JP4975699B2 - エレクトロルミネッセンス素子およびその製造方法 - Google Patents
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Description
これらのEL素子は、いずれも、高速度での発光が可能であるため、動画の表示に好適であり、また、素子構造が簡単でディスプレイパネルの薄型化が可能である等の特性を有している。このような優れた特性を有していることから、EL素子は、携帯電話や車載用ディスプレイとして、日常生活において普及しつつある。
さらに、近年では、上記のような薄型面発光という特長を活かして、次世代の照明としても注目されている。
このため、発光層での発光がEL素子内に閉じ込められ、通常、全発光量の20%程度の光しか外部に取り出して利用することができない。
例えば、特許文献1には、ガラス基板の外側に、高屈折率膜としてZrO2と、低屈折率膜としてMgF2とを交互に積層させた反射防止膜を設けることが記載されている。
また、特許文献2には、TiO2、SbO5、CaO、In2O5等の散乱中心粒子を含むポリマーマトリックスを塗布した光散乱層を設けることが記載されている。
さらに、ガラス基板をマイクロレンズ状や所定形状の凹凸基板として加工する方法も提案されている(例えば、特許文献3,4参照)。
上記特許文献2に記載された方法も、素子の発光に応じて、光散乱層の構成を調整して塗布するため、同様に、工程が煩雑となり、素子の厚さも増加する。
また、上記特許文献3,4に記載された方法は、ガラス基板自体に細工を施すものであるが、所定の表面形状とするための複雑な設計加工を要するという課題を有している。
したがって、素子特性への影響を及ぼさないようにする観点からは、ガラス基板−空気界面、すなわち、ガラス基板表面に、簡便な方法で細工を施して、全反射を抑制することが好ましく、外部に光を取り出す最も実用的な方法と言える。
上記のような光散乱クラックを形成することにより、素子構成を変更することなく、簡便に、外部への光の取り出し効率の向上を図ることができる。
上記のようなクラックであれば、前記透光性ガラス基板の十分な強度およびガスバリア性を保持しつつ、光取り出し効率を効果的に向上させることができる。
このような方法によれば、上記の本発明に係るEL素子を好適に製造することができる。
このように、予めクラック加工を施した透光性ガラス基板を用いて、素子を形成してもよい。
また、本発明に係る製造方法よれば、素子構成を変更することなく、かつ、素子特性に影響を与えることなく、発光効率に優れた上記の本発明に係るEL素子を好適に得ることができる。
したがって、本発明は、従来のディスプレイ用途のみならず、照明等の光源用途においても、高演色性に優れた面発光体としての特性をより活用することに寄与し得る。
なお、以下においては、EL素子のうち、代表として、有機EL素子について説明するが、本発明は、有機EL素子に限定されるものではなく、無機EL素子にも同様に適用することができる。
図7に、一般的な有機EL素子の層構成を示す。図7に示す有機EL素子は、透光性ガラス基板2の一方の面に、透明電極3と、少なくとも一層の発光層を含む有機層4と、金属電極5とが積層されている。そして、前記透光性ガラス基板2の他方の面が空気1との界面を有しており、この面が光取り出し側となる。
図中の矢印破線は、有機層からの発光の進路を示している。光の一部は、各層の界面において全反射する。
本発明は、レーザー処理が、ガラス基板表面に散乱効果を付与することができる形状加工の手法として好適であることを見出したことに基づくものである。
レーザーを透光性ガラス基板表面に照射すると、ガラスがレーザーを吸収し、そのエネルギーの熱変換による急激なガラス基板表面温度の上昇、下降の変化により、ガラス基板表面にクラックが発生する。
また、レーザーの照射によれば、クラックが発生していない部分の透光性ガラス基板表面は、荒れることなく、平坦性を保持することができる。しかも、透光性ガラス基板の他方の面に積層されている素子特性に影響を及ぼすことはない。
なお、レーザーの出力は、用いる透光性ガラス基板の厚さに応じて、クラックが貫通しない程度に適宜調整して照射する。
図1に示すように、透光性ガラス基板表面には、ほぼ均等な密度でクラックが形成される。
このようにしてクラックが形成された透光性ガラス基板により、EL素子内部での発光の全反射を抑制することができ、外部への光の取り出し効率を向上させることができる。
図2,3に示すように、前記クラックは、前記透光性ガラス基板表面における幅が0.1〜5μm、前記透光性ガラス基板表面からの深さが5〜20μmであることが好ましい。
上記のように、前記クラックは、光の全反射を抑制する役割を果たすものであるが、それとともに、透光性ガラス基板がEL素子の基板としての十分な強度およびガスバリア性を保持することができるようにする観点から、基板を貫通することなく、上記範囲内の幅および深さで形成されていることが好ましい。
すなわち、本発明に係るEL素子の製造方法の他の態様として、透光性ガラス基板にレーザーを照射して、光散乱クラックを形成した後、この透光性ガラス基板上に、透明電極と、少なくとも一層の発光層を含む層と、金属電極とを積層させて形成することもできる。
素子を構成する各層の積層工程において、割れや欠けを生じない程度であれば、透光性ガラス基板に予めクラック加工を施しておいた場合でも、上記と同様の全反射抑制効果を得ることができる。
この場合は、前記積層工程前に、下地となるガラス基板の平坦化のために、前記透光性ガラス基板のクラック形成面にパッシベーション膜を形成しておくことが好ましい。
以下、有機EL素子についての各層の具体的な態様の一例を説明する。
このような電極材料としては、例えば、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属等の薄膜により形成することもできるが、一般には、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛等の金属酸化物が用いられ、特に、透明性や導電性等の観点から、ITOが好適に用いられる。
