しかしながら、特許文献1に記載されているトロイダル式無段変速機においては、ロアリンクを固定しているナットを緩めて無段変速機を運転して、パワーローラの位置を補正し、その後、ナットを締め付けるという工程が必要であり、無段変速機を構成する部品の組付け工数が増加する問題があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、入力ディスクおよび出力ディスクおよびパワーローラを回転させることなく、第1の支持部材と第2の支持部材とを、第2の平面方向で相互に位置決めすることの可能なトロイダル式無段変速機の位置決め方法およびその装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、第1の軸線を中心として回転可能に構成される入力ディスクおよび出力ディスクと、前記入力ディスクおよび前記出力ディスクにより挟持されるパワーローラと、前記入力ディスクおよび前記出力ディスクを、前記第1の軸線と直交する第1の平面内で位置決めして保持するケーシングと、前記パワーローラを回転可能に支持するトラニオンと、このトラニオンを、前記第1の平面と平行な第2の軸線を中心として回転可能に支持するとともに、前記第2の軸線方向で異なる位置に配置された第1の支持部材および第2の支持部材と、前記ケーシングに固定される取り付け部材と、この取り付け部材に固定され、かつ、前記第1支持部材を前記第1の平面方向に揺動可能に支持する第1のポストと、前記ケーシングに固定され、かつ、前記第2の支持部材を前記第1の平面方向で揺動可能に支持する第2のポストとを有し、この第2のポストを前記ケーシングに固定し、かつ、前記第1のポストを前記取り付け部材に固定する場合に、前記第2の軸線に直交する第2の平面方向で、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との位置決めをおこなうトロイダル式無段変速機の位置決め方法において、前記第1のポストに設けられた第1の係合部に係合する第3の係合部および、前記第2のポストに設けられた第2の係合部に係合する第4の係合部を有する治具を設け、前記第2の係合部と前記治具に設けられた第4の係合部とを係合させ、かつ、前記第1の係合部と前記治具に設けられた第3の係合部とを係合させることにより、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを、前記第2の平面方向で位置決めした後、前記ケーシングと前記取り付け部材とを前記第2の平面方向に位置決めし、さらに、前記第1のポストと前記取り付け部材とを固定することを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記取り付け部材を前記ケーシングに第2の平面方向で位置決めした後、前記治具で支持されている前記締結部材を締め付けることにより、前記第1のポストと前記取り付け部材とを固定することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項2の構成に加えて、上下方向に配置される前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に前記治具を配置することにより、前記第2の平面方向で前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との位置決めがおこなわれ、前記締結部材の頭部よりも上方に、その締結部材の軸部が配置され、かつ、この軸部を略垂直にして、前記治具により前記締結部材の頭部が支持されることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの構成に加えて、前記第2の係合部は、前記入力ディスクおよび前記出力ディスクに対する前記パワーローラの接触部分にオイルを供給するオイル供給機構を兼ねることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記入力ディスクおよび前記出力ディスクにより前記パワーローラを挟持して構成される変速部が同軸上に複数設けられており、複数の変速部毎に設けられる全てのトラニオンを、単一の第1の支持部材および単一の第2の支持部材により支持することを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項5の構成に加えて、前記複数の変速部毎に前記第1のポストおよび前記第2のポストがそれぞれ設けられているとともに、複数の変速部毎に、前記第1のポストおよび前記第2のポストに対応させて前記治具が複数設けられており、前記第1のポストと前記取り付け部材とを固定する締結部材を、前記複数の変速部毎に複数の治具で支持する場合に、前記第2の平面内における複数の治具同士の相対回転を防止することを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの構成に加えて、前記トラニオンを回転可能に支持するために前記第1の支持部材に設けられた軸孔と、前記トラニオンを回転可能に支持するために前記第2の支持部材に設けられた軸孔とが、前記第2の平面方向で位置決めされることを特徴とするものである。
