本発明は、例えば、光通信用モジュール、光通信システムの光変調器集積化光源に用いる半導体光集積素子に関する。
光ファイバ通信の広がりに伴い、メトロアクセス系通信(〜80km)では、現在、温調クーラー付で動作させている半導体レーザと光変調器を、温調クーラー無しで動作させ、それらを低コスト化させる、という需要が広がっている。このような需要を満たすために、半導体レーザと光変調器には、低温から高温にわたる広い範囲の環境温度でも、大きな特性劣化が見られないよう高性能化することが求められている。
光変調器集積化光源となる半導体光集積素子の高温動作化を考えた場合に、多重量子井戸構造のDFB(Distributed feedback)レーザと多重量子井戸構造の電界吸収型光変調器(EA(Electro-Absorption)変調器と称する。)を、どちらもAl系半導体材料(InGaAlAs系材料等)を用いて作製、モノリシック集積し、良好な特性を得たという報告が数多くされている(非特許文献1参照)。
M. R. Gokhale, et al., "Uncooled, 10Gb/s 1310nm Electroabsorption Modulated Laser", Optical Fiber Communications Conference, 2003, PD42
Kenichiro Yashiki, et al., "10-GB/s 23-km Penalty-Free Operation of 1310-nm Uncooled EML With Semi-Insulating BH Structure", IEEE Photonics Technology Letters, Vol. 18, No.1, January 1, 2006, PP109-111
Al系半導体材料は、高温動作に優れる反面、材料の取り扱いの難しさに問題がある。
図26は、半導体レーザと半導体光変調器を、同一基板上にモノリシック集積する際に良く用いられるバットジョイント(以下、BJと略す。)法を模式的に表したものであり、良好なBJ構造を示している。
まず、基板50上に、半導体レーザ部となる活性層51を積層し、その上部にクラッド層52を積層する(図26(a))。その後、最初に集積したい半導体レーザ部の部分に酸化絶縁膜マスク53(以下、マスク53と称する。)を形成する(図26(b))。その後、エッチング溶液でマスク53のかかっていない部分を削り取る(図26(c)。以下、この工程をウェットエッチングと称する。)。その後、ウェットエッチングした部分に半導体光変調器部となる変調器層54、クラッド層55を結晶再成長することで、半導体レーザ部と半導体光変調器部を、一つの基板50上にモノリシック集積を行っている(図26(d))。
図27は、Al系半導体材料にBJ法を適用した場合に起こる問題点を、模式的に表した図である。
Al系半導体材料でBJ法を行う場合も、図26に示す方法と同様、残しておきたい部分にマスク53を形成しておき、マスク53が形成されていない部分をエッチング溶液で削り取る。ところが、Al系半導体材料では、図27(a)の符号Sに示すように、エッチング溶液がマスク53の下に入り込み、残しておきたい部分まで削り取ってしまう(以下、サイドエッチと称する)。これは、Al系半導体材料では、従来のP系半導体材料(InGaAsP系材料)に比べ、サイドエッチSの量が大きいためである。ウェットエッチングの後、通常のBJ法と同様に、半導体光変調器部となる変調器層54、クラッド層55を結晶再成長し、同一基板50上にモノリシック集積を行うことになる。しかしながら、サイドエッチSの量が多いと、図27(b)に示すように、半導体レーザ部と半導体光変調器部との結合部分に空孔部57が残ってしまい、半導体レーザ部と半導体光変調器部がきれいに結合されなくなる。そのため、半導体レーザ部と半導体光変調器部の結合効率が劣化し、光出力を減少させることが問題となっていた。
又、Al系半導体材料では、空気中で容易に酸化してしまうことも問題となっている。半導体を再成長しようとする場合に、表面が酸化していると、結晶再成長を行うことができなくなる。図28(a)の符号58は、BJ法の際に、半導体レーザ部となる活性層51の端面が酸化した様子を表している。活性層51の端面が酸化している状態でBJ法を行うと、結合部分でうまく結晶成長ができず、図28(b)に示すように、空孔部59が残ってしまう。そのため、半導体レーザ部と半導体光変調器部の結合効率が劣化し、光出力を減少させる原因となっていた。
Al系半導体材料の酸化への対処方法として、半導体レーザ部と半導体光変調器部を一度に成長する選択成長技術が報告されている。この方法では、結晶成長の過程でAl系半導体材料を一度も空気中に出さないために酸化の影響を抑制できると報告されている(非特許文献2)。しかしながら、これらの工程は、全て難易度が高く、歩留まりの向上が難しい、量産に向かないという問題点があった。
又、BJ法では、通常、BJ結合面が導波路方向に直交するように形成されるため、BJ結合における反射、散乱損失が生じ、閾値電流の増大や出力効率の低下等の問題を生じるおそれがある。特に、BJ法の際に選択成長技術を用いる場合には、選択成長による成長膜厚や組成の変動が散乱を増加させ、結合効率を悪化させていた。
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、Al系半導体材料を用いて同一の基板上に集積した半導体レーザ及び半導体光変調器であって、Al系半導体材料の酸化とサイドエッチの影響を抑制すると共に、BJ結合面の反射や散乱を抑えた半導体光集積素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決する第1の発明に係る半導体光集積素子は、
同一の半導体基板上に、Alを含む半導体材料からなる活性層を備えるリッジ型光導波路構造のレーザ部光導波路とAlを含む半導体材料からなる変調器層を備えるリッジ型光導波路構造の変調器部光導波路とをモノリシック集積した半導体光集積素子において、
前記レーザ部光導波路と前記変調器部光導波路との間に、Alを含まない半導体材料からなるリッジ型光導波路構造の結合部光導波路を設けると共に、
前記レーザ部光導波路の前記活性層、前記変調器部光導波路の前記変調器層及び前記結合部光導波路の上層側又は下層側に、Alを含まない半導体材料からなる共通導波路層を設け、
前記レーザ部光導波路のリッジ幅を、前記活性層と前記共通導波路層をあわせて一つの単一モード光導波路となるように設定し、
前記変調器部光導波路のリッジ幅を、前記変調器層と前記共通導波路層をあわせて一つの単一モード光導波路となるように設定し、
前記結合部光導波路のリッジ幅を、前記レーザ部光導波路及び前記変調器部光導波路のリッジ幅より大きくし、かつ、前記共通導波路層をあわせて一つの単一モード光導波路となるように設定し、
前記活性層と前記結合部光導波路又は前記変調器層と前記結合部光導波路の少なくとも一つの結合面を、導波路方向に直交する方向に対して傾斜させ、
前記共通導波路層の層厚を0.1μm以上0.6μm以下としたことを特徴とする。
上記課題を解決する第2の発明に係る半導体光集積素子は、
上記第1の発明に記載の半導体光集積素子において、
前記共通導波路層の層厚を0.1μm以上0.35μm以下としたことを特徴とする。
上記課題を解決する第3の発明に係る半導体光集積素子は、
上記第1又は第2の発明に記載の半導体光集積素子において、
Alを含まない半導体材料からなる窓構造部を、当該半導体光集積素子の両端部に設け、
前記活性層及び前記変調器層の端面を前記窓構造部で覆って、空気中に露出しないようにしたことを特徴とする。
上記課題を解決する第4の発明に係る半導体光集積素子は、
上記第3の発明に記載の半導体光集積素子において、
前記活性層と前記窓構造部又は前記変調器層と前記窓構造部の少なくとも一つの結合面を、導波路方向に直交する方向に対して傾斜させたことを特徴とする。
上記課題を解決する第5の発明に係る半導体光集積素子は、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載の半導体光集積素子において、
前記結合面の法線は、導波路方向に対して5度以上傾斜していることを特徴とする。
上記課題を解決する第6の発明に係る半導体光集積素子は、
上記第1〜第4のいずれか1つの発明に記載の半導体光集積素子において、
前記結合面の法線は、導波路方向に対して10度以上54度以下の角度で傾斜していることを特徴とする。
上記課題を解決する第7の発明に係る半導体光集積素子は、
上記第3〜第6のいずれか1つの発明に記載の半導体光集積素子において、
