JP3920233B2 - ディップフィルタの周波数特性決定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この出願に係る発明は、音響設備が配置された空間において共鳴を防止するために用いられるディップフィルタの周波数特性を決定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、ホールや体育館等にスピーカ等の音響設備を設置し、スピーカから拡声音を放射するとき、この空間(音響設備が配された拡声空間)の共鳴周波数のために、スピーカからの音楽や話声が聞き取りにくくなることがある。つまり、スピーカからの拡声音に共鳴周波数の成分が多く含まれると、該拡声空間においてこの成分の周波数で共鳴が起こるのである。共鳴音は「ウォンウォン・・・」とか「ファンファン・・・」というように聞こえる。この共鳴音は、本来、スピーカから放射しようとする音ではなく、スピーカからの音楽や話声を聞き取りにくくする。
【0003】
このことを防止するには、拡声空間における共鳴周波数を検出し、音響設備においてスピーカよりも前段に、この共鳴周波数の成分を除去するようなディップフィルタを設けるとよい。するとこの拡声空間において共鳴が起こりにくくなり、スピーカからの音楽や話声が聞きやすくなる。
【0004】
ディップフィルタによってかかる効果を得るためには、この拡声空間の共鳴周波数を除去周波数とするようにディップフィルタの周波数特性を決定しなければならない。
【0005】
従来は、音響設備のオペレータや測定者が自らの聴覚に頼ってスピーカの拡声音や共鳴音を聞き分けて共鳴周波数を判断し、この共鳴周波数を除去周波数としてディップフィルタに設定していた。そして、共鳴が生じない程度にディップの減衰レベル(深さ)やその尖鋭度(Q)を設定していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような聞き分けによって共鳴周波数を知ることが出来たとしても、ディップフィルタの周波数特性を設定するのは容易ではない。特に、ディップの減衰レベル(深さ)や尖鋭度(Q)を適切に設定することは容易ではない。つまり、共鳴防止のみを優先するのであれば、ディップの減衰レベルをなるべく大きくし(深さをなるべく深くし)、尖鋭度をなるべく低く(Qをなるべく小さく)すればよいのであるが、減衰レベルが大きすぎたり尖鋭度が低くすぎると、音響装置の音質を損ねたり、スピーカからの音楽や話声が聞きとりにくくなったりする。
【0007】
このようなことが生じないように適切にディップの減衰レベルや尖鋭度を設定するには、ある程度の熟練、経験を要する。また、このような熟練、経験に頼る設定であれば、必ずしもこれらのファクター(ディップの減衰レベルや尖鋭度)を適切に設定することはできない。さらにこのことが、拡声空間等に設置される音響設備の自動測定・自動調整のための障害にもなっていた。
【0008】
本願発明は、経験や熟練を必要とすることなく、ディップフィルタの特性を適切に決定することができるような、ディップフィルタの周波数特性決定方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本願発明に係るディップフィルタの周波数特性決定方法は、共鳴空間で検出された共鳴周波数をディップの中心周波数として決定し、該共鳴空間に配置されたスピーカから所定の測定用信号を拡声させ、該共鳴空間に配置されたマイクロホンによって受音して得られる測定値に基づき、基礎振幅周波数特性を求め、該測定値に基づき、該基礎振幅周波数特性よりも周波数軸上での平滑度が大きい目標振幅周波数特性を求め、該中心周波数およびその近傍の周波数における、該基礎振幅周波数特性と該目標振幅周波数特性との差に基づき、該ディップの減衰レベル および/または 尖鋭度を決定する(請求項1)。
【0010】
かかる方法によれば、基礎振幅周波数特性よりも周波数軸上での平滑度が大きい振幅周波数特性を目標振幅周波数特性とする。よって、目標振幅周波数特性は客観的に求められ、これに基づいてディップの減衰レベルや尖鋭度も客観的に決定することができる。
【0011】
上記方法において、目標振幅周波数特性はいかなる方法によって平滑化されたものであってもよいが、測定された振幅周波数特性を周波数軸上で移動平均することによって平滑化されたものであってもよい(請求項2)。
【0012】
また上記方法において、第1面積に第2面積が略一致するように該ディップの減衰レベル および/または 尖鋭度を決定し、該第1面積は、振幅レベルを表す対数軸を縦軸とし周波数を表す軸を横軸とした振幅周波数特性図上に該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とを表したときの、第1周波数から第2周波数までの周波数範囲において、該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とに囲まれるエリアの面積であり、該第1周波数は、該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とが交差し、かつ、該ディップの中心周波数よりも低い周波数のうちの、該ディップの中心周波数に最も近い周波数であり、該第2周波数は、該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とが交差し、かつ、該ディップの中心周波数よりも高い周波数のうちの、該ディップの中心周波数に最も近い周波数であり、該第2面積は、振幅レベルを表す対数軸を縦軸とし周波数を表す軸を横軸とした振幅周波数特性図上に該ディップの特性を表したときの、該ディップの面積であるようにしてもよい(請求項3)。
