JP4266056B2 - 高耐酸化性Si含浸複合材料およびその製造方法 - Google Patents

高耐酸化性Si含浸複合材料およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高温下での耐酸化性が要求される各種工作用部材、すなわち、金属溶湯用冶具、研削用部材、各種金型、製造装置用部材等として使用可能な新規な高耐酸化性Si含浸複合材料、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
各産業分野に於ける技術革新に伴い、より高温条件下で使用可能な各種部材へのニーズが高まっている。とくに、急速な昇温、冷却を反復して行うことが求められる金属製品、ガラス製品、セラミック製品の熱処理用部材、あるいは、これら製品の製造装置用部材として、軽量で、所望の形に成形でき、かつ、熱衝撃性において優れた材料の出現が求められているのが現状である。このような要求を満たす材料としては、各種セラミック製材料、炭素、いわゆるC/Cコンポジットと称される炭素繊維複合炭素材料等が挙げられる。しかし、セラミック製材料は、耐熱衝撃性に劣り、比較的簡単に割れてしまうという欠点がある。一方、炭素や、C/Cコンポジットは耐熱衝撃性においては優れているものの、材料が炭素であるために、使用雰囲気が限定されている。即ち、酸素や水分が存在する雰囲気下では、酸素と反応し燃焼してしまうので全く使用できないという問題がある。従って、優れた耐熱衝撃性と耐酸化性とを兼備した材料が存在しないのが現状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
より高温条件下で使用可能な各種工作用部材として使用可能であり、とくに、急速な昇温、冷却を反復して行うことが求められる金属製品、ガラス製品、セラミック製品等の熱処理用部材や、あるいは、これら金属製品、ガラス製品、セラミック製品等の製造装置用部材として、軽量で、所望の形に容易に成形でき、かつ、高温下での耐酸化性の高く、耐熱衝撃性にも優れた新規な高耐酸化性Si含浸複合材料、およびその製造方法を提供することにある。さらに、超高温下で使用される各種部材としても使用可能な高い耐酸化性を有する新規な高耐酸化性Si含浸複合材料、およびその製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは上記の目的を達成するために種々検討した結果、炭化珪素、金属珪素、実質的に炭素繊維からなる炭素、および所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とから構成され、骨格部と、骨格部の周囲に形成されマトリックスとからなる構造を有する高耐酸化性Si含浸複合材料であって、
炭化珪素の少なくとも50%はβ型で、
骨格部は、炭素繊維束と、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素から形成されており、
マトリックスは、炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素により形成され、
前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、
前記複合材料は10%以下の気孔率を有する高耐酸化性Si含浸複合材料により上記の目的が達成されることを見出し本発明を完成させたものである。
【0005】
さらに、炭素繊維の束の中に、少なくとも金属珪素か炭化珪素のいずれかと所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とが添加されている炭素繊維束からなるヤーンとヤーン、および/またはヤーン配列体とヤーン配列体を、金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を添加したバインダーを使用して成形した成形体、あるいは、前記金属珪素、炭化珪素、および炭化ホウ素のいずれも含まないバインダーを使用して成形した成形体を、焼成し、焼成体を形成する工程と、
得られた焼成体に、所望により金属珪素と、0重量%〜10重量%の炭化ホウ素とを焼成炉中で溶融、含浸させるに際し、焼成体の重量と、焼成体に含浸させる金属珪素と炭化ホウ素の合計重量との総合計重量1kg当たり0.1NL以上の不活性ガスを焼成炉中に流しつつ、炉内温度1100〜1400℃、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持した後、温度1450〜2500℃に昇温して前記焼成体の開気孔内部へ金属珪素と、所望により含まれてもよい炭化ホウ素を溶融、含浸させ、Si−SiC系材料相を形成させると共に、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素をSi−SiC系材料相に一体的に形成させて、Si−SiC系材料相と、所望により炭化ホウ素相とからなるマトリックスを形成させる工程と
所望により得られた焼成体の最表面にさらに炭化ホウ素を被覆することからなるにより上記の高耐酸化性Si含浸複合材料を製造することを見出して、本発明を完成させたものである。また、本発明によれば、少なくとも、同複合材料の一部にシリカ−酸化ホウ素相が形成されている、高耐酸化性Si含浸複合材料が提供される。
【0006】
本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、基本的には、25重量%〜65重量%の炭素と、1重量%〜10重量%の金属珪素、10重量%〜50重量%の炭化珪素と、0重量%〜10重量%の炭化ホウ素から構成され、少なくともSi−SiC系材料と炭化ホウ素相とからなるマトリックスが、三次元的に組み合わされ互いに分離しないように一体化された炭素繊維からなるヤーン集合体の間に一体的に形成されている。勿論、炭化ホウ素は、任意成分ではあるが、耐酸化性をより強化するには、少なくとも0.1重量%含まれていることが好ましい。ところで、後述するようにSi−SiC系材料を形成させるには、その厚さは、少なくとも0.01mmあることが好ましい。さらに少なくとも0.05mm以上であることが好ましく、少なくとも0.1mm以上であることが一層好ましい。
【0007】
上記の炭素は、実質的に炭素繊維からなる。実質的に炭素繊維からなるとは、バインダー等の副原料由来のものや炭素繊維そのものの表面に形成されている黒鉛質の遊離炭素が微量含まれていてもよいが、骨格部を形成する炭素は、原則として、炭素繊維から構成されていることを意味する。さらに、本発明に係る新規な高耐酸化性Si含浸複合材料において、前記マトリックスが前記ヤーンから離れるのに従って、珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有していることが好ましい。また、上記の高耐酸化性Si含浸複合材料は、気孔率が10%以下、好ましくは、0.5%〜3%に制御されている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係る高耐酸化Si含浸複合材料は、炭素繊維束、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素から形成されている骨格部と、炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素により形成されているマトリックスからなり、前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、10%以下の気孔率を有するセラミックスと炭素からなる複合材料から構成される。
【0009】
上述のように、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、
