JP4980974B2 - ガスセンサおよびその制御装置ならびにNOx濃度測定方法 - Google Patents

ガスセンサおよびその制御装置ならびにNOx濃度測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、被測定ガス中における所定ガス成分の濃度に依存したセンサ出力の補正を行うガスセンサおよびその制御装置、ならびに、NOx濃度測定方法に関する。
従来、被測定ガス中の所望ガス成分の濃度を知るために、各種の測定装置が用いられている。例えば、燃焼ガス等の被測定ガス中のNOx濃度を測定する装置として、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性を有する固体電解質層上にPt電極およびRh電極を形成したガスセンサが公知である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
このようなガスセンサにおいて、所定ガス成分の濃度測定は、該所定ガス成分の検出に用いられるセンサ素子内部の電極(測定電極)に所定ガス成分の濃度に依存して流れる電流等を、センサ出力として検出することで行われる。
また、上記のようなガスセンサには、所定ガス成分の検出に用いる測定電極に、これを保護する多孔体の保護膜が形成されているものもある(例えば、特許文献3参照)。
特開平8−271476号公報 特開2004−37473号公報 特開平10−38845号公報
特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載されるようなガスセンサを自動車エンジン等の内燃機関の排気系に取り付けて、内燃機関を駆動させる際(ガスセンサの実使用の際)、排気ガスに含まれるNa、Mg、Ca等の物質が、例えば水蒸気に溶解して、外気を導入するために設けられたガス導入口を通じてセンサ素子内部へ侵入することがある。
また、特許文献3に記載されるように、センサ素子内部の測定電極に、これを保護する多孔体の保護膜が形成されているガスセンサにおいては、センサ素子内部に侵入したNa、Mg、Ca等の物質がこの多孔体の保護膜を目詰まりさせることがある(測定電極を被覆保護する多孔体の保護膜を目詰まりさせるNa、Mg、Ca等の物質を、以下、汚染物質とも称する)。このような目詰まりはガスセンサの実使用に伴い徐々に進行していくものである。
Na、Mg、Ca等の汚染物質による測定電極の保護膜の目詰まりは、測定対象である所定ガス成分に対するガスセンサの感度の劣化(すなわち、センサ出力の感度の変化)を生じさせる主要因となっている。また、このようなガスセンサの感度劣化は、ガスセンサの測定精度の低下へつながることになる。
測定対象とする所定ガス成分がNOxなどの場合、上記のような感度劣化に対しては、既知の濃度のNOx成分を含むガスを作製し、これを感度劣化後のガスセンサで実際に測定して、NOx濃度とセンサ出力との関係を調べることによって、NOx濃度と感度劣化後センサ出力とを対応づけることで、感度劣化によるセンサ出力の変化を補正することができる。
しかしながら、例えば、ガスセンサを自動車エンジン等の内燃機関の排気系に取り付けて、内燃機関を駆動させる際(ガスセンサの実使用の際)、このような排気系において、所定の濃度のNOxを含むガスの作製することは容易ではない。したがって、上記のような状況においては、既知の濃度のNOxを含むガス対する感度劣化後のセンサ出力を測定し、これらを対応づける、といった方法でセンサ出力の補正を行うことは困難となる。
以上のように、ガスセンサの実使用に伴い生じる、測定電極の保護層の目詰まりを主要因とするガスセンサの感度劣化は、ガスセンサにおける測定精度の低下の原因の一つになっている。このため、ガスセンサの感度劣化による測定精度の低下を低減する必要がある。また、測定対象とする所定ガス成分を所望の濃度で作製できない状況下において、安定した精度でガスセンサの感度劣化によるセンサ出力の補正を行い、高い測定精度を維持する必要がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ガスセンサの感度劣化によるセンサ出力の変化を補正し、測定精度の低下を補償可能なガスセンサおよびその制御装置ならびにNOx濃度測定方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、被測定ガス中のNOx濃度を測定するガスセンサであって、(a)被測定ガス中の酸素濃度を制御する酸素制御部と、前記酸素制御部を経た後の被測定ガス中のNOxを還元して酸素を発生させつつ被測定ガス中の酸素量を検出してNOx濃度を測定する測定部とを有するセンサ素子と、(b)前記センサ素子を制御する制御装置と、を備え、前記酸素濃度に対する前記センサ出力の依存性を酸素出力特性と呼ぶとき、前記制御装置が、前記センサ素子における現状の酸素出力特性を検出する検出手段と、前記センサ素子における初期の酸素出力特性と前記現状の酸素出力特性との相違に応じて、被測定ガス中のNOxの検出についてのセンサ出力を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のガスセンサにおいて、前記補正手段は、前記相違を表現した補正係数を用いて前記センサ出力を補正することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のガスセンサにおいて、前記現状の酸素出力特性が、酸素濃度の変化に対するセンサ出力の変化率Pによって表現されるとともに、前記初期の酸素出力特性が、酸素濃度の変化に対するセンサ出力の変化率P0によって表現され、前記補正手段が、NOx濃度の変化に対するセンサ出力の変化率Qを前記変化率P、P0に基づいて補正することを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項3に記載のガスセンサにおいて、前記変化率Qに対して前記補正を行った後の変化率をQcとすると、前記補正手段が、前記変化率Qcを、比例演算: Qc=(P/P0)×Q
に基づいて求めることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載のガスセンサにおいて、前記初期の酸素出力特性P0が、前記センサ素子が初期状態にあるときの当該センサ素子についての実測によって決定されていることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項4に記載のガスセンサにおいて、前記センサ素子と同じ構造を有する別個体のセンサ素子を参照センサ素子としたとき、初期状態の前記参照センサ素子について、酸素濃度の変化に対するセンサ出力の変化率をP1とし、初期状態の前記参照センサ素子について、NOx濃度の変化に対するセンサ出力の変化率をQ1とし、補正対象のセンサ素子が初期状態にあるときの、NOx濃度の変化に対するセンサ出力の変化率をQ0としたとき、前記変化率P0が、比例演算:
P0=P1×(Q0/Q1)
に基づいて算出されていることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のガスセンサにおいて、前記センサ出力の酸素出力特性とNOx濃度依存性との相違が、補正因子の値としてあらかじめ実験データに基づいて特定されており、前記補正手段は、前記補正因子を用いて前記変化率Qcをさらに補正することを特徴とする。