【0013】
かかる方法によれば、目標振幅周波数特性曲線からの基礎振幅周波数特性曲線の上方へのはみ出し部分の面積と、ディップの面積とを略一致させるので、基礎振幅周波数特性にディップ特性を作用させると、目標振幅周波数特性に近い特性となる。
【0014】
また上記方法において、該ディップの減衰レベルを、該ディップの中心周波数における該基礎振幅周波数特性と該目標振幅周波数特性の振幅レベル差に略一致するように決定し、該ディップの尖鋭度を、該第1面積に該第2面積が略一致するように決定してもよい(請求項4)。
【0015】
基礎振幅周波数特性に、かかる方法で決定されたディップ特性を作用させると、目標振幅周波数特性に極めて近い特性となる。
【0016】
また上記方法において、該第1周波数から該第2周波数までの周波数範囲に、該共鳴空間で検出された複数の共鳴周波数が含まれるとき、該複数の共鳴周波数の内の、第2の振幅周波数特性の振幅レベルが最も大きな共鳴周波数を、該ディップの中心周波数として決定し、それ以外の共鳴周波数を該ディップの中心周波数とはしないように決定し、該第2の振幅周波数特性は、該スピーカから該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を拡声させて、該マイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性であってもよい(請求項5)。
【0017】
かかる方法によれば、ディップフィルタに必要以上の数のディップが設定されることを回避できる。
【0018】
また上記方法において、第1の振幅周波数特性と第2の振幅周波数特性との比較に基づいて、該共鳴空間の共鳴周波数を検出し、該第1の振幅周波数特性は、該測定値に基づいて得られる振幅周波数特性であり、該第2の振幅周波数特性は、該スピーカから該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を拡声させて、該マイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性であるようにしてもよい(請求項6)。
【0019】
かかる方法における第2の振幅周波数特性は、マイクロホンの出力信号がスピーカへ入力されるというフィードバックループを含む系の振幅周波数特性である。このフィードバックループにより、第2の振幅周波数特性では、第1の振幅周波数特性に比べ、共鳴空間の共鳴の特性がより大きく強調されて表れる。よって、第1の振幅周波数特性と第2の振幅周波数特性とを比較することにより、共鳴空間の共鳴周波数を正確に検出することができる。
【0020】
また上記方法において、該第1の振幅周波数特性と該第2の振幅周波数特性との差分から、該第1の振幅周波数特性に比べて該第2の振幅周波数特性の方が振幅が大きいピーク点の周波数を該共鳴空間の共鳴周波数として検出するようにしてもよい(請求項7)。
【0021】
また上記方法において、該測定用信号としては正弦波スイープ信号が特に有効である(請求項8)。
【0022】
【発明の実施の形態】
本願発明の一実施形態たるディップフィルタの周波数特性決定方法を、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1は、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40に設置された音響システムの概略構成図である。この音響システムは、音源装置2と、ディップフィルタ4と、アンプ12と、スピーカ13とを備えている。音源装置2は、例えば音楽CDを再生するためのCDプレーヤのような演奏器機であってもよいし、マイクロホンであってもよい。図1では音源装置2を拡声空間40の外側に表しているが、音源装置2は拡声空間40内に設置されていてもよい。例えば、音源装置2は、拡声空間40内に設置されたマイクロホンであってもよい。ディップフィルタ4は、音源装置2からの信号から特定の周波数の信号成分を除去してアンプ12に送出するためのものである。ディップフィルタ4からの信号はアンプ12で増幅されてスピーカ13に送出され、拡声空間40においてスピーカ13から拡声される。
【0024】
この拡声空間40が共鳴周波数を有するとき、スピーカ13からの拡声音に共鳴周波数の成分が多く含まれると、拡声空間40において共鳴が起こり、スピーカ13からの音楽や話声が聞き取りにくくなる。しかし、この音響システムにおいて、ディップフィルタ4に適切な周波数特性を設定すると、スピーカ13からの拡声音の音質を損なうことなく、拡声空間40における共鳴を防止することができる。
