つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。まず、この発明に係るトロイダル型無段変速機を車両に用いる場合の概略構成を、図2および図4に基づいて説明する。図2は、トロイダル型無段変速機の構成を示す概略的な側面縦断面図であり、図4は、この実施例における軸線と平面との関係を三次元的に示す斜視図である。なお、図4においては、第1の平面G1および第2の平面G2が略正方形の仮想線で示されているが、第1の平面G1および第2の平面G2は物理的に存在するわけではなく、便宜上、略正方形で表しているに過ぎない。まず、図2において、入力軸1および出力軸2が軸線X1を中心として回転可能に配置されており、軸線X1は略水平に配置されている。すなわち、図2は軸線X1に沿った方向における縦断面図である。また、入力軸1は動力源(図示せず)に動力伝達可能に連結され、出力軸2は車輪(図示せず)に動力伝達可能に連結されている。また、出力軸2は円筒形状に構成されているとともに、出力軸2の軸線方向に形成された軸孔212内に、入力軸1が相対回転可能に挿入されている。この入力軸1と出力軸2との間における変速比を制御するトロイダル型無段変速機100が設けられている。なお、前記動力源は、単数の動力源、または動力の発生原理が異なる複数の動力源のいずれでもよい。この動力源としては、例えば、内燃機関、電動機、油圧モータ、フライホイールシステムなどが挙げられる。
トロイダル型無段変速機100は、入力ディスク4および出力ディスク5を有しており、入力ディスク4が入力軸1と一体回転するように連結され、出力ディスク5が出力軸2と一体回転するように連結されている。入力ディスク4には軸線X1を中心とするトロイダル面6が形成され、出力ディスク5には軸線X1を中心とするトロイダル面7が形成されている。このトロイダル面6とトロイダル面7との間に環状のキャビティT1が形成される。ここで、図2に示す例は、入力ディスク4と出力ディスク5とにより形成されたキャビティT1を有する変速部3が、同軸上に複数、具体的には二箇所形成された、いわゆるダブルキャビティ式のトロイダル型無段変速機100である。そして、出力ディスク5のトロイダル面7同士が逆向きに配置されている。さらに、各変速部3におけるトロイダル面6,7に対して、潤滑油膜(トラクションオイル)を介在させて接触する複数、例えば、2個のパワーローラ8が設けられている。各パワーローラ8は、トロイダル面6,7に倣った外周面形状を有している。二組の変速部3はいずれもケーシング9内に設けられている。
また、ケーシング9の下部は開口されており、そのケーシング9の開口部分を塞ぐように、シリンダボデー10およびロアカバー11が重ねて取り付けられている。具体的には、図3の上下方向で、ケーシング9とロアカバー11との間に、シリンダボデー10が配置されている。また、入力軸1を回転可能に支持する軸受(ラジアル軸受)62が複数設けられており、これらの軸受62がケーシング9の軸孔63に取り付けられている。このようにして、入力軸1は、ケーシング9に対して、軸線X1に直交する第1の平面G1に沿った方向で位置決めされている。前記トロイダル型無段変速機100が車両に搭載された場合、前記第1の平面G1は略垂直方向(略鉛直方向)に沿った平面となる。
一方、2つの出力ディスク5は、軸線X1に沿った方向で、入力ディスク4同士の間に配置されており、中空の出力軸2に対してスプライン嵌合されている。この出力軸2にはドライブギヤ64が形成されているとともに、ドリブンギヤ65を有するドリブンシャフト66が設けられている。ドリブンギヤ65とドライブギヤ64とが噛合されており、ドリブンシャフト66が複数の軸受67により回転可能に支持されている。また、出力軸2も2個の軸受68により支持されている。また、前記ケーシング9の内部には中間壁69が固定されている。中間壁69は軸線X1に沿った方向に2分割された構成片70,71を有しており、中間壁69により、軸受67の1つ、および2つの軸受68が保持されている。なお、他の軸受67はケーシング9により保持されている。このようにして、出力軸2およびドリブンシャフト66は、ケーシング9に対して、第1の平面G1に沿った方向で位置決めされている。
以下、変速部3の構成を図3に基づいて説明する。図3は、軸線X1に直交する第1の平面G1に沿った縦断面図であり、ここでは、図2で左側に示されたキャビティT1に臨む構成を、便宜上、図3で示している。なお、図2で右側に示すキャビティT1に臨む構成は、これとは左右対称に構成されている。前記ケーシング9の内部には、2個のパワーローラ8を別々に支持する2つのトラニオン12が設けられている。2つのトラニオン12およびパワーローラ8等の構造は、軸線X1を含む平面(図3における上下方向の平面)を境として略左右対称に構成されている。なお、図3で左側に配置されたトラニオン12を便宜上トラニオン12Aと記載し、二つのトラニオン12のうち、図3で右側に配置されたトラニオン12を便宜上トラニオン12Bと記載することがある。各トラニオン12であって、車両の高さ方向における下部には支持軸13がそれぞれ形成されており、各トラニオン12であって、車両の高さ方向における上部には支持軸14が一体的に形成されている。支持軸13,14は同軸上に配置されており、各支持軸13には環状のピストン15がそれぞれ取り付けられている。各ピストン15には環状の受圧部16がそれぞれ形成されている。
また、各トラニオン12の支持軸13,14は、上下方向に配置された軸線A1を中心として回転可能に構成されている。各トラニオン12には、軸線A1方向における異なる位置に、上側張り出し部17および下側張り出し部18が、それぞれ設けられている。上側張り出し部17および下側張り出し部18は、軸線A1に直交する方向に対向して突出している。また、車両の高さ方向において、上側張り出し部17の方が下側張り出し部18よりも上方に配置されている。前記各支持軸13の外周であって、下側張り出し部18とピストン15との間には、ロアワッシャ19が、それぞれ取り付けられている。また、各支持軸13の外周であって、ピストン15とロアワッシャ19との間には、プレート20がそれぞれ取り付けられている。さらに、各支持軸13の外周であって、ロアワッシャ19と下側張り出し部18との間には、それぞれニードルベアリング21が取り付けられている。
