JPH07223876A - 繊維強化複合材とその製法およびそれを用いた部材 - Google Patents

繊維強化複合材とその製法およびそれを用いた部材

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JPH07223876A
JPH07223876A JP6138533A JP13853394A JPH07223876A JP H07223876 A JPH07223876 A JP H07223876A JP 6138533 A JP6138533 A JP 6138533A JP 13853394 A JP13853394 A JP 13853394A JP H07223876 A JPH07223876 A JP H07223876A
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fiber bundle
fiber
composite material
matrix
sic
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JP6138533A
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Yoshiyuki Yasutomi
義幸 安富
Shigeru Kikuchi
菊池  茂
Motoyuki Miyata
素之 宮田
Tsuneyuki Kanai
恒行 金井
Yuichi Sawai
裕一 沢井
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Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、従来にない強度・靭性及び耐酸化性
に優れた各種高温用構造部材として適用可能な繊維強化
複合材とその製法を提供する。 【構成】本発明に係る繊維強化複合材は、強化繊維であ
る連続無機長繊維数本を炭素などを媒体として束ね、そ
の繊維束が一方向,二方向、あるいは三次元形状に配向
するとともに、セラミックスマトリックスがナノ粒子で
強化されているものである。 【効果】本発明により、所望の繊維配向性を有し、強度
・靭性に優れた繊維強化複合材が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガスタービン材料(静
・動翼,燃焼器等),核融合炉壁材,宇宙材料(宇宙往
還機のタイル材等)など耐高温特性が要求される耐熱部
品用材料や、航空機材料や内燃機関部品など強度・剛性
が要求される構造部材、更には各種摺動部材等に適用可
能な繊維強化セラミックスとその製法に関する。
【0002】
【従来の技術】ガスタ−ビン,核融合炉,航空宇宙機器
等の部材には、高温用構造材料の開発が必要不可欠な技
術的課題となっている。これらの構造部材は大きな熱負
荷,熱衝撃を受けることは必至であり、そのため高温強
度,耐熱衝撃性に優れた材料が求められる。
【0003】高温材料としてセラミックス材料が期待さ
れているが、セラミックス単体では脆性であるため信頼
性も低く、高温用構造材料として上記特性を満足するも
のはなく、実用化に至っていない。
【0004】この対応策の一つとして、セラミックスマ
トリックス中に強化繊維を分散させた複合材料の開発が
挙げられる。この強化繊維としては、複合材料の用途・
目的から、耐熱性があり軽量な無機繊維(セラミックス
繊維)が適している。これまでに繊維強化セラミックス
の報告例はいくつかみられるが、製造が比較的簡単なこ
とから、ほとんどの場合が原料に短繊維を用い、マトリ
ックス中に短繊維を分散させた複合構造である。しか
し、短繊維は製造工程において散乱しやすく、安全上あ
るいは周辺への環境衛生上、大きな問題となっている。
【0005】一方、セラミックスの強度を改善するため
に、ナノサイズの粒子を分散する技術が注目されてい
る。しかし、ナノサイズ粒子の原料を使用する必要が有
るため、使用原料にも制約が有り、高コストになるとい
う問題が有る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】セラミックスを高温用
構造材料として用いるためには、信頼性を向上させるこ
とが必要不可欠であり、そのためには高強度と高靭性の
両立化が必要である。特に、亀裂の進展を抑制して急激
な破壊に至らないような、非線形的な破壊形態を示す材
料が望まれる。このための手段として、無機短繊維を強
化繊維としてセラミックスマトリックスと複合強化する
方法およびナノサイズの粒子を分散強化する方法が挙げ
られる。
【0007】無機繊維を強化繊維としてセラミックスマ
トリックスと複合強化する場合、短繊維のみをセラミッ
クスマトリックス中に分散させる構造では、繊維端にお
ける応力集中などの欠陥を増大させる傾向にあり、強度
特性の低下につながりかねない。従って複合構造として
は、連続長繊維を特定方向に配向した構造が望ましい。
【0008】基本的に強化繊維の配向性は、得られる複
合材料の特性に大きく影響する。このため、得られる複
合材料の用途や要求特性に応じて、繊維の配向性を考慮
し制御する必要がある。太さ数μmの短繊維をマトリッ
クス中に均一に分散させることは技術的困難を伴う。さ
らに、太さ数μmの短繊維は、製造工程において散乱し
やすく、吸引などにより人体に悪影響をおよぼす恐れが
あるため、短繊維を原料に用いない方法が要求とされて
いる。
【0009】一方、ナノサイズの粒子を分散させるため
には、ナノサイズ粒子の原料を使用する必要が有るた
め、使用原料にも制約が有り、結果として得られる焼結
体中への分散が制約されてしまう。さらに原料の微粒化
が必要なため、高コストになるという問題が有るため、
従来にない方法によるナノサイズ粒子の分散方法が要求
されている。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、複数本の
連続無機繊維を同一方向に無機化合物を媒体として束
ね、これをセラミックスまたは金属中に均一に配向させ
る方法を考案し、試作した。その結果、媒体により結束
された無機繊維束は、セラミックスまたは金属中に特定
方向に均一に配向させる上で十分な取扱い性を持ち、容
易に繊維の配向性が得られ、繊維とセラミックスまたは
金属との間に発生する応力を低減できることがわかっ
た。この知見を基に、前記の目的を達成するための本発
明に係る繊維強化複合材は、複数本の連続無機繊維を同
一方向に無機化合物を媒体として束ね、それをセラミッ
クスまたは金属中に、特定方向に均一に配向させた複合
構造を有するものである。
【0011】実施例にも記述するように上記の無機繊維
束は、束ねる繊維の本数(数本から数千本)によって径
の大きさを変えることができ、本発明者らは径の異なる
無機繊維束を用いた数種の繊維束強化複合材を試作し、
それらの室温における強度特性を検討した。その結果、
得られた複合材における繊維束の含有量と径を調整する
ことにより、繊維束と複合材マトリックスとの熱膨張係
数差による残留応力を低減でき、複合材の強度を大きく
できることがわかった。従って、上記の無機繊維束を用
いた本発明に係る繊維束強化複合材の複合構造は、無機
繊維束の径及び含有量を調整することにより、強度特性
の向上に対しても有効に作用するものである。
【0012】さらに、本発明者らは、無機長繊維がセラ
ミックスあるいは金属マトリックス中に均一に一方向に
配向した繊維強化複合材の作製について検討してきた
が、その過程で、太さ数μmの無機繊維をマトリックス
中に均一に配列させることは極めて困難であることが製
法上の問題点として摘出された。本発明者らはその対策
として、複数本の無機長繊維を同一方向に無機化合物を
媒体として束ね、これをマトリックス中に均一に配向さ
せる方法を考案し、試作した。その結果、媒体により結
束された無機繊維束は、マトリックス中に特定方向に均
一に配向させる上で十分な取扱い性をもち、容易に繊維
の配向性が得られることがわかった。この知見を基に、
前記の目的を達成するための本発明に係る繊維束強化複
合材は、複数本の無機繊維を同一方向に無機化合物を媒
体として束ね、それをマトリックス中に、特定方向に均
一に配向させた複合構造を有するものである。
【0013】上記複合構造について、図を用いて詳しく
説明する。図1は、媒体成分がマトリックス成分と異な
る場合の複合構造例の模式図である。
【0014】マトリックスや無機繊維、あるいは媒体を
構成する成分として、a,b,cの3成分を仮定する
と、図1の構成は、1はaという成分からなるマトリッ
クス、2はbという成分からなる無機繊維、3はcとい
う成分からなる媒体、4は無機繊維束、5はbという成
分からなる媒体、6はaという成分からなる無機繊維で
ある。図1において、無機繊維束は紙面に対し垂直に一
方向に配向している。媒体成分がマトリックス成分と異
なる場合、図1に示す3種類の成分構成が考えられ、い
ずれの場合にも、マトリックスと無機繊維束は媒体によ
って明確に区別できる構造である。これに対し、図2に
は、媒体成分がマトリックス成分と同じ場合の複合構造
例の模式図を示す。
【0015】図2の構成は、7はaという成分からなる
媒体であり、図1と同様、無機繊維束は紙面に対し垂直
に一方向に配向している。媒体成分がマトリックス成分
と同じ場合、無機繊維がマトリックス中に分散して存在
する複合構造と類似するが、本発明に係る繊維束強化複
合材では、図2のように複数本の無機繊維が凝集して繊
維群の状態で存在し、かつ、この繊維群がほぼ均一に分
散している点が特徴となる。なお、図2のような複合構
造は、媒体成分がマトリックス成分と同じであるため、
媒体を用いずに複数本の無機繊維とマトリックス成分を
複合化しても得られるが、実際に作製してみると無機繊
維の間にマトリックス成分が十分充填されない場合が多
く、気孔などの欠陥が残るため、あらかじめ媒体を用い
て繊維束とすることが望ましい。
【0016】上記の無機繊維束は、束ねる繊維の本数に
よって径の大きさを変えることができ、本発明者らは径
の異なる無機繊維束を用いた数種の繊維束強化複合材を
試作し、それらの室温における機械的特性を検討した。
その結果、得られた複合材における繊維束の含有量と径
を調整することにより、複合材の強度及び靭性が大きく
なることを見出した。機械的特性の検討結果とこれより
導かれた無機繊維束の適正範囲について、次に詳しく説
明する。
【0017】まず、マトリックスがセラミックスの場
合、マトリックスと無機長繊維及び媒体の成分を変え
て、繊維束が一方向に配向したいくつかの複合材の作製
を試みた。作製方法については、後の実施例で詳しく述
べるが、作製の過程で、用いる繊維の本数を変えて径の
異なる繊維束を作製したところ、繊維は20本より少な
いと繊維束の作製上取扱いが不便であるため、繊維本数
は20本以上が望ましい。また、このときの繊維束の径
は、繊維種あるいは用いる媒体によってもかわるがおよ
そ0.05mmであり、径が0.05mm以上であれば複合化
の際の取扱性も十分であることがわかった。つまり、上
記無機繊維束は、アスペクト比が1200以上で20本
以上とすることが好ましい。
【0018】加熱によりC,SiC,TiC,BN,S
34,B4C,SiO2,TiO2,Al23,B23
Ta25となる前駆体、すなわちフェノール樹脂,ボロ
ニルピリジン,アンモニオボラン,ポリシラザン、テト
ラ−i−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシチ
タン、トリ−n−プロポキシアルミニウム、ペンタ−i
−プロポキシタンタル,ポリカルボシラン,ポリアルミ
ノキサン,ポリポロシロキサン,ポリシラスチレン,ポ
リカルボランシロキサン,ポリシラン,ポリチタノカル
ボシラン,ヘプタメチルビニルトリシラン,ポリボロジ
フェニルシロキサンなどの金属ポリマなどを用いて連続
繊維を束ねることができる。
【0019】それぞれの前駆体を含浸し加熱することに
より、それぞれを媒体成分とした繊維束が作製できる。
ただし、繊維と媒体の組合せにおいて、非酸化物と酸化
物の組合せでは、繊維束の作製は可能であるものの、後
の焼結などの複合化過程において高温に加熱され、両者
の間での反応が大きく、繊維束の特性が劣化する恐れが
あるため、非酸化物と非酸化物、あるいは酸化物と酸化
物の組合せが望ましい。しかしながら、繊維表面にあら
かじめBNなどの反応性の少ない成分をコーティングす
ることにより、ある程度反応を防ぐことができる。また
2種以上の繊維からなる繊維束も同様にして作製でき
る。また繊維束の作製は、上記で示したような前駆体を
含浸し、加熱する方法のほか、媒体成分のスラリー含
浸、あるいは化学気相含浸などの方法でも可能である。
【0020】さらに、複合材作製の結果、セラミックス
の熱膨張係数(αm )が無機繊維束の熱膨張係数
(αf )より大きいとき、両者の熱膨張係数差から生ず
る焼結後の残留応力により、得られた複合材のマトリッ
クス部分において割れが発生する場合があった。作製し
た何種類かの複合材のうち、αm>αfの場合の代表的な
複合材の作製結果を図3〜図6に示す。ここで、図3は
SiCマトリックス−C繊維束複合材、図4はSi34
マトリックス−C繊維束複合材、図5はZrB2 マトリ
ックス−C繊維束複合材、図6はMgOマトリックス−
Al23繊維束複合材の作製結果である。これらの図に
おいて、○印で示したものは割れが生じなかったもの、
×印で示したものは割れが発生したものである。
【0021】以上の知見から、マトリックスがセラミッ
クスで、αm>αfのとき、無機繊維束の径は0.05mm
以上で、かつ下記(1)式で表される範囲が望ましい。
【0022】 D′−0.5≦D≦D′+3.0 …(1) (1)式における各記号は、Dは無機繊維束の径(m
m)、D′は下記(2)および(3)式で表わされる値
である。
【0023】 D′=(0.011V−0.023)×Δα×106 (V=3〜30) …(2) D′=(0.0375V−0.818)×Δα×106 (V=30〜60) …(3) (2)および(3)式における各記号は、Vは無機繊維
束の含有量(vol%)、Δαはマトリックスセラミックス
