JP2005162601A - 繊維複合材料およびその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】動摩擦係数が小さく、耐磨耗性を有するとともに、軽量であり、さらに、耐衝撃性に優れるとともに、強酸化腐食環境での耐食性、耐クリープ性、耐スポーリング性をも有し、高硬度であることから摺動材としても使用可能なブレーキ用部材として優れた性能を有する新規な繊維複合材料の提供。
【解決手段】55質量%〜75質量%の炭素と、1質量%〜10質量%の珪素と、10質量%〜50質量%の炭化珪素とから構成され、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが層方向に配向しつつ三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合う前記ヤーンの間に充填されているSi−SiC系材料からなるマトリックスとを備え、0.05〜0.6の動摩擦係数と、0.5%〜10%に制御された気孔率とを有することを特徴とする繊維複合材料により達成。
【選択図】図1
【解決手段】55質量%〜75質量%の炭素と、1質量%〜10質量%の珪素と、10質量%〜50質量%の炭化珪素とから構成され、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが層方向に配向しつつ三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合う前記ヤーンの間に充填されているSi−SiC系材料からなるマトリックスとを備え、0.05〜0.6の動摩擦係数と、0.5%〜10%に制御された気孔率とを有することを特徴とする繊維複合材料により達成。
【選択図】図1
Description
本発明は、半導体製造装置、精密測定器、自動車、航空機部品等に用いられる転がり軸受、すべり軸受等の摺動材、および大型陸上輸送機械、例えば、大型自動車等の停止または速度制御の際に使用する速度制御装置に連動して装着されたディスクブレーキ用の摩擦材として使用されるブレーキ用部材として使用可能な新規な繊維複合材料およびその用途に関する。
転がり軸受、すべり軸受等の摺動材は、半導体製造装置、精密測定器、自動車、航空機部品等の構成部材として、半導体、窯業、電子部品、車輌製造等のさまざまな分野において広範に使用されている。特に、今日においては、技術革新が急速に進む中で、宇宙往還機やスペースプレーン等の宇宙開発分野、核エネルギー、太陽エネルギーさらに水素エネルギー等のエネルギー分野では、滑軸受、スライダー、ベアリング保持器等に用いられる摺動材は、燃焼あるいは炭化により油を潤滑剤として使うことができない400℃以上という高温下または油が凍結してしまう低温度下で使用される。従って、摺動材自体が小さい動摩擦係数を有し、かつ磨耗しにくいことが必要である。また、このような摺動材には、中高温(200−2000℃)における高強度と材料としての高い信頼性(靭性、耐衝撃性)、耐環境性(耐食性、耐酸化性、耐放射線性)が要求されることはいうまでもない。また、最近の省エネルギーの要請により、摺動材には、小さな力で動かすことができるような軽量なものであることも要求される。
このような状況下、従来においては、摺動材として、耐熱性に優れ、かつ高強度である窒化珪素や炭化珪素材料が用いられてきたが、動摩擦係数が0.5〜1.0と大きく、相手材の磨耗を生じやすいことから、必ずしも摺動材として最適とはいえず、また、密度も大きいことから、大きい動摩擦係数と相まって、駆動させるのに大きなエネルギーを消費するという欠点があった。さらに、固有の性質として脆さという欠点を有しており、小さな傷に対しても極めて脆く、熱的、機械的衝撃に対しても充分な強度を有していなかった。
このセラミックスの欠点を克服する手段として、連続したセラミックス系繊維を複合化させたセラミックス系複合材料(CMC)が開発され、摺動材として用いられている。この材料は高温でも高強度高靱性で、優れた耐衝撃性、耐環境性を有しているため、超耐熱摺動材の主流として欧米を中心に研究開発が盛んに行われている。
一方、大型自動車等の大型陸上輸送機械において装着されている制動装置で使用される摩擦材としては、現在は高温下での摩擦係数が極めて高く、軽量であることからカーボンファイバーインカーボン(以下C/Cコンポジットと称することもある)が広く使用されている。このような大型陸上輸送機械においては、その運転状況の変化に応じてブレーキによる制動を長時間続けざるを得なかったり、または高頻度でブレーキによる制動を繰り返す必要に迫られることがあり、結果としてC/Cコンポジットを摩擦材として使用した制動装置の場合には摩擦材が空気中で高温下に長時間曝されることとなる。従って、摩擦材は基本的には高温で燃焼しやすい炭素繊維をその主成分とするものであるために、このような条件下では、酸素と反応して、著しく摩耗するだけでなく、発煙したりして大事故寸前に至るケースもあると報告されている。しかしながら、高温下に於ける摩擦力の高さ、ディスクブレーキに装着の際に要求される柔軟性などの性能の点から、それに代わる原料を見いだせていないのが現状である。
ところで、直径が10μm前後のセラミックス長繊維を、通常、数百本〜数千本束ねて繊維束(ヤーン)を形成し、この繊維束を二次元または三次元方向に配列して一方向シート(UDシート)や各種クロスとしたり、また上記シートやクロスを積層したりすることにより、所定形状の予備成形体(繊維プリフォーム)を形成し、この予備成形体の内部に、CVI法(化学的気相含浸法)や無機ポリマー含浸焼成法等によりマトリックスを形成したり、または、上記予備成形体内部にセラミック粉末を鋳込み成形法によって充填した後に焼成することにより、マトリックスを形成して、セラミックマトリックス中に繊維を複合化したセラミックス系繊維複合材料(CMC)が開発されている。
CMCの具体例としては二次元または三次元方向に配列した炭素繊維の間隔に炭素からなるマトリックスを形成してなるC/Cコンポジット、SiC繊維とSiC粒子を含む成形体にSiを含浸させて形成されるSiC繊維強化Si−SiC複合体等が知られている。
しかしながら、C/Cコンポジットは、靱性に富むため耐衝撃性に優れ、かつ軽量、高硬度であるが、炭素から構成されているため、酸素存在下では高温での使用ができず、超耐熱摺動材としての使用には制限があった。また、硬度が比較的低いこととともに圧縮強度が低いため、摺動材あるいはブレ−キ用部材として使用した場合には、磨耗量が大きいという欠点があった。
一方、SiC繊維強化Si−SiC複合体は、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性等には優れるものの、繊維表面に傷がつきやすく、また、SiC繊維はSi−SiC等との潤滑性に劣るため、母体と繊維間の引き抜き効果が小さいことから、C/Cコンポジットに比べて靱性に劣り、そのため耐衝撃性が低く、軸受、スライダー等の複雑な形状や薄肉部分を有する摺動材には向かないという問題があった。
本発明は上記した従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、動摩擦係数が小さく、耐磨耗性を有するとともに、軽量であり、さらに、耐衝撃性に優れるとともに、強酸化腐食環境での耐食性、耐クリープ性、耐スポーリング性をも併せ持ち、かつ、高硬度な摺動材、あるいは、C/Cコンポジットが有する優れた耐衝撃性、軽量等の優れた点を保持しつつ、大型陸上輸送機械のブレーキ用摩擦材として使用した場合でも、C/Cコンポジットの様に、不可避的に発生する高温のために酸素存在下ではその摩耗が激しく、それ故、可成りの頻度での交換作業を必要とすることのないブレーキ用部材として優れた性能を有する新規な繊維複合材料を提供することにある。
