JP2023103962A - ガスセンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立可能なガスセンサ素子を提供する。【解決手段】本発明の一側面に係るガスセンサは、被測定ガス中の所定のガス成分の濃度が所定の濃度に比べて高いか低いかを判定し、低いと判定すると、高いと判定する場合よりも、ヒータ部によって加熱されることでセンサ素子が至る所定の温度を低く設定する。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスセンサに関する。
従来、自動車の排気ガス等の被測定ガスにおける酸素やNOxなどの特定ガス濃度を検出するガスセンサについて、センサ素子を構成する酸素イオン伝導性の固体電解質を活性化させるべく、内部にヒータを埋設したセンサ素子を備えるガスセンサが知られている。例えば、下掲の特許文献1には、内部にヒータを埋設し、測定用ポンプセルのインピーダンスが一定になるようにヒータの電力を制御するセンサ素子を備えるガスセンサが開示されている。
特開平10-318979号公報
今後、自動車の排気ガス規制の強化等に伴い、ガスセンサには、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定だけでなく、特定ガスの濃度が低い環境下においても高精度な濃度測定が求められると予測される。このような観点から検討を進めたところ、本件発明者は、上述のような構造を有する従来のガスセンサには、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立することが困難であるとの問題点を見出した。以下、詳細を説明する。
本件発明者は、先ず、被測定ガスにおける特定ガスの濃度を測定するガスセンサにおいては、一般に、濃度が低い環境下においては、測定精度にオフセット値の変動が大きく影響してしまうとの問題点があることを見出した。すなわち、測定される濃度は、オフセット値の変動によって数ppm変化するため、オフセット値の変動が一定であったとしても、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が低ければ低いほど、測定精度に対するオフセット値の変動の影響は大きくなる。例えば、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が500ppmである場合、オフセット値が5ppm変動しても、オフセット値の変動による誤差は1%にとどまる。これに対して、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が50ppmである場合、オフセット値が5ppm変動すると、オフセット値の変動による誤差は10%となり、オフセット値の変動は、測定精度に大きく影響する。
ここで、オフセット値の変動の一因として、ヒータの設定温度、被測定ガスの温度等によるセンサ素子(特に、測定電極などの電極)の温度の変動が考えられる。そこで、本件発明者は、センサ素子の温度を下げることによって、つまり、ヒータの温度を下げることによって、オフセット値の変動を抑えることを検討した。
その結果、本件発明者は、単純にセンサ素子(電極)の温度を下げただけでは、測定精度が低下してしまう恐れがあるとの問題点があることを見出した。すなわち、センサ素子の温度を下げてしまうと、被測定ガス中の特定ガスの分解反応が抑制されることで特定ガスに対する感度が下がってしまう恐れがあり、特に、特定ガスの濃度が高い場合に、測定精度が悪化する恐れがある。
本発明は、一側面では、このような事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立可能なガスセンサ素子を提供することである。
本発明は、上述した課題を解決するために、以下の構成を採用する。
第1の観点に係るガスセンサは、酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数積層してなるセンサ素子であって、被測定ガスが導入される内部空所と、前記内部空所に設けられてなる測定電極と、前記内部空所と異なる部位に設けられた外側ポンプ電極と、前記測定電極と前記外側ポンプ電極との間に存在する前記固体電解質層と、から構成される電気化学的ポンプセルである測定用ポンプセルと、前記センサ素子の内部に埋設されてなり、前記センサ素子を所定の温度に加熱するヒータ部と、を含むセンサ素子と、前記測定用ポンプセルの出力に基づいて、前記被測定ガス中の所定のガス成分の濃度が、所定の濃度に比べて高いか低いかを判定する判定部と、前記判定部によって前記濃度が低いと判定されると、前記濃度が高いと判定される場合よりも、前記所定の温度を低く設定する温度設定部と、を備えている。
当該構成では、前記ヒータ部によって加熱されることで前記センサ素子が至る「前記所定の温度」は、前記被測定ガス中の所定のガス成分の濃度が低いと判定されると、前記濃度が高いと判定される場合よりも、低く設定される。つまり、前記所定のガス成分の濃度が低い時は「前記所定の温度」は下げられ、前記所定のガス成分の濃度が高い時は「前記所定の温度」は上げられる。
そのため、前記所定のガス成分の濃度が低い時は、前記所定の温度を下げてオフセット値の変動を抑えることができ、また、前記所定のガス成分の濃度が高い時は、前記所定の温度を上げて、被測定ガス中の特定ガスの分解反応が抑制されるのを防ぐことができる。また、前記所定のガス成分の濃度が高い時に前記所定の温度を上げることによって、長期間にわたってガスセンサを使用する場合の出力の変化を抑制することも可能となる。
したがって、上記第1の観点に係るガスセンサは、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立することができる。
第2の観点に係るガスセンサは、上記第1の観点に係るガスセンサにおいて、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、200[ohm/W]以上であってもよい。当該構成では、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、200[ohm/W]以上である。ここで、前記ヒータ部への投入パワーの変化に対して、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値が大きく変化する場合、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値の制御に要する前記投入パワー(の変化)を小さくすることができる。つまり、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きを大きくすることで、前記ヒータ部への小さな投入パワー(の変化)によって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御することができる。そして、本件発明者は、実験により、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、例えば、大気下で200[ohm/W]以上とすることが望ましいことを確認した。したがって、上記第2の観点に係るガスセンサは、前記投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きを200[ohm/W]以上とすることで、小さな前記投入パワーによって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御することができる。なお、「ヒータ部への投入パワーに対する、セル抵抗の傾き」は、例えば、「大気中での、ヒータ部への投入パワーに対する、セル抵抗の傾き」である。
第3の観点に係るガスセンサは、上記第1または上記第2の観点に係るガスセンサにおいて、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、5000[ohm/W]以下であってもよい。当該構成では、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、5000[ohm/W]以下である。ここで、前述の通り、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きを大きくすることで、前記ヒータ部への小さな投入パワー(の変化)によって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御することができる。そして、本件発明者は、実験により、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、例えば、大気下で5000[ohm/W]以下とすることが望ましいことを確認した。したがって、上記第3の観点に係るガスセンサは、前記投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きを5000[ohm/W]以下とすることで、小さな前記投入パワーによって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御することができる。
第4の観点に係るガスセンサは、上記第1から上記第3の何れかの観点に係るガスセンサにおいて、前記センサ素子は、前記内部空所に面して形成された内側ポンプ電極と、前記外側ポンプ電極または前記固体電解質層に接して外部空間に露出する態様にて設けられた第3電極と、前記内側ポンプ電極と前記外側ポンプ電極または前記第3電極との間に存在する前記固体電解質層と、から構成される電気化学的ポンプセルである調整用ポンプセルをさらに1つ以上含み、前記測定用ポンプセルには、前記調整用ポンプセルにおいて前記被測定ガスに含まれる酸素がポンピング処理された後の前記被測定ガスが導入され、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きよりも大きくてもよい。
当該構成では、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きよりも大きい。つまり、この構成において、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きに比べて、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは大きい。また、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きに比べて、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きは小さい。
このような構成を採用することにより、上記第4の観点に係るガスセンサは、小さな前記投入パワーによって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御できると共に、前記調整用ポンプセルの温度が必要以上に高温になったり低温となったりすることがない。
前述の通り、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きを大きくすることで、前記ヒータ部への小さな投入パワー(の変化)によって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御することができる。
また、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きを小さくすることで、前記調整用ポンプセルの温度を好適に制御することが容易になり、前記被測定ガス中の所定のガスの分解反応を制御することができる。
すなわち、前記調整用ポンプセルの温度が必要以上に高いと、前記調整用ポンプセルにおいて前記被測定ガス中の所定のガスと前記内側ポンプ電極との反応が増加することで、前記被測定ガス中の所定のガスの分解反応が過剰に促進されてしまう。また、前記調整用ポンプセルの温度が必要以上に低いと、前記調整用ポンプセルのポンプ電圧が増加することで、前記被測定ガス中の所定のガスの分解反応が過剰に促進されてしまう。
これに対して、上記第4の観点に係るガスセンサは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きが小さいため、前記調整用ポンプセルの温度を好適に制御することができる。上記第4の観点に係るガスセンサは、前記調整用ポンプセルの温度を好適に制御するので、前記調整用ポンプセルの温度が必要以上に高温または低温となることがなく、前記被測定ガス中の所定のガスの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制することができる。
したがって、上記第4の観点に係るガスセンサは、小さな前記投入パワーによって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御でき、また、前記調整用ポンプセルの温度を好適に制御して、前記所定のガスの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制できる。
第5の観点に係るガスセンサは、上記第4の観点に係るガスセンサにおいて、前記判定部によって前記濃度が低いと判定されると、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値は、所定の第1の値になるよう制御され、前記判定部によって前記濃度が高いと判定されると、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値は、前記第1の値とは異なる、所定の第2の値になるよう制御されてもよい。当該構成では、前記濃度が低いと判定されると、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値は、前記第1の値になるよう制御され、また、前記濃度が高いと判定されると、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値は、前記第2の値になるよう制御される。そのため、上記第5の観点に係るガスセンサは、前記被測定ガス中の所定のガス成分の濃度ではなく、時間の経過(例えば、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値の変動)によって、測定結果が変動してしまうという事態が発生するのを抑制することができる。