請求項8の発明は、被測定ガスの酸素濃度を制御する酸素制御部と、前記酸素制御部を経た後の被測定ガス中のNOxを還元して酸素を発生させつつ被測定ガス中の酸素量を検出してNOx濃度を測定する測定部とを有するセンサ素子を制御するガスセンサ制御装置であって、前記酸素濃度に対する前記センサ出力の特性を酸素出力特性と呼ぶとき、前記制御装置が、前記センサ素子における現状の酸素出力特性を検出する検出手段と、前記センサ素子の初期の酸素出力特性と前記現状の酸素出力特性との相違に応じて、被測定ガス中のNOxの検出についてのセンサ出力を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
請求項9の発明は、前記センサ素子に付随して設けられていることを特徴とする請求項8に記載のガスセンサ制御装置である。
請求項10の発明は、前記センサ素子とは別に、エンジンコントロールユニット内に組み込まれていることを特徴とする請求項8に記載のガスセンサ制御装置である。
請求項11の発明は、被測定ガスの酸素濃度を制御する酸素制御部と、前記酸素制御部を経た後の被測定ガス中のNOxを還元して酸素を発生させつつ被測定ガス中の酸素量を検出してNOx濃度を測定する測定部とを有するセンサ素子を用いて被測定ガス中のNOx濃度を測定する方法であって、前記酸素濃度に対する前記センサ出力の特性を酸素出力特性と呼ぶとき、前記センサ素子についての現状の酸素出力特性を検出する検出工程と、前記センサ素子の初期の酸素出力特性と前記現状の酸素出力特性との相違に応じて、被測定ガス中のNOxの検出についてのセンサ出力を補正する補正工程と、を備えることを特徴とする。
請求項1ないし請求項11の発明によれば、センサ素子が酸素制御部を有することによってセンサ出力の酸素出力特性が初期状態からどのように変化したかを、自動車などの対象物にセンサを搭載したままで検出できる。このため、感度の劣化が始まった後のセンサ素子についても、酸素出力特性からの変化からの類推でNOx濃度への依存性の変化を推定できるため、感度劣化後のガスセンサについても精度の低下を補償して高精度の測定が可能である。
請求項3の発明によれば、感度劣化前後におけるNOx濃度に対するガスセンサのセンサ出力の変化率を、感度劣化前後における酸素濃度に対するガスセンサのセンサ出力の変化率が略一致するものとみなし、感度劣化後のガスセンサのセンサ出力を補正するので、ガスセンサの感度劣化による測定精度の低下を低減することができる。
請求項4の発明によれば、比例演算での補正であるため、複雑なデータ処理を必要としない。
請求項5の発明によれば、初期におけるセンサ素子の諸特性を検出しておくことにより、感度劣化が始まった後には現用センサ素子の酸素出力特性を検出するだけで、以後の補正処理が可能となる。
請求項6の発明によれば、補正対象とするガスセンサとは別の感度劣化していない参照センサの初期特性に基づいて、補正対象とするガスセンサの初期状態の酸素出力特性を算出するので、補正対象とするガスセンサの初期状態での酸素出力特性が既知でなくてもよい。
請求項7の発明によれば、実験データに基づいて感度劣化後のガスセンサの出力をさらに補正するので、ガスセンサの感度劣化による測定精度の低下をさらに防止することができる。
<ガスセンサの構成>
図1は、本実施の形態に係るガスセンサ100の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。ガスセンサ100は、測定対象とするガス(被測定ガス)中の所定のガス成分(NOxやO2等)を検出し、さらにはその濃度を測定するためのものである。本実施の形態においては、ガスセンサ100が窒素酸化物(NOx)を検出対象成分とするNOxセンサである場合を例として説明する。また、ガスセンサ100は、被測定ガス中の所定ガス成分の検出に用いるセンサ素子101を有する。
また、図2に示すように、このガスセンサ100は、センサ素子101を制御し、センサ素子101の出力電流からセンサ出力を生成する制御装置110を備える。制御装置110は、マイクロコンピュータなどで構成される制御演算回路111と、種々のデータを記憶しておくメモリ112とを有しており、後述する制御や電流検出のほか、センサ出力の補正はこの制御演算回路111において実行される。図1の要素のうち、センサ素子101以外の回路系は制御装置110の要素となっている。
図1に示すセンサ素子101は、それぞれがジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性固体電解質からなる第1基板層1と、第2基板層2と、第3基板層3と、第1固体電解質層4と、スペーサ層5と、第2固体電解質層6との6つの層が、図面視で下側からこの順に積層された構造を有する細長な長尺の板状体形状の素子である。また、これら6つの層を形成する固体電解質は緻密な気密のものである。係るセンサ素子101は、例えば、各層に対応するセラミックグリーンシートに所定の加工および回路パターンの印刷などを行った後にそれらを積層し、さらに、焼成して一体化させることによって製造される。
センサ素子101の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面と第1固体電解質層4の上面との間には、ガス導入口10と、第1拡散律速部11と、緩衝空間12と、第2拡散律速部13と、第1内部空所20と、第3拡散律速部30と、第2内部空所40とが、この順に連通する態様にて隣接形成されてなる。
ガス導入口10と、緩衝空間12と、第1内部空所20と、第2内部空所40とは、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられた上部を第2固体電解質層6の下面で、下部を第1固体電解質層4の上面で、側部をスペーサ層5の側面で区画されたセンサ素子101内部の空間である。
第1拡散律速部11と、第2拡散律速部13と、第3拡散律速部30とはいずれも、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられる。なお、ガス導入口10から第2内部空所40に至る部位をガス流通部とも称する。
また、ガス流通部よりも先端側から遠い位置には、第3基板層3の上面と、スペーサ層5の下面との間であって、側部を第1固体電解質層4の側面で区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられている。基準ガス導入空間43には、NOx濃度の測定を行う際の基準ガスとして、例えば大気が導入される。
大気導入層48は、多孔質アルミナからなる層であって、大気導入層48には基準ガス導入空間43を通じて基準ガスが導入されるようになっている。また、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面と第1固体電解質層4とに挟まれる態様にて形成される電極であり、上述のように、その周囲には、基準ガス導入空間43につながる大気導入層48が設けられている。また、後述するように、基準電極42を用いて第1内部空所20内や第2内部空所40内の酸素濃度(酸素分圧)を測定することが可能となっている。
ガス流通部において、ガス導入口10は、外部空間に対して開口してなる部位であり、該ガス導入口10を通じて外部空間からセンサ素子101内に被測定ガスが取り込まれるようになっている。
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所20導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
被測定ガスが、センサ素子101外部から第1内部空所20内まで導入されるにあたって、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によってガス導入口10からセンサ素子101内部に急激に取り込まれた被測定ガスは、直接第1内部空所20へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所20へ導入されるようになっている。これによって、第1内部空間へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