前記窓構造部の光導波路のリッジ幅を、前記レーザ部光導波路又は前記変調器部光導波路の少なくとも一方のリッジ幅より大きくすることを特徴とする。
上記課題を解決する第8の発明に係る半導体光集積素子は、
上記第1〜第7のいずれか1つの発明に記載の半導体光集積素子において、
前記レーザ部光導波路の両側面又は前記変調器部光導波路の両側面の少なくとも一方を、Ruドープ半絶縁性半導体材料により埋め込むことを特徴とする。
本発明によれば、BJ結合面を導波路方向に直交する方向に対して傾斜させているので、BJ結合面における反射と散乱を抑えることができる。特に、活性領域(半導体レーザ)と非活性領域(半導体光変調器)が交互に繰り返される構造を有する分布活性DFBレーザ等の構造では、共振器全体の損失を低減し、閾値電流の増大や出力効率の低下を防止することができる。加えて、極めて容易な作製プロセスで、Al系半導体材料を用いる際の酸化、サイドエッチといった問題に起因する結合効率の低下も抑制することができる。その結果として、低温から高温までの広い動作温度範囲で、特性劣化の小さな高信頼性の半導体光集積素子を実現することができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る半導体光集積素子の実施形態を説明する。
(構成)
図1は、本発明に係る半導体光集積素子の実施形態の一例を示す斜視図である。又、図2〜図5は、図1に示す半導体光集積素子の断面図であり、図2が、その導波路方向の断面図、図3が、そのレーザ部の断面図、図4が、その結合部の断面図、図5が、図2におけるA−A線矢視断面図である。
本実施例の半導体光集積素子は、EA−DFBレーザと呼ばれるものであり、Alを含む半導体材料(以降、Al系半導体材料と呼ぶ。)からなる活性層13を備える半導体レーザ部(以降、レーザ部と略す。)1の光導波路と、Al系半導体材料からなる変調器層18を備える半導体光変調器部(以降、変調器部と略す。)2の光導波路とを、同一の基板10上にモノリシック集積したものである。更に、レーザ部1と変調器部2との間に形成された結合部3の光導波路と、レーザ部1の端部側方に形成された窓構造部4の光導波路と、変調器部2の端部側方に形成された窓構造部5の光導波路とを有する。
レーザ部1は、下層側から、下部クラッド層となる基板10と、Alを含まない半導体材料(以降、非Al系半導体材料と呼ぶ。)からなる共通導波路層11と、非Al系半導体材料からなるエッチストップ層12と、Al系半導体材料からなり、レーザ光を発振する活性層13と、活性層13上方に形成された回折格子15と、非Al系半導体材料からなる上部クラッド層24と、コンタクト層25、26とから構成される。レーザ部1において、共通導波路層11、エッチストップ層12及び活性層13は、コア層を構成している。なお、ここでは、電極部分の図示は省略している。
共通導波路層11は、活性層13、変調器層18及び後述の半導体層23の下方側(基板10側)に、活性層13、変調器層18及び半導体層23の導波路方向に沿って、素子全長(窓構造部4〜レーザ部1〜結合部3〜変調器部2〜窓構造部5)に渡って延設されており、エッチストップ層12、上部クラッド層24と共に、非Al系半導体材料から形成されている。
変調器部2は、下層側から、下部クラッド層となる基板10と、非Al系半導体材料からなる共通導波路層11と、非Al系半導体材料からなるエッチストップ層12と、Al系半導体材料からなり、活性層13から発振されたレーザ光を変調する変調器層18と、非Al系半導体材料からなる上部クラッド層24と、コンタクト層25、26とから構成される。変調器部2において、共通導波路層11、エッチストップ層12及び変調器層18は、コア層を構成している。なお、ここでも、電極部分の図示は省略している。
結合部3は、活性層13と変調器層18とを光結合する役割を果たすものであり、下層側から、下部クラッド層となる基板10と、非Al系半導体材料からなる共通導波路層11と、非Al系半導体材料からなるエッチストップ層12と、非Al系半導体材料からなる半導体層23と、非Al系半導体材料からなる上部クラッド層24とから構成される。結合部3においては、共通導波路層11がコア層を構成している。このように、半導体層23も、非Al系半導体材料から形成されている。
窓構造部4、5は、下層側から、下部クラッド層となる基板10と、非Al系半導体材料からなる共通導波路層11と、非Al系半導体材料エッチストップ層12と、非Al系半導体材料からなる半導体層23と、非Al系半導体材料からなる上部クラッド層24とから構成される。窓構造部4、5は、結合部3と略同等の構成を有しており、ここでも、共通導波路層11がコア層を構成している。この窓構造部4、5は、Al系半導体材料から形成された活性層13及び変調器層18の端面が空気に触れないようにする役割を果たすものであり、そのため、活性層13及び変調器層18の側端面に、非Al系半導体材料からなる半導体層23を形成することにより、活性層13及び変調器層18の端面を覆うような構造としており、更に、活性層13、変調器層18及び半導体層23の上面に、非Al系半導体材料からなる上部クラッド層24を形成している。
又、レーザ部1(窓構造部4)、変調器部2(窓構造部5)及び結合部3は、上部クラッド層24をリッジ構造に形成することにより、リッジ型光導波路構造としており、それらのリッジ幅WL、WE、WPは、活性層13と共通導波路層11をあわせて一つの単一モード光導波路となるように、かつ、共通導波路層11と変調器層18をあわせて一つの単一モード光導波路となるように、各々設定されている。このように、活性層13及び共通導波路層11、共通導波路層11及び変調器層18を、単一モード光導波路となるように構成することにより、更には、後述するように、それらの結合面を傾斜させることにより、素子内での結合効率を向上せると共に損失を抑制している。
なお、共通導波路層11を設けて集積した複数の素子間に光を導波させる場合には、結合部3のリッジ幅WPを、素子のリッジ幅WL、WEより広くすれば、導波する光のフィールドが単一モードを有することがわかっている。これにより、結合部3の光閉じ込め、結合効率を増加させ、導波する光の損失を低減することができる。
このような構成により、本発明に係る半導体光集積素子においては、活性層13から放出された光は、活性層13と共通導波路層11とがあわせて単一モード光導波路になるように導波され、更に、共通導波路層11と変調器層18とがあわせて単一モード光導波路になるように導波されて、窓構造部5の端面から出射されることになる。
本実施例の半導体光集積素子は、概略、上述した構成を有するものである。ここで、その具体的な構成(例えば、各層の組成、厚さ等)の一例を例示する。
例えば、基板10はn−InP、共通導波路層11は厚さ200nmのi−InGaAsP(PL波長1.3μm)、エッチストップ層12は厚さ10nmのアンドープi−InP、半導体層23はi−InP又はi−InGaAsP、上部クラッド層24は厚さ1800nmのp−InPからなり、全て、非Al系半導体材料から構成されている。又、コンタクト層25は厚さ200nmのInGaAsP(PL波長1.3μm)、コンタクト層26は厚さ300nm、InGaAsP(PL波長1.5μm)からなる。
一方、活性層13は、基板10側から、ガイド層、多重量子井戸層、ガイド層、キャリアストップ層からなる。ガイド層は厚さ30nmでPL波長1.1μmのInGaAlAs系材料からなり、キャリアストップ層は厚さ30nmのInAlAs層からなり、Al系半導体材料から構成されている。多重量子井戸層は、井戸層厚7nm、障壁層厚10nmの10周期構造で、量子井戸のPL波長が1.55μmになるような組成からなる。なお、多重量子井戸層は無歪でも歪が入っていてもよいものとする。
又、変調器層18は、基板10側から、ガイド層、多重量子井戸層、ガイド層からなる。ガイド層は厚さ20nmでPL波長1.1μmのInGaAlAs系材料からなり、Al系半導体材料から構成されている。多重量子井戸層は、井戸層10nm、障壁層5nmの8周期構造で、量子井戸のPL波長が1.46μmとなるような組成からなる。なお、多重量子井戸層は無歪でも歪が入っていてもよいものとする。
又、レーザ部1のリッジ幅WL=2.0μm、結合部3のリッジ幅WP=2.5μm、変調器部2のリッジ幅WE=2.0μmとしている。なお、本実施例の場合、窓構造部4、5の光導波路のリッジ幅は、隣接するレーザ部1及び変調器部2のリッジ幅WL、WEと同じく、2.0μmとしている。