【0025】
本実施形態では、ディップフィルタ4に設定すべき周波数特性を決定するのであるが、まず最初に図2〜5を参照しつつ、共鳴空間40において共鳴周波数を検出する方法・装置を説明する。
【0026】
図2は、拡声空間(例えば、コンサートホールや体育館)40において振幅周波数特性を測定するためのシステムAの概略ブロック図である。このシステムAは、測定用信号を発する音源手段たる発信器11と、この発信器11が発する信号を入力して電力増幅するアンプ12と、このアンプ12の出力信号を入力して拡声するスピーカ13と、スピーカ13が放射する拡声音を受音するマイクロホン14と、マイクロホン14の受音信号を入力する測定器15とを備える。マイクロホン14は騒音計であってもよい。
【0027】
スピーカ13とマイクロホン14とは、拡声空間40内に配置されている。マイクロホン14は拡声空間40内において、スピーカ13から充分に距離を置いている。マイクロホン14は、スピーカ13からの直接音に対して、拡声空間40内における反射音を充分大きなレベルで受音できる位置に配置されている。
【0028】
発信器11は測定用信号として、周波数が時間的に変化するような正弦波信号を発する。つまり発信器11は、正弦波スイープ信号を発信する。この正弦波スイープ信号では、周波数スイープ中の各時点において正弦波のレベルは一定である。
【0029】
測定器15は、時間的に中心周波数が変化するようなバンドパスフィルタを有している。このバンドパスフィルタは、発信器11が発信する正弦波スイープ信号の周波数の時間的変化に対応して、中心周波数を時間的に変化させる。よって測定器15は、マイクロホン14から入力する受音信号のレベルをこのバンドパスフィルタを介して検出することにより、その時点における周波数の振幅特性を測定することができる。
【0030】
図3は、拡声空間40において振幅周波数特性を測定するためのシステムBの概略ブロック図である。このシステムBは、図2のシステムAに、ある信号の合成のための経路を付加しただけのものである。つまり図3のシステムBは、測定用信号を発する音源手段たる発信器11と、ミキシング装置16と、ミキシング装置16の出力信号を入力してこの信号を電力増幅するアンプ12と、このアンプ12の出力信号を入力して拡声するスピーカ13と、スピーカ13が放射する拡声音を受音するマイクロホン14と、マイクロホン14の受音信号を入力する測定器15とを備える。
【0031】
スピーカ13とマイクロホン14とは、拡声空間40内において、図2のシステムAにおけると同一の位置に配置されている。図3のシステムBにおける、発信器11、アンプ12、スピーカ13、マイクロホン14、測定器15は、図2のシステムAにおけるこれら器機と同一のものである。
【0032】
図3のシステムBが図2のシステムAと相違する点は、図2のシステムAでは、アンプ12が発信器11から信号を入力していたのに対し、図3のシステムBでは、アンプ12がミキシング装置16から信号を入力している点である。図3のミキシング装置16は、発信器11からの測定用信号(正弦波スイープ信号)と、マイクロホン14からの受音信号とを入力し、これら入力した信号を合成(ミキシング)し、この合成信号(ミキシング信号)を出力する。
【0033】
以上、図2のシステムAによって拡声空間40の振幅周波数特性を測定する方法、および、図3のシステムBによって拡声空間40の振幅周波数特性を測定する方法を説明したが、以下では、図2のシステムAによって測定された拡声空間40の振幅周波数特性を第1の振幅周波数特性と言い、図3のシステムBによって測定された拡声空間40の振幅周波数特性を第2の振幅周波数特性と言う。
【0034】
図4は、図2のシステムAによって測定された拡声空間40の第1の振幅周波数特性と、図3のシステムBによって測定された拡声空間40の第2の振幅周波数特性とを模式的に示す特性図である。図4においては縦軸、横軸とも対数軸であり、縦軸は振幅レベルを横軸は周波数を示す。なお、「振幅レベル」とは、ある振幅値(振幅の大きさ)の基準値(基準の大きさ)に対する比の対数であり、通常は「dB」を単位として表記する。図4において実線で示す曲線Caが、図2のシステムAによる第1の振幅周波数特性であり、破線で示す曲線Cbが、図3のシステムBによる第2の振幅周波数特性である。
【0035】
図2のシステムAも図3のシステムBも、多数の周波数ポイントにおける振幅値を測定する。例えば測定対象となる周波数範囲において、1/192オクターブ間隔で振幅値を測定する。この多点(多数の周波数ポイント)での測定値を周波数軸上で平滑化せずに、拡声空間40の第1,第2の振幅周波数特性として曲線Ca,Cbに表しても良いし、何らかの方法によって周波数軸上で平滑化して、曲線Ca,Cbに表しても良い。このときの平滑化の方法には種々あるが、例えば移動平均によって平滑化してもよい。例えば、多数の周波数ポイントの測定値に対して周波数軸上で9ポイントの移動平均を施してもよい。なお、曲線Caとして平滑化されたものを用いる場合は、曲線Cbについても平滑化されたものを用いるのが好ましい。この場合にはさらに、曲線Caに関する平滑化の方法と同一の平滑化の方法によって曲線Cbを得ることが好ましい。例えば曲線Caを、周波数軸上での9ポイントの移動平均により得るのであれば、曲線Cbも、周波数軸上での9ポイントの移動平均により得るのが好ましい。
