JP4983246B2 - エアバッグ用織物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、必要な機械的特性を保持しつつ、低コストで低通気度を有する自動車安全装置の一つであるエアバッグ用織物とその効率的な製造方法を提供しようとするものである。
近年、自動車安全部品の一つとして急速に装着率が向上しているエアバッグは、自動車の衝突事故の際、衝撃をセンサーが感知し、インフレーターから高温、高圧のガスを発生させ、このガスによってエアバッグを急激に展開させて、運転者や同乗者の身体、特に頭部がハンドル、フロントガラス、ドアガラス等に衝突することを防止し保護するものである。従来、これらの目的にはコーティングを行わないノンコート布や、コーティングを行ったコート布等、用途に応じて適した布が使用されてきた。
しかしながら、ノンコート布では、通気度が高いため、適用される範囲が限られている問題がある。また、コート布は通気度が低くエアバッグとして好適な布ではあるが、基布が重く、柔軟性に劣り、また製造コストも高いため、採用されるのは通気度が低く要求される範囲に限られてきた。
織物の目合い部にエラストマー樹脂が偏在しているエアバッグの発明が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、前記の製造方法では溶剤にシリコーン樹脂を希釈しコートすることで20g/m2以下の塗布量を達成している。
特開平6−8779号公報
一方、シリコーン樹脂の水系エマルジョンを0.1〜10g/m2の範囲に付着させるエアバッグ用織物の製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。前記の製造方法によれば軽量、柔軟、等の特徴を有する織物が得られている。
特開平5−16753号公報
カバーファクター、単糸繊度、塗布量、厚み、通気度等が記載された樹脂層を有するエアバッグ用織物も知られている(例えば、特許文献3参照。)。前記エアバッグ用織物は、軽量、薄さ等の特徴を有するが、一般的なコート布と比較すると通気度レベルが非常に高いものしか得られていない。
特開2001−89949号公報
オルガノシロキサンを含有する水性シリコーンエマルジョンによる工業用布やその製造方法も知られている(特許文献4及び5参照。)。前記は、生地を未加工状態で塗布加工することを特徴としている。
特開2000−225666号公報 特開2001−288641号公報
前記以外にも水性エマルジョン樹脂を用いて布帛に加工する方法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。前記方法によれば、工程として、洗浄、乾燥工程と同時に架硫することに関する記載があるが、より低い通気度を得ようとするものではない。
特開平9−124947号公報
本発明は、上記従来の方法では解決できていない軽量でかつ通常の繊維間に塗布するレベルでは得られていない低通気性能を有するエアバッグに適した樹脂加工織物を提供することを課題とするもので、差圧100kPaという高圧下で低通気度を得ようとするものである。また、前記のようなエアバッグ用織物の効率的な製造方法を提供しようとするものである。
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1.カバーファクターの値が2000〜2500であるエアバッグ用織物であって、織物の表面および裏面に位置する単糸繊維間に樹脂が存在し、織物に付与された樹脂量が5〜25g/m2であり、100kPa時の通気度が1×10-3〜5×10-1L/cm2/minであることを特徴とするエアバッグ用織物。
2.織物を構成する経糸及び/又は緯糸のカバー率が10%以上であることを特徴とする上記第1に記載のエアバッグ用織物。
3.織物を構成する糸条がポリアミド繊維糸条であり、前記糸条の単糸繊維が5dtex以下であり、織物の厚みが0.32mm以下であることを特徴とする上記第1又は第2に記載のエアバッグ用織物。
4.150℃×30minの条件下で測定した残留収縮率が0.5%以上である織物基布に樹脂の水系エマルジョン液を付与し、テンションを加え、加熱することにより、樹脂の皮膜を形成させるエアバッグ用織物の製造方法であって、前記エアバッグ用織物のカバーファクターが2000〜2500であり、前記加熱が、少なくとも100℃以下の設定温度のチャンバーと140℃以上の設定温度のチャンバーとを順に通過させるものであることを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
5.テンションが、経糸方向及び/又は緯糸方向に1%以上伸張させて発生するものであることを特徴とする上記第4に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
