JP4977331B2 - 蛍光体およびガス放電表示デバイス - Google Patents
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Description
マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体における、母体である珪酸亜鉛は、一般式:Zn2SiO4で表される。またマンガン付活珪酸亜鉛蛍光体の化学組成は、例えばZn1.9Mn0.1SiO4で表されるが、実用的には、良好な発光効率を得るため、この化学量論組成よりも珪素が過剰な状態で使用されることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
ところで、マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体には、使用状況によって点灯時間の経過に伴い発光効率が低下するといった経時劣化の課題がある。蛍光ランプにおいては、このようなマンガン付活珪酸亜鉛蛍光体の経時劣化課題を改善する方法として、蛍光体粒子表面に窒化珪素化合物層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
蛍光体同学会、"蛍光体ハンドブック(第219項〜第220項)"、オーム社、昭和62年12月25日
また、前記特許文献1の方法では、蛍光体粒子表面にマンガン付活珪酸亜鉛蛍光体以外の化合物層を形成した場合、励起光である紫外線や発光により生成した可視光が、前記化合物層に吸収され、発光効率を著しく低下させるという問題もある。
何故なら、本願発明者の鋭意検討により、以下のことが明らかとなったからである。
1)蛍光体粒子において発光に寄与する部位は粒子表面のごく近傍である。
2)粒子全体の元素構成比と、粒子近傍の元素構成比とは、必ずしも一致しない。
そこで本発明は、上記問題を解決しようとなされたものであって、発光輝度を維持しつつ、蛍光体の経時劣化を抑制することが可能なマンガン付活珪酸亜鉛蛍光体を提供することを目的とする。
何故なら、本願発明者らの鋭意検討により、蛍光体粒子表面に存在するSiO2(以下、「シリカ」という。)は不純物が吸着し易く、これに紫外線吸収時のイオン衝撃による影響も相俟って、蛍光体粒子表面に物理的な欠陥を生じさせることが明らかとなったからである。
これらのことから、本願発明者らは、蛍光体の輝度経時劣化を抑制するためには、蛍光体粒子表面にイオン衝撃を受けた際にも、極力表面近傍のZn/Si比が安定で、かつ欠陥が生じ難い構成にすることが極めて重要であると考えた。
ここで、βの値が化学量論組成に近づくということは、発光輝度の低下を生じさせるような要因もなく、したがって、発光輝度が維持されつつ、蛍光体の経時劣化が抑制されるという効果が奏される。
上述のように、α及びβの値の求め方を規定する、即ち、測定方法を固定することによって、α及びβの値の精度が高められて、上記効果の再現性が向上する。
紫外線吸収時における蛍光体の経時劣化の原因である、蛍光体粒子表面からの亜鉛成分の昇華、蒸発または脱離の現象が顕著となっている範囲に対応するαの値を用いることにより、上記効果の再現性が向上する。
これにより、αの値が、βの値に近づき、蛍光体粒子の表面から中心にかけての、亜鉛の濃度勾配がさらに小さくなるので、拡散現象に起因した表面Zn/Si比の変化が抑制されて、蛍光体粒子表面における組成が安定する。つまり、蛍光体粒子における局所的な組成の経時的変化がますます少なくなる。
これにより、さらに、このようにすることにより、βの値を化学量論組成である2に近づけるため、さらに、組成の均質化が図られ欠陥が生じ難くかつ表面のZn/Si比をさらに安定化させるとともにことができる。
また、本発明のガス放電表示デバイスは、緑色蛍光体を備えるガス放電表示デバイスであって、前記緑色蛍光体は、複数の蛍光体粒子からなり、前記蛍光体粒子の少なくとも一部は、マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体であって、粒子の表面およびその近傍における珪素原子総数に対する亜鉛原子総数の比をαとし、前記蛍光体粒子全体における珪素原子総数に対する亜鉛原子総数の比をβとするとき、前記αおよび前記βは、0<β−α≦0.5、かつ、1.7≦βの関係を有する。