前記シリンダボデー10において、ケーシング9の内部に臨む位置には、ロアポスト24が取り付けられている。このロアポスト24は、ボルト60およびナット61を用いて締め付け固定されているとともに、ロアポスト24には支持軸23が設けられている。さらに、ケーシング9の内部には単一(単数)のロアリンク22が設けられており、ロアリンク22は支持軸23により回転可能に支持されている。この支持軸23は軸線X1と平行な方向に延ばされている。また、軸線X1に直交する第1の平面方向で、二つのトラニオン12同士の間に支持軸23が設けられている。さらに、第1の平面方向で、支持軸23は軸線X1よりも下方に配置されている。このようにして、ロアリンク22は、軸線X1に直交する第1の平面G1内で、シーソー状に揺動可能に構成されている。つまり、図4に示すように、第2の平面G2に沿った方向で、一方のキャビティT1に対応する2本のトラニオン12を支持する二つの軸孔26同士の間に、1つのロアポスト24が配置されている。このロアポスト24も、二つのキャビティT1に対応してそれぞれ設けられている。このロアポスト24は、ねじ部材60を締め付けることにより、前記シリンダボデー10に対して固定されており、ロアポスト24とシリンダボデー10との接触面同士は、略平坦に構成されている。また、支持軸23の両側であってロアポスト24とロアリンク22との間には、弾性部材25がそれぞれ介在させられている。この弾性部材25はロアリンク22に対して上向きの力を与える機構であり、この弾性部材25としては、例えば、圧縮コイルばねを用いることが可能である。
さらに、ロアリンク22を高さ方向に貫通する軸孔26が形成されており、この軸孔26内にニードルベアリング21が配置されている。各ニードルベアリング21は、ロアリンク22に対して軸線A1に沿って移動可能に構成されている。このロアリンク22は、二組の変速部3に共用されるものであり、ロアリンク22の略4隅に軸孔26が設けられている。そして、前記第2の平面G2内において、1つのキャビティT1に相当する2つの軸孔26の中心から、前記支持軸23の軸線までの距離は同一に構成されている。そして、二組の変速部3に設けられた四本のトラニオン12にニードルベアリング21が取り付けられており、これらのニードルベアリング21が、各軸孔26に配置される構成となっている。そして、ニードルベアリング21は、支持軸13に接触する多数の転動体(ニードル)21Aと、これらの転動体21Aを保持する環状の外輪21Bとを有している。さらに、シリンダボデー10とロアカバー11との間には、一方のトラニオン12Aのピストン15に対応する油圧室27,28が設けられている。そして、油圧室27,28の油圧がピストン15の受圧部16に作用する構成になっている。さらに、シリンダボデー10とロアカバー11との間には、他方のトラニオン12Bのピストン15に対応する油圧室29,30が設けられている。そして、油圧室29,30の油圧がピストン15の受圧部16に作用する構成になっている。
一方、ケーシング9の上部を構成する天板31には、アッパポスト31Aが位置決め固定されている。このアッパポスト31Aと天板31との接触面同士は、共に平坦に構成されている。また、アッパポスト31Aには支持軸33が設けられている。支持軸33は、第1の平面方向で、トラニオン12Aとトラニオン12Bとの間に配置されており、支持軸33は軸線X1と平行な方向に延ばされている。そして、支持軸33を中心として、第1の平面内でシーソー状に揺動(回転)する単一(単数)のアッパリンク34が設けられている。このアッパポスト31Aも、二つのキャビティT1に対応してそれぞれ設けられている。このアッパリンク34は上側張り出し部17よりも上方に配置されており、アッパリンク34であって、支持軸33の両側には、上下方向に貫通する軸孔35がそれぞれ設けられている。そして、前記第2の平面G2内で、1つのキャビティT1に相当する2つの軸孔35の中心から、前記支持軸33までの距離は同一に構成されている。
また、各支持軸14の外周にはニードルベアリング36がそれぞれ取り付けられており、ニードルベアリング36は軸孔35内に配置されている。そして、ニードルベアリング36はアッパリンク34に対して軸線A1方向に移動可能に構成されている。アッパリンク34は、図4に示すように第2の平面内における形状が略四角形であり、かつ、枠状に構成されている。このアッパリンク34は、二組の変速部3に共用されるものであり、アッパリンク34の略4隅には軸孔35が設けられている。そして、二組の変速部3に設けられた四本のトラニオン12には、それぞれニードルベアリング36が取り付けられており、全てのニードルベアリング36が、それぞれ各軸孔35に配置される構成となっている。このニードルベアリング36は、支持軸14の周囲に接触する多数の転動体(ニードル)36Aと、多数のニードル36Aを保持するように、支持軸14の半径方向で、多数のニードル36Aの外側に配置された外輪36Bとを有している。
また、支持軸14であって、ニードルベアリング36よりも上方には環状のプレート37が取り付けられているとともに、支持軸14であって、プレート37よりも上部にはスナップリング50が取り付けられている。このようにして、トラニオン12とニードルベアリング36とが、軸線A1方向に位置決めされている。つまり、トラニオン12およびニードルベアリング36が、軸線方向に一体的に動作可能である。上記のようにして、アッパリンク34とトラニオン12とが、ニードルベアリング36を介在させて連結されており、トラニオン12が軸線A1に沿って動作すると、アッパリンク34が支持軸33を支点として揺動して、図4に示す第2の平面G2内で、トラニオン12とアッパリンク34とが相対回転する。この第2の平面G2は、軸線A1に直交する平面であり、具体的には水平方向の平面である。