本願発明者らは上記の目的を達成するために種々検討した結果、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合う前記ヤーンの間に充填されているSi−SiC系材料から構成されるマトリックスとを備えた繊維複合材料であって、0.05〜0.6の動摩擦係数と、0.5%〜10%に制御された気孔率とを有すること、および、Si−SiC系材料からなるマトリックスを備えていることにより、第1に、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性に於いても優れ、酸素存在下で、かつ、高温条件下のために潤滑剤を使用できないような条件下でも摺動材として使用できること、第2に、ブレーキ用の摩擦材として優れた耐衝撃性、軽量等の優れた点を保持しつつ、高温の発生を余儀なくされるディスクブレーキ用の摩擦材として使用しても、酸素存在下でも充分な耐摩耗性を示し、交換作業の頻度もC/Cコンポジットの様に高頻度で行うことを必要とせずに継続使用が可能となり、上記の目的を達成できることを見い出した。本発明は、これらの知見に基づき完成させれたものである。
本発明に係る新規な繊維複合材料は、基本的には、55質量%〜75質量%の炭素と、1質量%〜10質量%の珪素と、10質量%〜50質量%の炭化珪素とから構成され、Si−SiC系材料からなるマトリックスが、三次元的に組み合わされ互いに分離しないように一体化された炭素繊維からなるヤーン集合体の間に一体的に形成されている。後述するようにSi−SiC系材料から形成されるマトリックスの層を設ける場合には、その厚さは、少なくとも0.01mmあることが好ましい。さらに少なくとも0.05mm以上であることが好ましく、少なくとも0.1mm以上であることが一層好ましい。
さらに、本発明に係る新規な繊維複合材料において、前記マトリックスが前記ヤーンから離れるのに従って、珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有していることが好ましく、上記繊維複合材料は窒化ホウ素、ホウ素、銅、ビスマス、チタン、クロム、タングステンおよびモリブデンからなる群より選択した1以上の物質を含有してもよい。また、上記の繊維複合材料は、常温に於ける動摩擦係数が0.05〜0.6であり、湿潤状態に於ける動摩擦係数も0.05〜0.6であり、かつ、気孔率が0.5%〜10%に制御されていることがことが好ましい。
本発明の新規な繊維複合材料を摺動材として使用したときには、動摩擦係数が0.05〜0.5と小さく、また、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性を有するSi−SiC系材料からなる層を表面に配しているため、C/Cコンポジットの有する低耐酸化性を克服することができ、酸素存在下においても、潤滑剤として油を用いることができないような高温での使用が可能である。また、優れた耐磨耗性をも併せ持つ。
また、C/Cコンポジットを母材としていることから、軽量であり、動摩擦係数が小さいこととも相まって、エネルギーの損失が少なく、省エネルギーの要請にも沿う。さらに、母材がC/Cコンポジットであるため、靱性に富み、優れた耐衝撃性、高硬度性を有する。従って、SiC繊維強化Si−SiC複合体の有する低耐衝撃性という欠点を克服することができ、複雑な形状や薄肉部分を有する摺動材にも用いることができる。
本発明の新規な繊維複合材料をブレーキ用部材として使用した場合には、酸素の存在下での高温条件での耐摩耗性において著しく優れており、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性を有するSi−SiC系材料からなる層を表面に配しているため、C/Cコンポジットの有する低耐酸化性を克服することができ、高温でかつ酸素存在下においても、使用が可能である。また、優れた耐磨耗性をも併せ持つ。特に、悪環境条件下でも、その動摩擦係数の変動の幅が低いことから、悪条件下でも高い信頼性を要求される、航空機用のブレーキ用部材として極めて優れた性質を有しているということができる。また、C/Cコンポジットを母材としていることから、軽量であり、エネルギーの損失が少なく、省エネルギーの要請にも沿う。さらに、母材がC/Cコンポジットであるため、靱性に富み、優れた耐衝撃性、高硬度性を有する。従って、高温でかつ酸素の存在下で使用されることとなる大型輸送機械の制動装置に於けるブレーキ用部材として極めて有望な素材であることは明らかである。
本発明に係る複合繊維材料は、C/Cコンポジットからなる母材にSi−SiC系材料からなる層を配したセラミックス・金属・炭素からなる複合材料を用いて構成される。
以下、本発明に係る新規な繊維複合材料について説明する。これは、新規C/Cコンポジットを基本とし、その基本的な構成に改善を加えた新しい概念の材料である。基本素材として使用するC/Cコンポジットとしては、直径が10μm前後の炭素繊維を、通常、数百本〜数万本束ねて繊維束(ヤーン)を形成し、この繊維束を二次元または三次元方向に配列して一方向シート(UDシート)や各種クロスとしたり、また上記シートやクロスを積層したりすることにより、所定形状の予備成形体(繊維プリフォーム)を形成し、該繊維束の外周に形成されている有機物からなる柔軟性中間材料の被膜を焼成し上記の柔軟性中間材料を除去したものを使用すればよい。本発明に於いて使用するC/Cコンポジットは、上記のヤーン中の炭素繊維以外の炭素成分は、好ましくは炭素粉末であり、特に好ましくは黒鉛化した炭素粉末である。
本発明に係る繊維複合材料は、母材としてC/Cコンポジットを用いており、その炭素繊維の構造が、破壊されることなく保持されているという大きな特徴を有している。しかも、ヤーン集合体中で隣り合うヤーンの間に、Si−SiC系材料からなるマトリックスを充填した微構造を有している。
本発明において、Si−SiC系材料とは、主成分としてシリコンと炭化珪素とを含有する材料の総称であり、このSi−SiC系材料は以下のようにして製造されるものをいう。本発明では、C/Cコンポジットまたはその成形体に対して、シリコンを含浸させるが、その際シリコンはコンポジット内の炭素繊維を構成する炭素原子および/または炭素繊維の表面に残存している遊離炭素原子と反応し、一部が炭化されるために、C/Cコンポジットの最表面や炭素繊維からなるヤーンとヤーンとの間には、一部炭化されたシリコンが生成し、かくして上記のヤーンとヤーンとの間には炭化されたシリコンを含むマトリックスが形成される。このマトリックスにおいては、ほぼ純粋に珪素が残留している珪素相から、ほぼ純粋な炭化珪素相に至るまで、いくつかの相異なる相を含み得る。つまり、このマトリックスは、典型的には珪素相と炭化珪素相とからなるが、珪素相と炭化珪素相との間に、珪素をベースとして炭素の含有量が傾斜的に変化しているSi−SiC共存相を含み得る。従って、Si−SiC系材料とは、このようなSi−SiC系列において、炭素の濃度が0mol%から50mol%まで変化している材料の総称である。
本発明に係る繊維複合材料は、マトリックスが、ヤーンの表面に沿って生成している炭化珪素相を備えていることが好ましい。この場合には、各ヤーンそれ自体の強度がより一層向上し、破壊しにくくなる。また、上記繊維複合材料は、好ましくは、マトリックスが珪素からなる珪素相を備えており、この珪素相とヤーンとの間に炭化珪素相が生成している。この場合には、ヤーンの表面が炭化珪素相によって強化されるのと共に、マトリックスの中央部分が比較的に硬度の低い珪素相からなることから、微視的な応力分散が一層促進される。
かくして、常温(20℃)から700℃への2分間での急速加熱、同温度での5分間の保持、常温下での放置による自然冷却のサイクルを15回繰り返した後に於ける、試験開始前の質量に対する試験終了後の質量の減少率が8%以下、好ましくは5%以下で、かつ、JISR1601により試験したときの試験開始前の強度に対する試験終了後の強度の保持率が80%以上、好ましくは85%以上である繊維複合材料が提供される。このことにより、ブレーキ用部材や摺動材として使用したときに、周囲環境による特性変動を少なくすることができ、信頼性の高いブレーキ用部材や摺動材を提供することができることとなる。
