JP4167018B2 - 記録テープカートリッジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主にコンピューター等の記録再生媒体として使用される磁気テープ等の記録テープが巻装された単一のリールをケース内に収容してなる記録テープカートリッジに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、コンピューター等のデータ記録再生媒体として使用されている磁気テープを単一のリールに巻装し、そのリールをケース内に収容してなる磁気テープカートリッジが知られている。この磁気テープの先端には、リーダーピンやリーダーテープ、リーダーブロックといったリーダー部材が設けられており、そのリーダー部材をドライブ装置側に設けられた引出手段が磁気テープカートリッジの開口から引き出し、それに固着された磁気テープをドライブ装置側の巻取リールに巻装させるようになっている。
【0003】
また、磁気テープカートリッジの下面に穿設された開孔から現出しているリールの下面中央にはリールギアが環状に刻設されており、ドライブ装置側の回転シャフトに設けられた駆動ギアがそのリールギアに噛合することにより、リールが回転駆動するように構成されている。しかして、磁気テープカートリッジのリール及びドライブ装置の巻取リールを同期して回転させることにより、磁気テープにデータを記録したり、磁気テープに記録されたデータの再生ができる。
【0004】
このような磁気テープカートリッジは、通常、ライブラリー装置と呼ばれる収納庫に多数収納されて保管されており、ロボットハンド等を備えた把持手段によって、所望とする磁気テープカートリッジの両側壁の後端側が把持されて、ライブラリー装置の各収納部から取り出されるようになっている。そして、そのまま複数のドライブ装置の1つに装填されることにより、その磁気テープカートリッジにデータの記録又はその磁気テープカートリッジに記録されていたデータの再生が行われるようになっている。
【0005】
また、ライブラリー装置から取り出された磁気テープカートリッジが、スムーズにドライブ装置の1つに装填されるように、各磁気テープカートリッジの後壁内側には、その磁気テープカートリッジの記録容量や記録形式等の各種情報を記憶したカード型のメモリーボードが内設されている。このメモリーボードは電磁波により非接触でアクセス(読み取り・書き込み)するもので、メモリーボードに記憶されている各種情報をロボットハンドに設けられた読取装置やドライブ装置に設けられた読取書込装置に非接触で読み取らせ、その磁気テープカートリッジにデータの記録又は記録されたデータの再生ができるドライブ装置を予め制御装置等に認識させることにより、ロボットハンド等の把持手段の動作にロスがないようにしている。
【0006】
図6には従来の磁気テープカートリッジ70が示されている。この磁気テープカートリッジ70は、上ケースと下ケースとが下側からビスがねじ込まれて接合されるようになっており、図示するように、そのためのビスボス80、82、84、86が設けられている。そして、メモリーボードMが磁気テープカートリッジ70の後壁72(矢印P方向が前壁)の内側で、かつビスボス80の近傍に所定角度傾斜した姿勢で配設されている。つまり、メモリーボードMは、後面(後壁72)側及び下面74側の両方(2方向)からアクセス可能なように、側面視45°の仰角で配置され、かつ、落下等による衝撃を受けてもその位置がずれないように、比較的強度が確保される接合部分、即ちビスボス80の近傍に配設されている。
【0007】
したがって、ロボットハンドに設けられた読取装置78は、磁気テープカートリッジ70の後面(後壁72)側から好適にメモリーボードMへアクセスする(電磁波を送受信する)ことができ、かつ、ドライブ装置に設けられた読取書込装置76は、磁気テープカートリッジ70の下面74側から好適にメモリーボードMへアクセスする(電磁波を送受信する)ことができる。なお、読取書込装置76とは、情報の読み取りだけではなく、情報の書き込みも行える装置である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このようにメモリーボードMを上ケースと下ケースとの接合部位であるビスボス80の近傍に配設すると、落下等によって衝撃を受けてもその位置ずれが抑制されるので好ましい。しかしながら、メモリーボードMに対する読取装置78及び読取書込装置76のアクセスを確実なものとするためには、読取装置78及び読取書込装置76からメモリーボードMまでの距離(電磁波を送受信するための距離)を精度よく保つ必要があり、そのためには、ケース内において、より精確にメモリーボードMが位置決めされていなければならない。