さらに、天板31とアッパリンク34との間であって、支持軸33の両側には、弾性部材41がそれぞれ介在させられている。この弾性部材41はアッパリンク34に対して下向きの力を与える機構であり、この弾性部材41としては、例えば、圧縮コイルばねを用いることが可能である。また、前記二個のパワーローラ8は、各トラニオン12の上側張り出し部17と下側張り出し部18との間に設けられている。また、各トラニオン12は、上側張り出し部17と下側張り出し部18とを接続する側壁141とを有しており、各側壁141により外輪42が回転可能に保持されている。具体的に説明すると、外輪42は相互に偏心された軸部43,44を有しており、軸部43が側壁141によりラジアルベアリング45を介在させて回転可能に支持されている。また、軸部44によりパワーローラ8がラジアルベアリング46を介在させて回転可能に支持されている。さらに、パワーローラ8と外輪42との間にはスラストベアリング47が設けられている。ラジアルベアリング45により支持された軸部43は軸線C1を中心として回転可能であり、ラジアルベアリング46により支持されたパワーローラ8は軸線D1を中心として回転可能である。つまり、軸部44は軸部43を中心として公転し、その軸部44を中心として、パワーローラ8が公転かつ自転可能である。
上記の軸線C1,D1は、前記第1の平面G1と平行に配置されている。そして、前記第1の平面G1内で、トロイダル面6,7とパワーローラ8との接触点が軸線A1上から外れた位置に設定されるように、トロイダル面6,7の形状、前記第1の平面G1内における軸線A1の位置、パワーローラ8の形状などの条件が設定されている。つまり、トロイダル型無段変速機100は、いわゆるハーフトロイダル型の無段変速機である。また、軸線X1に沿った方向において、入力ディスク4と出力ディスク5とを近づける向きの力を与えるアクチュエータ(図示せず)が設けられている。さらに、油圧室27,28,29,30の油圧を制御する油圧制御装置(図示せず)が設けられている。さらに、上側張り出し部17と下側張り出し部18とが連結部材48により連結されている。この連結部材48により、各トラニオン12が、軸線A1に沿った方向の荷重に対する強度が向上している。
上記のように構成されたトロイダル型無段変速機100において、パワーローラ8と各トロイダル面6,7との間にトラクションオイルの油膜を形成し、その油膜に掛かる圧力を増大してガラス遷移させ、それに伴うせん断力を利用して入力軸1と出力軸2との間でトルクが伝達される。つぎに、図2に示す入力ディスク4が、図3で時計方向に回転する場合を例として、変速部3の変速制御について説明する。前述した油圧室27の油圧と、油圧室28の油圧との関係に基づいて、軸線A1方向におけるトラニオン12Aのピストン15の位置が制御されるとともに、油圧室29の油圧と油圧室30の油圧との関係に基づいて、軸線A1方向におけるトラニオン12Bのピストン15の位置が制御される。具体的には、各ピストン15の動作に連動して、各トラニオン12が一体的に軸線A1方向に動作し、軸線D1が軸線X1に対してオフセット(非交差状態)される。すると、パワーローラ8とトロイダル面6,7との接触点に、サイドスリップ力(傾転力)が誘起されてパワーローラ8の傾転角が変化し、トロイダル面6に対する各パワーローラ8の接触点の接触半径と、トロイダル面7に対する各パワーローラ8の接触点の接触半径とが変化する。このようにして、入力軸1と出力軸2との間における変速比が変化する。また、パワーローラ8の傾転角が変化して、所望の変速比が達成された場合は、トラニオン12が軸線A1方向に動作されて、軸線D1と軸線X1とが交差する状態(中立位置)に制御され、その変速比が維持される。
一方、アクチュエータにより入力ディスク4と出力ディスク5とを近づける向きの力が加えられて、パワーローラ8に対する挟持力が発生し、トルク容量が制御される。前述したように、ハーフトロイダル型の無段変速機においては、トロイダル面6,7が、入力ディスク4および出力ディスク5の半径方向で外側に向けて開くような形状に設定されているため、パワーローラ8に加えられる挟持力に応じて、入力ディスク4および出力ディスク5の間から、半径方向の外側に押し出そうとする向きの分力が生じる。パワーローラ8でこのような分力が生じると、その分力に応じた荷重が、外輪42を経由してトラニオン12に伝達される。ここで、各変速部3では、二個のパワーローラ8からロアリンク22およびアッパリンク34に伝達される荷重の向きが相互に逆向きとなるため、二つの荷重同士が略相殺される。
つぎに、図3に示すようなハーフトロイダル型のトロイダル型無段変速機100においては、第2の平面方向で、パワーローラ8をキャビティT1の外に押し出すような力が生じるように、トロイダル面6,7の形状、パワーローラ8の外周面形状、各トラニオン12の軸線A1の位置などが設定されている。また、第2の平面方向で、トロイダル面6,7の曲率中心(図示せず)と、軸線A1と第2の平面G2の交点とが一致するように、第2の平面方向で、各トラニオン12が位置決めされる。このトラニオン12の位置決めにより、パワーローラ8の傾転角度に関わりなく、軸線A1から、トロイダル面6,7に対するパワーローラ8の接触点までの半径が、常に同一半径となる。このトラニオン12の位置決めをおこなう構造について説明する。前述したように、第2の平面方向において、入力ディスク4および出力ディスク5は、軸受62によりケーシング9に位置決めされている。また、第2の平面方向において、各トラニオン12は、アッパリンク34およびロアリンク22により位置決めされている。このアッパリンク34は、アッパポスト31Aを介してケーシング9に位置決め固定されている。一方、ロアリンク22は、ロアポスト24を介してシリンダボデー10に位置決め固定されている。
一方、前記ケーシング9とシリンダボデー10とは、別々に構成された部品であり、トロイダル型無段変速機100の組み立て工程において、ケーシング9とシリンダボデー10とが位置決めおよび固定される。例えば、図3に示すように、ケーシング9にはその端面9Aに臨む凹部9Bが複数設けられているとともに、シリンダボデー10にはその端面10Aに臨む凹部10Bが複数設けられているとともに、凹部9Bおよび凹部10Bの両方に挿入される位置決めピン(ノックピン)72により、ケーシング9とシリンダボデー10とが、第2の平面方向に位置決めされる構成となっている。そして、複数のボルト73を締め付けることにより、ケーシング9およびシリンダボデー10およびロアカバー11が固定されるように構成されている。さらに、前記アッパポスト31Aは前記ケーシング9に位置決め固定され、前記ロアポスト24は前記シリンダボデー10に位置決め固定されている。さらに、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とが相対的に位置決めされている。以下、トロイダル型無段変速機100の組み立て工程において、これらの位置決めをおこなう装置および位置決め方法の構成例を、順次説明する。