第6の観点に係るガスセンサは、上記第4または上記第5の観点に係るガスセンサにおいて、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きの10倍から1000倍であってもよい。当該構成では、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きの10倍から1000倍である。前述の通り、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きよりも大きいことが望ましい。そして、本件発明者は、実験により、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きを、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きの10倍から1000倍とすることが望ましいことを確認した。したがって、上記第6の観点に係るガスセンサは、小さな前記投入パワーによって、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値を制御でき、また、前記調整用ポンプセルの温度を好適に制御して、前記所定のガスの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制できる。
なお、上記各観点に係るガスセンサの別の態様として、本発明の一側面は、以上の各構成の全部又はその一部を実現する情報処理方法であってもよいし、プログラムであってもよいし、このようなプログラムを記憶した、コンピュータその他装置、機械等が読み取り可能な記憶媒体であってもよい。ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記憶媒体とは、プログラム等の情報を、電気的、磁気的、光学的、機械的、又は、化学的作用によって蓄積する媒体である。以上の各構成の全部又はその一部を実現する情報処理方法は、含む演算内容に応じて、例えば、ガスセンサの制御方法等と称されてよい。同様に、以上の各構成の全部又はその一部を実現するプログラムは、例えば、ガスセンサの制御プログラム等と称されてよい。
例えば、第7の観点に係るガスセンサの制御方法は、酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数積層してなるセンサ素子であって、被測定ガスが導入される内部空所と、前記内部空所に設けられてなる測定電極と、前記内部空所と異なる部位に設けられた外側ポンプ電極と、前記測定電極と前記外側ポンプ電極との間に存在する前記固体電解質層と、から構成される電気化学的ポンプセルである測定用ポンプセルと、前記センサ素子の内部に埋設されてなり、前記センサ素子を所定の温度に加熱するヒータ部と、を含むセンサ素子を備えるガスセンサの制御方法であって、前記測定用ポンプセルの出力に基づいて、前記被測定ガス中の所定のガス成分の濃度が、所定の濃度に比べて高いか低いかを判定する判定ステップと、前記判定ステップにて前記濃度が低いと判定されると、前記濃度が高いと判定される場合よりも、前記所定の温度を下げる温度設定ステップと、を実行する、情報処理方法である。
本発明によれば、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立可能なガスセンサ素子を提供することができる。
図1は、センサ素子の長手方向に沿った垂直断面図を含む、ガスセンサの構成の一例を概略的に示す図である。 図2は、図1のセンサにおけるセンサ素子駆動温度設定処理の概要を示す図である。 図3は、図1のセンサについて、ヒータ部への投入パワーに対する、測定用ポンプセルのセル抵抗の傾き等のイメージについて、一例を示す図である。 図4は、変形例に係るセンサについて、ヒータ部への投入パワーに対する、測定用ポンプセルのセル抵抗の傾き等のイメージについて、一例を示す図である。 図5は、変形例に係るセンサが備えるコントローラの機能的構成の一例を示す図である。
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)を、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
本実施形態に係るガスセンサは、センサ素子を所定の温度に加熱するヒータ部が内部に埋設されたセンサ素子によってNOxを検知し、その濃度を測定するセンサである。本実施形態に係るガスセンサは、前記センサ素子の備える電気化学的ポンプセルである測定用ポンプセルの出力に基づいて、NOxの濃度が、基準濃度に比べて高いか低いかを判定する。そして、本実施形態に係るガスセンサは、NOxの濃度が基準濃度より低いと判定すると、NOxの濃度が基準濃度より高いと判定する場合よりも、前記所定の温度を低く設定する。
そのため、本実施形態に係るガスセンサは、NOxの濃度が低い時は、前記所定の温度を下げてオフセット値の変動を抑えることができ、また、NOxの濃度が高い時は、前記所定の温度を上げて、NOxの分解反応が抑制されるのを防ぐことができる。以下、これらの構成を有するガスセンサの一例を説明する。
[構成例]
図1は、本実施形態に係るガスセンサ素子100の長手方向に沿った垂直断面図を含む、ガスセンサSの構成の一例を概略的に示す図である。ガスセンサSは、図1に示すように、ガスセンサ素子100と、コントローラ110とを備える。ガスセンサ素子100は、例えば、長手方向(軸方向)に沿って延びる細長な長尺の板状体形状を呈し、また、例えば、直方体状に形成される。図1に例示するガスセンサ素子100は、長手方向それぞれの端部として先端部及び後端部を有しており、以下の説明においては、先端部を図1の左側の端部(つまり、前側の端部)とし、後端部を図1の右側の端部(つまり、後側の端部)とする。しかしながら、ガスセンサ素子100の形状は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。なお、以下の説明においては、図1の紙面奥側をガスセンサ素子100の右側とし、紙面手前側をガスセンサ素子100の左側とする。また、コントローラ110は、機能的構成として、判定部111と、温度設定部112と、ヒータ制御部113とを備える。以下、ガスセンサ素子100およびコントローラ110について、各々の詳細を説明する。
<ガスセンサ素子>
図1に例示するように、ガスセンサ素子100は、第1基板層1、第2基板層2、第3基板層3、第1固体電解質層4、スペーサ層5、及び第2固体電解質層6を下側から順に積層することで構成される積層体を備える。各層1-6は、ジルコニア(ZrO2)等の酸素イオン伝導性を有する固体電解質層により構成される。各層1-6を形成する固体電解質は、緻密質なものであってよい。緻密質は、気孔率が5%以下であることを指す。
ガスセンサ素子100は、例えば、各層に対応するセラミックスグリーンシートに、所定の加工、配線パターンの印刷等の工程を実行した後にそれらを積層し、更に、焼成して一体化させることで製造される。一例として、ガスセンサ素子100は、複数のセラミックス層の積層体である。本実施形態では、第2固体電解質層6の上面が、ガスセンサ素子100の上面を構成し、第1基板層1の下面が、ガスセンサ素子100の下面を構成し、各層1~6の各側面が、ガスセンサ素子100の各側面を構成する。
本実施形態では、ガスセンサ素子100の一先端部であって、第2固体電解質層6の下面62及び第1固体電解質層4の上面の間には、被測定ガスを外部の空間から受け入れるように構成される内部空間が設けられる。本実施形態に係る内部空間は、ガス導入口10、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13、第1内部空所15、第3拡散律速部16、第2内部空所17、第4拡散律速部18、及び第3内部空所19が、この順に連通する態様にて隣接形成されるように構成される。すなわち、本実施形態に係る内部空間は、3室構造(第1内部空所15、第2内部空所17及び第3内部空所19)を有する。
一例では、この内部空間は、スペーサ層5をくり抜いた態様にて設けられる。内部空間の上部は、第2固体電解質層6の下面62で区画される。内部空間の下部は、第1固体電解質層4の上面で区画される。内部空間の側部は、スペーサ層5の側面で区画される。
第1拡散律速部11は、2本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長辺方向を有する)スリットとして設けられる。また、第2拡散律速部13、第3拡散律速部16、及び第4拡散律速部18のそれぞれは、図面に垂直な方向に延びる長さが、第1内部空所15、第2内部空所17、及び第3内部空所19のそれぞれよりも短い孔として設けられる。
図1に例示するように、第2拡散律速部13および第3拡散律速部16は、いずれも、第1拡散律速部11と同様に、2本の横長(図面に垂直な方向に開口が長辺方向を有する)のスリットとして設けられてもよい。これに対して、第4拡散律速部18は、第2固体電解質層6の下面との隙間として形成された1本の横長の(図面に垂直な方向に開口が長手方向を有する)スリットとして設けられてもよい。すなわち、第4拡散律速部18は、第1固体電解質層4の上面に接していてもよい。第2拡散律速部13、第3拡散律速部16、及び第4拡散律速部18のそれぞれについては、後ほど詳細に説明する。ガス導入口10から第3内部空所19に至る部位(内部空間)を被測定ガス流通部7と称する。
被測定ガス流通部7よりも先端側(ガスセンサ素子100の前側)から遠い位置には、第3基板層3の上面及びスペーサ層5の下面の間であって、第1固体電解質層4の側面で側部を区画される位置に基準ガス導入空間43が設けられる。基準ガス導入空間43には、例えば、大気等の基準ガスが導入される。ただし、ガスセンサ素子100の構成は、このような例に限定されなくてよい。他の一例として、第1固体電解質層4は、ガスセンサ素子100の後端まで延びるように構成されてよく、基準ガス導入空間43は省略されてよい。この場合、大気導入層48が、ガスセンサ素子100の後端まで延びるように構成されてよい。
基準ガス導入空間43に隣接する第3基板層3の上面の一部には、大気導入層48が設けられる。大気導入層48は、多孔質アルミナから成り、基準ガス導入空間43を介して基準ガスが導入されるように構成される。加えて、大気導入層48は、基準電極42を被覆するように形成されている。
基準電極42は、第3基板層3の上面及び第1固体電解質層4の間に挟まれるように形成され、その周囲には、上記基準ガス導入空間43に接続する大気導入層48が設けられている。基準電極42は、第1内部空所15内及び第2内部空所17内の酸素濃度(酸素分圧)の測定に使用される。詳細は後述する。
ガス導入口10は、被測定ガス流通部7において、外部空間に対して開口してなる部位である。ガスセンサ素子100は、当該ガス導入口10を通じて外部空間から内部に被測定ガスを取り込むように構成される。本実施形態では、図1に例示されるとおり、ガス導入口10は、ガスセンサ素子100の先端面(前面)に配置される。つまり、被測定ガス流通部7は、ガスセンサ素子100の先端面において開口を有するように構成される。ただし、被測定ガス流通部7が、ガスセンサ素子100の先端面において開口を有するように構成されること、つまり、ガス導入口10をガスセンサ素子100の先端面に配置することは、必須ではない。ガスセンサ素子100は、外部空間から被測定ガス流通部7の内部に被測定ガスを取り込むことができればよく、ガス導入口10を、例えば、ガスセンサ素子100の右面に配置したり、左面に配置したりしてもよい。
第1拡散律速部11は、ガス導入口10から取り込まれた被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
緩衝空間12は、第1拡散律速部11より導入された被測定ガスを第2拡散律速部13へと導くために設けられた空間である。
第2拡散律速部13は、緩衝空間12から第1内部空所15に導入される被測定ガスに対して、所定の拡散抵抗を付与する部位である。
被測定ガスは、ガスセンサ素子100の外部空間から第1内部空所15内まで導入されるにあたり、外部空間における被測定ガスの圧力変動(被測定ガスが自動車の排気ガスの場合であれば排気圧の脈動)によって、ガス導入口10からガスセンサ素子100内部に急激に取り込まれる場合がある。この場合であっても、当該構成では、取り込まれる被測定ガスは、直接第1内部空所15へ導入されるのではなく、第1拡散律速部11、緩衝空間12、第2拡散律速部13を通じて被測定ガスの濃度変動が打ち消された後、第1内部空所15へ導入される。これにより、第1内部空所15へ導入される被測定ガスの濃度変動はほとんど無視できる程度のものとなる。
第1内部空所15は、第2拡散律速部13を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、主ポンプセル21が作動することによって調整される。
主ポンプセル21は、内側ポンプ電極22、外側ポンプ電極23、及びこれらの電極に挟まれた第2固体電解質層6によって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。内側ポンプ電極22は、第1内部空所15に隣接する(面する)第2固体電解質層6の下面62のほぼ全面に設けられる天井電極部22aを有する。外側ポンプ電極23は、第2固体電解質層6の上面63の天井電極部22aに対応する領域に外部空間に隣接する態様にて設けられる。主ポンプセル21は、「調整用ポンプセル」の一例である。
内側ポンプ電極22は、第1内部空所15を区画する上下の固体電解質層(第2固体電解質層6及び第1固体電解質層4)、及び側壁を与えるスペーサ層5にまたがって形成されている。具体的には、第1内部空所15の天井面を与える第2固体電解質層6の下面62には天井電極部22aが形成され、また、底面を与える第1固体電解質層4の上面には底部電極部22bが形成される。そして、それら天井電極部22a及び底部電極部22bに接続するように、側部電極部(図示省略)が、第1内部空所15の両側壁部を構成するスペーサ層5の側壁面(内面)に形成されている。つまり、内側ポンプ電極22は、該側部電極部の配設部位においてトンネル形態の構造で配設されている。内側ポンプ電極22は、「内部空所(被測定ガス流通部7)に面して形成された内側ポンプ電極」の一例である。
内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23は、多孔質サーメット電極(例えば、Auを1%含むPt及びZrO2により構成されるサーメット電極)として形成される。なお、被測定ガスに接触する内側ポンプ電極22は、被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
ガスセンサ素子100は、主ポンプセル21において、内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23の間に所望のポンプ電圧Vp0を印加して、内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23の間に正方向又は負方向にポンプ電流Ip0を流すことにより、第1内部空所15内の酸素を外部空間に汲み出し、又は外部空間の酸素を第1内部空所15に汲み入れ可能に構成される。