と無機繊維束との熱膨張係数差(/℃)である。(2)
および(3)式によるD′の値は、無機繊維束の含有量
Vと無機繊維束/マトリックスの熱膨張差Δαとにより
決まる、複合材が作製可能となる無機繊維束径のおおよ
その臨界値を示すものである。ここで無機繊維束の径D
の下限D′−0.5 は、複合材における無機繊維束の径
のばらつきなどを考慮したもので、図3〜図6に示した
ような実験結果から求められた値である。また、無機繊
維束の径Dの上限D′+3.0 は、作製した何種類かの
複合材の強度を測定し、径に対して強度向上の効果のあ
る範囲から求めた。これを図3に示したSiCマトリッ
クス−C繊維束複合材を例にとって説明する。図7に
は、SiCマトリックス−C繊維束複合材の、室温での
3点曲げ強さ測定結果を示す。
【0024】図7から、曲げ強さは繊維束の径と共に大
きくなるが、いずれの繊維束含有量の場合にも、径があ
る値になると曲げ強さはSiC単体とほぼ等しくなり、
それ以上向上しなくなる。この傾向は、他の成分系の複
合材でも同様で、強度向上がみられなくなる径の臨界値
は、どの成分系の複合材でも、上記(2)あるいは
(3)式で表されるD′よりもおよそ3.0mm 大きな値
であった。この知見をもとに、無機繊維束の径Dの上限
をD′+3.0 とした。
【0025】なお、αm≦αfの場合には、焼結後のマト
リックスの残留応力は圧縮応力となり、割れが生ずるこ
とはなかった。繊維束には引張応力が残ることになる
が、各種無機繊維はマトリックスセラミックスに比べて
大きな強度を持っており、欠陥につながる恐れはない。
従って、αm≦αfの場合には、無機繊維束の径は0.05mm
以上であれば良い。
【0026】また、マトリックスが金属の場合にも、同
様に何種類かの複合材を作製した。代表的な作製例を図
8と図9に示す。作製方法については、後の実施例で詳
しく述べる。ここで、図8はCuマトリックス−C繊維
束複合材、図9はTiマトリックス−SiC繊維束複合
材の作製結果である。
【0027】金属は熱膨張係数が大きく、ほとんどの場
合αm>αfとなり、金属マトリックスには無機繊維束と
の熱膨張係数差から生ずる引張残留応力が発生するが、
延性があるため、金属マトリックスに割れが生ずること
はなかった。また、作製した何種類かの複合材の室温に
おける引張強さを測定してみた。例として、図8で示し
たCuマトリックス−C繊維束複合材の引張強さ測定結
果を図10に示す。図10から、引張強さは繊維束含有
量によって大きく変わるが、繊維束の径に対しては、径
の大きさと共にわずかに向上する傾向がみられた。これ
は、金属は延性があり、残留応力は小さいものの、ある
程度の応力は残っており、それが繊維束の径を大きくす
ることによって緩和され、わずかではあるが、強度の向
上につながったものと考えられる。しかし、径がある値
以上になると、強度はほとんど向上しなくなる。この傾
向は、他の成分系の複合材でも同様で、下記(5)及び
(6)式で表すD′よりもおよそ5.0mm 大きな値であ
る。また、繊維束の径は0.05mm 以上で10mm以下で
あれば、取扱い性も良好で、強度もマトリックス成分単
体よりも大きくなっていることから、無機繊維束の径は
下記(4)式で表される範囲が望ましいことがわかっ
た。
【0028】 0.05≦D≦D′+5.0 …(4) (4)式における各記号は、Dは無機繊維束の径(m
m)、D′は下記(5)および(6)式で表わされる値
である。
【0029】 D′=(0.008V−0.1)×Δα×106 (V=3〜40) …(5) D′=(0.026V−0.776)×Δα×106 (V=40〜60) …(6) さらに本発明者らは、上記(1)式、及び(4)式に従
って繊維束の径を大きくすることに伴い、複合材の破壊
靭性が向上することを見出した。一例として、図3で示
したSiCマトリックス−C繊維束複合材の、繊維束含
有量Vが約5vol% の試料の破壊靭性測定結果を、図1
1に示す。
【0030】図11からわかるように、上記(1)式の
繊維束の範囲で、径の大きさと共に靭性が向上している
ことがわかる。この傾向は、他の成分系の複合材でも同
様にみられた。
【0031】以上のことから、上記の無機繊維束を用い
た本発明に係る繊維束強化複合材の複合構造は、無機繊
維束の径及び含有量を調整することにより、強度,靭性
の向上に対しても有効に作用するものであり、本発明に
係る無機繊維束は、マトリックスがセラミックスの場合
と金属の場合に、それぞれ上記(1)および(4)式で
表わされる範囲の径の大きさに制御することが望まし
い。なお、繊維束の径が上記範囲より大きくなると、製
造上の問題はないものの、マトリックスに対する繊維束
の存在がまばらになり、靭性向上などの繊維束強化の効
果が薄れるため、上記(1)および(4)式の範囲が望
ましい。また同様に、繊維束含有量は3vol% 未満であ
ると繊維束の存在がまばらになり、繊維束強化の効果が
薄れるため、含有量は3〜60vol% が望ましい。無機
繊維束は、マトリックス成分との反応などによる損傷が
ないことが望ましい。無機繊維束とマトリックスとの反
応は、両者の間に反応性のない中間層を設けることによ
り回避できる。
【0032】他方、前記の目的を達成するための本発明
に係る繊維束強化複合材の製法の構成は、マトリックス
がセラミックスの場合、マトリックス成分をグリーンシ
ート化し、その上に無機繊維束を配列した後、焼結する
ようにしたことである。無機繊維束の結束は、一方向に
配向する複数本の無機繊維の束に無機化合物の前駆体を
含浸した後、加熱することにより得られる。得られた無
機繊維束をマトリックス中に一方向あるいは二方向に配
向させるには、マトリックス成分をグリーンシート化
し、その上に繊維束を一方向に均一に配列し、それらを
繊維束が同一方向に配向するように、あるいは繊維束が
交互に交差して配向するように数段積層することによっ
て可能となる。マトリックスが金属の場合、マトリック
ス成分をもつ板状の金属板を用い、その上に繊維束を配
列し、数段積層したものを加熱溶融後、冷却固化するこ
とにより同様の複合構造が得られる。また、繊維束を成
形したプリフォームに、マトリックス成分のスラリーま
たは溶融金属を含浸させても可能となる。さらに、繊維
束の長さが比較的短い場合には、マトリックス成分のス
ラリーまたは溶融金属に繊維束を混合し、これを押出し
成形することによって、所望の繊維配向性をもつ複合構
造が得られる。
【0033】本発明の連続繊維は、SiC繊維,C繊
維,Si34繊維,B繊維,B(W芯)繊維,SiC(W
芯)繊維,SiC(C芯)繊維,Al23繊維の少なくと
も1種以上を用いることができる。該連続繊維は、その
径が10μmから2000μmであることが好ましい。
連続繊維の含有量は、少ないと高靭性化に寄与しない、
多いと強度低下を招くため、3〜60vol% であること
が好ましい。そして、連続繊維は、マトリックス中にお
いて一次元以上に配向している。さらに、連続繊維とマ
トリックスとの反応を防ぐために、繊維表面に、Si
C,C,TiC,B4C,BN,TiN,Si34,Al
N,SiO2,TiO2,ZrO2,Al23,ZnO,
MgO,B23,Ta25からなる成分がコーティング
されていても良い。無機繊維束は、セラミックスマトリ
ックス成分との反応などによる損傷がないことが望まし
い。無機繊維束とセラミックスマトリックスとの反応
は、コーティング等により反応性のない中間層を設ける
ことにより回避できる。また、この中間層により、セラ
ミックスマトリックスと無機繊維束との反応を防ぎ、滑
りを生じさせ、両者の熱膨張係数差から生ずる残留応力
を緩和することもできる。
【0034】一方、本発明者らは、連続無機繊維強化セ
ラミックスの該セラミックスマトリックス中の粒子内お
よび粒界に粒子が分散した複合構造体からなり、粒界に
介在する該粒子は球状,擬球状,針状,ウイスカ状,柱
状,板状のいずれかからなる粒子を分散させる方法につ
いて鋭意検討した結果、焼結過程で原料粉末を反応させ
て該粒子を析出,分散させる自己析出技術を見出した。
これにより、複合セラミックスにおいて、該セラミック
スマトリックスの粒子内および粒界に粒子が分散した複
合構造体からなり、該セラミックスマトリックス中の全
ての組成を出発原料と異なる組成で構成させることがで
きる。
【0035】本発明では、出発原料を反応させて複合構
造を析出させるために、該マトリックス粒子間の結合に
おいて、30%以上が直接結合した組織にすることが可
能である。これにより、粒界部分でのガラス相あるいは
合金相を低減化できるため、高温での強度特性に優れた
複合材が得られる。なお、ここで原料表面に存在した酸
化膜は不可避成分であり、30%の計算には含んでいな
い。さらに、該析出反応を窒素等のガスを利用して無機
粒子/短繊維を析出させると体積膨張を伴うため、無収
縮で緻密化を図ることができる。これにより、本発明で
は繊維強化セラミックス中にセラミックスマトリックス
を結合させるためのガラス相あるいは合金相が3vol%
未満にすることが可能である。
【0036】さらに、本発明の反応析出方法において、
焼結助剤を含有させることにより、さらに緻密な焼結体
を得ることもできる。この場合、セラミックスマトリッ
クスを結合させるためのガラス相あるいは合金相が3か
ら20vol% 含有された構造となる。なお、この助剤に
よる緻密化は、析出反応が終了した後に行われる。
【0037】他方、前記の目的を達成するための本発明
に係る繊維強化複合材の製法の構成は、セラミックスマ
トリックスが、Si,Al,Cr,Ti,Zr,Mg,
B,Yの窒化物,炭化物,酸化物,炭窒化物,酸窒化
物,硼化物の少なくとも1種以上からなり、セラミック
スマトリックスの粒子内および粒界に分散した粒子が、
Si,Al,Cr,Ti,Zr,Mg,B,Y,W,N
b,V,Sc,La,Hf,Mo,Ce,Yb,Er,
Ho,Dyの窒化物,炭化物,酸化物,炭窒化物,酸窒
化物,硼化物,金属間化合物の少なくとも1種以上のセ
ラミックスマトリックスと異なる組成からなる。該セラ
ミックスマトリックスは、Si,Al,Cr,Ti,Z
r,Mg,B,Y,W,Nb,V,Sc,La,Hf,
Mo,Ce,Yb,Er,Ho,Dyの少なくとも1種
以上の金属粉末あるいは金属粉末とSi,Al,Cr,
Ti,Zr,Mg,B,Y,W,Nb,V,Sc,L
a,Hf,Mo,Ce,Yb,Er,Ho,Dy単体,
窒化物,炭化物,酸化物,炭窒化物,酸窒化物,硼化
物,金属間化合物の少なくとも1種以上のセラミック粒
子からなる混合粉末からなる成形体を窒化性,炭化性,
炭窒化性,酸化性,酸窒化性,不活性の少なくとも1種
以上の反応性ガス雰囲気中で加熱し、自己析出反応させ
ることにより得られる。
【0038】特に、セラミックスマトリックスが、Si
C,TiC,ZrC,Si34,AlN,TiN,B
N,ZrN,ZrB2,TiB2,CrB2,Al23,M
gO,ムライト,ZrO2 の少なくとも1種以上からな
る。金属としては、Al,Cu,Ti,Mg,Al系合
金,Cu系合金,Cr系合金,Ni系合金,TiAl合
金,NbAl合金,NiAl合金,MoAl合金,Zr
Al合金,TiSi合金,ステンレス鋼の少なくとも1
種からなる。
【0039】本発明において、マトリックス中に分散さ
せた粒子含有量は、5から30vol%であることが好ま
しい。金属の場合、溶湯中への分散法,メカニカルアロ
イング法により粒子を分散できる。
【0040】さらに、本発明に係る繊維強化複合材の製
法の構成は、マトリックスとなるSi,Al,Cr,T
i,Zr,Mg,B,Yの窒化物,炭化物,酸化物,炭
窒化物,酸窒化物,硼化物の少なくとも1種以上のセラ
ミックスをグリーンシート化等し、その上に無機繊維束
を配列した後、反応析出処理するようにしたことであ
る。
【0041】無機繊維束の結束は、一方向に配向する複
数本の連続無機繊維の束に無機化合物の前駆体を含浸し
た後、前駆体がセラミックス化する温度まで加熱するこ
とにより得られる。得られた無機繊維束をマトリックス
中に一方向あるいは二方向に配向させるには、上述のマ
トリックス成分をグリーンシート化し、その上に繊維束
を一方向に均一に配列し、それらを繊維束が同一方向に
配向するように、あるいは繊維束が交互に交差して配向
するように数段積層することによって可能となる。ま
た、繊維束を成形したプリフォームに、上述のマトリッ
クス成分のスラリーを含浸させても可能となる。
【0042】また、得られた複合材は使用環境下におい
て化学的に安定していることが求められる。マトリック
スや無機繊維は、その成分によっては、特に高温大気中
において酸化損耗する恐れがあるが、これは複合材表面
に耐熱性を有する酸化物セラミックスをあらかじめコー
ティングすることにより防止できる。
【0043】
【作用】本発明では、繊維束とセラミックスマトリック
スとの熱膨張係数差による残留応力を低減でき、複合材
の強度および破壊エネルギを大きくできる。出発原料を
反応焼結させるために、セラミックスマトリックスの粒
子内および粒界に組成の異なる任意の形状の粒子を分散
でき、マトリックスの強度および靭性を高めることがで
きる。反応析出のため、出発原料粉末の大きさに関係な
く微細化でき、さらに出発原料に短繊維を用いないため
公害上の問題を解決できる。そして、粒子間の結合にお
いて、30%以上が直接結合した組織となるために高温
特性(強度・クリープ特性)に優れた繊維強化複合材が
得られる。セラミックスマトリックスを反応析出複合材
とすることにより、焼結時の収縮が小さく、複雑形状品
の製法に適しており、ほとんど加工することなく製品を
得ることができ、加工による残留歪を小さく抑えること
もできる。これにより、セラミックス部品の信頼性が向
上し、ガスタービン,内燃機関,核融合炉,航空機,宇
宙機器種プラントの部品,エンジンなどの機構部品,特
にガスタービン部品,内燃機関部品,核融合炉部品,摺
動部材,耐熱部材,構造部材への適用が容易に可能とな
る。
【0044】
【実施例】本発明に係る実施例について、以下に具体的
に説明する。
【0045】(実施例1)まず、C繊維束の作製方法に
ついて説明する。ピッチ系連続C繊維数本を一方向に配
