JP4971125B2 - 衝撃吸収部材 - Google Patents

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Description

本発明は、衝突対象である乗員や歩行者などを、衝突時の衝撃から保護するための衝撃吸収部材に関する。
例えば、特許文献1には、格子状に配置されるリブを用いた衝撃吸収部材が開示されている。特許文献1の衝撃吸収部材によると、リブの破壊により、衝突時の衝撃を吸収することができる。
しかしながら、特許文献1の衝撃吸収部材によると、衝撃吸収部材が変形する際、リブが内側に折り込まれ、変形のストロークが短くなるおそれがある。このため、衝突後の衝撃吸収部材に比較的大きな潰れ残りが発生する場合がある。潰れ残り量が大きいと、その分、衝突エネルギの吸収量が小さくなる。
この点、特許文献2には、風船形状の柔軟部材を用いた衝撃吸収部材が開示されている。柔軟部材はゴム製である。柔軟部材の内部には、空気又は液体が収容されている。柔軟部材の、荷重入力方向と反対方向には、エネルギ吸収部材が配置されている。エネルギ吸収部材の、柔軟部材側の面には、凹凸形状が形成されている。荷重入力時においては、柔軟部材が、エネルギ吸収部材の凹凸形状に入り込むように変形する。特許文献2の衝撃吸収部材は、当該柔軟部材の変形により、潰れ残り量が大きくなるのを抑制している。
また、特許文献3には、流体が収容された流体室と、空の排出室と、を有する衝撃吸収部材が開示されている。荷重は、流体室に入力される。荷重入力時においては、流体室と排出室とが小径の排出孔を介して連通する。特許文献3の衝撃吸収部材は、流体を排出室にリークすることにより、潰れ残り量が大きくなるのを抑制している。
ところが、特許文献2の衝撃吸収部材によると、柔軟部材がエネルギ吸収部材の凹凸形状に入り込むように変形する間、衝撃吸収部材から衝突対象(例えば、乗員、歩行者、軽車両、動物など)に加わる反力(以下、適宜、「反力」と略称する。)が大きくなりにくい。同様に、特許文献3の衝撃吸収部材によると、流体がリークする間、反力が大きくなりにくい。
このように、特許文献2、特許文献3の衝撃吸収部材によると、衝突初期における反力が大きくなりにくい。言い換えると、衝突初期における反力の立ち上がりが遅い。したがって、衝突全期で見た場合、結果的に衝撃吸収部材のエネルギ吸収量が小さくなってしまう。
特開平10−35378号公報 実開平4−118845号公報 特開2000−272447号公報 特開平8−40306号公報
この点、特許文献4には、粘性流体(オイル、グリース)が封入された流体室を有する衝撃吸収部材が開示されている。特許文献4の段落[0008]には、流体室の周囲壁の厚さと形状は、流体を、荷重に対して、収容または解放できるように決定される旨が記載されている。
特許文献4の衝撃吸収部材によると、粘性流体は、少なくとも所定の荷重が加わるまでは、流体室からリークしない。このため、特許文献2、3の衝撃吸収部材と比較して、衝突初期における反力の立ち上がりが早い。
ところが、特許文献4の衝撃吸収部材の流体室の周囲壁は、全て平板状を呈している。図17に、周囲壁が全て平板状の衝撃吸収部材の模式図を示す。図17中に一点鎖線で示すように、衝撃吸収部材100の周囲壁101が全て平板状の場合、入力された荷重F100により、まず入力壁部101aが流体室102側に没入する。次いで、荷重F100が、粘性流体を介して、側壁部101bに伝達される。このため、図17中に一点鎖線で示すように、入力壁部101aの没入変形分だけ、側壁部101bが膨張する。このように、入力壁部101aが没入し側壁部101bが膨張する間、流体室102は、荷重F100入力方向に圧縮されるものの、荷重F100入力方向に対して略垂直方向に膨張する。したがって、流体室102の容積はあまり変化しない。言い換えると、流体室102の内圧は、あまり上昇しない。流体室102の内圧が上昇しない間は、やはり反力の立ち上がりが遅くなってしまう。
このように、特許文献4の衝撃吸収部材によると、特許文献2、3の衝撃吸収部材と比較して、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。しかしながら、近年における自動車の安全性向上のニーズ等に鑑みると、特許文献4の衝撃吸収部材の反力の立ち上がりの早さは、必ずしも満足のいくレベルには到達していなかった。
