に、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1と同種又は異種の透明な熱可塑性樹脂層が1層以上設けられていても良いし、それらの層間に更に1層以上の別の絵柄インキ層が設けられていても良い。
上記透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1を構成するポリエステル系熱可塑性樹脂の具体的な化学組成については、ガラス転移点、引っ張り弾性率、引っ張り破断伸び率が前記数値範囲であれば特に制限はないが、ポリサクシネート樹脂単一の材料での使用が可能であるが、これらの樹脂の混合物やアロイとしても使用が可能であり、化粧シートが使用される条件や製造工程で求められる加工性の中で必要な物性が得られるよう混合して使用することが可能である。
ポリサクシネート樹脂とのアロイとして使用される樹脂としては、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリペンタンサクシネート、ポリヘキサンサクシネートなどのポリサクシネート樹脂同士の他に、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、カプロラクトン―ブチレンサクシレート、ポリブチレンアジペート・テレフタレート、ポリブチレンサクシネートアジペート変性、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートカーボネート変性、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレートなどがある。
またポリサクシネート樹脂の強度あるいは柔軟性を調整するために混合されるバイオマス材料や生分解樹脂としては、ポリ乳酸系、ポリカプロラクトン系、酢酸セルロース系、ポリエステルアミド系、酢酸ビニル系、デンプン系のものから適宜選択が可能で、単一でも複数種の混合でも構わない。
例えば、化粧シートとして耐傷性や耐凹み性などを向上するためなどで表面強度を大きくしたい場合には、ポリサクシネート樹脂を単一もしくは、ポリ乳酸樹脂やその他の樹脂への混合物として使用できる。たとえばポリブチレンサクシネート樹脂はガラス転移温度は約−40℃であり、常温では比較的に弾性率が小さく表面強度に優れるものである。またポリブチレンサクシネート樹脂の非晶性シートは比較的透明性に優れることから、表面加飾表現の自由度が大きくなり、高い光沢感が得られる表面加飾が可能となる。
また化粧シートとしてエンボス加工による表面加飾が求められる場合には、ポリブチレンサクシネート樹脂を含有することにより、そのポリブチレンサクシネート樹脂の非晶性シートは融点が90℃〜110℃であることから、表面保護層側から熱エンボス加工により表面保護層および透明熱可塑性樹脂層に凹凸の表面加飾が可能であり、ポリブチレンサクシネート樹脂の熱変形温度がポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂と比較しても小さいことからエンボス加工性を改善することができ、優れた表面加飾性を付与することも可能となる。
前記透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が2軸延伸されたシートとすることにより、その樹脂配向により、表面強度や熱寸法安定性がさらに優れ、引っ張り弾性率が大きくなることにより加工時および化粧板となった状態でも寸法安定性に優れる化粧シートとすることができる。
また、上記ポリエステル系熱可塑性樹脂には、目的の化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、加水分解抑止剤、核剤、等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
酸化防止剤としては例えばフェノール系、硫黄系、リン系等、紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、光安定剤としては例えばヒンダードアミン系、ニッケル錯体系等、熱安定剤としては例えばヒンダードフェノール系、硫黄系、ヒドラジン系等、可塑剤としては樹脂の種類にもよるが例えばフタル酸エステル系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、オキシ安息香酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、滑剤としては例えば脂肪酸エステル系、脂肪酸系、金属石鹸系、脂肪酸アミド系、高級アルコール系、パラフィン系等、帯電防止剤としては例えばカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両イオン系等、難燃剤としては例えば臭素系、リン系、塩素系、窒素系、アルミニウム系、アンチモン系、マグネシウム系、硼素系、ジルコニウム系等、充填剤としては例えば炭酸カルシウム、滑石、蝋石、カオリン等から選ばれる1種又は2種以上の混合系で使用することができる。
透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の厚みには特に制限はなく、従来の一般的な化粧シートの場合と同等に設定することができる。具体的には、図1に示す様な複層構成の化粧シートの透明樹脂層として使用する場合には20〜150μm程度の範囲とされる場合が多く、単層構成の化粧シートであれば50〜300μm程度の範囲とされる場合が多い。
