JPH06116035A - 炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体とその製造方法 - Google Patents

炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体とその製造方法

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JPH06116035A
JPH06116035A JP4268427A JP26842792A JPH06116035A JP H06116035 A JPH06116035 A JP H06116035A JP 4268427 A JP4268427 A JP 4268427A JP 26842792 A JP26842792 A JP 26842792A JP H06116035 A JPH06116035 A JP H06116035A
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JP
Japan
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carbon fiber
fiber bundle
silicon carbide
sintered body
carbon
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Application number
JP4268427A
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English (en)
Inventor
Shigeru Kikuchi
菊池  茂
Hiroshi Sakamoto
広志 坂本
Yoshiyuki Yasutomi
義幸 安富
Motoyuki Miyata
素之 宮田
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、目的とする用途や特性に応じた炭素
繊維の配向性を有し、強度及び耐酸化性に優れ、各種高
温用構造部材として適用可能な炭素繊維束強化炭化ケイ
素焼結体とその製法を提供する。 【構成】本発明に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体
は、強化繊維である炭素連続長繊維数本を炭素を媒体と
して束ね、その炭素繊維束が一方向,二方向、あるいは
三次元形状に配向するものである。また、炭素繊維束表
面にはマトリックス成分との反応を防ぐためのコーティ
ング層を設け、炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体表面に
は酸化物コーティングを施したものである。 【効果】本発明により、所望の繊維配向性を有し、強度
特性及び耐酸化性に優れた炭素繊維束強化炭化ケイ素焼
結体が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐高温特性が要求され
る構造部品用材料や、更には各種摺動部材等に適用可能
な炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体とその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】ガスタービン,核融合炉,航空宇宙機器
等の部材には、高温用構造材料の開発が必要不可欠な技
術的課題となっている。これらの構造部材は大きな熱負
荷,熱衝撃を受けることは必至であり、そのため高温強
度,耐熱衝撃性に優れた材料が求められる。
【0003】高温材料としてセラミックス材料が期待さ
れている。各種セラミックスの中で、炭化ケイ素は耐熱
特性と耐酸化性に優れ、有用な耐熱材料である。しか
し、一般にセラミックス単体では脆性であるため信頼性
も低く、従来の炭化ケイ素では高温用構造材料として上
記特性を満足するものはなく、実用化に至っていない。
この対応策の一つとして、炭化ケイ素マトリックス中に
強化繊維を分散させた複合材料の開発が挙げられる。こ
の強化繊維としては、安価で高温特性に優れた炭素繊維
が有望である。これまでに炭素繊維強化炭化ケイ素焼結
体の報告例はいくつかみられるが、ほとんどの場合が短
繊維をマトリックス中に分散させた複合構造をもってお
り、繊維端の欠陥の増大などにより必ずしも十分に高強
度等を満足するものではない。また、長繊維をマトリッ
クス中に配向させる場合にも、太さ数μmの炭素繊維を
マトリックス中に均一に特定方向に配列することは極め
て困難であり、製法上の問題が残る。複合材料のもつ特