第1内部空所20は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、第1内部空所20に面する第2固体電解質層6の下面のほぼ全面に設けられた天井電極部22aを有する内側ポンプ電極22と、第2固体電解質層6の上面の天井電極部22aと対応する領域に外部空間に露出する態様にて設けられた外側ポンプ電極23と、これらの電極に挟まれた第2固体電解質層6とによって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所20を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6および第1固体電解質層4)、および、側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所20の天井面を与える第2固体電解質層6の下面には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成され、そして、それら天井電極部22aと底部電極部22bとを接続するように、側部電極部22c(図示省略)が第1内部空所20の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されて、該側部電極部22cの配設部位においてトンネル形態とされた構造において配設されている。
内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とは、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPtとZrO2のサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた、あるいは、還元能力のない材料を用いて形成される。
主ポンプセル21においては、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間にセンサ素子101の外部に備わる可変電源24により所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に正方向あるいは負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所20内の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間の酸素を第1内部空所20に汲み入れることが可能となっている。
また、第1内部空所20における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22と、第2固体電解質6と、スペーサ層5と、第1固体電解質4と、第3基板層3と、基準電極42とによって、電気化学的なセンサセル、すなわち、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80が構成されている。
主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所20内の酸素濃度(酸素分圧)がわかるようになっている。さらに、起電力V0が一定となるようにVp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これによって、第1内部空所内20内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部30は、第1内部空所20で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所40に導く部位である。
第2内部空所40は、第3拡散律速部30を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度の測定は、主として、補助ポンプセル50により酸素濃度が調整された第2内部空所40において、さらに、測定用ポンプセル41の動作によりNOx濃度が測定される。
第2内部空所40では、あらかじめ第1内部空所20において酸素濃度(酸素分圧)が調整された後、第3拡散律速部を通じて導入された被測定ガスに対して、さらに補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が行われるようになっている。これにより、第2内部空所40内の酸素濃度を高精度に一定に保つことができるため、係るガスセンサ100においては精度の高いNOx濃度測定が可能となる。
補助ポンプセル50は、第2内部空所40に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、センサ素子101外側の適当な電極であれば足りる)と、第2固体電解質層6とによって構成される、補助的な電気化学的ポンプセルである。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所20内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態とされた構造において、第2内部空所40内に配設されている。つまり、第2内部空所40の天井面を与える第2固体電解質層6に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所40の底面を与える第1固体電解質層4には、底部電極部51bが形成され、そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部51c(図示省略)が、第2内部空所40の側壁を与えるスペーサ層5の両側面にそれぞれ形成されたトンネル形態の構造となっている。
なお、補助ポンプ電極51についても、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中のNOx成分に対する還元能力を弱めた、あるいは、還元能力のない材料を用いて形成される。
補助ポンプセル50においては、補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23との間に、センサ素子101外部に備わる可変電源46を通じて所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所40内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、あるいは、外部空間から第2内部空所40内に汲み入れることが可能となっている。
また、第2内部空所40内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51と、基準電極42と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより第2内部空所40内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これとともに、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部30から第2内部空所40内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所40内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
