以下、本発明の最良な実施の形態について、図面に示す実施例を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図1において、記録テープカートリッジ10のドライブ装置(図示省略)への装填方向を矢印Aで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向(右側)とする。また、矢印A方向及び矢印B方向と直交する方向を矢印Cで示し、それを記録テープカートリッジ10の上方向(上側)とする。
図1、図2で示すように、記録テープカートリッジ10は、平面視で略矩形状とされたケース12内に、情報記録再生媒体である磁気テープ等の記録テープTを巻装したリール14を回転可能に単一で収容して構成されている。ケース12は、ドライブ装置への装填方向先頭側の1つの角部である右前角部が平面視で斜めに切り欠かれた上ケース16と下ケース18とを互いの周壁16A、18Aを突き合せて接合することで構成されており、その内部にはリール14を収容する収容空間が形成されている。
また、上ケース16及び下ケース18の周壁16A、18Aの切り取られた角部が記録テープTの引き出し用の開口20とされ、この開口20から引き出される記録テープTの自由端には、ドライブ装置の引出手段(図示省略)によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダーピン22が接続されている。リーダーピン22の記録テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝22Aが形成されており、この環状溝22Aが引出手段のフック等に係止される。これにより、記録テープTを引き出す際に、フック等が記録テープTに接触して傷付けない構成である。
また、ケース12の開口20の内側には、ケース12内において、リーダーピン22を位置決め保持する上下一対のピン保持部24が設けられている。ピン保持部24は、略半円筒形状をしており、その凹部24A内に、直立した状態のリーダーピン22の両端部が保持されるようになっている。なお、ピン保持部24の記録テープT引き出し側は開放されており、リーダーピン22が出入する出入口となっている。
また、ピン保持部24の近傍には、板バネ25が、前壁12A(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印A方向を向く部分)の内面に設けられたバネ保持部27と溝部23に、その基部が挿入されて固定配置されるようになっており、この板バネ25の二股状の先端部がリーダーピン22の上下端に係合してリーダーピン22をピン保持部24に保持するようになっている。なお、リーダーピン22がピン保持部24に出入する際には、板バネ25の先端部は適宜弾性変形してリーダーピン22の移動を許容するようになっている。
更に、下ケース18の中央部には、リール14のリールギア(図示省略)を外部に露出させるためのギア開口26が設けられており、リール14はリールギアがドライブ装置の駆動ギア(図示省略)に噛合されてケース12内で回転駆動されるようになっている。また、リール14が収容されるエリアは、上ケース16及び下ケース18の内面にそれぞれ部分的に突設されて、ギア開口26と同軸的な円形の軌跡上(円周上)にある(平面視略円弧状の)遊動規制壁(規制壁)28により規定されている。そして、リール14は、その遊動規制壁28の内側に収容され、ガタつかないように保持されている。
また、下ケース18において、遊動規制壁28の開口20近傍の端部には、内部に位置規制用穴が形成された袋部28Aが連設されており、下ケース18の左前角部の内側においては、長穴である位置規制用穴が形成された袋部29が遊動規制壁28とは離間して設けられている。袋部28A、29は、矢印B方向に沿った一直線上に配置されており、下面側における位置規制用穴の周囲(袋部28A、29の肉厚と同じか、それよりも少し広い部分)がドライブ装置に対する位置決め用の基準面となっている。
そして、袋部28Aが連設された端部を除いて、下ケース18の遊動規制壁28は、その端部が周壁18Aと連設されることで、その外側とリール14の収容エリア(収容空間)とを仕切っている。また、上ケース16の遊動規制壁28も同様に(上下対称に)、その端部が周壁16Aと連設されることで、その外側とリール14の収容エリア(収容空間)とを仕切っている。これにより、ケース12の強度を向上でき、リール14の収容エリアの防塵性を向上できる構成である。
また、図2、図3で示すように、下ケース18において、遊動規制壁28のケース12後方側の外周面と後部内面18Bとは、連結リブ66によって一体に連設されており、その連結リブ66が連設されている部位から、後述するバネ係止部55にほぼ至る所定部位まで、遊動規制壁28の厚さが、少なくとも後述するICタグ(RFID)100の厚さ分、薄く形成されている。
