JP4978341B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法、及び静電印刷法等において静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」と称することがある。)の製造方法に関し、更に詳細には、生産性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
近年、電子写真法を用いた複写機、ファクシミリ、及びプリンター等の画像形成装置に対し、カラー化のニーズが高まっている。カラー電子写真法では、鮮明な色調の再現性が求められ、写真等の高精細な画像の印刷にも対応し得るカラー用トナーが求められている。
カラー電子写真法に対応し得る画像形成装置には、3原色であるシアン(青色)、マゼンタ(赤色)、及びイエロー(黄色)の3色のトナー、並びにブラック(黒色)のトナーが搭載され、これら4色のトナーを、印刷紙面上で、必要に応じて重ね合わせて混色(中間色、二次色)を行なうことにより、色調の再現を行なっている。
画像の解像度を高めるには、小粒径で球形のトナーを採用することが適しており、当該トナーの製造方法として重合法が提案されている。
重合法によるトナーの製造方法としては、懸濁重合法、乳化凝集重合、及び分散重合法等が挙げられる。例えば、懸濁重合法では、先ず、重合性単量体、着色剤、及び必要に応じてその他の添加物を加え重合性単量体組成物を調製し、当該重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に投入して分散させ、さらに高速攪拌機等を用いて高いシェアをかけることにより、重合性単量体組成物の液滴形成を行なう。その後、液滴形成された重合性単量体組成物が分散した水系分散媒体を重合開始剤の存在下で重合を行ない、洗浄処理(洗浄、濾過、脱水)、及び乾燥を経て、着色樹脂粒子を得る。
重合法によって着色樹脂粒子を得る場合には、従来の粉砕法に比べ、粒子を形成する段階(重合法では、液滴形成段階、及び重合段階)で、小粒径で球形の着色樹脂粒子を形成でき、さらに粒径分布をよりシャープに調節できる大きな利点を有している。しかしながら、近年、高解像度且つ高画質である画像印刷に対する要求水準のさらなる高まりに伴い、トナーの粒径をより小さくするための試みがなされ、重合トナーでも、新たな問題点が指摘されている。
上記問題点としては、トナーの製造方法の重合工程において、目的とする着色樹脂粒子の他に、不要な微小粒径を有する粒子が副生されることにより、トナーの生産性、及び印字性能に悪影響を及ぼすことが指摘されている。微小な副生粒子は、粒径が0.6μm未満のいわゆるサブミクロンオーダーの粒子であり、且つ、着色剤を含有しない粒子(以下、「小粒径微粒子」と称す。)である。
トナーの重合時に小粒径微粒子が副生すると、得られた着色樹脂粒子を水系分散媒体から分離する際の洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)において、小粒径微粒子の一部が濾過材に目詰まりするため、洗浄処理効率が低下し、トナーの生産性を低下させる原因となる。
また、小粒径微粒子を含んだトナーを印刷に用いると、小粒径微粒子は付着力が大きいため、現像機内の部材に付着し易く、当該付着した小粒径微粒子が次第に蓄積し、部材にフィルミング(固着)が生じる。現像機内の感光体上にフィルミングが生じた場合、感光体表面に帯電不良が生じ、感光体上に所望の静電潜像を形成することができず、印字性能を低下させる原因となる。
重合法によれば、体積平均粒径Dvが3〜15μm程度の小粒径の着色樹脂粒子を容易に製造することができるが、目的とする粒径範囲が小粒径側にシフトするほど、上述したようなサブミクロンオーダーの小粒径微粒子の粒径に近づくため、所望の着色樹脂粒子と不要な小粒径微粒子との分離が困難になる。このため、小粒径微粒子の副生を抑制することにより、トナーの生産性に優れ、且つ、印字性能に優れたトナーの製造方法の開発が望まれている。以上の要求に応えるため、様々な検討が行なわれている。
例えば、特許文献1では、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を抑制することを目的として、着色剤として銅フタロシアニン、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日本油脂社製、商品名:パーブチルO)、及び水溶性重合禁止剤(小粒径微粒子抑制剤)としてヒドロキノン化合物を用いて、重合法により製造されるトナーが開示されている。
特許文献2では、印字を行なった際、悪臭を発生させないことを目的として、着色剤として銅フタロシアニン、重合開始剤として、及び分子量が205以下で純度が90%以上の有機過酸化物であるt−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート(アクゾノーベル社製、商品名:トリゴノックス27、分子量:188、純度:98%)を用いて、重合法により製造されるトナーが開示されている。
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1において、小粒径微粒子抑制剤として用いられたヒドロキノン化合物は、小粒径微粒子の副生を抑制する効果が必ずしも十分とはいえないことが判明した。また、特許文献2において、重合開始剤として用いられたt−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエートは、臭気の原因になり得るトナー中に残存する重合開始剤の分解物(揮発性有機化合物)等の残留量を低減する効果は高いものの、小粒径微粒子の副生を抑制する効果は、それほど高くはないことが判明した。
さらに、本発明者は、小粒径微粒子の副生を抑制するための方法を検討する中で、着色剤として、銅フタロシアニン顔料を用いてトナーを製造した場合に、当該銅フタロシアニン顔料から遊離して溶媒中に銅イオンとして溶出する銅(以下、「遊離銅」と称す。)が、小粒径微粒子を副生させる何らかの原因物質になり得、また、小粒径微粒子抑制剤の効果を阻害する物質にもなり得ることが推測される知見を得た。
PCT国際公開WO2006−013847号公報 特開2007−52039号公報
本発明の目的は、トナーの重合時に副生する小粒径微粒子の発生を抑制し、洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)が容易で生産性に優れる静電荷像現像用トナーの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討したところ、着色剤として、遊離銅の含有量を特定量以下に低減した銅フタロシアニン顔料を用い、懸濁重合を行なう際に、懸濁液が小粒径微粒子抑制剤を、特定量含有するように添加することにより、トナーの重合時に副生する小粒径微粒子の発生を効果的に抑制することができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに到った。