本発明の衝撃吸収部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、衝突後の潰れ残り量が小さく、衝突初期において衝撃吸収部材から衝突対象に加わる反力の立ち上がりが早い衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
(1)上記課題を解決するため、本発明の衝撃吸収部材は、被取付部材の荷重入力側に配置される基壁部と、該基壁部の荷重入力側に配置される入力壁部と、該基壁部と該入力壁部とを連結すると共に、荷重入力時において外側に変形可能な少なくとも一つの可変側壁部と、該基壁部と該入力壁部と該可変側壁部とに囲まれ流体が封入される流体室と、を有し、荷重入力前において、該可変側壁部のうち少なくとも一つは、該基壁部の外面の外縁と、該入力壁部の外面の外縁と、を最短距離で結ぶ仮想面に対して、外側に膨出している衝撃吸収体を備えることを特徴とする。
本発明の衝撃吸収部材によると、可変側壁部のうち少なくとも一つが、荷重入力前の段階で、既に、該基壁部の外面の外縁と、該入力壁部の外面の外縁と、を最短距離で結ぶ仮想面に対して、外側に膨出している。このため、前出図17に示す従来の衝撃吸収部材100のように、側壁部101bが膨出してから流体室102の内圧が上昇する場合と比較して、流体室の内圧の上昇が早くなる。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。
また、可変側壁部のうち少なくとも一つは、内側ではなく外側に膨出している。このため、荷重入力時に、当該可変側壁部が内側に折り込まれるように変形するおそれが小さい。したがって、衝突後の潰れ残り量が小さくなる。
このように、本発明の衝撃吸収部材は、衝突後の潰れ残り量が小さく、衝突初期において衝撃吸収部材から衝突対象に加わる反力の立ち上がりが早い。このため、本発明の衝撃吸収部材は、単位体積あたりの衝突エネルギの吸収量が大きい。したがって、所望の衝突エネルギの吸収量を確保しながら、体格を小型化することができる。よって、容易に、狭小スペースに配置することができる。
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記流体は液体である構成とする方がよい。こうすると、流体が気体である場合と比較して、シール構造が簡単になる。また、一般的に、液体は、気体よりも、体積弾性率が大きい。このため、液体は、気体と比較して、衝突時に入力された荷重により、圧縮変形しにくい。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。
(1−2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記衝撃吸収体は、樹脂の一体物である構成とする方がよい。こうすると、シール構造が簡単になる。また、部品点数が少なくなる。
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記流体は、同じ温度における体積弾性率が、空気よりも大きい非圧縮性液体である構成とする方がよい。本構成によると、流体が空気である場合と比較して、シール構造が簡単になる。また、非圧縮性液体は、空気と比較して、衝突時に入力された荷重により、圧縮変形しにくい。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。
(2−1)好ましくは、上記(2)の構成において、20℃における前記体積弾性率は、0.5GPa以上とする方がよい。こうすると、さらに衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。
(2−2)さらに好ましくは、上記(2)の構成において、20℃における前記体積弾性率は、1.0GPa以上とする方がよい。こうすると、さらに衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記衝撃吸収体は、引張破断伸びが100%以上の樹脂製である構成とする方がよい。