性はその複合構造によって大きく左右されるため、複合
構造の適正化及びそれに伴う製法の改善により、いっそ
うの特性向上が望まれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】炭素繊維を強化繊維と
して炭化ケイ素マトリックスと複合,強化する場合、短
繊維をマトリックス中に分散させる構造では、繊維端に
おける応力集中などの欠陥を増大させることになり、強
度特性の低下につながりかねない。従って複合構造とし
ては、連続長繊維を特定方向に配向した構造が望まし
い。
【0005】基本的に繊維の配向性は、得られる複合材
料の特性に大きく影響する。このため、得られる複合材
料の用途や要求特性に応じて、繊維の配向性を考慮し制
御する必要がある。繊維配向の例としては、連続長繊維
が一方向あるいは二方向に配向したものなどが考えられ
るが、太さ数μmの炭素繊維をマトリックス中に均一に
特定方向に配列させることは技術的困難を伴う。従っ
て、いずれの場合もその配向性を得るためのプロセス技
術が重要な課題となる。
【0006】また強化繊維は、得られる複合材料の強度
向上に最も有効に働く形態で存在することが望ましく、
よって強化繊維が複合材料の強度特性向上に効率的に寄
与するための、複合構造の適正化が必要となる。
【0007】さらに、得られた焼結体は使用環境下にお
いて化学的に損傷されることなく、安定して使用できる
ことが必要である。従って、得られた焼結体に対する使
用環境を考慮した構造上の改善処理が望まれる。
【0008】本発明はこれらの問題点に着目し、強化繊
維が複合材料の強度向上に効率的に寄与する形態で、マ
トリックス中に均一に特定方向に配向し、使用環境に応
じた構造を持つ炭素繊維束強化セラミックスを提供する
ものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、炭素連続
長繊維が炭化ケイ素マトリックス中に均一に一方向に配
向した炭素繊維強化炭化ケイ素焼結体の作製について検
討してきたが、その過程で、太さ数μmの炭素繊維をマ
トリックス中に均一に一方向に配列させることは極めて
困難であることが製法上の問題点として摘出された。本
発明者らはその対策として、複数本の炭素連続長繊維を
同一方向に炭素を媒体として束ね、これをマトリックス
中に一方向に均一に配向させる方法を考案し、試作し
た。その結果、炭素を媒体として結束された炭素繊維束
は、マトリックス中に特定方向に均一に配向させる上で
十分な取扱い性をもち、容易に繊維の配向性が得られる
ことがわかった。この知見を基に、前記の目的を達成す
るための本発明に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体
は、複数本の炭素連続長繊維を同一方向に炭素を媒体と
して束ね、それを炭化ケイ素マトリックス中に特定方向
に均一に配向させた複合構造を有するものである。
【0010】上記の炭素繊維束は、束ねる繊維の本数に
よって径の大きさを変えることができ、本発明者らは径
の異なる炭素繊維束を用いた数種の炭素繊維束強化炭化
ケイ素焼結体を試作し、それらの室温における強度特性
を検討した。その結果、得られた焼結体における炭素繊
維束の含有量と径を調整することにより、焼結体の強度
が大きくなることがわかった。従って、上記の炭素繊維
束を用いた本発明に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結
体の複合構造は、炭素繊維束の径及び含有量を調整する
ことにより、強度特性の向上に対しても有効に作用する
ものである。
【0011】また炭素繊維束は、マトリックス成分との
反応などによる損傷がないことが望ましい。炭素繊維束
と炭化ケイ素マトリックスとの反応は、両者の間に反応
性のない中間層を設けることにより回避できる。そのた
め、前記の目的を達成するための本発明に係る炭素繊維
束は、マトリックスと反応性のない成分を表面にコーテ
ィングしたものである。
【0012】さらに、得られた焼結体は使用環境下にお
いて化学的に安定していることが求められる。炭化ケイ
素マトリックスや炭素繊維束は、特に高温大気中におい
て酸化損耗する恐れがあるが、これは焼結体表面に耐熱
性を有する酸化物セラミックスをあらかじめコーティン
グすることにより防止できる。従って、本発明に係る炭
素繊維束強化炭化ケイ素焼結体は、その表面に酸化物セ
ラミックスコーティングを施したものである。
【0013】すなわち本発明は、複数本の炭素連続長繊
維を同一方向に炭素を媒体として用いて束ねた炭素繊維
束を用いることにより、炭化ケイ素マトリックス中にお
いて容易に繊維の配向性が得られ、かつ炭素繊維束の径