本実施例の半導体光集積素子は、上述した積層構造を有するものであるが、その導波路方向の構造は、図5(a)に示す構造としている。具体的には、BJ法により結合された、窓構造部4の半導体層23とレーザ部1の活性層13との結合面、レーザ部1の活性層13と結合部3の半導体層23との結合面、結合部3の半導体層23と変調器部2の変調器層18との結合面、変調器部2の変調器層18と窓構造部5の半導体層23との結合面全てを、導波路方向に対して45度傾斜させた構造としている。詳細は後述するが、結合面の傾斜角度は45度でなくても、光の導波方向から垂直以外の斜めの角度を有していればよく、その角度は5度以上であれば有効であり、10度以上54度以下であればさらに有効である。又、これらの結合面は、全て傾斜させる必要はなく、少なくとも1つの結合面を導波路方向に対して傾斜させればよい。
更に、結合面の傾斜角度は、全て、同じ角度、同じ方向でなくてもよく、例えば、図5(b)、(c)に示すようなものでもよい。
なお、活性層13、変調器層18、半導体層23以外の層、例えば、上部クラッド層24、コンタクト層における窓構造部4/レーザ部1間、レーザ部1/結合部3間、結合部3/変調器部2間、変調器部2/窓構造部4間の角度は、本実施例においては傾斜させていないが、傾斜させてもよい。
ここで、図6〜図9を参照して、結合面を導波路方向に対して傾斜させた構造について、その適切な傾斜角度、そして、その作用効果を説明する。
上述したように、本実施例において、レーザ部1の活性層13及び変調器部2の変調器層18は、Al系半導体材料であるInGaAlAsからなり、結合部3、窓構造部4及び窓構造部5の半導体層23は、非Al系半導体材料であるi−InP又はi−InGaAsPからなり、互いに組成が異なっている。従って、BJ結合面は、屈折率が異なる層の結合となる。
屈折率が互いに異なる物質の境界面(結合面)においては、一方の物質から他方の物質へ光が入射する際に光の反射が生じる。例えば、図6に示す屈折率N1の物質M1と屈折率N2の物質M2との境界面Bに、物質M1側から光が入射したとすると、結合界面における光の反射率Rは、以下の(1)式で表される。
R=((N1−N2)/(N1+N2))2 … (1)
本実施例の半導体光集積素子(EA−DFBレーザ)において、活性層13、変調器層18と半導体層23との屈折率差が小さいため、(1)式から、反射率Rの絶対値は非常に小さくなる。しかし、その一方で、図5で示したように、一つの素子中に、屈折率が互いに異なる領域を結合した結合面が複数(図5中では4面)存在する。このため、一つの素子全体では光の反射の影響が無視できない程度に大きくなるおそれがある。従って、結合面を複数有する素子にあっては、反射率Rをできるだけ低く抑えるか、反射が起きたとしても反射波が導波路に結合しないようにすることが重要である。
屈折率が互いに異なる物質の境界面に対して光が斜めに入射した場合、入射角をθ1、屈折角をθ2とすると、スネルの法則に従い、以下の(2)式で表されるように、その境界面で屈折が生じる。なお、入射角θ1は、境界面Bの法線に対する光の伝播方向の傾斜角とする。
sinθ1/sinθ2=N2/N1 … (2)
ここで、入射角θ1がブリュースター角θBに一致する場合、入射面に平行な成分の反射をなくすことができる。ブリュースター角θBは、以下の(3)式で表すことができる。
θB=tan-1(N2/N1) … (3)
図7に、一例として、InPと格子整合するInGaAsPとバンドギャップ波長1.55μmのInGaAlAsとの屈折率差と、InPと格子整合するInGaAsPのバンドギャップ波長との関係を示す。伝播する光の波長は1.55μmとしている。図7に示すように、半導体の屈折率はバンドギャップ波長によって異なる。例えば、バンドギャップ波長1.55μmの半導体と、バンドギャップ波長1.40μmの半導体とでは、0.09程度の屈折率差がある。
実際に導波路構造を作製する場合には、バンドギャップ波長1.55μmのInGaAlAsと、InPと格子整合するInGaAsPとをコアとして用い、これらよりも屈折率の低い半導体でコアに光を閉じ込める構造をとる。
例えば、簡単な導波路構造として、厚さ0.15μmのコアをInPのクラッドで挟んで構成される導波路構造の等価屈折率で考えると、バンドギャップ波長1.55μmの半導体をコアとして用いた場合の等価屈折率は3.12、バンドギャップ波長1.40μmの半導体をコアとして用いた場合の等価屈折率は3.19となり、これらの導波路の等価屈折率差は0.02程度以下になる。なお、本実施例に当てはめてみると、レーザ部1の活性層13、変調器部2の変調器層18を、Al系半導体材料であるInGaAlAsから構成した場合には、その等価屈折率は3.2〜3.35となり、結合部3、窓構造部4、窓構造部5の半導体層23を、非Al系半導体材料である波長組成(PL波長)1.3μmのInGaAsPから構成した場合には、その等価屈折率は3.39となり、それらの等価屈折率差は、0.05〜0.19となる。
図8に、図6に示した境界面Bに入射する光の入射角θ1と反射率Rとの関係を示す。なお、入射角θ1は、境界面Bに直交する方向と光の伝播方向との角度である。図8に示すグラフは、入射側の物質M1の屈折率をN1=3.20、物質M1と物質M2の屈折率差ΔnをそれぞれΔn=N1−N2=0.005、0.01、0.015、0.02とした場合の例を示している。
本実施例においては、EA−DFBレーザにおける活性層13、変調器層18と半導体層23との屈折率差が小さいため、(3)式から、ブリュースター角θBはほぼ45度となる。即ち、活性層13、変調器層18と半導体層23との結合面の傾斜角θがほぼ45度の場合に反射率Rが0となり、又、傾斜角θ=45度近傍で反射率Rが非常に小さくなる。
屈折率差Δn=0.01の場合を例にとってみると、図8から、入射角θ1が10度以上54度以下で反射率Rを低減できる。特に、反射率Rを、光が境界面に対して垂直に入射した場合の、即ち、入射角θ1=0の場合の半分以下に抑えるためには、入射角θ1を28度から52度程度の間の値とすればよい。又、反射率Rを、入射角θ1=0における反射率Rの3分の1以下に抑えるためには、入射角θ1を33度から51度程度の間の値とすればよい。なお、図8からわかるように、入射角θ1がブリュースター角θBより小さい範囲であるほうが、入射角θ1がブリュースター角θBより大きい場合に比較して、入射角θ1に対する反射率Rの変化が緩やかになっている。
なお、必ずしも境界面における反射を全て抑える必要がなく、反射が起きても反射波が導波路に結合しないような場合、以下のように入射角θ1の選択範囲を広げることができる。
図9に、光モードフィールド幅を1.5μmとした場合の境界面への入射角と、導波路への反射波の結合率との関係を示す。なお、反射波結合率は、境界面での屈折率差を考慮しなくてもいいように、入射角θ1=0のとき、すなわち、境界面が導波路方向に対して直交する場合における反射波の導波路への結合率を1として表示した。
図9から、入射角θ1がおよそ5度以上あれば導波路への反射波結合率を半分に低減でき、反射波結合率を30%程度以下にするためには入射角θ1がおよそ7度以上あればよく、反射波結合率を一桁低減するには、入射角θ1をおよそ9度以上とすればよいことがわかる。
以上のことから、図1〜図5に示す本実施例の半導体光集積素子(EA−DFBレーザ)において、活性層13、変調器層18と半導体層23との結合面が導波路方向に対して直交する場合に比較して、反射波結合率を、例えば半分以下に抑制するためには、結合面の角度を導波路方向に対して5度以上90度未満とする必要がある。又、結合面が導波路方向に対して直交する場合に比較して、反射波結合率を30%以下に抑制するためには導波路方向に対する結合面の角度を7度以上90度未満とする必要がある。又、結合面が導波路方向に対して直交する場合に比較して反射波結合率を一桁低減するためには、導波路方向に対する結合面の角度を9度以上90度未満とする必要がある。
又、活性層13、変調器層18と半導体層23との結合面における反射率Rを、結合面が導波路方向に対して直交する場合に比較して、例えば半分以下とするためには、結合面の傾斜角θを28度乃至52度程度、3分の1以下とするためには、結合面の傾斜角θを33度乃至51度程度、結合面が導波路方向に対して直交する場合に比較して反射率Rをほぼ0とするためには、結合面の傾斜角θを45度とする必要がある。
なお、上述したような反射波の影響を抑制する効果は、結合する導波路の数が増えるほど大きくなることは明らかである。