また、第1内部空所15における雰囲気中の酸素濃度(酸素分圧)を検出するために、内側ポンプ電極22、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、第3基板層3、及び基準電極42により、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80(すなわち、電気化学的なセンサセル)が構成されている。
ガスセンサ素子100は、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80における起電力V0を測定することで第1内部空所15内の酸素濃度(酸素分圧)を特定可能に構成される。更に、起電力V0が一定となるようにVp0をフィードバック制御することでポンプ電流Ip0が制御されている。これにより、第1内部空所15内の酸素濃度は所定の一定値に保つことができる。
第3拡散律速部16は、第1内部空所15で主ポンプセル21の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第2内部空所17に導く部位である。
第2内部空所17は、第3拡散律速部16を通じて導入された被測定ガス中の酸素分圧を更に調整するための空間として設けられている。係る酸素分圧は、補助ポンプセル50が作動することによって調整される。
補助ポンプセル50は、補助ポンプ電極51、外側ポンプ電極23(外側ポンプ電極23に限られるものではなく、ガスセンサ素子100の外側の適当な電極であれば足りる)、及び第2固体電解質層6により構成される補助的な電気化学的ポンプセルである。補助ポンプ電極51は、第2内部空所17に面する第2固体電解質層6の下面の略全体に設けられた天井電極部51aを有する。補助ポンプセル50は、「調整用ポンプセル」の一例である。また、上述の「ガスセンサ素子100の外側の適当な電極」は、「固体電解質層に接して外部空間に露出する態様にて設けられた第3電極」の一例である。
係る補助ポンプ電極51は、先の第1内部空所15内に設けられた内側ポンプ電極22と同様なトンネル形態の構造で、第2内部空所17内に配設されている。つまり、第2内部空所17の天井面を与える第2固体電解質層6の下面62に対して天井電極部51aが形成され、また、第2内部空所17の底面を与える第1固体電解質層4の上面には、底部電極部51bが形成される。そして、それらの天井電極部51aと底部電極部51bとを連結する側部電極部(図示省略)が、第2内部空所17の側壁を与えるスペーサ層5の両壁面にそれぞれ形成される。これにより、補助ポンプ電極51は、トンネル形態の構造を有している。補助ポンプ電極51は、「内部空所(被測定ガス流通部7)に面して形成された内側ポンプ電極」の一例である。
なお、補助ポンプ電極51も、内側ポンプ電極22と同様に、被測定ガス中の窒素酸化物成分に対する還元能力を弱めた材料を用いて形成される。
ガスセンサ素子100は、補助ポンプセル50において、補助ポンプ電極51及び外側ポンプ電極23の間に所望の電圧Vp1を印加することにより、第2内部空所17内の雰囲気中の酸素を外部空間に汲み出し、又は外部空間から第2内部空所17内に汲み入れ可能に構成される。
また、第2内部空所17内における雰囲気中の酸素分圧を制御するために、補助ポンプ電極51、基準電極42、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、及び第3基板層3により、補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81(すなわち、電気化学的なセンサセル)が構成されている。
なお、この補助ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル81にて検出される起電力V1に基づいて電圧制御される可変電源52にて、補助ポンプセル50がポンピングを行う。これにより、第2内部空所17内の雰囲気中の酸素分圧は、NOxの測定に実質的に影響がない低い分圧にまで制御されるようになっている。
また、これと共に、そのポンプ電流Ip1が、主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80の起電力の制御に用いられるようになっている。具体的には、ポンプ電流Ip1は、制御信号として主ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル80に入力され、その起電力V0が制御されることにより、第3拡散律速部16から第2内部空所17内に導入される被測定ガス中の酸素分圧の勾配が常に一定となるように制御されている。NOxセンサとして使用する際は、主ポンプセル21と補助ポンプセル50との働きによって、第2内部空所17内での酸素濃度は約0.001ppm程度の一定の値に保たれる。
第4拡散律速部18は、第2内部空所17で補助ポンプセル50の動作により酸素濃度(酸素分圧)が制御された被測定ガスに所定の拡散抵抗を付与して、該被測定ガスを第3内部空所19に導く部位である。
第3内部空所19は、第4拡散律速部18を通じて導入された被測定ガス中の窒素酸化物(NOx)濃度の測定に係る処理を行うための空間として設けられている。NOx濃度は、測定用ポンプセル41の動作により測定される。本実施形態では、第1内部空所15において酸素濃度(酸素分圧)が予め調整された後、第2内部空所17において、第3拡散律速部16を通じて導入された被測定ガスに対して、補助ポンプセル50による酸素分圧の調整が更に行われる。これにより、第2内部空所17から第3内部空所19に導入される被測定ガスの酸素濃度を高精度に一定に保つことができる。そのため、本実施形態に係るガスセンサ素子100は、精度の高いNOx濃度の測定が可能となる。
測定用ポンプセル41は、第3内部空所19内において、被測定ガス中の窒素酸化物濃度の測定を行う。測定用ポンプセル41は、測定電極44、外側ポンプ電極23、第2固体電解質層6、スペーサ層5、及び第1固体電解質層4により構成される電気化学的ポンプセルである。図1の一例では、測定電極44は、第3内部空所19に隣接する(面する)第1固体電解質層4の上面に設けられる。
測定電極44は、多孔質サーメット電極である。測定電極44は、第3内部空所19内の雰囲気中に存在するNOxを還元するNOx還元触媒としても機能する。図1の一例では、測定電極44は、第3内部空所19内で露出している。他の一例では、測定電極44は、拡散律速部により被覆されていてよい。該拡散律速部は、アルミナ(Al23)を主成分とする多孔体の膜により構成されてよい。該拡散律速部は、測定電極44に流入するNOxの量を制限する役割を担うと共に、測定電極44の保護膜としても作用する。
ガスセンサ素子100は、測定用ポンプセル41において、測定電極44の周囲の雰囲気中における窒素酸化物の分解によって生じた酸素を汲み出して、その発生量をポンプ電流Ip2として検出可能に構成される。
また、測定電極44の周囲の酸素分圧を検出するために、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、第3基板層3、測定電極44、及び基準電極42により、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82(すなわち、電気化学的なセンサセル)が構成されている。測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出される電圧(起電力)V2に基づいて可変電源46が制御される。
第3内部空所19内に導かれた被測定ガスは、酸素分圧が制御された状況下で測定電極44に到達することとなる。測定電極44の周囲の被測定ガス中の窒素酸化物は還元されて(2NO→N2+O2)酸素を発生する。そして、この発生した酸素は測定用ポンプセル41によってポンピングされることとなるが、その際、測定用ポンプ制御用酸素分圧検出センサセル82にて検出される制御電圧V2が一定となるように可変電源の電圧Vp2が制御される。測定電極44の周囲において発生する酸素の量は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に比例するものであるから、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2を用いて被測定ガス中の窒素酸化物濃度が算出されることとなる。
また、測定電極44、第1固体電解質層4、第3基板層3、及び基準電極42を組み合わせて、電気化学的センサセルとして酸素分圧検出手段を構成するようにすることで、測定電極44の周りの雰囲気中のNOx成分の還元によって発生した酸素の量と基準大気に含まれる酸素の量との差に応じた起電力を検出することができる。これにより、被測定ガス中の窒素酸化物成分の濃度を求めることも可能である。
また、第2固体電解質層6、スペーサ層5、第1固体電解質層4、第3基板層3、外側ポンプ電極23、及び基準電極42から電気化学的なセンサセル83が構成されている。ガスセンサ素子100は、このセンサセル83によって得られる起電力Vrefによりセンサ外部の被測定ガス中の酸素分圧を検出可能に構成されている。
以上の構成を有するガスセンサ素子100において、主ポンプセル21及び補助ポンプセル50を作動させることにより、酸素分圧が常に一定の低い値(NOxの測定に実質的に影響がない値)に保たれた被測定ガスを測定用ポンプセル41に与えることができる。したがって、ガスセンサ素子100は、被測定ガス中の窒素酸化物の濃度に略比例して、NOxの還元によって発生する酸素が測定用ポンプセル41より汲み出されることで流れるポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中の窒素酸化物濃度を特定可能に構成されている。
更に、ガスセンサ素子100は、固体電解質の酸素イオン伝導性を高めるために、ガスセンサ素子100を加熱して保温する温度調整の役割を担うヒータ70を備えている。ヒータ70は、ヒータ電極71(例えば、不図示の71a、71b、71c)と、ヒータエレメント72と、ヒータリード72a(例えば、不図示の72a1、72a2)と、スルーホール73と、ヒータ絶縁層74と、図1においては図示を省略するヒータ抵抗検出リード76(図2)とを、主として備えている。また、図1の一例では、ヒータ70は、さらに、圧力放散孔75を備えている。
ヒータ70は、ヒータ電極71を除いて、ガスセンサ素子100の基体部に埋設されてなる。本実施形態では、ヒータ70は、ガスセンサ素子100の厚み方向(鉛直方向/積層方向)において、ガスセンサ素子100の上面よりもガスセンサ素子100の下面に近い位置に配置されている。ただし、ヒータ70の配置は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
ヒータ電極71は、第1基板層1の下面(ガスセンサ素子100の下面)に接する態様にて形成されてなる電極である。ヒータ電極71を外部電源と接続することにより、外部からヒータ70へ給電することができるようになっている。
ヒータエレメント72は、第2基板層2及び第3基板層3に上下から挟まれた態様にて形成される電気抵抗体であり、つまり、第2基板層2と第3基板層3との間に設けられた抵抗発熱体である。ヒータエレメント72は、図1においては図示を省略する、ガスセンサ素子100の外部に備わるヒータ電源77(図2)から、通電経路であるヒータ電極71、スルーホール73、およびヒータリード72aを通じて給電されることにより、発熱し、ガスセンサ素子100を形成する固体電解質の加熱と保温を行う。ヒータエレメント72は、Ptにて、あるいはPtを主成分として、形成されてなる。ヒータエレメント72は、ガスセンサ素子100の被測定ガス流通部7が備わる側の所定範囲に、素子厚み方向において被測定ガス流通部7と対向するように埋設されている。ヒータエレメント72は、例えば、10μm~20μm程度の厚みを有するように設けられる。
ヒータエレメント72の両端に接続された1対のヒータリード(例えば、不図示のヒータリード72a1とヒータリード72a2)は、略同一の形状を有するように、つまりは、両者の抵抗値が同じであるように、設けられる。ヒータリード72a1、72a2はそれぞれ、対応するスルーホール73を介して異なるヒータ電極71a、71b(不図示)と接続されている。
さらに、ヒータエレメント72と一方のヒータリード72a2との接続部から引き出される態様にて、ヒータ抵抗検出リード76が設けられている。なお、ヒータ抵抗検出リード76の抵抗値は無視できるものとする。ヒータ抵抗検出リード76は、対応するスルーホール73を介してヒータ電極71c(不図示)と接続されている。
また、ヒータエレメント72は、ガスセンサ素子100全体を上記固体電解質が活性化する温度に調整することが可能となっている。すなわち、ガスセンサ素子100においては、ヒータ電極71を通じてヒータエレメント72に電流を流すことにより、ヒータエレメント72を発熱させることで、ガスセンサ素子100の各部を所定の温度に加熱、保温することができるようになっている。具体的には、ガスセンサ素子100は、被測定ガス流通部7付近の固体電解質および電極の温度が、例えば、700℃~900℃程度(または、750℃~950℃)になるように加熱される。係る加熱によって、ガスセンサ素子100において基体部を構成する固体電解質の酸素イオン伝導性が高められる。なお、ガスセンサSが使用される際の(ガスセンサ素子100が駆動される際の)ヒータエレメント72による加熱温度を、センサ素子駆動温度と称することがある。
ヒータエレメント72による発熱の程度は、ヒータエレメント72の抵抗値の大きさ(ヒータ抵抗)によって把握される。ヒータ抵抗検出リード76は、係るヒータ抵抗の測定のために、設けられてなる。
ヒータ絶縁層74は、ヒータエレメント72を覆う態様にて形成されてなる絶縁層であり、例えば、ヒータエレメント72の上下面に、アルミナ等の絶縁体によって形成されてなる絶縁層である。ヒータ絶縁層74は、第2基板層2及びヒータエレメント72の間の電気的絶縁性、並びに第3基板層3及びヒータエレメント72の間の電気的絶縁性を得る目的で形成されている。ヒータ絶縁層74は、70μm~110μm程度の厚みにて、ガスセンサ素子100の先端面および側面から200μm~700μm程度離隔させた位置に設けられる。ただし、ヒータ絶縁層74の厚みは一定である必要はなく、ヒータエレメント72が存在する箇所としない箇所とで異なっていてもよい。
圧力放散孔75は、第3基板層3を貫通し、基準ガス導入空間43に連通するように設けられてなる部位であり、ヒータ絶縁層74内の温度上昇に伴う内圧上昇を緩和する目的で形成されてなる。ただし、圧力放散孔75を設けることは必須ではなく、圧力放散孔75を設けなくてもよい。