【0009】
そこで、本発明は、ケース内におけるメモリー(メモリーボード)の位置精度を向上させることができる記録テープカートリッジを得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の記録テープカートリッジは、記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容する上ケースと下ケースとからなる略矩形状のケースと、前記ケースのドライブ装置への装填方向前側の角部を切り欠いて形成され、前記記録テープの端部に取り付けられたリーダー部材を引き出すための開口と、前記ケースのドライブ装置への装填方向後側の両角部近傍に配設され、前記上ケースと前記下ケースとを接合させるビスボスと、記録容量等の各種情報が記憶され、前記ケース内のドライブ装置への装填方向後側に所定の傾斜角度で配置される非接触型のメモリーと、前記下ケースに形成され、ドライブ装置に対する位置決め用の基準面と、を備えた記録テープカートリッジにおいて、前記メモリーを回避可能にドライブ装置への装填方向後側が切り欠かれ、所定の円周に沿ってスライドして前記開口を開閉する平面視略円弧状の遮蔽部材と、前記上ケース及び前記下ケースに設けられ、前記遮蔽部材を前記所定の円周に沿ってスライド可能に支持するガイド壁部と、を備え、平面視で、前記ビスボス同士を結ぶ仮想直線上と、ドライブ装置への装填方向と平行で、かつ前記基準面及び前記下ケースにおけるドライブ装置への装填方向後側の前記ガイド壁部を通る仮想直線上に、前記メモリーの少なくとも一部をオーバーラップさせたことを特徴としている。そして、請求項2に記載の記録テープカートリッジは、請求項1に記載の記録テープカートリッジにおいて、平面視で、前記ビスボス同士を結ぶ仮想直線上に、前記メモリーの中心が配置されていることを特徴としている。
【0011】
このように、平面視で、ドライブ装置への装填方向後側の両角部近傍に配設されたビスボス同士を結ぶ仮想直線上と、ドライブ装置への装填方向と平行で、かつ基準面を通る仮想直線上に、メモリーの少なくとも一部をオーバーラップさせるようにすると(更に好ましくは、そのビスボス同士を結ぶ仮想直線上に、メモリーの中心を配置すると)、ケース内に設けるメモリーの位置を外側から、より明確に把握できるようになる。つまり、ケース内に設けるメモリーの位置が制限されることになるので、そのメモリーにアクセスする読取装置や書込装置との距離精度を向上させることができ、読み取り精度や書き込み精度を向上させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る記録テープカートリッジ10を図1乃至図4に基づいて説明する。まず、最初に、記録テープカートリッジ10の全体構成を簡単に説明し、次いで本発明に係る要部について詳細に説明する。なお、説明の便宜上、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印Aで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向とする。
【0013】
図1、図2で示すように、記録テープカートリッジ10は、平面視で略矩形状のケース12内に、情報記録再生媒体である記録テープとしての磁気テープTを巻装した単一のリール14を回転可能に収容して構成されている。ケース12は、ドライブ装置への装填方向先頭側の1つの角部である右前角部が平面視でそれぞれ斜めに切り欠かれた一対の上ケース16と下ケース18とを互いの周壁16A、18Aを突き合せて接合することで構成されており、内部に磁気テープTを巻装したリール14の収容空間が設けられている。
【0014】
