JP4980524B2 - 炭素−セラミックス系複合体、被鍍金体搬送ローラ、及びアルミ溶湯攪拌シャフト - Google Patents

炭素−セラミックス系複合体、被鍍金体搬送ローラ、及びアルミ溶湯攪拌シャフト Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素系複合体に関する。より詳しくは、アルミ溶湯攪拌シャフト又は被鍍金体搬送ローラ等の極めて高温下で用いる治具に好適な炭素−セラミックス系複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属溶湯の際に用いるアルミ溶湯攪拌シャフトとしては、炭素粉末、炭化珪素、又は窒化珪素等のセラミックスからなるものが用いられている。しかし、それぞれ、炭素粉末からなるものは、耐酸化性、耐衝撃性、及び耐磨耗性等の特性が充分ではなく、炭化珪素からなるものは、耐酸化性等の特性が充分ではなく、窒化珪素からなるものは、耐衝撃性等の特性が充分ではなかったため、いずれのセラミックスからなるものでも、約一週間単位という短期間で、極めて高温化で行われる治具の交換を余儀なくされているのが現状であり、作業者の安全性、作業効率等に関し問題が指摘されている。
【0003】
また、従来、金属板を鍍金する際に用いる搬送ローラとしては、炭素粉末又はステンレスからなるものが用いられている。しかし、炭素粉末からなるものでは、耐摩耗性、耐衝撃性、及び耐酸化性等の特性が充分ではないことから、被鍍金体との接触等による損傷、又は酸素雰囲気下での焼失等の問題が指摘されている。また、ステンレスからなるものでは、耐熱性等の特性が充分ではないとともに、搬送ローラと被搬送物間で、金属同士の擦れ合いによる凝着等を生ずることから、使用中における搬送ローラの変形、及び被搬送物の損傷といった問題が指摘されている。
【0004】
一方、近年、耐熱性、耐熱衝撃性等に優れるとともに、従来、セラミックス固有の欠点とされていた脆さをも克服した材料として、二次元又は三次元方向に配列した炭素繊維の間隙に炭素からなるマトリックスを形成してなるC/Cコンポジット材料が開発されている。
【0005】
しかし、このC/Cコンポジット材料は、炭素材料を主成分とし、酸素の存在下で高温に曝した場合には、容易に燃焼してしまうため、金属溶湯用治具等へ適用することは困難であった。
【0006】
また、このようなC/Cコンポジット材料の問題を解決するとともに、耐熱性、耐熱衝撃性、及び耐磨耗性等の大きな材料として、このC/Cコンポジット材料に金属珪素を含浸、拡散させて、二次元又は三次元方向に配列した炭素繊維の間隙に、珪素若しくは珪素及び炭化珪素からなるマトリックスを形成してなるSi−SiC系複合材料、又は二次元又は三次元方向に配列した炭素繊維の間隙に、炭化珪素からなるマトリックスを形成してなるSiC系複合材料が開発されている。このため、被鍍金体搬送ローラやアルミ溶湯攪拌シャフト等については、コストが比較的低い炭素、若しくは黒鉛からなる芯体の周囲に、これらの複合材料からなる外周体を配設した複合体を適用することにより、耐熱性、耐磨耗性、及び耐衝撃性等を向上させる試みが行われている。
【0007】
しかし、従来、このような複合体にあっては、炭素粉末、又は黒鉛からなる芯体の周囲に、C/Cコンポジット材料からなる外周前駆体を配設して一体化した後に、外周前駆体に珪素を含浸、拡散させて、炭化珪素化して外周体を作製すると、含浸又は拡散させた珪素の一部が、芯体の炭素と反応して反応熱を発生させるため、芯体と外周体との界面に熱膨張差による応力が発生し、これにより外周体が剥離又は破壊してしまうという問題があった。
【0008】
このため、このような従来の複合体では、芯体と外周体とを別々に作製した後、外周体の中空に芯体を嵌合して製造しており、芯体の外径に外周体の内径を合わせるための治具が必要になるばかりか、芯体の外径と外周体の内径を精密に合わせることが、実際上極めて困難なため、外周体の作製後に、寸法合わせのための加工工程が必要となり、製造工程の煩雑化、製品コストの増大といった問題が指摘されていた。
【0009】