6.織物基布が、沸水収縮率6〜15%の糸条を用いてウォータージェットルームで製織されてなる織物であることを特徴とする上記第4又は第5に記載のエアバッグ用織物の製造方法。
本発明によれば、エアバッグ用基布として必要な機械的特性を保持しつつ、低コストで高圧差圧下で低通気度を有するエアバッグ用織物を提供することができる。また、前記のようなエアバッグ用織物を効率的に得ることができる製造方法を提供することができる。
ここで本発明のエアバッグに適した基布の特徴を詳細に説明する。使用する合成繊維としては特に素材を限定するものではないが、特にナイロン66、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維のような芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維が使用される。繊維はマルチフィラメント糸条の形で用いられることが高密度織物を製織しやすく、引張強力や引裂強力を大きくする上で好ましい。他の繊維としては全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルケトン繊維等が挙げられる。経済性を勘案するとポリエステル繊維、ポリアミド繊維が特に好ましく、さらにエアバッグの展開時の高温ガスによる耐溶融性能から考えるとポリアミド繊維が好ましい。これらの繊維はその一部または全部が再利用された原材料より得られるものでもよい。これらの合成繊維には原糸製造工程や後加工工程での工程通過性を向上させるために、各種添加剤を含有していても何ら問題はない。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、平滑剤、帯電防止剤、増粘剤、難燃剤等である。また、この合成繊維糸条は、着色糸条であっても何ら問題はない。
合成繊維糸条を用いて製織を行う際に、カバーファクターは重要な指標である。カバーファクターが低いと、エアバッグとして必要な物理的特性(引張強力や引裂強力)が低くなり好ましくない。また通気度に関してもカバーファクターが大きな影響を与える。カバーファクターは大きい方が通気度が低くなり好ましいが、製織時、並びに収納性による限界がある。好ましくは、樹脂加工後のカバーファクターが2000〜2500、より好ましくは2150〜2450、さらに好ましくは2300から2450である。なお、本発明に記載されているカバーファクターは次のようにして求めた。
カバーファクター=(経糸繊度[dtex])1/2×(経糸密度[本/2.54cm])
+(緯糸繊度[dtex])1/2×(緯糸密度[本/2.54cm])・・・・・(式1)
また、後述の測定方法によるカバー率が10%以上であることが好ましい。このカバー率は、樹脂加工後の織物を対象とするもので、経糸断面方向または緯糸断面方向の少なくともいずれか1方向のカバー率が10%以上であることを意味している。カバー率が10%以上であると、樹脂加工による通気度低減効果を効果的に付与される。経糸断面方向と緯糸断面方向とでは、経糸断面方向のカバー率が高いことが、経験的に通気度低減効果を付与しやすいのでより好ましいが、両方向共に10%以上であっても構わない。特に好ましくは経糸断面方向にかバー率が14%以上であることであり、更に好ましくは経糸断面方向にカバー率が25%以上であることである。ただし、あまりにもカバー率が大きい織物を作ろうとすると、製織時に極端な高密度にするため、織機稼働率が低下したり、精練工程で大きな収縮を付与しすぎて皺欠点が多発したりして加工欠点が増えるため、40%以下であることが好ましく、更に好ましくは、37%以下である。
樹脂を付与する方法としては、従来の公知の付与方法が用いられる。すなわち、ナイフコート、コンマコート、ダイコート、グラビアロールコート、キスロールコート、スプレー法、Dip法、等が挙げられるがこれらに制限されるものではない。樹脂の付着量として5〜25g/m2付与されていることが好ましく、さらに好ましくは、11〜20g/m2である。5g/m2より少ないと、皮膜の形成が十分でなく、低い通気度が得にくくなり好ましくない。25g/m2より多いと通気度は低くなる点は好ましいが、基布の目付が増し収納性が低下するためあまり好ましくない。好ましくは20g/m2以下である。また、これらの樹脂は該織物の表面、及び裏面の単糸繊維間に存在することが好ましい。単糸繊維間に樹脂が存在することで、基布表層の上に樹脂層が存在するよりも少ない樹脂付与量で通気度低減効果が得られる。また、該織物の表面、および裏面の両方の単糸繊維間に樹脂を存在させることが好ましい。両面に樹脂を存在させることにより、通気度がさらに低下する。両面に樹脂を存在させる方法としては、上述したコート方法を表側、裏側の2度行うことも可能であるが、片面(表面)1度でコートした方が工程の短縮化が可能となり好ましい。グラビアロールコート、キスロールコート、スプレー法、Dip法で粘度を調整すれば比較的容易に両面の単糸繊維間に樹脂を存在させた実質的な両面コートが可能となる。さらに剤の粘度を調整することで、ナイフコート、コンマコート、ダイコートでも1度のコートで両面の単糸繊維間に樹脂を存在させることができる。これらの剤の粘度としては、200cps〜5000cpsが好ましい範囲となる。塗布時の基布の裏抜けによる工程への悪影響等と通気度低減効果を考慮し、コート方法や剤の粘度を選択すれば良い。
