JP4969742B2 - 加工性の良い鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性の良い鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の鋼板は、製造時の製造条件のばらつきに起因して発生する不均一な残留歪みや不均一な強度・耐力分布によって、切断加工した場合、横曲がり、面外変形、幅方向の変形、長手方向の変形、開先寸法不良と言った形状不良が発生したり、変形量にばらつきが発生する場合がある。
【0003】
溶接においても、溶け込み不良や製品の形状・寸法不良が発生したり、溶接時の変形量がばらつくことがある。
線状加熱などの熱曲げやローラ曲げやプレス曲げ等の機械曲げにおいても、変形量がばらつくことがある。
その結果として、加工後の手直しや製品の廃棄等といった生産性の低下やコストアップを招くことになる。
【0004】
前記問題点を解決しようとして、例えば、特開平6−172921号公報に記載のものがある(以下、「従来技術1」という)。この従来技術1は、鋼板のミクロ組織が、面積率で30%以上のベイナイトからなり、降伏強度が36キロ以上を有する溶接歪みが少ない鋼板に係わるものである。
また、特開平5−57349号公報、特開平6−254615号公報、特開平6−254616号公報、特開昭61−212422号公報等に記載の技術がある(以下、「従来技術2」という)。この従来技術2は、圧延ラインにおいて、温度分布や材質の不均一を防止する方策を行うことによって、残留応力及び強度ばらつきを小さくして、切断変形を小さくするというものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来技術1は、溶接時の角変形の抑制のみを対象としたものであり、鋼板の残留応力に起因する変形や板間での変形の安定性を保証するものではなかった。
又、前記従来技術2では、圧延ラインでの温度制御において板面全体を高精度に均一化することは困難であり、また材質の均質性を確保できても、前記の加工時におけるトラブルが発生する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、これら従来の技術の問題点を解決した加工性の良い鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、加工性の良い鋼板を得るための条件として、鋼板の板厚方向の耐力分布に係わる値が所定の範囲内に制御されていることを見出した。
即ち、本発明者らは、鋼板の耐力の分布と鋼板加工時の変形量の相関について鋭意研究を重ねた。その過程において、鋼板の板厚方向の耐力分布に係わる値を制御することにより、切断、溶接・曲げといった加工時の変形量が安定するとの知見を得た。
【0008】
尚、本発明における「耐力分布に係わる値」とは、耐力の値そのものと、該値に係数を掛けたり、又はそれらを含む関数などのパラメータも含むものである。一般に耐力とは、荷重ー伸び線図における所定の永久伸びを与える荷重を平行部の断面積で割った値をもって耐力と呼ぶが、本発明における耐力の指標としては、0.2%〜2.0%耐力、降伏応力、降伏強度等の物性値で評価できるものであればよい。
【0009】
鋼板は、製造工程で生じる製造条件のばらつきにより、鋼板内部に不均一な残留歪みを有している場合があり、加工時の変形にばらつきが発生することがある。
本発明においては、不均一な残留歪みを有する鋼板に対して、鋼板の板厚方向に耐力を変化させることにより、残留歪みを小さくし、加工時の変形ばらつきを安定させた。
【0010】
本発明においては、前記耐力分布に係わる値は、板厚中央部に比べ板厚表裏面部の降伏応力または耐力が高いことが望ましい。
前記耐力分布を制御する手段として、例えば、ローラレベラ矯正を行うのが好ましい。
このように耐力分布を制御すれば、変形ばらつきが安定する。これは、鋼板に塑性歪みを加えることにより、塑性歪みが入った領域が加工硬化し、耐力が上昇すると共に、残留歪みが小さくなるためである。
【0011】
より具体的には、前記耐力分布に係わる値は、次の関係式(1)が成り立つことが望ましい。
σs50≧σm50 ……(1)
ここで、
σs50:板厚方向位置において、表面から25%と裏面から25%の領域の1.0%耐力の平均値、
