JP4977936B2 - 光学フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルムの製造方法に関し、特に平面性に優れた光学フィルムの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
透明支持体上に光学膜を有する光学フィルムは、光学用途に利用され、液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルム、また、有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等に利用される。
【0003】
光学補償膜、反射防止層のような光学膜では、膜の機能上膜厚分布を数nm以下にする必要があり、例えば、液晶ディスプレーやプラズマディスプレーに用いられる光学膜では膜厚分布が大きいと干渉ムラ、色ムラが発生する。
【0004】
透明支持体上に光学膜を塗布により形成する際、平面性の高い透明支持体を使用することは、光学膜の膜厚分布を小さくする効果がある。例えば、特願平9−313417号、同10−40441号、同11−127187号に記載の方法で作製した平面性の高い透明支持体は光学膜の膜厚分布を小さくする効果がある。しかし、本発明の目的には不充分である。
【0005】
また、特開2001−96212には塗布ヘッドの前後にローラー中央部の径よりも両端部の径が大きいガイドローラーを設けウエブの幅方向に張力を付与し光学膜の膜厚分布を小さくする方法が開示されているが、本発明者の検討の結果、塗布部のみの対策では本発明の目的は達成されないことが判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光学膜の膜厚分布の小さい光学フィルムの製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記手段により達成される。
【0008】
1.透明支持体上に光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、該光学膜を塗布により形成する際、塗布から巻取工程間の支持体の平面性を0〜1mmに保った状態で行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0009】
2.塗布から乾燥工程間の搬送ロールとしてリバースクラウンロールを用いることを特徴とする上記1に記載の光学フィルムの製造方法。
【0010】
3.塗布から乾燥工程間の搬送ロールとしてエキスパンダーロールを用いることを特徴とする上記1に記載の光学フィルムの製造方法。
【0011】
4.塗布から乾燥工程間を10〜500mmのロールスパンでロール搬送することを特徴とする上記1に記載の光学フィルムの製造方法。
【0012】
5.搬送ロールの径が10〜50mmであることを特徴とする上記4に記載の光学フィルムの製造方法。
【0013】
6.塗布から乾燥工程間を支持体の反対側より吸引することを特徴とする上記5に記載の光学フィルムの製造方法。
【0014】
7.透明支持体上に光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、乾燥後、光学フィルムの支持体の平面性を0〜1mmに保った状態で紫外線照射し硬化させることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0015】
8.紫外線照射の少なくとも前または後にエキスパンダーロールを設置することを特徴とする上記7に記載の光学フィルムの製造方法。
【0016】
9.光学フィルムを紫外線照射バックロールに密着させることを特徴とする上記7に記載の光学フィルムの製造方法。
【0017】
10.紫外線照射バックロールの直前にエキスパンダーロールまたはリバースクラウンロールを設置することを特徴とする上記9に記載の光学フィルムの製造方法。
【0018】
11.紫外線照射部の支持体搬送張力を150N/m以上とすることを特徴とする上記8〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0019】
12.紫外線照射バックロールの径が500〜1500mmであることを特徴とする上記9に記載の光学フィルムの製造方法。
【0020】
13.透明支持体上に光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、乾燥ゾーンのロール間の光学フィルム温度差が0〜50℃であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0021】
14.乾燥ゾーンのロール間の光学フィルム温度差が0〜30℃であることを特徴とする上記13に記載の光学フィルムの製造方法。
【0022】
15.乾燥ゾーンのロール間の光学フィルム温度差が0〜15℃であることを特徴とする上記13に記載の光学フィルムの製造方法。
【0023】
16.乾燥ゾーンを複数に分割することを特徴とする上記13に記載の光学フィルムの製造方法。
【0024】
17.乾燥ゾーンの出口に少なくとも1つの降温ゾーンを設置することを特徴とする上記13に記載の光学フィルムの製造方法。
【0025】
18.乾燥ゾーンと降温ゾーンの温度差が0〜50℃であることを特徴とする上記17に記載の光学フィルムの製造方法。
【0026】
19.光学膜がハードコート層、光学補償膜、防眩層または反射防止層であることを特徴とする上記7〜18のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【0027】