炭化珪素、金属珪素、実質的に炭素繊維からなる炭素、および所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とから構成され、骨格部と、骨格部の周囲に形成されマトリックスとからなる構造を有する高耐酸化性Si含浸複合材料であって、炭素繊維束と、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素から形成された骨格部と、炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素により形成されたマトリックスを有しているか、あるいは、一部にシリカ−酸化ホウ素相が形成されている複合材料である。
【0010】
骨格部は、炭素繊維の束に粉末状のバインダーと、必要に応じてフェノール樹脂粉末等を含有させ、炭素繊維束を調製し、この炭素繊維束の周囲に、熱可塑性樹脂等のプラスチックからなる柔軟な被膜を形成し、柔軟性中間材としてのプレフォームドヤーンを得、このプレフォームドヤーンを、特開平2−80639号公報に記載されている方法によりシート状、または、織布状にし、必要量を積層した後、ホットプレスで成形し得られた成形体由来のものが好ましい。勿論、この成形体を焼成して得られる焼成体由来のものでもよい。ここで、バインダーとは、金属珪素および/または炭化珪素を含浸する前の炭素繊維束からなる成形体または焼成体のマトリックスとして作用する粉末状の材料であって、焼成後には炭素繊維の束に対して遊離炭素となるピッチ、コークス類を包含させたものをいう。
【0011】
本明細書において、C/Cコンポジットとは、直径が10μm前後の炭素繊維を、通常、数百本〜数万本束ねて繊維束(ヤーン)を形成し、この繊維束を熱可塑性樹脂で被覆してプレフォームドヤーンを調製し、これを特開平2−80639号公報に記載されている方法によりシート状、または、織布状にし、このシート状、または、織布状としたものを二次元または三次元方向に配列して一方向シート(UDシート)や各種クロスとしたり、また上記シートやクロスを積層したりすることにより、所定形状の予備成形体(繊維プリフォーム)を形成し、該予備成形体の繊維束の外周に形成されている有機物からなる熱可塑性樹脂等の被膜を焼成し、上記の同皮膜を炭化除去することにより得られるものをいう。なお、本明細書に於いて、参考のために特開平2−80639号公報の記載を引用する。本発明に係るC/Cコンポジットにおいては、上記のヤーン中の炭素繊維以外の炭素成分は、好ましくは炭素粉末であり、とくに好ましくは黒鉛化した炭素粉末である。
【0012】
ヤーンの内部にSi−SiC系材料および所望により含まれてもよい炭化ホウ素からなる相を形成させるには、プレフォームドヤーンの調製時に少なくとも金属珪素または炭化珪素と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を、所定量混合すればよい。ヤーンの表面にSi−SiC系材料および所望により含まれてもよい炭化ホウ素からなる相を形成させるには、プレフォームドヤーンからシート、または、クロスを調製するときに、少なくとも金属珪素または炭化珪素とおよび所望により含まれてもよい炭化ホウ素を所定量混合すればよい。混合方法は、直接金属珪素および/または炭化珪素と所望により炭化ホウ素をヤーンを構成する炭素繊維と炭素繊維の間、あるいは、ヤーンとヤーンの間に混入する方法、バインダーやフェノール樹脂等のヤーンや、ヤーン配列体の調製時、あるいは、ヤーン配列体を積層してシートまたはクロスを調製するときに使用する各種助剤に混合し使用する間接混合方法がある。均一に混合するには、間接混合方法が好ましい。
【0013】
金属珪素および/または炭化珪素の使用量は、設計性能によっても異なるが、通常は、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の全重量に対して、約11%〜60%の範囲内で充分である。また、所望により含まれてもよい炭化ホウ素の量としては、高耐酸化性Si含浸複合材料の全重量に対して、0〜10%の範囲内である。勿論、Si−SiC系材料および所望により含まれてもよい炭化ホウ素からなる相は、少なくとも、マトリックスとして形成されていればよいので、用途毎の要求性能に応じて、ヤーン内部やヤーン表面のいずれにも、これらの材料を含浸させなくともよい。
【0014】
本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料においては、骨格部を構成する材料としては、複数の炭素繊維から形成されている炭素繊維束、好ましくは、炭素繊維束が上記のようなC/Cコンポジットとなっているものを用いる。その各ヤーンを構成する炭素繊維の表面および/または内部には、Si−SiC系材料と所望により形成されていてもよい炭化ホウ素相が形成されている。しかし、各炭素繊維束を構成する炭素繊維の少なくとも一部は、炭素繊維としての構造が、金属珪素および/または炭化珪素との反応により破壊されることなく保持されていることが必要で、これにより、炭素繊維が本来有している機械的強度がほぼ保持される。従って、炭素繊維としては、少なくとも一部の炭素繊維が、炭化珪素化せずに残りやすい構造を有しているC/Cコンポジットが好ましい。しかも、炭素繊維束内におよびヤーン集合体中で相隣り合うヤーン同士の間に、Si−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素からなるマトリックスが形成された構造を有しているので、耐酸化性が強化されることとなる。
【0015】
本発明において、Si−SiC系材料とは、主成分として珪素と炭化珪素とを含有する材料の総称である。このSi−SiC系材料は、本発明に係る高耐酸化性複合材料を製造するときに形成される、炭素繊維と金属珪素、あるいは、炭化珪素との反応により形成される。例えば、炭素繊維束から形成されたヤーン配列体とヤーン配列体とを金属珪素および/または炭化珪素とを添加したバインダーで結合させて成形体を得、これを700〜1200℃で炭化させ、さらに1500〜3000℃で焼成して、炭素繊維と炭素繊維の表面に存在する主としてバインダー由来の遊離炭素と、金属珪素および/または炭化珪素とを反応させて形成された、少なくとも一部に実質的に炭化珪素のみからなる相と金属珪素が未反応のまま残っている相とが連続的に変化する材料をいう。
【0016】
すなわち、Si−SiC系材料には、未反応の状態で残存する珪素からなる珪素相からほぼ純粋な炭化珪素に至るまでの、いくつかの相異なる相を含む、典型的には珪素相と炭化珪素相からなるが、炭化珪素相には、珪素の含有量が傾斜的に変化しているSiC共存相を含みうる。従って、Si−SiC系材料とは、このようにSi−SiC系列において、炭素の濃度として、0mol%から50mol%までの範囲以内で含まれてる材料の総称である。本発明に係る高耐酸化性複合部材においては、Si−SiC系材料は、マトリックス部は勿論のことに、炭素繊維束内および/または炭素繊維束の表面にも形成されていてもよい。
【0017】
また、この高耐酸化性Si含浸複合材料は、好ましくは、ヤーンの表面から離れるのに従って珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有するマトリックスを有している。また、この高耐酸化性Si含浸複合材料においては、好ましくは、炭素繊維からなるヤーン集合体は、複数のヤーン配列体から構成されており、各ヤーン配列体はそれぞれ特定本数の炭素繊維を束ねて構成したヤーンをほぼ平行に二次元的に配列することによって形成されており、各ヤーン配列体が積層されることによってヤーン集合体が構成されている。これによって、高耐酸化性Si含浸複合材料は、複数層のヤーン配列体を特定方向に積層した積層構造を有することになる。
【0018】