σm50:板厚方向位置において、板厚表面から25〜75%の領域の1.0%耐力の平均値。
【0012】
前記式(1)は、後で説明する実施例における図1より導かれたものである。
ところで、耐力の分布状態としては、耐力分布が同じであっても、鋼板の種類によっては、加工時の変形ばらつきが異なるため、鋼板の成分や製造方法によって、狙いとする耐力分布は、加工硬化係数や降伏応力の関数となるということを知見した。
【0013】
また、加工時の変形ばらつきの要求レベルに応じて、耐力の板厚方向分布を変化させる場合があるため、耐力分布は要求レベルによっても変化させる必要がある。
そこで、具体的には、加工時の変形ばらつきの要求レベルを最も厳しいものから、緩いものまで数段階に変化させ、その要求レベルに応じて、様々な耐力分布の鋼板を製造し、実験した。そして、降伏応力、加工硬化係数を変化させた鋼板に対して、耐力分布に係わるパラメータ(σs/σm−1)と、条切断後の曲がり量の関係を求めた。図2は、その関係を示すグラフである。
【0014】
なお、図2における各鋼種の、加工時の変形ばらつきの要求レベルは、次のとおりである。
鋼種1:やや厳しい、鋼種2:厳しい、鋼種3:極めて厳しい。
図2において、耐力分布に係わるパラメータが大きくなると、変形量が小さくなり、加工性が良くなることが判る。
【0015】
その結果、本発明では、前記耐力分布に係わるパラメータは、次の関係式(2)が成り立つことが望ましい。
σs/σm−1≧f(a,n,σy,q) ……(2)
ここで、
σs、σm:板厚2mmのミニチュア試験片をそれぞれ板厚表面と中央で採取して引張り試験を行った場合の1.0%耐力、
a、n:加工硬化係数に係わる値、
q:加工性の要求レベル、
σy:降伏応力、
f:加工硬化係数、加工性の要求レベル、降伏応力に係わる関数。
【0016】
尚、加工性の要求レベルとしては、需要家の要望に応じて変化させるのが経済的である。例えば、条切断後の横曲がり量を0.5mm/mとする要求レベルを考えた場合、図1に示す鋼種1においては、パラメータが0.05以上であれば、要求値を満足することになる。同様に鋼種2,3においても、要求レベルに応じて、狙いのパラメータ値を変えることによって、要求品質レベルの達成が可能である。
【0017】
これらの結果から判るように、加工硬化係数、降伏応力、加工性の要求レベルに応じて、耐力分布に係わるパラメータの狙いを変化させることにより、加工性の良い鋼板となる。
さらに、鋼板の加工硬化係数により異なるが、表裏面の耐力と板厚中央の耐力の差が、より大きいことが望ましい。
【0018】
なお、耐力は、ミニチュア引っ張り試験を行った場合における1.0%耐力であることが望ましい。
通常行われている0.2%耐力や降伏応力では、加工硬化現象が明瞭に現れない鋼板に対しては、表裏面の耐力差を区別することが困難であるため、1.0%がよい。
【0019】
本発明に適用される鋼板としては、重量%でC:0.08〜0.20、Si:0.15〜1.50、Mn:0.50〜2.00、Al:0.003〜0.10、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板または上記成分系にCu、Ni、Nb、Ti、Vの少なくとも1種類以上の元素を含む鋼板が望ましい(以下、この成分を有する鋼板を「本発明鋼板」という)。
【0020】
鋼板の化学組成の添加理由として、Cは強度を確保するために必要であるが、溶接継手部の靱性劣化を防止するため0.08〜0.20%とし、Siも強度を上昇させるが溶接継手靱性の劣化を防止するため0.15〜1.50%以下とし、Mnは強度と靱性を確保するために必要であるが、溶接性を劣化させるので、0.5〜2.0%とする。さらにAlは、Nと結合して結晶粒を細粒化するが、多量の添加は清浄性を損なうので、0.003〜0.10%とする。
【0021】
Cu、Ni、Nb、Ti、Vは、溶接継手部の靱性や低温での靱性を確保するために必要な場合があるため添加する。
実際の適用例として、前記組成からなるTMCP鋼板において、板厚2mmのミニチュア引っ張り試験の結果得られた表面の耐力σsと板厚中央の耐力σmの間に、次の式(3)の関係が成り立つ場合、加工時の変形ばらつきは小さくなる。
【0022】
σs/σm−1≧0.05 ……(3)