20.透明支持体上に複数の光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、該光学膜を複数回の塗布により形成する際、1回の塗布乾燥ごとに幅方向の平面性を矯正することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【0028】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明者は鋭意研究の結果、塗布時のみの支持体の平面性保持では光学膜の膜厚分布の小さい光学フィルムの達成は難しく、塗布、乾燥、紫外線照射、巻取に至る各工程で加工中の支持体の平面性保持が必要であり、各工程での支持体の平面性を保持する方法を見出した。即ち、請求項1に記載するように透明支持体上に光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、光学膜を塗布により形成する際、塗布から巻取工程間の支持体の平面性を0〜1mmに保った状態で行うこと、請求項7に記載するように乾燥後、光学フィルムの変形のない状態で紫外線照射し硬化させること、請求項13に記載するように乾燥ゾーンのロール間のフィルム温度差を0〜50℃とすること、請求項20に記載するように透明支持体上に複数の光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、光学膜を複数回の塗布により形成する際、1回の塗布乾燥ごとに幅方向の平面性を矯正することにより、光学膜の膜厚分布の小さい光学フィルムを得ることを見出した。
【0029】
また、本発明の効果をより発現するためには、請求項2〜6、8〜12、14〜18に記載するような特定の装置、条件で製造することが好ましい。
【0030】
ここで加工中の支持体の平面性とは、加工中の支持体の変形状態を下記の方法にて測定したときの偏差をいう。
【0031】
測定法:支持体上に光学膜を塗設する前の支持体の平面性は、キーエンス製レーザー変位計を搬送方向に対し直角方向に移動し、2つの搬送ロールの中間位置で、支持体表面とレーザー変位計間の距離を測定し、最大距離と最小距離の差を平面性という。支持体上に光学膜を塗設した後の支持体の平面性は、上記方法において支持体を光学フィルム(支持体+光学膜)に変えて測定した平面性と、対応する測定点を大塚電子(株)製反射分光膜厚計で測定した光学膜の膜厚から求める。
【0032】
(光学フィルム)
本発明で光学フィルムとは、透明支持体上に光学膜を有し光学用途に利用されるフィルムで、液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム、低反射率フィルム等の各種機能フィルム、また、有機ELディスプレイ等で使用される各種機能フィルム等を挙げることができる。
【0033】
光学膜とは、反射防止、防眩、光拡散、光学異方性、光学干渉等の光学的な機能を有する膜をいい、膜の機能上膜厚分布を数nm以下にする必要があり、帯電防止層、ハードコート層、易滑性層、接着層、バリアー層、導電層、易接着層、防汚層、配向層等の非光学的な機能を有する層とともに、コロナ放電処理、プラズマ処理、薬液処理等の各種表面処理された透明支持体上に単独であるいは適宜組み合わせて設けることができる。これらの光学膜及び非光学的な機能を有する層は、様々な機能を持たせるために透明支持体上に樹脂を主体とする層が塗設されたものである。
【0034】
本発明の光学フィルムの層構成、構成材料については光学フィルムの用途により異なる。以下、光学フィルムの例として太陽電池、太陽熱温水器、液晶画像表示装置、CRT、PDP、車両の窓等に使用される反射防止フィルムの層構成、構成材料について説明する。
【0035】
反射防止フィルムは、支持体の少なくとも一方の面に、支持体上に支持体と屈折率の異なる層を1または2以上形成した光学干渉層の積層体(他の層を追加することもある)であり、波長λの光に対して高屈折率層及び低屈折率層の光学膜厚をλ/4に設定して反射防止積層体を作製する。光学膜厚とは、層の屈折率nと膜厚dとの積により定義される量である。屈折率の高低はそこに含まれる金属または化合物によってほぼ決まり、例えばTiは高く、Siは低く、Fを含有する化合物は更に低く、このような組み合わせによって屈折率が設定される。屈折率と膜厚は、分光反射率の測定により計算して算出し得る。
【0036】
反射防止フィルムは、透明な支持体上に、必要に応じて後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されている。反射防止層は、通常、支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成されている。構成例としては、支持体側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(支持体またはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、さらに多くの反射防止層を積層するものも提案されている。なかでも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層を有する支持体上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい。
【0037】
反射防止フィルムの好ましい層構成の例を下記に示す。
支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
支持体/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
帯電防止層/支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成に限定されるものではない。
【0038】
次に、反射防止フィルムの各層に用いられる構成材料の具体例を示す。
〈ハードコート層〉