また、上ケース16及び下ケース18の周壁16A、18Aの切り取られた角部が磁気テープTの引き出し用の開口20とされ、この開口20から引き出される磁気テープTの自由端には、ドライブ装置の引出手段によって係止(係合)されつつ引き出し操作されるリーダーピン22が接続されている。リーダーピン22の磁気テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝22Aが形成されており、この環状溝22Aが引出手段のフック等に係止される。これにより、磁気テープTを引き出す際に、フック等が磁気テープTに接触して傷付けない構成である。
【0015】
また、ケース12の開口20の内側には、ケース12内においてリーダーピン22を位置決め、保持する上下一対のピン保持部24が設けられている。ピン保持部24は、図3、図4でも示すように、略半円筒形状をしており、その凹部24A内に直立した状態のリーダーピン22の両端部が保持される。そして、ピン保持部24の外周壁の磁気テープT引き出し側は開放しており、リーダーピン22が出入する出入口となっている。
【0016】
ピン保持部24の近傍には、板ばね25が、前壁12A(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印A方向を向く部分)の内面に設けられたばね保持部27と溝部23(図3、図4参照)に、その基部が挿入されて固定配置されるようになっており、この板ばね25の二股状の先端部がリーダーピン22の上下端に係合してリーダーピン22をピン保持部24に保持するようになっている。なお、リーダーピン22がピン保持部24に出入する際には、板ばね25の先端部は適宜弾性変形してリーダーピン22の移動を許容する構成である。
【0017】
更に、下ケース18の中央部には、リール14の図示しないリールギアを外部に露出するためのギア開口26が設けられており、リール14はリールギアがドライブ装置の駆動ギアに噛合されてケース12内で回転駆動されるようになっている。また、リール14は、上ケース16及び下ケース18の内面にそれぞれ部分的に突設されて、ギア開口26と同軸的な円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁28によってガタつかないように保持されている。
【0018】
この遊動規制壁28の開口20近傍の端部には、内部に位置規制用穴が形成された袋部28Aが連設されており、ケース12の左前角部の内側においては、長穴である位置規制用穴が形成された袋部29が遊動規制壁28とは離間して設けられている。袋部28A、29は、矢印B方向に沿った一直線上に配置されており、下面側における位置規制用穴の周囲(袋部28A、29の肉厚と同じか、それよりも少し広い部分)がドライブ装置に対する位置決め用の基準面となっている。そして、袋部28Aが連設された端部を除いて、各遊動規制壁28は、それぞれ端部がケース12の周壁16A又は周壁18Aと連設されることで、その外側とリール14の設置空間とを仕切っている。
【0019】
また、下ケース18における袋部29が設けられている前壁12Aと遊動規制壁28との間の所定位置には、上下一対のビスボス60が設けられており、下ケース18における後部内壁18Bの両端部と、左壁12C及び右壁12Bとの間の両角部における所定位置にも、上下一対のビスボス62、64が設けられている。このような上下一対のビスボス60、62、64は、下ケース18側が貫通しており、上ケース16側が非貫通となっている。
【0020】
また、ケース12の前壁12Aの右端部には、開口20の前縁部を規定する上下一対の短い傾斜壁部30が設けられている。この傾斜壁部30は、開口20の開放面に沿って屈曲形成され、開口20閉塞時に、後述する平面視略円弧状ドア50の先端がその内側に入り込むことによって、塵埃等が進入できる隙間が生じないようにする防塵壁となっている。そして、傾斜壁部30の左方近傍の前壁12A内側には、上下一対のビスボス32が連設されている。
【0021】
また、ケース12の右壁12B(周壁16A、18Aのうち、外面が矢印B方向を向く部分)の前端部内側には、平面視で、後述するドア50の外周面に略沿った形状の上下一対の傾斜壁部34が設けられている。この傾斜壁部34の前端面が開口20の後縁を規定しており、その前端部には上下一対のビスボス36が設けられている。
【0022】
また、ケース12の右壁12Bには、ケース12の内外を連通する窓部としての所定長さのスリット40が設けられており、後述するドア50の操作突起52の露出用とされている。このスリット40は、右壁12Bを構成する上ケース16の周壁16Aの前側下部を切り欠いて形成され、開口20側へも開放されている。このように、スリット40が周壁16Aの一部を上側に残して形成されると、ケース12の剛性を維持することができるので好ましい。特にスリット40を規定する上側の壁が傾斜壁部34から一体に連設されていると、更に好ましい。