また、このような従来の複合体にあっては、外周体を構成するSi−SiC系複合材料、SiC系複合材料がかなり割高であるため、これらの材料を用いる治具も割高にならざる負えず、特殊な分野はともかく、被鍍金体搬送ローラやアルミ溶湯攪拌シャフト等といった汎用治具への適用は、実際上困難な状況にあった。
【0010】
さらに、外周体を構成するSi−SiC系複合材料、又はSiC系複合材料は、種々の優れた特性を有するものの、被鍍金体搬送ローラやアルミ溶湯攪拌シャフト等に求められる耐酸化性については、必ずしも充分なものではなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、簡易かつ低コストで製造が可能であり、800℃以上の高温下においても、耐酸化性、耐衝撃性、及び耐熱衝撃性等が大きな炭素−セラミックス系複合体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意研究した結果、炭素系材料からなる基体に、セラミックス繊維と、特定のリン酸系セメント材料を主成分とするマトリックスとを有するセラミックス繊維強化複合材料からなる表層体を配設することにより、上記の目的を解決し得ることを見出して、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明によれば、炭素系材料からなる基体と、セラミックス繊維強化複合材料からなる表層体とを備える炭素−セラミックス系複合体であって、炭素系材料が、炭素、黒鉛、又はC/Cコンポジット材料のいずれか一種であり、該セラミックス繊維強化複合材料が、セラミックス繊維と、リン酸アルミニウム(AlPO5〜70質量%、アルミナ(Al5〜30質量%、及びシリカ(SiO5〜20質量%、その他の成分0〜10質量%からなるマトリックスとを有することを特徴とする炭素−セラミックス系複合体が提供される。
【0014】
本発明においては、セラミックス繊維として、アルミナ(Al23)20〜30質量%と、シリカ(SiO2)60〜70質量%と、マグネシア(MgO)8〜12質量%と、その他の成分0〜10質量%とからなるもの;又はアルミナ(Al23)25〜30質量%と、シリカ(SiO2)35〜55質量%と、ムライト(Al23・SiO2)10〜30質量%と、その他の成分10〜20質量%とからなるものを用いることができる。
【0015】
本発明におけるセラミックス繊維は、その長さが、3〜50mmであることが好ましい。また、繊維軸方向に配向して繊維束を構成することが好ましく、この繊維束の複数を、クロス状に配列してなることがより好ましい。
また、本発明においては、セラミックス繊維を、セラミックス繊維強化複合材料中、15〜30質量%含有させることが好ましい。
【0016】
本発明においては、表層体には、更に炭化珪素層が表面に設けられていてもよい。
【0017】
本発明においては、このような複合体を用いることにより、炭素系材料からなる芯体と、この芯体の周囲に配設される、セラミックス繊維強化複合材料からなる外周体とを備える被鍍金体搬送ローラ又はアルミ溶湯攪拌シャフトであって、炭素系材料が、炭素、黒鉛、又はC/Cコンポジット材料のいずれか一種であり、外周体を構成するセラミックス繊維強化複合材料が、セラミックス繊維と、リン酸アルミニウム(AlPO)5〜70質量%、アルミナ(Al)5〜30質量%、及びシリカ(SiO)5〜20質量%、その他の成分0〜10質量%からなるマトリックスと、を有することを特徴とする被鍍金体搬送ローラ又はアルミ溶湯攪拌シャフトを提供することが可能となる。
【0018】
以上のように、本発明の炭素−セラミックス系複合体では、この複合体の表層体を構成する材料が、いわゆるセメント系のマトリックスを有するセラミックス繊維強化複合材料であるため、Si−SiC系複合材料、又はSiC系複合材料に比べ極めて低コストにであり、しかも、基体と表層体とを最初から一体化した状態で、複合材料を製造することができ、基体と表層体とを別途作製することによる寸法合わせのための加工工程が不要であるため、極めて大幅なコストの低減化及び製造工程の簡素化を達成することができる。また、本発明の炭素系複合体を構成する表層体が、上述のように低コストにも拘らず、800℃以上の高温化でも耐衝撃性、曲げ強度、耐酸化性、及び耐磨耗性等が大きく、特に耐酸化性に至っては、SiC系複合材料等よりも大きいため、より合理的なコストで、被鍍金体搬送ローラ又はアルミ溶湯攪拌シャフト等に好適な材料を提供することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
