本発明の一実施の形態に係る記録テープカートリッジ10について、図1〜図7に基づいて説明する。まず、記録テープカートリッジ10の概略の全体構成、開口及びドアの構成を説明し、次いで、本発明の要部である内蔵RFIDタグとしてのICタグ60について説明する。なお、説明の便宜上、矢印Aで示す記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とし、それぞれ矢印Aと直交する矢印B方向を右方向、矢印C方向を上方向とする。
(記録テープカートリッジの全体構成)
図3には記録テープカートリッジ10の全体構成が斜視図にて示されており、図4には記録テープカートリッジ10の概略の分解斜視図が示されている。
これらの図に示される如く、記録テープカートリッジ10は、平面視で略矩形状のケース12内に、情報記録再生媒体である記録テープとしての磁気テープTを巻装した単一のリール14を回転可能に収容して構成されている。ケース12は、ドライブ装置への装填方向先頭側の1つの角部である右前角部がそれぞれ切り欠かれた一対の上ケース16と下ケース18とを互いの周壁16A、18Aを突き合せて接合することで構成されており、内部に磁気テープTを巻装したリール14の収容空間が設けられている。
そして、上ケース16及び下ケース18の周壁16A、18Aが切り取られた角部が磁気テープTの引き出し用の開口20とされている。開口20及び該開口20を開閉するドア50の詳細構成については後述する。この実施形態では、周壁16A、18Aが本発明における外壁に相当する。
この開口20から引き出される磁気テープTの自由端には、ドライブ装置の引出手段によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダピン22が接続されている。リーダピン22の磁気テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝22Aが形成されており、この環状溝22Aが引出手段のフック等に係止される。これにより、磁気テープTを引き出す際に、フック等が磁気テープTに接触して傷付けない構成である。
ケース12の開口20の内側には、ケース12内においてリーダピン22を位置決め、保持する上下一対のピン台24が設けられている。ピン台24は、矢印B方向に開口する半円筒形状をしており、その凹部24Aに直立した状態のリーダピン22の両端部が保持されるようになっている。このピン台24は、後述するリブ44と連設されている。
また、ピン台24の近傍には板ばね25が固定配置されており、この板ばね25がリーダピン22の上下端部に係合してリーダピン22をピン台24に保持するようになっている。リーダピン22がピン台24に出入りする際には、板ばね25はアーム部25Aを適宜弾性変形させてリーダピン22の移動を許容する構成である。
さらに、下ケース18の中央部には、リール14のリールギヤ(図示省略)を外部に露出するためのギヤ開口26が設けられており、リール14はリールギヤがドライブ装置の駆動ギヤに噛み合わされてケース12内で回転駆動されるようになっている。また、リール14は、上ケース16及び下ケース18の内面からそれぞれ部分的に突設されてギヤ開口26と同軸的な円形の軌跡(仮想円周)上にある内壁としての遊動規制壁(リールエリアリブ)28によってガタ付かないように保持されている。また、下ケース18におけるギヤ開口26の縁部には、環状リブ26Aがケース12の内方へ向けて突設されており、リール14の位置決め用とされている。
すなわち、リール14は、ケース12における遊動規制壁28内に収容されている。遊動規制壁28は、上ケース16、下ケース18の天板16B、底板18Bからそれぞれ立設されている。下ケース18の遊動規制壁28は、図1に示される如く厚み方向の中央部に段差29が形成されており、内周側の壁部が外周側の壁部よりも上方に突出している。図示は省略するが、上ケース16の遊動規制壁28は、外周側の壁部が内周側の壁部よりも下方に突出している。これにより、ケース12では、上ケース16と下ケース18との接合状態で、上下のケース16、18の遊動規制壁28が互いに嵌り合うインロウ構造を成している。