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(2量体以上の成分)、ジエトキシベンゾフェノン(紫外線光開始剤)、アエロジルR−972V(日本アエロジル(株)製)、塗布溶媒
〈帯電防止層〉
ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル誘導体、酸化錫ゾルまたは架橋カチオンポリマー粒子(耐電防止剤)、塗布溶媒
〈高屈折率層〉
テトラ(n)ブトキシチタン、末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)、アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)、紫外線硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500)、塗布溶媒
〈中屈折率層〉
テトラ(n)ブトキシチタン、末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)、アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製KBE903)、紫外線硬化性エポキシ樹脂(旭電化社製KR500)、塗布溶媒
〈低屈折率層〉
テトラエトキシシラン加水分解物、末端反応性ジメチルシリコーンオイル(日本ユニカー社製L−9000)、塗布溶媒
〈防眩層〉
サイリシア431(平均粒径2.5μm(富士シリシア化学(株)製))、アエロジルR972V(平均粒径16nm(日本アエロジル(株)製))、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート重合体、ジメトキシベンゾフェノン光反応開始剤、塗布溶媒。
【0039】
(透明支持体)
本発明に用いられる透明支持体としては各種のポリマーを使用でき、特に限定はされないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートフタレートフィルム、セルローストリアセテート、セルロースナイトレート、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体からなるフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレンビニルアルコールフィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホン系フィルム、ポリエーテルケトンイミドフィルム、ポリアミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ナイロンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、アクリルフィルムあるいはポリアリレート系フィルム等を挙げることができる。本発明に用いられる透明支持体の種類は、光学フィルムの用途により適宜選ばれる。例えば、液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルムでは、セルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルフィルム、ポリカーボネート(以下PCと略すことがある)フィルム、シンジオタクティックポリスチレン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ノルボルネン樹脂系フィルム、例えばアートン(JSR(株)製)、ゼオネックス、ゼオノア(以上日本ゼオン(株)製)及びポリスルホン系フィルムが透明性、機械的性質、光学的異方性がない点等好ましく、それらの中でも、特にTACフィルム及びPCフィルムが、製膜性が容易で加工性に優れているため好ましく用いられる。
【0040】
次に、透明支持体の製造方法について、代表的なTACフィルムを例として述べる。TACフィルムは一般的に、TACフレーク原料及び可塑剤をメチレンクロライドに溶解して粘稠液とし、これに可塑剤を溶解してドープとなし、エクストルーダーダイスから、エンドレスに回転するステンレス等の金属ベルト(バンドともいう)上に流延して、乾燥させ、生乾きの状態でベルトから剥離し、ロール等の搬送装置により、両面から乾燥させて巻き取り製造される。PCフィルムについてもTACフィルムと同様に製膜することができる。
【0041】
本発明に用いられる透明支持体の厚さは、光学フィルムの用途により適宜選ばれる。例えば、液晶表示装置等に用いられる偏光板用保護フィルムでは、その厚さが10〜200μmのものが好ましい。特に膜厚60μm以下の薄膜フィルムで顕著な効果が期待できる。
【0042】
本発明に用いられる透明支持体には可塑剤、紫外線吸収剤、すべり剤等の添加剤を含有することができる。
【0043】
可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが好ましく用いられる。リン酸エステルとしては、トリフェニルフォスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェートが含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的なものである。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、ジシクロヘキシルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート等が用いられる。クエン酸エステルとしては、クエン酸アセチルトリエチル(OACTE)及びクエン酸アセチルトリブチル(OACTB)が用いられる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。リン酸エステル系可塑剤(TPP、TCP、ビフェニル−ジフェニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート)、フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DEHP)が好ましく用いられる。また、この中でもトリフェニルフォスフェート(TPP)が特に好ましく用いられる。