【0036】
図4の曲線Caの第1の振幅周波数特性は、アンプ12とスピーカ13とマイクロホン14とによる音響系の特性のみならず、拡声空間40の共鳴の特性をも包含するものである。図4の曲線Cbの第2の振幅周波数特性も、アンプ12とスピーカ13とマイクロホン14とによる音響系の特性のみならず、拡声空間40の共鳴の特性をも包含するものであるが、マイクロホン14の出力信号がアンプ12に入力されてスピーカ13から出力されるというフィードバックループにより、拡声空間40の共鳴の特性が曲線Caの第1の振幅周波数特性よりも大きく強調されて表れている。よって、両曲線(曲線Caと曲線Cb)との差から、拡声空間40の共鳴の特性を知ることができる。
【0037】
図5に示す周波数特性曲線Ccは、図4の曲線Cbの特性から曲線Caの特性を差し引いた特性、つまり、曲線Caの第1の振幅周波数特性と曲線Cbの第2の振幅周波数特性との振幅レベル差を示すものである。図5の曲線Ccにおいて正の方向にピークを示す周波数は、周波数f1、周波数f2 および 周波数f3である。このなかで、ピークの値が大きいほど、拡声空間40の共鳴周波数である可能性が高い。よってピーク値の最も大きな周波数f3が、拡声空間40の共鳴周波数である可能性が最も高い。また、周波数f2は、その次にピーク値が大きいので、周波数f2は、拡声空間40の共鳴周波数である可能性が、その次に高い。拡声空間40における共鳴周波数の数は一のみとは限らず、複数である場合も多い。よって、周波数f1、f2、f3のうちの一のみが共鳴周波数である可能性もあるし、そのうちの複数が共鳴周波数である可能性もあるが、図5の特性から、共鳴周波数たる可能性のある周波数を客観的に選び出すことができる。
【0038】
以上、図2〜5を参照しつつ、共鳴空間40において共鳴周波数を検出する方法・装置を説明した。
【0039】
次に、このようにして検出された共鳴周波数(周波数f1,f2,f3)に基づいて、いかにして図1の音響システムのディップフィルタ4の周波数特性を決定するかを説明する。
【0040】
図4の曲線Caは、図2のシステムAによって得た拡声空間40の第1の振幅周波数特性曲線であり、上述のようにこの曲線Caを用いて共鳴周波数を検出した。この曲線Caの特性は、以下で説明する図1の音響システムのディップフィルタ4の周波数特性決定のためにも用いる。以下、この曲線Caの特性を「基礎振幅周波数特性」という。なお、この「基礎振幅周波数特性」は、図2のシステムAによる多数の周波数ポイントでの測定値を周波数軸上で平滑化したものであってもよいし、平滑化していないものであってもよい。
【0041】
先に、図5に示す周波数特性曲線Ccから、正の方向にピークを示す周波数として、周波数f1、周波数f2 および 周波数f3を得た。これら周波数が拡声空間40の共鳴周波数である可能性が高い。この内から所定数の周波数を、ディップフィルタ4に除去周波数として設定すべきディップの中心周波数の候補として選ぶ。
【0042】
具体的には、これら周波数の内から、図4における曲線Cbの振幅レベルが大きなものから順番に、候補の周波数を選ぶ。
【0043】
図6は、図4から曲線Cbのみを取り出した特性図である。図6においては縦軸、横軸とも対数軸であり、縦軸は振幅レベルを横軸は周波数を示す。図6の曲線Cbでは、周波数f2における振幅レベルが最も大きく、f3における振幅レベルがその次に大きく、f1における振幅レベルがその次に大きい。ここで、候補として選ぶ周波数の数を「3」とすると、周波数f1、周波数f2、周波数f3のすべてが、候補の周波数となる。
【0044】
なお、検出された共鳴周波数が多数ある場合には、その全ての周波数をディップフィルタ4に除去周波数として設定すべきディップの中心周波数の候補として残すのではなく、所定数の周波数のみを候補として残すようにしてもよい。例えば、検出された共鳴周波数が多数(例えば200以上)ある場合に、120の周波数のみを候補として残し、残りの周波数は候補から除外するようにしてもよい。このとき、いかなる周波数を候補として残すかは、例えば図6の曲線Cbにおいて、振幅レベルの大きなものから優先的に残すようにすればよい。
【0045】
次に、これら候補の周波数(周波数f1,f2,f3)に候補の順位を付ける。順位は、図5の周波数特性曲線Ccにおける振幅レベルが大きいものから高く付けるようにする。周波数f1,f2,f3のうち、図5の曲線Ccにおける振幅レベルが最も大きいのは周波数f3であり、その次に振幅レベルが大きいのは周波数f2であり、その次に振幅レベルが大きいのは周波数f1である。よって、この時点では、周波数f3が第1候補の周波数となり、周波数f2が第2候補の周波数となり、周波数f1が第3候補の周波数となる。