この場合において、マトリックスの強度の点から、隣接するヤーン配列体における各ヤーンの長手方向が互いに交差していることが特に好ましい。これによって、一層応力の分散が促進されるからである。隣り合うヤーン配列体におけるヤーンの長手方向は、とくに好ましくは、直交している。また、好ましくは、マトリックスが、高耐酸化性Si含浸複合材料の中で互いに連続することで三次元網目構造を形成している。この場合においてとくに好ましくは、マトリックスが各ヤーン配列体においてほぼ平行に二次元的に配列されており、隣り合う各ヤーン配列体中に生成しているマトリックスが互いに連続しており、これによってマトリックスが三次元格子を形成している。また、隣り合うヤーンの間隙には、100%マトリックスが充填されていてもよいが、ヤーンの間隙のうち一部をマトリックスが充填している場合も含む。
【0019】
本発明に係る高耐酸化Si含浸複合材料は、Si−SiC系材料と所望によって含まれていてもよい炭化ホウ素が、マトリックスとして、図2に模式的に示したようにヤーンの表面に沿って生成していることは勿論のこと、炭素繊維束内部および/または同表面にもSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素からなる相が形成されていてもよい。マトリックス、および/または、炭素繊維束内部および/または同表面に、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素は、これらの箇所で、Si−SiC系材料と一体化し、あるいは、独立して島状にSi−SiC系材料からなる海に点在していてもよい。上記のように、複合繊維の基本骨格がSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素によって強化されているので、耐酸化性が強化されることとなる。炭化ホウ素が含まれていると、高温時に於ける耐酸化性が飛躍的に増大するので好ましい。さらに好ましくは、炭化ホウ素の相が本発明に係る高耐酸化Si含浸複合材料の最表面に形成されていることが、耐酸化性向上の面から好ましい。
【0020】
本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、炭素繊維束からなる内部および/または表面にSi−SiC系材料相が形成されていてもよいヤーンを特定の本数配列した内部および/または表面には、Si−SiC系材料相が形成されているヤーン配列体を積層して構成されるヤーン集合体からなる三次元構造を有するC/Cコンポジットからなる骨格部と、同骨格部を構成するとヤーンとヤーンとの間にマトリックスとして三次元的格子状に形成されたSi−SiC系材料とからなる複合材料である。本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、常温での動摩擦係数が0.1〜0.5の範囲内にあり、また、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性を有するSi−SiC系材料からなるマトリックス層を表面に配することにより、C/Cコンポジットの有する低耐酸化性を克服することができ、酸素存在下において高温下に余儀なく曝される摺動材、ブレーキ用部材等として使用が可能である。
【0021】
気孔率は、10%以下、好ましくは、0.5%〜3%に制御されているので、動摩擦係数の周囲環境の変化による変動量が極めて少なく、安定したブレーキ性能が発揮される。高温条件下での摩耗量は、500℃で1.0%/時間以下、より好ましくは0.6%/時間以下である。また、本来炭化珪素が有する優れた耐磨耗性を取り入れた耐磨耗性を有している。また、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、600℃に保持された高温雰囲気内でも、極めて優れた耐酸化特性を示す。すなわち、1%の酸素を含む同高温雰囲気中での重量減少量が25%以下、1,000ppmの酸素を含む同高温雰囲気中での重量減少量が3%以下、100ppmの酸素を含む同高温雰囲気中での重量減少量は実質的に零といえる水準であって、極めて高い耐酸化特性を示すのものである。これは上記のように、マトリックス部以外にも、Si−SiC系材料相が、炭素繊維の内部および/または表面にも形成されていることによるものと考えられる。
【0022】
本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の場合には、Si−SiC系材料相がマトリックスを形成しているだけでなく、ヤーンおよび/またはヤーン配列体の内部および/または表面に形成されているので、Si−SiC系材料が溶融してガラスとなり骨格部を酸素から保護する速度の方が、酸素の骨格部内部への拡散速度よりも早いため、骨格部として使用された炭素繊維が拡散してきた酸素により酸化されるような事態を回避でき、骨格部を酸化から保護することができる。従って、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の場合には、自己修復性を示すので、より長期間にわたって使用が可能となる。この現象は炭化ホウ素が含まれているとより一層顕著となる。その理由は定かではないが、酸素と、炭化ホウ素、炭化珪素および/または金属珪素が同時に酸化されて、酸化ホウ素とシリカとからなるガラス相が炭素繊維表面に形成されて、その表面を覆ういわゆるグレージング現象が起きることによるものと思われる。
【0023】
炭化珪素および/または金属珪素だけのときと異なり、炭化ホウ素があわせ含まれる場合には、炭化ホウ素が同時に酸化されることにより、グレージング現象が促進されることによるものと推察される。従って、急速な昇温、冷却を反復して行うことが求められる金属製品、ガラス製品、セラミック製品等の加工の際に使用される各種金型用部材、あるいは、これら金属製品、ガラス製品、セラミック製品等の製造装置用部材として、使用可能である。
【0024】
上記のように、グレージングされた結果、もはや、これ以上グレージングはしない状態となった本発明に係る複合部材は、炭化珪素、金属珪素、実質的に炭素繊維からなる炭素、シリカ−酸化ホウ素とから構成され、骨格部と、骨格部の周囲に形成されマトリックスとからなる構造を有する高耐酸化性Si含浸複合材料であって、
炭化珪素の少なくとも50%はβ型で、
骨格部は、炭素繊維束と、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、同材料と一体的に構成されているシリカ−酸化ホウ素相とから形成されており、
マトリックスは、炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、同材料と一体的に構成されているシリカ−酸化ホウ素相とから形成され、
前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、前記複合材料は10%以下の気孔率を有すること高耐酸化性Si含浸複合材料となる。
【0025】
勿論、強制的に、マトリックスが、炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素により形成されている高耐酸化性Si含浸複合材料を酸化を促進させて、製造することも可能である。
なお、ここで、一体的とは、必ずしも、両者が渾然一体となっている場合だけでなく、両者の存在が独立して認められている場合も、両者が弱い機械的衝撃で簡単に分離するような状態にない限り、含むものである。従って、Si−SiC系材料の海に、炭化ホウ素の島が点在している状態をも含むものである。
【0026】
また、炭素繊維束からなるヤーン集合体を基本構造として骨格部を構成していることから、軽量であり、省エネルギーの要請にもかなう材料であるといる。とくに、マトリックス形成後においても、炭素繊維が短繊維化することがないので、機械的強度が維持され、ヤーン集合体に於いて、各ヤーン配列体の繊維の長手方向が互いに交差、好ましくは直交しているので、形状の異方性も生じない。骨格部に形成された遊離炭素からなるマトリックスも均一性に富む。従って、これに金属珪素を含浸させて製造した本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、均一に金属珪素が分散してゆき、炭素と反応するので、特定の体積中の構成物質の組成は均一である。組成が均一であるので、内部応力が偏在することもない。従って、焼成しても変形が生じにくく、大型で複雑な形状の成型品、なかでも複雑な形状を有する薄肉大型成型品を製造することができるという効果を発揮する。