織物に付与された樹脂量は、樹脂付与前の織物と樹脂付与後の織物目付けより計算で求めることができる。即ち、樹脂付与後の織物目付けから樹脂付与前の織物目付けを差し引いて、その差を樹脂量(g/m2)で表す。但し、樹脂付与後の織物だけがあり、樹脂付与前の織物がない場合は、樹脂付与後の織物から、織物または付与されている樹脂のみを溶解する溶剤で溶解処理し、その残渣付与樹脂の重量または残渣織物の重量より樹脂量を概算で推定することもできる。溶解法による測定では、織物またはコート樹脂のみが溶解することが条件となり、エマルジョン等に加えられている界面活性剤等の重量は考慮するとより正確である。また、今ひとつの方法として、織物を構成する糸の太さ、フィラメント数を織物断面から導き出し、密度勾配管法で求められる糸の密度(比重)、クリンプ率、織物の密度から計算し樹脂付与前の織物の目付けを計算し、樹脂付与後の織物目付けから差し引いて、概算で推定することもできる。
織物に樹脂を付与した際、付与された樹脂は、経糸、緯糸の交差部分に偏在して存在することが多い。この偏在した樹脂は通気度低減効果としては層を形成すれば十分であり、少なければ少ない方が好ましい。樹脂の付着量に対し織物単繊維間に樹脂が付着していないと多くの樹脂が使用されているにもかかわらず通気度低減効果に寄与しないばかりか、織物の重量の増加につながり、収納性への悪影響を及ぼす。単糸繊度を細くすることで偏在して存在せずに付着量を低減する効果があり好ましい。これは経糸及び緯糸の単糸繊維間の空隙部分を小さくできるためである。
エアバックの展開後に圧力保持性を要求されるようなエアバック織物は、高圧負荷が掛かることで膜の破壊、単糸と樹脂との接着面の剥離などで通気度が増大するようなことがあると好ましくない。従って、100kPa程度での大きい差圧での通気度の評価が好ましい。本発明の織物は、100kPaの圧力を織物に与えた時の通気度が、1×10-3〜5.0×10-1L/cm2/minであることが好ましい。通気度が5.0×10-1L/c
2/minよりも高いと、コーティング布と同等の性能のものとして使用しづらく、ノンコート布との差が小さくなりあまり好ましくない。好ましくは1.0×10-1L/cm2/min以下、より好ましくは5.0×10-2L/cm2/min以下である。通気度が、1×10-3L/cm2/minより小さくしようとすると付与する樹脂量を多くする必要が生じ、収納性が良くない。
該織物を構成する単糸繊度は6dtex以下であることが好ましい。6dtexを超えると、織物の柔軟性が損なわれるため好ましくない。より好ましくは5dtex以下、更に好ましくは3dtex以下である。単糸繊度を小さくすることにより、単糸繊維間距離を小さくすることができ同じカバーファクターであれば、通気度を低下させることができる。また、単糸鮮度を小さくすると繊維表面積を大きくすることができ高差圧下での樹脂の界面破壊を抑えることができる。
使用する原糸の総繊度は、100〜600dtexであることが好ましい。更に好ましくは総繊度140〜470dtexである。総繊度が100dtex未満の場合はエアバッグとして要求される引張強力及び引裂強力が不足する場合があり好ましくない。600dtexを超える場合には強力には問題はないが、織物の柔軟性が損なわれ、収納性が悪くなり良くない。
該織物の厚みは0.32mm以下であることが好ましい。エアバッグとして厚みは薄い方が収納性に優れ好ましい。好ましくは0.30mm以下、より好ましくは0.29mm以下である。
加工前の基布の残留収縮率は、経緯方向の少なくともいずれか1方向が0.5%以上であることが好ましい。本発明では、樹脂の皮膜を形成させる前段階で基布を伸長し単糸繊維間の距離を小さくし、また、残留収縮により単繊維間距離を小さくすることで従来達成できていなかった高差圧下で低通気度を得ることができたものである。残留収縮率が経または緯糸方向で0.5%以上であると、通気度低減効果が得やすくなり好ましい。さらに好ましくは少なくとも経または緯糸方向のいずれか1方向で1.0%以上、より好ましくは少なくとも経または緯糸方向のいずれか1方向で1.5%以上である。この残留収縮率は、加工織物のカバー率を大きくする工夫の一つであるとも言える。また、残留収縮率は、8%以下であることが好ましい。8%を超えると加工時繊維の収縮による繊維間の移動量が大きく膜の形成を損ねることがあり好ましくない。なお、残留収縮率の測定は、JIS L 1909を使用し、収縮した側をプラスとして表示した。