つまり、下ケース18において、連結リブ66が連設されている部位から、後述するバネ係止部55にほぼ至る所定部位まで、後述する保持壁72が形成されるようになっており、その保持壁72の高さは遊動規制壁28の高さよりも所定量高く形成されている。なお、上ケース16において、その部位に該当する遊動規制壁28には、保持壁72を許容可能な切欠部80が形成されている。
また、下ケース18において、連結リブ66と左右方向に所定間隔を隔てた(左右対称となる)位置には、連結リブ68が立設されており、その連結リブ68は、後部内面18Bに一体に連設されている。つまり、連結リブ66、68は、共にケース12の前後方向を長手方向とした平板状に同じ長さに形成されており、連結リブ68のケース12前方側端部は自由端になっている。なお、連結リブ66、68は、上ケース16側にも同様に形成されているが、上ケース16側の連結リブ68のケース12前方側端部は、遊動規制壁28の外周面に連設されている。
また、袋部29が設けられている側の前壁12Aと遊動規制壁28との間の所定位置には、上ケース16側と上下一対となるビスボス60が設けられており、下ケース18における後部内面18Bの左右両端部と、左壁12C及び右壁12Bとの間の両角部における所定位置にも、上ケース16側と上下一対となるビスボス62、64が設けられている。このような上下一対のビスボス60、62、64は、下ケース18側が貫通しており、上ケース16側が非貫通となっている。
また、ケース12の前壁12Aの右端部には、開口20の前縁部を規定する上下一対の短い傾斜壁部30が設けられている。この傾斜壁部30は、開口20の開放面に沿って屈曲形成され、開口20閉塞時に、後述する平面視略円弧状ドア50の先端がその内側に入り込むことによって、塵埃等が進入できる隙間が生じないようにする防塵壁となっている。そして、傾斜壁部30の左方近傍の前壁12A内側には、上下一対のビスボス32が連設されている。
また、ケース12の右壁12B(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印B方向を向く部分)の前端部内側には、平面視で、後述するドア50の外周面に略沿った形状の上下一対の傾斜壁部34が設けられている。この傾斜壁部34の前端面が開口20の後縁を規定しており、その前端部には上下一対のビスボス36が設けられている。
また、ケース12の右壁12Bには、ケース12の内外を連通する窓部としての所定長さのスリット40が設けられており、後述するドア50の操作突起52の露出用とされている。このスリット40は、右壁12Bを構成する上ケース16の周壁16Aの前側下部を切り欠いて形成され、開口20側へも開放されている。このように、スリット40が周壁16Aの一部を上側に残して形成されると、ケース12の剛性を維持することができるので好ましい。特にスリット40を規定する上側の壁が傾斜壁部34から一体に連設されていると、更に好ましい。
また、下ケース18の後方側には、周壁18Aの上端を除く部分が断面視略「コ」字状にケース12の内方へ凹むとともに、ケース12の下面から上方へも凹んだ(底板が切り欠かれた)凹部48が形成されている。この凹部48は、例えばドライブ装置の引き込み手段(図示省略)が係合する係合部とされたり、その底面(下向きの面)がドライブ装置内での位置決め用の基準面とされる。
また、その凹部48の後方側にも周壁18Aの上端を除く部分が断面視略「コ」字状にケース12の内方へ凹むとともに、ケース12の下面から上方へも凹んだ(底板が切り欠かれた)凹部46が形成されている。この凹部46は、ライブラリー装置の把持手段(図示省略)が係合する係合部とされており、このような凹部46、48を設けることでケース12(下ケース18)の捩り強度が向上されるようになっている。
また、上ケース16の左壁の上面部分には、平面視略台形状の凹部44が形成されている。この凹部44は、開口20の開放時、ドア50の開放方向への移動に伴う回転モーメントをキャンセルするために、ドライブ装置に設けられた保持部材(図示省略)が係合する係合部とされている。
また、上ケース16及び下ケース18において、開口20近傍から遊動規制壁28が最も右壁12Bに接近する部位近傍まで(以下、前半という)と、スリット40の後端近傍から後壁の近傍まで(以下、後半という)、後述するドア50の凸部51を内面側及び外面側の両側方から挟み込むように支持する所定高さ(例えば、1.0mm〜1.5mm程度の高さ)のガイド壁部42が立設されている。