【0027】
さらに、骨格部が炭素繊維束であるため、靭性に富み、優れた耐衝撃性、高硬度性を有する。従って、従来使用されている炭素繊維が有している特性を保持したまま、炭素繊維の欠点である耐高温摩耗性を克服することが可能となった。また、炭素繊維束からなるヤーンとヤーンの間には、連続した開気孔が形成されているので、この気孔に対して金属珪素および/または炭化珪素と、所望により炭化ホウ素を含浸させ、形成させるマトリックスとしてのSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素から形成される相は、連続構造をとり三次元網目構造をとる。従って、どの部分を切り出しても、骨格部となった炭素繊維に比して高い耐磨耗性を有し、かつ本来炭素繊維が持っている高い放熱性、柔軟性などは維持される。
【0028】
本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の構造的特徴について、説明の簡略化のためにSi−SiC系材料のみが形成されてものを例に挙げて、図面を使用してさらに説明することとする。
図1は、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の骨格部を説明するための概略斜視図であり、図2は、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料において、Si−SiC系材料の形成状況を説明するための、その一態様に係る複合部材の一部構造を省略した断面構造を示す断面図である。
【0029】
高耐酸化性Si含浸複合材料7の骨格は、図1に示したようにヤーン集合体6によって構成されている。ヤーン集合体6は、ヤーン配列体1A、1B、1C、1D、1E、1Fを上下方向に積層してなる。各ヤーン配列体においては、各ヤーン3が二次元的に配列されており、各ヤーンの長手方向がほぼ平行である。上下方向に隣り合う各ヤーン配列体における各ヤーンの長手方向は、直交している。すなわち、各ヤーン配列体1A、1C、1Eの各ヤーン2Aの長手方向は、互いに平行であり、かつ各ヤーン配列体1B、1D、1Fの各ヤーン2Bの長手方向に対して直交している。各ヤーンは、炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分とからなる繊維束3からなる。ヤーン配列体が積層されることによって、三次元格子形状のヤーン集合体6が構成される。各ヤーンは、後述するような加圧成形工程の間に押しつぶされ、ほぼ楕円形になっている。
【0030】
各ヤーン配列体1A、1C、1Eにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、マトリックス8が充填されており、各マトリックス8はヤーン2Aの表面に沿ってそれと平行に延びている。各ヤーン配列体1B、1D、1Fにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、別のマトリックス8が形成されており、このマトリックス8は、ヤーン2Bの表面に沿ってそれと平行に延びている。
図2に示したように、Si−SiC系材料からなっているマトリックス8は、各ヤーンの表面を被覆する形で形成されている。また、図2に示した態様においては、複合部材の内部において、炭素繊維束であるヤーン内部にSi−SiC系材料相が形成されている。
【0031】
各マトリックス8は、それぞれヤーンの表面に沿って細長く、好ましくは直線状に延びており、各マトリックス8とは互いに直交している。そして、ヤーン配列体1A、1C、1Eにおけるマトリックス8と、これに直交するヤーン配列体1B、1D、1Fにおけるマトリックス8とは、それぞれヤーン2Aと2Bとの間隙部分で連続している。この結果、マトリックス8は、全体として、三次元格子を形成している。Si−SiC系材料相においては、それぞれ、隣接する炭素繊維の表面から離れるほど、珪素濃度が高くなる傾斜組成を有していることが好ましい。ブレーキ用部材用、研削用部材などの材料としては、高耐酸化性Si含浸複合材料の表面がSi−SiC系材料相から形成されていることが好ましい。
【0032】
ここで、Si−SiC系材料を焼成体に含浸させることにより形成されるマトリックス層の厚さは、少なくとも0.01mmあることが好ましい。さらに少なくとも0.05mm以上あることが好ましく、少なくとも0.1mm以上であることが一層好ましい。このマトリックス層の厚さが0.01mm未満の場合は、高酸化条件下において、摺動材として要求される耐久性を充分に付与することができないからである。
【0033】
また、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料において、Si−SiC系材料相において炭素と結合した状態で存在する珪素の濃度は、隣接する炭素繊維の表面から内部に向かって小さくなることが好ましい。マトリックス、およびヤーンおよび/またはヤーン配列体の内部および/または表面において、珪素濃度に傾斜を持たせることにより、強酸化腐食環境での耐食性および強度、表層部および内層部の欠陥へのヒーリング機能を著しく向上させることができ、さらに熱膨張係数差による材料の熱応力劣化を防止できる。これは、表層部の珪素濃度が、内層部の珪素濃度よりも相対的に高いため、発生したマイクロクラックが、加熱中にヒーリングされ、耐酸化性を保持するからである。とくに、本発明において、ヤーンおよび/またはヤーン配列体の内部および/または表面にSi−SiC系材料相が形成されている態様を含むが、この態様を含むことにより、仮に、予想を超える異常な応力が加えられて、炭素繊維の一部が表面に露出してきても、ヤーンおよび/またはヤーン配列体の内部および/または表面に形成されたSi−SiC系材料相が自己修復性を示すという効果を発揮する。
【0034】
また、本発明の高耐酸化性Si含浸複合材料に含まれてもよい炭化ホウ素は、潤滑性を有するため、炭素繊維からなる骨格部に含有させることにより、Si−SiC系材料を形成させた骨格部の部分においても、繊維の潤滑性を維持することができ、靭性の低下を防ぐことができる。
なお、例えば、炭化ホウ素の含有量は、炭素繊維からなる骨格部100重量%に対し、0.1〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満では炭化ホウ素による潤滑性付与の効果が充分に得られず、10重量%を超える場合は炭化ホウ素の脆さが高耐酸化性Si含浸複合材料にも現れてくるからである。
【0035】
このような、本発明の高耐酸化性Si含浸複合材料は、C/Cコンポジットの耐衝撃性、高硬度性および軽量性と、Si−SiC系材料の、耐酸化性、耐スポーリング性、自己潤滑性、耐磨耗性等を併せ持ち、さらに、自己修復性をも有するため、高温酸化条件下での使用に長期間耐えることができるので、摺動材、ブレーキ用部材等として、好適に用いることができる。
【0036】
本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、好ましくは以下詳述する方法により製造可能である。
炭素繊維内に金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素が添加されていてもよい炭素繊維の炭素繊維束からなるヤーンとヤーン、および/またはヤーン配列体とヤーン配列体を金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を添加したバインダーを、あるいは、前記金属珪素、炭化珪素、および炭化ホウ素のいずれも含まないバインダーを使用して成形した成形体を焼成し、焼成体を形成する工程と、