従って、導波路に対して、屈折率境界面である結合面の傾斜角θが上記角度となるようにすれば、結合面における屈折率差により生じた反射率Rを低減し、反射波の導波路への結合を低減することができる。本実施例の場合、レーザ部1の活性層13からの発振光は、共通導波路層11を介して、変調器部2の変調器層18に導波するものと、共通導波路層11を介さず、結合部3の半導体層23を介して、変調器部2の変調器層18に導波するものがあり、後者のように導波する光に対して、結合面における屈折率差により生じた反射率Rを低減し、反射波の導波路への結合を低減することになる。
(作製方法)
次に、図1〜図5と共に、図10(a)〜(d)、図11(a)〜(e)を用いて、本実施例の半導体光集積素子の作製方法を説明する。
(1)まず、n−InPの基板10上に、非Al系半導体材料からなる共通導波路層11(厚さ200nmのInGaAsP(PL波長1.3μm))、エッチストップ層12(厚さ10nmのアンドープi−InP)を順に結晶成長させ、その上に、Al系半導体材料からなる活性層13を結晶成長させる。その後、半導体層(回折格子層)14を結晶成長させ、半導体層(回折格子層)14に回折格子15を形成する(図10(a))。
(2)次に、100nmの半導体層16(i−InP)を結晶成長する。その後、最初に集積したいレーザ部1の部分の試料表面に誘電体絶縁膜(例えば、酸化絶縁膜)のマスク17を形成する(図10(b))。このマスク17は、変調器部2の部分の試料表面には開口部を有することになる。マスク17としては、例えば、プラズマCVD法により酸化シリコン膜(300nm厚)を成膜し、通常の露光方法でレジストパターンを形成した後、CF系のプラズマエッチングにより作製すればよい。
(3)次に、マスク17を用いて、マスク17のかかっていない部分、つまり、変調器部2の部分の活性層13をウェットエッチングにより除去する(図10(c))。この際、変調器部2の部分においては、活性層13までは溶かすが、エッチストップ層12(厚さ10nm)は溶かさないような溶液を用いてウェットエッチングを行い、共通導波路層11は残している。なお、本実施例における作製方法の場合も、従来と同様に、Al系半導体材料においては、図10(c)に示すように、エッチング溶液がマスク17の下に入り込み、サイドエッチSが形成されてしまう。
(4)次に、ウェットエッチングの後、通常のBJ法により、変調器層18、InGaAsP層19(100nm)、i−InP層20(100nm)を結晶再成長する。本実施例における作製方法の場合も、サイドエッチSの部分では、結晶再成長がなされず、活性層13と変調器層18との結合部分に空孔部21が残ってしまう(図10(d))。
空孔部21が残った状態では、活性層13と変調器層18がきれいに結合されなくなり、サイドエッチSの量が大きくなると、この影響は更に大きくなる。この状態のままでは、従来と同様に、活性層13と変調器層18の結合効率が低下し、光出力を減少させることが問題となってしまう。そこで、本発明においては、共通導波路層11を形成すると共に、図11(a)〜(e)以降の手順を経て、半導体光集積素子を形成することにより、簡易な作製プロセスで、結合効率の低下を抑制するようにしている。
(5)具体的には、空孔部21がある部分の試料表面に開口部を形成するように、又、活性層13の空孔部21とは反対側の端部及び変調器層18の空孔部21とは反対側の端部、つまり、半導体光集積素子の両端部の試料表面に開口部を形成するように、誘電体絶縁膜(例えば、酸化絶縁膜)のマスク22を形成する(図11(a))。加えて、マスク22は、活性層13の両端、変調器層18の両端が導波路方向に対して傾斜する形状となるように形成されており、例えば、図5(a)を参照して説明すると、半導体層23に該当する部分に開口部を有し、後に結合面となる開口部の縁部分が導波路方向に対して傾斜する形状となっている。マスク22としては、例えば、プラズマCVD法により酸化シリコン膜(300nm厚)を成膜し、通常の露光方法でレジストパターンを形成した後、CF系のプラズマエッチングにより作製する。
(6)次に、上記マスク22を用いて、ドライエッチング加工により、空孔部21を含む領域と素子端部の領域を除去する(図11(b))。つまり、後に結合部3となる部分を一旦除去することにより、空孔部21を除去している。この際、活性層13、変調器層18までは除去するが、エッチストップ層12以下の層は除去しないようにして、共通導波路層11は残している。ドライエッチング加工には、塩素、臭素等のハロゲン系ガス、又は、メタン、エタン等の炭化水素ガス、又は、アルゴンガス等を用いる。なお、酸溶液を用いたウェットエッチングによって、空孔部21を含む領域と素子端部の領域の除去加工を行ってもよい。
(7)次に、マスク22を、HF系溶液によるウェットエッチング、又は、CF系ガスによるドライエッチングにより除去した後、半導体層23(i−InP又はi−InGaAsP)をMOVPE法により成長する。このとき、各部のBJ結合面が導波路方向に対して傾斜して形成されることになる。その後、上部クラッド層24(1800nm、p−InP)をMOVPE法により全面に成長する(図11(c))。上部クラッド層24としては、例えば、アンドープのInP層(150nm厚)とp−InP層(2μm厚程度)から構成してもよい。このようにして、レーザ部1と変調器部2との間の結合部3と、素子端部の窓構造部4、5が同時に形成される。
(8)引き続き、コンタクト層25(200nm、InGaAsP(PL波長1.3μm))とコンタクト層26(300nm、InGaAsP(PL波長1.5μm))を、MOVPE法により結晶成長する(図11(d))。
(9)その後、試料表面に光導波路形成用の誘電体絶縁膜マスクを形成し、上部クラッド層24、コンタクト層25、26をリッジ型光導波路形状にエッチング加工する(図1参照)。このとき、レーザ部1の光導波路、結合部3の光導波路及び変調器部2の光導波路は、単一モード光導波路の条件を満たすようなリッジ幅WL、WE、WPに形成され、結合部3では、図1に示すように、幅方向に広がった上部クラッド層24aが形成されることになる。
その後、結合部3において電極分離を行う領域だけ開口すると共に、窓構造部4、5の領域を開口したマスクパターンを用いて、レーザ部1の光導波路と変調器部2の光導波路の間のコンタクト層25、26を除去して、互いの電極分離を行うと共に、同時に、窓構造部4、5のコンタクト層25、26も除去する(図11(e))。その後、変調器部2の光導波路の脇に、ポリイミド等の有機物膜を形成した後、レーザ部1と変調器部2に各々電極を作製する。
従来技術においては、Al系半導体材料のサイドエッチにより、大きく結合効率が下がる問題があり、このような結合効率の低下を回避するため、難易度の高いプロセスを必要としていた。これに対して、本発明では、上述した作製方法を用いることにより、難易度の高い作製プロセスの使用を回避し、簡単な作製プロセスで、結合効率の低下を抑制する半導体光集積素子を実現することができる。
そして、上述してきたように、本発明に係る半導体光集積素子においては、共通導波路層11を備えると共に、レーザ部1と変調器部2とを光結合する結合部3を備えている。更に、素子を導波する光のフィールドが単一モードとなるようなリッジ幅に、各部のリッジ幅WL、WE、WPを形成すると共に、導波路方向に対して傾斜するように、各部間の結合面を形成している。このような構造により、結合効率を向上させると共に素子内での損失を抑制することが可能である。
特に、Al系半導体材料を用いた素子においては、Al系半導体材料の酸化に起因する劣化が生じる可能性が高くなるが、本発明においては、非Al系半導体材料を用いて、サイドエッチにより形成された空孔部21を埋め込むと共に、素子端部も、非Al系半導体材料で覆うことにより、即ち、窓構造部4、5を導入することにより、素子端部の酸化に起因する劣化を防止することができる。この窓構造部4、5は、非Al系半導体材料からなる結合部3と同時に形成できるため、素子作製プロセスを簡略化でき、素子の作製コストを削減することもできる。
実施例1では、波長1.55μmでの半導体光集積素子について述べたが、本実施例では、波長1.3μmでの半導体光集積素子について述べる。
(構成)
本実施例の半導体光集積素子も、前述の図1〜図5に示した構造からなり、各層が以下のように構成されたものである。従って、各構成要素については、同じ符号を用いて説明を行う。
本実施例の半導体光集積素子において、基板10はn−InP、共通導波路層11は厚さ200nmのInGaAsP(PL波長1.1μm)、エッチストップ層12は厚さ10nmのアンドープi−InP、半導体層23はi−InP又はi−InGaAsP、上部クラッド層24は厚さ1800nmのp−InPからなり、全て、非Al系半導体材料から構成されている。又、コンタクト層25は厚さ200nmのInGaAsP(PL波長1.3μm)、コンタクト層26は厚さ300nm、InGaAsP(PL波長1.5μm)からなる。