すなわち本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、少なくとも重合性単量体、及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させて、重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を得る懸濁工程、及び当該懸濁液を重合開始剤の存在下で懸濁重合を行って着色樹脂粒子を得る工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
上記着色剤が、遊離銅の含有量が500ppm以下の銅フタロシアニン顔料であり、
上記懸濁重合を行なう際に、上記懸濁液が、下記式1、式2、又は式3で表される構造を有する小粒径微粒子抑制剤を、重合性単量体100重量部に対して0.01〜1重量部含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法である。
Figure 0004978341
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(上記式1〜3中、Rは、OX、SO X、CO X、又はCH=CHCO Xであり、
Xは、水素、又は金属である。)
本発明においては、前記小粒径微粒子抑制剤は、重合性単量体組成物の液滴形成後の懸濁液中に添加されることが好ましい。
本発明においては、前記重合開始剤が、有機過酸化物であることが好ましく、パーオキシエステル化合物であることがより好ましく、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートであることがさらに好ましい。
本発明においては、前記着色樹脂粒子1個あたりの、粒径が0.6μm未満かつ着色剤を含有しない微粒子の平均個数が、100個以下であることが好ましい。
本発明においては、前記着色樹脂粒子の平均円形度が、0.96〜0.995であることが好ましい。
本発明においては、前記静電荷像現像用トナーが、正帯電性トナーであることが好ましい。
本発明においては、前記小粒径微粒子抑制剤が、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、及びカフェー酸からなる群より選ばれることが好ましい。
上記の如き本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法によれば、トナーの重合時に副生する小粒径微粒子の発生を効果的に抑制することができ、洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)が容易で生産性に優れた静電荷像現像用トナーの製造方法が提供される。
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、少なくとも重合性単量体、及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させて、重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を得る懸濁工程、及び当該懸濁液を重合開始剤の存在下で懸濁重合を行って着色樹脂粒子を得る工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
上記着色剤が、遊離銅の含有量が500ppm以下の銅フタロシアニン顔料であり、
上記懸濁重合を行なう際に、上記懸濁液が、小粒径微粒子抑制剤を、重合性単量体100重量部に対して0.01〜1重量部含有することを特徴とするものである。
以下、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
(1)重合性単量体組成物の調製工程
先ず、重合性単量体、着色剤、さらに必要に応じて帯電制御剤等のその他の添加物を混合、溶解して重合性単量体組成物の調製を行なう。重合性単量体組成物を調製する際の混合には、例えば、メディア式分散機を用いて行なう。
本発明において、重合性単量体とは、重合可能な官能基を有するモノマーのことをいう。重合性単量体の主成分として、モノビニル単量体を用いることが好ましい。モノビニル単量体としては、例えば、スチレン;ビニルトルエン、及びα−メチルスチレン等のスチレン誘導体;アクリル酸、及びメタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸ジメチルアミノエチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びメタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル;アクリルアミド、及びメタクリルアミド等のアミド化合物;エチレン、プロピレン、及びブチレン等のオレフィン;等が挙げられる。上記モノビニル単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記モノビニル単量体のうち、スチレン、スチレン誘導体、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルが好適に用いられる。
重合性単量体の一部として、トナーの保存性(耐ブロッキング性)を改善するために、上記モノビニル単量体と共に、任意の架橋性の重合性単量体を用いることが好ましい。架橋性の重合性単量体とは、2つ以上の重合可能な官能基を有するモノマーのことをいう。架橋性の重合性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジメタクリレート、及びジエチレングリコールジメタクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル;N,N−ジビニルアニリン、及びジビニルエーテル等のジビニル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びジメチロールプロパンテトラアクリレート等の3個以上のビニル基を有する化合物;等が挙げられる。上記架橋性の重合性単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、架橋性の重合性単量体は、懸濁工程において、水系分散媒体中で重合性単量体組成物の液滴を形成させる段階で添加されてもよい。
本発明では、架橋性の重合性単量体を、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
また、重合性単量体の一部として、トナーの保存性と低温定着性とのバランスを向上させるために、上記モノビニル単量体と共に、任意のマクロモノマーを用いることが好ましい。マクロモノマーとは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和結合を有し、数平均分子量(Mn)が、通常1,000〜30,000の反応性のオリゴマーまたはポリマーのことをいう。マクロモノマーとして、重合性単量体を重合して得られる重合体(結着樹脂)のガラス転移温度(Tg)よりも高いTgを有するオリゴマーまたはポリマーを用いることが好ましい。
本発明では、マクロモノマーを、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜2重量部の割合で用いることが望ましい。
本発明では、着色剤として、遊離銅の含有量を特定量以下に低減した銅フタロシアニン顔料を用いる。