測定用ポンプセル41は、第2内部空所40内において、被測定ガス中のNOx濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、第2内部空所40に面する第1固体電解質層4の上面であって第3拡散律速部30から離間した位置に設けられた測定電極44と、外側ポンプ電極23と、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4とによって構成された電気化学的ポンプセルである。
測定電極44は平面視ほぼ矩形状の多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第2内部空所40内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。さらに、測定電極44は、第4拡散律速部45によって被覆されてなる。
第4拡散律速部45は、アルミナ(Al23)を主成分とする多孔体にて構成される膜である。第4拡散律速部45は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うとともに、測定電極44の保護層としても機能する。
測定用ポンプセル41においては、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2(ポンプ電流Ip2は、ガスセンサ100において得られるセンサの出力の1つであり、以下、測定用ポンプセル41において、測定電極44の周囲の酸素を汲み出すことにより発生する電流Ip2を、センサ出力Ip2とも称する)として検出することができる。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、測定電極44と、基準電極42とによって電気化学的なセンサセル、すなわち、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出された起電力V2に基づいて可変電源46が制御される。
第2内部空所40内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で第4拡散律速部45を通じて測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出されたV2が一定となるように可変電源46の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、第2固体電解質層6と、スペーサ層5と、第1固体電解質層4と、第3基板層3と、外側ポンプ電極23と、基準電極42とから電気化学的なセンサセル83が構成されており、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能となっている。
さらに、センサ素子101は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、センサ素子を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ部70を備えている。ヒータ部70は、ヒータ電極71と、ヒータ72と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74、圧力放散孔75とを備えている。
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を外部電源と接続することによって、外部からヒータ部70へ給電することができるようになっている。
ヒータ72は、第2基板層2と第3基板層3とに上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体である。ヒータ72は、スルーホール73を介してヒータ電極71と接続されており、該ヒータ電極71を通して外部より給電されることにより発熱し、固体電解質層を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。
また、ヒータ72は、第1内部空所20から第2内部空所40の全域に渡って埋設されており、センサ素子101全体を上記固体電解質が活性化する温度に加熱して保温できるようになっている。
ヒータ絶縁層74は、ヒータ72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2および第3基板層3とヒータ72との間の電気的絶縁性、つまり、センサ素子101の各電極とヒータ72との電気的絶縁性を得る目的で形成されている。
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し基準ガス導入空間43に連通させられてなる部位であり、温度上昇に伴うヒータ絶縁層74内の内圧上昇が緩和され得るようになっている。
このような構成を有するガスセンサ100においては、主ポンプセル21と補助ポンプセル50とを作動させることによって酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスが測定用ポンプセル41に与えられる。従って、NOxの還元によって発生する酸素が汲み出されることによって測定用ポンプセル41を流れるポンプ電流Ip2は、還元されるNOx濃度に比例することになる。これに基づいて、被測定ガス中のNOx濃度を知ることができるようになっている。
<ガスセンサの感度の劣化とセンサ出力の補正>
ガスセンサ100を自動車エンジン等の内燃機関の排気系に取り付けて、実際にガスセンサとして使用し続けると、測定対象とするガス成分に対するガスセンサ100の感度は徐々に低下してしまう。すなわち、ガスセンサ100のセンサ出力が変化してしまう。さらに、このようなガスセンサ100の感度の劣化は、ガスセンサ100の測定精度の低下につながることとなる。
図3は、ガスセンサ100の感度劣化の例を模式的に示す図である。図3においては、感度の劣化していないガスセンサ100におけるNO濃度とセンサ出力Ip2との関係、および、感度劣化後のガスセンサ100におけるNO濃度とセンサ出力Ip2との関係を示す。
図3において、特性線L1は、感度の劣化していないガスセンサ100におけるNOx濃度とセンサ出力Ip2との関係を示している。また、NO濃度が500ppmのときのセンサ出力Ip2をIpAとして示す。
ガスセンサ100においては、その製造時に、既知の濃度のNOxの測定を行い、このときのセンサ出力Ip2を検出する。これによってNOx濃度とセンサ出力Ip2とが対応づけられることとなり、対応づけが正確なこの状態のガスセンサ100を感度の劣化していないガスセンサ100とする。例えば、製品として出荷する際のガスセンサ100は、感度の劣化していないガスセンサ100といえる。
センサ出力Ip2とNOx濃度との対応づけは、例えば、まず、図3にて特性線L1で示す感度の劣化していないガスセンサ100について、NO濃度が500ppmのときのセンサ出力Ip2、NO濃度が0ppmのときのセンサ出力Ip2の値を測定する。さらに、NO濃度とセンサ出力Ip2とは比例するので、これを利用してNO濃度とセンサ出力Ip2とを対応づける。なお、この対応づけにおいて、測定するNO濃度は0ppmと500ppmとの2種類に限られるものではない。また、センサ出力Ip2の大きさは測定電極44付近の酸素の量に依存し、この酸素の量は、NOxが分解されて生じる酸素の量に依存するため、NOx濃度とセンサ出力Ip2との間には比例関係がある。
また、特性線L2は感度劣化後のガスセンサ100におけるNO濃度とセンサ出力Ip2との関係を示している。また、NO濃度が500ppmのときのセンサ出力Ip2をIpBとして示す。また、NO濃度が0ppmのときのセンサ出力Ip2をIpBoとして示す。