【0023】
また、下ケース18の後方側には、周壁18Aの上端を除く部分が断面視略「コ」字状にケース12の内方へ凹むとともに、ケース12の下面から上方へも凹んだ(底板が切り欠かれた)凹部48が形成されている。この凹部48は、ケース12の左壁にも形成され、例えばドライブ装置の引き込み手段が係合する係合部とされたり、その底面(下向きの面)がドライブ装置内での位置決め用の基準面とされたりするようになっている。
【0024】
また、その凹部48の後方側にも周壁18Aの上端を除く部分が断面視略「コ」字状にケース12の内方へ凹むとともに、ケース12の下面から上方へも凹んだ(底板が切り欠かれた)凹部46が形成されている。この凹部46は、ライブラリー装置の把持手段が係合する係合部とされており、このような凹部46、48を設けることでケース12(下ケース18)の捩り強度が向上される。また、上ケース16の左壁の上面部分には、平面視略台形状の凹部44が形成されている。この凹部44は、開口20の開放時、ドア50の開放方向への移動に伴う回転モーメントをキャンセルするための保持部材(図示省略)が係合する係合部とされている。
【0025】
また、上ケース16及び下ケース18において、開口20近傍から遊動規制壁28が最も右壁12Bに接近する部位近傍まで(以下、前半という)と、スリット40の後端近傍から後壁の近傍まで(以下、後半という)、後述するドア50の凸部51を内面側及び外面側の両側方から挟み込むように支持する所定高さ(例えば、1.0mm〜1.5mm程度)のガイド壁部42が立設されている。
【0026】
このガイド壁部42は、上ケース16と下ケース18とではその長さが異なっており、上ケース16側の方が下ケース18側よりも後半側が長く形成されている。これは、下ケース18の後部内壁18Bの右壁12B側に、後述するメモリーボードMを所定角度で傾斜配置しているからである。なお、後半のガイド壁部42は、その後端部が平面視略円弧状に閉塞されており、ドア50がそれ以上後方へ移動できないように、上下それぞれ最も後側の凸部51を規制するようになっている。
【0027】
一方、前半のガイド壁部42は、その前端部が開放されており、リーダーピン22の出入時に、そのリーダーピン22の出入を妨げないような位置(この図示のものはピン保持部24よりも後方側で、開口20の開口幅の約半分程度)まで延設されている。また、傾斜壁部30の近傍にも、ガイド壁部42の延長線上に位置するように、後端部が開放されたガイド壁部41が立設されている。このガイド壁部41は、その後端部がリーダーピン22の出入を妨げないように、ピン保持部24の前端よりも後方側には延設されないようになっており、ドア50は、その先端がガイド壁部41に入り込んだ状態で、開口20を閉塞するようになっている。
【0028】
また、ガイド壁部41及び前半のガイド壁部42は、後半のガイド壁部42よりも若干低くなるように形成されている。すなわち、例えばガイド壁部41及び前半のガイド壁部42の高さは約1mmに形成され、後半のガイド壁部42の高さは約1.5mmに形成されている。これは、開口20に、リーダーピン22をチャックして引き出すドライブ装置側の引出手段が入り込めるスペースを確保するためである。したがって、後述するように、ガイド壁部41及び前半のガイド壁部42が低くなっている分、その前半部分(少なくとも開口20を閉塞する部分)におけるドア50の板幅(高さ)が、大きく(高く)なるように形成されている。
【0029】
更に、上ケース16内面及び下ケース18内面には、その開口20から露出している外側のガイド壁部42と一体になって平面視略台形状をなすリブ38が、そのガイド壁部42と同等の高さになるように立設されており、このリブ38によって開口20部分における上ケース16及び下ケース18の強度が確保されるようになっている。なお、内側のガイド壁部42はピン保持部24と一体になるように連設されているが、ピン保持部24の高さは、一体に連設されたガイド壁部42の高さと略同等か、それよりも高く形成されていることが望ましい。
【0030】