本発明において、「遊離銅」とは、銅フタロシアニン顔料の製造工程において、銅フタロシアニン化合物の中心金属として取り込まれずに、不純物として銅フタロシアニン顔料中に存在するものであり、銅フタロシアニン顔料を溶媒中に分散させたときに、顔料から遊離して溶媒中に銅イオンとして溶出する銅のことをいう。
本発明において、「銅フタロシアニン顔料」とは、環状構造を有するフタロシアニン化合物の中心部の水素2原子を、銅イオンで置換することにより形成される錯体のことをいう。
なお、本発明において、「銅フタロシアニン顔料」とは、ハロゲン原子等の置換基を有さない無置換体銅フタロシアニン顔料、及びハロゲン原子等の置換基を有する置換体銅フタロシアニン顔料を総称していう。
本発明で用いる銅フタロシアニン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6等の無置換銅フタロシアニン顔料、並びに、C.I.Pigment Green 7、36等の置換銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
これらの中でも、鮮明な色調の再現が良好であることから、無置換銅フタロシアニン顔料が好ましく、中でも、C.I.Pigment Blue 15:3、及び15:4が特に好ましく用いられる。
本発明で用いる銅フタロシアニン顔料は、遊離銅の含有量を500ppm以下に、好ましくは300ppm以下に、より好ましくは200ppm以下に低減した銅フタロシアニン顔料を用いる。
上記遊離銅の含有量が、上記範囲を超える場合には、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を十分に抑制することができず、洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を行なう際に、目詰まり等の不具合が生じ、トナーの生産性が低下するだけではなく、得られるトナーの印字性能にも悪影響を及ぼす場合がある。
本発明において、銅フタロシアニン顔料中に含まれる遊離銅の含有量を制御する方法は、遊離銅の含有量を特定量以下(500ppm以下)に低減することができれば、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
遊離銅の含有量を制御する方法の一例としては、先ず、無水フタル酸、尿素、及び塩化銅(I)を、高沸点溶媒に加え、触媒の存在下で、攪拌しながら加熱を行ない、調製溶液を得る。得られた調製溶液について、メタノール洗浄、希酸・希アルカリ処理、及び水洗浄の操作を行ない、粗製銅フタロシアニン顔料(クルード)を得る。
得られた粗製銅フタロシアニン顔料を、濃硫酸に徐々に加えて溶解させる。得られた濃硫酸溶液を、5Lの氷水に、徐々に添加して、銅フタロシアニン顔料の結晶を析出させ、水洗浄を行ない、精製銅フタロシアニン顔料を得る。さらに、得られた精製銅フタロシアニン顔料に、食塩、及びジエチレングリコールを加え、ニーダーのような混錬機を用いて、加熱しながら磨砕を行ない、生成物を得る。得られた生成物について、希酸処理、及び水洗浄の操作を行なうことにより、遊離銅の含有量が特定量以下(500ppm以下)に低減された銅フタロシアニン顔料が得られる。
本発明では、着色剤として用いる銅フタロシアニン顔料を、モノビニル単量体100重量部に対して、2〜10重量部、好ましくは3〜8重量部の割合で用いることが望ましい。
その他の添加物として、トナーの定着ロールからの剥離性を向上させるために、離型剤を用いることが好ましい。
離型剤としては、一般にトナー用の離型剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、及び低分子量ポリブチレン等のポリオレフィンワックス;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、及びホホバ等の天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、及びペトロラタム等の石油ワックス;モンタン、セレシン、及びオゾケライト等の鉱物ワックス;フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、及びペンタエリスリトールテトララウレート等のペンタエリスリトールエステル、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテート、及びジペンタエリスリトールヘキサラウレート等のジペンタエリスリトールエステル等の多価アルコールエステル化合物;等が挙げられる。これらの離型剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明では、離型剤を、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜20重量部の割合で用いることが望ましい。
その他の添加物として、トナーの帯電性を向上させるために、正帯電性または負帯電性を有する各種の帯電制御剤を用いることができる。
帯電制御剤としては、一般にトナー用の帯電制御剤として用いられているものであれば、特に限定されないが、本発明においては、正帯電性トナーを得る観点から、正帯電性の帯電制御剤を用いることが好ましい。さらに、正帯電性の帯電制御剤の中でも、重合性単量体との相溶性が高く、安定した帯電性(帯電安定性)をトナー粒子に付与させることができることから、正帯電性の帯電制御樹脂を用いることが好ましい。
正帯電性の帯電制御樹脂としては、例えば、種々の市販品を用いることができ、藤倉化成社製としては、FCA−161P(:商品名、スチレン/アクリル樹脂)、FCA−207P(:商品名、スチレン/アクリル樹脂)、FCA−201−PS(:商品名、スチレン/アクリル樹脂)等が挙げられる。
本発明では、帯電制御剤を、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜8重量部の割合で用いることが望ましい。
その他の添加物として、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、一般にトナー用の分子量調整剤として用いられているものであれば、特に限定されず、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、及び2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N、N'−ジメチル−N、N'−ジフェニルチウラムジスルフィド、N、N'−ジオクタデシル−N、N'−ジイソプロピルチウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;等が挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、分子量調整剤は、懸濁工程において、水系分散媒体中で重合性単量体組成物の液滴を形成させる段階で添加されてもよい。
本発明では、分子量調整剤を、モノビニル単量体100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の割合で用いることが望ましい。
(2)懸濁液を得る懸濁工程(液滴形成工程)