及び含有量の調整により得られる炭素繊維束強化炭化ケ
イ素焼結体の高強度化が可能となるものである。また、
炭素繊維束表面にマトリックスとの反応を防ぐためのコ
ーティング層を設け、さらに得られた焼結体表面に耐酸
化コーティングを施すことにより、耐酸化性及び強度特
性の向上に適した複合構造をもつ炭素繊維束強化炭化ケ
イ素焼結体が得られるものである。
【0014】他方、前記の目的を達成するための本発明
に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体の製法の構成
は、マトリックス成分をグリーンシート化し、その上に
炭素繊維束を配列した後、焼結するようにしたことであ
る。炭素繊維束の結束は、一方向に配向する複数本の炭
素連続長繊維の束に炭素の前駆体を含浸した後、加熱す
ることにより該前駆体を炭化させて得られる。得られた
炭素繊維束をマトリックス中に一方向あるいは二方向に
配向させるには、マトリックス成分をグリーンシート化
し、その上に繊維束を一方向に均一に配列し、それらを
繊維束が同一方向に配向するように、あるいは繊維束が
交互に交差して配向するように数段積層することによっ
て可能となる。また、繊維束を一方向,二方向あるいは
三次元形状に成形したプリフォームに、マトリックス成
分のスラリーを含浸させても可能となる。
【0015】
【作用】本発明に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体
において、複数本の炭素連続長繊維を炭素を媒体として
結束させた炭素繊維束を用いることにより、繊維束の径
が自在に調整できるため、繊維束を特定方向に配向させ
る上で十分な取扱い性が得られ、所望の炭素繊維の配向
性を得ることができる。
【0016】炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体における
上記炭素繊維束の含有量が一定のとき、繊維束の径を大
きくすると、得られる焼結体の室温強度は高くなる傾向
を示す。これは以下の理由によると考えられる。炭素繊
維束の熱膨張係数は負の値であるのに対して、炭化ケイ
素マトリックスのそれは正の値であり、両者の熱膨張差
により焼結後は炭化ケイ素マトリックスに引張応力が残
る。繊維束の含有量が同じであれば、繊維束の径が大き
いほど繊維束同志の間隔は広くなり、間に存在するマト
リックス量は多くなるため、上記の引張残留応力を緩和
する効果が大きくなると考えられる。従って、複数本の
炭素繊維を炭素媒体を用いて束ねて繊維束の径を調整す
ることにより、得られる焼結体の強度特性向上に寄与す
ることができる。またこれに伴い、高温においては上記
の引張残留応力が小さくなり、高温における強度は室温
よりも比較的高くなるため、優れた高温強度をもつ焼結
体が得られる。
【0017】炭素繊維束表面にマトリックスと反応性の
ない成分をコーティングし、炭素繊維束とマトリックス
との間に中間層を設けることにより、両者間の反応を抑
制し、炭素繊維束の特性劣化を防ぎ、炭素繊維束が焼結
体の強度特性向上に寄与するための適正な複合構造が得
られる。
【0018】得られた炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体
の表面に酸化物セラミックスコーティングを施すことに
より、高温大気中においてコーティング層が炭素繊維束
及びマトリックスの酸化進行を抑制し、焼結体の特性を
維持し安定して使用することが可能となる。
【0019】また、本発明に係る製法により、所望の繊
維配向性を有する炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体を得
ることができる。すなわち、マトリックス成分をグリー
ンシート化し、その上に上記炭素繊維束を配列し積層す
るか、あるいは炭素繊維束を成形したプリフォームにマ
トリックス成分のスラリーを含浸させることにより、所
望の繊維配向性が得られる。上記炭素繊維束は、一方向
に配列した複数本の炭素連続長繊維に、炭素の前駆体を
含浸し、加熱することにより得られる。
【0020】
【実施例】本発明に係る実施例について、以下に具体的
に説明する。
【0021】[実施例1]本発明に係る第1実施例とし
て、炭化ケイ素を炭素繊維束で一方向に強化した炭素繊
維束強化炭化ケイ素焼結体を作製した。
【0022】まず、炭素繊維束の作製方法について説明
する。表1に示すような物性値をもつ炭素連続長繊維数
本を一方向に配列し、フェノール樹脂とエタノールを重
量比で1:1に混合した溶液を含浸させ、それを大気中
において300℃で1時間加熱し、フェノール樹脂を炭
化させることにより、炭素を媒体とした炭素繊維束を得