【0044】
可塑剤はTACフィルムへの耐水性付与、あるいはその透湿性改善のため、重要な素材であるが、添加量が多過ぎると塗布層への悪影響あるいは、製造ラインが可塑剤で汚れやすくなるという問題がある。可塑剤の添加量はフィルム中に通常1〜30質量%で添加され、好ましくは4〜20質量%で添加することが望ましい。PCフィルムにも上記可塑剤を添加することができる。
【0045】
また、本発明に有用なTACまたはPCフィルム中に、紫外線吸収剤を含有させることによって、耐光性に優れたフィルムを得ることができる。本発明に有用な紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体(紫外線−1)、ベンゾフェノン誘導体(紫外線−2)、ベンゾトリアゾール誘導体(紫外線−3)、アクリロニトリル誘導体(紫外線−4)、安息香酸誘導体(紫外線−5)または有機金属錯塩(紫外線−6)等があり、それぞれ(紫外線−1)としては、サリチル酸フェニル、4−t−ブチルフェニルサリチル酸等を、(紫外線−2)としては、2−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等を、(紫外線−3)としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−5′−ジ−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等を、(紫外線−4)としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3′−ジフェニルアクリレート、メチル−α−シアノ−β−(p−メトキシフェニル)アクリレート等を、(紫外線−5)としては、レゾルシノール−モノベンゾエート、2′,4′−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等を、(紫外線−6)としては、ニッケルビス−オクチルフェニルサルファミド、エチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸のニッケル塩等を挙げることができる。
【0046】
また、すべり性を改善するために、これらのフィルムを製造する際のドープ中に、シリカ等の微粒子(平均粒径0.005〜0.2μm)を0.01〜0.5質量%添加することもできる。例えば、日本アエロジル製アエロジル200、アエロジルR972D等を添加することができる。すべり性は鋼球での測定で、動摩擦係数0.4以下、好ましくは0.2以下であることが望まれる。
【0047】
(光学膜の材料)
光学フィルムは前述のように透明支持体上に樹脂を主体とする層が塗設されたものである。樹脂の種類は、光学フィルムの用途により、また複数の層を有する光学フィルムではその層の目的により異なり、熱可塑性樹脂、活性線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、その他の樹脂が使用される。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、例えばセルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートまたはセルロースナイトレート等のセルロースエステル類、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、またはコポリブチレン/テレ/イソフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールまたはポリビニルベンザール等のポリビニルアルコール誘導体、ノルボルネン化合物を含有するノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂が挙げられるが特にこれらに限定されるものではない。この中でセルロース誘導体あるいはアクリル樹脂が好ましく、更にアクリル樹脂が最も好ましく用いられる。更にガラス転移点が110℃以下、更に好ましくは90℃以下の熱可塑性アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0049】
活性線硬化性樹脂及び有機溶媒を含有する組成物を透明支持体上に塗設し、活性線を照射することによって、耐久性のある、また硬度が高く傷の付きにくい優れた光学膜を得ることができる。クリアハードコート加工のために活性線硬化性樹脂が用いられる例について説明する。
【0050】
活性線硬化性樹脂とは紫外線や電子線のような活性線照射により架橋反応等を経て硬化する樹脂をいう。活性線硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等が代表的なものとして挙げられるが、紫外線や電子線以外の活性線照射によって硬化する樹脂でもよい。紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂、紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂、紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂、または紫外線硬化型エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0051】