得られた焼成体に、所望により金属珪素、炭化珪素および炭化ホウ素から選ばれた少なくとも一種類の材料を添加し、ついで、焼成体の重量と、焼成体に含まれる金属珪素と炭化珪素の合計重量との総合計重量1kg当たり0.1NL以上の不活性ガスを流しつつ、炉内温度1100〜1400℃、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持して、前記焼成体の開気孔内部へ金属珪素、炭化珪素を溶融、含浸させてSi−SiC系材料相を形成させると共に、Si−SiC系材料相に所望により炭化ホウ素を分散させるなどにより、Si−SiC系材料相と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなるマトリックスを形成させる工程と
所望により得られた焼成体にさらに炭化ホウ素を被覆することにより、高耐酸化性Si含浸複合材料を製造する。
【0037】
第1に、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、
炭素繊維内に金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素が添加された炭素繊維の炭素繊維束からなるヤーンとヤーン、および/またはヤーンを配列して構成したヤーン配列体とヤーン配列体を、金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素が添加されたバインダーを使用して、成形した成形体を焼成することにより、炭素繊維内、および/またはヤ−ンの表面に、金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とを含む焼成体を形成する工程によっても製造可能である。
【0038】
第2に、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、
炭素繊維内に金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素が添加された炭素繊維の炭素繊維束からなるヤーンとヤーン、および/またはヤーン配列体とヤーン配列体を金属珪素、炭化珪素、および炭化ホウ素のいずれも含まないバインダーを使用して成形した成形体を焼成し、焼成体を形成する工程と、
得られた焼成体に、所望により金属珪素と、0重量%〜10重量%の炭化ホウ素とを焼成炉中で溶融、含浸させるに際し、焼成体の重量と、焼成体に含浸させる金属珪素と炭化ホウ素の合計重量との総合計重量1kg当たり0.1NL以上の不活性ガスを焼成炉中に流しつつ、炉内温度1100〜1400℃、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持した後、温度1450〜2500℃に昇温して前記焼成体の開気孔内部へ金属珪素と、所望により含まれてもよい炭化ホウ素を溶融、含浸させ、Si−SiC系材料相を形成させると共に、Si−SiC系材料相に所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を分散させるなどにより、Si−SiC系材料相と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなるマトリックスを形成させる工程から製造することも可能である。炭化ホウ素を含まない場合には、溶融、含浸させる温度は、1700〜1800℃が好ましい。
【0039】
第3に、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、
第1の方法により焼成体を形成する工程と、
ついで、第2の方法と同様に、得られた焼成体に、金属珪素と、0重量%〜10重量%の炭化ホウ素とを焼成炉中で溶融、含浸させるに際し、焼成体の重量と、焼成体に含浸させる金属珪素と炭化ホウ素の合計重量との総合計重量1kg当たり0.1NL以上の不活性ガスを焼成炉中に流しつつ、炉内温度1100〜1400℃、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持した後、温度を1450〜2500℃に昇温して前記焼成体の開気孔内部へ金属珪素と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とを溶融、含浸させ、Si−SiC系材料相を形成させると共に、Si−SiC系材料相に所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を分散させるなどにより、Si−SiC系材料相と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなるマトリックスを形成せる工程から製造することも可能である。炭化ホウ素を含まない場合には、溶融、含浸させる温度は、1700〜1800℃が好ましい。
【0040】
第4に、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、
上記にいずれかの方法により得られたものの最表面に炭化ホウ素を溶射して、被覆することにより製造することも可能である。さらに、炭素繊維束を特開平2−80639号に記載の方法により熱可塑性樹脂等のプラスチックで被覆し、プレフォームドヤーンを得、これからシート状または織布状にして、これから積層体を製造し、これから成形された成形体、あるいは、同成形体の焼成体、すなわち、C/Cコンポジットを使用したものでもよい。C/Cコンポジットの場合には、金属珪素および/または炭化珪素と所望により炭化ホウ素とを、炭素繊維内に添加しても、バインダーに添加してもよい。さらに、焼成体には、金属珪素および炭化ホウ素を炉内で溶融させ、含浸させてもよい。添加または含浸方法には、とくに制限はなく、適切であると考えられる方法を、採用すればよい。
【0041】
次に、上記の第2の製造方法において、C/Cコンポジットを用いた場合を例にとり、さらに説明することとする。
炭素繊維の束に対して、最終的にマトリックスとなる粉末状のバインダーピッチ、コークス類を包含させ、さらに必要に応じてフェノール樹脂粉末等を含有させることによって、炭素繊維束を作製する。炭素繊維束の周囲に、熱可塑性樹脂等のプラスチックからなる柔軟な被膜を形成し、プレフォームドヤーンを得る。このプレフォームドヤーンを、ヤーン状にし、必要量を積層した後、ホットプレスで300〜2000℃、常庄〜500kg/cm2の条件下で成形することによって、成形体を得る。または、この成形体を、必要に応じて700〜1200℃で炭化させ、1500〜3000℃で黒鉛化して、焼結体を得る。
【0042】
炭素繊維は、石油ピッチ若しくはコールタールピッチを原料とし、紡糸用ピッチの調製、溶融紡糸、不融化及び炭素化して得られるピッチ系炭素繊維並びにアクリロニトリル(共)重合体繊維を炭素化して得られるPAN系炭素繊維のいずれのものでもよい。
マトリックスの形成に必要な炭素前駆体としては、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂およびタール、ピッチ等が用いられるが、コークス類や各種有機化合物等を含んでいてもよい。当然のことながら、上記の方法のうち、第3の方法においては、これらに少なくとも金属珪素または炭化珪素と、所望により炭化ホウ素を添加混合して使用してもよいことはいうまでもない。
【0043】