【0046】
次に、図2のシステムAが多数の周波数ポイントで測定した測定値から、目標振幅周波数特性を求める。目標振幅周波数特性は、図2のシステムAが多数の周波数ポイントで測定した測定値を周波数軸上で平滑化して得る。平滑化の方法としては、例えば周波数軸上での移動平均を採用することができる。先に、図4の曲線Ca(基礎振幅周波数特性)は、図2のシステムAが多数の周波数ポイントで測定した測定値を周波数軸上で平滑化したものであってもよいし、平滑化していないものであってもよいことを述べた。基礎振幅周波数特性は、平滑化したものであっても平滑化したのものでなくてもよいが、目標振幅周波数特性は平滑化により求める。目標振幅周波数特性は、基礎振幅周波数特性よりも周波数軸上での平滑度が大きくなるような平滑化により求める。基礎振幅周波数特性が、周波数軸上の例えば9ポイントの移動平均によって得たものであるとすれば、目標振幅周波数特性は、9ポイントを越えるウィンドウ幅(例えば65ポイント)の移動平均によって得るようにすればよい。このようにして目標振幅周波数特性は、経験に頼ることなく、客観的に得ることができる。
【0047】
図7の特性図では、図4から曲線Caを取り出して記載している。図7においては縦軸、横軸とも対数軸であり、縦軸は振幅レベルを横軸は周波数を示す。図7の曲線Caは図4の曲線Caと同一のものである。図7の特性図には、破線による曲線Cdが記載されているが、これ(曲線Cd)は、図2のシステムAで測定された多数の周波数ポイントでの振幅値を、周波数軸上で移動平均して得た曲線である。このときの移動平均のためのウィンドウ幅は比較的大きいので、曲線Cd(目標振幅周波数特性)は曲線Ca(基礎振幅周波数特性)に比べてかなり平滑度が大きい。
【0048】
先に、周波数f3を第1候補の周波数として、周波数f2を第2候補の周波数として、周波数f1を第3候補の周波数として選んだが、次に、これら候補の周波数から、目標振幅周波数特性(曲線Cd)の振幅レベルよりも基礎振幅周波数特性(曲線Ca)の振幅レベルの方が小さいような周波数を候補から除外する。図7から理解されるように、周波数f1においては、目標振幅周波数特性(曲線Cd)の振幅レベルよりも、基礎振幅周波数特性(曲線Ca)の振幅レベルの方が小さい。よって、周波数f1は候補の周波数から除外する。その結果、候補の周波数は周波数f2と周波数f3のみとなる。周波数f3が第1候補の周波数として、周波数f2が第2候補の周波数として残る。
【0049】
次に、図7に基づき、各候補の周波数が含まれる周波数範囲であって、目標振幅周波数特性の曲線Cdからの基礎振幅周波数特性の曲線Caが周波数軸上で連続して正の方向にはみ出している周波数範囲を検出する。第1候補の周波数は周波数f3であるが、図7において、周波数f3では目標振幅周波数特性よりも基礎振幅周波数特性の振幅レベルの方が大きい。図7の特性図の周波数軸上、周波数f3の前後において、基礎振幅周波数特性の曲線Caと目標振幅周波数特性の曲線Cdとが交差する点を検出すると、周波数f31と周波数f32とが検出される。周波数f31および周波数f32において、基礎振幅周波数特性の曲線Caと目標振幅周波数特性の曲線Cdとが交差している。周波数f31は、周波数f3よりも低い周波数領域における基礎振幅周波数特性の曲線Caと目標振幅周波数特性の曲線Cdとの交差点のうちで、周波数f3に最も近い周波数である。また、周波数f32は、周波数f3よりも高い周波数領域における基礎振幅周波数特性の曲線Caと目標振幅周波数特性の曲線Cdとの交差点のうちで、周波数f3に最も近い周波数である。
【0050】
このようにして、候補の周波数f3が含まれ、かつ、目標振幅周波数特性の曲線Cdから基礎振幅周波数特性の曲線Caが周波数軸上で連続して正の方向に(上方に)はみ出している周波数範囲(周波数f31から周波数32までの範囲)を検出したら、次に、この周波数範囲に、候補となる周波数が2以上含まれていないか否かを調べる。仮に、2以上含まれている場合には、その内の1の周波数のみを候補として残し、他の周波数を候補から除外する。いかなる周波数を候補として残すかは、図6に示す特性(第2の振幅周波数特性(曲線Cb))の振幅レベルの大きさに基づいて決定する。つまり、第2の振幅周波数特性(曲線Cb)の振幅レベルが最も大きな周波数のみを候補として残すのである。図7において、周波数f31から周波数f32までの周波数範囲には、候補となる周波数は周波数f3が含まれるのみであるから、候補から除外される周波数はない。
【0051】
同様のことを、候補である周波数f2についても行う。つまり、周波数f2が含まれる周波数範囲であって、目標振幅周波数特性(曲線Cd)からの基礎振幅周波数特性(曲線Ca)が周波数軸上で連続して正の方向にはみ出している周波数範囲をまず検出する。図7に示されるように、周波数f21から周波数f22の周波数範囲において、目標振幅周波数特性(曲線Cd)からの基礎振幅周波数特性(曲線Ca)が周波数軸上で連続して正の方向にはみ出している。また、この周波数範囲には周波数f2が含まれる。次に、この周波数範囲に、候補となる周波数が2以上含まれていないかを見ると、この周波数範囲には周波数f2以外に候補となる周波数はない。よって、この周波数範囲には候補から除外される周波数はない。