紫外線硬化型アクリルウレタン系樹脂は、一般にポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に更に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下アクリレートにはメタクリレートを包含するものとしてアクリレートのみを表示する)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の水酸基を有するアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば特開昭59−151110号)。
【0052】
紫外線硬化型ポリエステルアクリレート系樹脂は、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させることによって容易に得ることができる(例えば、特開昭59−151112号)。
【0053】
紫外線硬化型エポキシアクリレート系樹脂の具体例としては、エポキシアクリレートをオリゴマーとし、これに反応性希釈剤、光反応開始剤を添加し、反応させたものを挙げることができる(例えば、特開平1−105738号)。この光反応開始剤としては、ベンゾイン誘導体、オキシムケトン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等のうちから、1種もしくは2種以上を選択して使用することができる。
【0054】
また、紫外線硬化型ポリオールアクリレート系樹脂の具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等を挙げることができる。これらの樹脂は通常公知の光増感剤と共に使用される。また上記光反応開始剤も光増感剤としても使用できる。具体的には、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、α−アミロキシムエステル、チオキサントン等及びこれらの誘導体を挙げることができる。また、エポキシアクリレート系の光反応剤の使用の際、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等の増感剤を用いることができる。塗布乾燥後に揮発する溶媒成分を除いた紫外線硬化性樹脂組成物に含まれる光反応開始剤また光増感剤は組成物の2.5〜6質量%であることが特に好ましい。2.5%未満では樹脂フィルムから溶出する可塑剤及び/または紫外線吸収剤によって硬化阻害を受け、耐擦傷性が低下し、逆に6質量%を超えると相対的に紫外線硬化性樹脂成分が減るため逆に耐擦傷性が低下したり、塗布性が悪化する等のため塗膜の面品質を悪くすることがある。
【0055】
紫外線硬化性樹脂のモノマーとしては、例えば、不飽和二重結合が一つのモノマーとして、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、酢酸ビニル、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、スチレン等の一般的なモノマーを挙げることができる。また不飽和二重結合を二つ以上持つモノマーとして、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジメチルアジアクリレート、前出のトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリルエステル等を挙げることができる。
【0056】
活性線硬化性樹脂層の塗布組成物は固形分濃度は10〜95質量%であることが好ましく、塗布方法により適当な濃度が選ばれる。
【0057】
活性線硬化性樹脂を光硬化反応により硬化するための光源としては、紫外線、電子線、γ線等で、化合物を活性させるエネルギー源であれば制限なく使用できるが、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れでも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は50mJ/m2以上、好ましくは100mJ/cm2以上、さらに400mJ/cm2以上が好ましい。紫外線は、多層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射してもよい。生産性の点から、多層を積層後、紫外線を照射することが好ましい。紫外線照射では雰囲気中の酸素による硬化阻害が起こる場合があり、窒素、アルゴン等の不活性ガスを吹き込み酸素濃度を低くした雰囲気中で行ってもよい。
【0058】
各種樹脂層を塗設する際の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール等のグリコールエーテル類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、水等が挙げられ、それらを単独または2種以上混合して使用することができる。中でも、ケトン類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のカルボニル基を有する溶媒と、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等の炭素数4以下のアルコールを併用すると、紫外線照射量等の活性エネルギーの量を低減でき、生産性を向上することができるため特に好ましい。
【0059】
各種樹脂層を塗設する際の塗布方法としては、ワイヤバーコート、ローラーコート、グラビアコート、スライドビードコート、スロットダイコート、カーテンコート等が利用でき、その他ドクターコート、エクストルージョンコート、リバースコート、押し出しコート等も利用できる。塗布量はウェット膜厚で1〜30μmが適当で、好ましくは1〜15μmである。塗布速度は好ましくは10〜60m/minで行われる。