絵柄インキ層2は、目的とする化粧シートに任意の所望の絵柄の意匠性を付与する目的で設けられるものであって、その絵柄の種類には特に制限はなく、例えば木目柄、石目柄、抽象柄、単色無地等、従来の化粧シートの場合と同様の各種の絵柄を採用することができる。絵柄インキ層2の構成材料や形成方法にも特に制限はなく、例えば有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を、適当な結着剤樹脂と共に、適当な溶剤中に溶解又は分散してなる、印刷インキ又はコーティング剤等を、適宜の印刷方法又はコーティング方法によって印刷又は塗工して設けることができる。
前記着色剤としては、例えばカーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料、魚鱗粉、塩基性炭酸鉛、酸化塩化ビスマス、酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料、蛍光顔料、夜光顔料等、又はこれらから選ばれる2種以上の混合物等を使用することができる。
また、前記結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリビニル系樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等の各種合成樹脂類、又はそれらの2種以上の混合物、共重合体等を使用することができる。
また、前記溶剤としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤や、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤等の各種有機溶剤や、水等の無機溶剤、又はそれらの2種以上の混合溶剤等を使用することができる。
その他、必要に応じて例えば体質顔料や可塑剤、分散剤、界面活性剤、粘着付与剤、接着助剤、乾燥剤、安定剤、硬化剤、硬化促進剤又は硬化遅延剤等の各種の添加剤を適宜添加することもできる。
絵柄インキ層2の形成方法には特に制限はなく、例えばグラビア印刷法やオフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の各種の印刷方法を使用することができる。また、例えば全面ベタ状の場合には上記した各種の印刷方法の他、例えばロールコート法やナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種のコーティング方法によることもできる。その他、例えば手描き法、墨流し法、写真法、レーザービーム又は電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法やエッチング法等、又はこれらの方法を複数組み合わせて行うことも勿論可能である。
なお、図1に示す様な複層構成の化粧シートにおいては、絵柄インキ層2は熱可塑性樹脂シート基材3と透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1との積層前に透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1側に設けておいても良いが、熱可塑性樹脂シート基材3側に設けておいても良い。また、絵柄インキ層2の形成に先立ち必要に応じて、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1又は熱可塑性樹脂シート基材3の被印刷面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー処理又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1又は熱可塑性樹脂シート基材3と絵柄インキ層2との密着性の向上を図ることもできる。
熱可塑性樹脂シート基材3を構成する熱可塑性樹脂の種類には特に制限はなく、従来係る化粧シートのシート基材用として使用されている各種の熱可塑性樹脂を使用することができる。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はその鹸化物、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂等、又はこれらから選ばれる2種又は3種以上の共重合体や混合物、複合体、積層体等を使用することができる。
但し、前述した環境問題への適応を考慮すると、上記した各種の熱可塑性樹脂の内、塩素系樹脂やフッ素系樹脂の使用は余り好ましいものとは言えず、塩素やフッ素等のハロゲン元素を含有しないもの、すなわち非ハロゲン系熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。中でも、適度の柔軟性と強度のバランスや、折り曲げや切断・切削等の加工適性、耐候性等の各種の側面から見ると、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂が好適である。また、ポリブチレンサクシネート樹脂はバイオマス原料プラスチックの観点から最も好ましい。
また、ポリブチレンサクシネート樹脂はオレフィン系材料に比較してその燃焼エネルギーを小さく抑えることができ、木質基材に難燃性材料を使用した場合においては化粧板としての難燃効果を妨げないことも期待できる。
上記ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては上掲したものを始め種々の単独重合体や共重合体が知られているが、中でも化粧シート用シート基材の素材として最も好適なのはポリプロピレン系樹脂、すなわちポリプロピレンを主成分とする単独又は共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1、のコモノマーを15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられるエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム等の改質剤を添加することもできる。