列し、フェノール樹脂とエタノールを重量比で1:1に
混合した溶液を含浸させ、それを真空中において200
0℃で1時間加熱し、フェノール樹脂を固化させること
により、Cを媒体としたC繊維束を得た。この際、用い
るC繊維の本数を変えることで、C繊維束の径を変える
ことができる。この方法で得られた繊維束のC媒体含有
量は、径の大きさに係らず約60vol% である。
【0046】次に、複合材の作製方法について説明す
る。平均粒径0.5μm のSi粉末80重量部,平均粒
径0.5μmのMoSi2粉末20重量部を所定量の有機
溶媒に混合してスラリー状にし、これをドクターブレー
ド法によりグリーンシート化した。上記で得られたC繊
維束を、乾燥したグリーンシートの上にできるだけ均一
に一方向に配列した。C繊維束を配列したグリーンシー
トを、繊維束が同一方向に配向するように数段積層し、
積層方向に98MPaで加圧して成形体とした。得られ
た成形体を窒素中で1500℃まで加熱し、3Si+2
2→Si34,3/2Mo+3Si+2N2→Si34
+3/2Mo の析出反応させ、ミクロンサイズのSi3
4マトリックス中にナノサイズのMo粒子をSi34
粒子内部/粒界に析出させたC繊維束強化Mo粒子分散
Si34複合材が作製できた。このときの焼結時の収縮
率は0.2% であった。得られた焼結体の模式図を図2
0に示す。
【0047】ここで、水素ガスなどの還元性ガスを混合
することにより、窒化反応を促進させることができる。
【0048】上記と同様の製法により、MoSi2 粉末
に変えてTi,Zr,W,Hf,Al,V,Nb,T
a,Crの珪化物を用いてC繊維束強化複合材の作製を
試みた。その結果、ミクロンサイズのSi34マトリッ
クス中に焼結中に生成したナノサイズのTiN,Zr
N,W,WN,HfN,AlN,VN,NbN,Ta
N,CrN粒子あるいは繊維をSi34粒子内部/粒界
に析出させた各種C繊維束強化複合材が作製できた。
【0049】また、同様にMoSi2 粉末に変えてT
i,Zr,B,Mo,W,Hf,Al,V,Nb,T
a,Crの炭化物、あるいはTi,Zr,B,Mo,
W,Hf,Al,V,Nb,Ta,Crの硼化物を用い
てC繊維束強化複合材の作製を試みた。その結果、ミク
ロンサイズのSi34マトリックス中に焼結中に生成し
たナノサイズのTiN,ZrN,BN,Mo,W,W
N,HfN,AlN,VN,NbN,TaN,CrN,
SiC粒子あるいは繊維をSi34粒子内部/粒界に析
出させた各種C繊維束強化複合材が作製できた。
【0050】(実施例2)複合材の作製方法について説
明する。平均粒径0.5μm のSi粉末80重量部,平
均粒径0.5μm のTiC粉末20重量部を所定量の有
機溶媒に混合してスラリー状にし、これをドクターブレ
ード法によりグリーンシート化した。直径100μmの
SiC繊維を、乾燥したグリーンシートの上にできるだ
け均一に一方向に配列した。SiC繊維を配列したグリ
ーンシートを、繊維が同一方向に配向するように数段積
層し、積層方向に98MPaで加圧して成形体とした。
SiC繊維のマトリックス中の含有量が20vol% となる
ように配向した。得られた成形体を窒素中で1600℃
まで加熱し、3Si+2N2→Si34,TiC+1/2
2→TiN+C,Si+C→SiCの析出反応によ
り、ミクロンサイズのSi34マトリックス中にナノサ
イズのTiN粒子およびSiC粒子をSi34粒子内部
/粒界に、アスペクト比3から7のミクロンサイズのS
iC短繊維を粒界に析出させた。このときの焼結時の収
縮率は0.3% であった。得られた焼結体の粒子間の結
合のほとんどが直接結合しており、ガラス層は2%以下
であった。これにより、曲げ強度610MPa,破壊靭
性値15MPa√mの特性を有する気孔率15%のSi
C繊維強化Si34セラミックスが得られた。特に、マ
トリックスとなる反応析出複合材は焼結時に収縮しない
ため、複雑形状品の製法に適しており、ほとんど加工す
ることなく製品を得ることができる。これにより、加工
による残留歪を小さく抑えることができる。
【0051】上記Si粉末の変わりに、Al,Cr,T
i,Zr,Mg,B,Y,W,Nb,V,Sc,La,
Hf,Mo,Ce,Yb,Er,Ho,Dy金属粉末を
用いることにより、同様に焼結中に窒化物,炭化物,酸
化物,炭窒化物,酸窒化物,硼化物,金属間化合物の少
なくとも1種からなる繊維及び粒子を析出させることが
できる。
【0052】上記Si粉末の変わりにSiO2 粉末を用
いて、窒素/水素混合ガス中で1600℃まで加熱すること
により、同様にミクロンサイズのSi34マトリックス
中にナノサイズのTiN粒子およびSiC粒子をSi3
4粒子内部/粒界に、アスペクト比3から7のミクロ
ンサイズのSiC短繊維を粒界に析出させた複合材が得
られる。他の金属酸化物を用いて窒化・還元処理するこ
とにより、焼結中に複合析出反応をさせることができ
る。
【0053】表1,表2及び表3にマトリックスを構成
するための出発原料と析出反応により得られた焼結体の
組成を示す。本発明では、焼結中に任意の粒子,短繊維
を反応析出させることができる。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】(実施例3)平均粒径0.5μmのSi粉
末80重量部,平均粒径0.5μmのTiC粉末20重量
部に緻密化させるための焼結助剤Y23,Al23を各
2重量部,所定量の有機溶媒に混合してスラリー状に
し、これをドクターブレード法によりグリーンシート化
した。直径100μmのSiC長繊維を、乾燥したグリ
ーンシートの上にできるだけ均一に一方向に配列した。
SiC長繊維を配列したグリーンシートを、繊維が同一
方向に配向するように数段積層し、積層方向に98MP
aで加圧して成形体とした。SiC繊維のマトリックス
中の含有量が20vol% となるように配向した。得られ
た成形体を窒素中で1600℃まで加熱し、3Si+2
2→Si34,TiC+1/2N2→TiN+C,Si
+C→SiC の析出反応させた後、1750℃で5時
間緻密化処理し、ミクロンサイズのSi34マトリック
ス中にナノサイズのTiN粒子およびSiC粒子をSi
34粒子内部/粒界に、アスペクト比3から7のミクロ
ンサイズのSiC短繊維を粒界に析出させた。このとき
の焼結時の収縮率は4.2% であった。得られた焼結体
の粒子間の結合の82%が直接結合であり、残り18%
が焼結助剤からなる合金相である。これにより、曲げ強
度1560MPa,破壊靭性値27MPa√mの特性を
有する気孔率0.5%のSiC繊維強化Si34セラミ
ックスが得られた。
【0058】Si34の焼結において、緻密化のための
焼結助剤は上記のY23,Al23に限らず、Zr,S
i,Yb,Er,Hfなどの希土類、などの酸化物を使
用出来る。そして、マトリックスとなる組成により焼結
助剤の種類が異なり、一般に知られている助剤を使用出
来る。例えば、SiCの場合は、B,C,Al23など
が使用できる。
【0059】上記Si粉末の変わりに、Al,Cr,T
i,Zr,Mg,B,Y,W,Nb,V,Sc,La,
Hf,Mo,Ce,Yb,Er,Ho,Dy金属粉末を
用いることにより、同様に焼結中に窒化物,炭化物,酸
化物,炭窒化物,酸窒化物,硼化物,金属間化合物の少
なくとも1種からなる粒子又は/及び繊維を析出させる
ことができる。
【0060】(実施例4)本発明に係る実施例4とし
て、数種の無機繊維束の作製例を示す。
【0061】まず、Cを媒体としたC繊維束の作製方法
を説明する。図12には、作製方法の概略図を示す。ピ
ッチ系の連続C繊維数千本を一方向に配列し、フェノー
ル樹脂とエタノールを重量比で1:1に混合した溶液を
含浸させ、それを大気中において300℃で1時間加熱
し、フェノール樹脂を固化させることにより、Cを媒体
としたC繊維束を得た。この際、用いるC繊維の本数を
変えることで、C繊維束の径を変えることができる。本
実施例では、一束あたり1,000本から 48,00
0 本のC繊維を用いた。この方法で得られた繊維束の
C媒体の含有量は、径の大きさに係らず約50〜60vo
l% である。なお、用いるC繊維としては、ピッチ系の
ほか、PAN(ポリアクリロニトリル)系やセルロース
系でも同様に作製できる。
【0062】次に、上記以外の方法による、Cを媒体と
したC繊維束の作製方法を説明する。ここでは、C媒体
の前駆体として、ポリビニールアルコールを用いた。ピ
ッチ系の連続C繊維数千本を一方向に配列し、ポリビニ
ールアルコールと温水を重量比で1:5に混合した溶液
を含浸し、それを大気中において80℃で2〜3時間乾
燥した後、さらに300℃で1時間加熱し、ポリビニー
ルアルコールを固化させることにより、Cを媒体とした
C繊維束を得た。この方法で得られた繊維束のC媒体の
含有量は、径の大きさに係らず20〜30vol% であ
る。なお、以上の2つの方法では、加熱温度が300℃
であり、前駆体の炭化は不完全であるが、複合化の際の
焼結,加熱過程で充分に炭化できる。また、媒体の含有
量は、前駆体溶液の濃度、あるいは含浸回数を変えるこ
とにより調整することができる。
【0063】次に、SiCを媒体としたC繊維束の作製
方法を示す。ピッチ系の連続C繊維数千本を一方向に配
列し、ポリカルボシランを含浸し、それを大気中におい
て350℃で1時間加熱し、ポリカルボシランを炭化さ
せることにより、SiCを媒体としたC繊維束を得た。
350℃の加熱では、ポリカルボシランの熱分解が不十
分で完全なSiCには変化しないが、複合化の際の焼
結,加熱過程でSiCに変化させることができる。この
方法で得られた繊維束のSiC媒体の含有量は、径の大
きさに係らず約50vol% である。なお、媒体の含有量
は、前駆体溶液の濃度、あるいは含浸回数を変えること
により調整することができる。
【0064】次に、TiC・SiCを媒体としたC繊維
束の作製方法を示す。ピッチ系の連続C繊維数千本を一
方向に配列し、ポリチタノカルボシランを含浸し、それ
を真空中において1400℃で1時間加熱し、TiC・
SiCを媒体としたC繊維束を得た。この方法で得られ
た繊維束のTiC・SiC媒体の含有量は、径の大きさ
に係らず約30vol% である。
【0065】さらに、B23を媒体としたAl23繊維
束の作製方法を示す。連続Al23繊維数千本を一方向
に配列し、式 B(O−nC49)3 で表されるBのアル
コキシドに浸漬した。
【0066】これをアルコール中で水と反応させ、その
後100℃で10時間熱処理し、B23を媒体としたA
23繊維束を作製した。この方法で得られた繊維束の
23媒体の含有量は、径の大きさに係らず約10vol
% である。但し、媒体の含有量は、アルコキシドへの
浸漬及び熱処理の回数を変えることにより調整すること
ができる。
【0067】この他上記と同様に、B4C,BN,Si3
4,SiO2,TiO2,Al23,Ta25それぞれの
前駆体を含浸し加熱することにより、それぞれを媒体成
分としたC繊維以外の無機繊維束、すなわちSiC,
B,B(W芯),SiC(W芯),SiC(C芯),Al
23繊維の繊維束が作製できる。ただし、繊維と媒体の
組合せにおいて、非酸化物と酸化物の組合せでは、繊維
束の作製は可能であるものの、後の焼結などの複合化過
程において高温に加熱され、両者の間での反応が大き
く、繊維束の特性が劣化する恐れがあるため、非酸化物
と非酸化物、あるいは酸化物と酸化物の組合せが望まし
い。しかしながら、繊維表面にあらかじめBNなどの反
応性の少ない成分をコーティングすることにより、ある
程度反応を防ぐことができる。
【0068】なお、2種以上の繊維からなる繊維束も同
様にして作製できる。また繊維束の作製は、上記で示し
たような前駆体を含浸し、加熱する方法のほか、媒体成
分のスラリ−含浸、あるいは化学気相含浸などの方法で
も可能である。
【0069】本実施例で作製した上記以外の繊維束の無
機繊維と媒体との代表的な組合せの例を表4に示す。
【0070】
【表4】
【0071】(実施例5)本発明に係る実施例5とし
て、実施例4で作製した無機繊維束を用い、セラミック
スをマトリックスとした繊維束強化複合材の作製例を示
す。
【0072】まず、SiCセラミックスをC繊維束で一
方向に強化したSiC/C繊維束複合材の作製方法につ
いて説明する。なお、C繊維束の媒体はCである。図1
3には、SiC/C繊維束複合材の作製方法の概略図を
示す。
【0073】焼結助剤であるBeO粉末2wt%をあら
かじめ乾式混合したSiC粉末を、所定量の有機溶媒
(バインダー)に混合してスラリ−状にし、これをドク
ターブレード法によりグリーンシート化した。上記C繊
維束を、乾燥したグリーンシートの上にできるだけ均一
に一方向に配列した。C繊維束を配列したグリーンシー
トを、繊維束が同一方向に配向するように数段積層し、
それを大気中において100℃で1分間、積層方向に1
5MPaの加圧をして成形体とした。得られた成形体を
ホットプレスにより真空中、2100℃で1時間の加
熱、グリーンシートの積層方向に30MPaの加圧で焼
結を行い、SiC/C繊維束複合材が作製できた。作製
した複合材のC繊維束の含有量と径との関係は、先に示
した図3のとおりである。
【0074】次に、Si34セラミックスをC繊維束で
一方向に強化したSi34−C繊維束複合材の作製方法
について説明する。なお、C繊維束の媒体はSiCであ
る。金属Si粉末とSiC粉末を重量比で2:3に混合
し、これに純水ほか所定量のバインダーを添加後、ポッ
トミルにより24時間混合しスラリーとした。吸水性を
もつ石膏型内にあらかじめ上記C繊維束を一方向に配
列,固定しておき、石膏型にこのスラリーを鋳込み乾燥
させて成形体とした。この成形体を0.88MPaの窒素
ガス雰囲気中で加熱焼結後、炉冷した。加熱温度と保持
時間は、1100℃×10hr,1200℃×20h
r,1300℃×10hr,1350℃×5hrと多段
にし、金属SiがSi34に変化するのを制御した。こ
れにより、C繊維束が一方向に配向したSi34−C繊
維束複合材が作製できた。作製した複合材のC繊維束の
含有量と径との関係は、先に示した図4のとおりであ
る。
【0075】次に、ZrB2セラミックスをC繊維束で