この透明電極の膜厚は、必要とされる光透過性の程度により異なるが、可視光の透過率を、通常、60%以上とすることが好ましく、より好ましくは、80%以上とする。このような光透過性および導電性の確保のため、膜厚は、通常、5〜1000nm、好ましくは、10〜500nm程度とする。
前記金属電極の膜厚は、10〜500nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましい。
さらに、正孔注入層、正孔輸送発光層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送発光層等をも含む公知の積層構造とすることもできる。
これらの各層の形成は、真空蒸着法、スパッタリング法等などの乾式法、インクジェット法、キャスティング法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等の湿式法により行うことができる。好ましくは、真空蒸着により成膜する。
また、前記各層の膜厚は、各層同士の適応性や求められる全体の層厚さ等を考慮して、適宜状況に応じて定められるが、通常、5nm〜5μmの範囲内であることが好ましい。
上記のように、本発明においては、有機層の層構成および構成材料は、改めて設計し直す必要はなく、従来の素子構成および形成方法を適用することができる。
また、本発明における製造方法は、前記有機層が、電荷発生層を介して直列に複数層接続されたマルチフォトン構造の有機EL素子であっても、同様に適用することができる。
[実施例1]
以下の方法により、図7示すような層構成からなる有機EL素子を作製した。
(透光性ガラス基板・透明電極)
まず、パターニング済みの透明電極(ITO)が膜厚300nmで成膜された厚さ0.7mmの透光性ガラス基板を、純水と界面活性剤による超音波洗浄、純水による流水洗浄、純水とイソプロピルアルコールの1:1混合溶液による超音波洗浄、イソプロピルアルコールによる煮沸洗浄の順で洗浄処理した。この基板を沸騰中のイソプロピルアルコールからゆっくり引き上げ、イソプロピルアルコール蒸気中で乾燥させ、最後に、紫外線オゾン洗浄を行った。
この透光性ガラス基板を陽極とし、真空チャンバ内に配置し、1×10-6Torrまで真空排気し、該真空チャンバ内には、蒸着材料をそれぞれ充填した各モリブデン製ボートと、所定のパターンで成膜するための蒸着用マスクを設置しておき、前記ボートを通電加熱し、蒸着材料を蒸発させることにより、順次、有機層および金属電極の成膜を行った。
前記基板の透明電極上に、三酸化モリブデン(MoO3)を膜厚5nmで成膜し、正孔注入層を形成した。
次に、正孔輸送性材料としてNS−21(新日鉄化学株式会社製)を用い、MoO3とともに、各ボートを同時に通電加熱して、共蒸着した。NS21:MoO3=80:10を膜厚20nmで成膜し、さらに、NS21を膜厚5nmで成膜し、正孔輸送層を形成した。
そして、黄色発光素子となるように、発光層は、NPD:ルブレン=98:2を膜厚20nmで成膜して形成した。
前記発光層の上に、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)を膜厚5nmで成膜し、正孔阻止層を形成した。
真空チャンバを真空に保ったまま、マスクを交換し、陰極蒸着用のマスクを設置し、アルミニウム(Al)層を膜厚100nmで形成し、陰極とした。
実施例1において、緑色発光素子となるように、発光層は、Alq3を膜厚20nmで成膜して形成した。
それ以外は、実施例1と同様にして、透光性ガラス基板表面にクラック加工を施した緑色発光素子を作製した。
実施例1において、白色発光素子となるように、発光層は、NS21:EY52(e-Ray Optoelectronics Technology社(以下、e-Ray社という)製)=98.7:1.3を膜厚20nmで成膜し、さらに、EB43(e-Ray社製):EB52(e-Ray社製)=98.8:1.2を膜厚30nmで成膜して形成した。
それ以外は、実施例1と同様にして、透光性ガラス基板表面にクラック加工を施した白色発光素子を作製した。
CO2レーザーにより、予め、透光性ガラス基板表面にクラック加工を施しておき、これを用いて、それ以外については、実施例3と同様にして、透明ガラス基板表面にクラック加工を施した白色発光素子を作製した。
図4〜6に、実施例1〜3について測定した発光強度の各グラフを示す。なお、比較のため、クラック加工を施した素子(加工品)とクラック加工を施していない素子(未加工)とを併せて示す。
2 透光性ガラス基板
3 透明電極
4 有機層
5 金属電極
Claims (5)
- 透光性ガラス基板上に、透明電極と、少なくとも一層の発光層を含む層と、金属電極とが積層され、前記透光性ガラス基板表面に、レーザー照射により形成された光散乱クラックを備えていることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。
- 前記光散乱クラックは、前記透光性ガラス基板表面における幅が0.1〜5μm、前記透光性ガラス基板表面からの深さが5〜20μmであることを特徴とする請求項1記載のエレクトロルミネッセンス素子。
- 透光性ガラス基板上に、透明電極と、少なくとも一層の発光層を含む層と、金属電極とを積層させた後、この透光性ガラス基板表面にレーザーを照射して、該透光性ガラス基板表面に光散乱クラックを形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 透光性ガラス基板にレーザーを照射して、光散乱クラックを形成した後、この透光性ガラス基板上に、透明電極と、少なくとも一層の発光層を含む層と、金属電極とを積層させて形成することを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記光散乱クラックは、前記透光性ガラス基板表面における幅が0.1〜5μm、前記透光性ガラス基板表面からの深さが5〜20μmであることを特徴とする請求項3または4記載のエレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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