一方、活性層13は、基板10側から、ガイド層、多重量子井戸層、ガイド層、キャリアストップ層からなる。ガイド層は厚さ30nmでPL波長1.1μmのInGaAlAs系材料からなり、キャリアストップ層は厚さ30nmのInAlAs層からなり、Al系半導体材料から構成されている。多重量子井戸層は、井戸層厚7nm、障壁層厚10nmの10周期構造で、量子井戸のPL波長が1.30μmになるような組成からなる。なお、多重量子井戸層は無歪でも歪が入っていてもよいものとする。
又、変調器層18は、基板10側から、ガイド層、多重量子井戸層、ガイド層からなる。ガイド層は厚さ20nmでPL波長1.1μmのInGaAlAs系材料からなり、Al系半導体材料から構成されている。多重量子井戸層は、井戸層10nm、障壁層5nmの8周期構造で、量子井戸のPL波長が1.23μmとなるような組成からなる。なお、多重量子井戸層は無歪でも歪が入っていてもよいものとする。
又、各領域のリッジ幅については、レーザ部1のリッジ幅WL=2.0μm、結合部3のリッジ幅WP=2.4μm、変調器部2のリッジ幅WE=1.8μmとしている。なお、本実施例の場合も、窓構造部4、5の光導波路のリッジ幅は、隣接するレーザ部1及び変調器部2のリッジ幅WL、WEと同じく、各々、2.0μm、1.8μmとしている。
加えて、本実施例の半導体光集積素子においても、その導波路方向の構造は、図5(a)に示したように、窓構造部4の半導体層23とレーザ部1の活性層13との結合面、レーザ部1の活性層13と結合部3の半導体層23との結合面、結合部3の半導体層23と変調器部2の変調器層18との結合面、変調器部2の変調器層18と窓構造部5の半導体層23との結合面全てを、導波路方向に対して45度傾斜させた構造としている。
このように、本実施例の半導体光集積素子は、共通導波路層11、活性層13及び変調器層18において、実施例1に示した半導体光集積素子とは、PL波長が相違し、又、各領域のリッジ幅WL、WE、WPが相違しているが、実施例1と同等の効果を奏する。なお、本実施例の半導体光集積素子の作製方法については、上記相違点を除き、実施例1に示した作製方法と同等のものであるため、ここでは、作製方法の説明については省略する。
上記実施例1、2においては、共通導波路層11が活性層13、変調器層18及び半導体層23の下方側(基板10側)にある構造について説明したが、本実施例においては、共通導波路層11が活性層13、変調器層18及び半導体層23の上方側(素子表面側)にある構造について説明する。
(構成)
本実施例の半導体光集積素子は、図12〜図15に示した構造からなり、各層が以下のように構成されたものである。ここで、図12は半導体光集積素子の斜視図、図13は半導体光集積素子の導波路方向の断面図、図14は半導体光集積素子におけるレーザ部の断面図、図15は半導体光集積素子における結合部の断面図を示すものである。なお、本実施例では、上述した実施例1、2における構成要素と同等のものについては、同じ符号を用い、重複する説明は省略する。
本実施例の半導体光集積素子において、基板10はn−InP、共通導波路層11は200nmのInGaAsP(PL波長1.3μm)、エッチストップ層12は厚さ10nmのアンドープi−InP、半導体層23はi−InP又はi−InGaAsP、上部クラッド層24は厚さ1800nmのp−InPからなり、全て、非Al系半導体材料から構成されている。又、コンタクト層25は厚さ200nmのInGaAsP(PL波長1.3μm)、コンタクト層26は厚さ300nm、InGaAsP(PL波長1.5μm)からなる。
一方、活性層13は、基板10側から、ガイド層、多重量子井戸層、ガイド層、キャリアストップ層からなる。ガイド層は厚さ30nmでPL波長1.1μmのInGaAlAs系材料からなり、キャリアストップ層は厚さ30nmのInAlAs層からなり、Al系半導体材料から構成されている。多重量子井戸層は、井戸層厚7nm、障壁層厚10nmの10周期構造で、量子井戸のPL波長が1.55μmになるような組成からなる。なお、多重量子井戸層は無歪でも歪が入っていてもよいものとする。
又、変調器層18は、基板10側から、ガイド層、多重量子井戸層、ガイド層からなる。ガイド層は厚さ20nmでPL波長1.1μmのInGaAlAs系材料からなり、Al系半導体材料から構成されている。多重量子井戸層は、井戸層10nm、障壁層5nmの8周期構造で、量子井戸のPL波長が1.46μmとなるような組成からなる。なお、多重量子井戸層は無歪でも歪が入っていてもよいものとする。
又、各領域のリッジ幅については、レーザ部1のリッジ幅WL=2.0μm、結合部3のリッジ幅WP=2.5μm、変調器部2のリッジ幅WE=2.0μmとしている。なお、本実施例の場合も、窓構造部4、5の光導波路のリッジ幅は、隣接するレーザ部1及び変調器部2のリッジ幅WL、WEと同じく、2.0μmとしている。
加えて、本実施例の半導体光集積素子においても、その導波路方向の構造は、図5(a)に示したように、窓構造部4の半導体層23とレーザ部1の活性層13との結合面、レーザ部1の活性層13と結合部3の半導体層23との結合面、結合部3の半導体層23と変調器部2の変調器層18との結合面、変調器部2の変調器層18と窓構造部5の半導体層23との結合面全てを、導波路方向に対して45度傾斜させた構造としている。
(作製方法)
ここで、図12〜図15と共に、図16(a)〜(d)、図17(a)〜(f)を用いて、本実施例の半導体光集積素子の作製方法を説明する。
(1)まず、n−InPの基板10上に、Al系半導体材料からなる活性層13を結晶成長させる(図16(a))。
(2)次に、最初に集積したいレーザ部1の部分の試料表面に誘電体絶縁膜(例えば、酸化絶縁膜)のマスク17を形成する(図16(b))。このマスク17は、変調器部2の部分の試料表面には開口部を有することになる。マスク17は、実施例1と同様な方法により加工する。
(3)次に、マスク17を用いて、マスク17のかかっていない部分、つまり、変調器部2の部分の活性層13のみをウェットエッチングにより除去する(図16(c))。この際、変調器部2の部分においては、活性層13までは溶かすが、n−InPの基板10は溶かさないような溶液を用いてウェットエッチングを行う。なお、本実施例における作製方法の場合、サイドエッチの影響は小さいと予想される。
(4)次に、ウェットエッチングの後、通常のBJ法により、変調器層18を結晶再成長する。本実施例における作製方法の場合、サイドエッチの影響は小さいと予想されるが、Al系半導体材料においては、酸化の影響により、やはり、結晶再成長がなされず、活性層13と変調器層18との結合部分に空孔部21が残ってしまう(図16(d))。
空孔部21が残った状態では、活性層13と変調器層18がきれいに結合されなくなる。この状態のままでは、従来と同様に、活性層13と変調器層18の結合効率が低下し、光出力を減少させることが問題となってしまう。そこで、本発明においても、共通導波路層11を形成すると共に、図17(a)〜(f)以降の手順を経て、半導体光集積素子を形成することにより、簡易な作製プロセスで、結合効率の低下を抑制するようにしている。
(5)具体的には、空孔部21がある部分の試料表面に開口部を形成するように、又、活性層13の空孔部21とは反対側の端部及び変調器層18の空孔部21とは反対側の端部、つまり、半導体光集積素子の両端部の試料表面に開口部を形成するように、誘電体絶縁膜(例えば、酸化絶縁膜)のマスク22を形成する(図17(a))。加えて、マスク22は、活性層13の両端、変調器層18の両端が導波路方向に対して傾斜する形状となるように形成されており、例えば、図5(a)を参照して説明すると、半導体層23に該当する部分に開口部を有し、後に結合面となる開口部の縁部分が導波路方向に対して傾斜する形状となっている。なお、マスク22は、実施例1と同様な方法により加工する。
(6)次に、マスク22を用いて、実施例1と同様に、ドライエッチング又はウェットエッチングにより、空孔部21を含む領域と素子端部の領域を除去する(図17(b))。つまり、後に結合部3となる部分を一旦除去することにより、空孔部21を除去している。この際、活性層13、変調器層18までは除去するが、n−InPの基板10は除去しないようにしている。