(構成例1)
まず、構成例1を図1および図5に基づいて説明する。図1は、前記第1の平面G1における縦断面図、図5は、前記軸線X1に沿った方向における縦断面図である。なお、図1および図5においては、便宜上、図3とは上下逆に示されている。まず、前記ロアポスト24には、凹部200が設けられており、前記シリンダボデー10には凹部201が設けられている。そして、両方の凹部200,201に亘って配置される位置決めピン(ノックピン)202が設けられている。さらに、前記ロアポスト24には穴208が設けられている。図1および図5の例では、穴208の平面形状は円形に構成されており、その穴208の中心線(図示せず)は鉛直方向に沿って配置されている。また、前記軸線X1に直交する平面内で、前記穴208の中心線上に、前記ロアリンク22の揺動中心が配置されている。
一方、前記アッパポスト31Aは天板31の内面に取り付けられており、天板31には軸孔204が設けられている。そして、アッパポスト31Aには雌ねじ部206が設けられており、軸孔204に挿入されたボルト207が締め付けられて、アッパポスト31Aが前記ケーシング9に位置決め固定される構成となっている。さらに、前記アッパポスト31には穴209が設けられている。図1および図5の例では、穴209の平面形状は円形に構成されており、その穴209の中心線(図示せず)は鉛直方向に沿って配置されている。また、前記軸線X1に直交する平面内で、前記穴209の中心線上に、前記アッパリンク34の揺動中心が配置されている。なお、穴208,209の内径は同一に構成されている。また図5に示す例では、出力ディスク5の軸孔5Aの内径は、出力軸2の軸孔212の内径よりも大きく構成されている。つまり、図5の示された出力ディスク5および出力軸2を用いる場合、トロイダル型無段変速機100が図2に示すように組み立てられた状態で、出力ディスク5の内周と入力軸1の外周との間にラジアル軸受(図示せず)を配置可能である。
つぎに、前記第1の平面G1内で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを相対的に位置決めする「位置決め装置」の構成を説明する。この位置決め装置は、第1の治具である軸部材210と、第2の治具であるアーム211とを有している。まず、軸部材210は、前記第1の平面G1内において、その外周形状が円形に構成されている。すなわち、軸部材210は、円柱または円筒によって構成されている。また、この軸部材210の外径は、前記出力軸2の軸孔212の内径よりも若干小さく構成されており、軸孔212に軸部材210を挿入可能となっている。軸部材210と出力軸2とのはめ合い関係は、スキマバメとなっている。このように、前記軸部材210は、前記出力軸2の軸孔212に挿入された場合において、前記軸線X1を中心として配置される構成を有している。
つぎに、前記アーム211の構成を説明すると、アーム211は前記軸部材210の外周に嵌合される円筒部213を有している。つまり、アーム211は、前記軸線X1を中心として、前記軸部材210に対して相対回転可能である。また、この円筒部213の外周には、前記軸線X1を中心として半径方向に延ばされた(突出された)2本の軸部214が設けられている。2本の軸部214は、円筒部213の外周において、180度異なる位置に設けられている。すなわち、2本の軸部214が放射状に設けられており、前記第1の平面G1内で、前記軸線X1を通過する線分(直線)F1に沿って2本の軸部214が配置されている。そして、2本の軸部214の自由端には共に球部216が設けられている。また、前記軸線X1と直交する平面内で、前記軸線X1から一方の球部216の中心(図示せず)までの直線距離と、前記軸線X1から他方の球部216の中心(図示せず)までの直線距離とが同一に構成されている。すなわち、前記第1の平面G1内で、前記軸線X1を中心として、前記2個の球部216同士が点対称となる位置に配置されている。さらに、前記2個の球部216の外径は同一に構成されている。また、前記軸部材210は1本設けられており、前記アーム211は2個設けられている。そして、1個のアーム211が、各キャビティT1に対応する1組のアッパポスト31およびロアポスト24を位置決めする場合に用いられる。
つぎに、前記軸部材210およびアーム211を用いて、前記第1の平面G1内で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24との相対的な位置決めをおこなう方法を説明する。まず、前記アッパポスト31Aを前記ケーシング9の天板31の内面に接触させ、前記ボルト207を若干締め込み、アッパポスト31Aをケーシング9に対して仮止めする。この仮止め状態では、ボルト207の軸部と、前記軸孔204の内面との隙間量の範囲内で、前記ケーシング9に対して前記アッパポスト31Aを、図1で左右方向に相対移動可能である。一方、前記ロアポスト24を前記シリンダボデー10の内面に接触させ、前記ボルト60を若干締め込み、ロアポスト24をシリンダボデー10に対して仮止めする。この仮止め状態では、ボルト60の軸部と、前記軸孔203の内面との隙間量の範囲内、または前記位置決めピン202と穴200,201の内面との隙間量の範囲内のうち、何れか少ない方の範囲内で、前記シリンダボデー10に対して前記ロアポスト24を、図1で左右方向に相対移動可能である。
さらに、前記中間壁69に出力軸2を取り付けた状態で、その出力軸2の軸孔212内に前記軸部材210を挿入する。そして、前記中間壁69の両側において、前記2個のアーム214を前記軸部材210の外周に取り付ける。その後、前記中間壁69と前記ケーシング9とを近づけるとともに、前記2本のアーム214の両端のうち、一方の端部に設けられた球部216を前記アッパポスト31Aの穴209にそれぞれ挿入する。さらに、前記シリンダボデー10を前記中間壁69に近づけて、残りの球部216を前記ロアポスト24の穴208に挿入するとともに、前記中間壁69と前記シリンダボデー10とを、ボルト(図示せず)により締め付け固定する。さらに、前記シリンダボデー10と前記ケーシング9とを、前記位置決めピン72により位置決めする。