一方向に強化したZrB2−C繊維束複合材の作製方法
について説明する。なお、C繊維束の媒体はSiCであ
る。
【0076】ZrB2 粉末に所定量のバインダーを混合
してスラリー状にし、これをドクターブレード法により
グリーンシート化した。上記C繊維束を乾燥したグリー
ンシートの上にできるだけ均一に一方向に配列した。C
繊維束を配列したグリーンシートを繊維束が同一方向に
配向するように数段積層し、それを大気中において100
℃で1分間、積層方向に15MPaの加圧をして成形体
とした。得られた成形体をホットプレスにより真空中、
1900℃で1時間の加熱、グリーンシートの積層方向
に30MPaの加圧で焼結を行い、ZrB2−C 繊維束
複合材が作製できた。作製した複合材のC繊維束の含有
量と径との関係は、先に示した図5のとおりである。
【0077】次に、MgOセラミックスをAl23繊維
束で一方向に強化したMgO−Al23繊維束複合材の
作製方法について説明する。なお、Al23繊維束の媒
体はB23である。MgO粉末に所定量のバインダーを
混合してスラリー状にし、これをドクターブレード法に
よりグリーンシート化した。上記Al23繊維束を、乾
燥したグリーンシートの上にできるだけ均一に一方向に
配列した。Al2O3繊維束を配列したグリーンシートを、
繊維束が同一方向に配向するように数段積層し、それを
大気中において100℃で5分間、積層方向に20MP
aの加圧をして成形体とした。得られた成形体をホット
プレスにより大気中、1250℃で1時間の加熱、グリ
ーンシートの積層方向に30MPaの加圧で焼結を行
い、MgO−Al23繊維束複合材が作製できた。作製
した複合材のAl23繊維束の含有量と径との関係は、
先に示した図6のとおりである。なお、以上示したいず
れの方法においても、マトリックス成分のグリーンシー
トの厚さあるいは配列する繊維束の間隔を変えることに
よって繊維束の含有量を調整できる。
【0078】上記と同様の製法により、他の成分のマト
リックス、あるいは他の成分の繊維束の組合せによる数
種の繊維束強化複合材の作製を試みた。その結果、いず
れの場合も繊維束が一方向に配向した複合材を容易に作
製することができた。但し、マトリックスあるいは繊維
束の成分によっては、両者の間で反応が生じ、繊維束の
特性劣化につながる場合があるので、マトリックスと繊
維束の成分の組合せは、酸化物と酸化物、あるいは非酸
化物と非酸化物が望ましい。しかしながら、繊維束表面
にあらかじめ、実施例で示すようなコーティングを施せ
ば反応を抑制することができる。
【0079】なお、繊維束の長さが比較的短い場合に
は、マトリックス成分のスラリーに繊維束を混合し、押
出し口に格子を設けて型内に押出し成形したものを焼結
することによって、繊維束が一方向に配向した複合材を
作製することができる。
【0080】以上より、繊維束を用いることによって、
セラミックスマトリックス中に繊維束が一方向に配向し
た複合材が比較的簡単に作製できることが実証された。
本実施例で作製した上記以外の代表的な複合材のマトリ
ックスと繊維束との組合せを表5に示す。表5には、そ
れらの複合材の3点曲げ強度と破壊靭性値を併記する。
【0081】
【表5】
【0082】(実施例6)本発明に係る実施例6とし
て、実施例4で作製した無機繊維束を用い、金属をマト
リックスとした繊維束強化複合材の作製例を示す。
【0083】まず、CuをC繊維束で一方向に強化した
Cu−C繊維束複合材の作製方法について説明する。な
お、C繊維束の媒体はCである。Cu板の上にC繊維束
をできるだけ均一に一方向に配列し、これを繊維束が同
一方向に配向するように数段積層し、型に入れた状態で
真空中、900℃に加熱して溶融軟化させた。この際、
CuはC繊維束に濡れないので、C繊維束表面にあらか
じめCuメッキを施しておくとよく、また積層方向に加
圧することにより、CuとC繊維束との密着性がよくな
る。加熱後、冷却固化することにより、Cu−C繊維束
複合材が作製できた。作製した複合材のC繊維束の含有
量と径との関係は、先に示した図8のとおりである。
【0084】次に、TiをSiC繊維束で一方向に強化
したTi−SiC繊維束複合材の作製方法について説明
する。なお、SiC繊維束の媒体はTiC・SiCであ
る。Ti板の上にSiC繊維束をできるだけ均一に一方
向に配列し、これを繊維束が同一方向に配向するように
数段積層し、型に入れた状態で真空中、1600℃に加
熱して溶融軟化させた。ここで、Tiは表面が極めて活
性で酸化されやすいため、以上の操作は不活性雰囲気下
で取り扱うなど、酸化防止のための工夫が必要である。
またこの際、積層方向に加圧することにより、TiとS
iC繊維束との密着性がよくなる。加熱後、冷却固化す
ることにより、Ti−SiC繊維束複合材が作製でき
た。作製した複合材のSiC繊維束の含有量と径との関
係は、先に示した図9のとおりである。
【0085】上記と同様の製法により、マトリックスが
他の成分の純金属や合金あるいは金属間化合物で、他の
成分の繊維束を用いた数種の繊維束強化複合材の作製を
試みた。その結果、いずれの場合も繊維束が一方向に配
向した複合材を容易に作製することができた。但し、マ
トリックスあるいは繊維束の成分によっては、両者の間
で反応が生じ、繊維束の特性劣化につながる場合がある
ので、繊維束表面にはあらかじめ、実施例で示すような
コーティングを施すことが望ましい。
【0086】なお、繊維束の長さが比較的短い場合に
は、マトリックス成分の溶融金属に繊維束を混合し、押
出し口に格子を設けて型内に押出し成形し、冷却固化す
ることによって、繊維束が一方向に配向した複合材を作
製することができる。
【0087】以上より、繊維束を用いることによって、
金属マトリックス中に繊維束が一方向に配向した複合材
が、比較的簡単に作製できることが実証された。本実施
例で作製した上記以外の代表的な複合材のマトリックス
と繊維束との組合せを表6に示す。
【0088】
【表6】
【0089】(実施例7)実施例5及び6で作製した複
合材の機械的特性について検討した。まずセラミックス
がマトリックスである複合材として、C繊維束が一方向
に配向したSiC/C繊維束複合材について、室温及び
高温(真空中、1500℃)において3点曲げ強さを測
定した。繊維束の径と室温における曲げ強さとの関係
は、先に示した図7のとおりである。比較のため、Si
C単体の3点曲げ強さを併せて示す。図7からわかるよ
うに、C繊維束の径を大きくすることによって複合材の
強度を向上させることができ、SiC単体と同等の強度
が得られる。これは、C繊維束とSiCマトリックスと
の熱膨張差により焼結後は残留応力(SiCに引張応力)
が残るが、繊維束の径が大きいほど間に存在するマトリ
ックス量は多くなり、上記の引張残留応力を緩和する効
果が大きくなるためと考えられる。これより、室温にお
いては繊維束の径及び含有量の調整により、強度を向上
させることができる。
【0090】なお、マトリックスに他のセラミックスを
用いた場合にも、またC繊維束以外の無機繊維束を用い
た場合にも、繊維束の径の大きさと得られた複合材の強
度との関係は、上記のSiC/C繊維束複合材の場合と
同様の傾向になった。この場合も同様に、繊維束の径が
大きい方が、繊維束とマトリックスとの熱膨張差による
残留応力を緩和する効果が大きくなることと、マトリッ
クス/繊維束界面の面積が小さくなり欠陥が少なくなる
ためと考える。
【0091】次に、SiC/C繊維束複合材の高温(真
空中、1500℃)において3点曲げ強さを測定した結
果を図14に示す。C繊維束の径の大きさに係らず、S
iC単体と同等あるいはそれ以上の高温強度が得られ
た。これは、高温においてはマトリックスに生ずる引張
残留応力が緩和されるため、高温強度は室温よりも比較
的高くなったものと考えられる。このように、高温にな
るにつれて繊維束の径の大きさに係らず強度が高くな
り、本材料が高温用構造材料として適した特性を持つ複
合材料である。
【0092】さらに、SiC/C繊維束複合材の破壊靭
性を測定した結果、先に示した図11のようになった。
図11から、上記(1)式に示す繊維束の径の範囲で、
径の大きさと共に靭性が向上していることがわかる。こ
れは、マトリックスからの繊維束の引き抜けと共に、繊
維束自体の中で繊維の引き抜けや段階的な破断が生じて
いるためと考える。
【0093】以上示した特徴は、他の成分からなるセラ
ミックスマトリックスまたは繊維束をもつ複合材でも同
様にみられ、上記(1)式に示す範囲の繊維束の径をも
つ複合材が、本発明の目的に即した材料である。
【0094】次に、金属がマトリックスである複合材と
して、C繊維束が一方向に配向したCu−C繊維束複合
材について、室温において引張強さを測定した。繊維束
の径と引張強さとの関係は、先に示した図10のとおり
である。比較のため、Cu単体の引張強さを併せて示
す。引張強さは繊維束含有量に大きく依存し、繊維束の
径に対しては大きな変化はない。しかしながら、径の大
きさと共にわずかに強度が向上する傾向がみられ、径が
ある値以上になると強度はほとんど変化しなくなる。
【0095】これは、他の成分からなる金属マトリック
スまたは繊維束をもつ複合材でも同様にみられ、上記
(4)式に示す範囲の繊維束の径をもつ複合材が、本発
明の目的に即した材料である。
【0096】(実施例8)実施例4で作製した繊維束に
対して、マトリックスとの反応を抑制するための表面コ
ーティングを施した例を示す。
【0097】コーティング法とコーティングの効果につ
いて、Cを媒体としたC繊維束にSiCをコーティング
した場合を例に説明する。コーティング法としては、化
学気相蒸着法,ゾル−ゲル法,スラリー含浸法などが挙
げられるが、ここではゾル−ゲル法により行った。すな
わち、Cを媒体としたC繊維束をポリシラン中に浸漬,
乾燥し、これを数回繰り返した後熱処理(真空中、12
00℃)して表面にSiCをコーティングした。コーテ
ィング層の厚さは約50μmである。
【0098】このC繊維束を用いてSiCをマトリック
スとした複合材(C繊維束の含有量:約5vol%)を作
製し、室温での3点曲げ強さを測定した。繊維束の径が
0.6mmのとき、コーティングがない場合に曲げ強さは
320MPaであるのに対し、コーティングした場合に
は390MPaであった。また、繊維束の径が1.2mm
のとき、コーティングがない場合に曲げ強さは460M
Paであるのに対し、コーティングした場合には495
MPaであった。いずれの場合も、コーティングを施し
た方が曲げ強さの値は大きくなっている。これは、あら
かじめ繊維束表面にコーティング層を設けることによ
り、焼結時のマトリックスと繊維束との反応を抑制する
ことができ、繊維束の損傷あるいはマトリックス/繊維
束界面の欠陥を少なくする効果によるものと考えられ
る。
【0099】上記と同様の方法により、他の繊維束に対
するSiC以外のコーティング、すなわちC,TiC,
4C,BN,TiN,Si34,AlN,SiO2,T
iO2,ZrO2,Al23,ZnO,MgO,B23
Ta25 のコーティングも可能であった。また、コー
ティング方法としては、化学気相蒸着法,スラリー含浸
法なども適用可能である。但し、コーティング成分とし
ては、マトリックス及び繊維束と反応性がないものが望
ましい。本実施例で行った繊維束への代表的なコーティ
ング例を表7に示す。
【0100】
【表7】
【0101】(実施例9)得られた繊維束強化複合材の
表面に、酸化物セラミックスをコーティングした例とそ
の効果について示す。ここでは、SiCマトリックスを
C繊維束で強化したSiC/C繊維束複合材の表面に、
ZrO2 をコーティングした例を中心に説明する。
【0102】作製したSiC/C繊維束複合材をZrO
2 スラリー中に浸漬,乾燥し、これを数回繰り返した後
1400℃で1時間加熱し、ZrO2 を焼結させる。こ
のときSiC/C繊維束複合材は、C繊維束がSiCマ
トリックスの表面外に露出していない構造が望ましい。
これはC繊維束が酸化物であるZrO2 と反応すること
を防ぐためである。上記の方法により、厚さ0.5mmの
ZrO2コーティング層を得た。
【0103】得られたZrO2 コーティングSiC/C
繊維束複合材を、コーティングなしのSiC/C繊維束
複合材とともに大気中、1000℃において24時間加
熱し、酸化試験を行った。その結果、コーティングなし
のSiC/C繊維束強化複合材は4.3%重量が減少し
たのに対し、ZrO2コーティングを施した場合は重量
減少が0.9% であった。これは、酸化物セラミックス
コーティングにより、表面の酸化が抑制された効果によ
るものである。また、酸化試験後の試料について室温で
3点曲げ強さを測定したところ、コーティングなしの場
合は355MPaであったのに対し、ZrO2 コーティ
ングを施した場合は425MPaであった。これによ
り、高温下においても特性を劣化させることなく、安定
して使用できるSiC/C繊維束複合材が得られること
が実証された。
【0104】上記のほか、SiO2,TiO2,Al
23,ZnO,MgO,B23,Ta25をコーティング
した場合でも同様の効果が得られた。またコーティング
法としては、上記のスラリーを用いた方法のほか、化学
気相蒸着法,ゾル−ゲル法なども可能である。さらにこ
れらのコーティングは、SiC以外のマトリックスから
なる複合材に対しても可能であった。本実施例で行った
複合材への代表的な酸化物セラミックスコーティング例
を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】なお、マトリックスとコーティング層との
熱膨張差によるコーティング層の破損を防止するため
に、両者の間にマトリックス成分とコーティング成分が
徐々に、あるいは段階的に変化する中間層を設けても良
い。
【0107】(実施例10)マトリックス中に無機繊維
束が二方向に配向した繊維束強化複合材の作製例につい
て示す。ここでは、SiCマトリックス中にCを媒体と
したC繊維束が二方向に配向したSiC/C繊維束複合
材の作製方法を中心に説明する。
【0108】実施例4と同様の方法により、C繊維束と
SiCマトリックス成分のグリーンシートを作製する。
得られたグリーンシート上にC繊維束をできるだけ均一