この上下一対の遊動規制壁28のうち下ケース18の遊動規制壁28における開口20近傍の端部には、内部に位置規制用孔が形成された袋部28Aが連設されている。また、ケース12の左前角部と遊動規制壁28との間に挟まれた空間には、長孔である位置規制用孔が形成された袋部28Bが立設されている。袋部28A、28Bは、矢印B方向に沿った一直線上に配置されている。そして、袋部28Aが連設された端部を除いて、各遊動規制壁28は、それぞれ端部がケース12の周壁16Aまたは周壁18Aと連設されることで、その外側とリール14の設置空間とを仕切っている。
また、下ケース18の右後部には、各記録テープカートリッジ10毎に、その各種情報を記憶されたメモリボードMが設置されるようになっており、下面側から読み取るドライブ装置と、背面側から読み取るライブラリ装置での検知が可能となるように、周壁18Aを構成する傾斜後壁18Cの一部が所定角度だけ傾斜され、メモリボードMが所定角度傾斜して配置されるようになっている。メモリボードMには、例えば、記録テープカートリッジ10の個体識別情報、製造情報、磁気テープTの記録容量や記録形式等が記録されている。
(開口及び開口近傍のケースの構成)
上ケース16の底面図である図5及び下ケース18の平面図である図6にも示される如く、開口20の前後の縁部には、それぞれ上下一対のビスボス32、36が設けられている。ビスボス32、36は、図示しない他のビスボスと共に上ケース16と下ケース18とを接合するためのビス止め用とされている。
開口20の前縁部に位置するビスボス32は、ケース12の前壁12A(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印A方向を向く部分)の右端部、及び該前壁12Aの右端部から開口20の開放面に沿って短く屈曲された上下一対の防塵壁30とそれぞれ連設されている。ビスボス32と防塵壁30との間には後述するドア50の先端部が入り込む凹部30Aが形成されている。
一方、開口20の後縁部に位置するビスボス36は、ケース12の右壁12B(周壁16A、18Aのうち、矢印A方向に沿った右側の壁)の前端部が開口20の開放面に略沿って屈曲された屈曲壁38、及び該右壁12Bの内側に設けられた上下一対の円弧壁34の前端部とそれぞれ連設されている。上下の円弧壁34は、それぞれ平面視で後述するドア50の外周面(の移動軌跡)に略対応した円弧状に形成されており、それぞれビスボス36から所定長さだけ後方へ伸び、該後部において短い連結壁34Aを介して右壁12B(周壁16Aまたは周壁18A)に連設されている。
また、ケース12の右壁12Bには、ケース12の内外を連通する窓部としての所定長さのスリット40が設けられており、後述するドア50の操作突起52の露出用とされている。スリット40は、右壁12Bを構成する周壁16Aの下部を切り欠いて形成され、上ケース16の屈曲壁38の下部をも切り欠くことで前方へも開口されている。
このケース12を構成する上ケース16及び下ケース18には、それぞれドア50をガイドするためのガイド溝42が設けられている。各ガイド溝42は、その溝壁が、それぞれ上ケース16の天板16B、下ケース18の底板18Bから立設されたリブ44、右壁12B(周壁16Aまたは周壁18A)、遊動規制壁28によって構成されることで、それぞれ天板16Bまたは底板18Bを薄肉化することなく形成されている。リブ44はピン台24に連設されている。
各ガイド溝42は、凹部30Aを基端としケース12の右後角部まで至る所定の円周に沿った円弧状に形成されており、この所定の円周はビスボス32の外側、ビスボス36の内側、右壁12Bと遊動規制壁28との間を通る(縫う)ように決められている。そして、この所定の円周の中心位置(後述するドア50の回転中心)は、本実施の形態では、その左右方向の位置(座標)がケース12の左端よりも外側に、その前後方向の位置(座標)がリール14の回転中心(遊動規制壁28の軸心)と略一致するように設定されている。