熱可塑性樹脂シート基材3を構成する熱可塑性樹脂には、目的の化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。これらの添加剤として具体的には、例えば既にポリエステル系熱可塑性樹脂への添加剤として例示したもの等を使用することができる。
上記の他、熱可塑性樹脂シート基材3を構成する熱可塑性樹脂に、適宜の有機又は無機の染料又は顔料等の着色剤を添加することによって、熱可塑性樹脂シート基材3を着色することもできる。特に、用途により化粧シートが隠蔽性を必要とする場合には、隠蔽性顔料を使用して熱可塑性樹脂シート基材3を隠蔽性とすることが好ましい。隠蔽性顔料とは、分散媒たる熱可塑性樹脂と比較して高屈折率の顔料であり、屈折率の高さや耐候性、耐薬品性等の面から、例えば酸化チタン系顔料や酸化鉄系顔料等の無機顔料を少なくとも使用することが好ましい。勿論、熱可塑性樹脂シート基材3自体を隠蔽性とする替わりに、図2に示すように、隠蔽性顔料等を含有する印刷インキ又はコーティング剤等からなる隠蔽層4を設けても良いし、両者を併用することもできる。
熱可塑性樹脂シート基材3の厚さには特に制限はなく、従来の一般の化粧シートのシート基材と同様の厚さのものを使用することができる。具体的には、化粧シートの用途や樹脂の種類にもよるが、50〜200μm程度の範囲から選ばれるのが一般的である。
なお、立体成形用途の場合には、熱可塑性樹脂シート基材3も一般的には、ガラス転移点又は軟化点が85℃以下、引っ張り弾性率が3GPa以下である熱可塑性樹脂から構成することが望ましい。但し、特に熱可塑性樹脂シート基材3が透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1よりも薄い場合等には、前者が後者の熱変形に十分追従可能な範囲であれば、必ずしも上記上限値には制限されない場合もある。なお、下限は、例えば粘着性を帯びる等の、化粧シート用シート基材として一般的な不都合のない範囲であれば、特に制限はない。
本発明においては透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1と熱可塑性樹脂シート基材3との積層方法にも特に制限はなく、従来公知の任意の方法を適宜適用することができる。具体的には例えば、予めフィルム状乃至シート状に成形された透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1をドライラミネート接着剤、感熱接着剤、感圧接着剤又は電離放射線硬化型接着剤等の適宜の接着剤層5を介して熱可塑性樹脂シート基材3の表面上に接着する方法、或いは接着剤を介さずに熱圧着又は超音波溶着等の手段によって直接接着する方法や、ポリエステル系熱可塑性樹脂を加熱溶融しフィルム乃至シート状に押し出し成形すると同時に熱可塑性樹脂シート基材3の表面上に積層し接着させる方法等、従来公知の各種の方法の中から、樹脂の特性に合致した方法を適宜選択して使用することができる。
なお、上記積層に先立ち、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1及び/又は熱可塑性樹脂シート基材3に絵柄インキ層2や隠蔽層4等を施しておいても良いことは勿論であるが、その他、接着性の向上を目的として、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1及び/又は熱可塑性樹脂シート基材3の接着面に、コロナ処理又はオゾン処理等の適宜の表面活性化処理や、適宜の接着性樹脂組成物からなるアンカー層6,6'等を施しておくこともできる。また押し出しラミネート法の場合には、ポリエステル系熱可塑性樹脂と共に接着性樹脂を熱可塑性樹脂シート基材3との間に挟持する様に共押し出し積層することにより、接着性の向上を図ることもできる。
透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の表面には、従来公知の如く、必要に応じて所望の適宜の模様のエンボス7を設けることもできる。エンボス7の模様の種類にも特に制限はなく、例えば木目調(特に導管模様状)、石目調、和紙調、布目調、幾何学模様状等の各種模様状であっても良いし、或いは例えば単なる艶消状や砂目状、ヘアライン状、スウェード調等であっても良い。また、これらのエンボス7の模様を絵柄インキ層2の絵柄と同調させることによって更なる意匠性の向上を図ることも出来るが、その必要がなければ非同調であっても良く、また絵柄インキ層2の絵柄と同調した模様と同調しない模様との両者を含む模様のエンボス7を設けることもできる。
エンボス7の形成方法にも特に制限はないが、金属製のエンボス版を使用した機械エンボス法が最も一般的である。またエンボス7の形成時期にも特に制限はなく、熱可塑性樹脂シート基材3との積層前、積層と同時又は積層後の中から任意の時期を選択することができ、またこれらの中から選ばれる複数の時期に同一又は異なる模様のエンボス7を複数回に亘って施すこともできる。なお、エンボス7の凹陥部には、必要に応じてワイピング法等の手法により着色剤8を充填しても良く、これによって表面の凹凸模様と同調した色彩模様を有する意匠性に優れた化粧シートを得ることができる。