感度劣化後のガスセンサ100とは、実使用環境下で被測定ガス中の所定ガス(NOx)濃度を実際に測定した際、第4拡散律速部45への汚染物質の目詰まりなどを原因としてガスセンサとしての感度は低下しているものの、NOx濃度および酸素濃度とセンサ出力Ip2と間の比例関係が著しく失われていないガスセンサ100をいう。
また、NO濃度が0ppmのときの特性線L1、L2のセンサ出力Ip2の値である、IpAoとIpBoとはほとんど同じ値を示すため、それらの平均値Ipo1をとるなどしてIpAo、IpBoを同一の値としてもよい。なお、NO濃度が0ppmの際にも微量な電流Ip2が流れることになる。
図3に表されるように、感度劣化後のガスセンサ100を示すL2においては、初期のガスセンサ100を示すL1より測定用ポンプセル41を流れる電流Ip2(センサ出力Ip2)が小さくなっている。すなわち、ガスセンサ100の感度が劣化している。
ガスセンサの感度の劣化が生じる原因は複数あるが、主な要因の一つとしては、上述したように、エンジン等の内燃機関の駆動によって生じる排気ガスに含まれるNa、Mg、Ca等の汚染物質がセンサ素子101内部に侵入し、さらに、測定電極44を保護する、多孔体にて形成される保護膜たる第4拡散律速部45を目詰まりさせることがある。
測定対象とする所定ガス成分がNOxなどの場合、上記のような感度劣化に対しては、既知の濃度のNOx成分を含むガスを作製し、これを劣化後のガスセンサで実際に測定して、NOx濃度とセンサ出力との関係を調べることによって、NOx濃度と感度劣化後センサ出力とを対応づけることで、感度劣化によるセンサ出力の変化を補正することができる。
しかしながら、例えば、ガスセンサを自動車エンジン等の内燃機関の排気系に取り付けて、内燃機関を駆動させる際(ガスセンサの実使用の際)、自動車エンジンの排気系において、所定の濃度のNOxを含むガスの作製することは容易ではない。したがって、このような状況においては、既知の濃度のNOxを含むガス対する感度劣化後のセンサ出力を測定し、これらを対応づける、といった方法でセンサ出力の補正を行うことは困難となる。
一方、係るガスセンサ100においては、第1内部空所20における主ポンプセル21と、第2内部空所内における補助ポンプセル50との動作により、酸素濃度を高精度に測定し制御することが可能となっている。実際、係るガスセンサ100において、このような酸素濃度の制御は、感度劣化の影響をほとんど受けることなく行うことができる。
本願発明においては、係るガスセンサ100が高い精度で酸素濃度を制御可能であることを利用して、感度劣化後に測定されたセンサ出力Ip2の値の補正を行っている。このため、本補正は車両停止時(例えば、車両の点検時)はもとより、運転中でも回路側の制御方法を変更することにより補正が可能である。
以下、ガスセンサ100の感度劣化によるセンサ出力の変化に対する補正方法、特に、第4拡散律速部45における汚染物質による目詰まりによるセンサの感度劣化に起因するセンサ出力の変化を補正する方法について詳細に説明する。
<第1の補正方法>
次に、ガスセンサ100の使用に伴う第4拡散律速部45を形成する多孔体の目詰まりによる感度劣化を原因とするセンサ出力の変化を補正する第1の補正方法について説明する。第1の補正方法においては、係るガスセンサ100の劣化前後の酸素濃度とセンサ出力との関係に基づいて、劣化後のガスセンサ100のNOx測定におけるセンサ出力Ip2を補正する。
酸素濃度を測定するときのセンサ出力Ip2と同様に、NOx濃度を測定するときのセンサ出力Ip2も、測定電極44上で起こるNO→N2+O2の還元反応で発生するO2を測定しているので、これらのセンサ出力Ip2はともに第4拡散律速部45における拡散抵抗の影響を同様に受けることとなる。このため、初期のガスセンサ100と感度劣化後のガスセンサ100との酸素濃度を測定したときのセンサ出力Ip2の変化の割合と、NOxを測定したときに2NO→N2+O2の還元発生するO2によるセンサ出力Ip2の変化の割合とはほぼ同様であるといえる。
このことを利用して、O2測定によるセンサ出力Ip2の変化からNOx測定による出力センサIp2の変化を算出し、さらに補正を行うことにより、本来測定されるべき値(もしそのガスセンサが初期状態であったならば得られるべきセンサ出力Ip2の値)となるように補正を行うことができる。
まず、感度劣化前後のガスセンサ100とセンサ出力Ip2との関係について説明する。図4は、感度劣化していないガスセンサ100と感度劣化後のガスセンサ100とにおいて、酸素濃度とセンサ出力Ip2との関係を模式的に示す図である。図4において、L3は、感度劣化していないガスセンサ100の酸素濃度とセンサ出力Ip2との関係を示す。また、酸素濃度が1000ppmのときのセンサ出力Ip2をIpCで表している。また、酸素濃度が0ppmのときのセンサ出力をIpCoで表している。図4において、L4は、感度劣化後のガスセンサ100の酸素濃度とセンサ出力Ip2との関係を示す。酸素濃度が1000ppmのときのセンサ出力Ip2をIpDで表している。また、酸素濃度が0ppmのときのセンサ出力Ip2をIpDoで表している。
なお、酸素濃度が0ppmのときのL3およびL4の値はほとんど同じ値であるため、センサ出力値IpCoとIpDoとの平均値Ipo2を求め、その平均値Ipo2を用いることによって、センサ出力値IpCoとIpDoとを同一の値Ipo2としてもよい。
図4において、感度劣化していないガスセンサ100のセンサ出力Ip2を表す特性線L3に対して、感度劣化後のL4はセンサ出力Ip2の値が低下している。すなわち、特性線L4において、酸素濃度に対してセンサ出力Ip2の感度が劣化している。
以下、具体的な補正方法を説明するが、そこでは用語を次のように使い分ける。
(1) 「初期センサ」(初期状態のセンサ)=NOx測定の使用前または使用開始初期であっても、劣化がほとんど進んでいないガスセンサ100。典型的には出荷前のガスセンサ100である。
(2) 「現用センサ」=現在使用されており、NOx測定を繰り返すことによって感度劣化が生じている状態での(あるいは劣化が生じつつある状態での)ガスセンサ100。実際に自動車などに搭載されているガスセンサに相当し、この状態にあるガスセンサ100が実際の補正対象となる。
(3) 参照用センサ=補正対象となるガスセンサ100と同じ構成を持つが、補正対象とは別個体のセンサ。これは「第1の補正方法」では使用されず、「第2の補正方法」で使用される。
図5は、第1の補正方法の内容をデータの流れとの関係で示す図であり、各ステップの参照符号がカッコ上に記載されている。
まず、初期センサを使用して、第2内部空所40内が酸素濃度1000ppmであるときのセンサ出力Ip2を検出する(ステップS1)。このときの電流Ip2の値をIpCとする。
酸素濃度は1000ppmに限られる必要はないが、実使用環境下の被測定ガスはNOx成分を含んでいることがあるため、NOxが測定電極44により分解しない程度の酸素濃度(0.01ppm〜10000ppm程度の範囲)であることが好適である。つまり、被測定ガス中の酸素成分のうちNOx由来の酸素成分を実質的に生じさせずに酸素分子由来の酸素だけを生じさせた環境を作る。また、上述したように、係るガスセンサ100においては、このような範囲の酸素濃度は第1内部空所20の主ポンプセル21と第2内部空所40の補助ポンプセル50との2つのポンプセルの作動によって高精度に制御され実現される。
なお、係る補正方法においては、測定電極44と外側ポンプ電極23との間の電圧を400mVとして印加した場合を例として説明する。
次に、初期センサにおいて、第2内部空所40内の酸素濃度が0ppmのときのセンサ出力Ip2を検出する(ステップS2)。このときのセンサ出力Ip2の値をIpCoとする。また、差分値:
ΔIpC=IpC−IpCo …(式1)
を算出する(ステップS3)。