<コントローラ>
次に、コントローラ110の機能について詳細に説明する。コントローラ110は、ガスセンサSの各部の動作を制御するとともに、ガスセンサ素子100を流れるポンプ電流Ip2に基づいてNOx濃度を特定し、また、ヒータ70によってガスセンサ素子100を「所定の温度(センサ素子駆動温度)」に加熱する。コントローラ110は、汎用のあるいは専用のコンピュータによって実現されるものであり、そのCPU、メモリなどにより実現される機能的構成要素として、図1に例示するように、判定部111と、温度設定部112と、ヒータ制御部113とを備える。なお、ガスセンサSが自動車のエンジンからの排気に含まれるNOxを検知および測定の対象とし、ガスセンサ素子100が排気経路に取り付けられるものである場合、コントローラ110の一部あるいは全部の機能が、当該自動車に搭載されてなるECU(電子制御装置)により実現されてもよい。
また、図1等では、コントローラ110が備える機能ブロックとして、判定部111と、温度設定部112と、ヒータ制御部113とを挙げたが、コントローラ110は、これらの機能ブロック以外の機能ブロックを備えていてもよい。コントローラ110は、例えば、NOxの検知、濃度演算、その他のための機能ブロックを備えていてもよい。具体的には、コントローラ110は、各ポンプセルの動作を制御する機能ブロック、NOx濃度を演算する機能ブロック、コントローラ110の備える各部の動作を統括的に制御する機能ブロック等をさらに備えていてもよい。
判定部111は、測定用ポンプセル41の出力に基づいて、被測定ガス中のNOxの濃度が、所定の濃度(基準濃度)に比べて高いか低いかを判定する。判定部111は、例えば、測定用ポンプセル41に流れるポンプ電流Ip2の値を取得し、取得したポンプ電流Ip2に基づいて、被測定ガス中のNOxの濃度が、基準濃度に比べて高いか低いかを判定する。判定部111は、ポンプ電流Ip2から被測定ガス中のNOxの濃度を特定する従来の方法を利用してNOxの濃度を特定し、特定したNOxの濃度と基準濃度とを比較することにより、NOxの濃度が基準濃度に比べて高いか低いかを判定してもよい。判定部111は、測定用ポンプセル41に流れるポンプ電流Ip2の値を取得し、予めガスセンサ素子100について設定された感度特性を記述してなる感度特性データに基づいて、NOx濃度を特定してもよい。係る感度特性は、ガスセンサSを実使用するに先立ってあらかじめ、NOx濃度が既知の複数種類のモデルガスを用いて特定され、そのデータである感度特性データがコントローラ110に記憶されていてもよい。
温度設定部112は、ヒータ70によって加熱されることでガスセンサ素子100が至る「所定の温度(センサ素子駆動温度)」を設定する。特に、温度設定部112は、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも低いと判定されると、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも高いと判定される場合よりも、所定の温度を低く設定する。すなわち、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも低いと判定された場合に温度設定部112が設定する所定の温度は、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも高いと判定された場合に温度設定部112が設定する所定の温度よりも低い。
ヒータ制御部113は、ヒータ70の動作を制御する。具体的には、ヒータ抵抗検出リード76とヒータリード72aとの間の抵抗値として得られるヒータ抵抗(ヒータエレメント72の抵抗)の値が、温度設定部112によって設定された所定の温度に応じた値となるよう、ヒータ電源77に印加されるヒータ電圧を制御する。これによって、ヒータ制御部113は、ヒータ70への給電を制御し、つまり、ヒータ70への投入パワーを制御する。ヒータエレメント72は係る態様にて制御されたヒータ抵抗に応じた発熱量にて発熱する。ヒータ制御部113が係るヒータ抵抗の値を「温度設定部112によって設定された所定の温度」に応じて制御することにより、ガスセンサ素子100は、ヒータ70によって加熱され、「温度設定部112によって設定された所定の温度」に至る。ヒータ70への投入パワーとは、ヒータ70へ印加する電圧(つまり、ヒータ間へ印加する電圧)と、ヒータ70に流れる電流(つまり、ヒータ間に流れる電流)との積をいう。
<センサ素子駆動温度設定処理>
図2は、ガスセンサSにおけるセンサ素子駆動温度設定処理の概要を示す図である。図2に例示するように、センサ素子駆動温度設定処理においては、先ず、判定部111が、測定用ポンプセル41から、測定用ポンプセル41の出力を取得する。例えば、判定部111は、測定用ポンプセル41から、測定用ポンプセル41に流れるポンプ電流Ip2の値を取得する。判定部111は、取得した測定用ポンプセル41の出力(例えば、ポンプ電流Ip2)から、被測定ガス中のNOxの濃度が、基準濃度に比べて高いか低いかを判定する(判定ステップ)。例えば、判定部111は、ポンプ電流Ip2から被測定ガス中のNOxの濃度を特定し、特定したNOxの濃度と基準濃度とを比較することにより、被測定ガス中のNOxの濃度が、基準濃度に比べて高いか低いかを判定する。判定部111は、測定用ポンプセル41の出力を用いて行った判定の結果(判定結果)を、つまり、被測定ガス中のNOxの濃度が基準濃度に比べて高いか低いかを、温度設定部112に通知する。
判定部111が、基準濃度に比べて被測定ガス中のNOxの濃度が高いか低いかを判定する際に用いる「測定用ポンプセル41の出力」は、ポンプ電流Ip2の値に限られるものではない。判定部111は、任意の「測定用ポンプセル41の出力」を用いて、被測定ガス中のNOxの濃度が、基準濃度に比べて高いか低いかを判定できればよい。
温度設定部112は、判定部111から通知された判定結果に基づいて、ヒータ70によって加熱されることでガスセンサ素子100が至る「所定の温度」を、つまり、センサ素子駆動温度を、設定する。ここで、温度設定部112は、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも低いと判定されると、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも高いと判定される場合よりも、センサ素子駆動温度を低く設定する(温度設定ステップ)。
すなわち、温度設定部112は、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも低いと判定されると、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも高いと判定された場合に設定するセンサ素子駆動温度よりも低いセンサ素子駆動温度を設定する。また、温度設定部112は、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも高いと判定されると、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも低いと判定された場合に設定するセンサ素子駆動温度よりも高いセンサ素子駆動温度を設定する。なお、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度に等しいと判定されると、温度設定部112は、その時点で設定しているセンサ素子駆動温度と同じ温度のセンサ素子駆動温度を設定してもよい。温度設定部112は、設定したセンサ素子駆動温度を、ヒータ制御部113に通知する。
ヒータ制御部113は、温度設定部112から通知されたセンサ素子駆動温度に基づいて、ヒータ70の動作を制御する。例えば、ヒータ制御部113は、ヒータ抵抗(ヒータエレメント72の抵抗)の値が、温度設定部112から通知されたセンサ素子駆動温度に応じた値となるよう、ヒータ電源77に印加されるヒータ電圧を制御する。ヒータ制御部113によって、ヒータ電源77からヒータ70への投入パワー(給電)は制御され、ヒータ70は、ガスセンサ素子100の温度が温度設定部112によって設定されたセンサ素子駆動温度になるよう、ガスセンサ素子100を加熱する。
当該構成では、ヒータ70によって加熱されることでガスセンサ素子100が至るセンサ素子駆動温度は、被測定ガス中のNOxの濃度が基準濃度より低いと判定されると、NOxの濃度が基準濃度より高いと判定される場合よりも、低く設定される。つまり、NOxの濃度が基準濃度より低いとセンサ素子駆動温度は下げられ、NOxの濃度が基準濃度より高いとセンサ素子駆動温度は上げられる。
そのため、NOxの濃度が低い時は、センサ素子駆動温度を下げてオフセット値の変動を抑えることができ、また、NOxの濃度が高い時は、センサ素子駆動温度を上げて、被測定ガス中のNOxの分解反応が抑制されるのを防ぐことができる。また、NOxの濃度が高い時にセンサ素子駆動温度を上げることによって、長期間にわたってガスセンサSを使用する場合の出力の変化を抑制することも可能となる。したがって、ガスセンサSは、被測定ガスにおけるNOxの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立することができる。
<投入パワーに対する、測定用ポンプセルのセル抵抗の傾き>
図3は、ガスセンサSについて、ヒータ70への投入パワー(給電)に対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗等の傾きのイメージについて、一例を示す図である。ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワー[W]に対する測定用ポンプセル41のセル抵抗(インピーダンス)[ohm]の傾きは、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、「2600[ohm/W]」程度である。すなわち、ヒータ70への投入パワーに対する、測定電極44と外側ポンプ電極23との間のインピーダンスは、投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、約「2600[ohm/W]」であった。なお、セル抵抗は、例えば、大気中にてI-Vカーブを測定し、0~50mVの間で、電圧を5mV/sでスイープさせた時の電流値から、傾きを算出して求めることができる。また、「ヒータ70への投入パワーに対する、セル抵抗の傾き」は、例えば、「大気中での、ヒータ70への投入パワーに対する、セル抵抗の傾き」である。
ここで、本件発明者は、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、200[ohm/W]以上、5000[ohm/W]以下とするのが望ましいことを、実験により確認した。
すなわち、ヒータ70への投入パワーの変化に対して、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が大きく変化する場合、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値の制御に要する投入パワー(の変化)を小さくすることができる。つまり、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを大きくすることで、ヒータ70への小さな投入パワー(の変化)によって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御することができる。そして、本件発明者は、実験により、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、例えば、大気下で200[ohm/W]以上とすることが望ましいことを確認した。ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを200[ohm/W]以上とすることで、小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御することができる。
また、本件発明者は、実験結果ほか、種々の観点から、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、例えば、大気下で5000[ohm/W]以下とすることが望ましいことを確認した。ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを5000[ohm/W]以下とすることで、小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御することができる。
ここで、前述の通り、ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、「2600[ohm/W]」程度である。そのため、ガスセンサSは、ヒータ70への投入パワーを抑えつつ、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御することができる。
なお、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値は、例えば、以下のインピーダンス検出回路を用いて測定されてもよい。すなわち、測定用ポンプセル41の測定電極44と外側ポンプ電極23との間に挿入接続され、かつ、測定電極44と外側ポンプ電極23との間のインピーダンスを検出するインピーダンス検出回路を用いて、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を測定してもよい。このようなインピーダンス検出回路は、測定電極44と外側ポンプ電極23との間に交流を供給する交流発生回路と、両者の間への交流供給によって両者の間に発生するインピーダンスに応じたレベルの電圧信号を検出する信号検出回路とを備えていてもよい。このような信号検出回路は、測定電極44と外側ポンプ電極23との間に発生する交流信号を、測定電極44と外側ポンプ電極23との間のインピーダンスに応じたレベルの電圧信号に変換するフィルタ回路(例えばローパスフィルタ、バンドパスフィルタなど)にて構成することができる。
<測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きと調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きとの大小>
ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワー[W]に対する主ポンプセル21のセル抵抗(インピーダンス)[ohm]の傾きは、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、「11[ohm/W]」程度である。