また、ガイド溝42の開口20に位置する部分は、リブ44がピン台24の右方において切り欠かれることで凹部24Aと連通されると共に、板ばね25のアーム部25Aが配置されるばね溝45とも連通している。また、ガイド溝42の切欠き部分では、リーダピン22をケース12内に誘い込むテーパ開口20Aがピン台24の凹部24Aに連通している。さらに、リブ44には、テーパ開口20Aの後縁、ビスボス36の前縁、開口20の開放面にそれぞれ沿って形成されたリブ46が連設されており、ケース12の開口20廻りの強度が確保または向上されている。
さらに、各ガイド溝42の後半部分を構成するリブ44は、その後端において略U字状に折り返されて閉じている。そして、上ケース16のリブ44は、下ケース18のリブ44よりも後方に長く形成されている。これは、下ケース18の傾斜後壁18C(周壁18A)が所定角度の傾斜面になっており、その右壁12B側に配設したメモリボードMをドア50と干渉させないためである。
さらに、後半部分のリブ44の内側部分における長手中央部には、上下一対のばね掛けピン55が設けられている。各ばね掛けピン55は、それぞれ遊動規制壁28に連設されており、下ケース18側が長く形成され、その遊動規制壁28よりも上方に突出した部分に後述するコイルばね56の一端側環状部56Aが引掛けられる構成である。そして、この下ケース18側のばね掛けピン55に上ケース16側の短いばね掛けピン55が突き当てられることで、コイルばね56の脱落が阻止されるようになっている。
以上説明した上ケース16と下ケース18とは、互いの周壁16A、18Aを突き当てた状態で、各ビスボス32、36及び他のビスボスに下側から図示しないビスがねじ込まれて固定(接合)されケース12を構成している。そして、開口20は、右前角部が切り欠かれて形成されることで、その開放面が矢印A方向及び矢印B方向に向くため、ドライブ装置の引出手段が、矢印A方向、矢印B方向、或いは矢印A方向と矢印B方向との間からアクセスしてリーダピン22をチャックできる。これにより、リーダピン22を保持するピン台24を設置可能なエリアが広がり、ドライブ装置の引出手段がリーダピン22をチャック可能な領域が広いため、矢印A方向または矢印B方向からチャックするドライブ装置の仕様に合わせてピン台24の設置位置を設定できる。このため、ドライブ装置の設計の自由度も広がる。
(ドアの構成)
以上説明した開口20は、遮蔽部材としてのドア50によって開閉されるようになっている。ドア50は、板厚方向に湾曲され、その平面視における曲率がガイド溝42(所定の円周)の曲率と一致する円弧状に形成されている。また、ドア50は、その前部(少なくとも開口20を閉塞する部分)における板幅(高さ)が開口20の開口高さと略同一に形成された部分が閉塞部50Aとされると共に、閉塞部50Aよりも後側の板幅が若干小さくされた部分が駆動部50Bとされている。
このドア50の板長(湾曲した長手寸法)は、開口20の閉塞状態において駆動部50Bの後端部がケース12の右後角部内に位置するように決められている(図7(A)参照)。なお、駆動部50Bの後下部は、下ケース18の傾斜後壁18Cの傾斜面に配設されたメモリボードMを回避するために、斜めに切り欠かれている。
このドア50は、その閉塞部50Aの先端部がビスボス32の外側に位置する凹部30Aに入り込んだ状態で開口20を閉塞し(図7(A)参照)、ガイド溝42に沿って略後方へ移動(回動)して開口20を開放し(図7(B)参照)、閉塞部50Aの先端近傍の外周面がビスボス36の内側近傍に達すると開口20を完全に開放する(図7(C)参照)構成である。また、ドア50は、開口20を開放する際と略反対方向に回動して開口20を閉塞するようになっている。
このように、ドア50は、その移動軌跡である所定の円周をはみ出すことなく回動して開口20を開閉するように湾曲形成されている。ドア50の回転中心及び半径(ガイド溝42の形状)は、ドライブ装置からの要求により決まる開口20前後の縁部(ビスボス32、36)の位置やライブラリ装置からの要求により決まる開口20の開放面の角度等に応じて適宜決められれば良い。
また、ドア50の上下端には、それぞれ上下のガイド溝42に入り込むそれぞれ複数の凸部51が突設されている。各凸部51は、閉塞部50Aと駆動部50Bとで突出高が異なるが、ドア50の幅方向(長手方向に沿った)中心線からそれぞれの頂部までの距離は一定とされている。これにより、上下の凸部51は、ガイド溝42の底部である天板16Bまたは底板18Bと摺動するようになっている。