(7)次に、エッチングにより除去した部分に、アンドープの半導体層23(i−InP、200nm厚)をMOVPE法で結晶成長する(図17(c))。このとき、各部のBJ結合面が導波路方向に対して傾斜して形成されることになる。なお、i−InPに換えて、InP以外のAlを含まない半導体材料、例えば、InGaAsP系材料を用いてもよい。この場合、InGaAsP等の波長組成は、レーザ部の活性層と変調器部の変調器層に用いたものより短波長であることが望ましい。
(8)次に、マスク22を、HF系溶液によるウェットエッチング、又は、CF系ガスによるドライエッチングにより除去した後、エッチストップ層12(厚さ10nmのアンドープi−InP)、非Al系半導体材料(200nmのInGaAsP(PL波長1.3μm))からなる共通導波路層11を順に結晶成長させる。その後、レーザ部1に回折格子15を形成し、上部クラッド層24(1800nm、p−InP)をMOVPE法により全面に成長する(図17(d))。このようにして、レーザ部1と変調器部2との間の結合部3と、素子端部の窓構造部4、5が同時に形成される。
(9)引き続き、コンタクト層25(200nm、InGaAsP(PL波長1.3μm))とコンタクト層26(300nm、InGaAsP(PL波長1.5μm))を、MOVPE法により結晶成長する(図17(e))。
(10)その後、試料表面に光導波路形成用の誘電体絶縁膜マスクを形成し、上部クラッド層24、コンタクト層25、26を光導波路状にエッチング加工する(図12参照)。このとき、レーザ部1の光導波路、結合部3の光導波路及び変調器部2の光導波路は、上述したように、単一モード光導波路の条件を満たすリッジ幅WL、WE、WPに形成される。具体的には、レーザ部1のリッジ幅WL=2.0μm、結合部3のリッジ幅WP=2.5μm、変調器部2のリッジ幅WE=2.0μmとした。従って、結合部3では、図12に示すように、幅方向に広がった上部クラッド層24aが形成されることになる。
その後、結合部3において電極分離を行う領域だけ開口すると共に、窓構造部4、5の領域を開口したマスクパターンを用いて、レーザ部1の光導波路と変調器部2の光導波路の間のコンタクト層25、26を除去して、互いの電極分離を行うと共に、同時に、窓構造部4、5のコンタクト層25、26も除去する(図17(f))。その後、変調器部2の光導波路の脇に、ポリイミド等の有機物膜を形成した後、レーザ部1と変調器部2に各々電極を作製する。
このように、本実施例の半導体光集積素子は、実施例1に示した半導体光集積素子とは、共通導波路層11の位置が相違しているが、実施例1と同等の効果を奏する。
実施例3においては、共通導波路層11を活性層13、変調器層18及び半導体層23の上方側(素子表面側)に設けた構造について説明したが、本実施例では、図18〜図22に示すように、更に、レーザ部1、変調器部2等をRu(ルテニウム)ドープInPの埋込層29で埋め込む構造について説明する。
(構成)
本実施例の半導体光集積素子は、図18〜図22に示した構造からなり、各層が以下のように構成されたものである。ここで、図18は、本発明に係る半導体光集積素子の実施形態の一例を示す斜視図である。又、図19〜図22は、図18に示す半導体光集積素子の断面図であり、図19が、その導波路方向に沿う断面図、図20が、そのレーザ部の断面図、図21が、その結合部の断面図、図22が、その変調器部の断面図である。なお、本実施例では、上述した実施例1〜3における構成要素と同等のものについては、同じ符号を用いて、説明を行う。
本実施例の半導体光集積素子も、実施例1と同様に、Al系半導体材料からなる活性層13を備えるレーザ部1の光導波路と、Al系半導体材料からなる変調器層18を備える変調器部2の光導波路とを、同一の基板10上にモノリシック集積したものである。更に、レーザ部1と変調器部2との間に形成された結合部3の光導波路と、レーザ部1の端部側方に形成された窓構造部4の光導波路と、変調器部2の端部側方に形成された窓構造部5の光導波路とを有するものである。
レーザ部1は、下層側から、n−InPからなり、下部クラッド層となる基板10と、Al系半導体材料からなり、レーザ光を発振する活性層13と、活性層13の上方に形成された回折格子と、i−InPからなるエッチストップ層28と、非Al系半導体材料であるi−InGaAsPからなる共通導波路層11と、p−InPからなる上部クラッド層24と、p−InGaAsPからなるコンタクト層25とから構成され、それらの上下に、n−メタルからなる下部電極27、p−メタルからなる上部電極30が形成されたものである。レーザ部1において、活性層13、エッチストップ層28、共通導波路層11が、コア層を構成している。又、共通導波路層11以上の層、具体的には、共通導波路層11及び上部クラッド層24がリッジ構造に形成されて、その両側面が、RuドープのInPからなる埋込層29により埋め込まれた構造となっている。
共通導波路層11は、活性層13、変調器層18及び半導体層23の上層側(基板10とは反対側)に、活性層13、変調器層18及び半導体層23の導波路方向に沿って、素子全長(窓構造部4〜レーザ部1〜結合部3〜変調器部2〜窓構造部5)に渡って延設されており、エッチストップ層28、上部クラッド層24と共に、非Al系半導体材料から形成されている。
又、変調器部2は、下層側から、n−InPからなり、下部クラッド層となる基板10と、Al系半導体材料からなり、活性層13から発振されたレーザ光を変調する変調器層18と、i−InPからなるエッチストップ層28と、非Al系半導体材料であるi−InGaAsPからなる共通導波路層11と、p−InPからなる上部クラッド層24と、p−InGaAsPからなるコンタクト層25とから構成され、それらの上下に、n−メタルからなる下部電極27、p−メタルからなる上部電極30が形成されたものである。変調器部2において、変調器層18、エッチストップ層28、共通導波路層11が、コア層を構成している。又、レーザ部1と同様に、共通導波路層11及び上部クラッド層24がリッジ構造に形成されて、その両側面が、RuドープのInPからなる埋込層29により埋め込まれた構造となっている。
又、結合部3は、活性層13と変調器層18とを光結合する役割を果たすものであり、下層側から、n−InPからなり、下部クラッド層となる基板10と、非Al系半導体材料であるi−InP又はi−InGaAsPからなる半導体層23と、i−InPからなるエッチストップ層28と、非Al系半導体材料であるi−InGaAsPからなる共通導波路層11と、p−InPからなる上部クラッド層24とから構成される。結合部3においては、共通導波路層11がコア層を構成している。又、レーザ部1と同様に、共通導波路層11及び上部クラッド層24がリッジ構造に形成されて、その両側面が、RuドープのInPからなる埋込層29により埋め込まれた構造となっている。
又、窓構造部4、5は、下層側から、n−InPからなり、下部クラッド層となる基板10と、非Al系半導体材料であるi−InP又はi−InGaAsPからなる半導体層23と、i−InPからなるエッチストップ層28と、非Al系半導体材料であるi−InGaAsPからなる共通導波路層11と、p−InPからなる上部クラッド層24とから構成される。窓構造部4、5は、結合部3と略同等の構成を有しており、ここでも、共通導波路層11がコア層を構成している。この窓構造部4、5は、Al系半導体材料から形成された活性層13及び変調器層18の端面が空気に触れないようにする役割を果たすものであり、そのため、基板10の上面であり、かつ、活性層13及び変調器層18の側端面に、非Al系半導体材料からなる半導体層23を形成することにより、活性層13及び変調器層18の端面を覆うような構造としている。又、レーザ部1と同様に、共通導波路層11及び上部クラッド層24がリッジ構造に形成されて、その両側面が、RuドープのInPからなる埋込層29により埋め込まれた構造となっている。
レーザ部1の活性層13は、更に詳細には、基板10側から、InGaAlAsからなるSCH(Separate Confinement Hetero-structure)層31、InGaAlAsからなるMQW(Multiple Quantum Wall;多重量子井戸)層32、InGaAlAsからなるSCH層33、InAlAsからなるキャリアストップ層34、i−InGaAsPからなる半導体層35からなり、SCH層31、MQW層32、SCH層33、キャリアストップ層34は、Al系半導体材料から構成されている。
又、変調器部2の変調器層18は、基板10側から、InGaAlAsからなるSCH層41、InGaAlAsからなるMQW層42、InGaAlAsからなるSCH層43、i−InGaAsPからなる半導体層44からなり、SCH層41、MQW層42、SCH層43は、Al系半導体材料から構成されている。