に一方向に配列し、それをC繊維束が交互に直交するよ
うに数段積層し、大気中において100℃で1分間、積
層方向に15MPaの加圧をして成形体とした。得られ
た成形体をホットプレスにより高真空中、2100℃で
1時間の加熱、グリーンシートの積層方向に30MPa
の加圧で焼結を行い、C繊維束が二方向に配向したSi
C/C繊維束複合材を作製した。
【0109】同様の方法により、他のマトリックス成分
の場合にも、また他の繊維束の場合にも、マトリックス
中に繊維束が二方向に直交する繊維束強化複合材を作製
することができる。さらに、実施例1から3のようにマ
トリックスをナノ粒子,繊維で強化することにより、高
強度・高靭性セラミックスが得られる。ここで、マトリ
ックスが金属の場合は、実施例6と同様にマトリックス
成分の金属板を用いることで可能となる。また、繊維束
がある角度をもって交わるようにグリーンシートあるい
は金属板を積層することにより、繊維束が任意の角度で
交わるように二方向に配向する繊維束強化複合材を作製
することも可能である。
【0110】(実施例11)マトリックス中に繊維束が
三次元形状をもって存在する繊維束強化複合材の作製例
について示す。ここでは、SiCマトリックス中にCを
媒体としたC繊維束が三次元形状をもって存在するSi
C/C繊維束複合材の作製方法を中心に説明する。
【0111】実施例4,5と同様の方法により、C繊維
束とSiCマトリックス成分のスラリーを作製する。但
し、SiCの焼結助剤にはBとCを用いた。またこの
際、C繊維の束にフェノール樹脂を含浸した後、所望の
形状に型枠などを用いて成形した上で加熱・炭化させる
ことによって、所望の形状を有するC繊維束を得た。得
られたC繊維束を金型内に固定し、スラリーを流し込み
大気中で乾燥する。これを数回繰り返し、マトリックス
成分を十分充填した上で金型から出し、Arガス1気圧
中、2050℃で1時間の焼結を行い、C繊維束が三次
元形状をもって存在するSiC/C繊維束複合材を作製
した。
【0112】同様の方法により、他のマトリックス成分
の場合にも、また他の繊維束の場合にも、マトリックス
中に繊維束が三次元形状をもって存在する繊維束強化複
合材を作製することができる。さらに、実施例1から3
のようにマトリックスをナノ粒子,繊維で強化すること
により、高強度・高靭性セラミックスが得られる。ここ
で、マトリックスが金属の場合は、実施例6と同様にマ
トリックス成分を加熱し溶融させた金属を充填した後、
冷却することで可能となる。また、得られる複合材の密
度を向上させるために、静水圧加圧焼結も適用可能であ
る。
【0113】なお、繊維束の長さが比較的短い場合に
は、マトリックス成分のスラリーあるいは溶融金属に繊
維束を混合し、これを型内に押出し成形後、焼結するか
あるいは冷却固化することで、繊維束が三次元形状をも
って存在する繊維束強化複合材が作製できる。
【0114】(実施例12)繊維強化窒化珪素に関する
実施例を示す。まず、C繊維束の作製方法について説明
する。ピッチ系連続C繊維数本を一方向に配列し、フェ
ノール樹脂とエタノールを重量比で1:1に混合した溶
液を含浸させ、それを真空中において2000℃で1時間加
熱し、フェノール樹脂を固化させることにより、Cを媒
体としたC繊維束を得た。この際、用いるC繊維の本数
を変えることで、C繊維束の径を変えることができる。
この方法で得られた繊維束のC媒体の含有量は、径の大
きさに係らず約60vol% である。
【0115】次に、複合材の作製方法について説明す
る。平均粒径0.5μm のSi粉末70重量部と平均粒
径3μmのSiC粉末30重量部を、ライカイ機(自動
撹拌機)により乾式混合し、この混合粉末を所定量の有
機溶媒に混合してスラリー状にし、これをドクターブレ
ード法によりグリーンシート化した。上記で得られたC
繊維束を、乾燥したグリーンシートの上にできるだけ均
一に一方向に配列した。C繊維束を配列したグリーンシ
ートを、繊維束が同一方向に配向するように数段積層
し、積層方向に98MPaで加圧して成形体とした。得
られた成形体を窒素中で1400℃まで加熱し、反応焼
結窒化珪素結合SiC/C繊維束複合材が作製できた。
このときの焼結時の収縮率は0.2% 以下であった。
【0116】上記の方法により、繊維束の含有量および
繊維束の径を変えて焼結体を作製した結果を表9に示
す。また、SiC粉末の変わりにSiCウイスカを用いた
場合の実施例も合わせて表9に示す。
【0117】
【表9】
【0118】さらに、表9などの実験結果を整理すると
図15に示す範囲において、高強度かつ高靭性の複合体
を得ることができ、(3)式の範囲と一致することがわ
かった。
【0119】上記のC繊維束の含有量が約10vol% の
場合の反応焼結窒化珪素結合SiC/C繊維束複合材に
ついて、室温において3点曲げ強さを測定し、繊維束の
径と曲げ強さとの関係で整理した結果を図16に示す。
【0120】図16には比較のため、繊維束でない単繊
維を配向させた場合、常圧焼結窒化珪素/C繊維束複合
セラミックス(焼結助剤;MgO,Al23)の場合の
3点曲げ強さを併せて示す。
【0121】図16からC繊維束の径を大きくすること
によって複合材の強度を向上させることができ、常圧焼
結窒化珪素/C繊維束複合セラミックスよりも高い強度
が得られることがわかる。これは、常圧焼結窒化珪素/
C繊維束複合セラミックスでは、焼結時の18%の線収
縮によって繊維束とマトリックス間に応力が発生し、焼
結体中にクラックが入る、あるいは最終的に引張り応力
が焼結体中に残存し、このために強度が低くなってい
る。それに対して本発明の材料では、焼結時の線収縮率
が0.2% と小さいために、繊維束とマトリックス間に
応力が殆ど発生しないために高強度材料が得られる。ま
た、従来の束にしないで単繊維で配向した場合には、マ
トリックスと炭素繊維束との熱膨張係数差により、マト
リックスに引張り応力が残存し強度が低下する。
【0122】また高温強度をみると、C繊維束の径の大
きさに係らず、いずれも高い強度が得られた。これよ
り、室温においては繊維束の径により強度を向上させる
ことができ、高温になるにつれて繊維束の径の大きさに
係らず強度が高くなり、本材料が高温用構造材料として
適した特性を持つ複合材料が得られた。
【0123】なお、マトリックスに他の反応焼結窒化珪
素結合セラミックスを用いた場合にも、繊維束の径の大
きさと得られた複合材の強度との関係は、上記の場合と
同様の傾向になった。これは、繊維束の径が大きい方
が、繊維束とマトリックスとの熱膨張差による残留応力
を緩和する効果が大きくなることと、マトリックス/繊
維束界面の面積が小さくなり欠陥が少なくなるためと考
えられる。
【0124】上記と同様の製法により、SiC粉末に変
えてTiC,ZrC,B4C,AlN,TiN,BN,Z
rN,ZrB2,Al23,MgO,ムライト,ZrO2
を用いてC繊維束強化複合材の作製を試みた。その結
果、いずれの場合もC繊維束が一方向に配向した複合材
を容易に作製することができた。但しマトリックス成分
によっては、特に酸化物の場合、C繊維束と反応し繊維
束の特性劣化につながる場合があるので、繊維束表面に
はあらかじめ、上記実施例で示すようなコーティングを
施すことが望ましい。以上より、繊維束を用いることに
よって、セラミックスマトリックス中に繊維が一方向に
配向した複合材が比較的簡単に作製できることが実証さ
れた。
【0125】(実施例13)本発明に係る実施例13と
して、実施例12で示した以外の繊維束の作製例につい
て説明する。ここでは、媒体にC、およびSiC,Ti
Cを用いたC繊維束の場合を中心に述べる。
【0126】まず、ポリビニールアルコールを前駆体と
して、Cを媒体とするC繊維束の作製例を示す。連続C
繊維数本を一方向に配列し、ポリビニールアルコールと
温水を重量比で1:5に混合した溶液を含浸し、それを
大気中において80℃で2〜3時間乾燥した後さらに3
00℃で1時間加熱し、ポリビニールアルコールを固化
させることにより、Cを媒体としたC繊維束を得た。こ
の方法で得られた繊維束のC媒体の含有量は、径の大き
さに係らず20〜30vol% である。
【0127】次に、SiCを媒体としたC繊維束の作製
例を示す。連続C繊維数本を一方向に配列し、ポリカル
ボシランを含浸し、それを大気中において350℃で1
時間加熱し、ポリカルボシランを炭化させることによ
り、SiCを媒体としたC繊維束を得た。この方法で得
られた繊維束のSiC媒体の含有量は、径の大きさに係
らず約50vol% である。
【0128】さらに、TiC,SiCを媒体としたC繊
維束の作製例を示す。連続C繊維数本を一方向に配列
し、ポリチタノカルボシランを含浸し、それを真空中に
おいて1400℃で1時間加熱し、TiC,SiCを媒
体としたC繊維束を得た。この方法で得られた繊維束の
TiC,SiC媒体の含有量は、径の大きさに係らず約
30vol% である。
【0129】この他上記と同様に、B4C,BN,Si3
4,SiO2,TiO2,Al23,B23,Ta25
れぞれの前駆体を含浸し加熱することにより、それぞれ
を媒体成分としたC繊維以外の無機繊維束、すなわちS
iC,B,B(W芯),SiC(W芯),SiC(C
芯),Al23繊維の繊維束が作製できる。
【0130】なお、2種以上の繊維からなる繊維束も同
様に作製できる。また繊維束の作製は、上記で示したよ
うな前駆体を含浸し、加熱する方法のほか、媒体成分の
スラリー含浸、あるいは化学気相含浸などの方法でも可
能である。
【0131】以上示したC繊維以外の無機繊維束を用い
て、実施例12で示したような反応焼結窒化珪素複合セ
ラミックスマトリックスとした繊維束強化複合材を作製
したところ、いずれの場合も複合化が可能であり、繊維
が一方向に配向した複合材が比較的簡単に作製できるこ
とが確認された。その結果を表10に示す。
【0132】
【表10】
【0133】ここで、反応焼結窒化珪素/アルミナ繊維
束複合セラミックスの室温および1400℃における曲
げ強度を測定した。その結果、繊維束の熱膨張係数がマ
トリックスより大きい場合には、マトリックスには圧縮
応力が作用するために室温において高強度材料が得られ
る。1400℃では、圧縮応力が除去されるために強度
が通常に戻っている。したがって、繊維束の熱膨張係数
がマトリックスより大きい場合には、高温での使用より
も焼結温度以下での使用の方が適している。常圧焼結窒
化珪素でアルミナ繊維束複合材を作製しようとしたが、
焼結時の収縮による問題の他に、窒化珪素とアルミナが
高温1700℃から1800℃で反応し、良好な焼結体
に作製は出来なかった。
【0134】(実施例14)実施例12,13で作製し
た繊維束に対して、マトリックスとの反応を抑制するた
めの表面コーティングを施した例を示す。
【0135】コーティング法とコーティングの効果につ
いて、SiCを媒体としたSiC繊維束にBNをコーテ
ィングした場合を例に説明する。コーティング法として
は、化学気相蒸着法,ゾル−ゲル法,スラリー含浸法な
どが挙げられるが、ここではゾル−ゲル法により行っ
た。すなわち、SiCを媒体としたSiC繊維束表面に
BNをスプレーコーティングした。コーティング層の厚
さは約50μmである。このSiC繊維束を用いて反応
焼結窒化珪素結合SiCをマトリックスとした複合材
(SiC繊維束の含有量:約15vol% )を作製し、室
温での3点曲げ強さを測定した。繊維束の径が1.6mm
のとき、コーティングがない場合に曲げ強度は320M
Paであるのに対し、コーティングした場合には390
MPaであった。また、繊維束の径が5.0mm のとき、
コーティングがない場合に曲げ強度は410MPaであ
るのに対し、コーティングした場合には480MPaで
あった。いずれの場合も、コーティングを施した方が曲
げ強度の値は大きくなっている。これは、あらかじめ繊
維束表面にコーティング層を設けることにより、焼結時
のマトリックスと繊維束との反応を抑制することがで
き、繊維束の損傷あるいはマトリックス/繊維束界面の
欠陥を少なくする効果によるものと考える。
【0136】上記と同様の方法により、他の繊維束に対
するBN以外のコーティング、すなわちC,TiC,B
4C,SiC,BN,TiN,AlN,SiO2,TiO
2,ZrO2,Al23,ZnO,MgO,B23,Ta
25 のコーティングも可能であった。また、コーティ
ング方法としては、化学気相蒸着法、スラリー含浸法な
ども適用可能である。但し、コーティング成分として
は、マトリックス及び繊維束と反応性がないものが望ま
しい。
【0137】(実施例15)得られた繊維束強化複合材
の表面に、酸化物セラミックスをコーティングした例と
その効果について示す。ここでは、反応焼結窒化珪素結
合SiCマトリックスをC繊維束で強化した複合材の表
面に、ZrO2 をコーティングした例を中心に説明す
る。
【0138】作製した反応焼結窒化珪素結合SiC/C
繊維束強化複合材を、ZrO2 スラリー中に浸漬,乾燥
し、これを数回繰り返した後1400℃で1時間加熱
し、ZrO2 を焼結させる。このとき反応焼結窒化珪素
結合SiC/C繊維束強化複合材は、C繊維束が反応焼
結窒化珪素結合SiCマトリックスの表面外に露出して
いない構造が望ましい。これはC繊維束が酸化物である
ZrO2 と反応することを防ぐためである。上記の方法
により、厚さ0.5mmのZrO2コーティング層を得た。
【0139】得られたZrO2 コーティング反応焼結窒
化珪素結合SiC/C繊維束強化複合材を、コーティン
グなしの反応焼結窒化珪素結合SiC/C繊維束強化複
合材とともに大気中、1500℃において100時間加
熱し、暴露試験を行った。その結果、コーティングなし
の反応焼結窒化珪素結合SiC/C繊維束強化複合材は
4.3%重量が減少したのに対し、ZrO2コーティング
を施した場合は重量減少が0.1% であった。これは、
酸化物セラミックスコーティングにより、表面の酸化が
抑制された効果によるものである。また、酸化試験後の
試料について室温で3点曲げ強さを測定したところ、コ
ーティングなしの場合は230MPaであったのに対
し、ZrO2 コーティングを施した場合は450Mpa