上記の工程により、前記アーム214が前記軸部材210に取り付けられた状態において、一方の球部216が前記アッパポスト31Aの穴209の内周面に接触し、かつ、他方の球部216が前記ロアポスト24の穴208の内周面に接触する。具体的には、前記第1の平面G1内で、各球部216が2箇所で点触する。このようにして、前記第1の平面G1内で、前記アッパポスト31Aとロアポスト24とが相対的に位置決めされる。つまり、前記線分F1上に、前記ロアポスト24および前記アッパポスト31Aが配置されて、前記ロアリンク22の揺動中心、およびアッパリンク34の揺動中心が、共に線分F1上に配置されるように、ロアポスト24とアッパポスト31Aとが位置決めされる。このアッパポスト31Aとロアポスト24との相対的な位置決めが完了した後、前記ボルト207をさらに締め付けてアッパポスト31Aをケーシング9に固定するとともに、前記ボルト60をさらに締め付けてロアポスト24をシリンダボデー10に固定する。
その後、前記軸部材210を前記軸線X1に沿って移動させて、前記軸部材210を前記アーム211から抜き取る。ついで、前記ケーシング9と前記シリンダボデー10とを、図1および図5において上下方向に引き離し、前記アーム214の球部216を、前記アッパポスト31Aの穴209およびロアポスト24の穴208から抜き取る。さらに、前記ケーシング9と前記シリンダボデー10とを、前記位置決めピン72により再度位置決めした後、前記ボルト73を締め付けると、前記ケーシング9と前記シリンダボデー10とが固定される。
以上のように、前記トロイダル型無段変速機100の組み立て工程(製造過程)において、図1および図5に示す位置決め装置を用いると、前記トロイダル型無段変速機100の組み立て完了前に、前記アッパポスト31Aとロアポスト24とを位置決めすることが可能である。そして、前記アッパポスト31Aにアッパリンク34が取り付けられ、そのアッパリンク34の軸孔35にトラニオン12が取り付けられている。また、前記ロアポスト24にロアリンク22が取り付けられ、そのロアリンク22の軸孔26にトラニオン12が取り付けられている。したがって、図3に示すようにトロイダル型無段変速機100の組み立てが完了した状態においては、前記入力ディスク4および出力ディスク5に対して、一方のトラニオン12Aに保持されたパワーローラ8の位置決め精度と、他方のトラニオン12Bに保持されたパワーローラ8の位置決め精度とを一致させることができる。
例えば、一方のトラニオン12Aに保持されたパワーローラ8が、前記入力ディスク4および出力ディスク5に接触する接触点の半径と、他方のトラニオン12Bに保持されたパワーローラ8が、前記入力ディスク4および出力ディスク5に接触する接触点の半径とが一致する。そして、トロイダル型無段変速機100の組み立て完了後に、そのトロイダル型無段変速機100でトルク伝達をおこなった場合に、一方のトラニオン12Aに保持されたパワーローラ8が、前記入力ディスク4および出力ディスク5に接触して発生する荷重、接線力、トルク容量、トラクション係数などの条件と、他方のトラニオン12Bに保持されたパワーローラ8が、前記入力ディスク4および出力ディスク5に接触して発生する荷重、接線力、トルク容量、トラクション係数などの条件とを、一致させることができる。したがって、「前記トロイダル型無段変速機の組み立て完了後に、トルク伝達をおこなって、アッパポストとロアポストとの位置決め精度を測定し、その測定結果に基づいてトロイダル型無段変速機を分解して、位置決め精度を調整する」という作業を未然に回避でき、トロイダル型無段変速機の組み立て作業工数の増加を抑制できる。
また、前記第1の平面G1内で、前記ロアポスト24とアッパポスト31Aとの相対的な位置決めをおこなった後、前記ロアポスト24と前記シリンダボデー10とを固定し、かつ、アッパポスト31Aとを固定する工程で、前記ロアポスト24またはアッパポスト31Aに対して、前記軸線X1と直交する平面に沿った外力が加わった場合、前記球部216と前記ロアポスト24とが接触し、かつ、球部216とアッパポスト31Aとが接触した状態のまま、前記平面内でアーム211が前記軸線X1を中心として動作可能である。
例えば、図1において、前記ロアポスト24が前記シリンダボデー10の内面に沿って水平方向に平行移動した場合、前記球部216が、前記穴208の内周面に接触したまま摺動する。また、図1において、前記アッパポスト31A前記天板31の内面に沿って水平方向に平行移動した場合、前記球部216が、前記穴209の内周面に接触したまま摺動する。このように、前記ロアリンク22の揺動中心と、前記アッパリンク34の揺動中心とが、共に前記線分F1上に位置決めされた状態に保持される。したがって、前記ロアポスト24または前記アッパポスト31または前記シリンダボデー10または前記天板31の何れか1つの要素の加工精度によらず、前記ロアポスト24または前記アッパポスト31または前記シリンダボデー10または前記天板31または前記アーム211の何れか1つの要素が変形したり、前記球部216が穴208,209から外れにくくなったりすることなく、前記ロアポスト24と前記アッパポスト31Aとを確実に位置決めできる。
また、前記第1の平面G1内において、前記球部216の外周形状が円形であるため、前記アーム211が前記軸線X1を中心として動作した場合でも、前記平面内において、前記球部216と前記穴208の内周面との隙間量が略同じに維持される(変化しない)とともに、前記平面内において、前記球部216と前記穴209の内周面との隙間量が略同じに維持される(変化しない)。したがって、前記ロアポスト24または前記アッパポスト31Aまたは前記シリンダボデー10または前記ケーシング9または前記アーム211のうち、何れか一つの要素が変形したり、アーム211が外れにくくなったりすることを、一層確実に抑制できる。