本発明の炭素−セラミックス系複合体は、炭素系材料からなる基体と、セラミックス繊維、及び特定のリン酸系セメント材料を主成分とするマトリックスを有するセラミックス繊維強化複合材料からなる表層体とを備えるものである。以下、各構成要素毎に詳しく説明する。
【0020】
本発明における基体は、炭素系材料により構成されるものであり、これにより、軽量かつ極めて高い耐熱性、耐熱衝撃性等の特性を発揮させることができる。
【0021】
基体を構成する炭素系材料としては、例えば、炭素、等方性黒鉛、炭素繊維材料等を挙げることができるが、入手容易性、コスト面からは炭素が好ましい。
【0022】
一方、その用途により、曲げ強度、耐衝撃性等の特性を求められる場合は、炭素繊維を繊維軸方向に配向した炭素繊維材料が好ましく、中でも、あらゆる方向からの衝撃に対しても高い耐衝撃性を付与できる点でC/Cコンポジット材料が好ましい。
【0023】
ここで、C/Cコンポジット材料とは、炭素繊維と炭素繊維以外の炭素とから構成され、炭素繊維は、特定の直径、本数からなる炭素繊維束(ヤーン)からなる積層構造を構成しており、炭素繊維以外の炭素は、積層構造と積層構造との間の間隙にマトリックスを構成している、特定積層構造とマトリックスの構造からなる複合材料である。
【0024】
本発明で用いられるC/Cコンポジット材料としては、炭素繊維を10〜70%含有することが好ましく、炭素繊維以外の炭素成分は、炭素粉末であることが好ましく、黒鉛化した炭素粉末であることがより好ましい。
【0025】
本発明で用いられるC/Cコンポジット材料は、直径が10μm前後の炭素繊維を、通常、数百本〜数万本束ねて繊維束(ヤーン)を形成し、この繊維束を熱可塑性樹脂で被覆して調製した柔軟性糸状中間材を得、これを、例えば、特開平2−80639号公報に記載されている方法等によりシート状にし、このシート状としたものを二次元又は三次元方向に配列して一方向シート(UDシート)や各種クロスとしたり、また上記シートやクロスを積層したりすることにより、所定形状の予備成形体(繊維プリフォーム)を形成し、予備成形体の繊維束の外周に形成されている有機物からなる熱可塑性樹脂等の被膜を焼成して炭化除去して得ることができる。この際、マトリックスは、炭素繊維束を形成する際に、焼成後にマトリックスとして作用する遊離炭素となるピッチ、コークス類を包含するバインダーと、必要に応じてフェノール樹脂粉末等を含有させることによって形成することができる。尚、本明細書において、参考の為に特開平2−80639号公報の記載を引用する。
【0026】
本発明において、表層体は、前述した基体上に設けられるものであり、セラミックス繊維と、リン酸アルミニウム(AlPO4)、アルミナ(Al24)、及びシリカ(SiO2)を主成分とするマトリックスとを有するセラミックス繊維強化複合材料からなるものである。
【0027】
表層体を構成するセラミックス繊維としては、耐熱性、耐衝撃性、及び引張り強度の高いものが好ましく、例えば、アルミナ(Al23)20〜30質量%と、シリカ(SiO2)60〜70質量%と、マグネシア(MgO)8〜12質量%と、その他の成分0〜10質量%とからなるもの;又はアルミナ(Al23)25〜35質量%と、シリカ(SiO2)35〜55質量%と、ムライト(Al23・SiO2)10〜30質量%と、その他の成分10〜20質量%とからなるものが好ましい。中でも、1200℃以上の高温下で、耐熱性、耐酸化性、耐熱衝撃性、及び耐衝撃性等に優れる点で、後者のセラミックス繊維が好ましい。
【0028】
また、上述した各セラミックス繊維における、その他の成分としては、例えば、酸化鉄(Fe23)、酸化カリウム(K2O)等を挙げることができる。