請求項8の発明は、第1の軸線を中心として回転可能に構成される入力ディスクおよび出力ディスクと、この入力ディスクおよび出力ディスクにより挟持されるパワーローラと、前記入力ディスクおよび前記出力ディスクを、前記第1の軸線と直交する第1の平面方向に位置決めするケーシングと、前記パワーローラを回転可能に支持するトラニオンと、このトラニオンを、前記第1の平面と平行な第2の軸線を中心として回転可能に支持する第1の支持部材および第2の支持部材と、前記ケーシングに固定される取り付け部材と、この取り付け部材に固定され、かつ、前記第1の支持部材を前記第1の平面方向に揺動可能に支持する第1のポストと、前記ケーシングに固定され、かつ、前記第2の支持部材を前記第1の平面方向に揺動可能に支持する第2のポストとを有し、この第2のポストを前記ケーシングに固定し、かつ、前記第1のポストを前記取り付け部材に固定する場合に、前記第2軸線に直交する第2の平面方向で、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とを位置決めするトロイダル式無段変速機の位置決め装置において、前記第1のポストに設けられた第1の係合部に係合する第3の係合部、および前記第2のポストに設けられた第2の係合部に係合する第4の係合部を有する治具を備えており、前記第1の係合部と前記治具に設けられた第3の係合部とを係合させるとともに、前記第2の係合部と前記治具に設けられた第4の係合部とを係合させることにより、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材とが前記第2の平面方向に位置決めされるように構成され、前記ケーシングと前記取り付け部材とを前記第2の平面方向に位置決めし、さらに、前記第1のポストと前記取り付け部材とを固定する締結部材を有していることを特徴とするものである。
請求項9の発明は、請求項8の構成に加えて、前記締結部材を締め付ける前の工程で、この締結部材を前記治具が支持する構成を有していることを特徴とするものである。
請求項10の発明は、請求項9の構成に加えて、上下方向に配置される前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との間に前記治具が配置される構成を有しており、前記締結部材の頭部よりも上方にこの締結部材の軸部が配置され、かつ、この軸部を略垂直にして支持する構成を前記治具が有していることを特徴とするものである。
請求項11の発明は、請求項8ないし10のいずれかの構成に加えて、前記第2の係合部は、前記入力ディスクおよび前記出力ディスクに対する前記パワーローラの接触部分にオイルを供給するオイル供給機構を兼ねる構成であることを特徴とするものである。
請求項12の発明は、請求項8ないし11のいずれかの構成に加えて、前記入力ディスクおよび前記出力ディスクにより前記パワーローラを挟持して構成される変速部が同軸上に複数設けられており、複数の変速部毎に設けられる全てのトラニオンを、単一の第1の支持部材および単一の第2の支持部材により支持するように構成されていることを特徴とするものである。
請求項13の発明は、請求項12の構成に加えて、前記複数の変速部毎に前記第1のポストおよび前記第2のポストがそれぞれ設けられているとともに、複数の変速部毎に、前記第1のポストおよび前記第2のポストに対応して前記治具が複数設けられており、前記第1のポストと前記取り付け部材とを固定する締結部材を、前記複数の変速部毎に複数の治具で支持する場合に、前記第2の平面内における前記複数の治具同士の相対回転を防止する第2の治具を備えていることを特徴とするものである。
請求項14の発明は、請求項8ないし13のいずれかの構成に加えて、前記トラニオンを回転可能に支持するための軸孔が前記第1の支持部材に設けられており、前記トラニオンを回転可能に支持するための軸孔が前記第2の支持部材に設けられており、前記第1の支持部材に設けられた軸孔と、前記第2の支持部材に設けられた軸孔とが、前記第2の平面方向で位置決めされる構成であることを特徴とするものである。
請求項1の発明または請求項8の発明によれば、入力ディスクおよび出力ディスクにより挟持されるパワーローラと、入力ディスクおよび出力ディスクを、第1の軸線と直交する第1の平面内で位置決めして保持するケーシングと、パワーローラを回転可能に支持するトラニオンと、トラニオンを、第1の平面と平行な第2の軸線を中心として回転可能に支持するとともに、第2の軸線方向で異なる位置に配置された第1の支持部材および第2の支持部材と、ケーシングに固定される取り付け部材と、取り付け部材に固定され、かつ、第1支持部材を第1の平面方向に揺動可能に支持する第1のポストと、ケーシングに固定され、かつ、第2の支持部材を第1の平面方向で揺動可能に支持する第2のポストとを有し、第2のポストをケーシングに固定し、かつ、第1のポストを取り付け部材に固定する場合に、第2のポストに設けられた第2の係合部と、治具に設けられた第4の係合部とを係合させるとともに、第1のポストに設けられた第1の係合部と、治具に設けられた第3の係合部とを係合させることにより、第2の軸線に直交する第2の平面方向で、第1の支持部材と第2の支持部材との位置決めがおこなわれる。
そして、ケーシングと取り付け部材とを第2の平面方向に位置決めするとともに、第1のポストと取り付け部材とを固定する。このように、請求項1の発明または請求項8の発明によれば、第1の支持部材と第2の支持部材とを第2の平面方向で位置決めする場合に、「入力ディスクおよび出力ディスクにパワーローラを接触させ、かつ、入力ディスクと出力ディスクとの間でトルク伝達をおこなう」という作業をおこなわずに済む。したがって、第1の支持部材と第2の支持部材とを第2の平面方向で位置決めする作業工数の増加を抑制できる。
また、請求項2の発明よれば請求項1の発明と同様の効果を得られるとともに、請求項9の発明によれば、請求項8の発明と同様の効果を得られる。さらに、請求項2または請求項9の発明によれば、第1の支持部材と第2の支持部材とを第2の平面方向で位置決めする治具が、第1のポストと取り付け部材とを固定する締結部材を支持する機能を兼ねる。したがって、締結部材を支持する機構を新たに設けずに済む。