ついで、上記のように作製された焼成体と少なくとも金属珪素または炭化珪素と、所望により添加されることもある炭化ホウ素とを、1100〜1400℃の温度域、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持する。保持時間は、種々の要因により変動しうるが、無機ポリマーないし無機物のセラミックス化への変化に伴うCO等の発生ガスを焼成雰囲気より除去し、また大気中のO2等による外部からの焼成雰囲気の汚染を防止するに充分な時間であればよい。また、この際、成形体または焼成体と珪素の合計重量1kg当たり0.1NL(ノルマルリットル:1200℃、圧力0.1hPaの場合、5065リットルに相当)以上の不活性ガスを流しつつ、焼成体表面にSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素からなる相を形成することが好ましい。ついで、温度1450〜2500℃に昇温して前記焼成体の開気孔内部へ珪素および/または炭化珪素と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を溶融、含浸させ、Si−SiC系材料を形成すると共に、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素をSi−SiC系材料相に一体的に形成させて、Si−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなる相を形成させる。なお、炭化ホウ素を含まない場合には、溶融、含浸させる温度は、1700〜1800℃が好ましい。
【0044】
焼成体と少なくとも金属珪素または炭化珪素と所望により添加される炭化ホウ素とを、1100〜1400℃の温度、0.1〜10hPaの圧力に1時間以上保持し、かつその際、焼成体と、金属珪素と炭化珪素の合計重量1kg当たり不活性ガスを0.1NL以上、好ましくは1NL以上、さらに好ましくは10NL以上流すように制御することが望ましい。
このような、焼成時(すなわち、少なくとも金属珪素または炭化珪素と所望により添加される炭化ホウ素の溶融、含浸前の段階)不活性ガス雰囲気にすることにより、無機ポリマーないし無機物のセラミックス化への変化に伴うCO等の発生ガスを焼成雰囲気より除去し、また大気中のO2等による外部からの焼成雰囲気の汚染を防止することによりその後に上記金属珪素、炭化珪素等の材料を溶融、含浸して得られる複合材料の気孔率を低く維持することができる。
【0045】
また、焼成体へ金属珪素と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を溶融、含浸する際には、焼成炉内の雰囲気温度を1450〜2500℃に昇温する。この場合、焼成炉内圧は0.1〜10hPaの範囲が好ましい。炭化ホウ素を含まない場合には、溶融、含浸させる温度は、1700〜1800℃が好ましい。
【0046】
上記のように、熱可塑性樹脂等の柔軟性材料での炭素繊維束(ヤーン)の被覆、および焼成炉中での珪素の溶融、含浸との組み合わせにより、焼成体において、該柔軟性材料が熱分解してヤーンとヤーンと間隙には細長い開気孔が残り、この細長い開気孔に沿って珪素が焼成体の奥まで浸透しやすくなる。この浸透の過程で、珪素がヤーンの炭素と反応してヤーン表面側から徐々に炭化し、本発明で使用する高耐酸化性Si含浸複合材料を生成させることとなる。なお、用途に応じて、このような構成を有する高耐酸化性Si含浸複合材料をC/Cコンポジットからなる骨格部の表層部の一部にのみいわゆる高耐酸化性Si含浸複合材料層として形成してもよい。勿論、炭化ホウ素からなる層を最表面に溶射により形成してもよい。
【0047】
マトリックス層を形成するSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなる相の厚さの調節は、成形体または焼成体の開気孔率およびその細孔径により行う。例えば、Si−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなる相の厚さを0.01〜10mmとする場合には、少なくとも成形体または焼成体の表面近傍における開気孔率を5〜50%、平均細孔径を1μm以上とする。成形体または焼成体の開気孔率は10〜50%であることが好ましく、平均細孔径は10μm以上とすることが好ましい。開気孔率を5%未満とすると、成形体または焼成体中のバインダーを除去しきれず、50%より大きくすると、骨格部の内部深くにまでSi−SiC系材料が含浸形成し、複合材料の耐衝撃性が低下するからである。
【0048】
また、高耐酸化性Si含浸複合材料層を炭素繊維束の表面にのみ形成するには、少なくとも表面近傍の開気孔率が焼成中に0.1〜30%になるように調整した成形体を用いることが好ましい。すなわち、熱分解する有機物からなる柔軟性中間材の被膜の炭素繊維束に対する厚さを調整すればよい。
【0049】
成形体または焼成体の開気孔率を、表面から内部に向かって小さくなるようにするには、バインダーピッチの異なるプリフォームドヤーンからなる複数のプリフォームドシートを、内側から表層側に向かってバインダーピッチが大きくなるように配置して成形することにより行う。
【0050】
また、上記のSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなる相における珪素濃度に傾斜を設ける場合には、表面近傍の開気孔率が表面から内部に向かって小さくなるように調整した焼成体、または少なくとも表面近傍の開気孔率が焼成中に表面から内部に向かって小さくなるように調整した成形体を用いて、複合材料の製造を行う。高耐酸化性Si含浸複合材料の気孔率を10%以下に制御するには、少なくとも金属珪素または炭化珪素と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素を焼成体に含浸させる際に、焼成体の開気孔率に応じて金属珪素、炭化珪素、および炭化ホウ素の量を調整することにより容易に行うことができる。
【0051】
本発明に於いて、上記の新規な高耐酸化性Si含浸複合材料を使用して摺動材、ブレーキ用部材等を製造するに際しては、上記のように製造した複合材料を平面研削盤等により適宜な寸法に切断加工し、平面研削仕上げすることにより製造すればよい。特定形状の大型部材の場合には、炭素繊維束から構成されるヤーンを積層するなどして、先ず所望の形に成形し、これを焼成することによりSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなる相をヤーンおよび/またはヤーン配列体の内部および/または表面に形成させると共に、焼成体を形成し、この焼成体に少なくとも金属珪素または炭化珪素と、所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とを含浸、溶融させてSi−SiC系材料と所望により含まれていてもよい炭化ホウ素とからなるマトリックスを形成させることにより製造することができる。本発明の高耐酸化性Si含浸複合材料は、とくに、高温下での耐酸化性の要求される金型部材、摺動材、ブレーキ用部材等として、好適に使用できる。
【0052】
【実施例】
次に、本発明を実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
なお、本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の耐酸化性は、以下に示す方法より評価した。
【0053】
(耐酸化性の評価方法)
雰囲気中の酸素濃度が10ppm、100ppm、1,000ppm、1%または21%に調整した一連のチャンバーを用意し、それぞれのチャンバー内の温度を600℃に設定した。このように準備したチャンバー内に、それぞれ試験用試料を入れ、その状態で100時間試料を保持した。100時間経過後、試料をそれぞれ取り出し、その重量を測定し、重量減少率(%)を次式によりに求めた。
重量減少率(%)=〔(W1−W0)/(W0)]×100
(ただし、式中、W1はチャンバー内に100時間保持した後の試料重量を、W0は試験開始前の試料の重量を示す)。
【0054】
(実施例1)