また、この繊維複合材料は、好ましくは、ヤーンの表面から離れるのに従って珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有するマトリックスを有している。また、この繊維複合材料は、好ましくは、ヤーン集合体が複数のヤーン配列体を備えており、各ヤーン配列体がそれぞれ複数のヤーンをほぼ平行に二次元的に配列することによって形成されており、各ヤーン配列体が積層されることによってヤーン集合体が構成されている。これによって、繊維複合材料が、複数層のヤーン配列体を一方向へと向かって積層した積層構造を有することになる。
この場合において特に好ましくは、隣接するヤーン配列体における各ヤーンの長手方向が互いに交差していることである。これによって、一層応力の分散が促進される。隣り合うヤーン配列体におけるヤーンの長手方向は、特に好ましくは、直交している。また、好ましくは、マトリックスが、繊維複合材料の中で互いに連続することで三次元網目構造を形成している。この場合において特に好ましくは、マトリックスが各ヤーン配列体においてほぼ平行に二次元的に配列されており、隣り合う各ヤーン配列体中に生成しているマトリックスが互いに連続しており、これによってマトリックスが三次元格子を形成している。また、隣り合うヤーンの間隙には、100%マトリックスが充填されていてもよいが、ヤーンの間隙のうち一部をマトリックスが充填している場合も含む。
本発明に係る繊維複合材料は、上記のように製造された特定量のC/Cコンポジットからなる母材と、同母材を構成する上記ヤーン集合体とヤーンとヤーンとの間にマトリックスとして三次元的格子状に形成されたSi−SiC系材料と、からなる繊維複合材料から製造される。本発明の繊維複合材料は、常温での動摩擦係数が0.05〜0.6と大きく、また、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性を有するSi−SiC系材料からなるマトリックス層を表面に配することにより、C/Cコンポジットの有する低耐酸化性を克服することができ、酸素存在下において高温下に余儀なく曝される摺動材やブレーキ用部材として使用が可能である。特に、気孔率を0.5%〜10%に制御した場合には、動摩擦係数の周囲環境の変化による変動量が極めて少なく、安定したブレーキ性能が発揮される。高温条件下での摩耗量は、500℃で1.0%/時間以下、より好ましくは0.6%/時間以下である。また、優れた耐磨耗性をも併せ持つ。
また、C/Cコンポジットを母材としていることから、軽量であり、省エネルギーの要請にもかなう材料であるといる。さらに、母材がC/Cコンポジットであるため、靱性に富み、優れた耐衝撃性、高硬度性を有する。従って、従来使用されているC/Cコンポジットが有している特性を保持したまま、同C/Cコンポジットが有する耐高温摩耗性が低いという欠点を克服することができる。また、C/Cコンポジットは連続した開気孔を有するので、この気孔に対して含浸形成されるSi−SiCは、連続構造をとり三次元網目構造をとる。従って、どの部分を切り出しても、母材となったC/Cコンポジットに比して高い耐磨耗性を有し、かつ本来C/Cコンポジットが持っている高い放熱性、柔軟性なども維持される。
なお、C/Cコンポジットとは、前述の如く、二次元または三次元方向に配列した炭素繊維の間隔に炭素からなるマトリックスを形成してなる素材であるが、炭素繊維を10〜70%含有していれば、例えば窒化ホウ素、ホウ素、銅、ビスマス、チタン、クロム、タングステン、モリブデン等の炭素以外の他の元素を含んでいてもよい。
Si−SiC系材料からなるマトリックス層を表面に有するものを用いた場合には、Si−SiC系材料が溶融してガラスとなり母材を酸素から保護する速度の方が、酸素の母材内部への拡散速度よりも早いため、母材として使用されたC/Cコンポジットが拡散してきた酸素により酸化されるような事態を回避でき、母材を酸化から保護することができる。即ち、本発明に係る摺動材の場合には、自己修復性を示し、より長期間に亙る使用が可能となる。この効果は、Siが前述の窒化ホウ素、銅、ビスマス等の第三成分を含有しても有効である。
さらに、SiC材料は熱膨張係数がC/Cコンポジットより大きいため、長期間高温条件下での使用において、SiC材料からなる層が剥離するおそれがあるのに対し、Si−SiC系材料の熱膨張係数はC/Cコンポジットと同程度であるため、熱膨張係数の差に起因する剥離を防ぐことができ、摺動材やブレ−キ用部材として優れた特質を有するものであるということができる。
本発明に係る繊維複合材料について、図面を使用してさらに説明することとする。図1は、ヤーン集合体の概念を説明するための概略斜視図であり、図2(a)は図1のIIa−IIa線断面図であり、図2(b)は図1のIIb−IIb線断面図である。図3は、図2(a)の一部拡大図である。繊維複合材料7の骨格は、ヤーン集合体6によって構成されている。ヤーン集合体6は、ヤーン配列体1A、1B、1C、1D、1E、1Fを上下方向に積層してなる。各ヤーン配列体においては、各ヤーン3が二次元的に配列されており、各ヤーンの長手方向がほぼ平行である。上下方向に隣り合う各ヤーン配列体における各ヤーンの長手方向は、直交している。即ち、各ヤーン配列体1A、1C、1Eの各ヤーン2Aの長手方向は、互いに平行であり、かつ各ヤーン配列体1B、1D、1Fの各ヤーン2Bの長手方向に対して直交している。各ヤーンは、炭素繊維と、炭素繊維以外の炭素成分とからなる繊維束3からなる。ヤーン配列体が積層されることによって、三次元格子形状のヤーン集合体6が構成される。各ヤーンは、後述するような加圧成形工程の間に押しつぶされ、略楕円形になっている。
各ヤーン配列体1A、1C、1Eにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、マトリックス8Aが充填されており、各マトリックス8Aはヤーン2Aの表面に沿ってそれと平行に延びている。各ヤーン配列体1B、1D、1Fにおいては、隣り合う各ヤーンの間隙には、マトリックス8Bが充填されており、各マトリックス8Bは、ヤーン2Bの表面に沿ってそれと平行に延びている。本例では、マトリックス8A、8Bは、それぞれ、各ヤーンの表面を被覆する炭化珪素相4A、4Bと、炭化珪素相4A、4Bよりも炭素の含有割合が少ないSi−SiC系材料相5A、5Bからなっている。炭化珪素相中にも珪素を一部含有していてよい。また、本例では、上下方向に隣接するヤーン2Aと2Bとの間にも、炭化珪素相4A、4Bが生成している。各マトリックス8Aと8Bとは、それぞれヤーンの表面に沿って細長く、好ましくは直線状に延びており、各マトリックス8Aと8Bとは互いに直交している。そして、ヤーン配列体1A、1C、1Eにおけるマトリックス8Aと、これに直交するヤーン配列体1B、1D、1Fにおけるマトリックス8Bとは、それぞれヤーン2Aと2Bとの間隙部分で連続している。この結果、マトリックス8A、8Bは、全体として、三次元格子を形成している。
図4は、他の実施形態に係る摺動材を構成する他の繊維複合材料の要部を概略的に示す部分断面斜視図である。本例では、上下方向に隣り合う各ヤーン2Aと2Bとの間には炭化珪素相が実質的に存在していない。各ヤーン配列体において、隣り合うヤーン2Aと2Aとの間、あるいはヤーン2Bと2Bとの間には、それぞれマトリックス8A、8Bが形成されている。マトリックス8A、8Bの形態は、上下方向に隣り合うヤーン間に炭化珪素相がないことを除けば、図1〜図3の例と同様である。各マトリックス8A、8Bは、それぞれ、ヤーン2A、2Bの表面に接して生成している炭化珪素相5Cと、その内側にヤーンとは離れて生成しているSi−SiC系材料相4Cとを備えている。
Si−SiC系材料相においては、それぞれ、ヤーンの表面から離れるほど、炭素濃度が少なくなる傾斜組成を有していることが好ましく、あるいは、珪素相からなっていることが好ましい。摺動材やブレーキ用部材用の材料としては、図5に示すように、C/Cコンポジット15と、C/Cコンポジット15の表面にシリコンが含浸されることによって生成するマトリックス層13とを備えていることが好ましく、特にマトリックス層13の表層部には珪素層14が形成されているものもが好ましい。なお、12は、珪素を含浸させる前のC/Cコンポジット本体の範囲を示す。また、摺動材やブレーキ用部材全体を、上記の繊維複合材料から形成することも好ましい。