このように、本実施例の半導体光集積素子では、レーザ部1、変調器部2、結合部3、窓構造部4、5の両側面を、RuドープInPの埋込層29により埋め込む構成としている。埋込層29は、活性層13、変調器層18、半導体層23の上層側に設けられた共通導波路層11の両側面まで埋め込むことが望ましく、実施例3の図12と比較すると、本実施例では、共通導波路層11までエッチングされて、エッチストップ層28の上層に埋込層29が形成されている。
加えて、本実施例の半導体光集積素子においても、その導波路方向の構造は、図5(a)に示したように、窓構造部4の半導体層23とレーザ部1の活性層13との結合面、レーザ部1の活性層13と結合部3の半導体層23との結合面、結合部3の半導体層23と変調器部2の変調器層18との結合面、変調器部2の変調器層18と窓構造部5の半導体層23との結合面全てを、導波路方向に対して45度傾斜させた構造としている。
(作製方法)
次に、図18〜図22を参照しながら、図23(a)〜(d)、図24(a)〜(f)を用いて、本発明に係る半導体光集積素子の作製方法を説明する。
(1)まず、n−InPの基板10上に、Al系半導体材料からなる活性層13を結晶成長させる(図23(a))。
(2)次に、最初に集積したいレーザ部1の部分の試料表面に誘電体絶縁膜(例えば、酸化絶縁膜)のマスク17を形成する(図23(b))。このマスク17は、変調器部2の部分の試料表面には開口部を有することになる。マスク17は、実施例1と同様な方法により加工する。
(3)次に、マスク17を用いて、マスク17のかかっていない部分、つまり、変調器部2となる部分の活性層13のみをウェットエッチングにより除去する(図23(c))。この際、変調器部2となる部分においては、活性層13までは溶かすが、n−InPの基板10は溶かさないような溶液を用いてウェットエッチングを行う。
(4)次に、ウェットエッチングの後、通常のBJ法により、変調器層18を結晶再成長する。本実施例における作製方法の場合も、この時点では、サイドエッチや酸化の影響は避けることができず、活性層13と変調器層18との結合部分に空孔部21が残ってしまう(図23(d))。
空孔部21が残った状態では、活性層13と変調器層18がきれいに結合されなくなる。この状態のままでは、従来と同様に、活性層13と変調器層18の結合効率が低下し、光出力を減少させることが問題となってしまう。そこで、図24(a)〜(f)以降の手順を経て、結合部3、共通導波路層11を形成すると共に、半導体光集積素子を形成することにより、簡易な作製プロセスで、結合効率の低下を抑制するようにしている。
(5)具体的には、空孔部21がある部分の試料表面に開口部を有すると共に、活性層13の空孔部21とは反対側の端部及び変調器層18の空孔部21とは反対側の端部、つまり、半導体光集積素子の両端部の試料表面に開口部を有するように、誘電体絶縁膜(例えば、酸化絶縁膜)のマスク22を形成する(図24(a))。加えて、マスク22は、活性層13の両端、変調器層18の両端が導波路方向に対して傾斜する形状となるように形成されており、例えば、図5(a)を参照して説明すると、半導体層23に該当する部分に開口部を有し、後に結合面となる開口部の縁部分が導波路方向に対して傾斜する形状となっている。なお、マスク22は、実施例1と同様な方法により加工する。
(6)次に、マスク22を用いて、ドライエッチング又はウェットエッチングにより、空孔部21を含む領域と素子端部の領域を除去する(図24(b))。つまり、後に結合部3となる部分を一旦除去することにより、空孔部21を除去している。この際、活性層13、変調器層18までは除去するが、n−InPの基板10は除去しないようにしている。ドライエッチング加工には、塩素、臭素等のハロゲン系ガス、又は、メタン、エタン等の炭化水素ガス、又は、アルゴンガス等を用いる。又、ウェットエッチングには、酸溶液等を用いる。
(7)次に、エッチングにより除去した部分に、非Al系半導体材料からなる半導体層23をMOVPE法で結晶成長する(図24(c))。このとき、各部のBJ結合面が導波路方向に対して傾斜して形成されることになる。なお、半導体層23としては、例えば、InP、InGaAsP系材料を用いる。
(8)次に、マスク22を、HF系溶液によるウェットエッチング、又は、CF系ガスによるドライエッチングにより除去した後、非Al系半導体材料からなるエッチストップ層28及び共通導波路層11を順に結晶成長させる。このとき、共通導波路層11の層厚dは、0.1μm未満になると結合効率が低下して、素子特性が低下するので、0.1μm以上であることが望ましい。一方、0.6μmより厚くなると、共通導波路層11の光閉じ込めが増大する一方、レーザ部1の活性層11の光閉じ込めが低下して、レーザの特性が低下(閾値電流の増大等)するので、0.6μm以下であることが望ましい。更に、層厚を0.35μm以下にすると、閾値電流が更に低減するので有効である。このように、共通導波路層11の層厚dは、0.1μm以上、0.6μm以下であると有効であり、0.1μm以上、0.35μm以下であることがより望ましい。その後、レーザ部1に回折格子15を形成し、上部クラッド層24をMOVPE法により全面に成長する(図24(d))。このようにして、レーザ部1と変調器部2との間の結合部3と、素子端部の窓構造部4、5が同時に形成される。
(9)引き続き、コンタクト層25を、MOVPE法により結晶成長する(図24(e))。
(10)コンタクト層25の結晶成長後、試料表面に光導波路形成用の誘電体絶縁膜マスクを形成し、共通導波路層11、上部クラッド層24、コンタクト層25を光導波路状にエッチング加工する。光導波路状にエッチング加工する際、除去対象部分においては、共通導波路層11までを除去し、エッチストップ層28で止めるような溶液を用いて行う(図18、図20〜図22参照)。このとき、レーザ部1の光導波路、結合部3の光導波路及び変調器部2の光導波路は、単一モード光導波路の条件を満たすリッジ幅WL、WE、WPに形成される。具体的には、レーザ部1のリッジ幅WL=1.6μm、結合部3のリッジ幅WP=2.5μm、変調器部2のリッジ幅WE=2.0μmとした。
(11)その後、形成した光導波路の両側面に、MOVPE法により、電流ブロック層として、RuドープのInPからなる埋込層29を成長させた(図18、図20〜図22参照)。Ruの原料としては、ビスエチルシクロペンタディエニルルテニウム(bis(ethylcycloPentadienyl)ruthenimm(II))を用いた。
(12)その後、結合部3において電極分離を行う領域を開口すると共に、窓構造部4、5の領域を開口したマスクパターンを用いて、レーザ部1の光導波路と変調器部2の光導波路の間のコンタクト層25を除去して、互いの電極分離を行うと共に、同時に、窓構造部4、5のコンタクト層25も除去する。その後、レーザ部1と変調器部2の上方に各々上部電極30を形成し、基板10の裏面側に下部電極27を形成する(図24(f))。
上述したように、本発明に係る半導体光集積素子においては、レーザ部1と変調器部2とを光結合する結合部3を備えると共に、レーザ部1の活性層13、変調器部2の変調器層18及び結合部3の半導体層23の上層に共通導波路層11を備えており、更に、導波路となる構成のうち、Alを含まない共通導波路層11以上の層をリッジ構造とする埋め込み導波路構造としている。
このように、本実施例の半導体光集積素子は、実施例1に示した半導体光集積素子とは、共通導波路層11の位置が相違しているが、実施例1と同等の効果を奏する。
加えて、活性層13、変調器層18及び半導体層23の上層に共通導波路層11を備えることにより、共通導波路層11のみをリッジ構造に含む構造として、リッジ構造幅の加工により、共通導波路層11のみの幅を制限することができる。その結果、活性層13及び変調器層18の下層側に共通導波路層を備える場合に比べて、横方向の光閉じ込めを増加させて、レーザ部、結合部、変調器部において、導波光を良好に導波させるという利点を有する。
又、本発明に係る半導体光集積素子においては、リッジ構造の両脇をRuドープInP半絶縁性半導体からなる埋込層29で埋め込むので、電流狭窄、放熱性に優れ、その結果、放熱性に優れるので信頼性も向上するという利点も有する。なお、本実施例においては、リッジ構造の両側面を埋め込む半絶縁性半導体材料にRuドープされたものを用いているが、Fe等の他の不純物がドープされたものを用いてもよい。