た。この際、用いる炭素繊維の本数を変えることで、炭
素繊維束の径を変えることができる。本実施例におい
て、径の大きさを変えたいくつかの炭素繊維束の作製を
試みた。その結果、径が0.05mm 未満では取扱い中に
束が崩れるなどして、十分な取扱い性が得られなかっ
た。従って、炭素繊維束の径の大きさは0.05mm 以上
が良い。この方法で得られた繊維束の、炭素媒体の含有
量は、径の大きさに係らず約60vol% である。
【0023】
【表1】
【0024】次に、焼結体の作製方法について説明す
る。炭化ケイ素粉末と焼結助剤であるBeO粉末2wt
%を、ライカイ機(自動撹拌機)により乾式混合し、こ
の混合粉末を所定量の有機溶媒に混合してスラリー状に
し、これをドクターブレード法によりグリーンシート化
した。上記で得られた炭素繊維束を、乾燥したグリーン
シートの上にできるだけ均一に一方向に配列した。炭素
繊維束を配列したグリーンシートを、繊維束が同一方向
に配向するように数段積層し、それを大気中において1
00℃で1分間、積層方向に15MPaの加圧をして成
形体とした。得られた成形体をホットプレスにより真空
中、2100℃で1時間の加熱、グリーンシートの積層
方向に30MPaの加圧で焼結を行い、炭素繊維束強化
炭化ケイ素焼結体を作製した。これより、炭素繊維束を
用いることによって、炭素繊維が一方向に配向した焼結
体が比較的簡単に作製できることが実証された。
【0025】[実施例2]実施例1で示した、炭化ケイ
素を炭素繊維束で一方向に強化した炭素繊維束強化炭化
ケイ素焼結体について、室温及び高温(真空中、150
0℃)において3点曲げ強さを測定した。炭素繊維束の
含有量が約4.2vol%の場合の、繊維束の径と曲げ強さ
との関係を図1に示す。図1には比較のため、単味の炭
化ケイ素セラミックスの3点曲げ強さを併せて示す。
【0026】図1からわかるように、炭素繊維束の径を
大きくすることによって焼結体の強度を向上させること
ができ、単味の炭化ケイ素と同等の強度が得られる。ま
た高温強度をみると、炭素繊維束の径の大きさに係ら
ず、いずれも炭化ケイ素と同等あるいはそれ以上の強度
が得られた。これは炭素繊維束の熱膨張係数は負の値で
あるのに対して、炭化ケイ素のそれは正の値であり、両
者の熱膨張差により焼結後は炭化ケイ素に引張応力が残
るが、繊維束の径が大きいほど間に存在するマトリック
ス量は多くなり、上記の引張残留応力を緩和する効果が
大きくなるためと考えられる。また、高温においては上
記の引張残留応力が小さくなり、高温における強度は室
温よりも比較的高くなるものと考えられる。これより、
室温においては繊維束の径により強度を向上させること
ができ、高温になるにつれて繊維束の径の大きさに係ら
ず強度が高くなり、本材料が高温用構造材料として適し
た特性を持つ複合材料であることが実証された。
【0027】本実施例では、炭素繊維束の含有量が約
4.2vol%の場合について示したが、本発明者らは繊維
束の含有量を変えたいくつかの炭素繊維束強化炭化ケイ
素焼結体を試作した。その結果、繊維束の含有量が最大
で約58vol% の焼結体が作製できた。これ以上の含有
量では前記した残留応力により、焼結体に割れが生じて
しまい、また炭素繊維束にはそれ自体に径のばらつきが
あるため、炭素繊維束の含有量は4〜60vol% が望ま
しい。
【0028】なお、特に本実施例のように、炭化ケイ素
の焼結助剤としてBeOを用いた場合、炭化ケイ素マト
リックスの高熱伝導化が可能となり、炭素繊維束の径の
大きさの最適化による高強度化と組み合わせることによ
り、耐熱衝撃性に優れ、高温用構造材料として好適な焼
結体が得られる。
【0029】[実施例3]実施例1で作製した炭素を媒
体として結束した炭素繊維束に対して、マトリックスと
の反応を抑制するための表面コーティングの例を示す。
ここでは、炭素繊維束にSiCをコーティングした場合
を例に、コーティング法とコーティングの効果について
説明する。コーティング法としては、化学気相蒸着法,
ゾル−ゲル法,スラリー含浸法などが挙げられるが、こ
こではゾル−ゲル法により行った。すなわち、炭素繊維
束をポリシラン中に浸漬,乾燥し、これを数回繰り返し
た後熱処理(真空中、1200℃)して表面にSiCを
コーティングした。コーティング層の厚さは約50μm
である。
【0030】この炭素繊維束を用いて炭素繊維束強化炭
化ケイ素焼結体(炭素繊維束の含有量:約4.2vol%)
を作製し、室温での3点曲げ強さを測定した。繊維束の
径が0.6mm のとき、コーティングがない場合に曲げ強
さは340MPaであるのに対し、コーティングした場
合には352MPaであった。また、繊維束の径が0.