【0029】
本発明におけるセラミックス繊維は、短繊維又は長繊維のいずれでもよく、また、無配向性又は配向性のいずれでもよい。
【0030】
但し、繊維間の絡み合いを多くして耐熱衝撃性、耐衝撃性等を向上させることができる点、及び後述するマトリックスを緊密に設けることが容易である点で、繊維長3〜50mmの繊維が好ましく、繊維長10〜20mmの繊維がより好ましい。
【0031】
また、本発明におけるセラミックス繊維は、耐熱衝撃性、耐衝撃性等を向上させることができる点で、セラミックス繊維を、繊維軸方向に配向させて繊維束を構成させることが好ましく、更に、この繊維束の複数を、クロスさせて配列することがより好ましい。
【0032】
本発明におけるセラミックス繊維は、表層体を構成するセラミックス繊維強化複合材料中、5〜40質量%含有させることが好ましく、20〜25質量%含有させることがより好ましい。この範囲であれば、表層体の機械的強度を充分なものとすることができるとともに、表層体の成形も容易に行うことができる。
【0033】
他方、表層体を構成するマトリックスは、セラミックス繊維間の間隙又は材料の表層等に形成されるものであり、リン酸アルミニウム(AlPO4)5〜70質量%と、アルミナ(Al23)5〜30質量%と、シリカ(SiO2)5〜20質量%と、その他の成分0〜10質量%とからなることが好ましく、リン酸アルミニウム(AlPO4)50〜60質量%と、アルミナ(Al23)25〜30質量%と、シリカ(SiO2)15〜20質量%と、その他の成分0〜10質量%とからなることがより好ましい。
【0034】
好ましい範囲であれば1000℃以上の高温化、より好ましい範囲であれば1200℃の高温化であっても、耐酸化性、耐熱性、耐衝撃性等の大きな複合体を得ることができる。
【0035】
この際、その他の成分としては、例えば、炭化珪素、ムライト、蛙目粘土、コーディエライト、タルク、カオリン等を挙げることができ、中でも、機械的強度を向上させることができる点で炭化珪素が好ましい。なお、その他の成分として炭化珪素を含有させる場合には、得られる複合材料に充分な機械的強度を発揮させるために、マトリックス全成分中、炭化珪素を10〜20質量%含有させることが好ましい。
【0036】
本発明における表層体には、必要に応じてさらに層を設けることもでき、例えば、高温化での耐酸化性、曲げ強度、及び耐磨耗性等を向上させるために、更に炭化珪素層を表面に設けることができる。
【0037】
この際、炭化珪素層は、曲げ強度、及び耐酸化性等の諸性能を充分に発揮できるように、材料表面から30〜300μmの厚さで設けることが好ましい。
【0038】
本発明における表層体は、セラミックス繊維に、第一リン酸アルミニウム(Al(H3PO43)、アルミナ(Al23)、及びシリカ(SiO2)を主成分とするマトリックス原料からなるスラリーを含浸させ、含浸させたスラリーを硬化させた後、乾燥して得ることができる。
【0039】
また、表層体を、基体に配設する方法について特に制限はないが、例えば、基体を芯体として構成させる場合には、シートワインディング法により、芯体に巻きつける方法等を挙げることができる。
【0040】
以上、本発明の炭素−セラミックス系複合体について説明してきたが、このような本発明における複合体では、800℃以上の高温でも全く酸化されることがなく、かつその衝撃強度が1.0〜50.0kJ/m2、曲げ強度が10〜400MPa、嵩密度が1.3〜2.5g/ccの特性を有するものである。
【0041】
従って、本発明の複合体によれば、炭素系材料からなる芯体の周囲に、セラミックス繊維と、リン酸アルミニウム(AlPO4)、アルミナ(Al23)、及びシリカ(SiO2)を主成分とするマトリックスとを有するセラミックス繊維強化複合材料からなる外周体を配設することにより、耐酸化性、耐衝撃性、耐熱衝撃性等に優れる、被鍍金体搬送ローラ又はアルミ溶湯攪拌シャフト等の各種金属加工用部材等を合理的な価格で提供することができる。
【0042】
【実施例】
