JP4299394B2 - 切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラックのフレームなどの自動車部品やクレーンのブームなどの建設機械部品などに好適な高強度鋼板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車業界や建設機械業界では、生産性の向上のためプレス工程、組立ラインなどの自動化が図られ、それに伴い鋼板の形状に関する要求も厳しくなってきている。さらに鋼板を圧延方向の条切りや小切りなど切断した後の形状についても変形しないことが求められている。即ち、切断後に形状が変化した場合、▲1▼形状矯正あるいはひずみ取りという余計な作業が必要となり生産性が低下する。▲2▼鋼板の強度やサイズによっては、矯正能力の点から矯正できない場合がある、▲3▼自動化されたラインでは、切断後の不良形状による、切断装置の破損、ライントラブルが発生する、など問題が生じる。
【0003】
切断後の形状不良としては、反りやキャンバー(横曲がり)が挙げられる。これは、溶断や剪断の条件不良に加えて、鋼板の残留応力が原因の一つとなっていることが知られている。溶断や剪断による形状不良は、溶断時の熱により切断部に熱ひずみや、加工面に剪断時の加工ひずみが導入されるために発生する。一方、切断時に鋼板内部に不均一に分布した残留応力が解放されることにより、切断後の部材内での残留応力のバランスが崩れ、反りやキャンバーが発生の原因となる。このように、鋼板に内在する残留応力は切断後の鋼板の形状を悪化させる大きな要因の一つであり、形状不良の発生を防止するためには、残留応力に基づいて鋼板の残留応力状態を、鋼板内部の残留応力状態を鋼板の変形が起きない状態に低減しておくことが必要である。
【0004】
ところで熱延鋼板の製造方法としては、(1)熱間圧延後熱延鋼帯としてコイル状に巻き取り、冷却した後に巻き戻してロールレベラーで矯正し切断して所望の鋼板を得る、(2)熱間圧延後巻き取ることなく直接熱延鋼板とし、熱間および冷間でロールレベラーにより矯正し、所望のサイズに切断して製造する、2つのプロセスがある。後者は板厚が20mmを超えるような厚い物、板幅が広い物の製造に優れており、前者は生産性、表面品位の点で優れており、特にコストの点、表面品位が重要視される点からトラックなどの自動車向け及びクレーンのアーム部に使用される鋼板は前者により製造された鋼板を用いられることが多い。
【0005】
トラックのフレームについては、地球環境保全のためCO2 排出量の抑制などの観点から、鋼材の高強度化による車輛の軽量化が推進され、490MPaを超えるような高強度鋼板が適用されている。鋼板の強度が向上するほど降伏強度も上昇するために、鋼板内の残留応力も大きくなる。そのため、鋼板を切断したときに残留応力が解放され、切断された鋼板内での残留応力のバランスが崩れるために、強度の高い鋼板ほど切断後の形状不良が大きくなる。残留応力の低減方法については、例えば特公昭47−21807号公報で開示されているようなロールレベラーの矯正条件を適正化によるものがこれまで一般に用いられてきた。しかし、このように矯正条件を制限しても、鋼板の成分とその熱延工程の製造条件によっては切断後の形状不良は発生しており、切断してもその形状が良好な鋼板の要求が高いのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、鋼板内部の残留応力とその分布および鋼板の製造方法の最適条件を規定することにより上記のような問題点を解消し、鋼板の切断後の形状が良好な高強度鋼板及びその安定製造方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、圧延方向の板厚平均残留応力の幅方向について切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板が得られることを突き止めた。
本発明の要旨は、次のとおりである。
(1)質量割合で、C:0.03〜0.20%、Si:≦2.3%、Mn:0.5〜2.0%、P:≦0.020%、S:≦0.010%、Al:0.005〜0.1%と残部がFeおよび不可避的不純物からなり、板厚が3〜20mm、板幅が600〜2300mm、板長さが1500〜15000mmで引張り強さが410MPa以上であり、板厚方向に平均した圧延方向の残留応力の幅方向でのばらつきが30MPaの範囲内であることを特徴とする切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板。
【0008】