9mm のとき、コーティングがない場合に曲げ強さは4
60MPaであるのに対し、コーティングした場合には
470MPaであった。いずれの場合も、コーティング
を施した方が曲げ強さの値は大きくなっている。この場
合、炭素繊維束にはマトリックス成分と同じSiCをコ
ーティングしたが、あらかじめコーティング層を設ける
ことにより、焼結時のマトリックスと炭素繊維束との反
応を抑制することができ、繊維束の損傷を少なくする効
果によるものと考えられる。
【0031】同様に、TiC,BN,TiN,Si
34,AlN,ZrNをスラリー含浸法により炭素繊維
束にコーティングし、それを用いた焼結体の曲げ強さを
調べた結果、いずれの成分をコーティングした場合も曲
げ強さは5〜17MPa向上することが確認された。
【0032】[実施例4]得られた炭素繊維束強化炭化
ケイ素焼結体の表面に、酸化物セラミックスをコーティ
ングした例とその効果について示す。ここでは、焼結体
表面にZrO2 をコーティングした例を中心に説明す
る。
【0033】作製した炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体
を、ZrO2スラリー中に浸漬,乾燥し、これを数回繰
り返した後1400℃で1時間加熱し、ZrO2 を焼結
させる。このとき炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体は、
炭素繊維束が炭化ケイ素マトリックスの表面に露出して
いないことが望ましい。これは炭素繊維束が酸化物であ
るZrO2と反応することを防ぐためである。上記の方
法により、厚さ0.5mmのZrO2コーティング層を得
た。
【0034】得られたZrO2 コーティング炭素繊維束
強化炭化ケイ素焼結体を、コーティングなしの炭素繊維
束強化炭化ケイ素焼結体とともに大気中、1000℃に
おいて24時間加熱し、酸化試験を行った。その結果、
コーティングなしの炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体は
4.3% 重量が減少したのに対し、ZrO2 コーティン
グを施した場合は重量減少が0.9% であった。これ
は、酸化物セラミックスコーティングにより、表面の酸
化が抑制された効果によるものである。また、酸化試験
後の試料について室温で3点曲げ強さを測定したとこ
ろ、コーティングなしの場合は330MPaであったの
に対し、ZrO2 コーティングを施した場合は400M
paであった。これにより、高温下においても特性を劣
化させることなく、安定して使用できる炭素繊維束強化
炭化ケイ素焼結体が得られることが実証された。
【0035】上記のほか、SiO2,TiO2,Al
23,ZnO,MgOをコーティングした場合でも同様
の効果が得られた。またコーティング法としては、上記
のスラリーを用いた方法のほか、化学気相蒸着法,ゾル
−ゲル法なども可能である。
【0036】さらに、高温下におけるマトリックスとコ
ーティング層との熱膨張差によるコーティング層の破損
を防止するために、両者の間にマトリックス成分とコー
ティング成分が徐々に、あるいは段階的に変化する中間
層を設けても良い。
【0037】[実施例5]炭化ケイ素マトリックス中に
炭素繊維束が二方向に配向した炭素繊維束強化炭化ケイ
素焼結体の作製例について示す。
【0038】実施例1と同様の方法により、マトリック
ス成分のグリーンシートと炭素繊維束を作製する。得ら
れたグリーンシート上に炭素繊維束をできるだけ均一に
一方向に配列し、それを炭素繊維束が交互に直交するよ
うに数段積層し、大気中において100℃で1分間、積
層方向に15MPaの加圧をして成形体とした。得られ
た成形体をホットプレスにより真空中、2100℃で1
時間の加熱、グリーンシートの積層方向に30MPaの
加圧で焼結を行い、炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体を
作製した。この方法により、マトリックス中に繊維束が
二方向に直交する炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体を作
製することができる。また、炭素繊維束がある角度をも
って交わるようにグリーンシートを積層することによ
り、繊維束が任意の角度で交わるように二方向に配向す
る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体を作製することも可
能である。
【0039】[実施例6]炭化ケイ素マトリックス中に
炭素繊維束が三次元形状をもって存在する炭素繊維束強
化炭化ケイ素焼結体の作製例について示す。
【0040】実施例1と同様の方法により、マトリック
ス成分のスラリーと炭素繊維束を作製する。但し、炭化
ケイ素の焼結助剤にはボロンと炭素を用いた。またこの
際、炭素繊維の束にフェノール樹脂を含浸した後、所望
の形状に型枠などを用いて成形した上で加熱,炭化させ
ることによって、所望の形状を有する炭素繊維束を得る
ことができる。得られた炭素繊維束を金型内に固定し、
スラリーを流し込み大気中で乾燥する。これを数回繰り
返し、マトリックス成分を十分充填した上で金型から出