であった。これにより、高温下においても特性を劣化さ
せることなく、安定して使用できる反応焼結窒化珪素結
合SiC/C繊維束強化複合材が得られることが実証さ
れた。
【0140】上記のほか、SiO2,Al23,B23
をコーティングした場合でも同様の効果が得られた。ま
たコーティング法としては、上記のスラリーを用いた方
法のほか、化学気相蒸着法,ゾル−ゲル法なども可能で
ある。さらにこれらのコーティングは、反応焼結窒化珪
素結合SiC以外のマトリックス、あるいはC繊維束以
外の無機繊維束からなる複合材に対しても可能であっ
た。
【0141】なお、マトリックスとコーティング層との
熱膨張差によるコーティング層の破損を防止するため
に、両者の間にマトリックス成分とコーティング成分が
徐々に、あるいは段階的に変化する中間層を設けても良
い。
【0142】(実施例16)マトリックス中に無機繊維
束が二方向に配向した繊維束強化複合材の作製例につい
て示す。ここでは、反応焼結窒化珪素結合SiCマトリ
ックス中に、Cを媒体としたC繊維束が二方向に配向し
た反応焼結窒化珪素結合SiC/C繊維束強化複合材の
作製方法を中心に説明する。
【0143】第1実施例と同様の方法により、C繊維束
と反応焼結窒化珪素結合SiCマトリックス成分のグリ
ーンシートを作製する。得られたグリーンシート上にC
繊維束をできるだけ均一に一方向に配列し、それをC繊
維束が交互に直交するように数段積層し、積層方向に9
8MPaで加圧し、成形体とした。得られた成形体をア
ンモニア中1400℃まで加熱し、窒化反応焼結を行
い、反応焼結窒化珪素結合SiC/C繊維束強化複合材
を作製した。
【0144】同様の方法により、他のマトリックス成分
の場合にも、また他の繊維束の場合にも、マトリックス
中に繊維束が二方向に直交する繊維束強化複合材を作製
することができる。
【0145】(実施例17)マトリックス中に繊維束が
三次元形状をもって存在する繊維束強化複合材の作製例
について示す。ここでは、SiC繊維強化・TiN粒子
分散窒化珪素マトリックス中に、Cを媒体としたC繊維
束が三次元形状をもって存在する反応焼結窒化珪素/C
繊維束強化複合材の作製方法を中心に説明する。
【0146】実施例1および実施例5の方法により、C
繊維束とSiC繊維強化・TiN粒子分散窒化珪素マト
リックス成分のスラリーを作製する。この際、C繊維の
束にフェノール樹脂を含浸した後、所望の形状に型枠な
どを用いて成形した上で加熱・炭化させることによっ
て、所望の形状を有するC繊維束を得た。得られたC繊
維束を金型内に固定し、スラリーを流し込み大気中で乾
燥する。これを数回繰り返し、マトリックス成分を十分
充填した上で金型から出し、窒素と水素(3%)混合ガ
ス中、1400℃まで窒化処理を行いSiC繊維強化・
TiN粒子分散窒化珪素/C繊維束強化複合材を作製し
た。
【0147】同様の方法により、他のマトリックス成分
の場合にも、また他の繊維束の場合にも、マトリックス
中に繊維束が三次元形状をもって存在する繊維束強化複
合材を作製することができる。
【0148】(実施例18)PAN系連続C繊維20本
を一方向に配列し、フェノール樹脂とエタノールを重量
比で1:1に混合した溶液を含浸させ、それを真空中に
おいて2000℃で1時間熱し、フェノール樹脂を固化
させることにより、Cを媒体としたC繊維束(径2mm)
を得た。この方法で得られた繊維束中のC媒体の含有量
は、約60vol% である。
【0149】次に、マトリックスとなる複合材は実施例
2の方法により作製した。上記で得られたC繊維束を、
乾燥したグリーンシートの上にできるだけ均一に一方向
に配列した。C繊維束を配列したグリーンシートを、繊
維束が同一方向に配向するように数段積層し、積層方向
に98MPaで加圧して成形体とした。C繊維束のマト
リックス中の含有量が20vol% となるように配向し
た。得られた成形体を窒素中で1600℃まで加熱し、
複合析出反応させた後に、圧力100kg/cm2,1750
℃で1時間緻密化処理した。これにより、曲げ強度16
10MPa,破壊靭性値18MPa√mの特性を有する
SiC繊維強化・TiN粒子分散窒化珪素/炭素繊維束複
合セラミックスが得られた。
【0150】(実施例19)本発明に係る繊維束強化複
合材を適用した部品として、ガスタービン動翼の作製例
について説明する。まず、動翼の形状を図17に示す。
図18は、本発明に係る複合材で動翼を作製する場合の
作製方法例を示す。本実施例ではマトリックスに反応焼
結窒化珪素結合SiCセラミックス,繊維束としてCを
媒体としたC繊維束を用いた。
【0151】図18の構成は、8はC繊維束を型取るた
めの動翼の断面形状をもつ金型、9はフェノール樹脂と
エタノールを1:1に混合した溶液を含浸したC繊維
束、10は9を加熱することによりフェノール樹脂を固
化させたC繊維束、11は10のC繊維束にマトリック
ス成分のスラリーを含浸し、動翼の形状を得るための金
属割型、12は本作製方法で得られる動翼の複合析出セ
ラミックスマトリックスである。フェノール樹脂とエタ
ノールの混合溶液を含浸したC繊維束9を、動翼の断面
形状をもつ金型8に巻きつけた状態で加熱し、フェノー
ル樹脂を固化させることにより、動翼の断面形状をもつ
C繊維束10が得られる。C繊維束10を金属割型11
内に並べ固定し、マトリックス成分のスラリーを充填し
た後加熱して乾燥する。スラリー充填と乾燥を数回繰り
返し、マトリックス成分を十分含浸させた後、複合析出
反応焼結することにより、複合析出セラミックスマトリ
ックス12中にC繊維束10が一方向に配向した動翼を
得ることができる。
【0152】図19は、上記で得られた動翼をガスター
ビンの金属ディスクに取り付ける場合の取り付け構造例
を示す。図19の構成は、13は上記で得られた動翼、
14はガスタービンの金属製ディスク、15は動翼13
とディスク14の間に介する金属製シャンク、16は動
翼13とディスク14あるいはシャンク15の間に介す
る金属パッド、17は動翼13とシャンク15の間に介
するセラミック嵌合層である。
【0153】図19において、動翼13はディスク14
に金属パッド16を介して、嵌合構造により直接取り付
けられるが、必要に応じて動翼13とディスク14の間
に耐熱金属製シャンク15を介し、金属ディスクを高温
から保護することができる。動翼13とシャンク15の
間には、金属パッド16やセラミック嵌合層17が介さ
れる。
【0154】なお、得られた動翼には、必要に応じて耐
酸化性を向上させるために、表面に酸化物コーティング
を施すのが望ましい。
【0155】以上示した方法は、本実施例以外のマトリ
ックス成分の場合にも、また他の繊維,媒体を用いる場
合にも適用でき、形状は動翼に限らず、静翼,燃焼器な
ど様々な形状が作製できる。
【0156】(実施例20)実施例12で得られた窒化
珪素結合SiC/炭素繊維束複合材をポンプ用の軸受材
に使用した。摺動面に炭素繊維の端部がでるような構造
とした。速度10m/s,面圧50kg/cm2 で摺動試験
した結果、炭素繊維が潤滑効果をもたらし、摺動特性に
優れていることがわかった。このように、炭素繊維束を
用いることにより、本発明の複合材は摺動特性にも優れ
ていることがわかった。特に、炭素繊維束の摺動面の露
出量は10から50vol% にすると摩擦係数が小さく、
耐摩耗性に優れていることが分かった。
【0157】(実施例21)数種の無機短繊維束の作製
例を示す。
【0158】まず、Cを集束剤(媒体)としたC短繊維
束の作製方法を説明する。ピッチ系の連続C繊維数千本
を一方向に配列し、フェノール樹脂とエタノールを重量
比で1:1に混合した溶液を含浸させ、それを大気中に
おいて300℃で1時間加熱し、フェノール樹脂を固化
させることにより、Cを媒体とした連続C繊維束を得
た。得られた連続C繊維束を所望の長さに切断すること
で、C短繊維束が得られる。この際、用いるC繊維の本
数を変えることで、C短繊維束の径を変えることができ
る。本実施例では、一束あたり1,000本から48,0
00本のC繊維を用いた。この方法で得られた短繊維束
のC媒体の含有量は、径の大きさに係らず約50〜60
vol% である。なお、用いるC繊維としては、ピッチ系
のほか、PAN(ポリアクリロニトリル)系やセルロ−
ス系でも同様に作製できる。
【0159】次に、上記以外の方法による、Cを媒体と
したC短繊維束の作製方法を説明する。ここでは、C媒
体の前駆体として、ポリビニールアルコールを用いた。
ピッチ系の連続C繊維数千本を一方向に配列し、ポリビ
ニールアルコールと温水を重量比で1:5に混合した溶
液を含浸し、それを大気中において80℃で2〜3時間
乾燥した後、さらに300℃で1時間加熱し、ポリビニ
ールアルコールを固化させ、それを切断することによ
り、Cを媒体としたC短繊維束を得た。この方法で得ら
れた短繊維束のC媒体の含有量は、径の大きさに係らず
20〜30vol%である。なお、以上の2つの方法で
は、加熱温度が300℃であり、前駆体の炭化は不完全
であるが、複合化の際の焼結過程で充分に炭化できる。
また、媒体の含有量は、前駆体溶液の濃度、あるいは含
浸回数を変えることにより調整することができる。
【0160】次に、SiCを集束剤としたC短繊維束の
作製方法を示す。ピッチ系の連続C繊維数千本を一方向
に配列し、ポリカルボシランを含浸し、それを大気中に
おいて350℃で1時間加熱後、切断することにより、
SiCを媒体としたC短繊維束を得た。350℃の加熱
では、ポリカルボシランの熱分解が不十分で完全なSi
Cには変化しないが、複合化の際の焼結過程でSiCに
変化させることができる。この方法で得られた短繊維束
のSiC媒体の含有量は、径の大きさに係らず約50vo
l% である。なお、媒体の含有量は、前駆体溶液の濃
度、あるいは含浸回数を変えることにより調整すること
ができる。
【0161】次に、TiC,SiCを集束剤としたC短
繊維束の作製方法を示す。ピッチ系の連続C繊維数千本
を一方向に配列し、ポリチタノカルボシランを含浸し、
それを真空中において1400℃で1時間加熱後、切断
することにより、TiC,SiCを媒体としたC短繊維
束を得た。この方法で得られた短繊維束のTiC,Si
C媒体の含有量は、径の大きさに係らず約30vol% で
ある。
【0162】さらに、B23を媒体としたAl23短繊
維束の作製方法を示す。連続Al2O3繊維数千本を一方向
に配列し、式 B(O−nC49)3 で表されるBのアル
コキシドに浸漬した。
【0163】これをアルコール中で水と反応させ、その
後100℃で10時間熱処理後、切断することにより、
23を集束剤としたAl23短繊維束を作製した。こ
の方法で得られた短繊維束の、B23集束剤の含有量
は、径の大きさに係らず約10vol% である。但し、媒
体の含有量は、アルコキシドへの浸漬及び熱処理の回数
を変えることにより調整することができる。
【0164】この他上記と同様に、それぞれの前駆体を
含浸し加熱することにより、それぞれを媒体成分とした
C繊維あるいはAl23繊維以外の無機短繊維束、すな
わちSiC,B,B(W芯),SiC(W芯),SiC
(C芯),Si34繊維の短繊維束が作製できる。ただ
し、繊維と媒体の組合せにおいて、非酸化物と酸化物の
組合せでは、短繊維束の作製は可能であるものの、後の
焼結などの複合化過程において高温に加熱され、両者の
間での反応が大きく、短繊維束の特性が劣化する恐れが
あるため、非酸化物と非酸化物、あるいは酸化物と酸化
物の組合せが望ましい。しかしながら、繊維表面にあら
かじめBNなどの反応性の少ない成分をコーティングす
ることにより、ある程度反応を防ぐことができる。
【0165】本実施例で作製した上記以外の短繊維束の
無機繊維と媒体との代表的な組合せの例を表11に示
す。
【0166】
【表11】
【0167】(実施例22)まず、SiCセラミックス
をC短繊維束で一方向に強化したSiC/C短繊維束強
化セラミックスの作製方法について説明する。なお、C
短繊維束の媒体はCである。焼結助剤であるBeO粉末
2wt%をあらかじめ乾式混合したSiC粉末,上記C
短繊維束、及び所定量の有機溶媒(バインダー)をボー
ルミル混合してスラリーを作製する。この際、C短繊維
束はボールミル混合により崩れる恐れがあるので、あら
かじめ真空中1000℃以上で加熱して、C媒体を炭化
させておくと良い。得られたスラリーを、押出し口に格
子を設けて型内に押出し成形し、これを大気中において
60℃で3〜4時間乾燥して成形体とした。得られた成
形体をホットプレスにより真空中、2100℃で1時間
の加熱,短繊維束の配向方向に垂直に30MPaの加圧
で焼結を行い、SiC/C短繊維束強化セラミックスが
作製できた。
【0168】次に、MgOセラミックスをAl23短繊
維束で一方向に強化したMgO−Al23短繊維束強化
セラミックスの作製方法について説明する。なお、Al2O
3短繊維束の媒体はB23である。上記の例と同様に、
MgO粉末,Al23短繊維束及び所定量のバインダー
を混合してスラリー状にし、押出し口に格子を設けて型
内に押出し成形し、大気中において60℃で3〜4時間
乾燥して成形体とした。得られた成形体をホットプレス
により大気中、1250℃で1時間の加熱,短繊維束の
配向方向に垂直に30MPaの加圧で焼結を行い、Mg
O−Al23短繊維束強化セラミックスが作製できた。
【0169】以上より、短繊維束とマトリックス成分の
スラリーを押出し成形することによって、セラミックス
マトリックス中に短繊維束が一方向に配向した短繊維束
強化セラミックスが比較的簡単に作製できる。
【0170】(実施例23)実施例21で作製した無機
短繊維束がマトリックス中に二次元に分散した短繊維束
強化セラミックスの作製例を示す。
【0171】まず、SiCセラミックスをC短繊維束で
二次元方向に強化したSiC/C短繊維束強化セラミッ
クスの作製方法について説明する。なお、C繊維束の媒
体はCである。
【0172】焼結助剤であるBeO粉末2wt%をあら
かじめ乾式混合したSiC粉末,上記C短繊維束、及び
所定量の有機溶媒(バインダー)をボールミル混合して
スラリーを作製する。この際、C短繊維束はボールミル
混合により崩れる恐れがあるので、あらかじめ真空中、