前述の通り、ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、「2600[ohm/W]」程度である。したがって、ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きよりも大きい。つまり、ガスセンサSにおいて、「ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾き」に比べて、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」は大きい。また、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」に比べて、「ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾き」は小さい。
このような構成を採用することにより、ガスセンサSは、小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御できると共に、主ポンプセル21の温度が必要以上に高温になったり低温となったりすることがない。
前述の通り、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを大きくすることで、ヒータ70への小さな投入パワー(の変化)によって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御することができる。
また、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きを小さくすることで、主ポンプセル21の温度を好適に制御することが容易になり、被測定ガス中のNOxの分解反応を制御することができる。
すなわち、主ポンプセル21の温度が必要以上に高いと、主ポンプセル21において被測定ガス中のNOxと内側ポンプ電極22との反応が増加することで、被測定ガス中のNOxの分解反応が過剰に促進されてしまう。また、主ポンプセル21の温度が必要以上に低いと、主ポンプセル21のポンプ電圧Vp0が増加することで、被測定ガス中のNOxの分解反応が過剰に促進されてしまう。
これに対して、ガスセンサSは、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きが小さいため、主ポンプセル21の温度を好適に制御することができる。ガスセンサSは、主ポンプセル21の温度を好適に制御するので、主ポンプセル21の温度が必要以上に高温または低温となることがなく、被測定ガス中のNOxの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制することができる。
したがって、ガスセンサSは、ヒータ70への小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御でき、また、主ポンプセル21の温度を好適に制御して、NOxの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制することができる。
<測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きと調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きとの比率>
図3に例示するように、ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、約「2600[ohm/W]」であり、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きは、約「11[ohm/W]」である。したがって、ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの約「236」倍となっている。
ここで、本件発明者は、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍とするのが望ましいことを、実験により確認した。
前述の通り、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きよりも大きいことが望ましい。そして、本件発明者は、実験により、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍とすることが望ましいことを確認した。したがって、ガスセンサSは、ヒータ70への小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御でき、また、主ポンプセル21の温度を好適に制御して、NOxの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制できる。
なお、主ポンプセル21のセル抵抗の値は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と同様、例えば、主ポンプセル21の内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23との間に挿入接続され、かつ、両者の間のインピーダンスを検出するインピーダンス検出回路を用いて測定されてもよい。
これまで、ヒータ70への投入パワーに対するセル抵抗の傾きが、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」よりも小さい調整用ポンプセルとして、調整用ポンプセルが主ポンプセル21である例を説明してきた。しかしながら、ヒータ70への投入パワーに対するセル抵抗の傾きが、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」よりも小さい調整用ポンプセルは、補助ポンプセル50であってもよい。例えば、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、補助ポンプセル50のセル抵抗の傾きよりも大きくしてもよい。また、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の、いずれのセル抵抗の傾きよりも大きくしてもよい。すなわち、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、この投入パワーに対する、主ポンプセル21および測定用ポンプセル41の少なくとも一方のセル抵抗の傾きよりも、大きければよい。
同様に、ヒータ70への投入パワーに対するセル抵抗の傾きが、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」の1000分の1から10分の1である調整用ポンプセルは、補助ポンプセル50であってもよい。例えば、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、補助ポンプセル50のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍としてもよい。また、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍とし、かつ、補助ポンプセル50のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍としてもよい。すなわち、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、この投入パワーに対する、主ポンプセル21および測定用ポンプセル41の少なくとも一方のセル抵抗の傾きの、10倍から1000倍であればよい。
補助ポンプセル50のセル抵抗の値は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と同様、例えば、補助ポンプセル50の補助ポンプ電極51と外側ポンプ電極23(またはガスセンサ素子100の外側の適当な電極)との間に挿入接続され、かつ、両者の間のインピーダンスを検出するインピーダンス検出回路を用いて測定されてもよい。
[特徴]
以上のとおり、本実施形態に係るガスセンサSは、ガスセンサ素子100と、判定部111と、温度設定部112とを備えている。ガスセンサ素子100は、酸素イオン伝導性の6層の固体電解質層により構成されるセンサ素子である。ガスセンサ素子100は、被測定ガスが導入される内部空間(すなわち、被測定ガス流通部7)と、測定用ポンプセル41と、ヒータ70(ヒータ部)とを含む。測定用ポンプセル41は、被測定ガス流通部7に設けられてなる測定電極44と、被測定ガス流通部7と異なる部位に設けられた外側ポンプ電極23と、測定電極44と外側ポンプ電極23との間に存在する固体電解質層(第2固体電解質層6、スペーサ層5、及び第1固体電解質層4)と、から構成される電気化学的ポンプセルである。ヒータ70は、ガスセンサ素子100の内部に埋設されてなり、ガスセンサ素子100を所定の温度(センサ素子駆動温度)に加熱する。判定部111は、測定用ポンプセル41の出力(例えば、測定用ポンプセル41におけるポンプ電流Ip2)に基づいて、被測定ガス中のNOxの濃度が、所定の濃度(基準濃度)に比べて高いか低いかを判定する。温度設定部112は、ヒータ70によって加熱されることでガスセンサ素子100が至る「所定の温度(センサ素子駆動温度)」を、判定部111による判定の結果(判定結果)に基づいて、設定する。具体的には、温度設定部112は、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも低いと判定されると、判定部111によってNOxの濃度が基準濃度よりも高いと判定される場合よりも、所定の温度を低く設定する。
また、本実施形態に係るガスセンサの制御方法は、ガスセンサ素子100を備えるガスセンサの制御方法であって、判定ステップと温度設定ステップとを実行する情報処理方法である。判定ステップは、測定用ポンプセル41の出力(例えば、ポンプ電流Ip2)に基づいて、被測定ガス中のNOxの濃度が、所定の濃度(基準濃度)に比べて高いか低いかを判定する。温度設定ステップは、前記判定ステップにてNOxの濃度が(基準濃度に比べて)低いと判定されると、NOxの濃度が高いと判定される場合よりも、ヒータ70によって加熱されることでガスセンサ素子100が至る「所定の温度(センサ素子駆動温度)」を下げる。
当該構成では、ヒータ70によって加熱されることでガスセンサ素子100が至るセンサ素子駆動温度は、被測定ガス中のNOxの濃度が基準濃度より低いと判定されると、NOxの濃度が基準濃度より高いと判定される場合よりも、低く設定される。つまり、NOxの濃度が基準濃度より低いとセンサ素子駆動温度は下げられ、NOxの濃度が基準濃度より高いとセンサ素子駆動温度は上げられる。
そのため、ガスセンサSは、NOxの濃度が低い時は、センサ素子駆動温度を下げてオフセット値の変動を抑えることができ、また、NOxの濃度が高い時は、センサ素子駆動温度を上げて、被測定ガス中のNOxの分解反応が抑制されるのを防ぐことができる。また、ガスセンサSは、NOxの濃度が高い時にセンサ素子駆動温度を上げることによって、長期間にわたってガスセンサSを使用する場合の出力の変化を抑制することも可能となる。
したがって、ガスセンサSは、被測定ガスにおけるNOxの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、NOxの濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立することができる。
本実施形態に係るガスセンサにおいて、ガスセンサ素子100は、調整用ポンプセルを備え、つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方を備えていてもよい。ガスセンサ素子100の備える調整用ポンプセルは、ガスセンサ素子100の内部空間(すなわち、被測定ガス流通部7)に面して形成された内側ポンプ電極(内側ポンプ電極22または補助ポンプ電極51)と、外側ポンプ電極23または固体電解質層1-6の少なくとも1つに接して外部空間に露出する態様にて設けられた第3電極と、前記内側ポンプ電極と外側ポンプ電極23または前記第3電極との間に存在する固体電解質層と、から構成される電気化学的ポンプセルである。
具体的には、主ポンプセル21は、被測定ガス流通部7に面して形成された内側ポンプ電極22と、外側ポンプ電極23と、内側ポンプ電極22と外側ポンプ電極23とに挟まれた第2固体電解質層6によって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。補助ポンプセル50は、補助ポンプ電極51と、外側ポンプ電極23(または、固体電解質層1-6の少なくとも1つに接する、ガスセンサ素子100の外側の適当な電極)と、両者に挟まれた固体電解質層(例えば、第2固体電解質層6)によって構成されてなる電気化学的ポンプセルである。
測定用ポンプセル41には、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)において被測定ガスに含まれる酸素がポンピング処理された後の被測定ガスが導入される。
ここで、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)のセル抵抗の傾きよりも大きくてもよい。
このような構成を採用することにより、本発明の一側面に係るガスセンサは、ヒータ70への小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御できる。また、このような構成を採用することにより、本発明の一側面に係るガスセンサは、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)の温度が必要以上に高温になったり低温となったりすることがない。
すなわち、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを大きくすることで、ヒータ70への小さな投入パワー(の変化)によって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御することができる。
また、ヒータ70への投入パワーに対する、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)のセル抵抗の傾きを小さくすることで、調整用ポンプセルの温度を好適に制御することが容易になり、被測定ガス中のNOxの分解反応を制御することができる。