上記(1)重合性単量体組成物の調製工程により得られた重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させて懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を得る。ここで、懸濁とは、水系分散媒体中で重合性単量体組成物の液滴を形成させることを意味する。液滴形成のための分散処理は、例えば、インライン型乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:マイルダー)、高速乳化・分散機(特殊機化工業社製、商品名:T.K.ホモミクサー MARK II型)等の強攪拌が可能な装置を用いて行なうことができる。
本発明の懸濁工程において、着色樹脂粒子の粒径コントロール、及び円形度を向上させるために、水系分散媒体は、分散安定化剤を含有させて用いる。
水系分散媒体は、水単独でもよいが、低級アルコール、及び低級ケトン等の水に溶解可能な溶剤と併用することもできる。
分散安定化剤としては、例えば、硫酸バリウム、及び硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、及び炭酸マグネシウム等の炭酸塩;リン酸カルシウム等のリン酸塩;酸化アルミニウム、及び酸化チタン等の金属酸化物、並びに、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び水酸化第二鉄等の金属水酸化物などの金属化合物;ポリビニルアルコール、メチルセルロース、及びゼラチン等の水溶性高分子化合物;アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等の有機高分子化合物;等が挙げられる。これらの中でも、金属水酸化物が好ましく、特に、pH領域が、通常pH7.5〜11で用いられる水酸化マグネシウムが好ましい。
上記分散安定化剤の中でも、酸溶液に溶解する難水溶性の金属水酸化物(難水溶性無機化合物)のコロイドを含有する分散安定化剤が好ましく用いられる。
上記分散安定化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
分散安定化剤の添加量は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.2〜10重量部であることがより好ましい。
本発明では、トナーの重合時に副生する小粒径微粒子の発生を効果的に抑制するために、小粒径微粒子抑制剤を特定量用いる。
本発明において、「小粒径微粒子抑制剤」とは、重合性単量体組成物の液滴を形成する過程で、水系分散媒体中(水相中)に存在(溶出)してしまう重合性単量体由来のラジカル、及び/又は重合開始剤由来のラジカルを捕捉して、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を抑制する効果を有する化合物のことをいう。
本発明で用いる小粒径微粒子抑制剤は、下記式1、式2、又は式3で表される構造を有する小粒径微粒子抑制剤であることが、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を抑制する効果が高いことから好ましい。
Figure 0004978341
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(上記式1〜3中、Rは、OX、SOX、COX、又はCH=CHCOXであり、Xは、水素、又は金属である。)
上記式1〜3で表される多価フェノール化合物の金属塩の金属としては、リチウム、ナトリウム、及びカリウム等の一価金属;マグネシウム、カルシウム、及びアルミニウム等の多価金属;等が挙げられる。上記多価フェノール化合物の金属塩の金属は、多価フェノール化合物の金属塩(小粒径微粒子抑制剤)と水系分散媒体(水相)との相溶性(溶解性)の観点から、一価金属であることが好ましい。
上記式1で表される小粒径微粒子抑制剤としては、例えば、ヒドロキシヒドロキノン、ヒドロキノンスルホン酸、ヒドロキノンカルボン酸、及びこれらの金属塩等が挙げられる。また、上記式2で表される小粒径微粒子抑制剤としては、例えば、カフェー酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、及びこれらの金属塩等が挙げられる。また、上記式3で表される小粒径微粒子抑制剤としては、例えば、ピロガロール、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシ桂皮酸、及びこれらの金属塩等が挙げられる。これらの小粒径微粒子抑制剤の中でも、着色剤として銅フタロシアニン顔料を用いてトナーを製造する際には、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、及びカフェー酸が好ましく用いられ、ピロガロールが特に好ましく用いられる。
本発明で用いる小粒径微粒子抑制剤を添加する時機は、懸濁重合を行なう際に、懸濁液が、小粒径微粒子抑制剤を特定量含有することができれば、特に限定されないが、小粒径微粒子抑制剤は、重合性単量体組成物の調製時の重合性単量体組成物中に添加されるよりも、水系分散媒体中に添加される方が好ましい。水系分散媒体中に小粒径微粒子抑制剤を添加する時機としては、分散安定化剤を添加する前又は後の、重合性単量体組成物を投入する前又は後の、或いは、重合開始剤を添加する前又は後のいずれの段階の水系分散媒体中に、小粒径微粒子抑制剤は添加されてもよいが、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を抑制する効果が高いことから、重合性単量体組成物の液滴形成後の水系分散媒体中、すなわち懸濁液中に添加されることが、特に好ましい。
本発明で用いる小粒径微粒子抑制剤の添加量は、重合性単量体100重量部に対して、0.01〜1重量部であり、0.03〜0.8重量部であることが好ましく、0.05〜0.5重量部であることがより好ましい。
本発明で用いる小粒径微粒子抑制剤の添加量が、上記範囲未満である場合には、水系分散媒体中(水相中)に溶出(存在)している重合性単量体の重合反応を抑える(停止させる)ことができず、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を十分に抑制できない場合がある。一方、本発明で用いる小粒径微粒子抑制剤の添加量が、上記範囲を超える場合には、重合性単量体組成物の所望の重合反応が抑制されてしまい、重合性単量体が重合されずにトナー中に多量に残留する場合がある。
本発明で用いる重合開始剤は、有機過酸化物であることが好ましい。有機過酸化物は、一般に、ハイドロパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシジカーボネート化合物、パーオキシケタール化合物、及びケトンパーオキサイド化合物の7種に大別される。
これらの中でも、本発明で用いる重合開始剤は、下記式4で表されるパーオキシエステル化合物であることがより好ましい。
Figure 0004978341
(上記式4中、R及びRは、任意の炭素数1〜10のアルキル基である。)
上記式4中のRは、炭素数8以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数7以下のアルキル基であることがより好ましい。Rの具体例としては、i−プロピル、1−メチルプロピル、1−エチルプロピル;1−メチルブチル、2−メチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル;1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、1−エチルペンチル、2−エチルペンチル;1−メチルヘキシル、2−メチルヘキシル、1−エチルヘキシル、2−エチルヘキシル;等が挙げられ、1−エチルペンチルが特に好ましい。