本構成における引張破断伸びは、JIS K 7113の試験法により測定する。衝突の際、衝撃吸収体の可変側壁部には、入力された荷重により、引張力が加わる。本構成において、引張破断伸びを100%以上としたのは、100%未満の場合、可変側壁部の引張変形による衝突エネルギの消費量が、小さくなるおそれがあるからである。
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記衝撃吸収体は、筒状を呈すると共に、一対の部分円弧状の前記可変側壁部を有しており、さらに、該衝撃吸収体の筒軸方向両端の開口を封止し、一対の該可変側壁部よりも剛性が高く、前記被取付部材に取り付けられる一対の取付部材を備える構成とする方がよい。
取付部材は、一対の可変側壁部よりも、剛性が高い。このため、荷重入力時に、取付部材は、一対の可変側壁部よりも、変形しにくい。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。また、高剛性の取付部材を介して、衝撃吸収体を被取付部材に堅固に取り付けることができる。
(5)好ましくは、上記(1)ないし(4)のいずれかの構成において、前記入力壁部の外面は、略平面状を呈している構成とする方がよい。本構成によると、衝突対象に入力壁部の外面が、直接にあるいは間接的に、面接触しやすい。このため、入力荷重が、入力壁部の特定部位に集中するのを抑制することができる。したがって、より迅速に、入力荷重を、流体を介して、入力壁部から可変側壁部に伝達することができる。よって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。また、衝突対象に入力壁部の外面が、直接にあるいは間接的に、面接触しやすいため、衝突対象が入力壁部から反力を受ける際の加害性が小さくなる。
本発明によると、衝突後の潰れ残り量が小さく、衝突初期における衝撃吸収部材から衝突対象に加わる反力の立ち上がりが早い衝撃吸収部材を提供することができる。
以下、本発明の衝撃吸収部材の実施の形態について説明する。
<第一実施形態>
[衝撃吸収部材の配置]
まず、本実施形態の衝撃吸収部材の配置について説明する。図1に、本実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図を示す。なお、図1、図2の方位(左右)は、車両後方から前方を見た場合を基準に設定している。
図1に示すように、車室内の天井には、樹脂製のルーフライニング9が配置されている。衝撃吸収部材1(図1中、ハッチングで示す。)は、ルーフライニング9内部の左右縁に、各々、前後に二列ずつ、収容されている。すなわち、衝撃吸収部材1は、ルーフライニング9内部に、合計四列配置されている。
以下、ルーフライニング9内部右前の衝撃吸収部材1の、配置および構成について説明する。残りの三列の衝撃吸収部材1の配置および構成も、右前に配置された衝撃吸収部材1と同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
図2に、図1のII−II断面図を示す。図2に示すように、ルーフライニング9上方には、所定間隔だけ離間して、鋼製のルーフパネル90が配置されている。ルーフパネル90は、車両の外郭を形成している。ルーフライニング9とルーフパネル90との間には、鋼製であって高剛性のルーフサイドレール部91が介装されている。ルーフサイドレール部91は、本発明の被取付部材に含まれる。衝撃吸収部材1は、当該ルーフサイドレール部91の下面に、固定されている。衝突の際、衝撃吸収部材1には、左下方向から荷重F1が入力される。
[衝撃吸収部材の構成]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の構成について説明する。図3に、本実施形態の衝撃吸収部材の斜視図を示す。図4に、同衝撃吸収部材の分解斜視図を示す。図5に、図3のV−V断面図を示す。図6に、図3のVI−VI断面図を示す。図7に、同衝撃吸収部材の荷重入力時の斜視図を示す。なお、図3〜図7の方位と、図1、図2の方位とは、前後方向のみ共通している。また、図3〜図7の上方向は、図2の荷重F1入力方向に対応している。