ここで、図1ないし図5に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、軸線X1が、この発明の軸線に相当し、ロアポスト24が、この発明の第1のポストに相当し、アッパポスト31Aが、この発明の第2のポストに相当し、シリンダボデー10が、この発明の第1の固定部材に相当し、前記ケーシング9が、この発明の第2の固定部材に相当し、前記第1の平面G1が、この発明における「軸線に直交する平面」に相当し、前記軸部材210および前記アーム211が、この発明の治具に相当し、線分F1が、この発明の線分に相当し、2個の球部216が、この発明の第1の接触部および第2の接触部に相当し、前記穴208の内周面が、この発明の「第1の相手部」に相当し、穴209の内周面が、この発明の「第2の相手部」に相当する。また、この発明における「第1のポストと第2のポストとの相対位置を位置決めする」の技術的意味は、前記線分F1上に、前記ロアポスト24および前記アッパポスト31Aを配置すること、より具体的には、ロアリンク22の揺動中心、およびアッパリンク34の揺動中心が、共に線分F1上に配置されるように、ロアポスト24とアッパポスト31Aとを位置決めすることである。
(構成例2)
つぎに、前記トロイダル型無段変速機100を組み立てる工程で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを位置決めする「位置決め装置」および「位置決め方法」の構成例2を、図1および図6に基づいて説明する。この構成例2においては、前記出力ディスク5の軸孔5Aの内径の方が、前記出力軸2の軸穴212の内径よりも小さく構成されている。つまり、図6に示された出力軸2および出力ディスク5を用いてトロイダル型無段変速機100を組み立てる場合、出力ディスク5の内周と入力軸1の外周との間に、ラジアル軸受(図示せず)を配置することが可能である。この構成例2におけるその他の構成は、構成例1の場合と同様である。そして、この構成例2においては、前記トロイダル型無段変速機100の組み立て工程で、前記軸部材210を前記入力ディスク5の軸孔5Aおよび前記出力軸2の軸孔212に亘って挿入する場合、前記軸部材210が前記2個の出力ディスク5の軸孔5Aの内周面に接触して、前記軸部材210が前記軸線X1と同軸に配置される。この構成例2においても、構成例1と同様の作用効果を得られる。
(構成例3)
つぎに、前記トロイダル型無段変速機100を組み立てる工程で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを位置決めする「位置決め装置」および「位置決め方法」の構成例3を、図1および図7に基づいて説明する。この構成例3においては、前記軸部材210が、前記軸線X1に沿った方向で2分割されており、各軸部材210にそれぞれアーム211が設けられている。1本の軸部材210とアーム211とが一体回転可能に構成されている。例えば、円筒部213と軸部材210とを、溶接結合、またはねじ結合により固定可能である。また、円筒部213を設けることなく、軸部材210の外周に2本の軸部214を溶接結合、またはねじ込結合により固定して、アーム211を構成することも可能である。この構成例3においても、前記出力ディスク5の軸孔5Aの内径の方が、前記出力軸2の軸穴212の内径よりも小さく構成されている。つまり、図7に示された出力軸2および出力ディスク5を用いてトロイダル型無段変速機100を組み立てる場合、出力ディスク5の内周と入力軸1の外周との間に、ラジアル軸受(図示せず)を配置することが可能である。この構成例3におけるその他の構成は、構成例1の場合と同様である。
そして、この構成例3においては、前記トロイダル型無段変速機100の組み立て工程で、各軸部材210を、前記入力ディスク5の軸孔5A内に別々に挿入することにより、各軸部材210が前記2個の出力ディスク5の軸孔5Aの内周面に別々に接触して、2本の軸部材210が前記軸線X1と同軸に配置される。この構成例3においては、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを位置決めする場合、前記軸部材210と前記アーム211とが、前記軸線X1を中心として回転可能であり、構成例1と同様の作用効果を得られる。
(構成例4)
つぎに、前記トロイダル型無段変速機100を組み立てる工程で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを位置決めする「位置決め装置」および「位置決め方法」の構成例4を、図8ないし図11に基づいて説明する。図8および図10は、前記第1平面G1に沿った方向の縦断面図、図9および図11は前記軸線X1に沿った方向における縦断面図である。この構成例4においては、前記アッパポスト31Aを天板31に接触させて固定する構成ではなく、前記天板に、中間部材であるベース部220が取り付けられ、そのベース部220に前記アッパポスト31Aが取り付けられる構成となっている。図8および図9は、前記ベース部220に前記アッパポスト31Aを取り付ける前の状態を示し、図10および図11は、前記ベース部220に前記アッパポスト31Aを取り付けた状態を示す。
まず、図8および図9に示すように、前記ベース部220は板形状を有しており、その厚さ方向に貫通する2個の穴221を有している。この穴221は、1つのキャビティT1毎に1箇所形成されている。この穴221は、前記第2の平面G2と平行な平面における形状が略円形に構成されており、その穴221の内径は、前記穴208と同一に構成されている。この穴221の中心線は鉛直方向に配置されている。また、前記ベース部220には雌ねじ部222が設けられており、前記ボルト207がこの雌ねじ部222にねじ込まれて締め付けられて、前記ベース部220が前記天板31に固定される構成となっている。また、図10および図11に示すように、前記ベース部220を前記天板31に固定した状態で、前記ベース部220の上面には、凹部223が設けられている。この凹部223は、1個のアッパスト31Aに対応させて複数設けられている。さらに、前記ベース部220の上面に前記アッパポスト31Aが取り付けられている。このアッパポスト31Aにも複数の凹部224がそれぞれ設けられており、凹部223および凹部224に亘って1本の位置決めピン(ノックピン)225が配置されて、前記アッパポスト31Aと前記ベース部220とが、前記第2の平面G2と平行な平面内で相対的に位置決めされている。そして、前記アッパポスト31Aと前記ベース部220とが、ボルト(図示せず)により締め付け固定される構成を有している。この構成例4におけるその他の構成は、構成例1と同じである。