請求項3の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られるとともに、請求項10の発明によれば、請求項9の発明と同様の効果を得られる。さらに、請求項3または請求項10の発明によれば、上下方向に配置される第1の支持部材と第2の支持部材との間に治具が配置されて、第2の平面方向で第1の支持部材と第2の支持部材との位置決めがおこなわれる。また、請求項3または請求項10の発明によれば、締結部材の頭部よりも上方に軸部が配置され、かつ、この軸部を略垂直にして、治具により締結部材の頭部を支持することができる。したがって、締結部材が落下することを確実に防止できる。また、軸部にナットを取り付ける作業が、治具により阻害されることもない。
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3のいずれかの発明と同様の効果を得られるとともに、請求項11の発明によれば、請求項8ないし10のいずれかの発明と同様の効果を得られる。また、請求項4または請求項11の発明によれば、第2の係合部から、入力ディスクおよび出力ディスクに対するパワーローラの接触部分にオイルを供給することが可能である。したがって、第1の支持部材と第2の支持部材とを第2の平面方向で位置決めする場合に、位置決めのための機構の増加を抑制できる。
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明と同様の効果を得られる一方、請求項12の発明によれば、請求項8ないし11のいずれかの発明と同様の効果を得られる。また、請求項5または請求項12の発明によれば、入力ディスクおよび出力ディスクによりパワーローラを挟持して構成される変速部が同軸上に複数設けられており、複数の変速部毎に設けられる全てのトラニオンを、単一の第1の支持部材および単一の第2の支持部材により支持することが可能である。したがって、複数の変速部に対応して設けられたトラニオンの支持状態を、一括して調整することが可能であり、位置決め作業性が向上する。
請求項6の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる一方、請求項13の発明によれば、請求項12の発明と同様の効果を得られる。また、請求項6または請求項13の発明によれば、複数の変速部毎に設けられた第1のポストおよび第2のポストを、それぞれ複数の治具で支持することが可能である。また、複数の変速部毎に設けられた治具より、第1の支持部材と第1のポストとを固定する締結部材を支持する場合に、第2の平面内で複数の治具同士が相対回転することを防止できる。したがって、複数の変速部毎に、締結部材を治具により確実に支持することが可能である。
請求項7の発明によれば、請求項1ないし6のいずれかの発明と同様の効果を得られる一方、請求項14の発明によれば、請求項8ないし13のいずれかの発明と同様の効果を得られる。また、請求項7または請求項14の発明によれば、第1の支持部材に設けられた軸孔と、第2の支持部材に設けられた軸孔とが、第2の平面方向で位置決めされる。したがって、第2の平面に対する第2の軸線の直角度を高精度に調整できる。
つぎに、この発明を具体例に基づいて説明する。まず、この発明に係るトロイダル式無段変速機を車両に用いる場合の概略構成を、図2および図11に基づいて説明する。図2は、トロイダル式無段変速機の構成を示す概略的な側面断面図であり、図11は、この実施例における軸線と平面との関係を三次元的に示す斜視図である。なお、図11においては、第1の平面G1および第2の平面G2が略正方形の仮想線で示されているが、第1の平面G1および第2の平面G2は物理的に存在するわけではなく、便宜上、略正方形で表しているに過ぎない。まず、図2において、入力軸1および出力軸2が軸線X1を中心として回転可能に配置されており、軸線X1は略水平に配置されている。また、入力軸1は動力源(図示せず)に動力伝達可能に連結され、出力軸2は車輪(図示せず)に動力伝達可能に連結されている。この入力軸1と出力軸2との間における変速比を制御するトロイダル式無段変速機100が設けられている。
トロイダル式無段変速機100は、入力ディスク4および出力ディスク5を有しており、入力ディスク4が入力軸1と一体回転するように連結され、出力ディスク5が出力軸2と一体回転するように連結されている。入力ディスク4には軸線X1を中心とする環状のトロイダル面6が形成され、出力ディスク5には軸線X1を中心とする環状のトロイダル面7が形成されている。このトロイダル面6とトロイダル面7との間に環状のキャビティT1が形成される。ここで、図2に示す例は、入力ディスク4と出力ディスク5とにより形成されたキャビティT1を有する変速部3が、同軸上に複数、具体的には二箇所形成された、いわゆるダブルキャビティ式のトロイダル式無段変速機100である。そして、出力ディスク5のトロイダル面7同士が逆向きに配置されている。さらに、各変速部3におけるトロイダル面6,7に対して、潤滑油膜(トラクションオイル)を介在させて接触する複数、例えば、2個のパワーローラ8が設けられている。各パワーローラ8は、トロイダル面6,7に倣った外周面形状を有している。二組の変速部3はいずれもケーシング9内に設けられている。
また、ケーシング9の下部は開口されており、そのケーシング9の開口部分を塞ぐように、シリンダボデー10およびロアカバー11が重ねて取り付けられている。具体的には、図3の上下方向で、ケーシング9とロアカバー11との間に、シリンダボデー10が配置されている。また、入力軸1を回転可能に支持する軸受(ラジアル軸受)62が複数設けられており、これらの軸受62がケーシング9の軸孔63に取り付けられている。このようにして、入力軸1は、ケーシング9に対して、軸線X1に直交する第1の平面G1に沿った方向で位置決めされている。第1の平面G1は略垂直方向の平面である。