また、上記式4中のRは、炭素数10以下のアルキル基であることが好ましく、炭素数6以下のアルキル基であることがより好ましい。Rの具体例としては、t−ブチル、t−ヘキシル、及びt−アミル等が挙げられ、t−ブチルが特に好ましい。
上記式4で表される構造を有するパーオキシエステル化合物の具体例としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート(下記式5)、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(下記式6)等が挙げられる。これらの中でも、臭気の原因になり得るトナー中に残存する重合開始剤の分解物(揮発性有機化合物)等の残留量を低減する観点からは、t−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエートが好ましく、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を抑制する観点からは、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましい。本発明の重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートがより好適に用いられる。
Figure 0004978341
Figure 0004978341
本発明で用いる重合開始剤を添加する時機は、懸濁重合を行なう際に、懸濁液が、重合開始剤を含有することができれば、特に限定されないが、重合開始剤は、重合性単量体組成物の調製時の重合性単量体組成物中に添加されるよりも、液滴が形成された後の水系分散媒体中に添加される方が好ましい。
本発明で用いる重合開始剤の添加量は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、0.3〜15重量部であることがより好ましく、1〜10重量部であることがさらに好ましい。
(3)重合工程
上記(2)懸濁液を得る工程により得られた懸濁液(重合性単量体組成物の液滴を含有する水系分散媒体)を、重合開始剤の存在下で、懸濁重合を行なって着色樹脂粒子の水分散液を得る。重合工程において、重合性単量体組成物の液滴を安定に分散させた状態で重合を行うために、上記(2)懸濁液を得る工程に引き続き、攪拌による分散処理を行ないながら重合反応を進行させることが好ましい。
重合工程において、重合温度は、50℃以上であることが好ましく、60〜98℃であることがより好ましい。また、重合時間は、1〜20時間であることが好ましく、2〜15時間であることがより好ましい。
本発明において、着色剤として、遊離銅の含有量を特定量以下に低減した銅フタロシアニン顔料を用い、懸濁重合を行なう際に、懸濁液が小粒径微粒子抑制剤を、特定量含有するように添加することにより、トナーの重合時に副生する小粒径微粒子の発生を効果的に抑制することができる。
このため、重合工程を経て得られた、着色樹脂粒子1個あたりの小粒径微粒子の平均個数を、好ましくは100個以下とすることができ、より好適には80個以下とすることができ、さらに好適には50個以下とすることができる。
ここで、着色樹脂粒子1個あたりの小粒径微粒子の平均個数とは、重合工程後の着色樹脂粒子を含む水分散液を採取し、走査電子顕微鏡(SEM)用のサンプルとして調整し、走査電子顕微鏡を用いて、調整したサンプルについて、5,000倍の倍率で5視野の画像撮影を行い、各画像において無作為に5個の着色樹脂粒子を選択し、これら25個の着色樹脂粒子表面に観察される小粒径微粒子の個数をカウントし、これより、着色樹脂粒子1個あたりの小粒径微粒子の平均個数を算出した値である。
上記着色樹脂粒子1個あたりの小粒径微粒子の個数は、市販の走査電子顕微鏡を用いて測定することができ、例えば、電界放射型走査電子顕微鏡(日立製作所社製、商品名:S−4700)を用いて測定することができる。
本発明において、重合工程により得られる着色樹脂粒子をコア層とし、その外側にコア層と異なるシェル層を作ることで得られる、所謂コアシェル型(または、「カプセル型」ともいう。)の着色樹脂粒子とすることが好ましい。
コアシェル型の着色樹脂粒子は、低軟化点の物質よりなるコア層を、それより高い軟化点を有する物質で被覆することにより、トナーの定着温度の低温化と保存時の凝集防止とのバランスを取ることができる。
上記コアシェル型の着色樹脂粒子を製造する方法としては、特に制限はなく従来公知の方法によって製造することができる。in situ重合法や相分離法が、製造効率の観点から好ましい。
in situ重合法によるコアシェル型の着色樹脂粒子の製造法を以下に説明する。
着色樹脂粒子が分散している水系分散媒体中に、シェル層を形成するための重合性単量体(シェル用重合性単量体)とシェル用重合開始剤を添加し、重合を行なうことでコアシェル型の着色樹脂粒子を得ることができる。
シェル用重合性単量体としては、前述の重合性単量体と同様のものを用いることができる。その中でも、スチレン、及びメチルメタクリレート等のTgが80℃を超える重合体が得られる単量体を、単独であるいは2種以上組み合わせて使用することが好ましい。
シェル用重合性単量体の重合に用いるシェル用重合開始剤としては、過硫酸カリウム、及び過硫酸アンモニウム等の過硫酸金属塩;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、及び2,2’−アゾビス−(2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)等の水溶性のアゾ化合物;等の重合開始剤を挙げることができる。
本発明で用いるシェル用重合開始剤の添加量は、シェル用重合性単量体100重量部に対して0.1〜30重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。
シェル層の重合温度は、50℃以上であることが好ましく、60〜95℃であることがより好ましい。また、シェル層の重合時間は、1〜20時間であることが好ましく、2〜15時間であることがより好ましい。
(4)洗浄、濾過、脱水、及び乾燥工程
上記(3)重合工程により得られる着色樹脂粒子の水分散液は、常法に従い、洗浄、濾過、及び脱水の一連の操作を、必要に応じて数回繰り返し行ない、得られた固形分を乾燥することにより、着色樹脂粒子を得る。
先ず、着色樹脂粒子の水系分散媒体中に残存する分散安定化剤を除去するために、着色樹脂粒子の水分散液に、酸またはアルカリを添加して洗浄を行なう。
使用した分散安定化剤が、酸に可溶な無機化合物である場合、着色樹脂粒子水分散液へ酸を添加し、一方、使用した分散安定化剤が、アルカリに可溶な無機化合物である場合、着色樹脂粒子水分散液へアルカリを添加する。
分散安定化剤として、酸に可溶な無機化合物を使用した場合、着色樹脂粒子の水分散液に、酸を添加し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行なうことが好ましい。酸洗浄で添加する酸としては、硫酸、塩酸、及び硝酸等の無機酸;蟻酸、及び酢酸等の有機酸;等を用いることができる。これらの中でも、分散安定化剤の除去効率が良好であり、トナーの製造設備への負担が小さいことから、特に硫酸が好適である。