【0060】
(平面性矯正)
本発明において、支持体の平面性を付与する方法としては、塗布乾燥後カレンダー装置で処理することが可能である。カレンダー装置としては、スーパーカレンダーやグロスカレンダーが好ましく、圧力や温度をかけた複数のロール間に塗布乾燥されたフィルムを通すカレンダー処理条件は、温度は60〜120℃程度が、また圧力は1〜100MPa程度が好ましい。
【0061】
また、フィルムの両側縁部をクリップ等で固定して延伸するテンターを用いることもできる。
【0062】
さらに、乾燥後降温ゾーンを設けて、加熱及び加圧ができるカレンダーロール、あるいはそのロール間の間隔が小さい密間ロールを用い、その後徐冷する方法が好ましい。この場合の加熱温度は100〜180℃が好ましく、加熱ロールの後に続いて、1本以上の冷却ロールを有する手段を設ける。冷却温度は20〜80℃が好ましい。平面性矯正手段の密間ロールとしては、特開平6−278149号、同4−286611号及び同4−152125号及び特願平9−313417号を参照することができる。
【0063】
【発明の実施の形態】
以下、図面により本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0064】
図1は光学フィルムの塗布から巻取工程の概略図である。送出機1で送出された透明支持体2は、塗布ヘッド3により光学膜の塗布液を塗設され、複数の搬送ロール4によって支持されながら、乾燥ゾーン5を通過して巻取機6で巻き取られる。
【0065】
光学補償膜、反射防止層のような光学膜では、膜の機能上膜厚分布を数nm以下にする必要があり、精密な塗布、乾燥時の液の流動防止が必要となり、各工程で支持体の平面性を小さくする必要がある。
【0066】
例えば、平面性の悪い支持体では、ロールに巻き付けた状態で塗布する際、ロール上に密着せず塗布ムラとなり、搬送ロール間の支持されていない所での塗布では塗布ムラが更に顕著となる。
【0067】
また、図2のように塗布後の乾燥中にツレを生じ平面性が悪くなると、乾燥風のあたり方が変わり、ロールとの接触状態が異なることにより乾燥ムラとなる。
【0068】
加工中のフィルムの平面性は、前記レーザー変位計、反射分光膜厚計を用いて測定され、加工中の支持体の平面性を0〜1mmにすることで、光学膜の膜厚分布を小さくすることができる。支持体の平面性は好ましくは、0〜0.5mm、より好ましくは0〜0.2mmである。
【0069】
加工中の平面性を向上するためには、リバースクラウンロール、テンターや図3のエキスパンダーロール7による幅方向への張力付与が効果的である。また、端部をニップロールでニップしフィルム幅方向に力を加える方法がある。
【0070】
また、加工中の平面性を向上するためには、図4に示す搬送ロールのロールスパンを10〜500mmとして搬送することで達成できる。ロールスパンは短い程よく、好ましくは10〜150mm、より好ましくは10〜50mmである。また、ロール径を小さくし10〜50mmとすることも効果がある。
【0071】
乾燥工程では、図5に示すように搬送ロール4と搬送ロール4間の隙間を小さくし塗布面の反対側より吸引することにより、吸引によりフィルムが湾曲しロールに接していない部分の平面性を保つことが可能となる。
【0072】
塗膜が紫外線硬化型もしくは光エネルギーにより造膜するような系では、紫外線または光エネルギー硬化時の平面性が悪いとその状態を固定化することになり、次工程での作業性に影響を及ぼしたり、また、その上に光学膜を重ねる際には膜厚分布を劣化させてしまうため、紫外線光や光照射時のフィルムの平面性をよくすることにより、照射後のフィルムの変形を防止させる。紫外線光照射部の入り口、出口もしくはその両方にエキスパンダーロールを配置し、支持体のツレをなくすことが有効である。また、図6に示すように、紫外線ランプ9から紫外線照射を紫外線バックロール8上で行う場合、紫外線バックロール8の入り口側で支持体がツレのような変形を持った状態であると紫外線バックロール8上での密着が得られず、照射後変形を保持した状態となるため、紫外線バックロール8の入り口側の支持体の変形をなくし紫外線バックロール8に導入することで照射後の変形を防止できる。紫外線バックロール8の前にエキスパンダーロール、コンケイブロール、テンターを設置することで照射後の変形を防止できる。
【0073】
塗布後乾燥する際、温風で乾燥することが一般的である。塗布直後から指触乾燥(指で触って指に塗膜液が付着しない、または支持体上の塗膜に乱れが生じない程度の乾燥)までは平均風速0〜0.5m/secのカウンターフローにより乾燥を行い、以降高温にして残留溶媒を乾燥させる。カウンターフロー部での乾燥温度は、溶剤の種類により適宜決定される。最近では遠赤外ヒーターによる乾燥も行われている。ロール搬送では、急激に温度が変化すると、搬送ロールと搬送ロール間で熱膨張や熱収縮を生じるため、変形が生じる。特に、冷却される際は顕著である。これは、支持体が搬送ロール上で支持体に与えられる張力と摩擦力で固定されているため、伸縮により上流側と下流側の支持体幅が変わるために変形する。ドライヤーの入り口部や出口部で特に顕著となる。また、ドライヤーの入り口部の乾燥ゾーン前のロールと乾燥ゾーン内のロール、ドライヤーの出口部の乾燥ゾーン内のロールと乾燥ゾーン外のロール、乾燥ゾーン内のロール間のフィルム温度差が0〜50℃であることにより変形の発生をなくすことが可能となる。乾燥ゾーンのロール間のフィルム温度差は小さいほどよく、好ましくは0〜30℃、より好ましくは0〜15℃である。
【0074】