し、Arガス1気圧中、2050℃で1時間の焼結を行
った。この方法により、炭化ケイ素マトリックス中に繊
維束が三次元形状をもって存在する炭素繊維束強化炭化
ケイ素焼結体を作製することができる。また、得られる
焼結体の密度を向上させるために、静水圧加圧焼結も適
用可能である。
【0041】[実施例7]本発明に係る炭素繊維束強化
炭化ケイ素焼結体を適用した部品として、ガスタービン
動翼の作製例について説明する。まず、動翼の形状を図
2に示す。
【0042】図3には、本発明に係る焼結体で動翼を作
製する場合の作製方法例を示す。本実施例では、炭化ケ
イ素の焼結助剤にはBeOを用いた。
【0043】図3の構成は、1は炭素繊維束を型取るた
めの、動翼の断面形状をもつ金型、2はフェノール樹脂
とエタノールを1:1に混合した溶液を含浸した炭素繊
維束、3は2を加熱することによりフェノール樹脂を炭
化させた炭素繊維束、4は3の炭素繊維束にマトリック
ス成分のスラリーを含浸し、動翼の形状を得るための金
属割型、5は本作製方法で得られる動翼の炭化ケイ素マ
トリックスである。フェノール樹脂とエタノールの混合
溶液を含浸した炭素繊維束2を、動翼の断面形状をもつ
金型1に巻きつけた状態で加熱し、フェノール樹脂を炭
化させることにより、動翼の断面形状をもつ炭素繊維束
3が得られる。炭素繊維束3を金属割型4内に並べ固定
し、マトリックス成分のスラリーを充填した後加熱して
乾燥する。スラリー充填と乾燥を数回繰返し、マトリッ
クス成分を十分含浸させた後、静水圧加圧焼結すること
により、炭化ケイ素マトリックス5中に炭素繊維束3が
一方向に配向した動翼を得ることができる。
【0044】図4は、上記で得られた動翼をガスタービ
ンの金属ディスクに取り付ける場合の、取付け構造例を
示す。
【0045】図4(a)ないし(c)の構成は、6は上
記で得られた動翼、7はガスタービンの金属製ディス
ク、8は動翼6とディスク7の間に介する金属製シャン
ク、9は動翼6とディスク7あるいはシャンク8の間に
介する金属パッド、10は動翼6とシャンク8の間に介
するセラミック嵌合層である。
【0046】図4(a)において、動翼6はディスク7
に金属パッド9を介して、嵌合構造により直接取り付け
られるが、必要に応じて動翼6とディスク7の間に耐熱
金属製シャンク8を介し、金属ディスクを高温から保護
することができる。動翼6とシャンク8の間には、図4
(b)のように金属パッド9や図4(c)のようにセラ
ミック嵌合層10が介される。
【0047】なお、得られた動翼には、必要に応じて耐
酸化性を向上させるために、表面に酸化物コーティング
を施すのが望ましい。
【0048】
【発明の効果】以上のように、本発明による炭素繊維束
強化炭化ケイ素焼結体では、複数本の炭素繊維を炭素を
媒体として一方向に束ねた炭素繊維束を用いることによ
り、炭素繊維を特定方向に配向させることが容易にな
り、所望の繊維配向性を得ることができ、炭素繊維束の
径を適正化することにより、高い強度をもつ焼結体が得
られる。炭素繊維束の表面には、マトリックスと反応性
のない成分をコーティングすることにより、炭素繊維束
の特性劣化を防ぎ、焼結体の強度特性向上に適正な複合
構造が得られる。また、得られた炭素繊維束強化炭化ケ
イ素焼結体の表面に酸化物コーティングを施すことによ
り、高温大気中において炭素繊維束と炭化ケイ素マトリ
ックスの酸化進行を抑制し、焼結体の特性を維持し、安
定して使用することが可能となる。
【0049】さらに、本発明に係る製造方法により、炭
素繊維を所望の方向に配向させることができ、目的とす
る用途や特性に応じた繊維配向性をもつ炭素繊維束強化
炭化ケイ素焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭素繊維束の含有量が約4.2vol%である本発
明の実施例に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体の、
室温及び高温(真空中、1500℃)における3点曲げ
強さと炭素繊維束の径との関係図である。
【図2】ガスタービンの動翼の形状を表す図である。
【図3】本発明に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体
で動翼を作製する場合の作製工程図である。
【図4】本発明に係る炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体
で作製した動翼を、ガスタービンの金属ディスクに取り
付ける場合の、取付け構造図である。
【符号の説明】
1…金型、2…フェノール樹脂含浸後の炭素繊維束、3
…フェノール樹脂炭化後の炭素繊維束、4…金属割型、
5…炭化ケイ素マトリックス、6…動翼、7…ディス
ク、8…シャンク、9…パッド、10…嵌合層。
フロントページの続き (72)発明者 宮田 素之 茨城県日立市久慈町4026番地 株式会社日 立製作所日立研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数本の連続炭素繊維が炭素からなる媒体
    により一方向に結束されていることを特徴とする炭素繊
    維束強化炭化ケイ素焼結体。
  2. 【請求項2】請求項1記載の連続炭素繊維束の径が0.