以上、説明した上ケース16と下ケース18とは、開口20の縁部の近傍に位置する各ビスボス32、36と、上記した各ビスボス60、62、64に下側から図示しないビスがねじ込まれて固定(接合)される構成である。これによって、特に傾斜壁部30(前壁12A)及び傾斜壁部34(右壁12B)の各自由端によって規定され、強度的に不利で落下によって地面等に衝突しやすい開口20両端のコーナー部は強固に接合され、ケース12を落しても、記録テープカートリッジ10全体の重量で変形したり、座屈して位置ずれしたりしない構成である。
【0031】
また、その開口20は、遮蔽部材としてのドア50によって開閉されるようになっている。ドア50は、少なくとも開口20を閉塞する部分の板幅(高さ)が開口20の開口高さと略同一に形成され、それより後側が若干小さく(低く)形成されるとともに、その板長が開口20の開口幅よりも充分大きく形成されている。そして、所定の円周に沿って移動できるように、板厚方向に湾曲した平面視略円弧状に形成されている。
【0032】
このドア50は、その先端部がガイド壁部41に入り込んだ状態で開口20を閉塞し、上記した所定の円周に沿って略後方へスライド移動(回動)して開口20を開放し、その先端近傍の外周面がビスボス36近傍に達すると、開口20を完全に開放する構成になっている。そして、開口20を開放する際と反対方向にスライド移動(回動)することにより、開口20を閉塞する構成になっている。
【0033】
このように、ドア50は、その移動軌跡である所定の円周に対応した円弧状に湾曲形成されており、その回動中心は、本実施の形態では、左右方向の位置がケース12の左端近傍に、前後方向の位置がスリット40の後端近傍に設定されている。これにより、ドア50の移動軌跡は、スリット40の後端近傍において、ケース12の右壁12Bに最も近接する。なお、ドア50の回転中心及び半径は、ドライブ装置からの要求により決まる開口20前後の縁部(傾斜壁部30及びビスボス36)の位置やライブラリー装置からの要求により決まる開口20の開放面の角度等に応じて適宜決められればよい。
【0034】
また、ドア50の湾曲した長手寸法は、その後端部が開口20の閉塞状態において、ケース12の凹部48よりも後方の(凹部46近傍の)右後角部内に位置するように決められており、ドア50の後下部は、下ケース18の後部内壁18B側に所定角度で傾斜配置された後述するメモリーボードMを回避するために、斜めに切り欠かれている。なお、ドア50の前端部内面及び/又は外面は、ガイド壁部41間にスムーズに入り込めるようにテーパー面に形成されることが好ましい。
【0035】
また、そのドア50の上面及び下面には、ガイド壁部42のガイド面(互いに対向している内面)と、ガイド壁部42間の上ケース16内面及び下ケース18内面にそれぞれ当接して、ドア50を開口20の開閉方向に案内する凸部51が突設されている。この凸部51は、ドア50の長手方向に沿って長い平面視略楕円形状に形成され、上面及び下面にそれぞれ4つずつ、最も後側の凸部51を除いて上下対称に、かつ、ガイド壁部42の高さと略同等の高さ(例えば、ドア50の板幅が異なる境界部分より前側は約0.5mm、後側は約1.5mm)になるように突設されている。なお、最後側の凸部51が上下対称でないのは、ドア50の後下部が斜めに切り欠かれていることによる。
【0036】
このような凸部51を設けると、ガイド壁部41及びガイド壁部42間の上ケース16内面及び下ケース18内面並びにガイド壁部41及びガイド壁部42のガイド面との摺動抵抗(摩擦)を低減することができ、ドア50を抵抗少なく、スムーズに摺動させることが可能となる。更に、凸部51が平面視略楕円形状に形成されていると、例えば平面視略円形状に形成されているものよりも耐衝撃性に優れる。したがって、落下等の衝撃により、ドア50に開閉方向以外から力が加えられても、その凸部51が折れるような心配はない。
【0037】
また、ドア50の長手方向中央部よりも若干前方(ドア50の板幅が異なる境界部分近傍)における外周面には、操作部としての操作突起52がドア50の径方向に沿って突設されている。操作突起52は、スリット40からケース12の外側に露出されるようになっており、開口20の閉塞状態ではビスボス36の後端から僅かに離間して位置するとともに、スリット40の前方へ開放された部分から操作可能とされている。そして、開口20の開放状態では、操作突起52は、スリット40の後縁から僅かに離間して位置するようになっており、このとき、ガイド壁部42の後端部に最後端側の凸部51が当接している。