支持体の急激な温度変化をさせないことにより、変形の発生を防止できる。図7のように、乾燥ゾーン5を複数に分割し、各ゾーン間の温度差を0〜50℃とすることにより変形の発生をなくすことが可能となる。ゾーン間の温度差は好ましくは0〜30℃、より好ましくは0〜15℃である。
【0075】
特にドライヤー出口部では冷却による収縮が発生しツレとなりやすい。図7に示すように、乾燥ゾーン5の出口部に1もしくは2以上の降温ゾーン10を設置し、乾燥ゾーン5の出口部と降温ゾーン10の出口部及び降温ゾーン内のロール間、降温ゾーン内ロールと降温ゾーン外ロール間の支持体温度差を50℃以下とすることで変形の発生をなくすことが可能となる。支持体温度差は好ましくは30℃以下、より好ましくは15℃以下である。
【0076】
塗膜中の溶剤を乾燥する際、塗膜及び支持体中の溶剤を極力乾燥する必要がある。特にPCやセルロースエステルフィルムでは溶剤がしみ込むため、比較的高温での乾燥が必要となる。溶剤がしみ込んだ状態や高温下での搬送は、搬送張力による変形が発生し、フィルムの平面性が劣化する。1回程度の塗布乾燥では、使用時にあまり問題とならないが、複数層を重ねる際には、塗布、乾燥時にフィルムの平面性が悪いと後工程の塗布乾燥工程で膜厚ムラとなる。逐次で塗膜を形成する際に、乾燥後巻き取る前にフィルムの変形を矯正することにより、膜厚ムラのない光学膜を得ることが可能となる。矯正する位置は工程と工程の間であればどこでもよく、巻き取らずにそのまま塗布を行う際は、乾燥後、次の塗布装置までの間で行えばよい。塗布後巻き取る際は、乾燥後巻き取る前もしくは後工程の巻き出し後塗布装置までの間で行えばよい。方法としては、熱ロールに巻き付ける方法、フィルムを高温に保ちフィルム幅外側に力を加える方法がある。
【0077】
【実施例】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0078】
実施例1
《ハードコートフィルム1の作製》
膜厚80μmのセルローストリアセテートフィルム(コニカ(株)製コニカタックKC8UX2MW、屈折率1.49、アセチル基の置換度2.88)の片面に下記ハードコート層組成物(1)を乾燥膜厚3.5μmとなるように塗布し、80℃にて1分間乾燥した。次に160W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から200mJ/cm2照射して硬化させ、ハードコート層を有するハードコートフィルム1を作製した。ハードコート層の屈折率は1.50であった。
【0079】
Figure 0004977936
上記組成物を撹拌しながら、超音波分散した。
【0080】
《中屈折率層フィルム1〜6の作製》
前記ハードコートフィルム1上に、表1に示す製造条件で下記中屈折率層組成物M−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で2分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(160W)を用いて紫外線を200mJ/cm2照射して硬化させ、中屈折率層を有する中屈折率層フィルム1〜6を作製した。
【0081】
Figure 0004977936
なお、この中屈折率層フィルム1〜6の中屈折率層の平均膜厚は90nmで、屈折率は1.70であった。
【0082】
《高屈折率層フィルム1〜6の作製》
前記中屈折率層フィルム1〜6の上に、表1に示す製造条件で、下記高屈折率層組成物H−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀ランプ(160W)を用いて紫外線を200mJ/cm2照射して硬化させ、中屈折率層及び高屈折率層を有する高屈折率層フィルム1〜6を作製した。
【0083】
Figure 0004977936
なお、この高屈折率層フィルム1〜6の高屈折率層の厚さは66nmで、屈折率は1.85であった。
【0084】
《光学フィルム1〜6の作製》
前記高屈折率層フィルム1〜6の上に、表1に示す製造条件で、下記低屈折率層組成物L−1を押し出しコーターで塗布し、80℃で2分間乾燥させた後、更に120℃で5分間熱硬化させ、さらに紫外線を200mJ/cm2照射して硬化させ、中屈折率層、高屈折率層及び低屈折率層を有する光学フィルム1〜6を作製した。
【0085】
〈テトラエトキシシラン加水分解物Aの調製〉
テトラエトキシシラン300gとエタノール455gを混合し、これに1.0質量%クエン酸水溶液295gを添加した後に、室温にて1時間攪拌することでテトラエトキシシラン加水分解物Aを調製した。
【0086】
Figure 0004977936
なお、この光学フィルム1〜6の低屈折率層の厚さは95nmで、屈折率は1.45であった。
【0087】
《評価》
作製した光学フィルム1〜6について下記方法で膜厚ムラ及び色ムラを評価した。その結果を表1に示す。
【0088】
〈膜厚ムラ〉
大塚電子(株)製反射分光膜厚計MCPD−300を用いて試料製造時の搬送方向に対し直角方向に3mmピッチで移動して膜厚を100点測定し、その変動係数の1/2を膜厚ムラ(%)とした。膜厚ムラの合格レベルは3%未満である。
【0089】
〈色ムラ〉
ミノルタ(株)製色彩色度計C2022を用いて試料製造時の搬送方向に対し10mmピッチで、直角方向に10mmピッチで移動してL***表色系の色度を100点測定した。その平均値と各点の色差ΔE*abを計算し、下記基準で評価した。色ムラの合格レベルは1.5未満である。なお色差ΔE*abは以下の式で定義される。
【0090】
色差ΔE*ab=[(ΔL*2+(Δa*2+(Δb*21/2
色ムラの評価基準
○ :色差ΔE*abが0.5未満
○△:色差ΔE*abが0.5以上1.5未満
△ :色差ΔE*abが1.5以上3.0未満
× :色差ΔE*abが3.0以上
【0091】
【表1】
Figure 0004977936
【0092】