衝撃吸収部材1は、図3〜図7に示すように、衝撃吸収体2と、一対の取付部材3A、3Bと、を備えている。衝撃吸収体2は、熱可塑性エラストマー(エーイーエス・ジャパン株式会社サントプレーン(登録商標)201−87)製であって、筒状を呈している。衝撃吸収体2は、前後方向に延在している。衝撃吸収体2は、基壁部20と、入力壁部21と、一対の可変側壁部22L、22Rと、流体室23と、を備えている。衝撃吸収体2は、押出成形により作製された一体物である。
基壁部20は、平板状を呈している。基壁部20は、前出図2に示すように、ルーフサイドレール部91に近接して配置されている。入力壁部21は、平板状を呈している。つまり、入力壁部21の外面は、略平面状を呈している。入力壁部21は、前出図2に示すように、ルーフライニング9に近接して配置されている。入力壁部21と基壁部20とは、図3〜図7に示すように、上下方向に所定間隔だけ離間して、略平行に配置されている。
可変側壁部22Lは、外側(図3〜図7における左側)に膨らむ部分円弧板状を呈している。可変側壁部22Lは、図3〜図7に示すように、入力壁部21の左縁と基壁部20の左縁とを、上下方向に連結している。
同様に、可変側壁部22Rは、外側(図3〜図7における右側)に膨らむ部分円弧板状を呈している。可変側壁部22Rは、図3〜図7に示すように、入力壁部21の右縁と基壁部20の右縁とを、上下方向に連結している。
流体室23は、衝撃吸収体2の内部に配置されている。すなわち、流体室23は、図3〜図7において、下方から基壁部20により、上方から入力壁部21により、左方から可変側壁部22Lにより、右方から可変側壁部22Rにより、囲まれている。流体室23には、オイルが充填されている。オイルは、本発明の非圧縮性液体に含まれる。
取付部材3Aは、ABS樹脂(アクリロニトリル、スチレン、ブタジエンの共重合体)製であって、矩形板状を呈している。取付部材3Aは、衝撃吸収体2よりも、剛性が高い。取付部材3Aの後面には、長円状(対向する半円同士を一対の直線で繋いだ環状)の取付溝30Aが凹設されている。取付溝30Aには、衝撃吸収体2の前端が挿入されている。取付溝30Aと、衝撃吸収体2の前端とにより、流体室23前端が封止されている。取付部材3Aは、前出図2に示すように、ルーフサイドレール部91に取り付けられている。
同様に、取付部材3Bは、ABS樹脂製であって、矩形板状を呈している。取付部材3Bは、衝撃吸収体2よりも、剛性が高い。取付部材3Bの前面には、長円状の取付溝30Bが凹設されている。取付溝30Bには、衝撃吸収体2の後端が挿入されている。取付溝30Bと、衝撃吸収体2の後端とにより、流体室23後端が封止されている。取付部材3Bは、取付部材3A同様に、ルーフサイドレール部91に取り付けられている(前出図2参照)。
[衝撃吸収部材の寸法]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の寸法について説明する。図5に示すように、衝撃吸収体2の可変側壁部22L、22R各々の上下方向長さ(=基壁部20下面と入力壁部21上面との間の間隔)L1は、25mmに設定されている。また、可変側壁部22L、22R各々の左右方向長さL3は、12.5mmに設定されている。言い換えると、基壁部20の下面の左縁と、入力壁部21の上面の左縁と、を最短距離で結ぶ仮想面f1に対して、可変側壁部22Lは、左側に12.5mmだけ膨出している。同様に、基壁部20の下面の右縁と、入力壁部21の上面の右縁と、を最短距離で結ぶ仮想面に対して、可変側壁部22Rは、右側に12.5mmだけ膨出している。また、基壁部20、入力壁部21各々の左右方向長さL2は、32mmに設定されている。また、衝撃吸収体2の肉厚L4は、0.5mmに設定されている。
[衝撃吸収部材の動き]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の動きについて説明する。例えば事故などにより、乗員の頭部がルーフライニング9に衝突すると、図2、図7に示すように、荷重F1が、入力壁部21に入力される。荷重F1により、入力壁部21は、頭部の形状に沿って陥没変形する。