すなわち、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)の温度が必要以上に高いと、調整用ポンプセルにおいて、被測定ガス中のNOxと内側ポンプ電極(内側ポンプ電極22および補助ポンプ電極51の少なくとも一方)との反応が増加する。そのため、被測定ガス中のNOxの分解反応が過剰に促進されてしまう。また、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)の温度が必要以上に低いと、調整用ポンプセルのポンプ電圧(ポンプ電圧Vp0および電圧Vp1の少なくとも一方)が増加することで、被測定ガス中のNOxの分解反応が過剰に促進されてしまう。
これに対して、本発明の一側面に係るガスセンサは、ヒータ70への投入パワーに対する、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)のセル抵抗の傾きが小さい。そのため、調整用ポンプセルの温度を好適に制御することができる。本発明の一側面に係るガスセンサは、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)の温度を好適に制御するので、調整用ポンプセルの温度が必要以上に高温または低温となることがなく、被測定ガス中のNOxの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制することができる。
したがって、本発明の一側面に係るガスセンサは、ヒータ70への小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御でき、また、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)の温度を好適に制御して、NOxの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制できる。
上記一側面に係るガスセンサにおいて、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍であってもよい。
前述の通り、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)のセル抵抗の傾きよりも大きいことが望ましい。そして、本件発明者は、実験により、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、調整用ポンプセル(つまり、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方)のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍とすることが望ましいことを確認した。
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述までの実施形態の説明は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。上記実施形態には、種々の改良及び変形が行われてよい。上記実施形態の各構成要素に関して、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が行われてもよい。また、上記実施形態の各構成要素の形状及び寸法は、実施の形態に応じて適宜変更されてよい。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。以下の変形例は適宜組み合わせ可能である。
(I)測定用ポンプセルのセル抵抗の傾き
これまで、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗(測定電極44と外側ポンプ電極23との間のインピーダンス)の傾きが、約「2600[ohm/W]」であるガスセンサSについて、説明を行なってきた。しかしながら、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きが、約「2600[ohm/W]」であることは必須ではない。前述の通り、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、200[ohm/W]以上、5000[ohm/W]以下とするのが望ましい。
図4は、変形例に係るガスセンサS1について、ヒータ70への投入パワー(給電)に対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗等の傾きのイメージについて、一例を示す図である。ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗(インピーダンス)の傾きは、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、「600[ohm/W]」程度である。すなわち、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する、測定電極44と外側ポンプ電極23との間のインピーダンスは、200[ohm/W]以上、5000[ohm/W]以下の値であり、具体的には、約「600[ohm/W]」である。そのため、ガスセンサS1は、ヒータ70への投入パワーを抑えつつ、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御することができる。
(II)セル抵抗の傾きの大小
これまで、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗(インピーダンス)の傾きが、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、約「11[ohm/W]」であるガスセンサSについて、説明を行なってきた。しかしながら、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きが、約「11[ohm/W]」であることは必須ではない。前述の通り、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」を、「ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾き」よりも大きくするのが望ましい。
図4に例示するように、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワー[W]に対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、約「10[ohm/W]」である。そして、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーが「11.5」から「13.5」までの範囲において、約「600[ohm/W]」である。そのため、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きよりも大きい。
したがって、ガスセンサS1は、ヒータ70への小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御でき、また、主ポンプセル21の温度を好適に制御して、NOxの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制することができる。
なお、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対するセル抵抗の傾きが、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」よりも小さい調整用ポンプセルは、補助ポンプセル50であってもよい。つまり、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、補助ポンプセル50のセル抵抗の傾きよりも大きくしてもよい。また、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の、いずれのセル抵抗の傾きよりも大きくしてもよい。ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、この投入パワーに対する、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方のセル抵抗の傾きよりも、大きければよい。
(III)セル抵抗の傾きの比率
これまで、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きが、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの約「236」倍であるガスセンサSについて、説明を行なってきた。しかしながら、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きが、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの約「236」倍であることは必須ではない。前述の通り、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍とするのが望ましい。
図4に例示するように、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、約「600[ohm/W]」であり、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きは、約「10[ohm/W]」である。したがって、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの約「60」倍となっている。つまり、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍の値となっている。したがって、ガスセンサS1は、ヒータ70への小さな投入パワーによって、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を制御でき、また、主ポンプセル21の温度を好適に制御して、NOxの分解反応が過剰に促進されてしまうのを抑制できる。
なお、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対するセル抵抗の傾きが、「ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾き」の1000分の1から10分の1である調整用ポンプセルは、補助ポンプセル50であってもよい。例えば、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、補助ポンプセル50のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍としてもよい。また、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きを、ヒータ70への投入パワーに対する、主ポンプセル21のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍とし、かつ、補助ポンプセル50のセル抵抗の傾きの10倍から1000倍としてもよい。ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する、測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きは、この投入パワーに対する、主ポンプセル21および補助ポンプセル50の少なくとも一方のセル抵抗の傾きの、10倍から1000倍であればよい。
(IV)測定用ポンプセル41のセル抵抗に対する制御
これまで、判定部111および温度設定部112を備えるガスセンサSについて、言い換えれば、センサ素子駆動温度設定処理を実行するガスセンサSについて、説明を行なってきた。しかしながら、本実施形態に係るガスセンサは、センサ素子駆動温度設定処理に加えて、インピーダンス一定制御をさらに実行してもよい。
図5は、変形例に係るガスセンサS2におけるインピーダンス一定制御の概要を示す図である。図5に例示するように、ガスセンサS2は、ガスセンサ素子100と、コントローラ110Aとを備える。なお、ガスセンサS2は、図1等を用いて説明してきたガスセンサSの構成要素と作用・機能が共通する構成要素を有している。そのような構成要素については、図1等に示された対応する構成要素と同一の符号を付して、必要ある場合を除き、詳細な説明は省略する。
コントローラ110Aは、ガスセンサS2の各部の動作を制御するとともに、ガスセンサ素子100を流れるポンプ電流Ip2に基づいてNOx濃度を特定し、また、ヒータ70によってガスセンサ素子100を「所定の温度(センサ素子駆動温度)」に加熱する。コントローラ110Aは、汎用のあるいは専用のコンピュータによって実現されるものであり、そのCPU、メモリなどにより実現される機能的構成要素として、図5に例示するように、判定部111と、温度設定部112と、ヒータ制御部113と、インピーダンス検出部114と、差異算出部115と、記憶部116とを備える。すなわち、コントローラ110Aは、機能的構成として、前述のコントローラ110と同様に、判定部111と、温度設定部112と、ヒータ制御部113とを備えている。コントローラ110Aは、機能的構成としてさらに、インピーダンス検出部114と、差異算出部115と、記憶部116とを備えている。なお、ガスセンサS2が自動車のエンジンからの排気に含まれるNOxを検知および測定の対象とし、ガスセンサ素子100が排気経路に取り付けられるものである場合、コントローラ110Aの一部あるいは全部の機能が、当該自動車に搭載されてなるECU(電子制御装置)により実現されてもよい。
また、図5では、コントローラ110Aが備える機能ブロックとして、判定部111と、温度設定部112と、ヒータ制御部113と、インピーダンス検出部114と、差異算出部115と、記憶部116とを挙げた。しかしながら、コントローラ110Aは、これらの機能ブロック以外の機能ブロックを備えていてもよい。コントローラ110Aは、例えば、NOxの検知、濃度演算、その他のための機能ブロックを備えていてもよい。具体的には、コントローラ110Aは、各ポンプセルの動作を制御する機能ブロック、NOx濃度を演算する機能ブロック、コントローラ110Aの備える各部の動作を統括的に制御する機能ブロック等をさらに備えていてもよい。
コントローラ110Aが備える判定部111は、コントローラ110が備える判定部111と同様に、測定用ポンプセル41の出力に基づいて、被測定ガス中のNOxの濃度が、所定の濃度(基準濃度)に比べて高いか低いかを判定する(判定ステップ)。コントローラ110Aが備える判定部111は、測定用ポンプセル41の出力を用いて行った判定の結果(判定結果)を、つまり、被測定ガス中のNOxの濃度が基準濃度に比べて高いか低いかを、差異算出部115に通知する。