本発明に係る複合材料は、図5に示すように、表面近傍に珪素のみからなる層が形成されたマトリックス層2からなるものであることが好ましい。Si−SiC系材料を母材表面に単にコーティングするだけでは、高温酸化条件下においては両者の熱膨張係数差により、容易にSi−SiC系材料からなる層が剥離するが、Si−SiC系材料を繊維複合材料のマトリックス層として形成することにより、繊維の積層方向での強度が増し、剥離を防止でき、ひいては摺動材に耐久性を付与することができる。
ここで、Si−SiC系材料を母材に含浸させることにより形成されるマトリックス層13の厚さは、少なくとも0.01mmあることが好ましい。さらに少なくとも0.05mm以上あることが好ましく、少なくとも0.1mm以上であることが一層好ましい。このマトリックス層13の厚さが0.01mm未満の場合は、高酸化条件下において、摺動材として要求される耐久性を充分に付与することができないからである。
また、本発明に係る繊維複合材料において、マトリックス層13におけるSi濃度は、表面から内部に向かって小さくなることが好ましい。マトリックス層13におけるSi濃度に傾斜を持たせることにより、強酸化腐食環境での耐食性および強度、表層部および内層部の欠陥へのヒーリング機能を著しく向上させることができ、さらに熱膨張係数差による材料の熱応力劣化を防止できる。これは、表層部のSi濃度が、内層部のSi濃度よりも相対的に高いため、発生したマイクロクラックが、加熱中にヒーリングされ、耐酸化性を保持するからである。また、本発明の繊維複合材料に用いるC/Cコンポジットは、窒化ホウ素、ホウ素、銅、ビスマス、チタン、クロム、タングステンおよびモリブデンからなる群より選択した1以上の物質を含有してもよい。
これらの物質は潤滑性を有するため、C/Cコンポジットからなる母材に含有させることにより、Si−SiC系材料が含浸した母材の部分においても、繊維の潤滑性を維持することができ、靱性の低下を防ぐことができる。なお、例えば、窒化ホウ素の含有量は、C/Cコンポジットからなる母材100質量%に対し、0.1〜40質量%であることが好ましい。0.1質量%未満では窒化ホウ素による潤滑性付与の効果が充分に得られず、40質量%を超える場合は窒化ホウ素の脆さが繊維複合材料にも現れてくるからである。
このような、本発明の繊維複合材料は、C/Cコンポジットの耐衝撃性、高硬度性および軽量性と、Si−SiC系材料の、耐酸化性、耐スポーリング性、自己潤滑性、耐磨耗性等を併せ持ち、さらに、自己修復性をも有するため、高温酸化条件下での使用に長期間耐えることができるので、摺動材やブレーキ用部材として、好適に用いることができる。
本発明に係る繊維複合材料は、好ましくは以下の方法によって製造できる。即ち、炭素繊維の束に対して、最終的には、遊離炭素となり炭素繊維の束のマトリックスとして作用する粉末状のバインダーピッチ、コークス類を包含させ、さらに必要に応じてフェノール樹脂粉末等を含有させることによって、炭素繊維束を作製する。炭素繊維束の周囲に、熱可塑性樹脂等のプラスチックからなる柔軟な被膜を形成し、柔軟性中間材料を得る。この柔軟性中間材料を、ヤーン状にし特開平2−80639号公報に記載のように、必要量を積層した後、ホットプレスで300〜2000℃、常庄〜500kg/cm2の条件下で成形することによって、成形体を得る。または、この成形体を、必要に応じて700〜1200℃で炭化させ、1500〜3000℃で黒鉛化して、焼成体を得る。
炭素繊維は、石油ピッチ若しくはコールタールピッチを原料とし、紡糸用ピッチの調整、溶融紡糸、不融化及び炭素化して得られるピッチ系炭素繊維並びにアクリロニトリル(共)重合体繊維を炭素化して得られるPAN系炭素繊維のいずれのものでもよい。マトリックスの形成に必要な炭素前駆体としては、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂およびタール、ピッチ等が用いられるが、これらはコークス類、金属、金属化合物、無機および有機化合物等を含んでいてもよい。
次いで、上記のように作製された成形体または焼成体とSiとを、1100〜1400℃の温度域、炉内圧0.1〜10hPaで1時間以上保持する。好ましくは、この際、成形体または焼成体とシリコンの合計質量1kg当たり0.1NL(ノルマルリットル:1200℃、圧力0.1hPaの場合、5065リットルに相当)以上の不活性ガスを流しつつ、成形体または焼成体表面にSi−SiC層を形成する。次いで、温度1450〜2500℃、好ましくは1700〜1800℃に昇温して前記成形体または焼成体の開気孔内部へシリコンを溶融、含浸させ、Si−SiC系材料を形成させる。また、この過程において、成形体を用いた場合は、前記成形体の焼成も行われ、繊維複合材料が生成する。
成形体または焼成体とSiを、1100〜1400℃の温度、0.1〜10hPaの圧力に1時間以上保持し、かつその際、成形体または焼成体とSiの合計質量1kg当たり不活性ガスを0.1NL以上、好ましくは1NL以上、さらに好ましくは10NL以上流すように制御することが望ましい。このような、焼成時(即ち、Siの溶融、含浸前の段階)不活性ガス雰囲気にすることにより、無機ポリマーないし無機物のセラミックス化への変化に伴うCO等の発生ガスを焼成雰囲気より除去し、また大気中のO2等による外部からの焼成雰囲気の汚染を防止することによりその後にSiを溶融、含浸して得られる複合材料の気孔率を低く維持することができる。
また、成形体または焼成体へSiを溶融、含浸する際には、雰囲気温度を1450〜2500℃、好ましくは1700〜1800℃に昇温する。この場合、焼成炉内圧は0.1〜10hPaの範囲が好ましい。
上記のように、有機物からなる柔軟性中間材料を炭素繊維束の外周に使用し、珪素の含浸、溶融と組み合わせると、成形体または焼成体において、該柔軟性中間材料が熱分解してヤーンの間隙には細長い開気孔が残り、この細長い開気孔に沿って珪素が焼成体または成形体の奥まで浸透しやすい。この浸透の過程で、珪素がヤーンの炭素と反応してヤーン表面側から徐々に炭化し、本発明で使用する繊維複合材料を生成させることができる。なお、用途に応じて、このような構成を有する繊維複合材料をC/Cコンポジットからなる母材の表層部の一部にのみいわゆる繊維複合材料層として形成してもよい。
マトリックス層の深さの調節は、成形体または焼成体の開気孔率及びその細孔径により行う。例えば、Si−SiC系材料層の厚さを0.01〜10mmとする場合には、少なくとも成形体または焼成体の表面近傍における開気孔率を5〜50%、平均細孔径を1μm以上とする。成形体または焼成体の開気孔率は10〜50%であることが好ましく、平均細孔径は10μm以上とすることが好ましい。開気孔率を5%未満とすると、成形体または焼成体中のバインダーを除去しきれず、50%より大きくすると、母材の内部深くにまでSi−SiC系材料が含浸形成し、複合材料の耐衝撃性が低下するからである。
また、繊維複合材料層をC/Cコンポジットの表面にのみ形成するには、少なくとも表面近傍の開気孔率が焼成中に0.1〜30%になるように調整した成形体を用いることが好ましい。即ち、熱分解する有機物からなる柔軟性中間材料の被膜の炭素繊維束に対する厚さを調整すればよい。
成形体または焼成体の開気孔率を、表面から内部に向かって小さくなるようにするには、バインダーピッチの異なるプリフォームドヤーンからなる複数のプリフォームドシートを、内側から表層側に向かってバインダーピッチが大きくなるように配置して成形することにより行う。
また、上記の繊維複合材料層における珪素濃度に傾斜を設ける場合には、表面近傍の開気孔率が表面から内部に向かって小さくなるように調整した焼成体、または少なくとも表面近傍の開気孔率が焼成中に表面から内部に向かって小さくなるように調整した成形体を用いて、複合材料の製造を行う。繊維複合材料の気孔率を0.5%〜10%に制御するには、Siを成形体あるいは焼成体に含浸させる際に、成形体あるいは焼成体の開気孔率に応じてSi量を調整することにより容易に行うことができる。