また、各凸部51におけるドア50の板厚方向両側には、その頂部がドア50板厚方向端面に沿う突起51Aが突設されており、ガイド溝42の溝壁(リブ44等)と摺動するようになっている。なお、最前に位置する凸部51は、開口20の開閉過程でガイド溝42と連通するテーパ開口20Aには入り込まないように配置されている。
これらの凸部51及び突起51Aによって、ドア50は、開口20を開閉する際に各ガイド溝42にガイドされて上記移動軌跡からはみ出すことなく、ビスボス32の外側及びビスボス36の内側、右壁12Bと遊動規制壁28との間を縫うようにして確実に開動する構成である。
このドア50の駆動部50Bの前端(閉塞部50A側)近傍における外周部には、操作部としての操作突起52がドア50の径方向に沿って突設されている。操作突起52は、スリット40からケース12の外側に露出されており、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填(相対移動)に伴って該スリット40の前方に開口した部分から進入する係合突起100と係合することでドア50を開口20の開放方向に移動させる構成である。
また、ドア50の駆動部50Bの後端部には、該ドア50の内面側に向けて略L字状のばね掛け部54が突設されており、ばね掛け部54は上側が自由端とされている。このばね掛け部54には、付勢手段としてのコイルばね56が係止保持用されている。具体的には、コイルばね56の端部にはそれぞれ係止用の環状部56A、56Bが設けられており、環状部56Aはケース12のばね掛けピン55を挿通させてケース12に係止保持され、環状部56Bはばね掛け部54を挿通させてドア50に係止保持される。
これにより、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20の閉塞方向に付勢され、通常開口20を閉塞する構成である。このコイルばね56は、上記の通りドア50が開口20の閉塞状態でケース12の右後角部に至る長さであるため、該右後角部における遊動規制壁28と周壁16A、18A(傾斜後壁18C)との間の空間を有効利用して配設されている。
また、ドア50の閉塞部50A内面には、開口20閉塞時にリーダピン22の上端部側面及び下端部側面に当接するストッパ58が突設されており、落下衝撃等によるリーダピン22のピン台24からの脱落を、確実に防止できるようになっている。
以上説明したドア50は、記録テープカートリッジ10がドライブ装置へ装填される動作によって操作突起52がドライブ装置の係合突起100(図7(A)乃至(C)参照)に係合することでコイルばね56の付勢力に抗してケース12に対し移動し開口20を開放し、ドライブ装置から排出される際にはコイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞する構成である。
そして、円弧状に湾曲形成されたドア50は、その湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなくリール14及びピン台24(リーダピン22)の外側を回り込むように回動して、矢印A方向に対し傾斜した開口20を開閉するようになっており、開口20の開閉に際してケース12の外形領域からはみ出さない構成である。
(ICタグの構成)
そして、記録テープカートリッジ10には、RFID(Radio Frequency IDentificationの略で、RFタグともいう)通信用のRFIDタグとしてのICタグ60が内蔵されている。ICタグ60は、ケース12の外部からリーダ/ライタによって非接触で情報の読み書きが行われるようになっており、この実施形態ではICタグとして構成されている。
このICタグ60は、例えば、従来バーコードラベルで表されていた情報、保管時及びオートローダによる搬送使用時のカートリッジ個体一元管理(磁気テープTへの記録内容との関係を考慮した管理)のための情報が読み書きされる点で、上記したメモリボードMとは用途が異なる。このRFIDの構成について、以下に具体的に説明する。