インピーダンス検出部114は、測定用ポンプセル41のセル抵抗(インピーダンス)の値を測定(検出)し、測定した測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を差異算出部115に通知する。インピーダンス検出部114は、例えば、測定用ポンプセル41の測定電極44と外側ポンプ電極23との間に交流を供給し、両者の間に発生する交流信号を、両者の間のインピーダンスに応じたレベルの電圧信号に変換してもよい。
具体的には、インピーダンス検出部114は、測定用ポンプセル41の測定電極44と外側ポンプ電極23との間に挿入接続され、かつ、測定電極44と外側ポンプ電極23との間のインピーダンスを検出するインピーダンス検出回路であってもよい。インピーダンス検出部114は、測定電極44と外側ポンプ電極23との間に交流を供給する交流発生回路と、両者の間への交流供給によって両者の間に発生するインピーダンスに応じたレベルの電圧信号を検出する信号検出回路とを備えていてもよい。インピーダンス検出部114の備える信号検出回路は、測定電極44と外側ポンプ電極23との間に発生する交流信号を、測定電極44と外側ポンプ電極23との間のインピーダンスに応じたレベルの電圧信号に変換するフィルタ回路(例えばローパスフィルタ、バンドパスフィルタなど)にて構成されてもよい。
差異算出部115は、判定部111から通知される判定結果と、インピーダンス検出部114から通知される測定用ポンプセル41のセル抵抗の値とを用いて、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と第1基準値または第2基準値との差を算出する(差異算出ステップ)。差異算出部115は、算出した「測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と、基準値(第1基準値または第2基準値)との差」を、温度設定部112に通知する。
具体的には、差異算出部115は、判定部111から「NOxの濃度が基準濃度よりも低い」との判定結果を通知されると、記憶部116の基準インピーダンス117を参照して、第1基準値を取得する。そして、差異算出部115は、取得した第1基準値と、インピーダンス検出部114から通知された測定用ポンプセル41のセル抵抗の値との差を算出し、算出した差を温度設定部112に通知する。第1基準値は、「NOxの濃度が基準濃度よりも低い」場合に、測定用ポンプセル41が示すべきセル抵抗の値として、予め設定された値である。
また、差異算出部115は、判定部111から「NOxの濃度が基準濃度よりも高い」との判定結果を通知されると、記憶部116の基準インピーダンス117を参照して、第2基準値を取得する。そして、差異算出部115は、取得した第2基準値と、インピーダンス検出部114から通知された測定用ポンプセル41のセル抵抗の値との差を算出し、算出した差を温度設定部112に通知する。第2基準値は、「NOxの濃度が基準濃度よりも高い」場合に、測定用ポンプセル41が示すべきセル抵抗の値として、予め設定された値である。
差異算出部115は、判定部111から「NOxの濃度が基準濃度に等しい」との判定結果を通知されると、温度設定部112によってその時点で設定されているセンサ素子駆動温度を維持するようにとの指示を、温度設定部112に通知してもよい。
温度設定部112は、差異算出部115から通知される「測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と、基準値(第1基準値または第2基準値)との差」に基づいて、センサ素子駆動温度を設定する(温度設定ステップ、インピーダンス一定制御ステップ)。具体的には、温度設定部112は、「測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と、基準値(第1基準値または第2基準値)との差」が小さくなるように、センサ素子駆動温度を設定する。つまり、温度設定部112は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と基準値(第1基準値または第2基準値)とが等しくなるように、センサ素子駆動温度を設定する。そして、温度設定部112は、設定したセンサ素子駆動温度を、ヒータ制御部113に通知する。
例えば、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が基準値(第1基準値または第2基準値)よりも小さいと、温度設定部112は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を大きくして基準値と等しくなるよう、その時点までに設定していたセンサ素子駆動温度を下げる。温度設定部112は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が基準値と等しくなるように下げた、新たなセンサ素子駆動温度を、ヒータ制御部113に通知する。
例えば、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が基準値(第1基準値または第2基準値)よりも大きいと、温度設定部112は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を小さくして基準値と等しくなるよう、その時点までに設定していたセンサ素子駆動温度を上げる。温度設定部112は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が基準値と等しくなるように上げた、新たなセンサ素子駆動温度を、ヒータ制御部113に通知する。
コントローラ110Aが備えるヒータ制御部113は、コントローラ110が備えるヒータ制御部113と同様に、温度設定部112から通知されたセンサ素子駆動温度に基づいて、ヒータ70の動作を制御する。ヒータ制御部113によって、ヒータ電源77からヒータ70への投入パワー(給電)は制御され、ヒータ70は、ガスセンサ素子100の温度が温度設定部112によって設定されたセンサ素子駆動温度になるよう、ガスセンサ素子100を加熱する。ヒータ制御部113は、ヒータ抵抗検出リード76とヒータリード72aとの間の抵抗値として得られるヒータ抵抗(ヒータエレメント72の抵抗)の値が、温度設定部112によって設定された所定の温度に応じた値となるよう、ヒータ電源77に印加されるヒータ電圧を制御してもよい。
これまで説明してきたように、ガスセンサS2において、「NOxの濃度が基準濃度よりも低い」と判定されると、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値は、第1基準値(第1の値)となるように制御される。
例えば、コントローラ110Aは、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が第1基準値よりも小さいと、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と第1基準値とが等しくなるよう、センサ素子駆動温度を下げて、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を大きくする。例えば、コントローラ110Aは、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が第1基準値よりも大きいと、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と第1基準値とが等しくなるよう、センサ素子駆動温度を上げて、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を小さくする。例えば、コントローラ110Aは、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と第1基準値とが等しいと、その時点で設定されていたセンサ素子駆動温度を維持して、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が第1基準値に等しい状態を維持してもよい。
また、ガスセンサS2において、「NOxの濃度が基準濃度よりも高い」と判定されると、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値は、第2基準値(第2の値)となるように制御される。
例えば、コントローラ110Aは、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が第2基準値よりも小さいと、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と第2基準値とが等しくなるよう、センサ素子駆動温度を下げて、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を大きくする。例えば、コントローラ110Aは、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が第2基準値よりも大きいと、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と第2基準値とが等しくなるよう、センサ素子駆動温度を上げて、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値を小さくする。例えば、コントローラ110Aは、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値と第2基準値とが等しいと、その時点で設定されていたセンサ素子駆動温度を維持して、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が第2基準値に等しい状態を維持してもよい。
これまでに説明してきたように、ガスセンサS2(特に、コントローラ110A)は、センサ素子駆動温度を設定する温度設定ステップとして、以下のインピーダンス一定制御ステップを実行する。すなわち、コントローラ110A(特に、温度設定部112)は、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値が基準値(第1基準値または第2基準値)に等しくなるように、センサ素子駆動温度を設定するインピーダンス一定制御ステップを実行する。ここで、基準値として、第1基準値および第2基準値のいずれを採用するかは、被測定ガス中のNOxの濃度によって決定される。NOxの濃度が基準濃度よりも低いと、基準値として、第1基準値が採用される。NOxの濃度が基準濃度よりも高いと、基準値として、第2基準値が採用される。
当該構成では、NOx濃度が低いと判定されると、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値は、第1基準値になるよう制御され、また、NOx濃度が高いと判定されると、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値は、第2基準値になるよう制御される。そのため、ガスセンサS2は、被測定ガス中のNOxの濃度ではなく、時間の経過(例えば、測定用ポンプセル41のセル抵抗の値の変動)によって、測定結果が変動してしまうという事態が発生するのを抑制することができる。
(V)その他
上記実施形態では、ガスセンサ素子100の積層体は、6層の固体電解質層により構成されている。しかしながら、積層体を構成する固体電解質層の数は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。
また、上記実施形態では、被測定ガスを導入する内部空間(すなわち、被測定ガス流通部7)は、第1固体電解質層4、スペーサ層5、及び第2固体電解質層6により区画される位置に設けられる。しかしながら、被測定ガス流通部7の配置は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。第1面、第2面、第1ポンプ電極、第2ポンプ電極、第1リード、及び第2リードの配置は、積層体及び内部空間の構成に応じて適宜選択されてよい。
また、上記実施形態では、被測定ガス流通部7は、3室構造を有するように構成されている。しかしながら、被測定ガス流通部7の構成は、このような例に限定されなくてよく、実施の形態に応じて適宜選択されてよい。他の一例では、第4拡散律速部18及び第3内部空所19が省略されてよく、これにより、被測定ガス流通部7は、2室構造を有するように構成されてよい。この場合、測定電極44は、第2内部空所17に隣接する第1固体電解質層4の上面における、第3拡散律速部16から離れた位置に設けられてよい。
すなわち、被測定ガス流通部7は、酸素の汲み出しまたは汲み入れが行なわれる空室を2つ含んでもよいし、1つだけ含んでいてもよい。また、ガスセンサ素子100にとって、1つ以上の拡散律速部を備えることも必須ではない。
また、図1では、内側ポンプ電極22及び外側ポンプ電極23は共に空間に対して露出している。しかしながら、空間に隣接することは、このような形態に限定されなくてよく、被覆等を介して間接的に隣接してもよい。他の一例として、外側ポンプ電極23は、保護部材等によって被覆されていてよい。
また、上記実施形態では、基準ガス導入空間43が設けられている。しかしながら、ガスセンサ素子100の構成は、このような例に限定されなくてよい。他の一例では、第1固体電解質層4は、ガスセンサ素子100の後端まで延びるように構成されてよく、基準ガス導入空間43は省略されてよい。この場合、大気導入層48が、ガスセンサ素子100の後端まで延びるように構成されてよい。
また、上記実施形態では、ガスセンサ素子100は、窒素酸化物(NOx)の濃度を測定するように構成されている。しかしながら、本発明のガスセンサ素子は、このようなNOxの濃度を測定するように構成されるガスセンサ素子に限られなくてよい。他の一例では、本発明のガスセンサ素子は、例えば、酸素の濃度を測定するように構成されたガスセンサ素子等の他のガスセンサ素子であってよい。例えば、上記実施形態に係るガスセンサ素子100について、補助ポンプセル、測定ポンプセルを省略し、基準電極を主ポンプ電極の下に配置することで、酸素濃度を測定するためのガスセンサ素子を構成することができる。この場合、ガスセンサ素子は、主ポンプセルにより酸素を汲み出すことで、被測定ガス中の酸素濃度を測定することができる。
[実施例]
本発明の効果を検証するため、以下の実施例1~4に係るガスセンサを作製した。ただし、本発明は、以下の各実施例に係るガスセンサに限定されるものではない。