また、化粧シートの表面に更に優れた表面物性を付与する目的で、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の表面にトップコート層9を設けることもできる。トップコート層9の構成材料としては、従来より係る化粧シートのトップコート層の構成材料として使用されている公知の各種のトップコート剤の中から選ばれる任意のものを使用することができる。一般的には、少なくとも下地を透視可能な透明性を有する必要がある他、化粧シートの用途により要求される耐磨耗性や耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性等の表面物性を具備させるべく、硬化性樹脂を主成分とする材料から構成することが好ましい。但し、立体成形用途の場合には、化粧シートの伸びに追従すべく柔軟性にも配慮する必要がある。
上記トップコート層9の構成材料として具体的には、例えばメラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱硬化性樹脂や、アクリル系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂等を、好適に使用することができる。また必要に応じて、艶調整剤、滑剤、帯電防止剤、結露防止剤、抗菌剤、防黴剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。また、トップコート層9を艶の異なる2層以上から構成し、その内1層以上を絵柄状に設けることによって、表面の艶の変化による材質感や視覚的立体感を有する化粧シートを得ることもできる。
トップコート層9の形成方法にも特に制限はなく、例えばグラビアコート法、ロールコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、ナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、リップコート法、キスコート法、ロッドコート法、スプレーコート法、フローコート法等の従来公知の任意のコーティング法を適宜適用することができる。
なお、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1とトップコート層9との密着性が不十分である場合には、トップコート層9の塗工形成に先立ち、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の表面に例えばコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理、アンカー又はプライマー処理等の表面処理を施すことによって、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1とトップコート層9との間の密着性を向上することができる。
本発明の化粧シートは、既に説明した様に、従来の化粧シートと同様、例えば合板やパーティクルボード等の木質系基材や、珪酸カルシウム板、木毛セメント板等の無機質系基材、FRP(繊維強化プラスチック)等の合成樹脂系基材等の各種の基材の表面に貼付して使用するものであり、一般的には該貼付の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、熱可塑性樹脂シート基材3を構成する樹脂の種類によっては、係る汎用のラミネート用接着剤との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、熱可塑性樹脂シート基材3の裏面に、上記した汎用の接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層10を設けておくことが好ましい。
上記プライマー層10としては例えばウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤が知られており、これらの中から熱可塑性樹脂シート基材3に合わせたものを選んで使用する。なお、プライマー層10に例えばシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加しておくと、プライマー層10の表面が粗面化することによって化粧シートの巻取保存時のブロッキングが防止できる他、投錨効果による前記ラミネート用接着剤との接着性の向上を図ることもできる。
本発明の化粧シートは、上記の通りの構成により、立体成形性や表面の耐傷付き性等に優れるのみならず、従来の各種のポリエステル系熱可塑性樹脂を使用した化粧シートと共通する数多くの利点を備えているものである。例えば、透明なポリエステル系熱可塑性樹脂を使用したものにあっては、ポリエステル系熱可塑性樹脂に特有の優れた透明性により、絵柄の鮮鋭性や表面の高光沢性に優れた化粧シートを容易に得ることができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
実施例1
下記構成からなる木目調絵柄の化粧シートを作成した。透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1として、ガラス転移点が−32℃、融点が112℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%の厚さ100μmのポリブチレンサクシネート樹脂の裏側から予めグラビア印刷により木目絵柄の印刷を行い絵柄インキ層2を設けた後に更に隠蔽層4としてのインキ層を設けた。これに熱可塑性樹脂シート基材3として木目柄の基調色に予め着色されたポリブチレンサクシネート樹脂を主体とする厚さ80μmの無延伸ポリエステルシートに、接着剤層5を介してドライラミネート法により貼合した。さらに、その透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1側にトップコート層9として紫外線吸収剤と光安定剤が添加されたウレタン系コート剤を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようグラビアコーティングにて塗工して化粧シートを作成した。さらにその後工程にて熱圧エンボス加工により表面加飾エンボス7を設け化粧シートを作成した。