図1に示される如く、ICタグ60は、回路部としてのICタグ本体62と、該ICタグ本体62に導通されたアンテナ64とを主要部として構成されている。図2に示される如く、ICタグ本体62は、シート状に形成された基部としてのベースシート66と、該ベースシート66に設けられた回路としてのICチップ68と、ベースシート66の表面に沿ってICチップ68から延設された一対の端子70とを有する。一対の端子70は、ベースシート66の下端まで至っている。
ICタグ本体62は、図2に示される如く、下ケース18の遊動規制壁28に内向きに開口して形成された位置決め部としての凹部72内に収容されることで、遊動規制壁28の内側に配置されたリール14(磁気テープT)との干渉が生じない構成とされている。凹部72は、遊動規制壁28の段差29に対する内周側の壁部を切り欠いて形成されている。また、この実施形態では、ICタグ本体62は、凹部72の底面(遊動規制壁28の径方向内向きの面)に接着によって固定されている。
図1に示される如く、アンテナ64は、遊動規制壁28に沿って設けられている。具体的には、下ケース18の底板18Bにおける遊動規制壁28の内面に沿って細溝74が形成されており、該細溝74内に金属箔より成るアンテナ64が形成されている。この実施形態では、下ケース18の底板18Bには、環状リブ26Aから複数のリブ75が放射状に立設されており、細溝74は、平面視で図6に示される如く複数のリブ75の先端と遊動規制壁28の内面との間に形成されている。
図6に示される如く、アンテナ64は、細溝74における凹部72に連通された部分を基端64Aとして略対称に一対形成されており、それぞれの終端64Bが凹部72から略180°の位置に位置している。すなわち、一対のアンテナ64は、遊動規制壁28または該遊動規制壁28の仮想延長線に沿って、略半円弧状に形成されており、ダイポールアンテナを構成している。この実施形態では、アンテナ64の一対の基端64A間、終端64B間には、細溝74が形成されない構成とされている。
以上説明したアンテナ64は、成形後の下ケース18における細溝74内に金属箔を蒸着する蒸着法によって形成されている。これにより、安価かつ容易にアンテナ64を形成することができる。特に、細溝74の溝壁にのみアンテナ64を形成することが可能になる。また、細溝74内に形成されたアンテナ64は、リール14等との干渉が防止され、該干渉に対し保護されるようになっている。なお、アンテナ64は、蒸着方に代えて、細溝74に金属材を流し込んで固化させることで、形成されても良く、樹脂製の下ケース18の射出成形時に転写成形によって金属箔として形成されても良く、下ケース18の成形後にエッチングによって金属箔として形成しても良い。これらによっても、比較的容易にアンテナ64を形成することが可能になる。
そして、アンテナ64が形成された細溝74は、ICタグ本体62が収容される凹部72と連通されており、ICタグ本体62を凹部72内に収容して遊動規制壁28(下ケース18)に対し位置決めすることで、一対の端子70が対応するアンテナ64に接触するようになっている。これにより、一対のアンテナ64とICチップ68とが電気的に導通され、ケース12の外部との通信が可能なICタグ60が構成される。各端子70とアンテナ64との接触部位は、接着剤等によって接触状態が維持されるように構成しても良い。この実施形態では、遊動規制壁28の内径が略100[mm]であり、片側略150[mm]のアンテナ64が形成されている。
以上により、記録テープカートリッジ10では、ICタグ60が下ケース18(遊動規制壁28)に一体化されている。特に、アンテナ64は、下ケース18に一体に形成されているものと捉えることができる。上記の如くダイポールアンテナであるアンテナ64を備えるICタグ60は、電波通信方式を採る構成とされている。
次に、本実施の形態の作用について説明する。
上記構成の記録テープカートリッジ10では、不使用時(保管時や運搬時等)には、コイルばね56の付勢力によって先端部を凹部30Aに入り込ませたドア50が開口20を閉塞している。また、リール14は、図示しないリールギヤをギヤ開口26から露出させた状態で、圧縮コイルスプリングによって下ケース18側に押し付けられつつケース12の環状リブ26Aを嵌入(当接)させて位置決めされている。さらに、この状態でリール14は、ロック手段によって回転不能にロックされている。