【0038】
なお、操作突起52露出用のスリット40によってケース12の内外が連通されるが、このスリット40はビスボス36と、ケース12内の略全高に亘るドア50によって常時ほぼ閉塞され、かつ、内壁としての遊動規制壁28によって、リール14に巻装された磁気テープTへの塵埃等の付着が防止されるようになっている。
【0039】
また、ドア50の前端部内面には、開口20閉塞時において、リーダーピン22の上端部側面及び下端部側面に当接するストッパー58が突設されており、落下衝撃等によってリーダーピン22がピン保持部24から脱落するのを、より一層防止できるようになっている。そして、ドア50を開口20閉塞方向へ付勢する付勢部材としてのコイルばね56は、ドア50が開口20の閉塞状態でケース12の右後角部に至る長さであるため、右後角部における遊動規制壁28と右壁12B(周壁16A、18A)との間の空間を有効利用して配設されている。
【0040】
すなわち、ドア50の後端近傍の内周面には、背面視略L字状のばね保持部54が上方に向かって一体的に突設され、下ケース18の凹部48近傍の内面には、円柱状のばね係止部55が上方に向かって突設されている。そして、コイルばね56の両端にはリング状の取付部56A、56Bがそれぞれ形成されている。したがって、コイルばね56は、その一方の取付部56Bをばね係止部55に上方から挿入し、他方の取付部56Aをばね保持部54に上方から挿入することにより、上記した空間内に簡単に取り付けることができる。
【0041】
また、上ケース16には、ドア50の開閉時に、ばね保持部54の上端が摺接するリブ57が、平面視略円弧状に立設されている。このリブ57は、少なくともドア50が移動(開放)し始める際には、ばね保持部54の上端が摺接できるような位置及び長さに配設され、コイルばね56の付勢力に抗して移動するばね保持部54を好適にガイドすることにより、ドア50がより安定して開放されるように(開放時にドア50がコイルばね56の付勢力によってブレないように)している。
【0042】
また、このリブ57を設けることにより、上記のようにして取り付けられたコイルばね56の取付部56Aが、落下等による衝撃がケース12に加えられてばね保持部54を上昇してきても、そのばね保持部54から外れないようにできる。なお、ばね係止部55側も、その上端が上ケース16の遊動規制壁28とガイド壁部42との間に挿入されることになるので、同様に、取付部56Bがばね係止部55から外れるのを防止することができる。
【0043】
また、このような構成の記録テープカートリッジ10(ケース12)内にはメモリーボードMが設けられる。このメモリーボードMは、各記録テープカートリッジ10毎に、その記録容量や記録形式等の各種情報を記憶されたカード型に形成され、非接触で読み取れるように、ICチップやアンテナ等が組み込まれている。そして、例えば下ケース18の右後部に配設されるようになっている。
【0044】
すなわち、図3で示すように、メモリーボードMは、右後角部側のビスボス64の近傍で、所定角度の傾斜面に形成された後部内壁18Bと、それより前方側に突設された支持突起19とにより支持されて、所定角度、つまり、下面側から読み取るドライブ装置と、後壁側から読み取るライブラリー装置での検知が可能となるように、略45°の傾斜角度で配置され、かつ、平面視でビスボス62とビスボス64を結ぶ仮想直線T上に、そのメモリーボードMの一部がオーバーラップするように、好ましくはメモリーボードMの中心が来るように配置されている。
【0045】
このような位置にメモリーボードMを配置すると、落下等の衝撃による位置ずれを抑制できるのは当然ながら、ケース12内におけるメモリーボードMの位置精度を向上させることができる。すなわち、ケース12内において、メモリーボードMの配設位置が制限されることになるので、メモリーボードMの位置をケース12の外側から、より明確に把握できるようになる。したがって、そのメモリーボードMにアクセスするライブラリー装置の読取装置やドライブ装置の読取書込装置との距離精度を向上させることができ、その読取装置や読取書込装置から送信される電磁波をメモリーボードMのアンテナ全体で受けることが可能となるので、読み取り精度や書き込み精度を向上させることができる。