低通気性を得るために該基布に対し、樹脂加工を施す方法が一般的に知られている。かかる樹脂加工に用いられる樹脂としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、シリコーン系、ポリエチレン系、スチレンブタジエン系、ニトリルブタジエン系等のエラストマー樹脂が知られており、所定の性能が得られるなら、どの樹脂を使用しても構わない。該基布への接着力、剤の伸度等を考慮すると、ポリウレタン系、アクリル系、シリコーン系が好ましく、特に基布の柔軟性の点で好ましくはシリコーン系である。
コーティング剤としては、前記のような樹脂の水系エマルジョンを用いるのが好ましい。水系エマルジョンを用いると布帛の両面の単糸繊維間に樹脂を存在させやすくなり好ましい。但し、粘度を調整すれば、溶剤系でも無溶剤系でも構わない。環境への影響も考慮し、無溶剤系、水系エマルジョンが好ましく用いられる。用いる水系エマルジョンとしては、特に制限は無く、従来公知の付加重合型ポリオルガノシロキサンを含有する水性エマルジョンが優れている。剤の粘度としては、200cps〜5000cpsが好ましい。より好ましくは300〜1000cpsである。また、繊維機材との接着性を改善する接着助剤は、適宜配合することができる。
塗布後のコーティング剤を乾燥、硬化させる方法としては、熱風、赤外光、マイクロウェーブ等など、一般に用いられる加熱方法が使用される。気泡形成を回避するために、第一のチャンバーの設定温度は100℃以下が好ましく、より好ましくは80〜100℃、更に好ましくは90〜100℃での予備乾燥を行うことである。第二のチャンバーでは140〜220℃、好ましくは150〜200℃、さらに好ましくは160〜190℃で樹脂の硬化(安定固着)を行う。付与した樹脂が硬化するに十分な温度に達しておれば2つの領域でなく、さらに細分化しても構わない。硬化のための時間は被覆重量、被覆された材料上への伝導性に依存するため、適宜判断すれば良いが、好ましくは0.5〜30分、より好ましくは0.75〜10分、さらに好ましくは1〜5分である。
上記乾燥、硬化が行われているチャンバー通過中に、織物を拘束もしくは伸張した状態で織物中の糸の収縮を生じさせることが好ましい。加工前織物が有している残留収縮が、熱により収縮として発現し、単糸繊維間の空隙を小さくすると同時に単糸繊維間に存在する樹脂を硬化するため、通気度を低減させる樹脂皮膜が効率よく単糸繊維同士を結びつけることができる。また、加工時テンションを加えることにより、単糸繊維間の距離をより小さくすることで、より通気度を低くするができ好ましい。少なくとも織物の端部を固定しながら収縮させることが好ましい。予備乾燥、硬化炉内の織物の搬送方法は特に制限されるものではない。一般に知られているテンター方式等公知の技術が応用される。単糸繊維間距離を小さくするため、加工時のテンションは維持されることが好ましい。加工時に加えられる経糸のテンションは、経糸方向及び/又は緯糸方向に1%以上伸張させて発生させるものであることが好ましく、経糸方向の伸張は、送り出し速度と巻き取り速度の少なくとも一方が変更できる装置を用い、速度の差により発現することができ、速度差比(%)が、伸張率となる。緯糸方向の伸張は、織物の端部を把持後、幅変更のできる装置を用い、把持後必要な量を緯方向に移動させ加えることができる。伸張率は2%以上であることが好ましく、3%以上であることが更に好ましい。ただし、伸張率があまりにも大き過ぎると付与した樹脂に亀裂を生じさせて通気度を増大させる恐れがあるので、10%以下であることが好ましく、更に好ましくは8%以下である。上記の伸張率でテンションを発生させることは、カバー率を向上させる効果の一つであるとも言える。
本発明に用いられる熱可塑性繊維糸条の沸水収縮率は6〜15%であることが好ましい。沸水収縮率が、6%より小さいと必要な基布の残留収縮率が得にくくなりあまり好ましくない。好ましくは6%以上、より好ましくは8%以上である。但し、沸水収縮率が15%より大きいと収縮後の織物の厚さが厚くなり、収納性に劣るため好ましくない。沸水収縮率は、さらに好ましくは、7〜13%である。本発明における樹脂加工に用いる布帛としては、樹脂加工前に精練、セット処理を行っても行わなくても良い。樹脂加工前に精練、セット処理、加熱処理を行う場合は特に規定するものではなく、通常60〜200℃で実施する。好ましくは、160℃以下で処理するのが低通気性を得るのには好ましい。処理は、ヒートセッター、沸水バス等特に限定はしないが、経、緯方向のオーバーフィードが、2〜15%程度可能な加工機を用い、残留収縮率を所定の範囲に保てばよい。また、上記処理を行わず、樹脂加工を行うことは更に良い効果を生み出す。沸水収縮率は、JIS L−1096に準じて測定する。
製織方法は特に限定するものではく、織機は、エアージェットルーム、レピアルーム、ウォータージェットルーム等特に限定するものではないが、特にウォータージェットルームが好ましい。ウォータージェットルームを用いることにより繊維に含まれている油剤等が洗浄され、精練工程を施すことなくコーティング布として使用することができるため好ましい。