以下、本発明の具体的態様について実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例によって何ら限定されるものではない。各実施例及び比較例の複合体の評価は下記の方法で行った。
【0043】
(評価方法)
(1)耐衝撃性(靭性)
シャルピー衝撃試験(JIS K 711−1977)により評価した。
【0044】
(2)曲げ強度
3×4×40mmの試料を準備し、JIS R1601により4点曲げ強度測定により評価した。
【0045】
(3)嵩密度
アルキメデス法により、下記式(1)により算出した。
嵩密度=W1/(W2−W3) …(1)
「上記式(1)中、W1は、試料を100℃のオーブンで1hr乾燥させ、その後秤量して求めた乾燥重量を示し、W2は、試料を煮沸し、開気孔中に完全に水を侵入させた後、同試料を水中にて秤量したときの重量を示し、W3は、開気孔中に完全に水を侵入させた試料を大気中にて秤量したときの含水量を示す。」
【0046】
(4)コスト
実施例1の炭素系複合体の製造コストを1として、各実施例及び比較例の製造コストを比較した。
【0047】
(5)耐酸化性
試験試料を1000℃に昇温した大気中に所定時間試料を保持した後、重量を測定し、試験前の重量と比較して、その重量の増減率W2’を下記式(2)により求めた。
W2’=(W0−W1)/W0×100 …(2)
「上記式(2)中、W0は、耐酸化性試験前の重量を示し、W1は、耐酸化性試験後の重量を示し、W2’は、重量の増減率を表す(減少は、数字の前に−記号を付け区別した)。」
【0048】
(実施例1)
まず、炭素粉末(東海カーボン(株)社製)を、押出し成形して、φ75mm×800mmLの芯体を作製した。
【0049】
次いで、マット状のムライト繊維(商品名:SCブランケット1400、新日化サーマルセラミックス(株)社製)を、含浸槽中の第一リン酸アルミニウム(Al(H3PO43)、アルミナ(Al23)、及びシリカ(SiO2)を主成分とするマトリックススラリーに浸して、スラリーを含浸させた後、得られたシート状の複合材料を、80℃の乾燥機中で、水分量が、成形前材料に対して5質量%となるまで水分を除去した。
【0050】
次いで、乾燥後の複合材料を、シートワインディング法により、芯体に巻きつけた後、20kg/cm2で加圧成形しながら140℃、30分間の条件下で硬化させて外周体を作製し、炭素−セラミックス系複合体を得た。
【0051】
得られた炭素−セラミックス系複合体を、肉眼により外観観察を行ったところ、外周体の破壊や破壊につながるクラック等もなく、良好な状態であった。また、1000℃、12hr加熱後の重量減少は、−3.7%であり、極めて大きな耐酸化性が認められた。また、曲げ強度が20MPa、耐衝撃性が1.0kJ/m2、嵩密度が1.84であり、いずれも大きな値となった。材料組成、及び材料評価を表1にまとめて示す。
【0052】
(実施例2)
ペーパー状のムライト繊維(商品名:SCペーパー1260、新日化サーマルセラミックス(株)社製)を用いてセラミックス繊維強化複合材料からなる外周体を作製したこと以外については、実施例1と同様にして炭素−セラミックス系複合体を得た。
【0053】
得られた酸化物系繊維複合体を、肉眼により外観観察を行ったところ、外周体の破壊や破壊につながるクラック等もなく、良好な状態であった。また、1000℃、12hr加熱後の重量減少は、−4.0%であり、極めて大きな耐酸化性が認められた。また、曲げ強度が18MPa、耐衝撃性が1.0kJ/m2、嵩密度が1.80であり、いずれも大きな値となった。材料組成、及び材料評価を表1にまとめて示す。
【0054】
(比較例1)
まず、炭素粉末(東海カーボン(株)社製)を、押出し成形して、φ75mm×800mmLの芯体を作製した。
【0055】
次いで、炭素繊維束を織り込み、織布状にしたクロス(商品名:カーボン繊維クロスW7101、東邦レーヨン(株)社製)にフェノール樹脂を含浸させたCFRPプリプレグからなる厚さ5mm、幅700mmのシートを用い、直径100mmの円筒状の成形体を作製し、得られた成形体を、寸法調製用治具を用いて空気中150℃で乾燥・硬化させた後に、そのままの状態で純度99.9%、平均粒径1mmのSi粉末を添加して焼成炉に入れ、炉内温度1000℃、大気圧下でアルゴンを流しながら炭化処理を実施し、その後炉内温度を1600℃に昇温させ、炉内圧力を1hPaに保持して、Siを含浸させ、外周体を作製した。
