JP4974708B2 - 雑音抑圧装置、受信装置 - Google Patents
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Description
図1は、本発明に係る車載用等のAM/FM受信機100のシステム構成を示す図である。尚、図1に示すAM/FM受信機100は、受信アンテナ101で受信したAM/FM変調信号を周波数変換して得られたIF(Intermediate Frequency)信号をAD変換し、そのAD変換以降の処理をデジタル化したものである。
AD変換器105は、中間周波増幅器104より出力されるアナログ値のIF信号をデジタル値のIF信号へと変換するものである。
AM/FM検波部300は、AD変換器105から供給されるIF信号に基づいてAM/FM検波を行い、AM/FM復調信号Sを出力する。
雑音抑圧部400は、AM/FM検波部300から出力されたAM/FM復調信号Sに対して本発明に係る雑音抑圧を行う。尚、雑音抑圧の制御の詳細については後述する。
低周波増幅器107は、DA変換後のAM/FM復調信号(低周波信号)を増幅して、スピーカー108へと出力する。
===全体ブロック構成===
図2は、本発明の第1実施形態に係る雑音抑圧部400のブロック構成を示す図である。図2により、雑音抑圧部400は、ノッチフィルタ(又は、バンドストップフィルタとも呼ばれる。)410と、ライン・エンハンサ430と、を有する。尚、ノッチフィルタ410は、本発明に係る「第1のフィルタ部」の一実施形態であり、ライン・エンハンサ430のトランスバーサルフィルタ436は、本発明に係る「第2のフィルタ部」の一実施形態である。
<Gray−Markel方式>
本発明に係るノッチフィルタ410として、Gray−Markel方式を採用することができる。Gray−Markel方式とは、基本格子を複数段縦続接続して構成されるオールパス(All Pass)伝達関数を基準として、任意のフィルタ(ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ等)を設計する方式のことである。以下、図3、図4を用いて、Gray−Markel方式を採用したノッチフィルタ410について詳述する。
式(1)、式(2)を用いて、つぎの式(3)のマトリクスが得られる。
つぎに、図4に示すように、2つの基本格子4100a、4100bを2段縦続接続した場合を考える。この場合の行列表現としては、式(3)を用いてつぎの式(4)として表現される。尚、k1はm=1の場合のkmであり、k2はm=2の場合のkmである。
ここで、S1(z)はW1(z)と同一である場合、式(4)からつぎの式(5)が得られる。
尚、式(5)におけるd1、d2は、つぎの式(5’)のように定義した。
さらに、式(5)からつぎの式(6)が得られる。
尚、式(6)におけるD2(z)は、つぎの式(6’)のように定義した。
式(6)は、2次のオールポール(All Pole)伝達関数を表している。一方、2次のオールパス(All Pass)伝達関数A3(z)は、式(7)で表現される。
オールポール伝達関数の式(6)とオールパス伝達関数の式(7)の分母同士を対比すると同一であることが分かる。ところで、Gray−Markel方式では、式(7)に示すオールパス伝達関数を基準としてフィルタ係数を調整するものである。このため、Gray−Markel方式のフィルタは、基本的には、図3に示した基本格子4100を縦続接続し、最終段の出力を折り返して構成可能である。尚、この状態では、式(7)の分子に相当する構成が存在しないので、複数段縦続接続した基本格子4100の各出力Sm(z)を重み付けした上で総和をとる必要がある。この総和した結果が、Gray−Markel方式のフィルタの最終的な出力となる。
<Gray−Markel方式によるノッチフィルタ>
図5は、Gray−Markel方式による二次のノッチフィルタ410の構成を示した図である。