図1は、本発明の実施形態におけるガス放電表示デバイスの一例としてのプラズマディスプレイパネルの概略図である。
PDP100は、交流型(AC型)のPDPであり、互いに主面を対向させて配設された前面板90および背面板91から構成される。
前面ガラス基板101は、前面板90のベースとなる材料で、この前面ガラス基板101上に表示電極102が形成されている。
この表示電極102は、透明電極103と、黒色電極膜104と、バス電極105とからなる。
また、バス電極105は、高い導電性を有する銀を主成分とするため、全体の抵抗値を下げる役割を果たす。
バス電極105は、長手方向の一端に、不図示の駆動回路に接続するための端子部108を有する。
背面板91は、背面ガラス基板111と、アドレス電極112と、誘電体層113と、隔壁114と、隣接する隔壁114どうしの間隙(以下、「隔壁溝」という。)の壁面に形成された蛍光体層115とからなる。
青色蛍光体 BaMgAl10O17:Eu
緑色蛍光体 Zn2SiO4:Mn
赤色蛍光体 YBO3:Eu
前面板90及び背面板91は、図1に示すように重ね合わされ、その周縁部に設けられた封着ガラス190を介して接合されている。
隣り合う一対(X電極及びY電極)の表示電極102と1本のアドレス電極112とが、放電空間116を挟んで交差する領域が画像表示に寄与するセルとなる。
PDP100において、放電空間116では、この維持放電により紫外線が発生し、発生した紫外線(波長約146nmを中心波長とする共鳴線)が蛍光体層115に当たることにより、この紫外線が可視光に変換され、セルが点灯し、画像が表示される。
<2.本実施の形態におけるPDP100の特徴>
本実施の形態におけるPDP100は、蛍光体層115中の緑色蛍光体粒子の組成が従来とは異なる。
従来の緑色蛍光体粒子は、総括Zn/Si比が1.92であり、表面Zn/Si比が、0.91となっており、その差が1.01程度であるが、本実施の形態1における緑色蛍光体粒子は、総括Zn/Si比が1.91であり、表面Zn/Si比が1.90であり、その差は、0.01であり極めて少ない。
<3.表面Zn/Si比および総括Zn/Si比の設定根拠>
発明者らは、従来の緑色蛍光体の表面に形成されているSiO2(以下、「シリカ」という。)が劣化を促進させているのではないかと考えた。
そこで、表面と内部の組成的に差がない蛍光体粒子を作成したところ、初期の発光効率が低下することが判明した。
逆に、蛍光体中の珪素の割合を増やせば、珪素が蛍光体表面にシリカとして析出した状態となり、劣化耐性が悪化する反面、発光効率は向上する。
従来の蛍光体製造方法によれば、0<β−α≦0.5、かつ、1.7≦βの関係、即ち、表面と内部の組成にあまり差が見られない蛍光体粒子を製造しようとすれば、焼成温度を1200℃よりもさらに下げなければならない。
しかしながら、発光に寄与するマンガンは、主に2価のものであることが通説となっており、また、蛍光体の結晶性が高いほど、高い発光効率が得られると考えられるため、焼成温度を下げることによって発光輝度の低下を招く。
これにより、2価のマンガンの割合を高めて、初期の発光輝度を高めつつ、紫外線による経時劣化に強い蛍光体を製造することができる。
<4.緑色蛍光体粒子の製造方法>
(1)原料混合工程
Zn2SiO4:Mnにおけるマンガン供給源となる材料(以下、「Mn材」という。)として、高純度の(純度99%以上)の酸化マンガンを用いる。
Zn2SiO4:Mnにおける亜鉛供給源となる材料として(以下、「Zn材」という。)、直接高純度の(純度99%以上)の酸化亜鉛を用いる。
Zn2SiO4:Mnにおける珪素供給源となる材料(以下、「Si材」という。)としては、高純度(純度99%以上)の二酸化珪素を用いることができる。
具体的な各蛍光体の材料の配合量は以下の通りである。
MnCO3 0.10mol
ZnO 1.90mol
SiO2 1.00mol
Mn材、Zn材およびSi材の混合には、工業的に通常用いられるV型混合機、攪拌機等を用いることができ、また、粉砕機能を有したボールミル、振動ミル、ジェットミル等も用いることができる。
(2)焼成工程