一方向に引き揃えた直径7μmの炭素繊維の束にフェーノル樹脂を含浸させながら、一万2千本炭素繊維を束ね、このものと金属珪素、マトリックス炭素の前駆体であるフェノール樹脂、バインダーを一緒にして、熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂製のチューブに入れ、骨格部の構成の最小単位であるヤーンを調製した。このときのヤーンの組成は、40重量%の炭素繊維と、30重量%のマトリックス炭素の前駆体であるフェノール樹脂と、30重量%の金属珪素とから構成されていた。このようにして調製した一連のヤーンを用いてプレプレグシートを織り上げた。このようにして調製した一連のプレプレグシートを必要量積層して、この積層体をホットプレスで600℃、100kg/cm2で成形した。この成形体を窒素雰囲気中、温度2,000℃で焼成して、厚さ20mmのC/Cコンポジットを得た。得られたC/Cコンポジットを用いて、アルキメデス法により測定した密度は、1.7g/cm3で、また同じくアルキメデス法により測定した開気孔率は、10%であった。
【0055】
次に、得られたC/Cコンポジットを、気孔率が5%となるのに充分な量からなる、純度99.8%、平均粒径1mmの金属珪素粉末で充填されたカーボンるつぼ内に立設した。ついで、焼成炉内にカーボンるつぼを移動した。焼成炉内の温度を1300℃、不活性ガスとしてアルゴンガス流量を20NL/分、焼成炉内圧を1hPa、その保持時間を4時間として処理した後、焼成炉内の圧力をそのまま保持しつつ、炉内温度を1600℃に昇温することにより、C/Cコンポジットに金属珪素を含浸させて、気孔率5%の高耐酸化性Si含浸複合材料を製造した。
【0056】
得られた高耐酸化性Si含浸複合材料を用いて耐酸化性の測定に供したところ、図3に示すように1%の酸素を含む雰囲気中での重量減少量はほぼ25%、1,000ppmの酸素を含む雰囲気中での重量減少量は約3%で、100ppmの酸素を含む雰囲気中での重量減少量は極めて僅かで、実質的に零ということができる程度のものであった。同時に試験したC/Cコンポジットと比較したとき、1,000ppmにおける減少率は約10分の1以下であり、また、従来法で製造したSi含浸複合材料と比較しても1%の酸素存在下では、2分に1以下、1,000ppmの酸素の存在下では約3分に1以下であった。このことから本願発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、極めて優れた耐酸化特性を示すことが分かる。
【0057】
(実施例2)
一方向に引き揃えた直径7μmの炭素繊維の束にフェーノル樹脂を含浸させながら、一万2千本炭素繊維を束ね、このものと金属珪素、マトリックス炭素の前駆体であるフェノール樹脂、バインダーを一緒にして、熱可塑性樹脂であるポリエチレン樹脂製のチューブに入れ、骨格部の構成の最小単位であるヤーンを調製した。このときのヤーンの組成は、40重量%の炭素繊維と、30重量%のマトリックス炭素の前駆体であるフェノール樹脂と、30重量%の金属珪素とから構成されていた。このようにして調製した一連のヤーンを用いてプレプレグシートを織り上げた。このようにして調製した一連のプレプレグシートを必要量積層して、この積層体をホットプレスで600℃、100kg/cm2で成形した。この成形体を窒素雰囲気中、温度2,000℃で焼成して、厚さ20mmのC/Cコンポジットを得た。得られたC/Cコンポジットを用いて、アルキメデス法により測定した密度は、1.7g/cm3で、また同じくアルキメデス法により測定した開気孔率は、10%であった。
【0058】
次に、得られたC/Cコンポジットを、気孔率が5%となるのに充分な量からなる、純度99.8%、平均粒径1mmの金属珪素粉末と炭化ホウ素とで充填されたカーボンるつぼ内に立設した。ついで、焼成炉内にカーボンるつぼを移動した。焼成炉内の温度を1300℃、不活性ガスとしてアルゴンガス流量を20NL/分、焼成炉内圧を1hPa、その保持時間を4時間として処理した後、焼成炉内の圧力をそのまま保持しつつ、炉内温度を1600℃に昇温することにより、C/Cコンポジットに金属珪素と炭化ホウ素とを含浸させて、気孔率5%の高耐酸化性Si含浸複合材料を製造した。
【0059】
得られた高耐酸化性Si含浸複合材料を用いて耐酸化性の測定に供したところ、図3に示すように1%の酸素を含む雰囲気中での重量減少量はほぼ2%、1,000ppmの酸素を含む雰囲気中での重量減少量は0.3%で、100ppmの酸素を含む雰囲気中での重量減少量は極めて僅かで、実質的に零ということができる程度のものであった。同時に試験したC/Cコンポジットと比較したとき、1,000ppmにおける減少率は約10分の1以下であり、また、従来法で製造したSi含浸複合材料と比較しても1%の酸素存在下では、2分に1以下、1,000ppmの酸素の存在下では約3分に1以下であった。このことから本願発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料は、極めて優れた耐酸化特性を示すことが分かる。
【0060】
【発明の効果】
本発明の新規な高耐酸化性Si含浸複合材料は、耐酸化性が著しく強化されたものである。従って、高温下での耐酸化性が高度に要求される金型用部材、摺動材、航空機用等の大型輸送用機関のブレーキ用部材として極めて優れた性質を有しているということができる。高い耐高温特性を有しているので、高温に曝される条件下で使用される金属溶湯用部材としても好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の骨格部の構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】 本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の一態様であるSi−SiC系材料が形成された複合部材において、Si−SiC系材料の形成状況を説明するために、一部構造を省略した断面構造を示す断面図である。
【図3】 本発明に係る高耐酸化性Si含浸複合材料の一態様であるSi−SiC系材料が形成された高耐酸化性Si含浸複合材料の耐酸化性を試験したときの重量減少の状態を示す図である。
【符号の説明】
1A、1B、1C、1D、1Eおよび1F…ヤーン配列体、2A…ヤーン、2B…ヤーン、3…繊維束(ヤーン)、4…炭化珪素相、4A…炭化珪素相、5…Si−SiC系材料相、5A…Si−SiC系材料相、6…ヤーン集合体、7…高耐酸化性Si含浸複合材料、8…マトリックス。

Claims (10)

  1. 炭化珪素、金属珪素、実質的に炭素繊維からなる炭素、および0重量%〜10重量%の炭化ホウ素とから構成され、骨格部と、骨格部の周囲に形成されたマトリックスとからなる構造を有する高耐酸化性Si含浸複合材料であって、
    炭化珪素の少なくとも50%はβ型で、
    骨格部は、炭素繊維束を含み、少なくともその内部または表面の何れか一方にSi−SiC系材料相が形成されているヤーンを、特定の本数配列したヤーン配列体を、積層して構成されるヤーン集合体であって、三次元構造を有するC/Cコンポジットからなる骨格部炭素繊維束と、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、0〜10重量%の炭化ホウ素から形成されており、
    マトリックスは、該骨格部を構成するヤーンとヤーンとの間に三次元的格子状に形成され、ヤーンの表面に沿って細長く延びた炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、0重量%〜10重量%の炭化ホウ素により形成され、
    前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、
    前記複合材料は10%以下の気孔率を有することを特徴とする高耐酸化性Si含浸複合材料。
  2. 前記マトリックスが、骨格部表面に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の高耐酸化性Si含浸複合材料。