一方、磁気テープTを使用する際には、記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿ってドライブ装置のバケット(図示省略)へ装填する。この装填に伴って、図7(A)に示される如く、ドライブ装置の係合突起100がドア50の操作突起52に係合することでドア50が略後方へ回動して開口20が開放される。
そして、記録テープカートリッジ10がバケットに所定深さまで装填されると、該バケットは下降し、ドライブ装置の回転シャフト(図示省略)がケース12のギヤ開口26に向って相対的に接近する。すると、上記近接方向の移動によって回転シャフトは、その駆動ギヤをリール14のリールギヤと噛み合わせつつ該リール14を圧縮コイルスプリングの付勢力に抗してケース12に対し浮上させる。
またこの動作によって、記録テープカートリッジ10がドライブ装置内で位置決めされると共に、ロック手段によるリール14のロック状態が解除され、リール14は、ケース12内で該ケース12内面と非接触状態で回転可能となる。
この状態から、ドライブ装置の引出手段が開放された開口20からリーダピン22を引き出し該ドライブ装置の巻取リールに収容する。そして、ドライブ装置が巻取リールとリール14とを同期して回転駆動すると、磁気テープTは、巻取リールに巻き取られつつケース12から順次引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド等によって情報の記録や再生が行われる。
また、磁気テープTがリール14に巻き戻されてバケットが上昇すると、回転シャフトがリール14から離間し、該リール14は圧縮コイルスプリングの付勢力によって初期状態に復帰する。すなわち、リール14は、ケース12に対し下降し環状リブ26Aにて位置決めされると共に、ロック手段によって回転不能にロックされる。
さらに、記録テープカートリッジ10をバケットから排出する際には、記録テープカートリッジ10は、コイルばね56の付勢力または図示しないイジェクト機構によって矢印A方向とは反対方向に移動する。この移動に伴って、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって開口20を閉塞する。以上により、記録テープカートリッジ10は、ドライブ装置から排出されて初期状態に復帰する。
この記録テープカートリッジ10において、ケース12の外部に近接させた図示しないリーダ/ライタによって、ICタグ60(ICチップ68)への情報の読み書きが行われる。
ここで、記録テープカートリッジ10では、ICタグ60を構成するアンテナ64が下ケース18における遊動規制壁28に沿って形成されているため、換言すれば、リール14の設置範囲の外縁に沿ってアンテナ64が形成されているため、直線状に配置するよりも長いアンテナ64を形成することができる。すなわち、金属箔より成るアンテナ64は、ケース12内におけるリール14やドア50等の可動範囲と干渉しない最大の連続領域に沿って、長尺状に形成することができる。
しかも、記録テープカートリッジ10では、アンテナ64が細溝74内に形成されているので、落下衝撃を受けた場合等においてもアンテナ64がリール14に接触することがなく、断線等に対し効果的に保護される。
このように、本実施形態に係る記録テープカートリッジ10では、ICタグ60を構成するアンテナ64の長さを確保することができる。すなわち、電波通信方式を採るICタグ60において、UHF帯域の周波数を利用することが可能になる。これにより、記録テープカートリッジ10では、ケース12内に設けられたICタグ60に対するケース12外からの通信可能距離を長く設定することができる。
また、記録テープカートリッジ10では、ICタグ60を構成するICタグ本体62が遊動規制壁28に設けられているので、ICタグ60をケース内でコンパクトに構成することができる。特に、遊動規制壁28の凹部72内にICタグ本体62を収容するので、ケース12における遊動規制壁28の内側にICタグ60を配置した構成において、ICタグ本体62とリール14との干渉が防止される。