このガイド壁部42は、上ケース16と下ケース18とではその長さが異なっており、上ケース16側の方が下ケース18側よりも後半側が長く形成されている。これは、下ケース18の後部内面18Bの右壁12B側に、後述するメモリーボードMが配置されているからである。また、後半のガイド壁部42は、その後端部が平面視略円弧状に閉塞されており、ドア50がそれ以上後方へ移動できないように、上下それぞれ最も後側の凸部51を規制するようになっている。
一方、前半のガイド壁部42は、その前端部が開放されており、リーダーピン22の出入時に、そのリーダーピン22の出入を妨げないような位置(図示のものはピン保持部24よりもケース12後方側で、開口20の開口幅の約半分程度)まで延設されている。また、傾斜壁部30の近傍にも、ガイド壁部42の延長線上に位置するように、後端部が開放されたガイド壁部41が立設されている。このガイド壁部41は、その後端部がリーダーピン22の出入を妨げないように、ピン保持部24の前端よりも後方側には延設されないようになっており、ドア50は、その先端がガイド壁部41に入り込んだ状態で、開口20を閉塞するようになっている。
また、ガイド壁部41及び前半のガイド壁部42は、後半のガイド壁部42よりも若干低くなるように形成されている。すなわち、例えばガイド壁部41及び前半のガイド壁部42の高さは約1mmに形成され、後半のガイド壁部42の高さは約1.5mmに形成されている。これは、ドライブ装置に設けられた引出手段が、開口20に入り込めるスペースを確保するためである。したがって、後述するように、ガイド壁部41及び前半のガイド壁部42が低くなっている分、その前半部分(少なくとも開口20を閉塞する部分)におけるドア50の板幅(高さ)が、大きく(高く)なるように形成されている。
更に、上ケース16内面及び下ケース18内面には、その開口20から露出している外側のガイド壁部42と一体になって平面視略台形状をなすリブ38が、そのガイド壁部42と同等の高さになるように立設されており、このリブ38によって開口20部分における上ケース16及び下ケース18の強度が確保されるようになっている。なお、内側のガイド壁部42はピン保持部24と一体になるように連設されているが、ピン保持部24の高さは、一体に連設されたガイド壁部42の高さと略同等か、それよりも高く形成されていることが望ましい。
以上、説明した上ケース16と下ケース18とは、開口20の縁部の近傍に位置する各ビスボス32、36と、上記した各ビスボス60、62、64に下側から図示しないビスがねじ込まれて固定(接合)される構成である。これによって、特に傾斜壁部30(前壁12A)及び傾斜壁部34(右壁12B)の各自由端によって規定され、強度的に不利で落下によって地面等に衝突しやすい開口20両端のコーナー部は強固に接合され、ケース12を落しても、記録テープカートリッジ10全体の重量で変形したり、座屈して位置ずれしたりしない構成である。
また、その開口20は、遮蔽部材としてのドア50によって開閉されるようになっている。ドア50は、少なくとも開口20を閉塞する部分の板幅(高さ)が開口20の開口高さと略同一に形成され、それより後側が若干小さく(低く)形成されるとともに、その板長が開口20の開口幅よりも充分に大きく形成されている。そして、所定の円周に沿って移動できるように、板厚方向に湾曲した平面視略円弧状に形成されている。
このドア50は、その先端部がガイド壁部41に入り込んだ状態で開口20を閉塞し、上記した所定の円周に沿って略後方へスライド移動(回動)して開口20を開放し、その先端近傍の外周面がビスボス36近傍に達すると、開口20を完全に開放する構成になっている。そして、開口20を開放する際と反対方向にスライド移動(回動)することにより、開口20を閉塞する構成になっている。
このように、ドア50は、その移動軌跡である所定の円周に対応した円弧状に湾曲形成されており、その回動中心は、本実施形態では、左右方向の位置がケース12の左端近傍に、前後方向の位置がスリット40の後端近傍に設定されている。これにより、ドア50の移動軌跡は、スリット40の後端近傍において、ケース12の右壁12Bに最も近接する。なお、ドア50の回転中心及び半径は、ドライブ装置からの要求により決まる開口20前後の縁部(傾斜壁部30及びビスボス36)の位置やライブラリー装置からの要求により決まる開口20の開放面の角度等に応じて適宜決められればよい。
また、ドア50の湾曲した長手寸法は、その後端部が開口20の閉塞状態において、ケース12の凹部48よりも後方の(凹部46近傍の)右後角部内に位置するように決められており、ドア50の後下部は、後述する位置規制リブ19によって所定の角度θで傾斜配置されたメモリーボードMを回避するために、斜めに切り欠かれている。なお、ドア50の前端部内面及び外面の少なくとも一方は、ガイド壁部41間にスムーズに入り込めるようにテーパー面に形成されることが好ましい。