一方、2つの出力ディスク5は、軸線X1に沿った方向で、入力ディスク4同士の間に配置されており、中空の出力軸2に対してスプライン嵌合されている。この出力軸2にはドライブギヤ64が形成されているとともに、ドリブンギヤ65を有するドリブンシャフト66が設けられている。ドリブンギヤ65とドライブギヤ64とが噛合されており、ドリブンシャフト66が複数の軸受67により回転可能に支持されている。また、出力軸2も2個の軸受68により支持されている。この軸受67,68はケーシング9に位置決めされている。ケーシング9の内部には中間壁69が固定されている。中間壁69は軸線X1に沿った方向に2分割された構成片70,71を有しており、中間壁69により、軸受67の1つ、および2つの軸受68が保持されている。なお、他の軸受67はケーシング9により保持されている。このようにして、出力軸2およびドリブンシャフト66は、ケーシング9に対して、第1の平面方向で位置決めされている。
以下、変速部3の構成を図3に基づいて説明する。図3は、軸線X1に直交する第1の平面G1に沿った縦断面図であるここでは、図2で左側に示されたキャビティT1に臨む構成を、便宜上、図3で示している。なお、図2で右側に示すキャビティT1に臨む構成は、これとは左右対称に構成されている。前記ケーシング9の内部には、2個のパワーローラ8を別々に支持する2つのトラニオン12が設けられている。2つのトラニオン12およびパワーローラ8等の構造は、軸線X1を含む平面(図3における上下方向の平面)を境として略左右対称に構成されている。なお、図3で左側に配置されたトラニオン12を便宜上トラニオン12Aと記載し、二つのトラニオン12のうち、図3で右側に配置されたトラニオン12を便宜上トラニオン12Bと記載することがある。各トラニオン12であって、車両の高さ方向における下部には支持軸13がそれぞれ形成されており、各トラニオン12であって、車両の高さ方向における上部には支持軸14が一体的に形成されている。支持軸13,14は同軸上に配置されており、各支持軸13には環状のピストン15がそれぞれ取り付けられている。各ピストン15には環状の受圧部16がそれぞれ形成されている。
また、各トラニオン12の支持軸13,14は、上下方向に配置された軸線A1を中心として回転可能に構成されている。各トラニオン12には、軸線A1方向における異なる位置に、上側張り出し部17および下側張り出し部18が、それぞれ設けられている。上側張り出し部17および下側張り出し部18は、軸線A1に直交する方向に対向して突出している。また、車両の高さ方向において、上側張り出し部17の方が下側張り出し部18よりも上方に配置されている。前記各支持軸13の外周であって、下側張り出し部18とピストン15との間には、ロアワッシャ19が、それぞれ取り付けられている。また、各支持軸13の外周であって、ピストン15とロアワッシャ19との間には、プレート20がそれぞれ取り付けられている。さらに、各支持軸13の外周であって、ロアワッシャ19と下側張り出し部18との間には、それぞれニードルベアリング21が取り付けられている。
前記シリンダボデー10において、ケーシング9の内部に臨む位置には、ロアポスト24が取り付けられている。このロアポスト24は、ボルト60およびナット61を用いて締め付け固定されているとともに、ロアポスト24には支持軸23が設けられている。さらに、ケーシング9の内部には単一(単数)のロアリンク22が設けられており、ロアリンク22は支持軸23により回転可能に支持されている。この支持軸23は軸線X1と平行な方向に延ばされている。また、軸線X1に直交する第1の平面方向で、二つのトラニオン12同士の間に支持軸23が設けられている。さらに、第1の平面方向で、支持軸23は軸線X1よりも下方に配置されている。このようにして、ロアリンク22は、軸線X1に直交する第1の平面方向で、シーソー状に揺動可能に構成されている。つまり、図4に示すように、第2の平面方向で、一方のキャビティT1に対応する2本のトラニオン12を支持する二つの軸孔26同士の間に、1つのロアポスト24が配置されている。このロアポスト24も、二つのキャビティT1に対応してそれぞれ設けられている。また、支持軸23の両側であってロアポスト24とロアリンク22との間には、弾性部材25がそれぞれ介在させられている。この弾性部材25はロアリンク22に対して上向きの力を与える機構であり、この弾性部材25としては、例えば、圧縮コイルばねを用いることが可能である。
さらに、ロアリンク22を高さ方向に貫通する軸孔26が形成されており、この軸孔26内にニードルベアリング21が配置されている。各ニードルベアリング21は、ロアリンク22に対して軸線A1に沿って移動可能に構成されている。ロアリンク22は、図4に示すように第2の平面内における形状が略四角形であり、かつ、枠状に構成されている。このロアリンク22は、二組の変速部3に共用されるものであり、ロアリンク22の略4隅に軸孔26が設けられている。そして、二組の変速部3に設けられた四本のトラニオン12にニードルベアリング21が取り付けられており、これらのニードルベアリング21が、各軸孔26に配置される構成となっている。そして、ニードルベアリング21は、支持軸13に接触する多数の転動体(ニードル)21Aと、これらの転動体21Aを保持する環状の外輪21Bとを有している。さらに、シリンダボデー10とロアカバー11との間には、一方のトラニオン12Aのピストン15に対応する油圧室27,28が設けられている。そして、油圧室27,28の油圧がピストン15の受圧部16に作用する構成になっている。さらに、シリンダボデー10とロアカバー11との間には、他方のトラニオン12Bのピストン15に対応する油圧室29,30が設けられている。そして、油圧室29,30の油圧がピストン15の受圧部16に作用する構成になっている。