本発明に於いて、上記の新規な繊維複合材料を使用して摺動材あるいはブレーキ用部材を製造するに際しては、上記のように製造した複合材料を平面研削盤等により適宜な寸法に切断加工し、平面研削仕上げすることにより製造すればよい。本発明の繊維複合材料から製造した摺動材あるいはブレーキ用部材は、特に、大型輸送機械等の摺動材やブレーキ用部材として好適に使用できる。
次に、本発明について、実施例を用いてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。なお、各例によって得られた繊維複合材料は、以下に示す方法よりその特性を評価した。
(動摩擦係数の評価方法)
テストピースをジグにセットして100rpmで10分間回転させ、相手材(SUJ、10mm球)を2kgの荷重Fp(N)にてテストピースに押し付け、その際の摩擦力Fs(N)を測定した。動摩擦係数の値は下式により算出した。
摩擦係数μ=Fs/Fp
テストピースをジグにセットして100rpmで10分間回転させ、相手材(SUJ、10mm球)を2kgの荷重Fp(N)にてテストピースに押し付け、その際の摩擦力Fs(N)を測定した。動摩擦係数の値は下式により算出した。
摩擦係数μ=Fs/Fp
(比磨耗量の評価方法)
テストピースをジグにセットして100rpmで10分間回転させ、相手材(SUJ、10mm球)を2kgの荷重Pでテストピースに押し付け、試験前の質量Wa(mg)と試験後の質量Wb(mg)を測定した。テストピースの密度ρ(g/cm3)より、磨耗量V(mm3)を下式により算出した。
V=(Wa−Wb)/ρ
比磨耗量Vs(mm3/(N・km))は、磨耗量V(mm3)、試験荷重P(N)および摺動距離L(km)より、下式にて算出した。
Vs=V/(P・L)
テストピースをジグにセットして100rpmで10分間回転させ、相手材(SUJ、10mm球)を2kgの荷重Pでテストピースに押し付け、試験前の質量Wa(mg)と試験後の質量Wb(mg)を測定した。テストピースの密度ρ(g/cm3)より、磨耗量V(mm3)を下式により算出した。
V=(Wa−Wb)/ρ
比磨耗量Vs(mm3/(N・km))は、磨耗量V(mm3)、試験荷重P(N)および摺動距離L(km)より、下式にて算出した。
Vs=V/(P・L)
(開気孔率の測定方法)
開気孔率(%)=[(W3−W1)/(W3−W2)]×100
(アルキメデス法による。)
乾燥質量(W1):100℃のオーブンで1Hr乾燥させ、その後秤量
水中質量(W2):試料を煮沸し、開気孔中に完全に水を侵入させて水中にて秤量
飲水質量(W3):開気孔中に完全に水を侵入させた試料を大気中にて秤量
開気孔率(%)=[(W3−W1)/(W3−W2)]×100
(アルキメデス法による。)
乾燥質量(W1):100℃のオーブンで1Hr乾燥させ、その後秤量
水中質量(W2):試料を煮沸し、開気孔中に完全に水を侵入させて水中にて秤量
飲水質量(W3):開気孔中に完全に水を侵入させた試料を大気中にて秤量
(耐酸化性の評価方法)
テストピースを1150℃の炉内(1%O2、99%N2)へ放置し、200時間後の質量の減少率を測定することにより、耐酸化性を評価した。
テストピースを1150℃の炉内(1%O2、99%N2)へ放置し、200時間後の質量の減少率を測定することにより、耐酸化性を評価した。
(圧縮強さの評価方法)
テストピースに圧縮荷重を加え、下記の式により算出した。
圧縮強さ=P/A
(式中、Pは最大荷重時の荷重、Aはテストピースの最小断面積を表す。)
テストピースに圧縮荷重を加え、下記の式により算出した。
圧縮強さ=P/A
(式中、Pは最大荷重時の荷重、Aはテストピースの最小断面積を表す。)
(高温酸化条件下における耐久性の評価方法)
テストピースを99%Arと1%O2の混合ガスを用い、1200℃大気圧下に保持した後、質量を測定した。
テストピースを99%Arと1%O2の混合ガスを用い、1200℃大気圧下に保持した後、質量を測定した。
(層間セン断強さの評価方法)
テストピースの厚さhの4倍の距離を支点間距離として3点曲げを行い、下式により算出した。
層間セン断強さ=3P/4bh
(式中、Pは破壊時の最大曲げ荷重、bはテストピースの幅を表す。)
テストピースの厚さhの4倍の距離を支点間距離として3点曲げを行い、下式により算出した。
層間セン断強さ=3P/4bh
(式中、Pは破壊時の最大曲げ荷重、bはテストピースの幅を表す。)
(曲げ弾性率の評価方法)
テストピースの厚さhの40倍の距離を支点間距離Lとして3点曲げを行い、荷重−たわみ曲線の直線部の初期の勾配P/σを用いて、下式により算出した。
曲げ弾性率=1/4・L3/bh3・P/σ
(式中、bはテストピースの幅を表す。)
テストピースの厚さhの40倍の距離を支点間距離Lとして3点曲げを行い、荷重−たわみ曲線の直線部の初期の勾配P/σを用いて、下式により算出した。
曲げ弾性率=1/4・L3/bh3・P/σ
(式中、bはテストピースの幅を表す。)
(自己修復性の評価方法)
Max:20MPa〜Min:5MPaの繰返し応力を10万回印加し、内部にマイクロクラックを発生させた後、900℃で2時間アニールし、圧縮強度の測定を行った。
Max:20MPa〜Min:5MPaの繰返し応力を10万回印加し、内部にマイクロクラックを発生させた後、900℃で2時間アニールし、圧縮強度の測定を行った。
(高温酸化条件下における質量減少率)
所定量のテストピースを大気中で、400℃、100時間保持した後、質量を測定し、試験開始前の質量から試験終了後の質量を引き算し、減少質量を求め、これを試験開始前の質量に対する減少率として算出した。
所定量のテストピースを大気中で、400℃、100時間保持した後、質量を測定し、試験開始前の質量から試験終了後の質量を引き算し、減少質量を求め、これを試験開始前の質量に対する減少率として算出した。
(5%質量減の温度測定方法)
大気中で充分な気流の流れを与えつつ、10℃/分の割合で昇温しながら、試料の質量の変化を測定し、試料の質量が5%の減少を示す温度を求める。
大気中で充分な気流の流れを与えつつ、10℃/分の割合で昇温しながら、試料の質量の変化を測定し、試料の質量が5%の減少を示す温度を求める。
(ピン・オン・ディスク回転摩擦係数測定法)
図7に示す共和技研製の試験板を用いた試験装置を用いて水分や油分の浸漬が本発明に係る新規な繊維複合材料に及ぼす影響について試験するために、テストピースを以下の条件下に曝した後、動摩擦係数、および試験ピンの摩耗の程度を測定した。
ピン形状: 直径4mm×長さ30mm
回転数 : 1000rpm
荷重 : 15kgf/cm2
摺動時間: 10分
摺動回転半径:5mm
摺動距離: 314mm
[サンプル保持条件]
保持条件A:100℃×2Hr乾燥後、常温下に保持。
保持条件B:常温下、水中に48Hr浸積後、相対湿度60%で常温下に保持。
保持条件C:常温下、水中に48Hr浸積後、さらに試験中も水中に保持。
保持条件D:常温下、機械油(ユニウエイD32;日本石油(株)製)中に48Hr浸積後、さらに試験中も同油中に保持。
図7に示す共和技研製の試験板を用いた試験装置を用いて水分や油分の浸漬が本発明に係る新規な繊維複合材料に及ぼす影響について試験するために、テストピースを以下の条件下に曝した後、動摩擦係数、および試験ピンの摩耗の程度を測定した。
ピン形状: 直径4mm×長さ30mm
回転数 : 1000rpm
荷重 : 15kgf/cm2
摺動時間: 10分
摺動回転半径:5mm
摺動距離: 314mm
[サンプル保持条件]
保持条件A:100℃×2Hr乾燥後、常温下に保持。
保持条件B:常温下、水中に48Hr浸積後、相対湿度60%で常温下に保持。
保持条件C:常温下、水中に48Hr浸積後、さらに試験中も水中に保持。
保持条件D:常温下、機械油(ユニウエイD32;日本石油(株)製)中に48Hr浸積後、さらに試験中も同油中に保持。
(高温履歴による特性劣化耐性試験)