  3. 前記マトリックス中の珪素含有比率がヤーンの表面から離れるに従って上昇する傾斜組成を有するSi−SiC系材料および/またはSi−SiC系材料相において炭素と結合した状態で存在する珪素の濃度が、隣接する炭素繊維の表面から内部に向かって小さくなる傾斜組成を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐酸化性Si含浸複合材料。
  4. 前記骨格部は、炭素繊維と炭素繊維以外の炭素成分と、金属珪素および/または炭化珪素と、さらに0〜10重量%の炭化ホウ素を含む炭素繊維束から構成されたヤーンを、少なくとも複数本ほぼ並行に二次元的に配列して作製したヤーン配列体を、交互に直交するように必要数積層して作製されたものであるヤーン集合体から構成されている成形体から製造したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高耐酸化性Si含浸複合材料。
  5. 前記マトリックスが、前記高耐酸化性Si含浸複合材料の中で互いに連続することで三次元網目構造を形成していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高耐酸化性Si含浸複合材料。
  6. 酸素濃度が1%以下で、600℃に保持された高温雰囲気内での重量減少が25%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の高耐酸化性Si含浸複合材料。
  7. 炭化珪素、金属珪素、実質的に炭素繊維からなる炭素、シリカ−酸化ホウ素とから構成され、骨格部と、骨格部の周囲に形成されマトリックスと、からなる構造を有する高耐酸化性Si含浸複合材料であって、
    炭化珪素の少なくとも50%はβ型で、
    骨格部は、炭素繊維束を含み、少なくともその内部または表面の何れか一方にSi−SiC系材料相が形成されているヤーンを、特定の本数配列したヤーン配列体を、積層して構成されるヤーン集合体であって、三次元構造を有するC/Cコンポジットからなる骨格部炭素繊維束と、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、シリカ−酸化ホウ素から形成されており、
    マトリックスは、該骨格部を構成するヤーンとヤーンとの間に三次元的格子状に形成され、ヤーンの表面に沿って細長く延びた炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と、シリカ−酸化ホウ素により形成され、
    前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、
    前記複合材料は10%以下の気孔率を有することを特徴とする高耐酸化性Si含浸複合材料。
  8. 炭化珪素、金属珪素、実質的に炭素繊維からなる炭素とから構成され、骨格部と、骨格部の周囲に形成されマトリックスとからなる構造を有する高耐酸化性Si含浸複合材料であって、
    炭化珪素の少なくとも50%はβ型で、
    骨格部は、炭素繊維束を含み、少なくともその内部または表面の何れか一方にSi−SiC系材料相が形成されているヤーンを、特定の本数配列したヤーン配列体を、積層して構成されるヤーン集合体であって、三次元構造を有するC/Cコンポジットからなる骨格部炭素繊維束と、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料から形成されており、
    マトリックスは、該骨格部を構成するヤーンとヤーンとの間に三次元的格子状に形成され、ヤーンの表面に沿って細長く延びた炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料により形成され、前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、
    前記複合材料は10%以下の気孔率を有するものである高耐酸化性Si含浸複合材料の製造方法であって、
    熱可塑性樹脂で被覆された炭素繊維の束の中に、少なくとも金属珪素か炭化珪素のいずれかが添加されている炭素繊維束からなるヤーンとヤーン、および/またはヤーン配列体とヤーン配列体を、金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料を添加したバインダーを使用して成形した成形体、あるいは、金属珪素も炭化珪素も含まないバインダーを使用して成形した成形体を、焼成し、焼成体を形成する工程と、
    焼成炉中に収容した焼成体の重量と、焼成炉中で焼成体に含浸させるために使用される金属珪素との合計重量1kg当たり0.1NL以上の不活性ガスを流しつつ、炉内温度1100〜1400℃、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持した後、温度1450〜2500℃に昇温して前記焼成体の開気孔内部へ金属珪素を溶融、含浸させ、Si−SiC系材料からなるマトリックスを形成させる工程とからなることを特徴とする、上記高耐酸化性Si含浸複合材料の製造方法。
  9. 炭化珪素、金属珪素、実質的に炭素繊維からなる炭素、炭化ホウ素とから構成され、骨格部と、骨格部の周囲に形成されたマトリックスとからなる構造を有する高耐酸化性Si含浸複合材料であって、
    炭化珪素の少なくとも50%はβ型で、
    骨格部は、炭素繊維束を含み、少なくともその内部または表面の何れか一方にSi−SiC系材料相が形成されているヤーンを特定の本数配列したヤーン配列体を、積層して構成されるヤーン集合体であって、三次元構造を有するC/Cコンポジットからなる骨格部炭素繊維束と、炭素繊維束内または炭素繊維束の周囲に形成された炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と0.1重量%〜10重量%の炭化ホウ素とから形成されており、
    マトリックスは、該骨格部を構成するヤーンとヤーンとの間に三次元的格子状に形成され、ヤーンの表面に沿って細長く延びた炭化珪素と金属珪素より構成されるSi−SiC系材料と0.1重量%〜10重量%の炭化ホウ素により形成され、前記マトリックスと前記骨格部とは一体的に形成されており、かつ、
    前記複合材料は10%以下の気孔率を有するものである高耐酸化性Si含浸複合材料の製造方法であって、
    熱可塑性樹脂で被覆された炭素繊維の束の中に、少なくとも金属珪素か炭化珪素のいずれかと骨格部100重量%当たり、0.1重量%〜10重量%の炭化ホウ素が添加されている炭素繊維束からなるヤーンとヤーン、および/またはヤーン配列体とヤーン配列体、金属珪素と炭化珪素とから選ばれた少なくとも一種類の材料0.1重量%〜10重量%の炭化ホウ素が添加されたバインダーを使用して成形した成形体、あるいは、金属珪素、炭化珪素、および炭化ホウ素のいずれも含まないバインダーを使用して成形した成形体を、焼成し、焼成体を形成する工程と
    焼成炉中に収容した焼成体の重量と、焼成炉中で焼成体に含浸させるために使用される 金属珪素との合計重量1kg当たり0.1NL以上の不活性ガスを流しつつ、炉内温度1100〜1400℃、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持した後、温度1450〜2500℃に昇温して前記焼成体の開気孔内部へ金属珪素と0.1重量%〜10重量%の炭化ホウ素を焼成炉中で溶融、含浸させ、Si−SiC系材料と炭化ホウ素とからなるマトリックスを形成させる工程、からなることを特徴とする、上記高耐酸化性Si含浸複合材料の製造方法。
  10. 更に、焼成体の最表面を炭化ホウ素で被覆する工程を含む請求項9に記載の高耐酸化性Si含浸複合材料の製造方法。
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