一方、ケーシング9の上部を構成する天板31には、アッパポスト31Aが位置決め固定されており、アッパポスト31Aには潤滑ポスト32が取り付けられている。この潤滑ポスト32は略円柱形状を有しており、アッパポスト31Aから下に向けて潤滑ポスト32が突出されている。この潤滑ポスト32には、入力ディスク4および出力ディスク5に対するパワーローラ8の接触部分に、潤滑油を供給する潤滑油吐出孔32Aが設けられている。また、アッパポスト31Aには支持軸33が設けられている。支持軸33は、第1の平面方向で、トラニオン12Aとトラニオン12Bとの間に配置されており、支持軸33は軸線X1と平行な方向に延ばされている。そして、支持軸33を中心として、第1の平面内でシーソー状に揺動(回転)する単一(単数)のアッパリンク34が設けられている。つまり、図4に示すように、第2の平面方向で、一方のキャビティT1に対応する2本のトラニオン12を支持する二つの軸孔35同士の間に、1つのアッパポスト31Aが配置されている。このアッパポスト31Aも、二つのキャビティT1に対応してそれぞれ設けられている。このアッパリンク34は上側張り出し部17よりも上方に配置されており、アッパリンク34であって、支持軸33の両側には、上下方向に貫通する軸孔35がそれぞれ設けられている。
また、各支持軸14の外周にはニードルベアリング36がそれぞれ取り付けられており、ニードルベアリング36は軸孔35内に配置されている。そして、ニードルベアリング36はアッパリンク34に対して軸線A1方向に移動可能に構成されている。アッパリンク34は、図4に示すように第2の平面内における形状が略四角形であり、かつ、枠状に構成されている。このアッパリンク34は、二組の変速部3に共用されるものであり、アッパリンク34の略4隅には軸孔35が設けられている。そして、二組の変速部3に設けられた四本のトラニオン12には、それぞれニードルベアリング36が取り付けられており、全てのニードルベアリング36が、それぞれ各軸孔35に配置される構成となっている。このニードルベアリング36は、支持軸14の周囲に接触する多数の転動体(ニードル)36Aと、多数のニードル36Aを保持するように、支持軸14の半径方向で、多数のニードル36Aの外側に配置された外輪36Bとを有している。
また、支持軸14であって、ニードルベアリング36よりも上方には環状のプレート37が取り付けられているとともに、支持軸14であって、プレート37よりも上部にはスナップリング50が取り付けられている。このようにして、トラニオン12とニードルベアリング36とが、軸線A1方向に位置決めされている。つまり、トラニオン12およびニードルベアリング36が、軸線方向に一体的に動作可能である。上記のようにして、アッパリンク34とトラニオン12とが、ニードルベアリング36を介在させて連結されており、トラニオン12が軸線A1に沿って動作すると、アッパリンク34が支持軸33を支点として揺動して、図11に示す第2の平面G2内で、トラニオン12とアッパリンク34とが相対回転する。この第2の平面G2は、軸線A1に直交する平面であり、具体的には水平方向の平面である。
さらに、天板31とアッパリンク34との間であって、支持軸33の両側には、弾性部材41がそれぞれ介在させられている。この弾性部材41はアッパリンク34に対して下向きの力を与える機構であり、この弾性部材41としては、例えば、圧縮コイルばねを用いることが可能である。また、前記二個のパワーローラ8は、各トラニオン12の上側張り出し部17と下側張り出し部18との間に設けられている。また、各トラニオン12は、上側張り出し部17と下側張り出し部18とを接続する側壁141とを有しており、各側壁141により外輪42が回転可能に保持されている。具体的に説明すると、外輪42は相互に偏心された軸部43,44を有しており、軸部43が側壁141によりラジアルベアリング45を介在させて回転可能に支持されている。また、軸部44によりパワーローラ8がラジアルベアリング46を介在させて回転可能に支持されている。さらに、パワーローラ8と外輪42との間にはスラストベアリング47が設けられている。ラジアルベアリング45により支持された軸部43は軸線C1を中心として回転可能であり、ラジアルベアリング46により支持されたパワーローラ8は軸線D1を中心として回転可能である。つまり、軸部44は軸部43を中心として公転し、その軸部44を中心として、パワーローラ8が公転かつ自転可能である。
上記の軸線C1,D1は、軸線X1に直交する平面と平行に配置されている。そして、軸線X1と直交する第1の平面内で、トロイダル面6,7とパワーローラ8との接触点が軸線A1上から外れた位置に設定されるように、トロイダル面6,7の形状、軸線X1に直交する第1の平面内における軸線A1の位置、パワーローラ8の形状などの条件が設定されている。つまり、トロイダル式無段変速機100は、いわゆるハーフトロイダル形の無段変速機である。また、軸線X1に沿った方向において、入力ディスク4と出力ディスク5とを近づける向きの力を与えるアクチュエータ(図示せず)が設けられている。さらに、油圧室27,28,29,30の油圧を制御する油圧制御装置(図示せず)が設けられている。さらに、上側張り出し部17と下側張り出し部18とが連結部材48により連結されている。この連結部材48により、各トラニオン12が、軸線A1に沿った方向の荷重に対する強度が向上している。
上記のように構成されたトロイダル式無段変速機100において、パワーローラ8と各トロイダル面6,7との間にトラクションオイルの油膜を形成し、その油膜に掛かる圧力を増大してガラス遷移させ、それに伴うせん断力を利用して入力軸1と出力軸2との間でトルクが伝達される。つぎに、図2に示す入力ディスク4が、図3で時計方向に回転する場合を例として、変速部3の変速制御について説明する。前述した油圧室27の油圧と、油圧室28の油圧との関係に基づいて、軸線A1方向におけるトラニオン12Aのピストン15の位置が制御されるとともに、油圧室29の油圧と油圧室30の油圧との関係に基づいて、軸線A1方向におけるトラニオン12Bのピストン15の位置が制御される。具体的には、各ピストン15の動作に連動して、各トラニオン12が一体的に軸線A1方向に動作し、軸線D1が軸線X1に対してオフセット(非交差状態)される。すると、パワーローラ8とトロイダル面6,7との接触点に、サイドスリップ力(傾転力)が誘起されてパワーローラ8の傾転角が変化し、トロイダル面6に対する各パワーローラ8の接触点の接触半径と、トロイダル面7に対する各パワーローラ8の接触点の接触半径とが変化する。このようにして、入力軸1と出力軸2との間における変速比が変化する。また、パワーローラ8の傾転角が変化して、所望の変速比が達成された場合は、トラニオン12が軸線A1方向に動作されて、軸線D1と軸線X1とが交差する状態に制御され、その変速比が維持される。