式(10)、(11)を整理すると、つぎの式(12)が得られる。
基本格子4100bの入出力関係は、入力側Wm(z)、Sm−1(z)とし、出力側をWm−1(z)、Sm(z)とすると、つぎの式(13)、式(14)で表現される。
式(13)、(14)を整理すると、つぎの式(15)が得られる。
従って、式(12)、式(15)により、基本格子4100a、4100bを二段縦続接続した構成の伝達関数は、つぎの式(16)によって表現される。尚、式(16)は、式(6)に示すオールポール伝達関数として表現できる。
増幅部4106a、4106bと、加算部4107は、ノッチフィルタ出力S1を定めるための構成ブロックである。1段目の基本格子4100aの出力、すなわち加算部4101bの出力Sm+1(z)は、ゲインg1の増幅部4106aにより増幅されて、加算部4107へと入力される。AM/FM復調信号Sは、ゲインg2の増幅部4106bにより増幅されて、加算部4107へと入力される。加算部4107は、増幅部4106a、4106bの各出力を加算した結果を、ノッチフィルタ出力S1として出力する。即ち、ノッチフィルタ出力S1は、つぎの式(17)で表現される。
S1 = g1・Sm+1(z)+g2・S ・・・(17)
ここで、式(16)及び式(17)により定まるノッチフィルタ410の伝達関数と、式(8)に示す一般的な伝達関数Hn(s)と、を対比して、所望の第1の中心周波数及び所望の第1の帯域幅に応じた極と零点から、式(16)に示すフィルタ係数α1、β1の各基準値を定めることができる。しかしながら、このようにフィルタ係数α1、β1を定めることは困難である。そこで、本実施形態のノッチフィルタ410は、所定の適応アルゴリズムに従ってフィルタ係数α1、β1を適応的に探索する最適化手法を採用し、フィルタ係数α1を調整するフィルタ係数調整部455aと、フィルタ係数β1を調整するフィルタ係数調整部455bを具備する。
E1=S−Sm+1(z)−S=−Sm+1(z) ・・・(18)
レジスタ453aは、フィルタ係数調整部455aがフィルタ係数α1を調整していく際の調整ステップC1を格納する。
フィルタ係数調整部455aは、AM/FM復調信号S、加算部452aより出力される誤差E1、レジスタ453aに格納される調整ステップC1が入力される。そして、誤差E1を最小化させるべく、フィルタ係数α1、ひいては第1の帯域幅を調整する。
α1(t+1)=α1(t)+C1・E1・S
=α1(t)−C1・Sm+1(z)・D1 ・・・(19)
式(19)の第2項目より、フィルタ係数α1は、誤差E1の勾配情報として“C1・S”を用いて、誤差E1を最小化させる値に調整される。尚、式(19)に示す“t”は、遅延部4554の遅延時間を表す。
E2=S+Sm+1(z)−S=Sm+1(z)・・・(20)
フィルタ係数調整部455bの演算式を表現すると、つぎの式(21)となる。
β1(t+1)=β1(t)+C2・E2・S
=β1(t)+C2・Sm+1(z)・D2 ・・・(21)
式(21)の第2項目より、フィルタ係数β1は、誤差E2の勾配情報として“C2・S”を用いて、誤差E2を最小化させる値に調整される。尚、式(21)に示す“t”は、式(19)と同様に、遅延部4554の遅延時間を表す。
図8は、本実施形態に係るライン・エンハンサ430の構成を示した図である。尚、図8に示すライン・エンハンサ430は、トランスバーサルフィルタ436と、適応アルゴリズムの一種であるLMS(Least Mean Square)アルゴリズムを用いた重み付け係数調整部(432a、432b、・・・)と、によって主に構成される。
S’(t)=γ1・S1(t−1)+γ2・S1(t−2)+・・・
=Σγi・S1(t−i) <i=1〜N> ・・・ (22)
式(22)より、トランスバーサルフィルタ436は、重み付け係数(γ1、γ2、・・・)とノッチフィルタ出力S1との離散的な畳み込み積分を演算していることが分かる。
E(t)=S1(t)−S’(t)
=S1(t)−Σγi・S1(t−i) ・・・(23)