しかも、記録テープカートリッジ10では、凹部72内に収容されることで下ケース18に対し位置決めされたICタグ本体62は、各端子70が対応するアンテナ64に接触されるので、アンテナ64が形成された下ケース18に対するICタグ本体62の取り付けによって、容易にICタグ60を構成することができる。
(ICタグの変形例)
次に、記録テープカートリッジ10を構成するICタグの変形例について説明する。なお、上記実施形態と基本的に同一の部品、部分については、上記第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図8には、第1変形例に係るICタグ80の要部が分解斜視図にて示されている。この図に示される如く、ICタグ80は、ICタグ本体62に代えてICタグ本体82を備えており、ICタグ本体82は、ベースシート66に代えて、係合部としての係合片84を有するベースシート85を備える点で、ICタグ60とは異なる。
ベースシート85は、シート状ベース部材の上端部が屈曲されることで係合片84が一体に形成されている。係合片84には、係合孔84Aが形成されている。この係合孔84Aには、遊動規制壁28に突設された係合突起86が入り込むようになっている。ICタグ80は、ICタグ本体82のベースシート85が凹部72に収容されて下ケース18に対し位置決めされた状態で、一対の端子70が対応するアンテナ64に接触されると共に、係合片84の係合孔84Aに係合突起86が入り込む構成とされている。
図示は省略するが、上ケース16の遊動規制壁28には係合突起86を入り込ませる凹部が形成されており、該上ケース16の遊動規制壁28と下ケース18の遊動規制壁28とがインロウ構造により嵌り合うように突き合わされることで、係合片84が上下の遊動規制壁28に挟み込まれるようになっている。これにより、ICタグ80では、ICタグ本体82が接着剤に頼ることなく遊動規制壁28に対し脱落しない状態で、ケース12(遊動規制壁28)に固定されている。
ICタグ80の他の構成は、ICタグ60の対応する構成と同じである。したがって、第1変形例に係るICタグ80を備えた記録テープカートリッジ10によっても、ICタグ60を備えた記録テープカートリッジ10と同様の作用により同様の効果を得ることができる。
図9(A)には、第2変形例に係るICタグ90の要部が断面図にて示されており、図9(B)には、ICタグ90が側面図にて示されている。これらの図に示される如く、ICタグ90は、細溝74内に形成されたアンテナ64に代えて、遊動規制壁28の自由端面に形成されたアンテナ92を備える点で、ICタグ60とは異なる。この実施形態では、一対のアンテナ92は、遊動規制壁28における段差29に対する径方向外側の端面94上に、それぞれ略半円弧状に形成されている。
また、ICタグ90を構成するICタグ本体95は、遊動規制壁28の外周側に形成された凹部96内に収容されるようになっており、一対のアンテナ92は、それぞれ凹部96の底面上で拡大された端子接触部92Aを有する。ICタグ本体95は、ICチップ68に導通されると共にベースシート66の背面側に回り込んだ一対の端子98を有し、凹部96に収容されることで各端子98が対応するアンテナ92の端子接触部92Aに接触する構成とされている。
ICタグ本体95の遊動規制壁28への固定構造は、上記実施形態と同様の接着、第1変形例と同様の係合構造を採ることができる。ICタグ90の他の構成は、ICタグ60の対応する構成と同じである。したがって、第2変形例に係るICタグ90を備えた記録テープカートリッジ10によっても、ICタグ60を備えた記録テープカートリッジ10と同様の作用により同様の効果を得ることができる。
また、ICタグ90は、遊動規制壁28に対する外周側に構成されているので、リール14との干渉が確実に防止され、またケース12外部との通信性能が向上する。
なお、上記した実施形態及び変形例では、ICタグ本体62、82、95が遊動規制壁28に固定された例を示した。参考例としては、例えば、ICタグ本体62、82、95を下ケース18の底板18Bに固定する構成としても良い。