1000℃以上で加熱して、C媒体を炭化させておくと
良い。得られたスラリーを用いてドクターブレード法に
より、C短繊維束が二次元に配向したグリーンシートを
作製する。このグリーンシートを乾燥後、数段積層し、
それを大気中において100℃で1分間、積層方向に1
5MPaの加圧をして成形体とした。得られた成形体を
ホットプレスにより真空中、2100℃で1時間の加
熱,グリーンシートの積層方向に30MPaの加圧で焼
結を行い、SiC/C短繊維束強化セラミックスが作製
できた。
【0173】次に、ZrB2セラミックスをC短繊維束
で二次元方向に強化したZrB2−C短繊維束強化セラ
ミックスの作製方法について説明する。なお、C短繊維
束の媒体はSiCである。ZrB2 粉末,C短繊維束及
び所定量のバインダーをボールミル混合してスラリーを
作製する。この際、C短繊維束はボールミル混合により
崩れる恐れがあるので、あらかじめ真空中、1300℃
で加熱して、SiC媒体を焼成させておくと良い。得ら
れたスラリーを用いてドクターブレード法により、C短
繊維束が二次元に配向したグリーンシートを作製する。
このグリーンシートを乾燥後、数段積層し、それを大気
中において100℃で1分間、積層方向に15MPaの
加圧をして成形体とした。得られた成形体をホットプレ
スにより真空中、1900℃で1時間の加熱,グリーン
シートの積層方向に30MPaの加圧で焼結を行い、Z
rB2−C短繊維束強化セラミックスが作製できた。
【0174】なお、グリーンシートを作製する際、ブレ
ードのギャップ部分に縦方向の格子を設けることで、短
繊維束が一方向に配向したグリーンシートが作製でき、
これを短繊維束が一方向に配向するように積層すれば、
一方向に強化した短繊維束強化セラミックスが得られ、
また、短繊維束が二方向に交互に交差するように積層す
れば、二方向に強化した短繊維束強化セラミックスが得
られる。
【0175】以上より、短繊維束とマトリックス成分の
スラリーを用いてグリーンシートを作製し、これを積層
することによって、セラミックスマトリックス中に短繊
維束が二次元方向に配向した短繊維束強化セラミックス
が作製できる。
【0176】(実施例24)実施例21で作製した無機
短繊維束がマトリックス中にランダムに分散した短繊維
束強化セラミックスの作製例を示す。
【0177】まず、SiCセラミックスをC短繊維束で
ランダム方向に強化したSiC/C短繊維束強化セラミ
ックスの作製方法について説明する。なお、C繊維束の
媒体はCである。焼結助剤であるBeO粉末2wt%を
あらかじめ乾式混合したSiC粉末,上記C短繊維束、
及び所定量の有機溶媒(バインダー)をボールミル混合し
てスラリーを作製する。この際、C短繊維束はボールミ
ル混合により崩れる恐れがあるので、あらかじめ真空
中、1000℃以上で加熱して、C媒体を炭化させてお
くと良い。得られたスラリーを型に入れ、60℃で乾燥
して成形体とした。得られた成形体を真空中、2100
℃で1時間の静水圧加圧焼結を行い、SiC/C短繊維
束強化セラミックスが作製できた。
【0178】次に、Si34セラミックスをC短繊維束
でランダム方向に強化したSi34−C短繊維束強化セ
ラミックスの作製方法について説明する。なお、C短繊
維束の媒体はSiCである。金属Si粉末とSiC粉末
を重量比で2:3に混合し、これに純水ほか所定量のバ
インダー、及びC短繊維束を添加後、ポットミルにより
24時間混合しスラリーとした。吸水性をもつ石膏型に
このスラリーを鋳込み乾燥させて成形体とした。この成
形体を0.88MPa の窒素ガス雰囲気中で加熱焼結
後、炉冷した。加熱温度と保持時間は、1100℃×1
0hr,1200℃×20hr,1300℃×10h
r,1350℃×5hrと多段にし、金属SiがSi3
4に変化するのを制御した。これにより、C短繊維束
がランダム方向に配向したSi34−C短繊維束強化セ
ラミックスが作製できた。
【0179】以上より、短繊維束とマトリックス成分の
スラリーを型に入れ、乾燥し、成形した後焼結すること
により、セラミックスマトリックス中に短繊維束がラン
ダムに配向した短繊維束強化セラミックスが比較的簡単
に作製できる。
【0180】なお、マトリックスあるいは短繊維束の成
分によっては、両者の間で反応が生じ、短繊維束の特性
劣化につながる場合があるので、マトリックスと短繊維
束の成分の組合せは、酸化物と酸化物、あるいは非酸化
物と非酸化物が望ましい。しかしながら、短繊維束表面
にあらかじめ、第6実施例で示すようなコ−ティングを
施せば反応を抑制することができる。
【0181】実施例22,23,24で作製した上記以
外の代表的な短繊維束強化セラミックスのマトリックス
と短繊維束との組合せを表12に示す。
【0182】
【表12】
【0183】(実施例25)実施例22で作製した短繊
維束強化セラミックスの機械的特性について検討した。
【0184】まず、マトリックスがSiCで、C短繊維
束が一方向に分散したSiC/C短繊維束強化セラミッ
クスについて、室温及び高温(真空中、1500℃)に
おいて3点曲げ強さを測定した。このとき、C短繊維束
の長さを約20mm,含有量を約10vol% とし、短繊維
束の径を変えたいくつかの試料について測定を行った。
図21に室温での3点曲げ強さ測定結果を示す。
【0185】図21には比較のため、SiC単体の3点
曲げ強さ、及びC短繊維が一方向に分散したSiCの3
点曲げ強さを併せて示す。図21からわかるように、C
繊維束の径を大きくすることによって複合材の強度を向
上させることができ、短繊維を分散させた場合に比べて
大きな強度が得られる。SiC単体と比較しての強度低
下を少なくすることができる。これは、C繊維束とSi
Cマトリックスとの熱膨張差により焼結後は残留応力
(SiCに引張応力)が残るが、繊維束の径が大きいほ
ど間に存在するマトリックス量は多くなり、上記の引張
残留応力を緩和する効果が大きくなるためと考えられ
る。これより室温においては、短繊維束を用いて束の径
を調整することにより、強度を向上させることができ
る。
【0186】なお、マトリックスに他のセラミックスを
用いた場合にも、またC短繊維束以外の無機短繊維束を
用いた場合にも、短繊維束の径の大きさと得られた短繊
維束強化セラミックスの強度との関係は、上記のSiC
/C短繊維束強化セラミックスの場合と同様の傾向にな
った。この場合も同様に、短繊維束の径が大きい方が、
短繊維束とマトリックスとの熱膨張差による残留応力を
緩和する効果が大きくなることと、マトリックス/短繊
維束界面の面積が小さくなり欠陥が少なくなるためと考
えられる。
【0187】上記のSiC/C短繊維束強化セラミック
スの曲げ強さ測定結果から、C短繊維束の径が約0.5m
m の場合にはC短繊維分散SiCより強度が小さく、こ
の径の大きさでは強度向上の効果がないとも考えられる
が、他の成分系、例えば図22に示すようなSiCマト
リックスにSiC短繊維束(媒体はC)が一方向に分散
したSiC−SiC短繊維束強化セラミックスでは、短
繊維束の径がかなり小さい範囲から強度向上の効果がみ
られる例がある。従って、短繊維束の径の範囲としては
0.05〜10mm が適用できるが、実際の作製上の作業
性や後述する破壊靭性に対する効果などを考慮すると、
好ましくは1〜6mmが望ましい。
【0188】次に、上記で示したSiC/C短繊維束強
化セラミックスと同様の試料を用いて、高温(真空中、
1500℃)において3点曲げ強さを測定した結果を、
図23に示す。図21の室温での曲げ強さに比べ高温強
度が高くなる傾向がみられ、また強度のバラツキは小さ
くなっている。これは、高温においてはマトリックスに
生ずる引張残留応力が緩和されるため、高温強度は室温
よりも比較的高くなり、強度が安定したものと考えられ
る。このように、本材料は、バラツキの少ない安定した
強度をもち、高温になるにつれて強度が高くなるため高
温用構造材料として適した特性を持つ複合材料である。
【0189】次に、室温での3点曲げ強さを測定した際
の、荷重−変位曲線の模式図を、図24に示す。比較の
ために、C短繊維が一方向に分散したSiCの場合につ
いても併せて示す。短繊維束を用いた場合は、短繊維を
分散させた場合に比べて非線形的破壊形態が顕著にみら
れ、得られた短繊維束強化セラミックスは亀裂の進展を
抑制して急激な破壊を生じない材料であることがわか
る。
【0190】そこで上記と同様の試料について、破壊靭
性を測定した結果を図25に示す。比較のために、C短
繊維が一方向に分散したSiCの場合についても併せて
示す。短繊維束を用いた場合には短繊維を分散させた場
合に比べて靭性が大きく、短繊維束の径の大きさと共に
靭性が向上していることがわかる。これは短繊維がマト
リックスと反応して繊維特性が劣化するのに対して、短
繊維束の場合には反応は束の周辺部分に留まり、繊維特
性が維持され、短繊維束内における繊維の引き抜けや亀
裂の偏向などが生じているためと考えられる。
【0191】以上示した特徴は、他の成分からなるセラ
ミックスマトリックスまたは短繊維束をもつ短繊維束強
化セラミックスでも同様にみられ、本発明の目的に即し
た材料であることが実証された。
【0192】(実施例26)実施例21で作製した短繊
維束に対して、マトリックスとの反応を抑制するための
表面コーティングを施した例を示す。
【0193】コーティング法とコーティングの効果につ
いて、Cを媒体としたC短繊維束にSiCをコーティン
グした場合を例に説明する。コーティング法としては、
化学気相蒸着法,ゾル−ゲル法,スラリ−含浸法などが
挙げられるが、ここではゾル−ゲル法により行った。す
なわち、Cを媒体としたC短繊維束をポリシラン中に浸
漬,乾燥し、これを数回繰り返した後熱処理(真空中、
1200℃)して表面にSiCをコーティングした。コ
ーティング層の厚さは約50μmである。なお、コーテ
ィングは切断前の連続繊維束の状態でも可能であるが、
切断面にもコーティングするためには切断後の短繊維束
の状態で行った。
【0194】このC短繊維束を用いてSiCをマトリッ
クスとし、C短繊維束を一方向に分散させたSiC/C
短繊維束強化セラミックス(C短繊維束の含有量:約1
0vol% )を作製し、室温での3点曲げ強さを測定し
た。短繊維束の径が0.5mmのとき、コーティングがな
い場合に曲げ強さは260MPaであるのに対し、コー
ティングした場合には290MPaであった。また、短
繊維束の径が1.7mmのとき、コーティングがない場合
に曲げ強さは450MPaであるのに対し、コーティン
グした場合には470MPaであった。いずれの場合
も、コーティングを施した方が曲げ強さの値は大きい。
これは、あらかじめ短繊維束表面にコーティング層を設
けることにより、焼結時のマトリックスと短繊維束との
反応を抑制することができ、短繊維束の損傷あるいはマ
トリックス/短繊維束界面の欠陥を少なくする効果によ
るものと考える。
【0195】上記と同様の方法により、他の短繊維束に
対するSiC以外のコーティング、すなわちC,Ti
C,B4C,BN,TiN,Si34,AlN,SiO2,
TiO2,ZrO2,Al23,ZnO,MgO,B
23,Ta25 のコーティングも可能であった。ま
た、コーティング方法としては、化学気相蒸着法,スラ
リー含浸法なども適用可能である。但し、コーティング
成分としては、マトリックス及び短繊維束と反応性がな
いものが望ましい。本実施例で行った、短繊維束への代
表的なコーティング例を表13に示す。
【0196】
【表13】
【0197】(実施例27)本発明に係る短繊維束強化
セラミックスを適用した部品例として、ガスタービン動
翼の作製例について説明する。図26には、本発明に係
る短繊維束強化セラミックスで動翼を作製する場合の作
製方法例を示す。本実施例ではマトリックスにSiCセ
ラミックス,焼結助剤にBeO,短繊維束としてCを媒
体としたC短繊維束を用いた。
【0198】図26の構成は、18はC短繊維束とマト
リックス成分のスラリーを注入し、動翼の形状を得るた
めの金属割型、19は本作製方法で得られる動翼のSi
Cマトリックス、20は本作製方法で得られる動翼に分
散されるC短繊維束である。C短繊維束,SiC粉末、
及びバインダーを混合してスラリーを作製し、このスラ
リーを押出し口に格子を設けて金属割型18に注入す
る。これを乾燥した後、金属割型18から取り出して静
水圧加圧焼結することにより、SiCマトリックス19
中にC短繊維束20がほぼ一方向に分散した動翼を得る
ことができる。
【0199】以上示した方法は、他のマトリックス成分
の場合にも、また他の短繊維束,媒体を用いる場合にも
適用でき、形状は動翼の形状に限らず様々な形状が作製
できる。
【0200】
【発明の効果】本発明では、セラミックスマトリックス
中に分散させる短繊維およびナノサイズ粒子を反応によ
り析出させるため、出発原料サイズに関係なく微細化で
き、出発原料に短繊維を用いないため公害上の問題を解
決できる。さらに、無機化合物の媒体を用いて複数本の
連続無機繊維を一方向に束ねた繊維束を用いることによ
り、製造上の安全性が向上し、セラミックスの靭性を大
幅に向上できる。この結果、セラミックス部品の信頼性
が向上し、ガスタービン,内燃機関,核融合炉,航空
機,宇宙機器種プラントの部品,エンジンなどの機構部
品、特にガスタービン部品,内燃機関部品,核融合炉部
品,摺動部材,耐熱部材,構造部材への適用が容易に可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】媒体成分がマトリックスと異なる場合の複合構
造例の模式図。
【図2】媒体成分がマトリックス成分と同じ場合の複合
構造例の模式図。
【図3】SiCマトリックス−C繊維束強化複合材の繊
維束径と含有量との関係図。
【図4】Si34マトリックス−C繊維束強化複合材の
繊維束径と含有量との関係図。
【図5】ZrB2マトリックス−C繊維束強化複合材の
繊維束径と含有量との関係図。
【図6】MgOマトリックス−Al23繊維束強化複合
材の繊維束径と含有量との関係図。
【図7】SiCマトリックス−C繊維束強化複合材の3
点曲げ強さを示す特性図。
【図8】Cuマトリックス−C繊維束強化複合材の繊維
束径と含有量との関係図。