実施例1は、図1~図3を用いて説明してきたガスセンサSである。上述のとおり、ガスセンサSにおいて、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセル(例えば、主ポンプセル21)のセル抵抗の傾きA[ohm/W]は、約「11」である。また、実施例1(ガスセンサS)において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きB[ohm/W]は、約「2600」である。したがって、実施例1において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きBは、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセルのセル抵抗の傾きAの約「236」倍となっており、つまり、「B/A」は約「236」である。
実施例2は、図4を用いて説明してきたガスセンサS1である。上述のとおり、ガスセンサS1において、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセル(例えば、主ポンプセル21)のセル抵抗の傾きA[ohm/W]は、約「10」である。また、実施例2(ガスセンサS1)において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きB[ohm/W]は、約「600」である。したがって、実施例2において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きBは、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセルのセル抵抗の傾きAの約「60」倍となっており、つまり、「B/A」は約「60」である。
実施例3は、実施例1(ガスセンサS)および実施例2(ガスセンサS1)と同様の構成を備え、かつ、調整ポンプセル(例えば、主ポンプセル21)および測定用ポンプセル41がそれぞれ、以下の条件を満たすように構成されたガスセンサである。すなわち、実施例3に係るガスセンサは、ガスセンサ素子100と、判定部111と、温度設定部112とを備えている。そして、実施例3において、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセル(例えば、主ポンプセル21)のセル抵抗の傾きA[ohm/W]は、約「20」である。また、実施例3において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きB[ohm/W]は、約「200」である。したがって、実施例3において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きBは、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセルのセル抵抗の傾きAの約「10」倍となっており、つまり、「B/A」は約「10」である。
実施例4は、実施例1(ガスセンサS)および実施例2(ガスセンサS1)と同様の構成を備え、かつ、調整ポンプセル(例えば、主ポンプセル21)および測定用ポンプセル41がそれぞれ、以下の条件を満たすように構成されたガスセンサである。すなわち、実施例4に係るガスセンサは、ガスセンサ素子100と、判定部111と、温度設定部112とを備えている。そして、実施例4において、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセル(例えば、主ポンプセル21)のセル抵抗の傾きA[ohm/W]は、約「5」である。また、実施例4において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きB[ohm/W]は、約「5000」である。したがって、実施例4において、ヒータ70への投入パワーに対する測定用ポンプセル41のセル抵抗の傾きBは、ヒータ70への投入パワーに対する調整ポンプセルのセル抵抗の傾きAの約「1000」倍となっており、つまり、「B/A」は約「1000」である。
本件発明者らは、実施例1~4のそれぞれに係るガスセンサについて、ディーゼルエンジンを用いた以下の耐久試験を実施し、係る耐久試験の実施の前後において、各ガスセンサのパラメータ(出力値など)がどのように変化するかを確認した。すなわち、本件発明者らは、上述の耐久試験として、各ガスセンサを自動車の排ガス管の配管に取り付け、エンジン回転数1500~3500rpm、負荷トルク0~350N・mの範囲で構成した40分間の運転パターンを、2000時間繰り返す試験を行なった。なお、係る耐久試験において、ガス温度は摂氏200度~摂氏600度、NOx濃度は0~1500ppmとした。
そして、上述の耐久試験の実施の前後において、実施例1~4のそれぞれに係るガスセンサについて、「NOxの濃度が高い環境下でのNOx出力」、「O2の濃度が高い環境下でのNOx出力」、および、「オフセット値」がどのように変化しているかを確認した。表1における「評価1」は、実施例1~4のそれぞれについて確認された、上述の耐久試験の実施の前後における、NOxの濃度が高い環境下でのNOx出力の変化率を示している。また、表1における「評価2」は、実施例1~4のそれぞれについて確認された、上述の耐久試験の実施の前後における、O2の濃度が高い(つまり、相対的にNOxの濃度が低い)環境下でのNOx出力の変化率を示している。さらに、表1における「評価3」は、実施例1~4のそれぞれについて確認された、上述の耐久試験の実施の前後における、NOx出力のオフセット変動量(オフセット値の変動量)を示している。
具体的には、本件発明者らは、評価1として、以下のモデルガスMg1を用いて、実施例1~4のそれぞれについて、上述の耐久試験の実施の前後におけるNOx出力の変化の度合い(変化率)を調査した。すなわち、実施例1~4のそれぞれについて、耐久試験の実施の前と後とのそれぞれで、NOx濃度が1500ppm、O2濃度が0%であるモデルガスMg1を流した時のNOx出力を計測し、その変化の度合いを調査した。その結果、表1の「評価1」に示すように、実施例1は「-6%」、実施例2は「-8%」、実施例3は「-10%」、実施例4は「-5%」であった。
また、本件発明者らは、評価2として、以下のモデルガスMg2を用いて、実施例1~4のそれぞれについて、上述の耐久試験の実施の前後におけるNOx出力の変化の度合い(変化率)を調査した。すなわち、実施例1~4のそれぞれについて、耐久試験の実施の前と後とのそれぞれで、NOx濃度が500ppm、O2濃度が18%であるモデルガスMg2を流した時のNOx出力を計測し、その変化の度合いを調査した。その結果、表1の「評価2」に示すように、実施例1は「-7%」、実施例2は「-9%」、実施例3は「-10%」、実施例4は「-5%」であった。
さらに、本件発明者らは、評価3として、以下のモデルガスMg3を用いて、実施例1~4のそれぞれについて、上述の耐久試験の実施の前後におけるオフセット値の変動量を調査した。すなわち、実施例1~4のそれぞれについて、耐久試験の実施の前と後とのそれぞれで、NOx濃度が0ppm、O2濃度が0%、H2O濃度が3%であるモデルガスMg3を流した時のオフセット値を計測し、その変化量を調査した。その結果、表1の「評価3」に示すように、実施例1は「+4ppm」、実施例2は「+5ppm」、実施例3は「+7ppm」、実施例4は「+3ppm」であった。
評価1に示すとおり、実験例1~4に係るガスセンサは、何れも、2000時間使用した後であっても、NOx濃度が1500ppm、O2濃度が0%である環境下において、NOx出力の変化率を10%以下に抑えることができている。したがって、本発明に係るガスセンサは、所定時間使用した後であっても、被測定ガス(例、排気ガス)における特定ガス(例、NOx)の濃度が高い環境下において、高精度な濃度測定を実現できることが確認された。
評価2に示すとおり、実験例1~4に係るガスセンサは、何れも、2000時間使用した後であっても、NOx濃度が500ppm、O2濃度が18%である環境下において、NOx出力の変化率を10%以下に抑えることができている。したがって、本発明に係るガスセンサは、所定時間使用した後であっても、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が低い(O2などの、特定ガス以外のガス成分の濃度が高い)環境下において、高精度な濃度測定を実現できることが確認された。
特に、評価1および評価2に示すとおり、実験例1~4に係るガスセンサは、何れも、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下においても、特定ガスの濃度が低い環境下においても、NOx出力の変化率を10%以下に抑えることができている。したがって、本発明に係るガスセンサは、被測定ガスにおける特定ガスの濃度が高い環境下での高精度な濃度測定と、濃度が低い環境下での高精度な濃度測定とを両立できることが確認された。
評価3に示すとおり、実験例1~4に係るガスセンサは、何れも、2000時間使用した後であっても、NOx濃度が0ppm、O2濃度が0%、H2O濃度が3%である環境下において、オフセット変動量を+7ppm以下に抑えることができている。したがって、本発明に係るガスセンサは、オフセット値の変動を抑えて、被測定ガスにおける特定ガスの濃度を高精度に測定できることが確認された。なお、評価3は、上述の耐久試験の実施の前後における実施例1~4のそれぞれのオフセット値の変動量を評価するものであるから、「或る時間毎に決まった値を補正する方法」を、つまり、時間補正を、利用することができる。そのため、上述の耐久試験の実施の前後におけるオフセット値の変動量が-10%~+10%の範囲に収まっている場合、上述の時間補正を有効に利用することができ、「オフセット値の変動を抑えることができている」と評価できる。
S、S1、S2…ガスセンサ、100…ガスセンサ素子(センサ素子)、
111…判定部、112…温度設定部、1…第1基板層(固体電解質層)、
2…第2基板層(固体電解質層)、3…第3基板層(固体電解質層)、
4…第1固体電解質層(固体電解質層)、5…スペーサ層(固体電解質層)、
6…第2固体電解質層(固体電解質層)、7…被測定ガス流通部(内部空間)、
44…測定電極、23…外側ポンプ電極、41…測定用ポンプセル、
70…ヒータ(ヒータ部)、22…内側ポンプ電極、
51…補助ポンプ電極(内側ポンプ電極)、21…主ポンプセル(調整用ポンプセル)、
50…補助ポンプセル(調整用ポンプセル)

Claims (7)

  1. 酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数積層してなるセンサ素子であって、
    被測定ガスが導入される内部空所と、
    前記内部空所に設けられてなる測定電極と、前記内部空所と異なる部位に設けられた外側ポンプ電極と、前記測定電極と前記外側ポンプ電極との間に存在する前記固体電解質層と、から構成される電気化学的ポンプセルである測定用ポンプセルと、
    前記センサ素子の内部に埋設されてなり、前記センサ素子を所定の温度に加熱するヒータ部と、
    を含むセンサ素子と、
    前記測定用ポンプセルの出力に基づいて、前記被測定ガス中の所定のガス成分の濃度が、所定の濃度に比べて高いか低いかを判定する判定部と、
    前記判定部によって前記濃度が低いと判定されると、前記濃度が高いと判定される場合よりも、前記所定の温度を低く設定する温度設定部と、
    を備える、
    ガスセンサ。
  2. 前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きが200[ohm/W]以上である、
    請求項1に記載のガスセンサ。
  3. 前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きが5000[ohm/W]以下である、
    請求項1または2に記載のガスセンサ。
  4. 前記センサ素子は、
    前記内部空所に面して形成された内側ポンプ電極と、
    前記外側ポンプ電極または前記固体電解質層に接して外部空間に露出する態様にて設けられた第3電極と、
    前記内側ポンプ電極と前記外側ポンプ電極または前記第3電極との間に存在する前記固体電解質層と、
    から構成される電気化学的ポンプセルである調整用ポンプセルをさらに1つ以上含み、
    前記測定用ポンプセルには、前記調整用ポンプセルにおいて前記被測定ガスに含まれる酸素がポンピング処理された後の前記被測定ガスが導入され、
    前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きよりも大きい、
    請求項1または2に記載のガスセンサ。
  5. 前記判定部によって前記濃度が低いと判定されると、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値は、所定の第1の値になるよう制御され、
    前記判定部によって前記濃度が高いと判定されると、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の値は、前記第1の値とは異なる、所定の第2の値になるよう制御される、
    請求項4に記載のガスセンサ。
  6. 前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記測定用ポンプセルのセル抵抗の傾きは、前記ヒータ部への投入パワーに対する、前記調整用ポンプセルのセル抵抗の傾きの10倍から1000倍である、
    請求項4に記載のガスセンサ。
  7. 酸素イオン伝導性の固体電解質層を複数積層してなるセンサ素子であって、
    被測定ガスが導入される内部空所と、
    前記内部空所に設けられてなる測定電極と、前記内部空所と異なる部位に設けられた外側ポンプ電極と、前記測定電極と前記外側ポンプ電極との間に存在する前記固体電解質層と、から構成される電気化学的ポンプセルである測定用ポンプセルと、
    前記センサ素子の内部に埋設されてなり、前記センサ素子を所定の温度に加熱するヒータ部と、
    を含むセンサ素子を備えるガスセンサの制御方法において、
    前記測定用ポンプセルの出力に基づいて、前記被測定ガス中の所定のガス成分の濃度が、所定の濃度に比べて高いか低いかを判定する判定ステップと、
    前記判定ステップにて前記濃度が低いと判定されると、前記濃度が高いと判定される場合よりも、前記所定の温度を下げる温度設定ステップと、
    を含む、
    ガスセンサの制御方法。
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