これらにおいて、2つの測定値での酸素濃度差が1000ppmと0ppmであるから、初期の酸素出力特性としての変化率P0と上記差分値ΔIpCとは、
P0=ΔIpC/1000 …(式2)
の関係にあるため、実質的には線形近似での変化率P0を求めていることになる。
次に、NO濃度が0ppmのときの初期センサの出力値IpAoを検出する(ステップS4)。図3にも示されているようにNO濃度が0ppmのときには、この出力値IpAoは、現用センサの出力値IpBoとほぼ同じ値になるから、ここでの例では、初期センサ出力値IpAoを現用センサの出力値IpBoの代用として後に用いる。
以上は、ガスセンサ100の出荷前または自動車搭載前に行われ、得られた各値はガスセンサ100の制御装置110中のメモリ112に記憶される。
以下は、自動車に搭載されてNOx測定に使用されているガスセンサ100(現用センサ)について行われる測定と演算であり、制御装置110の制御動作として実行される。まず、現用センサについて、酸素濃度1000ppmでのセンサ出力Ip2である電流値IpDを検出する(ステップS5)。用いる酸素濃度は、上記の初期センサの測定時の濃度と同じであり、第2内部空所40の酸素濃度が1000ppmとされ、また、測定電極44と外側ポンプ電極23との間に印加する電圧は400mVとされる。このときのセンサ出力Ip2の値をIpDとする。
さらに、現用センサについて、酸素濃度が0ppmのときの電流値Ip2を検出する(ステップS6)。このときの電流Ip2の値をIpDoとする。また、差分値:
ΔIpD=IpD−IpDo …(式3)
を算出してメモリ112に記憶しておく(ステップS7)。
これらにおいても、2つの測定値での酸素濃度差が1000ppmと0ppmであるから、現用センサの酸素出力特性としての変化率Pと上記差分値ΔIpDとは、
P=ΔIpD/1000 …(式4)
の関係にあるため、実質的には線形近似での変化率Pを求めていることになる。
次に、補正係数Kを、
K=ΔIpC/ΔIpD
=(IpC−IpCo)/(IpD−IpDo)
…(式5)
の式により算出する(ステップS8)。この補正係数Kの値もガスセンサ100の制御装置110中のメモリ112に記憶される。
ここまでで出力補正の準備は整ったことになり、これ以後は現用センサが通常の排ガス測定を行う動作と同期して行われる補正処理である。したがって、これ以後の動作は1回だけでなく、制御装置110の制御下で、排気ガスのNOx測定サイクルごとに短時間で繰り返して実行される。
まず、現用センサについて、排気ガスのNO濃度を測定し、その出力値としてIpBとして得る(ステップS9)。
すると、NOx濃度が0ppmのときの現用センサの出力値IpBo(=IpAo)からの上昇値に相当する差分値:
ΔIpB=IpB−IpBo …(式6)
が計算できる(ステップS10)。
したがって、この差分値を補正係数Kによって増幅させ、基準出力値IpBo(=IpAo)と加算することにより、補正後の現用センサのNOx測定出力値が
IpE =IpBo+K・ΔIpB …(式7)
の式から計算される(ステップS11)。
NOx濃度の変化率に対する補正前のセンサ出力の変化率をQとし、補正後のセンサ出力の変化率をQcとしたとき、その時点での実際のNOx濃度をDnoxとすると、上記の補正式より、
Q=ΔIpB/Dnox …(式8)
Qc=K・ΔIpB/Dnox …(式9)
の関係にあるから、変化率の関係としては、これらと(式2)(式4)とから、
Qc=(P/P0)・Q …(式10)
の関係を使用していることになる。
補正前のセンサ出力Qとして初期センサに対する出力特性をそのまま使用しているときには、
Q=Q0 …(式11)
の関係にあるから、(式10)は
Qc=(P/P0)・Q0 …(式12)
の形となる。
この補正後の電流値IpEに応じた測定信号が、NOx濃度の現在の(補正された)測定値としてエンジンの制御装置(ECU)に出力される。
以上のように、初期センサおよび現用センサにおける酸素濃度とセンサ出力との関係(酸素測定特性の変化状態)から補正係数Kが求められ、この補正係数Kを用いて現用センサのNOx測定出力に対する補正値ΔIpE=K・ΔIpBが算出されて、この補正値ΔIpEを使用することにより、現用センサの補正後の出力値IpEを算出することができる。
図6は、初期センサと補正前後の現用センサのNO濃度測定特性を模式的に示す図である。図6において特性線L1とL2は図3において示すものと同様ものであり、特性線L1は初期センサのNOx濃度とセンサ出力Ip2との関係、特性線L2は現用センサ(補正前)のNOx濃度とセンサ出力Ip2との関係を示す。また、特性線L2’は、現用センサの出力を上述の補正係数Kを用いて補正したセンサ出力Ip2を示す。
特性線L2’においては、特性線L2と比較して、特性線L1に大幅に近づいている。完全に一致しないのは、この補正式においては、第4拡散律速部45の目詰まりによる酸素量の低下による、電流Ip2の変化を算出しており、他の要因のガスセンサ100の感度の劣化は補正係数Kに含まれていないためである。しかしながら、特性線L2’は特性線L2と比較してその感度劣化の影響が大幅に補償されていることがわかる。
ガスセンサ100の感度の劣化は、ガスセンサ毎の使用状況により変化するため、実験データに基づいて補正するには、多くのデータや、それらに基づいて補正は可能であるものの誤差がどうしても生じてしまう。
一方、ここで説明した補正方法は、高精度で調整された酸素濃度に基づく出力によって、理論的な補正式に基づいて補正係数Kを算出してるため、安定した補正が可能となる。また、第4拡散律速部45の目詰まりによる感度劣化は、感度劣化の主要因であるため、感度劣化によるセンサ出力の変化の大部分を安定した精度で取り込む補正が可能である。
以上のように、感度劣化後のガスセンサ100の電流Ip2とNO濃度との関係が容易に測定しづらい場合であっても、上記の様な補正を行うことで第4拡散律速部45の汚染物質による目詰まりによる感度劣化によるセンサ出力の変化を補正することができる。
<第2の補正方法>
次に、補正の対象とするガスセンサ100(補正対象ガスセンサ)において、第1の補正方法の中で測定される差分値(図5のステップS3):
ΔIpC(=IpC−IpCo) …(式13)
の値を、補正対象センサ100とは同一の構造を持つが現用センサ100とは別個体の、劣化していない(つまり初期状態にある)参照用センサを用いて算出したうえで、第1の補正方法と同様の出力の補正をする方法(第2の補正方法)について説明する。
この発明では、ガスセンサの劣化状態を表す指標として、酸素濃度の測定特性の経時変化に着目しているため、補正対象のガスセンサが初期状態においてどのような酸素測定特性となっていたかについての情報が必要になる。そのような酸素測定特性を特定するプロセスは図5のステップS1〜S3に相当するが、ここで説明する第2の補正方法では、補正対象センサ100が初期状態にあったときに酸素濃度の測定特性を測定していなくても、初期状態でNOx測定特性がわかってさえいれば、初期状態の酸素測定特性を推定できるという原理に基づいている。
すなわち、第2の補正方法は、第1の補正方法の一部を変更して、まず、参照用センサの特性から補正対象の現用センサが初期状態にあった時期での酸素濃度とセンサ出力Ip2の関係を推定演算するものである。
第4拡散律速部45を形成する多孔体の目詰まりを原因とするガスセンサ100の感度の劣化を考える場合、同一のガスセンサ100においては、NOの濃度の測定においても実際にはO2を測定しているのであるから、NOの還元が安定して行われる場合は、NOの濃度を測定した場合とO2の濃度を測定した場合とでは、NO濃度の変化に対する電流Ip2の変化率と、O2濃度の変化に対する電流Ip2の変化率とは若干異なるものの、ほぼ一定の比率を保つことになる。つまり、傾きがほぼ同じになるということである。