所定量のテストピースの表面を大気中で、常温(20℃)から700℃迄急速加熱し、700℃に達した後5分間同温度を保持し、次いで常温下に放置して自然冷却して、冷却したテストピースを再び急速加熱、高温下保持、冷却の操作を合計15サイクル繰り返した。この操作の終了後、各テストピースの質量を測定し、試験開始前の質量から試験終了後の質量を引き算し、減少質量を求め、これを試験開始前の質量に対する減少率として算出した。さらに、上記虐待試験前および後のテストピースを用いて、JISR1601により強度試験を行った。
所定量のテストピースの表面を大気中で、常温(20℃)から700℃迄急速加熱し、700℃に達した後5分間同温度を保持し、次いで常温下に放置して自然冷却して、冷却したテストピースを再び急速加熱、高温下保持、冷却の操作を合計15サイクル繰り返した。この操作の終了後、各テストピースの質量を測定し、試験開始前の質量から試験終了後の質量を引き算し、減少質量を求め、これを試験開始前の質量に対する減少率として算出した。さらに、上記虐待試験前および後のテストピースを用いて、JISR1601により強度試験を行った。
(製造例)
炭素繊維を一方向に引き揃えたものにフェノール樹脂を含浸させたプリプレグシートを炭素繊維が互いに直交するように積層し、ホットプレスで180℃、10kg/cm2で樹脂を硬化させた。次いで、窒素中で2000℃で焼成し、10mmの厚さを有するC/Cコンポジットを得た。得られたC/Cコンポジットの密度は1.0g/cm3、開気孔率は50%であった。次に、得られたC/Cコンポジットを、気孔率が5%となるのに充分な量からなる、純度99.8%、平均粒径1mmのSi粉末で充填されたカーボンるつぼ内に立設した。次いで、焼成炉内にカーボンるつぼを移動した。焼成炉内の温度を1300℃、不活性ガスとしてアルゴンガス流量を20NL/分、焼成炉内圧を1hPaその保持時間を4時間として処理した後、焼成炉内の圧力をそのまま保持しつつ、炉内温度を1600℃に昇温することにより、C/CコンポジットにSiを含浸させて、気孔率5%の繊維複合材料を製造した。
炭素繊維を一方向に引き揃えたものにフェノール樹脂を含浸させたプリプレグシートを炭素繊維が互いに直交するように積層し、ホットプレスで180℃、10kg/cm2で樹脂を硬化させた。次いで、窒素中で2000℃で焼成し、10mmの厚さを有するC/Cコンポジットを得た。得られたC/Cコンポジットの密度は1.0g/cm3、開気孔率は50%であった。次に、得られたC/Cコンポジットを、気孔率が5%となるのに充分な量からなる、純度99.8%、平均粒径1mmのSi粉末で充填されたカーボンるつぼ内に立設した。次いで、焼成炉内にカーボンるつぼを移動した。焼成炉内の温度を1300℃、不活性ガスとしてアルゴンガス流量を20NL/分、焼成炉内圧を1hPaその保持時間を4時間として処理した後、焼成炉内の圧力をそのまま保持しつつ、炉内温度を1600℃に昇温することにより、C/CコンポジットにSiを含浸させて、気孔率5%の繊維複合材料を製造した。
(実施例1)
上記製造例により得られたC/Cコンポジット母材に、Si−SiC系材料からなる層を配した複合材料を用いて摺動材を製造した。母材に含浸成形させたSi−SiC系材料層の表面からの厚さは50μmであった。なお、Si含浸率は40%であった。
上記製造例により得られたC/Cコンポジット母材に、Si−SiC系材料からなる層を配した複合材料を用いて摺動材を製造した。母材に含浸成形させたSi−SiC系材料層の表面からの厚さは50μmであった。なお、Si含浸率は40%であった。
上記の複合材料から、テストピースを、Si−SiC系材料とC/Cコンポジットが充分複合化しているC/Cコンポジット表層近傍から切り出し、平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、摺動材とした。得られた摺動材の研削面における表面粗さはRa=1μmであり、平面度は真直度で2μmであった。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
(実施例2)
Si含浸率を45%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて実施例1と同様にして摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
Si含浸率を45%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて実施例1と同様にして摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
(実施例3)
Si含浸率を50%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて、実施例1と同様に摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
Si含浸率を50%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて、実施例1と同様に摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
(実施例4)
Si含浸率を55%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて、実施例1と同様に摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は、繊維の積層方向に対し平行な方向の値および一部の繊維の積層方向に対し、垂直な方向が含まれる方向の値とした。
Si含浸率を55%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて、実施例1と同様に摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は、繊維の積層方向に対し平行な方向の値および一部の繊維の積層方向に対し、垂直な方向が含まれる方向の値とした。
(実施例5)
Si含浸率を60%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて、実施例1と同様に摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
Si含浸率を60%としたこと以外は、製造例と同様にして製造した繊維複合材料を用いて、実施例1と同様に摺動材を製造した。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
(比較例1)
製造例と同様にC/Cコンポジットを製造した。得られた、C/Cコンポジットを平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、摺動材とした。得られた摺動材の研削面における表面粗さはRa=25μmであり、平面度は真直度で6μmであった。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。
製造例と同様にC/Cコンポジットを製造した。得られた、C/Cコンポジットを平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、摺動材とした。得られた摺動材の研削面における表面粗さはRa=25μmであり、平面度は真直度で6μmであった。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。
(比較例2)
Si−SiC繊維強化Si−SiC複合材料を製造し、これを用いて摺動材を製造した。平均粒径100μmのSiC粗粒を60質量%、平均粒径5μmのSiC微粒を30質量%、平均粒径2μmのC粉末を10質量%の割合で混合した。この混合物100質量%に対して有機バインダー5質量%を配合し、適度の水に分散させたスラリー状混合物をスプレードライヤーを用いて平均粒径120μmの造粒粒子を作製した。