この構成例4においては、前記トロイダル型無段変速機100の組み立て工程で、前記ベース部220と前記ケーシング9とが、前記ボルト207により仮止めされる。前記ベース部220と前記ケーシング9とが、前記ボルト207により仮止めされた状態では、前記ベース部220と前記天板31とが、図8および図9で左右方向、具体的には略水平方向に相対移動可能である。この構成例4では、前記ベース部220を仮止めした状態で、前記軸部材210および前記アーム211を用いて、前記第1の平面G1内で、前記ロアポスト24と前記ベース部220との相対的な位置決めをおこなう。この構成例4において、前記ロアポスト24を前記シリンダボデー10に仮止めし、かつ、前記軸部材を前記出力軸2により保持する工程は、前記構成例1と同じである。
そして、この構成例4においては、一方の球部216を前記凹部221に挿入して、球部216の外周面を前記凹部221の内周面に接触させることにより、前記第1の平面G1内で、前記ロアポスト24と前記ベース220とが相対的に位置決めされる。ついで、前記ボルト60を締め付けてロアポスト24を前記シリンダボデー10に固定し、かつ、前記ボルト207を締め付けて前記ベース220を前記ケーシング9に固定する工程で、前記ロアポスト24および前記ベース部220のうちの少なくとも一方に、図8で略水平方向の外力が加わった場合、前記アーム211が前記軸線X1を中心として所定角度範囲内で回転することで、一方の球部216が前記ロアポスト24に接触し、かつ、他方の球部216が前記ベース部220に接触した状態が維持される。したがって、前記ロアポスト24と前記ベース部220との相対的な位置関係が保持される。
ついで、前記シリンダボデー10と前記ケーシング9とを引き離し、前記軸部材210およびアーム211を取り外す。さらに、前記図10および図11に示すように、位置決めピン225を用いて前記ベース部220と前記アッパポスト31Aとを位置決めし、ボルトを締め付けて前記アッパポスト31Aを固定する。その後、前記シリンダボデー10を前記ケーシング9に位置決め固定した状態では、前記第1の平面G1内で前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とが相対的に位置決めされている。このように、構成例4においても、トロイダル型無段変速機100の組み立て工程で、アッパポスト31Aとロアポスト24の相対的な位置決めをおこなうことができる。したがって、構成例1と同様の効果を得られる。また、この構成例4においては、前記アッパポスト31Aおよび前記ベース部220が、この発明における第2のポストに相当し、穴221の内周面が、この発明における第1の相手部に相当する。
(構成例5)
つぎに、前記トロイダル型無段変速機100を組み立てる工程で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを位置決めする「位置決め装置」および「位置決め方法」の構成例5を、図12および図13に基づいて説明する。図12は、前記第1平面G1に沿った方向の縦断面図、図13は前記軸線X1に沿った方向における縦断面図である。この構成例5では、前記天板31の内面に凹部226が設けられており、前記アッパポスト31Aにおける前記天板31に接触する面に開口された凹部227が設けられている。そして、凹部226および凹部227に亘って配置される位置決めピン(ノックピン)228が設けられている。なお、この構成例5において、基本的な構成は構成例1と同じである。この構成例5においては、前記アッパポスト31Aを前記ケーシング9に仮止めする場合に、図12および図13で、前記第2の平面G2と平行な平面、つまり、略水平な平面内で、前記位置決めピン228により前記アッパポスト31Aと前記天板31とが位置決めされる。この構成例5においても、構成例1と同様の作用効果を得ることができる。
(構成例6)
つぎに、前記トロイダル型無段変速機100を組み立てる工程で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを位置決めする「位置決め装置」および「位置決め方法」の構成例6を、図14に基づいて説明する。図14は前記軸線X1に沿った方向における縦断面図である。この構成例6は、前記軸線X1に沿った方向で、前記アーム211の円筒部213の長さが、2つのアーム211で異なる。具体的には、図14で左側に配置されたアーム211の円筒部213の長さの方が、図14で右側に配置されたアーム211の円筒部213の長さよりも長く構成されている。この構成例6の技術は、構成例1、構成例2、構成例4、構成例5のいずれかと組み合わせて用いることができる。したがって、この構成例6においては、構成例1、構成例2、構成例4、構成例5のいずれかと同様の効果を得ることができる。また、構成例6においては、アーム211の円筒部213の長さが長いため、前記軸部材210の外周面と円筒部213との接触面積が拡大される。したがって、前記軸線X1に沿った方向の縦断面内で、前記軸部材211と前記アーム211とが、相対回転する角度(範囲)を僅少に抑制することができる。このように構成すると、前記軸線X1に沿った方向の縦断面内で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24との相対的な位置決めをおこなうことができる。
(構成例7)
つぎに、前記トロイダル型無段変速機100を組み立てる工程で、前記アッパポスト31Aと前記ロアポスト24とを位置決めする「位置決め装置」および「位置決め方法」の構成例7を、図15および図16に基づいて説明する。図15は、前記第1平面G1に沿った方向の縦断面図、図16は前記軸線X1に沿った方向における縦断面図である。この構成例7においては、前記ロアポスト24をシリンダボデー10に接触させて固定する構成ではなく、前記シリンダボデー10に、中間部材であるベース部229が取り付けられ、そのシリンダボデー10に前記ロアポスト24が取り付けられる構成となっている。また、ロアカバー1がノックピン72で位置決めされ、ケーシング9に固定されている。