また、そのドア50の上面及び下面には、ガイド壁部42のガイド面(互いに対向している内面)と、ガイド壁部42間の上ケース16内面及び下ケース18内面にそれぞれ当接して、ドア50を開口20の開閉方向に案内する凸部51が突設されている。この凸部51は、ドア50の長手方向に沿って長い平面視略楕円形状に形成され、上面及び下面にそれぞれ4つずつ、最も後側の凸部51を除いて上下対称に、かつ、ガイド壁部42の高さと略同等の高さ(例えば、ドア50の板幅が異なる境界部分より前側は約0.5mm、後側は約1.5mm)になるように突設されている。なお、最後側の凸部51が上下対称でないのは、ドア50の後下部が斜めに切り欠かれていることによる。
このような凸部51を設けると、ガイド壁部41及びガイド壁部42間の上ケース16内面及び下ケース18内面並びにガイド壁部41及びガイド壁部42のガイド面との摺動抵抗(摩擦)を低減することができ、ドア50を抵抗少なく、スムーズに摺動させることが可能となる。更に、凸部51が平面視略楕円形状に形成されていると、例えば平面視略円形状に形成されているものよりも耐衝撃性に優れる。したがって、落下等の衝撃により、ドア50に開閉方向以外から力が加えられても、その凸部51が折れるおそれはない。
また、ドア50の長手方向中央部よりも若干前方(ドア50の板幅が異なる境界部分近傍)における外周面には、操作部としての操作突起52がドア50の径方向に沿って突設されている。操作突起52は、スリット40からケース12の外側に露出されるようになっており、開口20の閉塞状態ではビスボス36の後端から僅かに離間して位置するとともに、スリット40の前方へ開放された部分から操作可能とされている。
そして、開口20の開放状態では、操作突起52は、スリット40の後縁から僅かに離間して位置するようになっており、このとき、ガイド壁部42の閉塞された後端部に最後端側の凸部51が当接している。なお、操作突起52露出用のスリット40によってケース12の内外が連通されるが、このスリット40はビスボス36と、ケース12内の略全高に亘るドア50によって常時ほぼ閉塞され、かつ、そのケース12内には、内壁としての遊動規制壁28が設けられているので、リール14に巻装された記録テープTへの塵埃等の付着は防止される。
また、ドア50の前端部内面には、開口20閉塞時において、リーダーピン22の上端部側面及び下端部側面に当接するストッパー58が突設されており、落下衝撃等によってリーダーピン22がピン保持部24から脱落するのを、より一層防止できるようになっている。そして、ドア50を開口20閉塞方向へ付勢する付勢部材としてのコイルバネ56は、ドア50が開口20の閉塞状態でケース12の右後角部に至る長さであるため、その右後角部における遊動規制壁28と右壁12B(周壁16A、18A)との間の空間を有効利用して配設されている。
すなわち、ドア50の後端近傍の内周面には、板状の支持部53が一体に連設され、その支持部53の上面にバネ保持部54が上方に向かって一体的に突設されており、下ケース18の凹部48近傍の内面には、円柱状のバネ係止部55が上方に向かって突設されている。そして、コイルバネ56の両端にはリング状の取付部56A、56Bがそれぞれ形成されている。したがって、コイルバネ56は、その一方の取付部56Bをバネ係止部55に上方から挿入し、他方の取付部56Aをバネ保持部54に上方から挿入することにより、上記した空間内に簡単に取り付けることができる。
また、上ケース16内面には、ドア50の開閉時に、バネ保持部54の上端が摺接するリブ57が、平面視略円弧状に立設されている。このリブ57は、少なくともドア50が移動(開放)し始める際には、バネ保持部54の上端が摺接できるような位置及び長さに配設され、コイルバネ56の付勢力に抗して移動するバネ保持部54を好適にガイドすることにより、ドア50がより安定して開放されるように(開放時にドア50がコイルバネ56の付勢力によってブレないように)している。
また、このリブ57を設けることにより、上記のようにして取り付けられたコイルバネ56の取付部56Aが、落下等による衝撃がケース12に加えられてバネ保持部54を上昇してきても、そのバネ保持部54から外れないようにできる。なお、バネ係止部55側も、その上端が上ケース16の遊動規制壁28とガイド壁部42との間に挿入されることになるので、同様に、取付部56Bがバネ係止部55から外れるのを防止することができる。
また、下ケース18の右後部には、記録容量、記録形式等の各種情報が記憶され、非接触でアクセス可能なメモリーボードMが所定の角度θ(例えばθ=45°)で傾斜配置されている。すなわち、下ケース18の後部内面18Bは、所定角度θに傾斜しており、その後部内面18Bよりもケース12前方側で、かつ後述する保持壁72よりもケース12後方側の下ケース18内面には、位置規制リブ19が左右方向に所定間隔を隔てて複数(例えば2個)突設されている。