【0052】
なお、このような周波数範囲に候補となる周波数が複数存在する場合を、図8を参照して説明する。図8の特性図における曲線Ceが基礎振幅周波数特性を示す曲線であり、曲線Cfが目標振幅周波数特性を示す曲線であるとする。両曲線は周波数f61と周波数f62とで交差しており、この周波数範囲(周波数f61から周波数f62までの周波数範囲)に候補となる3つの周波数(周波数f51、周波数f52 および 周波数f53)が存在するとする。
【0053】
一方、図8において、曲線Cnは第2の振幅周波数特性、つまり、共鳴空間40において、スピーカ13から測定用信号(正弦波スイープ信号)とマイクロホン14の出力信号との合成信号を拡声させて、マイクロホン14によって受音して得られる振幅周波数特性である。周波数f51、周波数f52 および 周波数f53の中では、第2の振幅周波数特性(曲線Cn)の振幅レベルは、周波数f51におけるものが最も大きい。よって、周波数f51のみを候補の周波数として残し、他の周波数(周波数f52と周波数f53)を候補から除外するのである。これにより、必要以上の数の周波数が候補の周波数として残ることが防止される。ひいては、必要以上の数のディップがディップフィルタ4に設定されることが防止される。
【0054】
なお、もしも候補の周波数(周波数f1、周波数f2、周波数f3)に、基礎振幅周波数特性(曲線Ce)と第2の振幅周波数特性(曲線Cn)の振幅レベル差が所定レベル以下(例えば1dB以下)のものがあれば、その周波数はディップフィルタ4のディップの中心周波数として設定されないようにする。よって、周波数f51、周波数f52 および 周波数f53の中では、周波数f51における第2の振幅周波数特性(曲線Cn)の振幅レベルが最も大きくても、周波数f51における基礎振幅周波数特性(曲線Ce)と第2の振幅周波数特性(曲線Cn)の振幅レベル差が所定レベル以下(例えば1dB以下)であれば、周波数f51を候補の周波数から除外し、第2の振幅周波数特性(曲線Cn)の振幅レベルがその次に大きく周波数f52を候補の周波数として残すようにする。もちろん周波数f53は候補の周波数から除外される。
【0055】
以上、ある周波数範囲に候補となる3つの周波数が存在する場合を、図8を参照して説明した。
【0056】
図7に基づき、候補となる周波数が含まれる周波数範囲であって、目標振幅周波数特性(曲線Cd)から基礎振幅周波数特性(曲線Ca)が周波数軸上で連続して正の方向にはみ出している周波数範囲をまず検出した。そして、検出された各周波数範囲には、候補となる周波数は2以上は含まれておらず、よって、候補の周波数f2と周波数f3は、いずれも除外されずに候補として残ることを説明した。
【0057】
次に、このようにして残った周波数の候補に対して、候補順位の付け替えを行う。付け替えは次のようにして行う。つまり、候補の周波数における基礎振幅周波数特性(曲線Ca)と目標振幅周波数特性(曲線Cd)の振幅レベル差が大きいものほど高い順位となるように、順位を付け替えるのである。図7から理解されるように、周波数f2における基礎振幅周波数特性(曲線Ca)と目標振幅周波数特性(曲線Cd)の振幅レベル差は2.5dBであり、周波数f3における基礎振幅周波数特性(曲線Ca)と目標振幅周波数特性(曲線Cd)の振幅レベル差は1.8dBである。よって、候補の順位が付け替えられ、周波数f2が第1の候補となり、周波数f3が第2の候補となる。
【0058】
第1の候補である周波数f2はディップフィルタ4にディップの中心周波数(除去周波数)として設定されることが決定された。次に、この除去周波数(周波数f2)におけるディップの減衰レベル(深さ)と尖鋭度(Q)とを決定する手順を説明する。
【0059】
まず、図7の特性図上で、周波数f21から周波数f22までの周波数範囲において基礎振幅周波数特性の曲線Caと目標振幅周波数特性の曲線Cdとで囲まれるエリアS1の面積を検出する。図7においてエリアS1には斜線が施されているが、検出されたエリアS1の面積をここでT1とする。
【0060】
次に、周波数f2での目標振幅周波数特性(曲線Cd)と基礎振幅周波数特性(曲線Ca)の振幅レベル差の大きさを検出して、この大きさ(差の大きさ)をディップフィルタ4のディップの減衰レベル(深さ)として想定する。周波数f2においては、目標振幅周波数特性(曲線Cd)と基礎振幅周波数特性(曲線Ca)の振幅レベル差は2.5dBであるので、ディップの深さはまず2.5dBに想定される。
【0061】
次に、ディップの尖鋭度(Q)をまず40と想定する。そしてこの想定されたディップの深さと尖鋭度によって得られるディップの形状(振幅周波数特性図上でのディップの形状)からディップの面積を求める。
【0062】