ここでは、参照センサと補正対象センサとで同一のガスセンサを用いるわけではないが、これらは、同様の製造工程にて製造されてものであるので、ほぼ同じ変化をするものと思われる。
このことを利用して、現用の補正対象センサと初期状態にある参照用センサとを用いて、NOxとO2とを測定したときのIp2の比率をそれぞれ求め、それに基づいて補正対象センサの出力補正値を算出することができる。
図7は、第2の補正方法の流れを示す図である。初期状態にある参照用センサについて、酸素濃度1000ppmに対するセンサ出力IpFと、酸素濃度0ppmのときのセンサ出力IpFoとを測定する(ステップS21、S22)。あるいは、あらかじめ測定した値を用意する。
また、初期状態にある補正対象センサについて、NOx濃度500ppmに対するセンサ出力IpGと、NOx濃度0ppmのときのセンサ出力IpGoとを測定する(ステップS23,S24)。あるいは、予め測定した値を用意する。
また、初期状態にある参照センサについて、NOx濃度500ppmに対するセンサ出力IpAと、NOx濃度0ppmのときのセンサ出力IpAoとを予め測定し(図3参照)、それらの差分:
ΔIpA=IpA−IpAo …(式14)
を計算する(ステップS26)。
これらの値を使って、
ΔIpC’=ΔIpA×(ΔIpF/ΔIpG)
…(式15)
を計算し、補正対象とするガスセンサ100の初期状態において、酸素濃度が0ppmから1000ppmへ変化したときの
ΔIpC=IpC−IpCo …(式16)
の代わりに使用する(ステップS27)。
すなわち、差分値ΔIpC(ないしは変化率P0)は初期状態にある補正対象センサの酸素濃度検出特性を特徴づける値であるが、この酸素濃度検出特性が測定されていなくても、
・初期状態にある参照用センサの酸素濃度検出特性パラメータIpF、IpFoで表現される、酸素濃度に対するセンサ出力の変化率P1と、
・初期状態にある参照用センサのNOx濃度検出特性パラメータIpF、IpFoで表現される、NOx濃度に対するセンサ出力の変化率Q1と、
・初期状態にある補正対象センサのNOx濃度検出特性を特徴づける値ΔIpAで表現される、NOx濃度に対するセンサ出力の変化率Q0と、
を求めておけば、初期状態におけるNOx濃度検出特性と酸素濃度検出特性との関係を表現する比率(ΔIpF/ΔIpG)が求まることによって、差分値ΔIpCを近似的に与えるようなデータ値ΔIpC’を得ることができるのである。
変化率で表現すれば、
P0=P1×(Q0/Q1)…(式17)
の関係によって、初期状態にある補正対象センサの酸素濃度検出特性を特徴づける変化率P0を得ることができる。
このようにしてステップS27でデータ値ΔIpC’で近似されたΔIpCを、第1の補正方法におけるステップS1〜ステップS3の代わりに使用し、以後のステップS4〜ステップS11を行うことにより、第1の補正方法と同様に、劣化後のIpBを補正してセンサ出力補正後の電流Ip2である電流ΔIpEを算出する(ステップS28)。
<実験データによる補正>
既述した第1と第2の補正方法は、第4拡散律速部45におけるNa、Mg、Ca等の汚染物質による目詰まりによる感度劣化によるセンサ出力の変化を補正するものである。このことが、感度劣化の主要因であることが発明者によって確認されている。
第4拡散律速部45の汚染物質による目詰まりを直接の原因としない感度劣化については、それぞれ実験データ等による補正を併せて行う態様であってもよい。例えば、多数のガスセンサ100に対して、初期と感度劣化後とのNO濃度とIp2との関係、酸素濃度とIp2との関係、さらには、他のセンサ出力(ポンプ電流Ip0やポンプ電流Ip1)との関係から得られた結果に基づいてさらに補正することが可能である。
具体的には、センサ出力の酸素出力特性とNOx濃度依存性との相違を、実験データに基づいて補正因子gの値としてあらかじめ特定しておき、
上記の補正後のセンサ出力Qcに対してさらにこの補正因子gの値をかけて補正することにより、2重に補正されたセンサ出力Qc’を、
Qc’=g×Qc
のように得ることができる。図6に例示するように比例演算での補正が弱めであるときには、この補正因子gの値は1よりも大きな値となる。
これにより、感度劣化の主要因となる第4拡散律速部45の目詰まりによるセンサ出力の変化を理論式に基づいて安定した精度で補正を行いつつ、これに併せてさらに、実験や実使用されたガスセンサのデータに基づいて初期のガスセンサ100のセンサ出力に近づけることができる。
<変形例>
本実施の形態で説明した補正方法による補正は、ガスセンサ100で実施するだけでなく、自動車エンジン等の運転における電気的な制御を総合的に行うためのマイクロコントローラであるECU(エンジンコントロールユニット)を備えるようなガスセンシングシステムにおいて、ガスセンサ100のセンサ出力補正を行う態様であってもよい。この場合、センサ出力補正の制御はガスセンサ100側で行われる態様であっても、ECUによって行われる態様であってもよい。
実施例として、第2の実施の形態に係る補正方法によって、劣化していないガスセンサ100と、これとは別の劣化後のガスセンサ100とを用いて、劣化後のガスセンサ100の出力の補正を行った。
まず、外側ポンプ電極23と測定電極44との間に400mVの電圧を印加したときのセンサ出力Ip2の値を測定した。N2濃度を測定したときのセンサ出力Ip2は0.51μAであった。また、NO濃度が2000ppmのときのセンサ出力Ip2の値は6.31μAで、酸素濃度が1000ppmのときのセンサ出力Ip2の値は4.87μAであった。
さらに、NO濃度が2000ppmのときのセンサ出力Ip2の値6.31μAと、酸素濃度が1000ppmのときのセンサ出力Ip2の値4.87μAとのそれぞれから、N2を測定したときのセンサ出力Ip2の値0.51μAを差し引いた。すなわち、NOが0ppmから2000ppmまで変化したきのセンサ出力Ip2の値5.80μAは、NO濃度が2000ppm変化したときのセンサ出力Ip2の変化量である。NO濃度の変化に対するセンサ出力Ip2の値は比例するので、NO濃度が500ppm変化したときのセンサ出力Ip2の変化量は1.450μAとなる。
同様に、酸素濃度が1000ppmのときのセンサ出力Ip2の値4.87μAから酸素濃度が0ppmのときのセンサ出力Ip2の値0.51μAを差し引くと4.36μAとなる。酸素濃度とセンサ出力Ip2との間にも比例関係がある。このことから、酸素濃度が250ppm変化するときにセンサ出力Ip2は1.09μA変化することとなる。 以上から、NO濃度を0ppm〜500ppmに変化させたときのセンサ出力Ip2の変化量と、酸素濃度を0ppm〜250ppmに変化させたときのセンサ出力Ip2の変化量との比は、1.450:1.090となる。なお、以上の値は、表1に示してある。
Figure 0004980974
Figure 0004980974
表2は、NOの濃度が500ppmのときのセンサ出力Ip2と、NOの濃度が0ppmのときのセンサ出力Ip2との差において、劣化後のガスセンサの初期のセンサ出力Ip2と、劣化後のセンサ出力Ip2を示す。劣化後のガスセンサの初期のNOが500ppmのときのセンサ出力Ip2の値は1.655μAで、劣化後の500ppmのときのセンサ出力Ip2の値は1.011μAであった。
劣化後のガスセンサ100の初期の酸素濃度が250ppmのときのセンサ出力Ip2の値をxとすると、上述の劣化前のガスセンサ100の比を用いて、1.655:x=1.450:1.090で表すことができる。この式から、x=1.244となる。以上より、初期の酸素濃度に対するセンサ出力Ip2が算出された。