(2)質量割合で、Ti:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、B:0.0001〜0.001%、Ca:0.0001〜0.005%を1種以上含む前記(1)に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板。
【0009】
(3)溶湯を鋳造後そのまま熱間圧延に供するかまたは1300℃以下の温度に加熱した後に熱間圧延に供し、(Ar3 −50)℃以上の温度で仕上げ圧延を終了し、仕上げ圧延終了後10秒以内に平均2〜50℃/秒の冷却速度で冷却し650℃以下で巻き取って鋼帯をコイル状とし、その後コイルが100℃以下になるまで冷却した後に1機以上のロールレベラーを有する切断ラインに供し、鋼帯の状態もしくは切断後鋼板とした状態で、ロールレベラーによる矯正時の曲率半径Rについては少なくとも1回以上、板厚:t、鋼板のヤング率:E、鋼板の降伏強さ:YPとの関係について下記式を満たす条件で矯正することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
(t/2R)/(YP/E)≧6
【0010】
(4)熱間圧延後巻き取るまでの間のランナウトテーブル上で、鋼帯の板幅方向の平均冷速差が5℃/秒以下であることを特徴とする前記(3)に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
(5)鋼帯をコイラーにより巻き取りコイルとした後、100℃以下まで冷却する時に、鋼帯の幅方向の平均冷速差が5℃/分以下であることを特徴とする前記(3)または(4)に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
【0011】
(6)コイラーで巻き取りコイル状とした鋼帯を圧下率1.5%以下で1回以上調質圧延を行った後に鋼帯をコイル状にして、その後切断ラインに供することを特徴とする、前記(3)〜(5)のいずれか1項に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
(7)コイラーで巻き取りコイル状とした鋼帯を伸び率1.5%以下で1回以上張力矯正を行った後に鋼帯をコイル状にして、その後切断ラインに供することを特徴とする、前記(3)〜(6)のいずれか1項に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
次に本発明の構成要件のそれぞれについて詳述し、またその限定理由について述べる。
まず、本発明における残留応力のばらつき範囲を設定した理由及びロールレベラーでの矯正条件について述べる。はじめに、ロールレベラーを有する鋼帯の矯正・切断工程において、ロールレベラーによる矯正の条件を種々異ならせて、圧延方向の残留応力σR の幅方向でのばらつきΔσR と鋼板を圧延方向に条切りした後のキャンバー及び反りの方向について調べた実験結果について説明する。
【0013】
この時の鋼板の製造工程は、通常の製造工程、すなわち転炉→連続鋳造→熱間圧延を経て一旦鋼帯をコイル状に巻き取った後に、100℃以下になってから鋼帯を矯正・切断する剪断ラインに供し鋼板を製造したものである。一部のものについては、連続鋳造後直ちに熱間圧延を行った。また、鋼帯をコイル状に巻き取ってから剪断ラインに供するまでの間に調質圧延工程において1.5%以下の圧延率で調質圧延を行う試験を一部のものについて行った。鋼板は表1に示すような成分、機械的性質、形状のものを使用している。鋼板の成分は重量割合でC:0.03〜0.15%、Si:≦1.5%、Mn:0.5〜2.0%、P、S:≦0.01%の鋼であり、一部にTi:0.03%かNb:0.03%を添加したものである。
【0014】
鋼板を製造する際はロールレベラーを2機有する矯正・切断ラインにて行ったが、コイルを巻きほどいた直後の1機目のロールレベラーにて最も大きい矯正条件、即ち(t/2R)/(YP/E)が大きい条件を与え、その後の矯正ではこれよりも(t/2R)/(YP/E)が小さい条件とした。また、2機目のロールレベラーでの最後の矯正条件は、鋼板そのものの形状を平坦にする必要があるため(t/2R)/(YP/E)=1とした。
【0015】
これら鋼板について、鋼板毎に圧延方向に条切りした後に図1に示した定盤2の上に条切りした板1aを立てて両端部を支持して求める反り量δW と図2に示した定盤4の上に条切りした板3aを置いて求めるキャンバー(横曲がり)量δC と圧延方向の残留応力σR を測定した。残留応力の測定は、図3に示すように鋼板(圧延方向Lの長さ=3048mm、板幅方向Wの長さ=製品幅、)3の表面または表裏面における幅方向位置でひずみゲージ6を圧延方向に張り付ける。
【0016】