次に実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、実施例中における各種評価は、下記の方法に従って行なった。
総繊度:JIS L−1095 9.4.1記載の方法で測定した。
フィラメント数:繊維糸条の断面写真よりフィラメント数を数えた。
沸水収縮率:JIS L−1095 9.24記載の方法で測定した。
織物の密度:JIS L 1096 8.6.1記載の方法で測定した。
厚さ:JIS L−1096 記載の方法で測定した。
クリンプ率:JIS L−1096 記載の方法で測定した。
残留収縮率:JIS L−1096 8.64.4記載の方法で評線を書き加えた試料を準備し、150℃×30分間、張力を掛けない状態でオーブンに入れ、常温に戻し評線間を測定した。測定値は、JIS L−1909 9記載の方法を用い収縮した側をプラスとした。
剤の粘度:JIS K−7117記載の方法を用いB型粘度計で測定した。
通気度:100kPa差圧下での通気度を高圧通気度測定機(OEMシステム(株)製)を用いて測定した。
カバー率:織物の断面SEM写真を撮影し、写真から、図1のa及びbに当たる長さを測定し、式2により計算して求める。
カバー率(%)={(a―b)/a}×100・・・・・・・(式2)
表1において、a−bの値が、マイナスとなる場合は、カバー率が、“―”で表記されている。
(実施例1)
総繊度が470dtex、144フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=9.3%のナイロン66の糸を平織りにてウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に次の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の織物の密度、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、加工後の織物の重さから加工前の基布の重さを引き計算により求めた。測定用試料は、20cm×20cmを切り出しその重量を測定し、その重量の差を25倍することで樹脂量(g/m2)を求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度が変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
配合A
(1)Dehesive 457 83部
(2)Closslinker V72 12部
(3)Silane HF86 5部
配合薬剤は、Wacker Silicone社製(ドイツ)である。配合剤Aの(1)はそれ自体、固形分50重量%の水系エマルジョン状態品で、(2)と合わされることで付加重合型のシリコンゴムの水系エマルジョンとなる。(3)は、接着性改善のためのシランカップリング剤である。配合Aの粘度は、B型粘度計で測定したとき、380cpsであった。
(実施例2)
実施例1と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度が変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
(実施例3〜4)
実施例1と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度が変更でき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
(実施例5〜6)
総繊度が350dtex、144フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=9.5%のナイロン66の糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、50cm×50cmの織物に含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、経緯が固定できる枠に経緯を表1記載の長さ(%)伸張して、50cm×50cmの織物を固定し、第1チャンバー及び第2チャンバーを有する加工炉の温度を調整し、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。付与されている樹脂量は、実施例1と同様に求めた。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
(実施例7)