ここで、流体室23に封入されているのは、非圧縮性のオイルである。このため、オイルを介して、可変側壁部22L、22R、基壁部20、取付部材3A、3Bには、入力壁部21が陥没した分を補償するように、流体室23を膨らませる方向に、外方向の荷重が加わる。
基壁部20は、ルーフサイドレール部91に近接している。並びに、取付部材3A、3Bは、高剛性である。このため、流体室23を囲む部位のうち、可変側壁部22L、22Rが最も膨らみやすい。
しかしながら、可変側壁部22L、22Rは、荷重入力前から、既に、外側に膨出している。このため、オイルを介して伝達される外方向の荷重により、可変側壁部22L、22Rは、直ちに外側に膨出しにくい。したがって、流体室23の内圧が迅速に上昇する。よって、衝撃吸収部材1から乗員に加わる反力が、直ちに大きくなる。オイルを介して伝達される外方向の荷重により、可変側壁部22L、22Rは、徐々に引張変形する。
このように、オイルが荷重伝達媒体となる一連の変形過程により、衝撃吸収部材1は衝突エネルギを吸収する。言い換えると、乗員頭部の運動エネルギの少なくとも一部が、衝撃吸収部材1の変形エネルギに変換される。
[作用効果]
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の作用効果について説明する。本実施形態の衝撃吸収部材1によると、可変側壁部22L、22Rが、荷重F1入力前の段階で、既に、仮想面f1に対して、外側に膨出している。このため、流体室23の内圧が迅速に上昇する。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。
また、可変側壁部22L、22Rは、内側ではなく外側に膨出している。このため、荷重F1入力時に、可変側壁部22L、22Rが内側に折り込まれるように変形するおそれが小さい。したがって、衝突後の潰れ残り量が小さくなる。
また、流体室23には、液体であるオイルが封入されている。このため、流体室23に気体が封入されている場合と比較して、シール構造が簡単になる。また、オイルは、空気と比較して、衝突時に入力された荷重F1により、圧縮変形しにくい。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。また、衝撃吸収体2は、熱可塑性エラストマー製である。このため、可変側壁部22L、22Rは、引張変形により、充分に衝突エネルギを消費することができる。
また、取付部材3A、3Bは、可変側壁部22L、22Rよりも、剛性が高い。このため、荷重F1入力時に、取付部材3A、3Bは、可変側壁部22L、22Rよりも、変形しにくい。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。また、高剛性の取付部材3A、3Bを介して、衝撃吸収体2をルーフサイドレール部91に堅固に取り付けることができる。
また、入力壁部21の外面は、略平面状を呈している。このため、乗員頭部に入力壁部21の外面が間接的に面接触する。したがって、入力荷重F1が、入力壁部21の特定部位に集中するのを抑制することができる。よって、より迅速に、入力荷重F1を、オイルを介して、入力壁部21から可変側壁部22L、22Rに伝達することができる。また、乗員頭部に入力壁部21の外面が間接的に面接触するため、乗員頭部が入力壁部21から反力を受ける際の加害性が小さくなる。
第一参考形態>
参考形態の衝撃吸収部材と第一実施形態の衝撃吸収部材との相違点は、衝撃吸収部材が一体物である点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図8に、本参考形態の衝撃吸収部材の長手方向断面図を示す。なお、図6と対応する部位については、同じ符号で示す。
図8に示すように、本参考形態の衝撃吸収部材1は、衝撃吸収体2のみからなる。衝撃吸収体2は、長手方向(前後方向)両端が封止された中空筒状を呈している。衝撃吸収体2は、基壁部20と、入力壁部21と、四つの可変側壁部22A、22Bと、流体室23と、を備えている。これらの部位のうち、入力壁部21、左右一対の可変側壁部の構成、配置は、第一実施形態同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。基壁部20の下面は、取付部材を介してではなく、直接、ルーフサイドレール部に固定されている。