なお、前記式(3)は、前記図2より導かれたものであり、また、前記(2)式の右辺の降伏応力や加工硬化係数を入れて計算すると導出される。
なお、要求レベルに応じて、さらにばらつきを小さくする場合は、式(3)の右辺の値を0.10、0.20等とすればよい。即ち、より好ましくは、0.20以上が望ましい。
【0023】
鋼板の耐力分布の形態としては、鋼板に機械的に加える塑性歪みの状態によるが、その中でも、板厚方向全断面に均一に加える場合と、板厚の表裏面に大きく加える場合と、さらには、表面で大きく裏面で小さくすると言った板厚方向で傾斜させる場合の3通りが考えられる。
ここで、板厚方向で傾斜させる場合は、表面と裏面で正負逆の塑性歪みを加えることになり、鋼板の形状が反った形状となるので、有効でない。
【0024】
次に、板厚方向全断面に均一に加える場合については、大規模な設備が必要となるので、コストの面から制約され、また製造可能な鋼板サイズは板厚が薄い範囲に限定される。
それに対して、板厚の表裏面に同程度の大きな塑性歪みを加える場合は、コスト・製造可能範囲の何れにおいても有効であり、最も実現的である。
【0025】
そこで、板厚の表裏面に同程度の塑性歪みを加える手段として、ローラレベラを用いることとした。
ローラレベラ矯正による加工性のよい鋼板の製造方法によれば、狙いとする塑性歪みの分布が可能となる。
ローラレベラは、鋼板を曲げ、曲げ戻すことによって、鋼板の表裏面に同程度の塑性歪みを付与することができる。歪みの加え方は、曲げであるので、鋼板全体を引っ張ったり、圧縮したりする場合に比べて小さい力で塑性歪みを加えることができる。
【0026】
その結果、現行の最大のローラレベラにおいては、50mmを越える板厚の鋼板に対しても製造可能であり、薄物から厚物まで対応できる。
冷間ローラレベラを用いて、鋼板を曲げ、曲げ戻すことにより、前記式(1)〜(3)の何れか一つの条件を満たすように、耐力分布を制御する。
このようにローラレベラにより加工を加えることにより、鋼板に塑性歪みが付与され、板厚中央に比べ表裏面の耐力が高くなる。その結果として、鋼板内部の不均一な残留歪みは低減する。
【0027】
ところで、前記方法では、ある領域の耐力分布は狙いどおりとなっていても、必ずしも板面全てに対して耐力分布が狙いどおりになっていない場合には、その領域において形状不良が発生したり、変形量がばらつくことが予想される。
そこで、第1の本発明では、更に、板面内の全ての領域において耐力分布の板厚方向分布を所定の範囲に制御することにより、鋼板のどの領域を加工しても変形量が安定するようにした。
【0028】
板面内の全ての領域において耐力分布の板厚方向分布を所定の範囲に制御するためには、予め定められた条件及びセッティング状態でローラレベラ矯正を行う。
具体的には、ローラレベラ矯正後の耐力分布が均一になるような矯正条件及びセッティング条件を、予め実験や解析により求めておき、それらの結果から得られた条件で製品の矯正を行う。
【0029】
制御手段としては、入出側のインターメッシュやロール撓みを、AGC(自動板厚制御)機能、ダイナミックロール撓み制御、プリセットによる撓み制御、レベラ伸びを考慮したギャップ設定などの技術を用いて制御することにより、狙いの条件で矯正する。
その結果、板面全体にわたって耐力分布の制御が可能になる。
【0030】
前記耐力分布に係わる値は、板面内の任意の位置において、板厚中央部に比べ板厚表裏面部の耐力が高い状態に制御されているのが望ましい。さらに、板面全てにおいて、表裏面の耐力と板中央の耐力の差がより大きいことが望ましい。
鋼板板面の全ての領域において耐力分布が所定の範囲になるのが最も望ましいが、現実には、シャー切断や熱切断による歪みや材質の変化などによって端部近傍は必ずしも狙いの分布となっていない場合がある。しかし、これが影響する領域は小さく、厚鋼板が使用される造船、建築、橋梁といった業界での使用方法を勘案した場合、無視できる程度であると考えられる。従って、鋼板端部の非定常な領域の耐力分布を除外して、板面の任意の位置において、次の関係式(4)が成り立てば良い。
【0031】
σ s50−σm50≧0 ……(4)
更に、鋼板端部の非定常な領域の耐力分布を除外して、次の関係式(5)が成り立つ方がより望ましい。
GΩ=σs/σm−1≧α(a,n,σy,q) ……(5)
ここで、