また、上記した実施形態及び変形例では、下ケース18側にICタグ60、80、90が構成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、上ケース16側にICタグ60、80、90を構成しても良く、上ケース16、下ケース18とは別体とされた遊動規制壁28にICタグ60、80、90を構成しても良い。
さらに、上記した実施形態及び変形例では、アンテナ64、92が単なる円弧状を成す例を示したが、本発明はこれに限定されず、遊動規制壁28の壁面又は下ケース18の底板18Bを有効利用して中間又は先端部が渦巻状や千鳥状を成す形状等、各種形状のアンテナを採用することができる。
またさらに、上記した実施形態及び変形例では、遊動規制壁28(下ケース18)に直接的にアンテナ64、92が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、アンテナ64等が形成されたフレキシブルなプリント基板を遊動規制壁28に貼り付けるようにしても良い。
また、上記した実施形態及び変形例では、位置決め部として凹部72、96が形成された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ICタグ本体62、82、95に対する遊動規制壁28の周方向の少なくとも一方側に設けられた凸部にて位置決め部を構成しても良く、底板18Bに形成されICタグ本体62、82、95の下端が入り込む溝にて位置決め部を構成しても良い。
さらに、上記した実施形態及び変形例では、一対のアンテナ64が略半円弧状を成す例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、受信する電波の周波数に応じて(波長の半分程度に)アンテナ64の長さを設定すれば良い。例えばUHF帯域に含まれる900[MHz]帯の周波数で通信を行う構成では、一対のアンテナ64(アンテナ92)の長さを合わせて150[mm]とすれば良い。すなわち、上記実施形態に適用した場合、各アンテナ64は、遊動規制壁28(リール14)の略1/4周(略90°)となり、合わせて略半周の領域に設置することができる。また、アンテナ64の長さは、その近傍に位置する部材の誘電率(ケース12、リール14や磁気テープT等の空気(誘電率略1.0に対し誘電率が高いもの)の影響を考慮して適宜調整しても良い。
またさらに、一対のアンテナ64、92は、基端64A、92A同士が互いに繋がる(端部がない)ように構成されても良い。この場合には、一対の端子70とアンテナ64の連結された基端64Aとでループアンテナが形成される。この構成では、上記した電波通信の機能と、磁界誘導方式の通信の機能とを併せ持つことが可能になる。
また、上記した実施形態及び変形例では、ICタグ60、80、90が電波通信方式を採る例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ICタグ60、80、90が磁界誘導方式を採る構成としても良い。この場合、終端64Bを有しないループ状のアンテナ64、92を形成すれば良い。磁界誘導方式では、アンテナ長が長いほど通信感度が良好であるため、本発明の適用によって、受信感度の向上が図られ、通信距離の確保に寄与する。
さらに、上記した実施形態及び変形例では、ICタグ60、80、90がリーダ/ライタによって非接触で情報の読み書きが行われる構成である例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ICタグ60、80、90は、情報の読み書きの何れか一方のみが行われる構成であっても良く、外部からの電波等の受信に対し特定の信号(周波数)を返す機能のみを有する構成であっても良い。後者の構成では、例えば記録テープカートリッジ10毎にICタグ60等が返す信号(周波数)が異なれば、これらの個体を識別することができる。
またさらに、上記した実施形態及び変形例では、記録テープとして磁気テープTを用いた構成としたが、本発明はこれに限定されず、記録テープは情報の記録及び記録した情報の再生が可能な長尺テープ状の情報記録再生媒体として把握されるものであれば足り、本発明に係る記録テープカートリッジが如何なる記録再生方式の記録テープにも適用可能であることは言うまでもない。