【0056】
次いで、得られた芯体の外径と外周体の内径とを正確に寸法調整した後、外周体の中空に芯体を嵌合して、炭素−セラミックス系複合体を得た。
【0057】
得られた炭素−セラミックス系複合体を、肉眼により外観観察を行ったところ、外周体の破壊や破壊につながるクラック等もなく、良好な状態であったが、1000℃、12hr加熱後の重量減少は、−85.0%であり、極めて低い耐酸化性が認められた。また、実施例1に比べ製造コストが5倍となり、曲げ強度、耐衝撃性、及び嵩密度はいずれも酸化減量のため、形状保持できず、測定することができなかった。材料組成、及び材料評価を表1にまとめて示す。
【0058】
【表1】
Figure 0004980524
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、簡易かつ低コストで製造が可能であり、800℃以上の高温下においても、耐酸化性、耐衝撃性、及び耐熱衝撃性等の大きな炭素−セラミックス系複合体を提供することができ、特に、高温化で耐酸化性、耐衝撃性、及び耐熱衝撃性等の特性に優れる被鍍金体搬送ローラ又はアルミ溶湯攪拌シャフト等各種金属加工用部材等を合理的な価格で提供することができる。

Claims (8)

  1. 炭素系材料からなる基体と、セラミックス繊維強化複合材料からなる表層体とを備える炭素−セラミックス系複合体であって、
    前記炭素系材料が、炭素、黒鉛、又はC/Cコンポジット材料のいずれか一種であり、
    該セラミックス繊維強化複合材料が、セラミックス繊維と、リン酸アルミニウム(AlPO)5〜70質量%、アルミナ(Al)5〜30質量%、及びシリカ(SiO)5〜20質量%、その他の成分0〜10質量%からなるマトリックスと、を有することを特徴とする炭素−セラミックス系複合体。
  2. 前記セラミックス繊維の長さが、3〜50mmである請求項1に記載の炭素−セラミックス系複合体。
  3. 前記セラミックス繊維が、繊維軸方向に配向して繊維束を構成する請求項1又は2に記載の炭素−セラミックス系複合体。
  4. 前記繊維束の複数を、クロス状に配列してなる請求項3に記載の炭素−セラミックス系複合体。
  5. 前記セラミックス繊維を、該セラミックス繊維強化複合材料中、5〜40質量%含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭素−セラミックス系複合体。
  6. 前記表層体には、更に炭化珪素層が表面に設けられている請求項1〜5のいずれか一項に記載の炭素−セラミックス系複合体。
  7. 炭素系材料からなる芯体と、該芯体の周囲に配設される、セラミックス繊維強化複合材料からなる外周体とを備える被鍍金体搬送ローラであって、
    前記炭素系材料が、炭素、黒鉛、又はC/Cコンポジット材料のいずれか一種であり、
    該外周体を構成するセラミックス繊維強化複合材料が、セラミックス繊維と、リン酸アルミニウム(AlPO)5〜70質量%、アルミナ(Al)5〜30質量%、及びシリカ(SiO)5〜20質量%、その他の成分0〜10質量%からなるマトリックスと、を有することを特徴とする被鍍金体搬送ローラ。
  8. 炭素系材料からなる芯体と、該芯体の周囲に配設される、セラミックス繊維強化複合材料からなる外周体とを備えるアルミ溶湯攪拌シャフトであって、
    前記炭素系材料が、炭素、黒鉛、又はC/Cコンポジット材料のいずれか一種であり、
    該外周体を構成するセラミックス繊維強化複合材料が、セラミックス繊維と、リン酸アルミニウム(AlPO)5〜70質量%、アルミナ(Al)5〜30質量、及びシリカ(SiO)5〜20質量%、その他の成分0〜10質量%からなるマトリックスと、を有することを特徴とするアルミ溶湯攪拌シャフト。
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