一方、アクチュエータにより入力ディスク4と出力ディスク5とを近づける向きの力が加えられて、パワーローラ8に対する挟持力が発生し、トルク容量が制御される。前述したように、ハーフトロイダル形の無段変速機においては、トロイダル面6,7が、入力ディスク4および出力ディスク5の半径方向で外側に向けて開くような形状に設定されているため、パワーローラ8に加えられる挟持力に応じて、入力ディスク4および出力ディスク5の間から、半径方向の外側に押し出そうとする向きの分力が生じる。パワーローラ8でこのような分力が生じると、その分力に応じた荷重が、外輪42を経由してトラニオン12に伝達される。ここで、各変速部3では、二個のパワーローラ8からロアリンク22およびアッパリンク34に伝達される荷重の向きが相互に逆向きとなるため、二つの荷重同士が略相殺される。
ところで、図2に示すようなハーフトロイダル形のトロイダル式無段変速機100においては、第2の平面方向で、パワーローラ8をキャビティT1の外に押し出すような力が生じるように、トロイダル面6,7の形状、パワーローラ8の外周面形状、各トラニオン12の軸線A1の位置などが設定されている。また、第2の平面方向で、トロイダル面6,7の曲率中心(図示せず)と、軸線A1と第2の平面G2の交点とが一致するように、第2の平面方向で、各トラニオン12が位置決めされる。このトラニオン12の位置決めにより、パワーローラ8の傾転角度に関わりなく、軸線A1から、トロイダル面6,7に対するパワーローラ8の接触点までの半径が、常に同一半径となる。このトラニオン12の位置決めをおこなう構造について説明する。前述したように、第2の平面方向において、入力ディスク4および出力ディスク5は、軸受62によりケーシング9に位置決めされている。また、第2の平面方向において、各トラニオン12は、アッパリンク34およびロアリンク22により位置決めされている。このアッパリンク34は、アッパポスト31Aを介してケーシング9に位置決め固定されている。一方、ロアリンク22は、ロアポスト24を介してシリンダボデー10に位置決め固定されている。
そして、ケーシング9とシリンダボデー10とは、別々に構成された部品であり、トロイダル式無段変速機100の組み立て工程において、ケーシング9とシリンダボデー10とが位置決めおよび固定される。例えば、図3に示すように、ケーシング9にはその端面9Aに臨む凹部9Bが複数設けられているとともに、シリンダボデー10にはその端面10Aに臨む凹部10Bが複数設けられているとともに、凹部9Bおよび凹部10Bの両方に挿入される位置決めピン72により、ケーシング9とシリンダボデー10とが、第2の平面方向に位置決めされる構成となっている。そして、複数のボルト73を締め付けることにより、ケーシング9およびシリンダボデー10およびロアカバー11が固定されるように構成されている。一方、トロイダル式無段変速機100を組み立てる場合に、ケーシング9とシリンダボデー10とを位置決めする前の工程で、ケーシング9に対するアッパリンク34の位置決めと、シリンダボデー10に対するロアリンク22の位置決めとを、相互に無関係におこなったとすれば、シリンダボデー10をケーシング9に固定した時点で、第2の平面方向で、アッパリンク34とロアリンク22とが相対的に位置ずれする可能性がある。具体的には、第2の平面方向で、アッパリンク34に形成された軸孔35の位置と、ロアリンク22に形成された軸孔26の位置とがずれる可能性がある。
このような不具合を回避するために、トロイダル式無段変速機の組み立て工程において、各部品の位置決めをおこなう場合に用いる位置決め装置を、図1、図4ないし図9に基づいて説明する。これらの図においては、図3とは上下関係を逆にしてある。つまり、ケーシング9よりも上方にシリンダボデー10およびロアカバー11が示されている。前記ケーシング9の上部を構成する天板31には、アッパポスト31Aが設けられている。このアッパポスト31Aは、ケーシング9に対して第2の平面方向で位置決めされ、かつ、ボルト74により締め付け固定されている。すなわち、ケーシング9には軸受62が取り付けられ、かつ、軸受62により入力軸1が保持されるように構成されているため、アッパポスト31Aをケーシング9に対して第2の平面方向で位置決めすることにより、アッパポスト31Aで保持されるトラニオン12の軸線A1を、前述した技術的意義で、第2の平面方向に位置決め可能である。また、ケーシング9には、前記二つのキャビティT1に臨む二つの潤滑ポスト32が位置決め固定されている。潤滑ポスト32が略垂直に立てられた状態で、ケーシング9が保持されている。
一方、ケーシング9には、前述した中間壁69がボルト75により締め付け固定されている。また、中間壁69の構成片70,71が位置決めピン76により相互に位置決めされ、図示しないボルトにより構成片70,71が締め付け固定されている。さらに、中間壁69により軸受68を介して保持された出力軸2は中空に形成されており、軸孔77を有している。この軸孔77に入力軸1が挿入される。さらに、中間壁69に取り付けた軸受67により環状部材78が保持されており、この環状部材78の外周に前述のドリブンギヤ65が形成されている。この環状部材78は、ドリブンシャフト66とスプライン嵌合されるように構成されている。