総繊度が350dtex、72フィラメント、強度=8.4cN/dtex、沸水収縮率=9.4%のナイロン66の糸を用い平織りにてウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、50cm×50cmの織カバー率を測定した。物に含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、経緯が固定できる枠に経緯を表1記載の長さ(%)伸張して、50cm×50cmの織物を固定し、第1チャンバー及び第2チャンバー有する加工機の温度を調整し、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。
カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
Figure 0004983246
表1より本発明の各実施例の加工布が、100kPa差圧での低通気度性能に優れていることが分かる。
(比較例1)
実施例1と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度を同速とし、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。両緯端部については把持せずに装置を使用した。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
(比較例2〜3)
実施例1と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度を変更しでき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、送り出し速度と巻き取り速度の比率により設定した。緯糸方向の伸張率=0%は、把持して加工したことを示す。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
(比較例4)
実施例1と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表2のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後エンボスロールとゴムロールで構成されたマングルで絞り、表2の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表2の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。本加工には、織物の送り出し速度と巻き取り速度を変更しでき、且つ、両緯端部が把持固定することができ、温度変更のできる第1チャンバーと第2チャンバーのある装置を使用した。経糸方向の伸張率は、織物の送り出し速度と巻き取り速度を変更し設定し、両緯端部を把持せずに装置を使用した。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
(比較例5)
実施例7と同じ糸を用い平織りをウォータージェットルームにて製織後、95℃の温水で収縮加工後、130℃で乾燥しコート前物性が、表1のような平織物を得た。この織物に実施例1の配合Aを有する水系シリコーンエマルジョンを用い、含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、50cm×50cmの織物に含浸処理後ゴムロールで構成されたマングルで絞り、経緯が固定できる枠に経緯を表1記載の長さ(%)伸張して、50cm×50cmの織物を固定し、第1チャンバー及び第2チャンバーを有する加工機の温度を調整し、表1の加工温度、加工時間、加工時伸長率で加工を実施した。加工後の密度、カバーファクター、通気度及びカバー率は、表1の通りである。コート剤量は、実施例1と同様に求めた。カバー率を測定したSEM断面より樹脂が、織物の表面と裏面に位置する単糸繊維間に存在することが確認できた。
Figure 0004983246
本発明のエアバッグ用織物は、自動車安全部品の一つとして急速に着装率が向上しているエアバッグに好適に使用できるものである。100kPaの高い差圧化においても低い通気度が得られ、薄く収納性にも優れている。また、本発明のエアバッグ用織物の製造方法は、樹脂の水系エマルジョン溶液を付与して、テンションを加え、特定のチャンバー温度条件で乾燥、硬化させることにより、前記のようなエアバッグ用織物を効率的に製造できる製造方法を提供し得たものである。
カバー率を算出するためのエアバッグ用織物の断面SEM写真の模式図である。

Claims (1)

  1. カバーファクターの値が2000〜2500であるエアバッグ用織物であって、樹脂を付与する方法において、200cps〜5000cpsの粘度を有する水系エマルジョンによる含浸処理において、ゴムローラで構成されたマングルで絞ることを特徴とする、織物の表面および裏面に位置する単糸繊維間に樹脂が存在し、織物に付与された樹脂量が5〜25g/m であり、100kPa時の通気度が1×10 −3 〜5×10 −1 L/cm /minであることを特徴とするエアバッグ用織物の製造方法。
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