<実施例1の化粧シートの層構成>
トップコート層9:ウレタン系コート剤 9μm
透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1:ポリブチレンサクシネート樹脂 100μm
ドライラミネート接着剤層5:ウレタン系2液硬化型 10μm
印刷インキ2,4:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート基材3:ポリブチレンサクシネート系ポリエステル樹脂 80μm
実施例2
下記構成からなる木目調絵柄の化粧シートを作成した。まず熱可塑性樹脂シート基材3として木目柄の基調色に予め着色された、厚み70μmのポリプロピレン樹脂シートに、グラビア印刷により木目絵柄の絵柄インキ層2を設けた。この印刷が施されたシートに、アンカーコート剤6’を厚み1μmとなるようグラビアコーティング法にて塗工した後、接着剤層5を介して透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1としてガラス転移点が−32℃、融点が112℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%のとなる厚さ80μmのポリブチレンサクシネート樹脂をドライラミネート法により貼合した。さらに、透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1の上にトップコート層として紫外線吸収剤と光安定剤が添加されたウレタン系コート剤を乾燥硬化後の厚みが6μmとなるようグラビアコーティングにて塗工した。さらにその後工程にて熱圧エンボス加工により表面加飾エンボス7を設け化粧シートを作成した。
<実施例2の化粧シートの層構成>
トップコート層9:ウレタン系コート剤 6μm
透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1:ポリブチレンサクシネート樹脂 80μm
ドライラミネート接着剤層5:ウレタン系2液硬化型 10μm
印刷インキ2,4:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート基材:無延伸ポリプロピレン樹脂 70μm
<比較例1>
透明熱可塑性樹脂としてガラス転移点が78℃、引っ張り弾性率2GPa、引っ張り破断伸び率が170%の厚さ100μmの無延伸の非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用し、その他の材料および製造方法は実施例1同じ化粧シートを作成した。
<比較例1の化粧シートの層構成>
トップコート層9:ウレタン系コート剤 9μm
透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1:
非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂 100μm
ドライラミネート接着剤層5:ウレタン系2液硬化型 10μm
印刷インキ2,4:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート基材3:ポリブチレンサクシネート系ポリエステル樹脂 80μm
<比較例2>
透明熱可塑性樹脂としてガラス転移点が70℃、引っ張り弾性率4GPa、引っ張り破断伸び率が150%の厚さ80μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂を使用し、その他の材料および製造方法は実施例2と同じ化粧シートを作成した。
<比較例2の化粧シートの層構成>
トップコート層9:ウレタン系コート剤 6μm
透明熱可塑性樹脂層1:ポリプロピレン 80μm
ドライラミネート接着剤層5:ウレタン系2液硬化型 10μm
印刷インキ2,4:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート基材:無延伸ポリプロピレン 70μm
<比較例3>
透明熱可塑性樹脂としてガラス転移点が140℃、引っ張り弾性率0.8GPa、引っ張り破断伸び率が600%の厚さ80μmの無延伸ポリプロピレン樹脂を使用し、その他の材料および製造方法は実施例2と同じ化粧シートを作成した。
<比較例3の化粧シートの層構成>
トップコート層9:ウレタン系コート剤 6μm
透明熱可塑性樹脂層1:無延伸ポリプロピレン樹脂 80μm
ドライラミネート接着剤層5:ウレタン系2液硬化型 10μm
印刷インキ2,4:ウレタン系2液硬化型 0〜2μm
熱可塑性樹脂シート基材:ポリプロピレン 70μm
<評価>
上記の実施例1と比較例1は厚さ9mmで端部が曲面R加工が施されたMDF基材に真空成形貼合した状態で、また実施例2と比較例2および比較例3は厚さ3mmのMDF板に貼合した化粧ボードの状態にして、化粧シートの評価を行った。
<評価方法>
エンボス加工性:エンボス加工を施した化粧シートのエンボス形状を外観目視評価によりそのエンボス転写性を評価した。エンボス柄のエッジ形状まで転写されていれば○、エンボス柄のエッジ形状が転写されていないならば×とした。