重合工程により得られた着色樹脂粒子の水分散液に、酸またはアルカリを添加して洗浄を行なった後は、濾過分離を行ない、得られた固形分にイオン交換水を加えて再スラリー化させて、水などの洗浄液による洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を数回繰り返し行ない、得られた固形分を、乾燥させることにより着色樹脂粒子が得られる。
洗浄処理、及び乾燥処理の方法は、特に限定されず、種々の公知の方法を用いることができ、洗浄処理に用いる装置としては、例えば、ピーラーセントリフュージ、及びサイホンピーラーセントリフュージ等が挙げられ、乾燥処理に用いる方法としては、例えば、真空乾燥、気流乾燥、及びスーパードライヤー等が挙げられる。
(5)着色樹脂粒子
以下、トナーを構成する着色樹脂粒子について述べる。なお、以下で述べる着色樹脂粒子は、コアシェル型のものとそうでないもの両方を含む。
本発明の製造方法で得られる着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvは、画像再現性の観点から、3〜15μmであることが好ましく、4〜12μmであることがより好ましく、5〜9μmであることがさらに好ましい。
上記着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvが、上記範囲未満である場合には、トナーの流動性が低下し、カブリ等による画質の劣化が起り易くなり、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。一方、上記着色樹脂粒子の体積平均粒径Dvが、上記範囲を超える場合には、得られる画像の解像度が低下し易くなり、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
また、本発明の着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)と個数平均粒径(Dp)との比である粒径分布(Dv/Dp)は、画像再現性の観点から、1.0〜1.3であることが好ましく、1.0〜1.2であることがより好ましい。
上記着色樹脂粒子の粒径分布(Dv/Dp)が、上記範囲を超える場合には、トナーの流動性が低下し、カブリ等による画質の劣化が起り易くなり、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
なお、着色樹脂粒子の体積平均粒径Dv、及び個数平均粒径Dpは、粒径測定機を用いて測定される値である。
本発明の製造方法で得られる着色樹脂粒子の平均円形度は、画像再現性の観点から、0.96〜0.995であることが好ましく、0.97〜0.995であることがより好ましい。
上記着色樹脂粒子の平均円形度が、上記範囲未満である場合には、印字の細線再現性が低下し易くなり、印字性能に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明において、「円形度」とは、粒子像と同じ投影面積を有する円の周囲長を、粒子の投影像の周囲長で除した値として定義される。また、本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものであり、着色樹脂粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、平均円形度は着色樹脂粒子が完全な球形の場合に1を示し、着色樹脂粒子の表面形状が複雑になるほど小さな値となる。平均円形度は、0.6μm以上の円相当径の粒子群について測定された各粒子の円形度(Ci)をn個の粒子について下記計算式1よりそれぞれ求め、次いで、下記計算式2より平均円形度(Ca)を求める。
計算式1:
円形度(Ci)=粒子の投影面積に等しい円の周囲長/粒子投影像の周囲長
Figure 0004978341
上記計算式2において、fiは、円形度(Ci)の粒子の頻度である。
上記円形度は、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置「FPIA−2000」、「FPIA−2100」、及び「FPIA−3000」等を用いて測定することができる。
(6)トナー
本発明で得られる着色樹脂粒子は、そのままで、あるいは着色樹脂粒子とキャリア粒子(フェライト、及び鉄粉等)により、トナーとしてもよいが、トナーの帯電性、流動性、及び保存性等を調整する観点から、高速撹拌機(例えば、商品名:FMミキサー(三井鉱山社製)等)を用いて、着色樹脂粒子に、外添剤を混合して1成分トナーとしてもよく、着色樹脂粒子に、外添剤、さらにキャリア粒子を混合して2成分現像剤としてもよい。
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化錫、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、及び酸化セリウム等からなる無機微粒子;ポリメタクリル酸メチル樹脂、シリコーン樹脂、及びメラミン樹脂等からなる有機微粒子;等が挙げられる。これらの中でも、無機微粒子が好ましく、無機微粒子の中でも、シリカ、及び酸化チタンが好ましく、特にシリカが好適である。上記外添剤は、それぞれ単独で用いることもできるが、2種以上を併用して用いることが好ましい。
本発明では、外添剤を、着色樹脂粒子100重量部に対して、通常0.1〜6重量部、好ましくは0.2〜5重量部の割合で用いることが望ましい。
上記(1)〜(6)の工程を経て製造されるトナーは、着色剤として、遊離銅の含有量を特定量以下に低減した銅フタロシアニンを用い、懸濁重合を行なう際に、懸濁液が小粒径微粒子抑制剤を、特定量含有するように添加することにより、水系分散媒体中(水相中)に存在(溶出)する重合性単量体の重合反応を抑えることができるため、トナーの重合時に副生する小粒径微粒子の発生を効果的に抑制することができ、洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)が容易になり、トナーの生産性に優れ、且つ印字性能にも優れるトナーである。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、部及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
本実施例及び比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
(評価方法)
(1)遊離銅の測定
測定試料(銅フタロシアニン顔料)を1g精秤し、50ml共栓三角フラスコに取り、0.1M塩酸水溶液30mlを加え、密栓をして、振とう機(IWAKI社製、商品名:KM SHAKER)を用いて、300回/分の振とう条件下で1時間、振とうを行なった。
振とう後の銅フタロシアニン顔料を含む塩酸水溶液を、ガラスフィルターを用いて濾過し、得られた濾液5mlに、0.1M塩酸水溶液45mlを加えて10倍に希釈し、試料溶液を調製した。