つぎに、ダブルキャビティ式のトロイダル式無段変速機100を組み立てる工程で用いる治具の構成を説明する。図1、図4ないし図9に示すように、二個の治具79がブロック形状の金属材料により構成されている。各治具79には、二つの係合孔80,81が設けられている。二つの係合孔80,81は、軸線E1を中心として構成され、かつ、軸線E1に直交する平面形状が円形となっている。また、治具79には前記軸線E1に直交する軸線F1を中心とする軸孔82が形成されている。軸線F1は前記第2の平面G2と平行に設定されている。さらに、治具79であって、ケーシング9の天板31とは反対側には、高さ方向に突出する支持腕83が4箇所設けられている。支持腕83は治具79の4隅に配置されている。
そして、ダブルキャビティ式のトロイダル式無段変速機100を組み立てる工程においては、まず、図5および図6に示すように、二個の治具79を下降させ、別個に潤滑ポスト32に仮付けする。具体的には、潤滑ポスト32を治具79の係合孔81に挿入する。その結果、治具79の係合孔80の中心が、ケーシング9に対して第2の平面方向で位置決めされる。ついで、図6および図7のように、治具(円柱形状のシャフト)84を、治具79の軸孔および出力軸2の軸孔77に挿入することにより、ケーシング9に対して治具79が軸線E1を中心として回転することが防止される。
ついで、ロアリンク22を揺動自在に支持した二個のロアポスト24を、二個の治具79により位置決めする工程を説明する。ロアポスト24は、図10に示すように、二つのベース部24Aを有しており、各ベース部24Aには、凹部24Bが2箇所ずつ形成されている。各凹部24Bに臨んで、2箇所、合計4箇所の軸孔86が形成されている。さらにベース部24A同士を接続するアーチ部24Cが設けられており、このアーチ部24Cには円柱形状の係合ピン85が設けられている。このように構成されたロアポスト24を治具79に位置決めする場合は、係合ピン85をケーシング9の天板31に向けるとともに、軸孔86にボルト60の軸部87を挿入した状態で、ロアポスト24およびボルト60を下降させ、図8に示すように、係合ピン85を係合孔80に挿入する。そして、各ボルト60の頭部88が前記支持腕83の先端(上端)に接触して、ボルト60およびロアポスト24およびロアリンク22が、治具79により支持される。このように、二個のロアポスト24の係合ピン85を、治具79の係合孔80にそれぞれ挿入することにより、ロアリンク22が、ケーシング9に対して第2の平面方向で位置決めされる。また、合計で8本のボルト60の軸部87が、図8で上向きに突出した状態となる。
つぎに、シリンダボデー10およびロアカバー11を、二個のロアポスト24に対して、第2の平面方向で位置決め固定する工程を説明する。図8に示すように、シリンダボデー10の上側にロアカバー11を位置させて、シリンダボデー10およびロアカバー11を下降させて、ロアポスト24に近づける。なお、シリンダボデー10とロアカバー11とは、位置決めピン(図示せず)などにより、第2の平面方向に位置決めされている。また、シリンダボデー10には、軸孔89が形成されており、ロアカバー11には軸孔90が形成されている。この軸89と軸孔90とは、第2の平面方向で略同じ位置にある。そして、図1に示すように、ボルト60の軸部87を軸孔89,90に挿入するとともに、位置決めピン72により、ケーシング9に対して、シリンダボデー10およびロアカバー11を第2の平面方向に位置決めする。
ここで、ロアポスト24の軸孔86、およびシリンダボデー10の軸孔89、およびロアカバー11の軸孔90の内径よりも、ボルト60の軸部87の外径の方が小さく設定されている。このため、軸部87と、軸孔86,89,90の内周面との隙間に応じて、ボルト60を第2の平面方向に移動させることが可能であり、位置決めピン72により、ケーシング9に対して、シリンダボデー10およびロアカバー11を第2の平面方向に位置決めすることが可能である。その後、図1に示すように、ボルト60にナット61を取り付けて締め付けると、シリンダボディー10に対して、第2の平面方向におけるロアポスト24の位置決め固定、つまり、ロアリンク22の位置決め固定が完了する。このようにして、第2の平面方向で、アッパリンク34の軸孔35と、ロアリンク22の軸孔26とが、それぞれ同一位置に位置決めされる。なお、この時点では、ケーシング9に対するシリンダボデー10およびロアカバー11の固定はおこなわれない。
ついで、図9に示すように、シリンダボデー10およびロアポスト24およびロアリンク22を一括してケーシング9の天板31から離れる方向に移動させるとともに、治具79を軸孔77,82から抜き取り、かつ、治具79を潤滑ポスト32から取り外す。その後、ロアリンク22に対して、パワーローラ8を支持したトラニオン12を取り付けたユニットを、ケーシング9内に挿入し、トラニオン12の支持軸14をアッパリンク34の軸孔35に挿入する。これと同時に、ケーシング9とシリンダボデー10とを位置決めピン72で位置決めし、ボルト73を締め付けて、ケーシング9とシリンダボデー10とロアカバー11を固定し、トロイダル式無段変速機100の組み立て工程が終了する。
このように、実施例で説明した位置決め装置および位置決め方法によれば、トロイダル式無段変速機100の組み立て工程において、潤滑ポスト32および治具79を用いることにより、第2の平面内G2内で、アッパポスト31Aおよびアッパリンク34に対して、ロアリンク22およびロアポスト24を位置決めすることが可能である。より具体的には、第2の平面G2内で、アッパリンク34の軸孔35の中心と、ロアリンク22の軸孔26の中心とが同一位置に設定される。したがって、トロイダル式無段変速機100の組み立て後に、入力軸1と出力軸2との間で動力伝達をおこないながら、上記部材同士の位置決めをおこなわずに済み、組み立て作業工数の増加を抑制できる。また、ロアポスト24と治具79とを第2の平面方向に位置決めする工程で、ボルト60を治具79により支持した状態で、ケーシング9とシリンダボデー10とを第2の平面方向に位置決めすることが可能である。つまり、治具79がボルト60の落下を防止する機能を兼備しており、ボルト60の落下を防止する装置を新たに設けずに済む。