可変側壁部22Aは、入力壁部21の前縁と基壁部20の前縁とを、上下方向に連結している。可変側壁部22Aは、部分円弧板状を呈している。可変側壁部22Aは、入力壁部21の上面の前縁と、基壁部20の下面の前縁と、を最短距離で結ぶ仮想面f2に対して、外側(前側)に膨らんでいる。
同様に、可変側壁部22Bは、入力壁部21の後縁と基壁部20の後縁とを、上下方向に連結している。可変側壁部22Bは、部分円弧板状を呈している。可変側壁部22Bは、入力壁部21の上面の後縁と、基壁部20の下面の後縁と、を最短距離で結ぶ仮想面に対して、外側(後側)に膨らんでいる。
流体室23は、衝撃吸収体2の内部に配置されている。すなわち、流体室23は、下方から基壁部20により、上方から入力壁部21により、前後左右から四つの可変側壁部22A、22Bにより、囲まれている。流体室23には、水が充填されている。水は、本発明の非圧縮性液体に含まれる。
参考形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分に関しては、第一実施形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。また、本参考形態の衝撃吸収部材1によると、取付部材が不要な分、部品点数が少なくなる。また、本参考形態の衝撃吸収部材1は一体物であるため、シール性が高い。また、取付部材が必要な場合と比較して、取付部材と衝撃吸収体2との接合部分のシール性を考慮する必要がない。
また、本参考形態の衝撃吸収部材1によると、基壁部20の下面がルーフサイドレール部に固定されている。このため、荷重入力の際、基壁部20が、図8における下方に膨出しにくい。したがって、衝突初期における反力の立ち上がりが早くなる。
第二参考形態>
参考形態の衝撃吸収部材と第一参考形態の衝撃吸収部材との相違点は、基壁部が平板状を呈していない点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図9に、本参考形態の衝撃吸収部材が配置されたルーフサイドレール部付近の短手方向断面図を示す。なお、図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
図2に示すように、ルーフサイドレール部91は、左下方向に向かって突出する屈曲板状を呈している。ルーフサイドレール部91の形状に対応して、衝撃吸収部材1の基壁部20も、左下方向に向かって突出する屈曲板状を呈している。可変側壁部22L、22Rは、基壁部20の外面の外縁と、入力壁部21の外面の外縁と、を最短距離で結ぶ仮想面f3に対して、外側に膨出している。
参考形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分に関しては、第一参考形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。本参考形態のように、平板状でない被取付部材(ルーフサイドレール部91)に対しても、基壁部20の形状を被取付部材の形状に沿わせることにより、衝撃吸収部材1を被取付部材に取り付けることができる。
第三参考形態>
参考形態の衝撃吸収部材と第一参考形態の衝撃吸収部材との相違点は、衝撃吸収体が円形を呈している点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図10に、本参考形態の衝撃吸収部材の部分断面斜視図を示す。
図10に示すように、衝撃吸収部材4は、基壁部40と、入力壁部41と、可変側壁部42と、流体室43と、を備えている。基壁部40および入力壁部41は、共に円板状を呈している。基壁部40と入力壁部41とは、上下方向に所定間隔だけ離間して配置されている。可変側壁部42は、円筒状を呈している。可変側壁部42は、径方向外側に膨出している。すなわち、可変側壁部42は、入力壁部41の上面の外周縁と、基壁部40の下面の外周縁と、を最短距離で結ぶ仮想面f4に対して、径方向外側に膨らんでいる。