Si−SiC繊維強化Si−SiC複合材料を製造し、これを用いて摺動材を製造した。平均粒径100μmのSiC粗粒を60質量%、平均粒径5μmのSiC微粒を30質量%、平均粒径2μmのC粉末を10質量%の割合で混合した。この混合物100質量%に対して有機バインダー5質量%を配合し、適度の水に分散させたスラリー状混合物をスプレードライヤーを用いて平均粒径120μmの造粒粒子を作製した。
次に、前記の工程で作製された造粒粒子を100×100mm寸法の金型に充填し、その上からSiC繊維クロスを敷き、さらに造粒粒子でSiC繊維クロスを挟み込むように敷き詰めた後、500Kgf/cm2でプレス成形し、183×183×10mmの成形体を作製した。なお、ここでSiC繊維クロスは、ニカロン(日本カーボン製)を用いた。なお、ニカロンは、β−SiC構造を持つSi−C−O系炭化珪素繊維であり、有機ケイ酸ポリマー(ポリカルボシラン)でこれを溶融紡糸して連続繊維にし、この繊維を空気中で加熱すると、Si−O−Siの橋かけが行われ不融化し、不活性ガス雰囲気中で1200〜1500℃で焼成したものである。
得られた成形体に実施例1と同様の条件にてSiを溶融、含浸させてSi−SiC繊維強化Si−SiC複合材料を製造した。ここで、材料の動摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
得られた複合材料を平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、摺動材とした。得られた摺動材の研削面における表面粗さはRa=16μmであり、平面度は真直度で7μmであった。得られた摺動材の動摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率等の測定結果を表1に示す。
表1より、Si−SiC系材料からなる層の一部をC/Cコンポジットからなる母材に含浸させた複合材料からなる摺動材(実施例1〜5)は、窒化珪素、炭化珪素、Si−SiC等の他のセラミックからなる摺動材よりも動摩擦係数が小さく、C/Cコンポジット(比較例1)からなる摺動材と同程度の動摩擦係数を有することがわかる。
比磨耗量については、実施例1〜5の摺動材は、C/Cコンポジットからなる比較例1の摺動材に比べ、1/5以下であることがわかる。
また、実施例1〜5の摺動材は、C/Cコンポジットからなる比較例1の摺動材に比べ、圧縮強さおよび層間セン断強さにおいて優れた値を示し、曲げ弾性率においてC/Cコンポジットと同程度の値を示した。一方、Si−SiC繊維強化Si−SiC複合材料(比較例2)に比べ、曲げ弾性率において優れた値を示し、耐酸化性、自己修復性および層間セン断強さにおいてSi−SiC繊維強化Si−SiC複合材料と同程度の値を示した。Si−SiC系材料を含浸させることにより、C/Cコンポジットに比べ、圧縮強さが大きくなるのは、炭素繊維の間にSiC材料が入り込むことによるものと考えられる。
(実施例6)
製造例に基づき製造した繊維複合材料から、テストピースを、Si−SiC系材料とC/Cコンポジットが充分複合化しているC/Cコンポジット表層近傍から切り出し、平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、ブレーキ用部材とした。得られたブレーキ用部材の研削面における表面粗さはRa=1μmであり、平面度は真直度で2μmであった。得られたブレーキ用部材の摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率、高温酸化条件下での耐摩耗性、5%質量減温度等の測定結果を表1に示す。また、前記5%質量減温度を測定したときの温度と質量減との関係を示すチャートを図6に示す。ここで、材料の摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
製造例に基づき製造した繊維複合材料から、テストピースを、Si−SiC系材料とC/Cコンポジットが充分複合化しているC/Cコンポジット表層近傍から切り出し、平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、ブレーキ用部材とした。得られたブレーキ用部材の研削面における表面粗さはRa=1μmであり、平面度は真直度で2μmであった。得られたブレーキ用部材の摩擦係数、比磨耗量、耐酸化性、層間セン断強さ、圧縮強さ、曲げ弾性率、高温酸化条件下での耐摩耗性、5%質量減温度等の測定結果を表1に示す。また、前記5%質量減温度を測定したときの温度と質量減との関係を示すチャートを図6に示す。ここで、材料の摩擦係数は繊維の積層方向に対し、平行な方向の値とした。
(比較例3)
比較例1と同様に製造したC/Cコンポジットを、平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、ブレーキ用部材とした。得られたブレーキ用部材の研削面における表面粗さはRa=25μmであり、平面度は真直度で6μmであった。得られたブレーキ用部材の性能について実施例6と同様方法により評価してその結果を表2に併せて示す。
比較例1と同様に製造したC/Cコンポジットを、平面研削盤により縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、ブレーキ用部材とした。得られたブレーキ用部材の研削面における表面粗さはRa=25μmであり、平面度は真直度で6μmであった。得られたブレーキ用部材の性能について実施例6と同様方法により評価してその結果を表2に併せて示す。
表2より、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合う前記ヤーンの間に充填されているSi−SiC系材料から構成されるマトリックスとを備えている繊維複合材料からなるブレーキ用部材は、従来からブレーキ用部材として使用されているC/Cコンポジット材と同程度の摩擦係数を有すると共に、酸素の存在下での高温条件での耐摩耗性において著しく優れていることがわかる。比磨耗量についても、本発明に係るブレーキ用部材は、比較例のC/Cコンポジットに比べ、1/5以下であることがわかる。さらにC/Cコンポジットに比べ、圧縮強さおよび層間セン断強さにおいて優れた値を示し、曲げ弾性率においてC/Cコンポジットと同程度の値を示した。Si−SiC系材料を含浸させることにより、C/Cコンポジットに比べ、圧縮強さが大きくなるのは、炭素繊維の間にSiC材料が入り込むことによるものと考えられる。
(試験例1)
(ピン・オン・ディスク回転摩擦係数測定)
気孔率がそれぞれ0.5%、2.5%、5.5%、9.5%、および15%となるようにして製造例と同様にして製造した繊維複合材料並びに気孔率が20%のC/Cコンポジットから、それぞれ直径4mm、長さ30mmの大きさの試験ピンを切り出し、これらの試験ピンをピン・オン・ディスク回転摩擦係数測定のために上記のサンプル保持条件、即ち、以下の4条件下にそれぞれ保持し、試験に供した。
保持条件A:100℃×2Hr乾燥後、常温下に保持。
保持条件B:常温下、水中に48Hr浸積後、相対湿度60%で常温下に保持。
保持条件C:常温下、水中に48Hr浸積後、さらに試験中も水中に保持。
保持条件D:常温下、機械油(ユニウエイD32;日本石油(株)製)中に48Hr浸積後、さらに試験中も同油中に保持。
その結果は、表3および表4に示す。
(ピン・オン・ディスク回転摩擦係数測定)
気孔率がそれぞれ0.5%、2.5%、5.5%、9.5%、および15%となるようにして製造例と同様にして製造した繊維複合材料並びに気孔率が20%のC/Cコンポジットから、それぞれ直径4mm、長さ30mmの大きさの試験ピンを切り出し、これらの試験ピンをピン・オン・ディスク回転摩擦係数測定のために上記のサンプル保持条件、即ち、以下の4条件下にそれぞれ保持し、試験に供した。
保持条件A:100℃×2Hr乾燥後、常温下に保持。
保持条件B:常温下、水中に48Hr浸積後、相対湿度60%で常温下に保持。
保持条件C:常温下、水中に48Hr浸積後、さらに試験中も水中に保持。