したがって、メモリーボードMは、後部内面18Bに配置されるとともに、その下端部が位置規制リブ19によって支持されることにより、所定角度θに傾斜した姿勢で(滑って倒れないように)保持される。なお、後部内面18Bの傾斜角度θは、メモリーボードMに対するケース12の下面側及び後面側からのアクセスを可能にするため、45°にすることが望ましい。
ここで更に、遊動規制壁28等について詳細に説明すると、図2〜図4で示すように、上ケース16側における遊動規制壁28の下端面の径方向略中央部よりも外周面側には、下方に向けて突出する段差部76が形成されており、下ケース18側における遊動規制壁28の上端面の径方向略中央部よりも内周面側には、上方に向けて突出する段差部78が形成されている。
したがって、上ケース16と下ケース18とを接合したときには、上ケース16側の遊動規制壁28の段差部76と下ケース18側の遊動規制壁28の段差部78とが互いに係合し、その係合部位にラビリンス構造が形成される構成である。つまり、これにより、リール14の収容エリア内への塵埃等の侵入が阻止される(防塵性が確保される)ようになっている。
なお、下ケース18側の連結リブ66、68の上端面内側に、上方に向けて突出する段差部66A、68A(図3、図4等参照)を形成し、上ケース16側の連結リブ66、68の下端面外側に、下方に向けて突出形成された段差部(図示省略)と係合させる構成にしてもよい。
また、図2〜図4で示すように、少なくとも下ケース18のケース12後方側の遊動規制壁28の一部には、後述するICタグ100が、接着剤や両面テープ等の接着手段により貼着(保持)される保持構造70が形成されている。すなわち、この保持構造70は、遊動規制壁28の一部の外周面側が、平面視で遊動規制壁28と略同一の曲率形状(平面視略円弧状)のまま、ICタグ100の板厚分、薄くなるように凹状に形成されて薄板状とされた保持壁72で構成されている(図6参照)。
図3、図4で示すように、この保持壁72の高さHは、遊動規制壁28の高さよりも所定量高い高さとされており、ICタグ100の高さEとほぼ同じ高さとされている。したがって、上ケース16側の遊動規制壁28は、その下端部が、保持壁72の上端部を許容するように切り欠かれている。つまり、上ケース16の遊動規制壁28には、周方向の長さが保持壁72の周方向の長さWとほぼ同じ長さの切欠部80が形成されている。
下ケース18側の遊動規制壁28に一体に形成される保持壁72の周方向における長さWは、連結リブ66が連設されている部位から、バネ係止部55にほぼ至る所定部位までの遊動規制壁28に沿った長さとされており、ICタグ100の周方向(長手方向)の長さLとほぼ同じ長さとされている。
ICタグ100は、例えば図3で示すように、保持壁72の外周面72Aに貼着可能な略矩形状(長方形状)で、かつ可撓性を有する薄板状(フィルム状)の基材102に、ICチップを備えたIC部104と、IC部104と接続されたアンテナ部(ダイポールアンテナ)106が設けられて構成されている。
より具体的には、このICタグ100は、基材102の略中央部にIC部104が設けられ、アンテナ部106は、IC部104のプラス側及びマイナス側から、それぞれ点対称になるように延設されたポールアンテナで構成されており、各ポールアンテナは、それぞれ直線寸法で、例えば75mm相当の長さ(両側合わせて、例えば150mm相当の長さ)とされている。
このアンテナ部106の長さは、アンテナ部106の近傍に存在する素材(ケース12や記録テープT等)の誘電率を考慮して適宜調整される。例えばアンテナ部106の近傍に大気しか存在していないような場合には、その誘電率は1.0となり、アンテナ部106の長さは、上記のような長さとされる。また、例えばアンテナ部106が高誘電率(n=5〜10)の素材(セラミック等)で覆われる場合には、見かけ上、波長が短くなるため、アンテナ部106の長さは、上記よりも短くできる。
ところで、このICタグ100は、メモリーボードMに対して非接触でアクセス可能な電磁(磁界)誘導方式(例えば13.56MHz帯域で通信距離0.6m以下)の読取書込装置(図示省略)ではなく、一般的な(安価な)電波通信方式(例えば900MHz帯域で通信距離4m以下)の読取書込装置(図示省略)により、非接触でアクセス可能に構成されている。
つまり、このIC部104は、受信する電波の周波数に合わせる(共振周波数とする)必要があるが、メモリーボードMとは異なる周波数(例えばUHF帯域である900MHz)でアクセスして情報の読み取り、書き込みができる構成になっている。したがって、このIC部104は、例えばバーコードラベルからの転用保管時及びオートローダーによる連送使用時の記録テープカートリッジ10の個体一元管理などの在庫管理手段や盗難防止手段等として使用することが可能である。