まず、前記シリンダボデー10は板形状を有しており、そのシリンダボデー10には雌ねじ部231が設けられており、前記ボルト232がこの雌ねじ部231にねじ込まれて締め付けられて、前記シリンダボデー10が前記ロアカバー11に固定される構成となっている。また、図15および図16に示すように、前記シリンダボデー10を前記ロアカバー11に固定した状態で、前記シリンダボデー10の下面には、凹部233が設けられている。この凹部233は、1個のロアポスト24に対応させて複数設けられている。さらに、前記シリンダボデー10の下面に前記ロアポスト24が取り付けられている。このロアポスト24も複数の凹部234がそれぞれ設けられており、凹部233および凹部234に亘って1本の位置決めピン(ノックピン)235が配置されて、前記ロアポスト24と前記シリンダボデー10とが、前記第2の平面G2と平行な平面内で相対的に位置決めされている。そして、前記ロアポスト24と前記シリンダボデー10とが、ボルト60により締め付け固定される構成を有している。この構成例7におけるその他の構成は、構成例6と同じである。
この構成例7においては、前記トロイダル型無段変速機100の組み立て工程で、先ず、アッパポスト31Aが前記ケーシング9に固定されており、その後に、前記ベース部229と前記シリンダボデー10とが、ボルト232で締め付け固定された状態で、前記ケーシング9に仮止めされる。また、前記ロアポスト24と前記ベース部229とが、前記ボルト60により仮止めされており、その状態では、前記ベース部229と前記ロアポスト24とが、図15および図16で左右方向、具体的には略水平方向に相対移動可能である。この構成例7では、前記ロアポスト24を仮止めした状態で、前記軸部材210および前記アーム211を用いて、前記第1の平面G1内で、前記ロアポスト24と前記アッパポスト31Aとの相対的な位置決めをおこなう原理は、構成例1と同じである。ついで、前記ボルト60を締め付けてロアポスト24を前記ベース部229に固定する。さらに、前記シリンダボデー10と前記ケーシング9とを引き離し、前記軸部材210およびアーム211を取り外し、再度前記シリンダボデー10をケーシング9に位置決め固定する。このように、構成例7においても、トロイダル型無段変速機100の組み立て工程で、アッパポスト31Aとロアポスト24トロイダル型無段変速機の相対的な位置決めをおこなうことができる。したがって、構成例1と同様の効果を得られる。また、この構成例7においては、前記シリンダボデー10およびベース部229が、この発明における第1の固定部材に相当する。
なお、各構成例において、前記球部216に代えて、図17に示すような円板部250を設けることも可能である。この円板部250が、この発明の第1の接触部および第2の接触部に相当する。この場合、前記各穴208,209,221の平面形状は、正方形、長方形などの四角形で構成される。つまり、円板部250の外周面が、前記穴の内周面に接触した状態で、前記アーム211が軸線X1を中心として回転可能であり、各構成例と同様の効果を得られる。すなわち、各構成例では、第1の平面G1内における外周形状が略円形であれば、球部216または円板部のいずれであっても、その外周面が、アッパポスト(またはベース部)およびロアポスト(またはベース部)の穴の内周面に、2点で接触した状態で、アーム211が軸線X1を中心として回転可能であればよい。この場合も、穴の内周面と円板部250の外周面との隙間量は、略一定に維持される。したがって、第1の接触部および第2の接触部は、第1の平面G1内における外周形状が略円形であれば、この発明の作用効果を得られる。
また、第1の接触部および第2の接触部の構成、第1の相手部および第2の相手部の他の構成として、図18に示すものを用いることも可能である。すなわち、アーム211の軸部214の先端に球部216または円板部250の何れも設けられておらず、軸部214の太さもしくは直径が均一に設定されている。これに対して、アッパポスト31Aに設けられた穴251の内周面が、相互に近づく向きで突出された円弧形状を有しているとともに、ロアポスト24に設けられた穴252の内周面が、相互に近づく向きで突出された円弧形状を有している。図18に示す構成を採用すると、軸部214が、前記穴251,252の内周面に1点で接触した状態で、前記アーム211が軸線X1を中心として回転可能であり、各構成例と同様の効果を得られる。この場合も、穴251,252と軸部214との隙間量は略一定に維持される。この図18の構成においては、軸部214が、この発明の第1の接触部および第2の接触部に相当し、穴251,252の内面が、この発明の第1の相手部および第2の相手部に相当する。
さらに、前記軸線X1が水平方向以外の方向、例えば、上下方向に配置された状態で、トロイダル型無段変速機を組み立てる場合にも、この発明の位置決め装置および位置決め方法を用いることができる。さらに、この発明の第1の固定部材および第2の固定部材には、シリンダボディおよびケーシングの他に、蓋部材、ハウジング、ブラケット、マウント部などの構造部品が含まれる。すなわち、第1の固定部材および第2の固定部材は、入力ディスクおよび出力ディスクおよびパワーローラなどを収容する部品もしくは構造部材、あるいは入力ディスクおよび出力ディスクおよびパワーローラの周囲に配置される部品であり、軸線X1を中心として回転することが不可能であり、軸線X1に沿った方向にも動作しないように固定して配置される。そして、第1の固定部材と第2の固定部材とが相対的に位置決めされている。さらに、第1固定部材と第2の固定部材とを固定する固定機構、第1のポストと第1の固定部材とを固定する固定機構、第2のポストと第2の固定部材とを固定する固定機構、第1の固定部材と第2の固定部材とを固定する固定機構としては、雌ねじとボルトの他に、ボルトとナットの組み合わせ、溶接、接着剤を用いた接着、カシメなどの方法を用いてもよい。さらにこの発明において、治具は、いずれも金属材料、例えば機械構造用炭素鋼、アルミニウム合金、アルミニウムなどの他、高剛性の樹脂材料により構成されている。また、この実施例は、車両以外の工作機械、産業機械、運搬機械などに用いるトロイダル型無段変速機を対象とすることも可能である。
4…入力ディスク、 5…出力ディスク、 8…パワーローラ、 9…ケーシング、 10…シリンダボデー、 24…ロアポスト、 31A…アッパポスト、 100…トロイダル型無段変速機、 208,209,221…穴、 210…軸部材、 211…アーム、 220,229…ベース部、 X1…軸線、 G1…第1の平面、 F1…線分。