図9の特性図では、中心周波数が周波数f2であるディップの振幅周波数特性を曲線Cgで表している。図9においては縦軸、横軸とも対数軸であり、縦軸は振幅レベルを横軸は周波数を示す。この図において多数の平行する斜線が施されたエリアS2の面積が、ここでいうディップの面積である。ここで、想定されたディップの深さと尖鋭度から求められるディップの面積をT2とする。そして、面積T1と面積T2とを比較する。面積T2が面積T1に等しいかそれ以上である場合は、そのときに想定されている減衰レベルと尖鋭度とをディップフィルタ4の除去周波数におけるディップの減衰レベルおよび尖鋭度として決定する。
【0063】
面積T2が面積T1よりも小さい場合は、尖鋭度を0.1だけ小さくして改めて面積T2を求める。そして再度、面積T1と面積T2とを比較する。面積T2が面積T1に等しいかそれ以上である場合は、そのときに想定されている減衰レベルと尖鋭度とをディップフィルタ4の除去周波数におけるディップの減衰レベルおよび尖鋭度として決定するが、面積T2が面積T1よりも小さい場合は、尖鋭度をさらに0.1だけ小さくして改めて面積T2を求め、再度、面積T1と面積T2とを比較する。以降同様に、面積T2が面積T1に等しいかそれ以上になるまで、尖鋭度を0.1づつ減少させてゆき、面積T2が面積T1に等しいかそれ以上になったときの減衰レベルと尖鋭度をディップフィルタ4の除去周波数におけるディップの減衰レベルおよび尖鋭度として決定する。
【0064】
なお、尖鋭度を所定値(例えば1.5)まで減少させても面積T2が面積T1よりも小さいままであれば、以降は尖鋭度は減少させずに、減衰レベルを所定値づつ(例えば0.5dBづつ)増加させてゆく。そして、面積T2が面積T1に等しいかそれ以上になったときの減衰レベルと尖鋭度をディップフィルタ4の除去周波数におけるディップの減衰レベルおよび尖鋭度として決定する。
【0065】
さらに、減衰レベルを所定値(例えば12dB)まで増加させても面積T2が面積T1よりも小さいままであれば、そのときの減衰レベルと尖鋭度をディップフィルタ4の除去周波数におけるディップの減衰レベルおよび尖鋭度として決定する。
【0066】
このようにして、第1候補の周波数である周波数f2に基づき、ディップフィルタ4に設定すべき第1番目の除去周波数(ディップの中心周波数)とその周波数におけるディップの減衰レベルと尖鋭度とを決定することができる。
【0067】
次は、第2候補の周波数である周波数f3に基づき、同様の手順によって、ディップフィルタ4に設定すべき第2番目の除去周波数(ディップの中心周波数)とその周波数におけるディップの減衰レベルと尖鋭度とを決定すればよい。
【0068】
すでに周波数f1が候補の周波数からは除外されているので、本実施形態ではディップフィルタ4に設定すべき除去周波数(ディップの中心周波数)は、周波数f2と周波数f3のみである。
【0069】
しかし、候補の周波数が多数ある場合は、ディップフィルタ4に設定できるだけの数の除去周波数(例えば12個の除去周波数)を同様の手順によって決定すればよい。ディップフィルタ4に設定できるだけの数の除去周波数(例えば12個の除去周波数)をすべて設定しても、なおも除去周波数として設定されない残りの候補の周波数は、ディップフィルタ4に除去周波数として設定はされない。
【0070】
このようにして、ディップフィルタ4に除去周波数として設定すべき周波数f2,f3と、その周波数におけるディップの減衰レベル(深さ)および尖鋭度(Q)が決定される。そしてこれらの特性を図1の音響システムにおけるディップフィルタ4の特性として設定することにより、拡声空間40において共鳴が防止される。
【0071】
上述の通り、ディップフィルタ4のディップの面積は、基礎振幅周波数特性が目標振幅周波数特性から上方にはみ出した面積と略一致しており、さらに原則として共鳴周波数(ディップの中心周波数)における基礎振幅周波数特性と目標振幅周波数特性の振幅レベル差がディップフィルタ4のディップの減衰レベルとして設定されている。よって、基礎振幅周波数特性にディップフィルタ4の特性を作用させると、目標振幅周波数特性に極めて近い特性となる。従って、かかる特性に設定されたディップフィルタ4を含む図1の音響システムは、音質を損なうことなく共鳴を防止することができるような適切な特性に設定されている。
【0072】
以上、図1〜9を参照しつつ、本願発明の一実施形態たるディップフィルタの周波数特性決定方法を説明した。
【0073】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、経験や熟練を必要とせず、ディップフィルタの特性を適切に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】拡声空間に設置された音響システムの概略構成図である。
【図2】拡声空間において振幅周波数特性を測定するためのシステムの概略ブロック図である。
【図3】拡声空間において振幅周波数特性を測定するためのシステムの概略ブロック図である。