α:加工硬化係数、加工性の要求レベル、降伏応力に係わる関数。
【0032】
実際の適用例として、前記の「本発明鋼板」において、板厚2mmのミニチュア引張試験の結果得られた表面の耐力σsと板中央の耐力σmの間に、板面全体にわたって、 GΩ≧0.05 の関係が成り立つ場合、加工時の変形バラツキは小さくなる。
要求レベルに応じて、更にバラツキを小さくする場合は、上記値を0.10や0.20とすればよい。より好ましくは、0.20以上が望ましい。
【0033】
耐力は、ミニチュア引張試験を行った場合における、1.0%耐力であることが望ましい。通常行われている0.2%耐力や降伏応力では、加工硬化現象が明瞭に表れない鋼板に対しては、表裏面の耐力差を区別することが困難であるため、1.0%が良い。
ところで、前記の鋼板の板厚方向の耐力分布に係わる値を、板面全体にわたって制御する方法では、耐力分布が板面全体にわたって狙い目の値以上となっていても、狙い目の値以上の範囲において、値がばらつくことが考えられ、値のバラツキが大きい場合には、形状不良の発生や加工時の変形量のばらつくことが予想される。
【0034】
そこで、第2の本発明の特徴とするところは、鋼板の板厚方向の耐力分布に係わる値が所定の範囲内に制御され、かつ板面内における耐力分布状態が所定の範囲内に制御されている点にある。
鋼板板面の全ての領域において耐力分布が所定の範囲になるのが最も望ましいが、現実には、シャー切断や熱切断による歪みや材質の変化などによって、端部近傍は必ずしも狙いの分布となっていない場合がある。
【0035】
しかし、これらが影響する領域は小さく、厚鋼板が使用される造船、建築、橋梁といった業界での使用方法を勘案した場合、無視できる程度であると考えられる。
従って、鋼板端部の非定常な領域の耐力分布を除外して次の(6)式が成り立てばよい。
【0036】
Gmin≦GΩ≦Gmax ……(6)
但し、GΩ=σs/σm−1
ここで、
Gmin、Gmax:鋼種、規格毎に予め定められた板厚方向偏差の許容値の下限と上限
GΩ:板面の任意の位置における耐力の板厚方向偏差
実際の適用例として前記本発明鋼板において、板厚2mmのミニチュア引張試験の結果得られた表面の耐力σsと板厚中央の耐力σmの間に、板面全体にわたって下記関係が成り立つ場合、加工時の変形バラツキは小さくなる。
【0037】
0.20≦GΩ≦0.25
さらに、その分布の均一度に関しても規定する方が好ましい。具体的には、前記式(6)に加えて、次式(7)で規定される均一度が制御できればよい。
【0038】
【数4】
【0039】
前記式(7)のMは、耐力の板面分布の均一度を表したパラメータであり、図4のように、パラメータMが大きくなると、GΩの板面分布の均一度が増して、鋼板の加工性が良くなる。
実際の適用例として、前記本発明鋼板において、図4より、M≧60 の関係が成り立つ場合、加工時の変形バラツキは小さくなる。
【0040】
また、より具体的にGΩの板面均一度を表すパラメータとして、次式(8)で表される幅方向の傾きを考えるのが良い。
【0041】
【数5】
【0042】
前記式(8)のPは、GΩの板幅方向の傾きを表したパラメータであり、図5のように、パラメータPが小さくなると、GΩの板面分布の均一度が増して、鋼板の加工性が良くなることが分かる。
実際の適用例として、前記本発明鋼板において、図5より、P≦100 の関係が成り立つ場合、加工時の変形バラツキは小さくなる。
【0043】
尚、この第2の発明の鋼板を得るための具体例としては、ローラレベラ矯正において、矯正条件や設備状態を厳密に制御するものとする。実際の製品の製造においては、実インターメッシュや実ロール撓み等の矯正実績から、製品1枚1枚の耐力分布の板面均一度を表すパラメータMやPを演算し、演算結果が、(7)式や(8)式を満足するかどうかを評価した後、出荷する。満足しない場合は、不合格となり、出荷しない。
【0044】
なお、本発明に係る加工性の良い鋼板の最も好ましい形態としては、重量%でC:0.08〜0.20、Si:0.15〜1.50、Mn:0.50〜2.00、Al:0.003〜0.10、残部がFe及び不可避的不純物からなるもの、又は上記成分系にCu、Ni、Nb、Ti、Vの少なくとも1種類以上の元素を含む組成を有し、且つ、条切断後の横曲がり量を少なくすべく、板厚方向の耐力分布に係わるパラメータが次式を満たすように冷間ローラレベラで塑性歪みを加えることで、加工硬化を生じさせているものがよい。