調製した試料溶液について、偏光ゼーマン原子吸光度計(日立製作所社製、商品名:Z−5010)を用いて、試料溶液中に含まれる遊離銅の吸収スペクトルを測定し、試料溶液中に含まれる遊離銅の含有量を算出し、銅フタロシアニン顔料中に含まれる遊離銅の含有量に換算して求めた。
(2)着色樹脂粒子
(2−1)体積平均粒径Dv、及び粒径分布Dv/Dp
測定試料(着色樹脂粒子)を約0.1g秤量し、ビーカーに取り、分散剤としてアルキルベンゼンスルホン酸水溶液(富士フィルム社製、商品名:ドライウエル)0.1mlを加えた。そのビーカーへ、更にアイソトンIIを10〜30mL加え、20Wの超音波分散機で3分間分散させた後、粒径測定機(ベックマン・コールター社製、商品名:マルチサイザー)を用いて、アパーチャー径;100μm、媒体;アイソトンII、測定粒子個数;100,000個の条件下で、着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)、及び個数平均粒径(Dp)を測定し、粒径分布(Dv/Dp)を算出した。
(2−2)平均円形度
容器中に、予めイオン交換水10mlを入れ、その中に分散剤としての界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)0.02gを加え、更に着色樹脂粒子0.02gを加え、超音波分散機で60W、3分間分散処理を行った。測定時の着色樹脂粒子濃度を3,000〜10,000個/μlとなるように調整し、0.4μm以上の円相当径の着色樹脂粒子1,000〜10,000個についてフロー式粒子像分析装置(シメックス社製、商品名:FPIA−2100)を用いて測定した。測定値から平均円形度を求めた。
円形度は下記計算式1に示され、平均円形度は、その平均をとったものである。
計算式1:
(円形度)=(粒子の投影面積に等しい円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
(3)小粒径微粒子の平均個数
重合工程後の着色樹脂粒子を含む水分散液3mlに、10%HSO1mlを添加し、分散安定化剤を完全に溶解させた。この溶液を濾紙(アドバンテック東洋社製、商品名:No.2)に2ml滴下して濾過し、風乾して走査電子顕微鏡(SEM)用のサンプルを調製した。
風乾させた着色樹脂粒子に白金蒸着を行って、電界放射型走査電子顕微鏡(日立製作所社製、商品名:S−4700)を用い、加速電圧を5kVにし、5,000倍に拡大して走査電子顕微鏡(SEM)観察した。
各サンプルについて、ランダムに5視野の画像撮影を行い、各画像において無作為に5個の着色樹脂粒子を選択し、これら25個の着色樹脂粒子表面に観察される小粒径微粒子の個数を数えた。これより、着色樹脂粒子1個あたりの小粒径微粒子の平均個数を算出した。
(銅フタロシアニン顔料の製造方法)
(製造例1)
原料である無水フタル酸30部、尿素45部、及び触媒であるモリブデン酸アンモニウム0.06部を、芳香族系高沸点溶媒であるソルベッソ150(:商品名、エクソンモービル社製)90部に加え、撹拌しながら徐々に昇温し、150℃で原料である塩化銅(I)5.3部を加え、更に撹拌しながら175℃まで昇温し、この温度で4時間反応させて調製溶液を得た。
上記により得られた調製溶液の濾過分離を行ない、次いで、メタノールで洗浄した後、2%塩酸、2%苛性ソーダ水溶液で、それぞれ1時間煮沸処理し、濾過分離を行なった。次いで、水による洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を行なった後、得られた固形分を乾燥させて、未精製銅フタロシアニン顔料26.7部を得た。
上記により得られた未精製銅フタロシアニン顔料25部を、95%濃硫酸250部に、攪拌しながら徐々に加え、溶解させた。次いで、70℃まで昇温し、この温度で1時間攪拌して、完全に溶解させた。その後、この濃硫酸溶液を、5Lの氷水に、徐々に添加して、銅フタロシアニン顔料の結晶を析出させた後、濾過分離を行なった。次いで、水による洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を行なった後、得られた固形分を乾燥させて、精製銅フタロシアニン顔料23.8部を得た。
上記により得られた精製銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)400部に、塩化ナトリウム1600部、及びジエチレングリコール400部を加え、混錬機である加圧式ニーダー(トーシン社製)を用いて、内容物の温度を80〜100℃に保ちながら、6時間磨砕を行なった。磨砕して得られた生成物を、希酸で処理し、濾過分離を行なった。次いで、水による洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を行ない、得られた固形分を乾燥させて、遊離銅の含有量が100ppmの微細な精製銅フタロシアニン顔料を作製した。
(製造例2)
製造例1で製造した銅フタロシアニン顔料22.7部、及び市販の銅フタロシアニン顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)(大日本インキ化学工業社製、商品名:GC−TF、遊離銅含有量:2470ppm)1部を、高速撹拌機(三井鉱山社製、商品名:FMミキサー)を用いて、攪拌混合し、均一に分散させて、遊離銅の含有量が200ppmの微細な精製銅フタロシアニン顔料を作製した。
(実施例1)
モノビニル単量体としてスチレン75部及びn−ブチルアクリレート25部、シアン着色剤として製造例1で製造した銅フタロシアニン顔料5部、帯電制御剤として帯電制御樹脂(藤倉化成社製、商品名:FCA−161P、スチレン/アクリル樹脂)1部、離型剤としてジペンタエリスリトールヘキサミリステート5部を、攪拌装置で攪拌、混合し、均一に分散させて重合性単量体組成物を得た。
他方、室温下で、イオン交換水200部に塩化マグネシウム(水溶性多価金属塩)11部を溶解した水溶液に、イオン交換水50部に水酸化ナトリウム(水酸化アルカリ金属)6.2部を溶解した水溶液を、攪拌下で徐々に添加して、水酸化マグネシウムコロイド(難水溶性の金属水酸化物コロイド)分散液を調製した。
上記により得られた水酸化マグネシウムコロイド分散液に、室温下で、上記重合性単量体組成物を投入し、攪拌した。そこへ重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルブタノエート(上記式5)(アクゾノーベル社製、商品名:トリゴノックス27)5部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン1.6部、及び架橋性の重合性単量体としてジビニルベンゼン0.7部を添加した後、インライン型乳化分散機(太平洋機工社製、商品名:キャビトロン)を用いて、15,000rpmの回転数で1分間高速剪断攪拌して分散を行ない、重合性単量体組成物の液滴形成を行なった。
上記重合性単量体組成物の液滴形成後の懸濁液中に、小粒径微粒子抑制剤としてピロガロール(下記式7)0.1部を添加し、さらに攪拌した。
Figure 0004978341
上記により得られた重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液(重合性単量体組成物分散液)を、攪拌翼を装着した反応器内に投入し、90℃に昇温し、重合反応を開始させた。重合転化率が95%に達したときに、シェル用重合性単量体としてメチルメタアクリレート2.1部、及びイオン交換水20部に溶解したシェル用重合開始剤である2,2'−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)(和光純薬工業社製、商品名:VA−086、水溶性)0.21部を添加し、90℃で3時間反応を継続した後、水冷して反応を停止し、コアシェル型構造を有する着色樹脂粒子の水分散液を得た。