【0046】
また、メモリーボードMが近接配置されるビスボス64は、図3で示すように、ドライブ装置への装填方向と平行で、かつドライブ装置に対する位置決め手段の1つである袋部28Aの基準面を通る仮想直線Sに対して近接配置されている。この仮想直線S上は、ドライブ装置に対して精度よく位置決めがなされる部位であり、この近傍に配置されたビスボス64の近傍、好ましくは仮想直線Sともその一部がオーバーラップするようにメモリーボードMを配置することにより、ドライブ装置に対する(読取書込装置に対する)メモリーボードMの位置精度をより一層向上させることができる。
【0047】
なお、図5で示すように、従来の記録テープカートリッジ70では、ビスボス80とビスボス82を結ぶ仮想直線U上にメモリーボードMはオーバーラップしていないが、基準面88を通る仮想直線V上にはオーバーラップしている。したがって、このような構成だけでもドライブ装置に設けられた読取書込装置との相対位置を比較的容易に設定することができる。その他、下ケース18の左後部には、その記録テープカートリッジ10への記録可・不可が設定されるライトプロテクト(図示省略)が設けられるようになっており、ライトプロテクトを操作する操作突起(図示省略)が突出する開孔17が穿設されている。
【0048】
次に、本実施の形態の作用について説明する。上記構成の記録テープカートリッジ10では、不使用時(保管時や運搬時等)には、開口20がドア50によって閉塞されている。具体的には、ドア50は、コイルばね56の付勢力によって、常時開口20閉塞方向へ付勢されており、その先端部(前端部)が傾斜壁部30近傍のガイド壁部41に入り込む状態で開口20を閉塞している。
【0049】
各記録テープカートリッジ10は、この状態でライブラリー装置に収納されている。そして、ロボットハンドに設けられた読取装置が各記録テープカートリッジ10の後面(後壁)側からメモリーボードMにアクセスし、それに記憶されている記録容量等の各種情報を読み取るとともに、その情報を制御装置に伝達する。これにより、各記録テープカートリッジ10に最適な(各記録テープカートリッジ10が記録・再生可能な)ドライブ装置が予め制御装置に認識される。
【0050】
一方、磁気テープTを使用する際には、記録テープカートリッジ10を矢印A方向に沿ってドライブ装置へ装填する。このドライブ装置は、メモリーボードMに記憶された情報を読み取った結果、選ばれたドライブ装置であり、記録テープカートリッジ10は、ライブラリー装置のロボットハンドによってスムーズに、かつ効率よく、そのドライブ装置に装填される。そして、この装填に伴って、ドライブ装置の開閉手段を構成する開閉部材(図示省略)が、前方へ開放しているスリット40に進入し、ドア50の操作突起52に係合する。
【0051】
この状態で、記録テープカートリッジ10(ケース12)を更に押し込むと、この押し込み力によってコイルばね56の付勢力に抗しつつ、開閉部材が操作突起52を後方へ移動させる(矢印A方向へ装填されるケース12に対して後方へ相対移動させる)。すると、その操作突起52が突設されているドア50は、凸部51がガイド壁部42によって案内されつつ、その湾曲方向に沿って平面視時計方向に回動する。
【0052】
すなわち、ドア50は、ガイド壁部42によって、その湾曲形状に沿った移動軌跡からはみ出すことなく、ピン保持部24及びリール14の外側を回り込むように略後方へ移動し、開口20を開放する。そして、ケース12(記録テープカートリッジ10)がドライブ装置に所定深さ装填されると、開口20が完全に開放されるとともに位置決めされ、ドライブ装置に設けられた読取書込装置が、記録テープカートリッジ10の下面側からメモリーボードMにアクセスし、それに記憶されている各種情報を読み取り、更には必要に応じて個別の情報を書き込む。
【0053】
こうして開口20が開放された状態で記録テープカートリッジ10がドライブ装置内で位置決めされると、ドア50はそれ以上の回動(略後方への移動)が規制され、開放された開口20からはドライブ装置の引出手段がケース12内に進入し、この引出手段がピン保持部24に位置決め保持されたリーダーピン22を抜き出して、図示しない巻取リールに収容する。そして、その巻取リールとリール14とを同期して回転駆動することにより、磁気テープTは、巻取リールに巻き取られつつ順次ケース12から引き出され、所定のテープ経路に沿って配設された記録再生ヘッド等によって情報の記録や再生が行われる。