【図9】Tiマトリックス−SiC繊維束強化複合材の
繊維束径と含有量との関係図。
【図10】Cuマトリックス−C繊維束強化複合材の引
張り強さを示す特性図。
【図11】SiCマトリックス−C繊維束強化複合材の
破壊靭性値を示す特性図。
【図12】SiC繊維束の製造工程。
【図13】SiC/C繊維束強化複合材の作製方法を示
す説明図。
【図14】SiC/C繊維束強化複合材の高温における
3点曲げ強さを示す特性図。
【図15】窒化珪素結合SiC/C繊維束強化複合材の
繊維束の含有量に対する最適な繊維束の径を示す特性
図。
【図16】炭素繊維束強化窒化珪素結合SiCセラミッ
クスの室温における3点曲げ強さを示す特性図。
【図17】ガスタービン動翼の形状を示す模式図。
【図18】SiC/C繊維束強化複合材で動翼を作製す
る場合の作製方法を示す説明図。
【図19】作製した動翼をガスタービンの金属ディスク
に取り付ける取付け構造図。
【図20】析出複合セラミックスマトリックス−C繊維
束強化複合材の構造例の模式図。
【図21】SiC/C短繊維束強化セラミックスの室温
における3点曲げ強さとC短繊維束外径との関係を示す
特性図。
【図22】SiC−SiC短繊維束強化セラミックスの
室温における3点曲げ強さとC短繊維束外径との関係を
示す特性図。
【図23】SiC/C短繊維束強化セラミックスの高温
(真空中、1500℃)における3点曲げ強さとC短繊
維束外径との関係図。
【図24】SiC/C短繊維束強化セラミックスの曲げ
試験時の荷重−変位曲線の模式図。
【図25】SiC/C短繊維束強化セラミックスの破壊
靭性値とC繊維束外径との関係図。
【図26】SiC/C短繊維束強化セラミックスのガス
タービン動翼の製造工程例のフロー図。
【符号の説明】
1…aという成分から成るマトリックス、2…bという
成分から成る無機繊維束、3…cという成分からなる媒
体、4…無機繊維束、5…bという成分からなる媒体、
6…aという成分から成る無機繊維、7…aという成分
からなる媒体、8…金型、9…フェノール樹脂含浸後の
C繊維束、10…フェノール樹脂炭化後のC繊維束、1
1…金属割型、12…SiCマトリックス、13…動
翼、14…ディスク、15…シャンク、16…パッド、
17…嵌合層、18…金属割型、19…SiCマトリッ
クス、20…C短繊維束。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 1/09 G F01D 5/28 C04B 35/52 E 35/58 102 M (72)発明者 金井 恒行 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内 (72)発明者 沢井 裕一 茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株 式会社日立製作所日立研究所内

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セラミックスまたは金属を有する材料が無
    機繊維束で強化されていることを特徴とする繊維強化複
    合材。
  2. 【請求項2】請求項1に記載のセラミックスが、前記無
    機繊維束で強化され、マトリックスとなるセラミックス
    の熱膨張係数をαm,前記無機繊維束の熱膨張係数をαf
    とするとき、αm>αfであって、前記無機繊維束の径が
    0.05mm 以上で、かつ前記無機繊維束の径が次式の範
    囲であることを特徴とする繊維強化複合材。 D′−0.5≦D≦D′+3.0 …(1) 但し、D:繊維束の径(mm) D′=(0.011V−0.023)×Δα×106 (V
    =3〜30) D′=(0.0375V−0.818)×Δα×106(V
    =30〜60) V :繊維束の含有量(vol%) Δα:マトリックスセラミックスと繊維束との熱膨張係
    数差(/℃)
  3. 【請求項3】請求項1に記載のセラミックスが、前記無
    機繊維束で強化され、マトリックスとなるセラミックス
    の熱膨張係数をαm,前記無機繊維束の熱膨張係数をαf
    とするとき、αm≦αfであって、前記無機繊維束の径が
    0.05mm 以上であることを特徴とする繊維強化複合
    材。
  4. 【請求項4】請求項1に記載の前記金属が、前記無機繊
    維束で強化され、前記無機繊維束の径が次式の範囲であ
    ることを特徴とする繊維強化複合材。 0.05≦D≦D′+5.0 …(2) 但し、D:繊維束の径(mm) D′=(0.008V−0.1)×Δα×106 (V=
    3〜40) D′=(0.026V−0.776)×Δα×106(V=
    40〜60) V :繊維束の含有量(vol%) Δα:マトリックス金属と繊維束との熱膨張係数差(/
    ℃)
  5. 【請求項5】請求項1に記載の前記無機繊維束は、アス
    ペクト比が1200以上で20本以上の無機繊維が配向
    した繊維群であり、マトリックス中において該繊維群は
    該無機繊維が凝集した形態で存在し、かつ該繊維群は分
    散していることを特徴とする繊維強化複合材。
  6. 【請求項6】請求項1に記載の前記連続無機繊維束は、
    径が10μmから2000μmのSiC繊維,C繊維,
    Si34繊維,B繊維,B(W芯)繊維,SiC(W芯)繊
    維,SiC(C芯)繊維,Al23繊維の少なくとも1種
    以上からなる連続無機単繊維を、セラミックスマトリッ
    クス成分と異なるC,SiC,Si34,SiO2,A
    lN,Al23,BN,B4C,TiC,TiO2,B2
    3,Ta25の少なくとも1種以上からなる媒体によ
    り結束されていることを特徴とする繊維強化複合材。
  7. 【請求項7】請求項1に記載の前記連続無機繊維束は、
    その径が0.05mm〜10.0mm,セラミックスマトリッ
    クス中の含有量が3〜60vol% であることを特徴とす
    る繊維強化複合材。
  8. 【請求項8】請求項1に記載の前記連続無機繊維束は、
    表面がSiC,C,TiC,B4C,BN,TiN,Si
    34,AlN,SiO2,TiO2,ZrO2,Al
    23 ,ZnO,MgO,B23,Ta25を有する成
    分がコーティングされていることを特徴とする繊維強化
    複合材。
  9. 【請求項9】請求項1に記載の前記金属は、Al,C
    u,Mo,Ti,Mg,Al系合金,Cu系合金,Cr
    系合金,Ni系合金,Ti3Al,Nb3Al,Ni3
    l,Mo3Al,Zr5Al3,Ti5Si3 ステンレス鋼
    の少なくとも1種以上からなることを特徴とする繊維強
    化複合材。
  10. 【請求項10】請求項1に記載の前記セラミックスが、
    Si,Al,Cr,Ti,Zr,Mg,B,Yの窒化
    物,炭化物,酸化物,炭窒化物,酸窒化物,硼化物の少
    なくとも1種以上からなることを特徴とする繊維強化複
    合材。
  11. 【請求項11】請求項1に記載の前記セラミックスが、
    SiC,TiC,ZrC,Si34,AlN,TiN,
    BN,ZrN,ZrB2,TiB2,CrB2,Al23
    MgO,ムライト,ZrO2 の少なくとも1種以上から
    なることを特徴とする繊維強化複合材。
  12. 【請求項12】請求項1に記載の前記セラミックスは、
    セラミックスマトリックスの粒子内および粒界に化学組
    成の異なる粒子が分散した複合構造体からなり、粒界に
    介在する該粒子は球状,擬球状,針状,ウイスカ状,柱
    状,板状のいずれかからなり、該マトリックス粒子間の
    結合において30%以上が直接結合していることを特徴
    とする繊維強化複合材。
  13. 【請求項13】請求項1に記載の前記セラミックスは、
    セラミックスマトリックスの粒子内および粒界に化学組
    成の異なる粒子が分散した複合構造体からなり、粒界に
    介在する該粒子は球状,擬球状,針状,ウイスカ状,柱
    状,板状のいずれかからなり、該セラミックスマトリッ
    クス中の全ての組成が出発原料と異なる組成で構成され
    ていることを特徴とする繊維強化複合材。
  14. 【請求項14】請求項1に記載の前記セラミックスは、
    セラミックスマトリックスの粒子内および粒界に化学組
    成の異なる粒子が分散した複合構造体からなり、粒界に
    介在する該粒子は球状,擬球状,針状,ウイスカ状,柱
    状,板状のいずれかからなり、少なくとも該セラミック
    スマトリックスの粒子内および粒界に分散した化学組成
    の異なる粒子が出発原料と異なる組成で構成されている
    ことを特徴とする繊維強化複合材。
  15. 【請求項15】請求項1に記載の前記セラミックスは、
    セラミックスマトリックスの粒子内および粒界に分散し
    た粒子が、Si,Al,Cr,Ti,Zr,Mg,B,
    Y,W,Nb,V,Sc,La,Hf,Mo,Ce,Y
    b,Er,Ho,Dyの窒化物,炭化物,酸化物,炭窒
    化物,酸窒化物,硼化物,金属間化合物の少なくとも1
    種以上のセラミックスマトリックスと異なる組成からな
    ることを特徴とする繊維強化複合材。
  16. 【請求項16】請求項1に記載の前記セラミックスは、
    セラミックスマトリックス中に分散させた粒子含有量
    は、5から30vol% であることを特徴とする繊維強化
    複合材。
  17. 【請求項17】請求項1に記載の前記セラミックスは、
    セラミックスマトリックスの粒子内および粒界に分散し
    た粒子が、焼結中に反応により析出したものであること
    を特徴とする繊維強化複合材。
  18. 【請求項18】請求項1に記載の前記繊維強化複合材の
    表面には、SiO2,TiO2,ZrO2,Al23,Mg
    O,B23,Ta25の少なくとも1種以上からなる成
    分がコーティングされていることを特徴とする繊維強化
    複合材。
  19. 【請求項19】無機繊維束の結束にあたり、一方向に配
    列した複数本の無機繊維にC,SiC,TiC,BN,
    Si34,B4C,SiO2,TiO2,Al23,B2
    3,Ta25の前駆体を含浸し、加熱することにより結
    束させる工程と、マトリックスとなるセラミックス成分
    をグリーンシート化あるいは金属を板状に成形し、該グ
    リーンシートあるいは金属板上に無機繊維束を一方向に
    配列し、該繊維束が一方向に配向あるいは少なくとも二
    方向に交差する様に積層した積層体を焼結あるいは加熱
    溶融後、冷却し固化する工程とを有することを特徴とす
    る繊維強化複合材の製法。
  20. 【請求項20】無機繊維束を成形した繊維束プリフォー
    ムに、マトリックスとなるセラミックス成分のスラリー
    を含浸させて乾燥した後焼結する、あるいはマトリック
    スとなる溶融金属を含浸させて固化することを特徴とす
    る繊維強化複合材の製法。
  21. 【請求項21】無機繊維束の結束にあたり、一方向に配
    列した複数本の無機繊維にC,SiC,TiC,BN,
    Si34,B4C,SiO2,TiO2,Al23,B2
    3,Ta25の前駆体を含浸し、加熱することにより結
    束させる工程と、マトリックスとなるセラミックス成分
    のスラリーあるいは溶融金属と該繊維束とを混合し、押
    出し成形する工程と、押出し成形体を乾燥したのち焼結
    あるいは冷却し固化する工程を有することを特徴とする
    繊維強化複合材の製法。
  22. 【請求項22】請求項19ないし21のいずれかに記載
    の前記セラミックスマトリックスがSi,Al,Cr,
    Ti,Zr,Mg,B,Y,W,Nb,V,Sc,L
    a,Hf,Mo,Ce,Yb,Er,Ho,Dyの少な
    くとも1種以上の金属粉末あるいは金属粉末とSi,A
    l,Cr,Ti,Zr,Mg,B,Y,W,Nb,V,
    Sc,La,Hf,Mo,Ce,Yb,Er,Ho,D
    y単体,窒化物,炭化物,酸化物,炭窒化物,酸窒化
    物,硼化物,金属間化合物の少なくとも1種以上のセラ
    ミック粒子からなる混合粉末からなり、該焼結が窒化
    性,炭化性,炭窒化性,酸化性,酸窒化性,不活性の少
    なくとも1種以上の反応性ガス雰囲気中で自己析出焼結
    することを特徴とする繊維強化複合材の製法。
  23. 【請求項23】請求項19ないし21のいずれかに記載
    の前記無機繊維束の径が0.05mm 〜10.0mm である
    ことを特徴とする繊維強化複合材の製法。
  24. 【請求項24】請求項19ないし21のいずれかに記載
    の前記無機繊維束の表面がSiC,Si34,Si
    2,C,TiC,B4C,BN,TiN,AlN,Ti
    2,ZrO2,Al23,ZnO,MgO,B23,T
    25 の少なくとも1種以上からなる成分がコーティ
    ングされていることを特徴とする繊維強化複合材の製
    法。
  25. 【請求項25】請求項19ないし21のいずれかに記載
    の前記繊維強化複合材の製法であって、反応析出焼結し
    た後、無加圧高温処理,ガス圧高温処理,HP,HIP,
    CVIの少なくとも1種の方法により、気孔率3%以下
    に緻密化処理することを特徴とする繊維強化複合材の製
    法。
  26. 【請求項26】請求項19ないし21のいずれかに記載
    の前記繊維強化複合材の製法であって、焼結助剤を原料
    として混合する工程と、反応析出後の焼結体に焼結助剤
    を含浸する工程を有することを特徴とする繊維強化複合
    材の製法。
  27. 【請求項27】請求項1ないし26のいずれかに記載の
    前記繊維強化複合材を用いてなるガスタービン部品。
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