    05mm 以上であることを特徴とする炭素繊維束強化炭
    化ケイ素焼結体。
  3. 【請求項3】請求項1記載の連続炭素繊維束が4〜60
    vol% であることを特徴とする炭素繊維束強化炭化ケイ
    素焼結体。
  4. 【請求項4】請求項1記載の連続炭素繊維束の表面に、
    SiC,TiC,BN,TiN,Si34,AlN,Z
    rNからなる成分がコーティングされていることを特徴
    とする炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体。
  5. 【請求項5】請求項1記載の連続炭素繊維束は炭化ケイ
    素マトリックス中において、一次元以上に配向している
    ことを特徴とする炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体。
  6. 【請求項6】請求項1記載の炭素繊維束強化炭化ケイ素
    焼結体の表面には、SiO2,TiO2,ZrO2,Al2
    3,ZnO,MgOの少なくとも1種以上からなる成
    分がコーティングされていることを特徴とする炭素繊維
    束強化炭化ケイ素焼結体。
  7. 【請求項7】連続炭素繊維束の結束にあたり、一方向に
    配列した複数本の連続炭素繊維に炭素の前駆体を含浸
    し、加熱することにより炭化,結束させる工程とマトリ
    ックス成分をグリーンシート化し、該グリーンシート上
    に炭素繊維束を一方向に配列し、該炭素繊維束が一方向
    に配向する様に積層した積層体を焼結する工程とからな
    ることを特徴とする炭素繊維束強化炭化ケイ素焼結体の
    製造方法。
  8. 【請求項8】連続炭素繊維束の結束にあたり、一方向に
    配列した複数本の連続炭素繊維に炭素の前駆体を含浸
    し、加熱することにより炭化,結束させる工程と、 マトリックス成分をグリーンシート化し、該グリーンシ
    ート上に炭素繊維束を一方向に配列し、該炭素繊維束が
    少なくとも二方向に交差する様に積層した積層体を焼結
    する工程とからなることを特徴とする炭素繊維束強化炭
    化ケイ素焼結体の製造方法。
  9. 【請求項9】炭素繊維束を一方向または二方向に配向、
    あるいは三次元形状に成形した炭素繊維束プリフォーム
    に、マトリックス成分のスラリーを含浸させて、乾燥し
    た後焼結することを特徴とする炭素繊維束強化炭化ケイ
    素焼結体の製造方法。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4855988A (en) * 1985-12-24 1989-08-08 Hitachi, Ltd. Optical information recording and reproducing apparatus with amplitude limitation of a detected signal in a write operation mode
JP2011168414A (ja) * 2010-02-16 2011-09-01 Mitsubishi Plastics Inc 炭素繊維強化炭化ケイ素複合材及びその製造方法
JP2011190545A (ja) * 2010-03-12 2011-09-29 Gunze Ltd 丸編みされた炭素繊維構造物及びそれを含む炭素繊維強化炭化ケイ素系複合材料
JP2014101880A (ja) * 2012-11-19 2014-06-05 General Electric Co <Ge> タービン動翼シュラウド構成およびタービン動翼と隣接タービン動翼との相互作用を調節する方法
JP2018104250A (ja) * 2016-12-28 2018-07-05 東海カーボン株式会社 一方向性炭素繊維強化炭素複合材の製造方法

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