更に、埋込層29で埋め込む際には、Al系半導体材料から構成される活性層13、変調器層18自体が加工(エッチング)されることがないため、Al系半導体表面(埋め込み後は埋め込み界面)が大気に露出することがなく、酸化されることがない。Al系半導体表面が酸化した場合には、結晶品質を劣化させ、素子特性の劣化を招くが、本発明に係る半導体光集積素子においては、Al系半導体表面が大気に露出することがなく、酸化されることなく加工が行われるので、素子特性が良好であるという利点も有する。
このような構成により、本実施例の半導体光集積素子においては、活性層13から放出された光は、活性層13と共通導波路層11との間をシングルモードで導波され、更に、共通導波路層11と変調器層18との間もシングルモードで導波されて、高い効率で窓構造部5の端面から出射されることになる。
なお、本実施例においては、半導体光集積素子のレーザ部1及び変調器部2の両側面をRuドープのInP層で埋め込む構造(RuドープInP層埋め込み構造)としたが、レーザ部1又は変調器部2の少なくとも一方にRuドープInP層埋め込み構造を導入するようにしてもよい。又、本実施例においては、共通導波路層11を活性層13及び変調器層18の上方側(素子表面側)に設けた構造において、RuドープInP層埋め込み構造を導入することについて説明したが、実施例1、2の構造においても、RuドープInP層埋め込み構造を導入してもよい。
上記実施例1〜4では、素子端部の窓構造部4、5における光導波路のリッジ幅を、隣接するレーザ部1の光導波路、変調器部2の光導波路のリッジ幅と同等としている半導体光集積素子について述べたが、本実施例では、窓構造部4、5における光導波路のリッジ幅が、隣接するレーザ部1の光導波路又は変調器部2の光導波路の少なくとも一方のリッジ幅より大きい半導体光集積素子について述べる。
(構成)
図25に、本実施例の半導体光集積素子を示す。本実施例の半導体光集積素子は、図25に示すように、窓構造部4、5における光導波路のリッジ幅を除いて、その構成は、実施例1に示す半導体光集積素子と同等の構成である。従って、実施例1における構成要素と同等のものについては、同じ符号を用い、重複する説明は省略する。
具体的には、本実施例では、窓構造部4、5における光導波路(上部クラッド層24b、24c)のリッジ幅WW、WXを、共に2.5μmとしており、隣接するレーザ部1の光導波路及び変調器部2の光導波路のリッジ幅WL(2.0μm)、WE(2.0μm)より大きくしている。その他、各層の材料、厚さ等の構成については、実施例1に記載した通りである。
一方、本実施例の半導体光集積素子の作製方法については、実施例1に示した作製方法の(9)において、上部クラッド層24を光導波路状にエッチング加工する際に、図25に示す上部クラッド層24b、24cのように形成すればよいだけであり、他の作製工程については同等である。従って、本実施例では、作製方法の説明についても省略する。
本実施例の半導体光集積素子においては、結合部3における光導波路のリッジ幅WPと共通導波路層11を導波する光の閉じ込め係数の関係により、窓構造部4、5における光導波路のリッジ幅WW、WXが3.8μmより大きくなると、導波する光が単一モードでなくなるので、リッジ幅WW、WXは3.8μm以下が有効であることがわかっている。
又、窓構造部4と隣接するレーザ部1との結合効率の関係及び窓構造部5と隣接する変調器部2との結合効率の関係から、リッジ幅WW、WXが2.0μm以上3.5μm以下の範囲において、結合効率を80%以上にすることができることがわかっている。このことは、特に窓構造部5と隣接する変調器部2との光結合において、光損失による変調器部2からの出力光の低下を抑制することができることを示す。
上述したように、窓構造部4、5における光導波路のリッジ幅WW、WXを、隣接するレーザ部1の光導波路又は変調器部2の光導波路のリッジ幅WL、WEよりも大きくすることにより、良好な出力特性を得ることができる。更に、窓構造部4、5における光導波路のリッジ幅WW、WXを、隣接するレーザ部1の光導波路又は変調器部2の光導波路のリッジ幅WL、WEよりも大きくすることにより、出力光のビーム形状を円形に維持することができる。これにより、本実施例の半導体光集積素子を、光ファイバと接続する際に光ファイバとの結合効率の低減を抑制できる。
本実施例において、窓構造部4、5における光導波路のリッジ幅WW、WXは、共に、隣接するレーザ部1の光導波路又は変調器部2の光導波路のリッジ幅WL、WEより大きくしたが、隣接するレーザ部1の光導波路のリッジ幅WL又は変調器部2の光導波路のリッジ幅WEのうち、少なくともどちらか一方のリッジ幅より大きくすればよい。
又、本実施例においては、実施例1と同様に、波長帯を1.55μmとしているが、1.3μmにも適用できる。更に、本実施例においては、共通導波路層11を活性層13及び変調器層18の下層側に設けたが、実施例3に示すように、共通導波路層11を活性層13及び変調器層18の上層側に設けても、同様の効果が得られる。加えて、本実施例では、素子構造にリッジ構造を採用しているが、実施例4に示すように、Ru等をドープした半導体層(例えば、RuドープInP層)で、メサ両脇を埋め込む構造でも、同様の効果が得られる。
<その他の実施例>
なお、上記実施例1〜5においては、1.3μm波長帯、1.55μm波長帯に対応する半導体光集素子について説明したが、Al系半導体材料からなる活性層を備えるレーザ部光導波路と、Al系半導体材料からなる変調器層を備える変調器部光導波路を用いる場合であれば、他の波長帯であっても本発明は適用でき、同等の効果を得ることができる。
又、共通導波路層の波長組成は、1.1μm、1.3μmを用いたが、この波長組成に限ることはない。特に、共通導波路層の波長組成は、レーザ部の活性層、変調器部の変調器層よりも長波長であると、光の導波がマルチモードになる(単一モードでない)場合があるので、レーザ部の活性層、変調器部の変調器層よりも短波長であることが望ましい。
又、レーザ部の光導波路と変調器部の光導波路の結合部にInPを用いたが、InGaAs、InGaAsP等のAlを含まない半導体材料であれば適用できる。この場合、InGaAs、InGaAsP等の波長組成は、レーザ部の活性層と変調器部の変調器層に用いたものより短波長であることが望ましい。レーザ部、変調器部、結合部、共通導波路層等を構成する層の厚さ、幅等は他の値であっても構わない。
本発明に係る半導体光集積素子は、光通信用モジュール、光通信システムにおける光変調器集積化光源に好適なものであり、特に、温度調節用クーラー無しで動作させる低コストの光通信用モジュール、光通信システムに用いて好適なものである。
本発明に係る半導体光集積素子の実施形態の一例(実施例1)を示す斜視図である。
図1に示す半導体光集積素子の導波路方向の断面図である。
図1に示す半導体光集積素子におけるレーザ部の断面図である。
図1に示す半導体光集積素子における結合部の断面図である。
図2におけるA−A線矢視断面図である。
屈折率が互いに異なる物質の境界面における光の屈折を説明する図である。
バンドギャップ波長と屈折率差との関係を示すグラフである。
入射角と反射率との関係を示すグラフである。
境界面への入射角に対する反射波の結合率を示すグラフである。
図1に示す半導体光集積素子の作製方法(前半)を説明する図である。
図1に示す半導体光集積素子の作製方法(後半)を説明する図である。
本発明に係る半導体光集積素子の実施形態の他の一例(実施例3)を示す斜視図である。
図12に示す半導体光集積素子の導波路方向の断面図である。
図12に示す半導体光集積素子におけるレーザ部の断面図である。
図12に示す半導体光集積素子における結合部の断面図である。
図12に示す半導体光集積素子の作製方法(前半)を説明する図である。
図12に示す半導体光集積素子の作製方法(後半)を説明する図である。
本発明に係る半導体光集積素子の実施形態の他の一例(実施例4)を示す斜視図である。
図18に示す半導体光集積素子の導波路方向の断面図である。
図18に示す半導体光集積素子におけるレーザ部の断面図である。
図18に示す半導体光集積素子における結合部の断面図である。
図18に示す半導体光集積素子における変調器部の断面図である。
図18に示す半導体光集積素子の作製方法(前半)を説明する図である。
図18に示す半導体光集積素子の作製方法(後半)を説明する図である。
本発明に係る半導体光集積素子の実施形態の他の一例(実施例5)を示す斜視図である。
BJ法を説明する模式図である。
サイドエッチを説明する模式図である。
Al系半導体材料層の酸化を説明する模式図である。
符号の説明
1 半導体レーザ部
2 半導体光変調器部
3 結合部
4、5 窓構造部
10 基板
11 共通導波路層
12、28 エッチストップ層
13 活性層
18 変調器層
23 半導体層
24 上部クラッド層
29 埋込層