【0045】
【数6】
【0050】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を実施例により説明する。
まず、鋼板の板厚方向の耐力分布に係わる値を、所定の範囲内に制御した実験を行った(以下、「本実験例」という)。
本実験例の効果を確認するため、比較実験により本発明鋼板と従来鋼板に対して加工時の変形ばらつきの指標として、条切断時のキャンバ量を比較した。
【0051】
実験材の明細を「表1」に示す。ここで、条切断は、ガスフレームプレーナを用いて、条幅300mmに切断した。
また、各鋼板の耐力の板厚方向分布の測定値は、図1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
これらの鋼板を用いて条切断を行い、横曲がり量を計測した。キャンバ量の最大値の比較を「表2」に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
本実験例では、条切断後の横曲がり量が小さいのに対し、従来例では、大きな横曲がりが発生した。また、本実験例の中でも、鋼板表裏面の耐力の値が、板厚中央の耐力に比べて大きいほど、条切断後の横曲がり量が小さいことが判る。本実験例は、条切断時に変形の小さい鋼板であることを実証した。
【0056】
【実施例】
「実施例1(第1の発明)」
第1の本発明の効果を確認するため、比較実験により本発明鋼板と従来鋼板に対して、加工時の変形バラツキ指標として、条切断時の反り量を比較した。実験材の明細を「表3」に示す。ここで、条切断はガスフレームプレーナを用いて、条幅300mmに切断した。
【0057】
【表3】
【0058】
(5)式から算出される鋼板長手方向中央におけるパラメータG値、すなわちGΩの値の幅方向分布を図3に示す。
従来鋼板E、Fは、パラメータGの値が幅方向全てにおいて(5)式を満足するものとは限らないが、本発明例の鋼板は、幅方向全てにおいて(5)式を満足しており、狙いどおりの耐力分布が達成できている。
【0059】
これらの鋼板を用いて条切断を行い、反り量を計測した。条切断後の反り量の最大値を「表4」に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
本発明例では、条切断後の反り量が小さいのに対して、従来例では反りが発生した。本発明例は、条切断時の変形が小さい鋼板であることを実証した。
「実施例2(第2の発明)」
第2の本発明の効果を確認するため、比較実験により本発明鋼板と従来鋼板に対して、加工時の変形バラツキ指標として、条切断時の反り量を比較した。実験材の明細を「表5」に示す。実験材は、製造条件を変化させることにより、パラメータM及びPの状態を変えた。ここで、条切断はガスフレームプレーナを用いて、条幅300mmに切断した。
【0062】
【表5】
【0063】
前記(7)式及び(8)式から算出されるパラメータM、Pと条切断後の反り量の最大値を「表6」に示す。
【0064】
【表6】
【0065】
本発明例では、条切断後の反り量が小さいのに対して、従来例では、反りが発生した。本発明例は、条切断時の変形が小さい鋼板であることを実証した。
なお、本発明は、実施例に示したものに限定されるものではない。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、切断加工した場合、横曲がり、面外変形、幅方向の変形、長手方向の変形、開先寸法不良と言った形状不良が発生したり、変形量にばらつきが発生するすることがなくなり、加工性のよい鋼板となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、実験材の耐力の板厚方向分布を示すグラフである。
【図2】 図2は、耐力分布のパラメータと条切断後の横曲がりの関係を示すグラフである。
【図3】 図3は、実験材のパラメータGの幅方向分布を示すグラフである。
【図4】 図4は、パラメータMと条切断後の反り量の関係を示すグラフである。
【図5】 図5は、パラメータPと条切断後の反り量の関係を示すグラフである。
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