各重み付け係数調整部(432a、432b、・・・)は、基本的には、誤差Eの二乗平均を最小化させるLMSアルゴリズムを具現化したものである。尚、LMSアルゴリズムは、RLSアルゴリズムが再帰的に過去の誤差Eを平均化したものを利用するのに対し、平均化しない瞬時の誤差Eを用いるので、計算量が少なく済むという利点を有する。
γ1(τ+1)=γ1(τ)+C5・E(τ)・S1(t−1)
=γ1(τ)+C5・{S1(τ)−Σγi・S1(τ−i)}・S1(t−1)
・・・ (24)
式(24)の第2項目より、重み付け係数γは、誤差Eの自乗平均を最小化させる値に調整される。
図9は、本発明の第2実施形態に係る雑音抑圧部500のブロック構成を示す図である。図9に示すとおり、雑音抑圧部500は、ノッチフィルタ510と、バンドパスフィルタ520と、ライン・エンハンサ530と、を有する。即ち、本実施形態の雑音抑圧部500は、本発明の第1実施形態に係る雑音抑圧部400と相違して、ノッチフィルタ510と、ライン・エンハンサ530と、の間にバンドパスフィルタ520を設けた点にある。尚、バンドパスフィルタ520は、本発明に係る「第3のフィルタ部」の一実施形態である。
S2 = g3・S1 − g4・Sm+1(z) ・・・ (26)
式(25)と式(26)とを対比して、加算部4101fの出力Sm+1(z)は互いに逆極性であり、バンドパスフィルタ520の特性は、ノッチフィルタ510の特性を裏返したものであることが分かる。ここで、式(25)及び式(26)により定まるバンドパスフィルタ520の伝達関数と、式(9)に示す一般的な伝達関数Hb(s)と、を対比して、所望の第2の中心周波数及び所望の第2の帯域幅に応じた極と零点から、式(25)に示すフィルタ係数α2、β2の各基準値を定めることができる。しかしながら、フィルタ係数α1、β1の場合と同様、フィルタ係数α2、β2それぞれの基準値を定めることは困難である。そこで、本実施形態のバンドパスフィルタ520は、所定の適応アルゴリズムに従ってフィルタ係数α2、β2を適応的に探索する最適化手法を採用し、フィルタ係数α2を調整するフィルタ係数調整部525a、フィルタ係数β2を調整するフィルタ係数調整部525bを具備する。
図12(a)は、雑音が重畳された入力信号の波形を示した図であり、図12(b)は、本発明によって雑音が抑圧された後の入力信号の波形を示した図である。
図13(a)は、雑音が重畳された入力信号の波形を示した図であり、図13(b)は、従来のスペクトルサブトラクション法によって雑音が抑圧された後の入力信号の波形を示した図であり、図13(c)は、本発明によって雑音が抑圧された後の入力信号の波形を示した図である。
図12(a)と図12(b)との対比により、本発明によって入力信号に重畳された雑音が確かに抑圧されていることが分かる。また、図13(b)と図13(c)との対比により、従来のスペクトルサブトラクション法では雑音が抑圧されたことに伴い入力信号が減衰しているのに対し、本発明では入力信号に影響を与えることなく雑音が抑圧されていることが分かる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
101 受信アンテナ
102 高周波増幅器
103 周波数変換器
104 中間周波増幅器
105 AD変換器
106 DA変換器
107 低周波増幅器
108 スピーカー
200 オーディオ用DSP
300 AM/FM検波部
400、500 雑音抑圧部
410、510 ノッチフィルタ
520 バンドパスフィルタ
430、530 ライン・エンハンサ
4100、4100a、4100b 基本格子
4101a、4101b、4101c、4101d、4105a、4105b、451a、451b、4107、452a、452b、4553、4323a、4323b、434、435、521a、521b、5207、522a、522b、5207 加算部