また、IC部104の記憶容量は、例えば96bit〜240bit(12byte〜30byte)とされ、比較的小さい容量とされている。これは、IC部104の小型化と通信距離を伸ばすために、消費電力を抑える必要があるからである。このように、IC部104の記憶容量は小さいが、メモリーボードMが搭載されている記録テープカートリッジ10の場合には、記憶させる情報を分散させることができるため、ユーザーの自由度に対応可能なように、その記憶容量を確保することができる。但し、このIC部104に、必要に応じて、メモリーボードMと同じ情報を記憶させることは可能である。
また、図示のICタグ100は、電磁(磁界)誘導方式と電波通信方式のどちらにも対応可能に構成されている。すなわち、IC部104に接続されて、基材102の長手方向に張り出しているアンテナ部106は、電波通信方式のアンテナとして機能し、IC部104の近傍でループ状に接続されているアンテナ部105は、電磁(磁界)誘導方式のアンテナとして機能するようになっている。
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次にその作用について説明する。上記構成の記録テープカートリッジ10では、不使用時(保管時や運搬時等)には、開口20がドア50によって閉塞されている。具体的には、ドア50は、コイルバネ56の付勢力によって、常時開口20の閉塞方向へ付勢されており、その先端部(前端部)が傾斜壁部30近傍のガイド壁部41に入り込む状態で開口20を閉塞している。
記録テープカートリッジ10は、この状態でライブラリー装置に複数収納されている。そして、図示しないロボットハンドに設けられた読取書込装置が各記録テープカートリッジ10の後面(後壁)側からメモリーボードMにアクセスし、それに記憶されている記録容量等の各種情報を読み取るとともに、その情報を制御装置(図示省略)に伝達する。これにより、各記録テープカートリッジ10に最適な(各記録テープカートリッジ10を記録・再生可能な)ドライブ装置が予め制御装置に認識される。
さて、記録テープTを使用する際には、ロボットハンドにより、記録テープカートリッジ10の1つをライブラリー装置から取り出し、その記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿ってドライブ装置へ装填する。このドライブ装置は、メモリーボードMに記憶された情報を読み取った結果、選ばれたドライブ装置であり、記録テープカートリッジ10は、ロボットハンドによってスムーズに、かつ効率よく、そのドライブ装置に装填される。そして、この装填に伴って、ドライブ装置の開閉部材(図示省略)が、前方へ開放しているスリット40に進入し、ドア50の操作突起52に係合する。
この状態で、記録テープカートリッジ10(ケース12)を更に矢印A方向へ押し込むと、この押し込み力によってコイルバネ56の付勢力に抗しつつ、上記開閉部材が操作突起52を後方へ移動させる(矢印A方向へ装填されるケース12に対して後方へ相対移動させる)。すると、その操作突起52が突設されているドア50は、凸部51がガイド壁部42によって案内されつつ、その湾曲方向に沿って平面視時計方向に回動する。
すなわち、ドア50は、ガイド壁部42によって、その湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなく、ピン保持部24及びリール14の外側を回り込むように略後方へ移動し、開口20を開放する。そして、ケース12(記録テープカートリッジ10)がドライブ装置に所定深さ装填されると、開口20が完全に開放されるとともに位置決めされ、ドライブ装置に設けられた読取書込装置が、記録テープカートリッジ10の下面側からメモリーボードMにアクセスし、それに記憶されている各種情報を読み取り、更には必要に応じて個別の情報を書き込む。
こうして開口20が開放された状態で記録テープカートリッジ10がドライブ装置内で位置決めされると、ドア50はそれ以上の回動(略後方への移動)が規制され、開放された開口20からはドライブ装置の引出手段がケース12内に進入し、ピン保持部24に位置決め保持されているリーダーピン22を抜き出して、図示しない巻取リールに収容する。そして、その巻取リールとリール14とを同期して回転駆動することにより、記録テープTは、巻取リールに巻き取られつつ順次ケース12から引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド(図示省略)によって情報の記録や再生が行われる。