参考形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分に関しては、第一参考形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。本参考形態の衝撃吸収部材1のように、長尺状以外の形状の衝撃吸収部材を用いてもよい。本参考形態の衝撃吸収部材1は、例えば、ルーフライニングの内側(上側)に配置することができる。
<その他>
以上、本発明の衝撃吸収部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
例えば、衝撃吸収部材1の形状は特に限定しない。図11に、その他の実施形態(その1)の衝撃吸収部材の短手方向断面図を示す。図12に、その他の実施形態(その2)の衝撃吸収部材の短手方向断面図を示す。なお、図11、図12において、図5と対応する部位については、同じ符号で示す。図11に示すように、基壁部20の左右方向長さと、入力壁部21の左右方向長さとは、一致しなくてもよい。また、図12に示すように、可変側壁部22L、22Rは、各々、仮想面f1に対して、段階的に(図12の場合は二段階)膨出していてもよい。また、図11、図12の各々において、基壁部20と入力壁部21とが、逆になっていてもよい。
また、上記実施形態においては、衝撃吸収部材1をルーフライニング9内部に配置したが、例えばフロントピラー内部、センターピラー内部、リアピラー内部、バンパー内部、ドア内部などに配置してもよい。
また、上記実施形態の衝撃吸収部材1においては、側壁部の全てを可変側壁部22A、22B、22L、22R、42としたが、一部だけを可変側壁部としてもよい。すなわち、外側から隣接部材により支持された側壁部があってもよい。
また、上記実施形態の衝撃吸収部材1においては、可変側壁部22A、22B、22L、22R、42の全てを、仮想面f1〜f4に対して、外側に膨出配置したが、一部のみ膨出配置してもよい。
以下、本発明の衝撃吸収部材について行った衝突実験について説明する。
<サンプルの寸法>
(実施例)
実施例として用いたのは、第一実施形態の衝撃吸収部材1である。寸法も第一実施形態同様である(図5参照。ただし、衝撃吸収体2の長手方向(前後方向)長さは、180mmである。)。したがって、ここでは説明を割愛する。
(比較例)
比較例として用いたのは、平板に格子状のリブが立設された形状を呈した衝撃吸収部材である。図13(a)に、比較例の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)を示す。図13(b)に、同衝撃吸収部材の寸法図(下面図)を示す。図14に、同衝撃吸収部材の斜視図を示す。図13、図14に示すように、比較例の衝撃吸収部材6は、入力壁部60と、一対の横リブ61と一対の縦リブ62とを備えている。衝撃吸収部材6は、PP(ポリプロピレン)樹脂製である。入力壁部60は、正方形の平板状を呈している。一対の横リブ61は、互いに平行であって、入力壁部60下面から下方に立設されている。一対の縦リブ62は、互いに平行であって、入力壁部60下面から下方に立設されている。一対の縦リブ62と一対の横リブ61とは、格子状に直交している。
入力壁部60の板厚L13は、2.5mmに設定されている。横リブ61および縦リブ62の根本部分の肉厚L14は、3.4mmに設定されている。横リブ61および縦リブ62の先端部分の肉厚L15は、1.2mmに設定されている。横リブ61および縦リブ62の高さL8は、25mmに設定されている。一対の横リブ61間の間隔L11は、25mmに設定されている。また、入力壁部60両縁から、近い方の横リブ61までの距離L12は、各々、12.5mmに設定されている。同様に、一対の縦リブ62間の間隔L9は、25mmに設定されている。また、入力壁部60両縁から、近い方の縦リブ62までの距離L10は、各々、12.5mmに設定されている。
<実験方法>
図15に、衝突実験の実験方法の模式図を示す。図15に示すように、実験は、半径R1が82.5mmの半球状のストライカ7を、実施例、比較例の衝撃吸収部材1、6に、各々、一定の速度18km/hで衝突させることにより行った。
<実験結果>