続いて、上述の外側ポンプ電極23と測定電極44との間に印加された電圧の大きさが400mVのときのセンサ出力Ip2を測定した。N2を測定したときの電流Ip2は0.33μAであった。また、酸素濃度が1000ppmのときのセンサ出力Ip2の値は4.05μAであった。さらに、酸素濃度が1000ppmのときのセンサ出力Ip2の値4.05μAからNOが0ppmのときのセンサ出力Ip2の値0.33μAを引いて、4で割ると0.930μAとなる。
以上から、劣化後のガスセンサ100の酸素濃度が250ppmに対する初期のセンサ出力Ip2(1.244μA)と、感度劣化後のセンサ出力Ip2(0.930μA)とがわかることとなる。
続いて、これらの値を用いて実際に補正係数を算出した。具体的には、第1の補正方法で説明したように、1.655μAに補正係数Kに対応する値である(1.09/1.45)を乗じることにより、1.344μAが算出される。
したがって、感度劣化後のガスセンサ100がNOの濃度が500ppmのときセンサ出力Ip2が1.011μAだったのが1.344μAまで補正されている。以上のように、実際の初期の値1.655μAに近づくことが確認された。
図8は、実施例におけるガスセンサの補正後のNO濃度とセンサ出力Ip2との関係を示す図である。L5は、劣化していないガスセンサ100のNO濃度とセンサ出力Ip2との関係を示し、L6は、劣化後のガスセンサ100のNO濃度とセンサ出力Ip2との関係を示し、L7は、劣化後のガスセンサ100の出力を補正したセンサ出力Ip2を示す。図8に示すように、理論式に基づいて、第4拡散律速部45の目詰まりによるセンサ出力Ip2の出力低下を補正してやることで、出力低下が大幅に改善されていることがわかる。
ガスセンサ100の構成を概略的に示す断面模式図である。 ガスセンサ100におけるセンサ素子と制御装置との結合を示す概念図である。 感度劣化によるNO濃度と電流Ip2との関係の変化を模式的に示す図である。 初期のガスセンサ100と感度劣化後の現用センサ100とにおける酸素濃度とIp2との関係を模式的に示す図である。 第1の補正方法の流れを示す図である。 初期のガスセンサ100、感度劣化後の現用センサ100、センサ出力補正後のガスセンサ100におけるNO濃度と電流Ip2との関係を模式的に示す図である。 第2の補正方法の流れを示す図である。 初期のガスセンサ100、感度劣化後のガスセンサ100、センサ出力補正後のガスセンサ100におけるNO濃度と電流Ip2との関係を示す図である。
符号の説明
20 第1内部空所
21 主ポンプセル
40 第2内部空所
41 測定用ポンプセル
44 測定電極
45 第4拡散律速部
50 補助ポンプセル
100 ガスセンサ
101 センサ素子
110 制御装置
Ip2 センサ出力

Claims (11)

  1. 被測定ガス中のNOx濃度を測定するガスセンサであって、
    (a) 被測定ガス中の酸素濃度を制御する酸素制御部と、前記酸素制御部を経た後の被測定ガス中のNOxを還元して酸素を発生させつつ被測定ガス中の酸素量を検出してNOx濃度を測定する測定部とを有するセンサ素子と、
    (b) 前記センサ素子を制御する制御装置と、
    を備え、
    前記酸素濃度に対する前記センサ出力の特性を酸素出力特性と呼ぶとき、
    前記制御装置が、
    前記センサ素子における現状の酸素出力特性を検出する検出手段と、
    前記センサ素子における初期の酸素出力特性と前記現状の酸素出力特性との相違に応じて、被測定ガス中のNOxの検出についてのセンサ出力を補正する補正手段と、
    を備えることを特徴とするガスセンサ。
  2. 請求項1に記載のガスセンサにおいて、
    前記補正手段は、前記相違を表現した補正係数を用いて前記センサ出力を補正することを特徴とするガスセンサ。
  3. 請求項1または請求項2に記載のガスセンサにおいて、
    前記現状の酸素出力特性が、酸素濃度の変化に対するセンサ出力の変化率Pによって表現されるとともに、
    前記初期の酸素出力特性が、酸素濃度の変化に対するセンサ出力の変化率P0によって表現され、
    前記補正手段が、NOx濃度の変化に対するセンサ出力の変化率Qを前記変化率P、P0に基づいて補正することを特徴とするガスセンサ。
  4. 請求項3に記載のガスセンサにおいて、
    前記変化率Qに対して前記補正を行った後の変化率をQcとすると、
    前記補正手段が、前記変化率Qcを、
    比例演算:Qc=(P/P0)×Q
    に基づいて求めることを特徴とするガスセンサ。
  5. 請求項4に記載のガスセンサにおいて、
    前記初期の酸素出力特性P0が、前記センサ素子が初期状態にあるときの当該センサ素子についての実測によって決定されていることを特徴とするガスセンサ。
  6. 請求項4に記載のガスセンサにおいて、
    前記センサ素子と同じ構造を有する別個体のセンサ素子を参照センサ素子としたとき、
    初期状態の前記参照センサ素子について、酸素濃度の変化に対するセンサ出力の変化率をP1とし、
    初期状態の前記参照センサ素子について、NOx濃度の変化に対するセンサ出力の変化率をQ1とし、
    補正対象のセンサ素子が初期状態にあるときの、NOx濃度の変化に対するセンサ出力の変化率をQ0としたとき、
    前記変化率P0が、
    比例演算:P0=P1×(Q0/Q1)
    に基づいて算出されていることを特徴とするガスセンサ。
  7. 請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のガスセンサにおいて、
    前記センサ出力の酸素出力特性とNOx濃度依存性との相違が、補正因子の値としてあらかじめ実験データに基づいて特定されており、
    前記補正手段は、前記補正因子を用いて前記変化率Qcをさらに補正することを特徴とするガスセンサ。
  8. 被測定ガスの酸素濃度を制御する酸素制御部と、前記酸素制御部を経た後の被測定ガス中のNOxを還元して酸素を発生させつつ被測定ガス中の酸素量を検出してNOx濃度を測定する測定部とを有するセンサ素子を制御するガスセンサ制御装置であって、
    前記酸素濃度に対する前記センサ出力の特性を酸素出力特性と呼ぶとき、
    前記制御装置が、
    前記センサ素子における現状の酸素出力特性を検出する検出手段と、
    前記センサ素子の初期の酸素出力特性と前記現状の酸素出力特性との相違に応じて、被測定ガス中のNOxの検出についてのセンサ出力を補正する補正手段と、
    を備えることを特徴とするガスセンサ制御装置。
  9. 前記センサ素子に付随して設けられていることを特徴とする請求項8に記載のガスセンサ制御装置。
  10. 前記センサ素子とは別に、エンジンコントロールユニット内に組み込まれていることを特徴とする請求項8に記載のガスセンサ制御装置。
  11. 被測定ガスの酸素濃度を制御する酸素制御部と、前記酸素制御部を経た後の被測定ガス中のNOxを還元して酸素を発生させつつ被測定ガス中の酸素量を検出してNOx濃度を測定する測定部とを有するセンサ素子を用いて被測定ガス中のNOx濃度を測定する方法であって、
    前記酸素濃度に対する前記センサ出力の特性を酸素出力特性と呼ぶとき、
    前記センサ素子についての現状の酸素出力特性を検出する検出工程と、
    前記センサ素子の初期の酸素出力特性と前記現状の酸素出力特性との相違に応じて、被測定ガス中のNOxの検出についてのセンサ出力を補正する補正工程と、
    を備えることを特徴とするNOx濃度測定方法。
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