保持条件D:常温下、機械油(ユニウエイD32;日本石油(株)製)中に48Hr浸積後、さらに試験中も同油中に保持。
その結果は、表3および表4に示す。
表3および表4の結果から、気孔率が20%のC/Cコンポジットの場合には、試験ピンの摩耗が著しいことがわかる。また、気孔率が15%の繊維複合材料から作成したテストピースの場合には、摩耗は環境条件が穏やかなときには認められないが、環境条件が悪いと可成りの摩耗が認められる。さらに、動摩擦係数は気孔率が15%のものでは、環境条件の悪化、即ち、降雨時のようにブレーキ用部材が可成りの量の水分に濡れた場合やまた機械油等で汚染された場合などには、動摩擦係数が著しく低下していることから、気孔率が10%以下であることがブレーキ用部材としての性能発揮に欠かせないことが明らかである。
特に、通常の降雨時の条件に該当すると考えられる環境条件Bでの低下は、気孔率が10%以下では殆どないといえる水準にあるのに対して、気孔率が15%のものでは、このような条件下でも低下が著しく、通常の条件下である環境条件Aに比較して降雨時の環境条件下に相当する環境条件Bでは動摩擦係数が40%も低下していることは注目すべき点である。また、油に浸積した場合の低下も気孔率が10%以下の場合には、気孔率が15%や20%のものと比較して低くその点でも信頼性が高いことが明らかである。このことは、通常条件に相当する保持条件Aと激しい降雨時に相当する保持条件Cや事故等の際に、ブレーキ用部材が油などで汚染された場合に相当する保持条件Dでの動摩擦係数の変動の大きさの指標である保持条件CまたはDで動摩擦係数で通常条件での動摩擦係数を割った商で見れば、よりハッキリする。即ち、気孔率が10%以下では、保持条件Cとの商はいずれも3倍以下、保持条件Dとの商では2倍以下であるのに対して、気孔率が15%のものでは、前者が3.75倍、後者が2.5倍であることから明らかである。なお、気孔率が20%のC/Cコンポジットの場合には、これらの条件下では動摩擦係数を測定できず、かかる条件下でのブレーキ制動は極めて困難なことを物語っている。
(試験例2)
(高温履歴による特性劣化耐性試験)
気孔率がそれぞれ0.5%、2.5%、5.5%、9.5%、15%となるようにして製造例と同様にして製造した繊維複合材料並びに気孔率が20%のC/Cコンポジットから、それぞれ平面研削盤を用いて、縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、ブレーキ用部材を製造し、これらの部材を高温履歴による特性劣化耐性試験に供した。その結果は、表5に示す。
(高温履歴による特性劣化耐性試験)
気孔率がそれぞれ0.5%、2.5%、5.5%、9.5%、15%となるようにして製造例と同様にして製造した繊維複合材料並びに気孔率が20%のC/Cコンポジットから、それぞれ平面研削盤を用いて、縦60mm、横60mm、厚さ5mmの大きさに切断加工した後、800#砥石で平面研削仕上げし、ブレーキ用部材を製造し、これらの部材を高温履歴による特性劣化耐性試験に供した。その結果は、表5に示す。
上記の高温履歴による特性劣化耐性試験は、航空機などのブレーキに使用されているC/Cコンポジットの表面温度がブレーキ制動時に700℃程度になることから、航空機などに於けるブレ−キ制動時を想定して行ったものである。即ち、航空機などの高度の信頼性が要求されるものに於いては、温度上昇時の酸化燃焼現象を最大限防止することによりブレーキシステムの高寿命を図ることは、必要不可欠ことであるからである。表4に示した結果から明らかなように、虐待条件下に曝しても、気孔率が10%以下のものは、質量変化量も少なく、また、強度の低下も低いことが明らかで、信頼性の高いブレーキ用部材として有用なことがわかる。
本発明の新規な繊維複合材料は、動摩擦係数が0.05〜0.5と小さく、また、耐酸化性、耐クリープ性、耐スポーリング性を有するSi−SiC系材料からなる層を表面に配しているため、これを摺動材として使用したときには、C/Cコンポジットの有する低耐酸化性を克服することができ、また、酸素存在下のため、潤滑剤として油を用いることができない、高温条件下での使用も可能であり、優れた耐磨耗性をも併せ持つ。従って、産業上の利用可能性は、高いと考えられる。
1A,1B,1C,1D,1E,1F…ヤーン配列体、2A…ヤーン、2B…ヤーン、3…繊維束(ヤーン)、4A…炭化珪素相、4B…炭化珪素相、4C…炭化珪素相、5A…Si−SiC系材料相、5B…Si−SiC系材料相、5C…Si−SiC系材料相、6…ヤーン集合体、7…繊維複合材料、8A…マトリックス、8B…マトリックス、11…繊維複合材料、12…珪素を含浸させる前のC/Cコンポジット本体の範囲、13…繊維複合材料層、14…珪素層、15…C/Cコンポジット、21…試験板、22…試験ピン。
Claims (11)
- 55質量%〜75質量%の炭素と、1質量%〜10質量%の珪素と、10質量%〜50質量%の炭化珪素とから構成され、少なくとも炭素繊維の束と炭素繊維以外の炭素成分とを含有するヤーンが層方向に配向しつつ三次元的に組み合わされ、互いに分離しないように一体化されているヤーン集合体と、このヤーン集合体中で隣り合う前記ヤーンの間に充填されているSi−SiC系材料からなるマトリックスとを備え、0.05〜0.6の動摩擦係数と、0.5%〜10%に制御された気孔率とを有することを特徴とする繊維複合材料。
- 前記マトリックスが、前記ヤーンの表面に沿って生成している炭化珪素相を備えていることを特徴とする請求項1に記載の繊維複合材料。
- 前記マトリックスが珪素からなる珪素相を備え居り、この珪素相と前記ヤーンとの間に前記炭化珪素相が生成していることを特徴とする請求項1または2に記載の繊維複合材料。
- 前記マトリックスが前記ヤーンから離れるのに従って、珪素の含有比率が上昇する傾斜組成を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の繊維複合材料。
- 前記ヤーン集合体が複数のヤーン配列体を備えており、各ヤーン配列体がそれぞれ複数のヤーンをほぼ並行に二次元的に配列することによって形成されており、前記ヤーン配列体が積層されることによって前記ヤーン集合体が構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の繊維複合材料。
- 前記マトリックスが、前記繊維複合材料の中で互いに連続することで三次元網目構造を形成していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の繊維複合材料。
- 湿潤状態に於ける動摩擦係数が0.05〜0.6である請求項1〜6のいずれか1項に記載の繊維複合材料。
- 比磨耗量が0.0〜0.3mm3/N・kmである請求項1〜7のいずれか1項に記載の繊維複合材料。
- 大気中で10℃/分の割合で昇温したときに5%質量減少が生じる温度が600℃以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の繊維複合材料。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維複合材料の摺動材としての使用。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の繊維複合材料のブレーキ用部材としての使用。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2009543991A (ja) * | 2006-07-14 | 2009-12-10 | フレニ・ブレンボ エス・ピー・エー | ブレーキディスクのブレーキバンド複合構造 |
-
2004
- 2004-10-25 JP JP2004309047A patent/JP2005162601A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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