図3は、焼成工程における焼成炉の温度プロファイルの一例である。
大気雰囲気中において、焼成開始後6時間程度で最高温度1200℃にし、この最高温度を維持して4時間焼成を行う。
なお、ここでは、焼成温度1200℃、焼成時間4時間に設定するとしたが、無論、焼成温度および焼成時間等は原料の粒子径や原料のシリカ(SiO2)の形状等により最適値を合わせるために適宜調整が必要であることは言うまでもない。
さらに、表面Zn/Si比の値と総括Zn/Si比との差を目的の値にするためには、焼成工程における焼成温度と焼成雰囲気を調整する必要がある。
ちなみに、大気雰囲気中で焼成する場合、表面Zn/Si比の値と総括Zn/Si比との差を小さくしようとすれば、焼成温度を1200℃よりも低く設定しなければならないので、結晶性が低い上、2価のマンガンの割合が減り、3価のマンガンの割合が増加するものと考えられ、発光輝度が低下する。
以上により本発明の粒子状のマンガン付活珪酸亜鉛蛍光体が製造される。
<5.蛍光体インクの製造方法>
上記マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体粒子をふるいにかけるなどして、平均粒径2μmに調整した緑色蛍光体30wt%と、エチルセルロース(分子量約20万)4.5wt%と、溶剤(ブチルカルビトールアセテート)65.5wt%とを混合する。
このように調整された蛍光体インクを、例えば、メニスカス法で、隔壁溝に塗布した後、これを500℃で10分程度乾燥および焼成し、蛍光体層115を形成する。
なお、当然ながら蛍光体インクの成分は上記内容に限定されるものではない。
<6.劣化評価試験>
発明者らは、本実施の形態におけるマンガン付活珪酸亜鉛蛍光体の劣化評価試験を実施した。
以下、この劣化評価試験の詳細について説明する。
(蛍光体の劣化性能評価法)
マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体の劣化環境として、波長146nmの真空紫外光(VUV)を蛍光体粒子に照射した。
また、各試験品の初期における相対発光輝度Aと、真空紫外光100時間照射後の相対発光輝度Bとを求め、相対発光輝度Bを相対発光輝度Aで除して100倍した値を発光輝度維持率(%)とした。
(各試験対象品の仕様および性能評価結果)
表1に実施例品1〜7および比較品1〜3の蛍光体の組成および性能評価結果を示す。
以下に示す各試験対象品、即ち、比較品および実施例品は、蛍光体粒子全体及び表面それぞれにおいて存在している珪素に対する亜鉛の割合(以下、「Zn/Si比」という。)を調整したものである。
また、実施例品1〜7および比較品1〜3の蛍光体は、前記原料混合工程において示した酸化亜鉛と二酸化珪素の比率と前記焼成工程において示した焼成条件にもとづいて作製されている。
これに対して、比較品1〜2では、総括Zn/Si比が1.7以上であるが、表面Zn/Si比と総括Zn/Si比との差が、0.5を超えており、発光輝度維持率が80%未満となっている。
また、実施例品1〜7の中でも、表面Zn/Si比と総括Zn/Si比との差が0.3を超えている実施例品2では、発光維持率が80%であるのに対し、表面Zn/Si比と総括Zn/Si比との差が0.3以内で、かつ、総括Zn/Si比が1.7以上となっている実施例品1、3〜7では、発光輝度維持率は85%以上となっている。
以上より、表面Zn/Si比と総括Zn/Si比との差を0.5以下、かつ、総括Zn/Si比を1.7以上とすることにより、80%以上の優れた発光輝度維持率が得られることがわかる。
<7.実機評価試験>
図4は、実施例品1および比較品1の蛍光体を用いて、蛍光体層115を形成したPDPをそれぞれ駆動した場合における発光輝度維持率(%)の経時変化を示す図である。
図4に示すように、本実施の形態の緑色蛍光体を用いたPDPは、従来のPDPよりも経時的な輝度劣化が抑制され、画像品質を良好に維持することができた。
一方、従来のPDPでは、緑色の発光輝度が経時的に低下する度合いが大きく、当初の各色蛍光体による色バランスが駆動時間に伴って崩れてしまい、あたかも画面が焼き付いたように特定の色残像(緑色配合を損なった画像)が表示される焼き付き現象が発生した。
(劣化評価試験における測定方法の詳細について)