成形性:実施例1および比較例1について、端部が曲面R加工が施されたMDF基材に真空成形貼合するときの成形加工の行い易さを、曲面Rに化粧シートが追従して皺や割れの発生がなければ○、曲面R部分に皺が発生したり、化粧シートの割れが発生したならば×とした。
寸法安定性:MDF基材またはMDF板に貼合した後の化粧シートの形状変化を測定し、形状に変化がなかったものは○、反りやたわみが生じたものは×とした。
表面強度:鉛筆硬度により比較した。H以上を○、BからFを△、B未満を×とした。
耐久性:促進試験として60℃オーブンに10日間投入し、化粧シート層間のデラミネーションや変色の有無(有→×不良,無→○良)を調べた。また、化粧シート貼合した木質樹脂組成物をサンシャインウェザーメータ1000時間投入(照射は化粧シート貼合面側)し表面劣化および内部劣化の有無(有→×不良,無→○良)を観察し、いずれか一つでも満足できなかったものは×不良とした。
バイオマス度:バイオマス原料としては、実施例1と実施例2に記載のポリブチレンサクシネート樹脂および実施例1と比較例1に記載のポリブチレンサクシネート系ポリエステル樹脂に含有されるポリブチレンサクシネート樹脂が対象となる。その他の接着樹脂およびポリプロピレン樹脂、ウレタン系コート剤などは対象とならない。化粧シートを構成する材料のうち、化粧シート全体に対してバイオマスプラスチックが占める重量比率(%)を、各材質の厚みと比重より算出した。50%以上ならば○、20%以上50%未満ならば△、20%に満たない場合は×とした。
以下に結果を示す。
[表1]

Figure 0004983339

[表2]

Figure 0004983339

以上詳細に説明した様に、本発明の化粧シートは、熱可塑性ポリエステル系樹脂層または透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層をガラス転移点が0℃以下であり、引っ張り弾性率が20MPa以上60MPa以下であり、引っ張り破断伸び率が200%以上900%以下であることを特徴としたポリサクシネート樹脂を含む透明熱可塑性樹脂層として構成したことにより、平面基材へのラミネートやVカット加工等は勿論のこと、柱状基材へのラッピングラミネートや三次元凹凸基材への立体成形ラミネートにおいても、割れ、白化、シワ、ドローダウン等の問題が発生することがなく、しかも耐傷付き性等の各種表面物性の面でも優れたものであるという顕著な効果を奏するものである。したがって本発明の化粧シートおよび化粧材は、住宅等の建築物の内外装材、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器、家電製品などの表面化粧等に好適に使用することができる。
本発明の化粧シートの一例の積層構造を示す模式断面図である。 本発明の化粧シートの一例の積層構造を示す模式断面図である。
符号の説明
1 透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層
2 絵柄インキ層
3 熱可塑性樹脂シート基材
4 隠蔽層
5 接着剤層
6、6’アンカー層
7 エンボス
8 着色剤
9 トップコート層
10 プライマー層

Claims (6)

  1. 少なくとも絵柄インキ層と熱可塑性ポリエステル系樹脂層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、ポリブチレンサクシネート樹脂からなり、且つ、該熱可塑性ポリエステル系樹脂層のガラス転移点が−32℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%であることを特徴とする化粧シート。
  2. 熱可塑性樹脂シート基材上に、少なくとも絵柄インキ層と透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層がこの順に積層されてなる化粧シートにおいて、該透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、ポリブチレンサクシネート樹脂からなり、且つ、該透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層のガラス転移点が−32℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%であることを特徴とする化粧シート。
  3. 前記熱可塑性ポリエステル系樹脂層または透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層が、2軸延伸されたシートであることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
  4. 前記熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリサクシネート樹脂を含有してなるポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  5. 前記熱可塑性樹脂シート基材が、少なくともポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
  6. 少なくとも請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シートを木質基材に貼合されてなることを特徴とする化粧材。
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