なお、得られた着色樹脂粒子の水分散液の一部を採取し、副生された小粒径微粒子の個数を測定した。
上記により得られた着色樹脂粒子の水分散液に、室温下で、硫酸を攪拌しながら滴下し、pHが6.5以下となるまで酸洗浄を行なった。次いで、濾過分離を行ない、得られた固形分にイオン交換水500部を加えて再スラリー化させて、水洗浄処理(洗浄・濾過・脱水)を数回繰り返し行なった。次いで、濾過分離を行ない、得られた固形分を真空乾燥機の容器内に入れ、圧力30torr、温度50℃の条件下で、一昼夜真空乾燥を行ない、乾燥した着色樹脂粒子を得た。
なお、乾燥により得られた着色樹脂粒子の体積平均粒径(Dv)は6.5μm、粒径分布(Dv/Dp)は1.13、平均円形度は0.978であった。
上記により得られた着色樹脂粒子100部に、疎水化処理されたシリカ微粒子(キャボット社製、商品名:TG820F)0.8部、及び疎水化処理されたシリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名:NA50Y)1.0部を添加し、高速攪拌機(三井鉱山社製、商品名:FMミキサー)を用いて、混合攪拌して外添処理を行ない、実施例1の静電荷像現像用トナーを作製し、試験に供した。
(実施例2)
実施例1において、小粒径微粒子抑制剤の種類を、ヒドロキシヒドロキノン(下記式8)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のトナーを作製し、試験に供した。
Figure 0004978341
(実施例3)
実施例1において、銅フタロシアニン顔料の種類を、製造例2で製造した銅フタロシアニン顔料に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のトナーを作製し、試験に供した。
(実施例4)
実施例1において、重合開始剤の種類を、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(上記式6)(日本油脂社製、商品名:パーブチルO)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のトナーを作製し、試験に供した。
(比較例1)
実施例1において、小粒径微粒子抑制剤を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のトナーを作製し、試験に供した。
(比較例2)
実施例1において、銅フタロシアニン顔料の種類を、遊離銅の含有量が2470ppmの市販の銅フタロシアニン顔料(大日本インキ化学工業社製、商品名:GC−TF)に変更し、小粒径微粒子抑制剤の種類を、ヒドロキノン(下記式9)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のトナーを作製し、試験に供した。
Figure 0004978341
(結果)
各実施例及び比較例で作製したトナーの試験結果を、表1に示す。
Figure 0004978341
(結果のまとめ)
表1に記載されている試験結果より、以下のことが分かる。
比較例1のトナーは、小粒径微粒子抑制剤を用いなかったことに起因し、比較例2のトナーは、特定量以上の遊離銅を含む銅フタロシアニン顔料を用いたことに起因し、小粒径微粒子の副生を十分に抑制することができなかった。
これに対して、実施例1〜3のトナーは、着色剤として、遊離銅の含有量を特定量以下に低減させた銅フタロシアニン顔料、及び小粒径微粒子抑制剤を特定量用いたに起因し、トナーの重合時に副生する小粒径微粒子の発生を効果的に抑制することができ、所望のトナーが得られた。また、実施例4のトナーは、重合開始剤として、パーブチルOを用いたことに起因し、実施例1〜3と比べて、重合時に副生する小粒径微粒子の発生を抑制する効果はより優れていた。

Claims (9)

  1. 少なくとも重合性単量体、及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、分散安定化剤を含有する水系分散媒体中に懸濁させて、重合性単量体組成物の液滴が分散した懸濁液を得る懸濁工程、及び当該懸濁液を重合開始剤の存在下で懸濁重合を行って着色樹脂粒子を得る工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
    上記着色剤が、遊離銅の含有量が500ppm以下の銅フタロシアニン顔料であり、
    上記懸濁重合を行なう際に、上記懸濁液が、下記式1、式2、又は式3で表される構造を有する小粒径微粒子抑制剤を、重合性単量体100重量部に対して0.01〜1重量部含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
    Figure 0004978341
    Figure 0004978341
    Figure 0004978341
    (上記式1〜3中、Rは、OX、SO X、CO X、又はCH=CHCO Xであり、
    Xは、水素、又は金属である。)
  2. 前記小粒径微粒子抑制剤は、重合性単量体組成物の液滴形成後の懸濁液中に添加されることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  3. 前記重合開始剤が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 前記有機過酸化物が、パーオキシエステル化合物であることを特徴とする請求項3に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  5. 前記パーオキシエステル化合物が、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートであることを特徴とする請求項4に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  6. 前記着色樹脂粒子1個あたりの、粒径が0.6μm未満かつ着色剤を含有しない微粒子の平均個数が、100個以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  7. 前記着色樹脂粒子の平均円形度が、0.96〜0.995であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  8. 前記静電荷像現像用トナーが、正帯電性トナーであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
  9. 前記小粒径微粒子抑制剤が、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、及びカフェー酸からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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