1)蛍光体粒子表面の組成比を求める方法
蛍光体粒子表面の組成比、即ち、表面Zn/Si比を求める方法として、AlKα線によるX線光電子分光法(以下、「XPS法」という。)を用いた。
上記XPS法により測定される光電子のエネルギーは、試料表面から4nm以内の範囲に存在する元素の情報を含んでおり、照射対象物に含まれる各元素それぞれに相対感度因子が明らかになっていることを利用して、珪素2p軌道に起因する光電子ピーク面積換算から蛍光体粒子表面近傍での相対珪素原子数が求められ、また、亜鉛2p3軌道に起因する光電子ピーク面積換算から、蛍光体粒子表面近傍での相対亜鉛原子数との比、即ち、表面Zn/Si比が求められる。
2)蛍光体粒子全体における組成比を求める方法
蛍光体粒子全体の組成比、即ち、総括Zn/Si比を求める方法として、誘導結合プラズマ発光分析法(ICP−AES)を用いた。
つまり、この放出光の波長及び強度を測定することで、総括Zn/Si比を測定する。
なお、蛍光体粒子全体の組成比を測定する他の方法として、滴定法、誘導結合プラズマ質量分析法、蛍光X線分析法などもあるが、測定方法が異なれば、測定値も異なってくるため、本実施の形態において記載する総括Zn/Si比の数値的根拠については、ICP−AESによる測定結果にもとづく。
(その他の事項)
本実施の形態では、マンガンの付活量を蛍光体1molに対して0.1molとしたが、特にこの値に限定するものではなく、通常蛍光体で用いられる範囲であればよい。
また、本実施の形態では、PDPを例に、これに使用する蛍光体について述べたが、本実施の形態における蛍光体を蛍光灯などの放電発光デバイスに適用しても、PDPの場合と同様の効果が得られることは言うまでもない。
91 背面板
100 PDP
101 前面ガラス基板
102 表示電極
103 透明電極
104 黒色電極膜
105 バス電極
106 誘電体層
107 保護層
108 端子部
111 背面ガラス基板
112 アドレス電極
113 誘電体層
114 隔壁
115 蛍光体層
116 放電空間
190 封着ガラス
Claims (5)
- マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体であって、
粒子の表面およびその近傍における珪素原子総数に対する亜鉛原子総数の比をαとし、前記蛍光体粒子全体における珪素原子総数に対する亜鉛原子総数の比をβとするとき、
前記αおよび前記βは、
0<β−α≦0.5、かつ、1.7≦βの関係を有し、
前記粒子の表面およびその近傍とは、前記蛍光体粒子の表面からの深さが、4nm以内の範囲であり、
焼成後、炉内への大気の導入を遮断した状態で降温させることによって得られる蛍光体。 - 前記αの値は、AlKα線を照射X線とするX線光電子分光法を用いた測定により求められる蛍光体粒子表面近傍における珪素原子数に対する亜鉛原子数の比であり、
前記βの値は、誘導結合プラズマ発光分析法を用いた測定により求められた珪素原子総数に対する亜鉛原子総数の比であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。 - 前記αと前記βの関係が、β−α≦0.3であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体。
- さらに、前記βの関係が、β≦2.0であることを特徴とする請求項3に記載の蛍光体。
- 緑色蛍光体を備えるガス放電表示デバイスであって、
前記緑色蛍光体は、複数の蛍光体粒子からなり、
前記蛍光体粒子の少なくとも一部は、マンガン付活珪酸亜鉛蛍光体であって、粒子の表面およびその近傍における珪素原子総数に対する亜鉛原子総数の比をαとし、前記蛍光体粒子全体における珪素原子総数に対する亜鉛原子総数の比をβとするとき、前記αおよび前記βは、0<β−α≦0.5、かつ、1.7≦βの関係を有し、
前記粒子の表面およびその近傍とは、前記蛍光体粒子の表面からの深さが、4nm以内の範囲であり、
前記蛍光体粒子は、焼成後、炉内への大気の導入を遮断した状態で降温させることによって得られる、ガス放電表示デバイス。
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