一方、記録テープTがリール14に巻き戻されて、記録テープカートリッジ10をドライブ装置から排出する際には、記録テープカートリッジ10は、位置決め状態が解除され、コイルバネ56の付勢力又は図示しないイジェクト機構によって矢印A方向とは反対方向に移動される。すると、ドア50は、その凸部51がガイド壁部42に案内されつつ、コイルバネ56の付勢力によって開口20の閉塞方向へ回動する。そして、ドア50の先端部がガイド壁部41に入り込むことにより、開口20が完全に閉塞され、初期状態に復帰する。
次に、メモリーボードMとは別に各種情報(例えば記録テープカートリッジ10の個体一元管理などの在庫管理手段等)を記憶させるICタグ100を保持する保持構造70の作用について説明する。記録テープカートリッジ10の製造工程において、ICタグ100は、例えばロボットハンド等により、下ケース18側へ供給される。下ケース18の遊動規制壁28の一部には、ICタグ100を貼着可能な保持構造70が形成されているので、ICタグ100は、ケース12内における所定の位置に精度よく配置される。
すなわち、この保持構造70は、遊動規制壁28において、連結リブ66が連設されている部位から、バネ係止部55にほぼ至る所定部位まで、その外周面に一体に形成された薄板状の保持壁72で構成されており、ICタグ100は、その保持壁72の外周面72Aに、接着手段(接着剤や両面テープ等)により貼着される。
ここで、遊動規制壁28と一体に(同一曲率で)形成される保持壁72は、ケース12内において、他の部品に干渉せずに、比較的大きく形成することができる。つまり、上ケース16側の遊動規制壁28に、保持壁72を許容する切欠部80を形成することにより、ICタグ100の高さEに応じて保持壁72の高さHを高く形成することができる。したがって、ある程度の大きさ(面積)を有するICタグ100でも、直立状態のまま、その遊動規制壁28に沿わせて配置することができる。
つまり、これにより、ケース12内にICタグ100の取付領域を確保することができるとともに、そのICタグ100をケース12内に良好に位置決めして配置することができる。よって、ケース12後面側からICタグ100にアクセスして情報を読み取ったり、書き込んだりする読取書込装置において、読み取りエラーや書き込みエラー等が起き難くできる。
なお、図示は省略するが、切欠部80の下端面に上記段差部76を形成し、保持壁72の上端部と係合させる構成とすることが、リール14の収容エリア内における防塵性を確保する上で望ましい。また、保持壁72は、少なくともICタグ100の厚さ分、遊動規制壁28より薄く形成されているので、ICタグ100を遊動規制壁28に沿わせて配置しても、その部分の厚さが増加することがない。つまり、保持壁72に保持されたICタグ100が、他の部品に対して、少なくとも遊動規制壁28の径方向にスペースを取るような不具合がない。
また、保持構造70は、図5、図6で示すような構成にしてもよい。すなわち、保持壁72の周方向(長手方向)における両端部、つまり、遊動規制壁28の連結リブ66側の端部と、遊動規制壁28のバネ係止部55側の端部に、保持壁72の外周面72Aと所定の間隙(ICタグ100の板厚とほぼ同じ間隔)を有して、その外周面72A上に所定長さ張り出す係止部としての張出部74を形成してもよい。
このような張出部74を形成すると、下ケース18側において、ICタグ100の周方向における両端部を、その張出部74で係止・保持することができるため、接着剤等の接着手段により、ICタグ100を保持壁72に貼着しなくても済むようになる。つまり、これによれば、ICタグ100の保持壁72への取り付け(ICタグ100を遊動規制壁28に沿わせて配置すること)が容易にできるようになる。
なお、上ケース16の切欠部80の周方向(長手方向)における両端部にも、下ケース18に上ケース16を接合したときに、保持壁72の外周面72Aと所定の間隙(ICタグ100の板厚とほぼ同じ間隔)を有して、その外周面72A上に張り出す係止部としての張出部74を形成することが望ましい。これによれば、ICタグ100の周方向における両端部を、上ケース16側の張出部74でも係止・保持することができるようになる。
但し、張出部74が形成されている保持壁72に、ICタグ100を接着手段により貼着してもよく、その際には、接着手段の経時劣化(耐久性の低下)によって、保持壁72からICタグ100が剥がれても、その張出部74により、ICタグ100を保持壁72から離脱しないように保持することができる。
また、保持構造70は、図7で示すような構成にしてもよい。すなわち、下ケース18側の遊動規制壁28に、その遊動規制壁28の高さと同一高さの保持壁82を形成するとともに、上ケース16側に切欠部80と同じ大きさの保持壁84を形成してもよい。この保持壁82、84は、上記保持壁72と同様に、遊動規制壁28の外周面側が、ICタグ100の板厚分、薄くなるように平面視で凹状に形成されて薄板状とされており、下ケース18に上ケース16を接合したときに、上記保持壁72と同じ大きさ(面積)となるように構成されている。