4102a、4102b、4102c、4102d、4104a、4104b、4106a、4106b、4551、4552、4321a、4321b、4322a、4322b、433a、433b、5206a、5206b 乗算部
4103、4103a、4103b、4554、431a、431b、4324a、4324b 遅延部
453a、453b、439、523a、523b レジスタ
455a、455b、525a、525b フィルタ係数調整部
431 遅延線
800 プロセッサ
810 ROM
Claims (6)
- 入力信号に重畳された雑音を抑圧する雑音抑圧装置において、
前記入力信号が入力され、前記入力信号に重畳された雑音に含まれる所定のパルス性ノイズを減衰させた第1のフィルタ出力を生成するバンドストップフィルタと、
前記第1のフィルタ出力が入力され、前記入力信号に重畳された雑音を除去すべき所望の周波数帯域を通過させた第2のフィルタ出力を生成するバンドパスフィルタと、
前記第2のフィルタ出力が入力され、所定の重み付け係数と前記第2のフィルタ出力との畳み込み積分を行い第3のフィルタ出力を生成するトランスバーサルフィルタと、
前記第2のフィルタ出力と前記第3のフィルタ出力との間の誤差の二乗平均を最小化させるアルゴリズムにより、前記重み付け係数を調整する重み付け係数調整部と、
を有することを特徴とする雑音抑圧装置。 - 請求項1に記載の雑音抑圧装置において、
前記バンドストップフィルタは、
Gray−Markel方式の基本格子を2段縦続接続して構成され、
前記入力信号と、前記入力信号に1段目の基本格子の出力を加算した信号との間の誤差を最小化させるアルゴリズムにより、阻止帯域の中心周波数を可変させるべく第1のフィルタ係数の調整を行う第1の中心周波数可変部を有すること、を特徴とする雑音抑圧装置。 - 請求項1に記載の雑音抑圧装置において、
前記バンドストップフィルタは、
Gray−Markel方式の基本格子を2段縦続接続して構成され、
前記入力信号と、前記入力信号から1段目の基本格子の出力を減算した信号との間の誤差を最小化させるアルゴリズムにより、阻止帯域の帯域幅を可変させるべく第1のフィルタ係数の調整を行う第1の帯域幅可変部を有すること、を特徴とする雑音抑圧装置。 - 請求項1に記載の雑音抑圧装置において、
前記バンドパスフィルタは、
Gray−Markel方式の基本格子を2段縦続接続して構成され、
前記第1のフィルタ出力と、前記第1のフィルタ出力に1段目の基本格子の出力を加算した信号との間の誤差を最小化させるアルゴリズムにより、通過帯域の中心周波数を可変させるべく第2のフィルタ係数の調整を行う第2の中心周波数可変部を有すること、を特徴とする雑音抑圧装置。 - 請求項1に記載の雑音抑圧装置において、
前記バンドパスフィルタは、
Gray−Markel方式の基本格子を2段縦続接続して構成され、
前記第1のフィルタ出力と、前記第1のフィルタ出力から1段目の基本格子の出力を減算した信号との間の誤差を最小化させるアルゴリズムにより、通過帯域の帯域幅を可変させるべく第2のフィルタ係数の調整を行う第2の帯域幅可変部を有すること、を特徴とする雑音抑圧装置。 - アンテナで受信した変調された受信信号を復調する受信装置において、
前記受信信号が入力され、前記受信信号に重畳された雑音に含まれる所定のパルス性ノイズを減衰させた第1のフィルタ出力を生成するバンドストップフィルタと、
前記第1のフィルタ出力が入力され、前記受信信号に重畳された雑音を除去すべき所望の周波数帯域を通過させた第2のフィルタ出力を生成するバンドパスフィルタと、
前記第2のフィルタ出力が入力され、所定の重み付け係数と前記第2のフィルタ出力との畳み込み積分を行い第3のフィルタ出力を生成するトランスバーサルフィルタと、
前記第2のフィルタ出力と前記第3のフィルタ出力との間の誤差の二乗平均を最小化させるアルゴリズムにより、前記重み付け係数を調整する重み付け係数調整部と、
を有することを特徴とする受信装置。
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