さらに、ケーシング9の天板31から、軸線X1に直交する方向に延ばされた潤滑ポスト32を利用して、第2の平面G2内で、アッパポスト31Aおよびアッパリンク34に対して、ロアリンク22およびロアポスト24を位置決めすることが可能である。したがって、位置決めに必要な治具の点数の増加を低減でき、治具のコストを低減し、かつ、位置決め作業性を向上することができる。また、入力軸1を保持する出力軸2の軸孔77に、治具84を挿入することにより、治具79の回転を防止できる。したがって、第2の平面内G2で治具79の回転を防止し、かつ、支持腕83でボルト60を支持する場合に、治具79の挿入が阻害されずに済む。また、この実施例においては、上下方向に配置されるロアリンク22とアッパリンク34との間に治具79が配置されて、第2の平面方向でロアリンク22とアッパリンク34との位置決めがおこなわれる。また、この実施例によれば、ボルト60の頭部88よりも上方に軸部87が配置され、かつ、この軸部87を略垂直にして、治具79によりボルト60の頭部88を支持することができる。したがって、ボルト60が落下することを確実に防止できる。また、軸部87にナット61を取り付ける作業が、治具79により阻害されることもない。さらに、潤滑ポスト32から、入力ディスク4および出力ディスク5に対するパワーローラ8の接触部分にトラクションオイルを供給することが可能である。したがって、ロアリンク22とアッパリンク34とを第2の平面方向で位置決めする場合に、位置決めのための機構の増加を抑制できる。
さらに、入力ディスク4および出力ディスク5によりパワーローラ8を挟持して構成される変速部3が同軸上に二組設けられており、二組の変速部3毎に設けられる全てのトラニオン12を、単一のロアリンク22および単一のアッパリンク34により支持することが可能である。したがって、二組の変速部3に対応して設けられたトラニオン12の支持状態を、一括して調整することが可能であり、位置決め作業性が向上する。また、二組の変速部3毎に設けられたロアポスト24およびアッパポスト31Aを、それぞれ複数の治具79で支持することが可能である。また、二組の変速部3毎に設けられた治具79より、ボルト60を支持する場合に、第2の平面G2内で複数の治具79同士が相対回転することを防止できる。したがって、二組の変速部3毎に、ボルト60を治具79により確実に支持することが可能である。さらに、ロアリンク22に設けられた軸孔26と、アッパリンク34に設けられた軸孔36とが、第2の平面方向で位置決めされる。したがって、第2の平面G2に対する第2の軸線A1の直角度を高精度に調整できる。
ここで、この実施例の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、軸線X1が、この発明の「第1の軸線」に相当し、軸線A1が、この発明の「第2の軸線」に相当し、第1の平面G1が、この発明の「第1の平面」に相当し、第2の平面G2が、この発明の「第2の平面」に相当し、入力ディスク4が、この発明の「入力ディスク」に相当し、出力ディスク5が、この発明の「出力ディスク」に相当し、パワーローラ8が、この発明の「パワーローラ」に相当し、ケーシング9が、この発明の「ケーシング」に相当し、トラニオン12が、この発明の「トラニオン」に相当し、ロアリンク22が、この発明の「第1の支持部材」に相当し、アッパリンク34が、この発明の「第2の支持部材」に相当し、シリンダボデー10が、この発明の「取り付け部材」に相当し、ロアポスト24が、この発明の「第1のポスト」に相当し、アッパポスト31Aが、この発明の「第2のポスト」に相当し、係合ピン85が、この発明の「第1の係合部」に相当し、潤滑ポスト32が、この発明の「第2の係合部」に相当し、係合孔80が、この発明の「第3の係合部」に相当し、係合孔81が、この発明の「第4の係合部」に相当し、治具79が、この発明の「治具」に相当し、治具84が、この発明における「第2の治具」に相当し、変速部3が、この発明における「変速部」に相当し、軸孔26,35が、この発明における「軸孔」に相当し、ボルト60およびナット61が、この発明における「締結部材」に相当し、頭部88が、この発明の「頭部」に相当し、軸部87が、この発明の「軸部」に相当する。
なお、この発明において、第1の係合部および第3の係合部は、第2の平面方向の係合力を生じさせる構成であれば、いずれが凹部または凸部であってもよい。さらに、第2の係合部および第4の係合部は、第2の平面方向の係合力を生じさせる構成であれば、いずれが凹部または凸部であってもよい。なお、図2に示すトロイダル式無段変速機100は、キャビティT1が2箇所設けられたダブルキャビティ形のトロイダル式無段変速機であるが、キャビティが一箇所(変速部が一箇所)設けられる構成のシングルキャビティ形のトロイダル式無段変速機にも、この発明を適用可能である。また、取り付け部材は、ケーシングの開口部を閉塞するカバーなどでもよいし、ケーシングを2分割された構成片で構成し、一方の構成片を取り付け部材とすることも可能である。さらに、各係合部としては、実施例で示した嵌り合う機構、つまり、円柱形状のピン(凸部)および凹部に代えて、相互に接触する端面で構成することも可能である。
3…変速部、 4…入力ディスク、 5…出力ディスク、 8…パワーローラ、 9…ケーシング、 10…シリンダボデー、 12…トラニオン、 22…ロアリンク、 24…ロアポスト、 26,35…軸孔、 31A…アッパポスト、 32…潤滑ポスト、 34…アッパリンク、 60…ボルト、 79…治具、 80,81…係合孔、 85…係合ピン、 100…トロイダル式無段変速機、 A1,X1…軸線、 G1…第1の平面、 G2…第2の平面。