なお、このような構成の保持構造70の場合、下ケース18側の保持壁82の外周面82A(図7においてドットで示す)に、ICタグ100が接着手段により貼着され、その後、下ケース18に上ケース16が接合されるため、上ケース16側の保持壁84の外周面84AにはICタグ100が貼着されない。しかし、予め保持壁84又はICタグ100の内周面の上側に接着手段を形成しておき、下ケース18に上ケース16を接合したときに、ICタグ100の内周面の上側が保持壁84に貼着されるように構成してもよい。
更に、保持構造70は、図8で示すような構成にしてもよい。すなわち、この保持構造70は、例えば連結リブ66が連設されている部位から、バネ係止部55にほぼ至る所定部位までの遊動規制壁28の一部が、少なくともICタグ100の板厚分、径方向外側へ凸状に張り出すようにして形成された保持壁86で構成されている。そして、この保持壁86の内周面側に、ICタグ100の外周面(IC部104が設けられていない面)が接着手段により貼着されている。
このような構成の保持構造70の場合、遊動規制壁28の内側にはリール14しか存在しないため、遊動規制壁28の外周面側にICタグ100を貼着する場合よりも、そのICタグ100の周方向の長さを長く取ることができる。したがって、保持壁86の高さHが遊動規制壁28の高さと同じ高さとされ、それに合わせて、ICタグ100の高さEが遊動規制壁28の高さと同じ高さとされても、そのアンテナ部106の長さを確保することができ、通信性能(通信距離)を確保することができる。
以上、説明したように、本実施形態に係る保持構造70によれば、ICタグ100の取付領域をケース12内に確保することができるとともに、ICタグ100をケース12内に位置精度よく容易に取り付けることができる。特に、保持壁72の両側に張出部74が形成されている保持構造70であると、ICタグ100を保持壁72に貼着しなくてもよいため、ロボットハンド等によって容易に装着することができ、その装着性を向上させることができる。
また、ICタグ100は、背ラベル側(ケース12後面側)からアクセスする構成とすることが望ましいため、ケース12の後部側に取り付けることが望ましいが、本実施形態に係る保持構造70によれば、それを容易に実現することができる。つまり、本実施形態に係る保持構造70によれば、ICタグ100に対して背ラベル側(ケース12後面側)からアクセスできるように、その取付領域を確保することができる。
また、これにより、ICタグ100に対する読取書込装置の通信距離精度を向上させることができるため、その読取書込装置から送信される電磁波(UHF帯域)を、ICタグ100のアンテナ部106全体で安定して受信することができる。よって、読み取り精度や書き込み精度を向上させることができ、読み取りエラーや書き込みエラーが発生しないようにできる。
なお、アンテナ部106の領域を確保する上では、ICタグ100の高さ(面積)は、できるだけ高く(広く)することが望ましい。したがって、図2〜図7で示したように、ICタグ100を保持する保持壁72又は保持壁84の高さはできるだけ高く形成することが望ましい。何れにしても、この記録テープカートリッジ10は、ICタグ100を内蔵するため、他の記録テープカートリッジと差別化することができる。
また、本実施形態に係る記録テープカートリッジ10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、遊動規制壁28は、少なくとも下ケース18側に形成されていればよく、上ケース16側に形成されていなくてもよい。また、上記実施例の記録テープカートリッジ10では、リーダー部材としてリーダーピン22を有する構成としたが、図示しないリーダーテープやリーダーブロックを有する構成としてもよい。
また、RFID(ICタグ100)は、情報の読み書きがされない(情報を記憶する機能がない)タイプのものでもよい。すなわち、例えば所定の周波数(例えば2.45GHz帯域)の電波を受信すると、ある特定の周波数の電波を返すタイプのものでもよい。このタイプのRFID(ICタグ100)の場合、その通信距離は、例えば1.5m以下となるが、アンテナ部106を小型化することができる。
また、ドア50も、平面視略円弧状にスライドするものに限定されるものではなく、例えば直線状にスライドするドアとしてもよい。更に、記録テープTは、情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、記録テープカートリッジ10が、如何なる記録再生方式の記録テープTにも適用可能であることは言うまでもない。