【図4】図2のシステムによって測定された拡声空間の第1の振幅周波数特性と、図3のシステムによって測定された拡声空間の第2の振幅周波数特性とを模式的に示す特性図である。
【図5】図4の曲線Caの第1の振幅周波数特性と曲線Cbの第2の振幅周波数特性との振幅レベル差を示す周波数特性図である。
【図6】図4の周波数特性図から曲線Cbのみを取り出した周波数特性図である。
【図7】基礎振幅周波数特性の曲線Caと目標振幅周波数特性の曲線Cdとを示す周波数特性図である。
【図8】周波数f61から周波数f62までの周波数範囲に候補となる3つの周波数が存在する場合を示す周波数特性図である。
【図9】中心周波数が周波数f2であるディップの振幅周波数特性図である。
【符号の説明】
2 音源装置
4 ディップフィルタ
11 発信器
12 アンプ
13 スピーカ
14 マイクロホン
15 測定器
16 ミキシング装置
40 拡声空間
Claims (8)
- 共鳴空間で検出された共鳴周波数をディップの中心周波数として決定し、
該共鳴空間に配置されたスピーカから所定の測定用信号を拡声させ、該共鳴空間に配置されたマイクロホンによって受音して得られる測定値に基づき、基礎振幅周波数特性を求め、
該測定値に基づき、該基礎振幅周波数特性よりも周波数軸上での平滑度が大きい目標振幅周波数特性を求め、
該中心周波数およびその近傍の周波数における、該基礎振幅周波数特性と該目標振幅周波数特性との差に基づき、該ディップの減衰レベル および/または 尖鋭度を決定する、ディップフィルタの周波数特性決定方法。 - 該目標振幅周波数特性は、測定された振幅周波数特性を周波数軸上で移動平均することによって平滑化された特性である、請求項1記載のディップフィルタの周波数特性決定方法。
- 第1面積に第2面積が略一致するように該ディップの減衰レベル および/または 尖鋭度を決定し、
該第1面積は、振幅レベルを表す対数軸を縦軸とし周波数を表す軸を横軸とした振幅周波数特性図上に該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とを表したときの、第1周波数から第2周波数までの周波数範囲において、該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とに囲まれるエリアの面積であり、
該第1周波数は、該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とが交差し、かつ、該ディップの中心周波数よりも低い周波数のうちの、該ディップの中心周波数に最も近い周波数であり、
該第2周波数は、該基礎振幅周波数特性の曲線と該目標振幅周波数特性の曲線とが交差し、かつ、該ディップの中心周波数よりも高い周波数のうちの、該ディップの中心周波数に最も近い周波数であり、
該第2面積は、振幅レベルを表す対数軸を縦軸とし周波数を表す軸を横軸とした振幅周波数特性図上に該ディップの特性を表したときの、該ディップの面積である、請求項1又は2記載のディップフィルタの周波数特性決定方法。 - 該ディップの減衰レベルを、該ディップの中心周波数における該基礎振幅周波数特性と該目標振幅周波数特性の振幅レベル差に略一致するように決定し、
該ディップの尖鋭度を、該第1面積に該第2面積が略一致するように決定する、請求項3記載のディップフィルタの周波数特性決定方法。 - 該第1周波数から該第2周波数までの周波数範囲に、該共鳴空間で検出された複数の共鳴周波数が含まれるとき、該複数の共鳴周波数の内の、第2の振幅周波数特性の振幅レベルが最も大きな共鳴周波数を、該ディップの中心周波数として決定し、それ以外の共鳴周波数を該ディップの中心周波数とはしないように決定し、
該第2の振幅周波数特性は、該スピーカから該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を拡声させて、該マイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性である、請求項3又は4記載のディップフィルタの周波数特性決定方法。 - 第1の振幅周波数特性と第2の振幅周波数特性との比較に基づいて、該共鳴空間の共鳴周波数を検出し、
該第1の振幅周波数特性は、該測定値に基づいて得られる振幅周波数特性であり、
該第2の振幅周波数特性は、該スピーカから該測定用信号と該マイクロホンの出力信号との合成信号を拡声させて、該マイクロホンによって受音して得られる振幅周波数特性である、請求項1乃至5のいずれか一の項に記載のディップフィルタの周波数特性決定方法。 - 該第1の振幅周波数特性と該第2の振幅周波数特性との差分から、該第1の振幅周波数特性に比べて該第2の振幅周波数特性の方が振幅が大きいピーク点の周波数を該共鳴空間の共鳴周波数として検出する、請求項6記載のディップフィルタの周波数特性決定方法。
- 該測定用信号が正弦波スイープ信号である、請求項1乃至7のいずれか一の項に記載のディップフィルタの周波数特性決定方法。
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