図16に、ストライカの変位とストライカが受ける反力との関係をグラフで示す。図16に示すように、例えば反力しきい値を5kNとする場合、理想的な反力線Dは点線のようになる。すなわち、衝撃吸収部材の場合、衝突対象保護のための反力しきい値を超えずに、かつ反力が略一定のまま入力壁部が変位する(つまり衝撃吸収部材が潰れる)区間D1が長いことが理想とされる。
この理想的な反力線Dに近似した反力履歴を示すのが、実施例の衝撃吸収部材1の反力線である。すなわち、実施例の衝撃吸収部材1によると、衝突初期において、反力が反力しきい値を超えない。また、反力が略一定(3.1kN〜4.2kN程度)のまま、入力壁部21が変位する区間D2が長い。これに対して、比較例の衝撃吸収部材6によると、衝突初期において、反力が反力しきい値を超えてしまう。また、反力が略一定(3.8kN〜4.5kN程度)のまま、入力壁部60が変位する区間D3が短い。また、実施例の方が、比較例よりも、衝突初期における反力の立ち上がり(反力線の傾き=反力/変位)が早い。
以上説明したように、衝突実験から、比較例の衝撃吸収部材6と比較して、実施例の衝撃吸収部材1によると、衝突対象者を保護しながら、かつ充分に衝突エネルギを吸収可能なことが判る。
第一実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図である。 図1のII−II断面図である。 同衝撃吸収部材の斜視図である。 同衝撃吸収部材の分解斜視図である。 図3のV−V断面図である。 図3のVI−VI断面図である。 同衝撃吸収部材の荷重入力時の斜視図である。 第一参考形態の衝撃吸収部材の長手方向断面図である。 第二参考形態の衝撃吸収部材が配置されたルーフサイドレール部付近の短手方向断面図である。 第三参考形態の衝撃吸収部材の部分断面斜視図である。 その他の実施形態(その1)の衝撃吸収部材の短手方向断面図である。 その他の実施形態(その2)の衝撃吸収部材の短手方向断面図である。 (a)は比較例の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)である。(b)は同衝撃吸収部材の寸法図(下面図)である。 同衝撃吸収部材の斜視図である。 衝突実験の実験方法の模式図である。 ストライカの変位とストライカが受ける反力との関係を示すグラフである。 周囲壁が全て平板状の衝撃吸収部材の模式図である。
符号の説明
1:衝撃吸収部材。
2:衝撃吸収体、20:基壁部、21:入力壁部、22A:可変側壁部、22B:可変側壁部、22L:可変側壁部、22R:可変側壁部、23:流体室。
3A:取付部材、3B:取付部材、30A:取付溝、30B:取付溝。
4:衝撃吸収部材、40:基壁部、41:入力壁部、42:可変側壁部、43:流体室。
6:衝撃吸収部材、60:入力壁部、61:横リブ、62:縦リブ。
7:ストライカ。
9:ルーフライニング、90:ルーフパネル、91:ルーフサイドレール部(被取付部材)。
f1〜f4:仮想面。

Claims (2)

  1. 被取付部材の荷重入力側に配置される基壁部と、
    該基壁部の荷重入力側に配置される入力壁部と、
    該基壁部と該入力壁部とを連結すると共に、荷重入力時において外側に変形可能な少なくとも一つの可変側壁部と、
    該基壁部と該入力壁部と該可変側壁部とに囲まれ流体が封入される流体室と、
    を有し、
    荷重入力前において、該可変側壁部のうち少なくとも一つは、該基壁部の外面の外縁と、該入力壁部の外面の外縁と、を最短距離で結ぶ仮想面に対して、外側に膨出している衝撃吸収体を備え
    前記流体は、同じ温度における体積弾性率が、空気よりも大きい非圧縮性液体であり、
    前記衝撃吸収体は、引張破断伸びが100%以上の樹脂製であり、
    前記衝撃吸収体は、筒状を呈すると共に、一対の部分円弧状の前記可変側壁部を有しており、
    さらに、該衝撃吸収体の筒軸方向両端の開口を封止し、一対の該可変側壁部よりも剛性が高く、前記被取付部材に取り付けられる一対の取付部材を備える衝撃吸収部材。
  2. 前記入力壁部の外面は、略平面状を呈している請求項1に記載の衝撃吸収部材。
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