【0054】
一方、磁気テープTがリール14に巻き戻されて、記録テープカートリッジ10をドライブ装置から排出する際には、記録テープカートリッジ10は、位置決め状態が解除され、コイルばね56の付勢力又は図示しないイジェクト機構によって矢印A方向とは反対方向に移動される。そして、ドア50は、その凸部51がガイド壁部42に案内されつつ、コイルばね56の付勢力によって開口20の閉塞方向へ回動する。そして、ドア50の先端部がガイド壁部41に入り込むことにより、開口20が完全に閉塞され、初期状態に復帰する。
【0055】
ここで、メモリーボードMは、ケース12内において、ビスボス64の近傍で、かつ、平面視でビスボス62とビスボス64とを結ぶ仮想直線T上に、少なくともその一部がオーバーラップする(図示のものはメモリーボードMの中心が仮想直線T上にある)ように配設位置が制限されているので、落下等の衝撃による位置ずれを抑制できるのはもちろん、ケース12内におけるメモリーボードMの位置精度を向上させることができる。したがって、そのメモリーボードMにアクセスする読取装置や読取書込装置との距離精度を向上させることができ、読み取り精度や書き込み精度を向上させることができる。
【0056】
また、更に、このメモリーボードMが近接配置されるビスボス64は、ドライブ装置への装填方向(矢印A方向)と平行で、かつドライブ装置に対する記録テープカートリッジ10の位置決めの基準となる袋部28Aの基準面を通る仮想直線Sに対して近接配置されているので、ドライブ装置に対する(読取書込装置に対する)メモリーボードMの位置精度をより一層向上させることができる。したがって、読み取りエラーや書き込みエラーが発生しないようにできる。
【0057】
【発明の効果】
以上、何れにしても本発明によれば、ケース内におけるメモリーの配設位置が制限されるので、そのメモリーにアクセスする読取装置や書込装置との距離精度を向上させることができ、読み取り精度や書き込み精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録テープカートリッジの概略斜視図
【図2】記録テープカートリッジの概略分解斜視図
【図3】下ケースの概略平面図
【図4】上ケースの概略平面図
【図5】従来の磁気テープカートリッジにおける下ケースの概略平面図
【図6】従来の磁気テープカートリッジの概略斜視図
【符号の説明】
10 記録テープカートリッジ
12 ケース
14 リール
16 上ケース
18 下ケース
20 開口
22 リーダーピン
32、36 ビスボス
60〜64 ビスボス
Claims (2)
- 記録テープが巻装された単一のリールを回転可能に収容する上ケースと下ケースとからなる略矩形状のケースと、
前記ケースのドライブ装置への装填方向前側の角部を切り欠いて形成され、前記記録テープの端部に取り付けられたリーダー部材を引き出すための開口と、
前記ケースのドライブ装置への装填方向後側の両角部近傍に配設され、前記上ケースと前記下ケースとを接合させるビスボスと、
記録容量等の各種情報が記憶され、前記ケース内のドライブ装置への装填方向後側に所定の傾斜角度で配置される非接触型のメモリーと、
前記下ケースに形成され、ドライブ装置に対する位置決め用の基準面と、
を備えた記録テープカートリッジにおいて、
前記メモリーを回避可能にドライブ装置への装填方向後側が切り欠かれ、所定の円周に沿ってスライドして前記開口を開閉する平面視略円弧状の遮蔽部材と、
前記上ケース及び前記下ケースに設けられ、前記遮蔽部材を前記所定の円周に沿ってスライド可能に支持するガイド壁部と、
を備え、
平面視で、前記ビスボス同士を結ぶ仮想直線上と、ドライブ装置への装填方向と平行で、かつ前記基準面及び前記下ケースにおけるドライブ装置への装填方向後側の前記ガイド壁部を通る仮想直線上に、前記メモリーの少なくとも一部をオーバーラップさせたことを特徴とする記録テープカートリッジ。 - 平面視で、前記ビスボス同士を結ぶ仮想直線上に、前記メモリーの中心が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の記録テープカートリッジ。
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