表1から、比較の試料と比べて、本発明の試料は膜厚ムラ、色ムラが少なく、均一な光学膜が得られていることが明らかである。
【0093】
実施例2
実施例1で作製したハードコートフィルム1上に、上記中屈折率層組成物M−1を塗布、80℃で1分間乾燥させた後、紫外線照射部の前後における平面性をそれぞれ2mm、3mm、紫外線照射部以降のロールスパン800mm、張力150N/mの製造条件で、高圧水銀ランプ(160W)を用いて紫外線を200mJ/cm2照射して硬化させ、中屈折率層を有する中屈折率層フィルム7を作製した。
【0094】
作製した中屈折率層フィルム7の上に同じ製造条件で、上記高屈折率層組成物H−1及び低屈折率層組成物L−1を塗設して光学フィルム7を作製した。
【0095】
光学フィルム7の作製において、表2のように紫外線照射部の前後で製造条件を変えた以外は同様にして、光学フィルム8〜12を作製した。
【0096】
作製した光学フィルム7〜12について、実施例1と同様にして膜厚ムラ及び色ムラを評価した。その結果を表2に示す。
【0097】
【表2】
Figure 0004977936
【0098】
実施例3
実施例1で作製したハードコートフィルム1上に、上記中屈折率層組成物M−1を塗布、乾燥初期ロールと乾燥終了ロールのフィルムの温度差70℃で乾燥させ、乾燥ゾーン出口の平面性を1.5mm、紫外線照射部以降のロールスパン800mm、張力150N/mの製造条件で、高圧水銀ランプ(160W)を用いて紫外線を200mJ/cm2照射して硬化させ、中屈折率層を有する中屈折率層フィルム13を作製した。
【0099】
作製した中屈折率層フィルム13の上に同じ製造条件で、上記高屈折率層組成物H−1及び低屈折率層組成物L−1を塗設して光学フィルム13を作製した。
【0100】
光学フィルム13の作製において、表3のように製造条件を変えた以外は同様にして、光学フィルム14〜19を作製した。
【0101】
作製した光学フィルム13〜19について、実施例1と同様にして膜厚ムラ及び色ムラを評価した。その結果を表3に示す。
【0102】
【表3】
Figure 0004977936
【0103】
【発明の効果】
本発明により、光学膜の膜厚分布の小さい光学フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】光学フィルムの塗布から巻取工程の概略図。
【図2】光学フィルムの塗布後の平面性の説明図。
【図3】エキスパンダーロールの説明図。
【図4】ロールスパンの説明図。
【図5】乾燥工程での吸引の説明図。
【図6】紫外線バックロールの説明図。
【図7】複数の乾燥ゾーンと降温ゾーンを有する工程の概略図。
【符号の説明】
1 送出機
2 透明支持体
3 塗布ヘッド
4 搬送ロール
5 乾燥ゾーン
6 巻取機
7 エキスパンダーロール
8 紫外線バックロール
9 紫外線ランプ
10 降温ゾーン

Claims (14)

  1. 透明支持体上に光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、乾燥後、光学フィルムの支持体の平面性を0〜1mmに保った状態で紫外線照射し硬化させることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
  2. 紫外線照射の少なくとも前または後にエキスパンダーロールを設置することを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  3. 光学フィルムを紫外線照射バックロールに密着させることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
  4. 紫外線照射バックロールの直前にエキスパンダーロールまたはリバースクラウンロールを設置することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  5. 紫外線照射部の支持体搬送張力を150N/m以上とすることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  6. 紫外線照射バックロールの径が500〜1500mmであることを特徴とする請求項3または4に記載の光学フィルムの製造方法。
  7. 乾燥ゾーンのロール間の光学フィルム温度差が0〜50℃であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  8. 乾燥ゾーンのロール間の光学フィルム温度差が0〜30℃であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  9. 乾燥ゾーンのロール間の光学フィルム温度差が0〜15℃であることを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  10. 乾燥ゾーンを複数に分割することを特徴とする請求項9に記載の光学フィルムの製造方法。
  11. 乾燥ゾーンの出口に少なくとも1つの降温ゾーンを設置することを特徴とする請求項に記載の光学フィルムの製造方法。
  12. 乾燥ゾーンと降温ゾーンの温度差が0〜50℃であることを特徴とする請求項11に記載の光学フィルムの製造方法。
  13. 光学膜がハードコート層、光学補償膜、防眩層または反射防止層であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
  14. 透明支持体上に複数の光学膜を有する光学フィルムの製造方法において、該光学膜を複数回の塗布により形成する際、1回の塗布乾燥ごとに幅方向の平面性を矯正することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
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