次いで、図中に破線で示すように、これら各ひずみゲージ6を挟んで20mm幅の位置、圧延方向も20mm長さの位置でカットする。カット時に発生する熱応力など外部応力を鋼板に与えないため、予めひずみゲージを挟んで100mm以上の大きさに切断し、破線部は精密切断機により切断速度を極低速に設定しながらカットした。カット後に、各測定点のひずみゲージからそれぞれのひずみの変化量を読みとる。そして、表面と裏面のひずみの変化量の測定値を平均するか、あるいは裏面にひずみゲージを張り付けできない場合は表面のひずみの変化量とカット後の裏面の曲率から求めたひずみの変化量を平均し、その平均値を各測定点での残留応力によるひずみ量とする。
【0017】
以上の測定で、板幅方向の各測定点での圧延方向の残留応力σR が応力とひずみの関係から次式で求めた。
σR =Δε・E
Δε:測定したひずみ量(表面と裏面との平均)
E :ヤング率
キャンバーの基準についてはキャンバーの曲率半径ρ3500m以上であることが求められるが、最も厳しい場合には曲率半径は5000m以上とされている。反りδC の基準については板長さが3000mに対し20mm以内であることが条件となるが、厳しい場合には15mm以内である必要がある。
【0018】
表1のT−1、T−3、T−4、T−6、T−8、T−10、T−11、T−13、T−15、T−16については板幅方向の残留応力のばらつきΔσR が30MPa以下であるが、これらは鋼板切断後の形状がキャンバーについても、反りについても上述したような条件を満足しており、切断後の形状が良好である。しかし、それ以外の鋼板、即ち板幅方向の残留応力のばらつきΔσR が30MPaを超えるような場合には、切断後のキャンバーがキャンバーの曲率半径で3500mより小さかったり、反りが20mmを超えている。このことから、板幅方向の残留応力のばらつきΔσR が30MPa以内にすることにより、切断後の形状が良好な鋼板とすることができるということを見いだした。
【0019】
また、ロールレベラーによる矯正時の曲率半径について(t/2R)/(YP/E)≧6を満たす条件で矯正を行った表1のT−1、T−3、T−4、T−6、T−8、T−10、T−11、T−13、T−15、T−16では、板幅方向の残留応力のばらつきΔσR が30MPa以下にすることができた。それ以外の条件、即ち(t/2R)/(YP/E)が6を下回る条件の場合では板幅方向の残留応力のばらつきΔσR が30MPaを超え、さらには鋼板の切断後の形状も悪い。以上のことからロールレベラーによる矯正時の曲率半径について(t/2R)/(YP/E)≧6を満たす条件で矯正を行えば、板幅方向の残留応力のばらつきΔσR が30MPa以下に低減されることを見いだした。
【0020】
なお、ロールレベラーによる矯正時の曲率半径について(t/2R)/(YP/E)≧6を満たす条件の矯正は1回〜数回の矯正であるが、過度に行うと鋼板が硬化するので好ましくない。また当然のことながら、鋼板は最終的に切断前でも平坦な状態にしておく必要があり、そのためにロールレベラーでの曲率半径は、一番最後の段階の矯正では(t/2R)/(YP/E)が1〜2を満足する必要がある。
【0021】
次に本発明における成分の限定理由について説明する。
本発明鋼は高強度鋼板であるため、Cは強度確保のため最低0.03%必要である。しかし、0.20%を超えると靱性および溶接性を劣化させるばかりでなく、焼き入れ性が大きく上昇するために冷却後の鋼中で残留応力が過度に発生するため0.20%を上限とした。
Siは脱酸および強度の確保に有効な元素であるが、酸化スケールが生成し表面性状を悪化させるため2.0%以下を制限範囲とした。
【0022】
Mnは強化元素である。Mnは0.5%未満であると強度が不十分であり、2.5%以上を超える過剰な添加は靱性や溶接性を劣化させるばかりでなく溶製上の問題や製造コストの点で不適当である。また、過多の添加は鋼の焼き入れ性が大きいために、わずかな冷速の差でも冷却後の残留応力が極端に大きくなる。したがって、強度と良好な靱性、溶接性を確保するため0.5〜2.5%を範囲とする。
Pは加工性・溶接性等を劣化させるとともに、偏析を助長する。従って、本発明鋼においては、できるだけ少ないほど好ましく、0.020%以下にすることが必要である。
【0023】
Sは不純物元素であり、鋼の延性や靱性を害するので少ないほど望ましい。またMnSなどの圧延方向に進展する硫化物系介在物となり、局部延性や曲げ加工性、靱性を劣化させる。従ってこの弊害を回避するために0.010%以下にすることが必要である。
Alは脱酸上重要な元素であり0.005%以上添加することが必要だが、多すぎると内部酸化を起こし溶接性を劣化させるため0.1%を上限とする。
【0024】
以上が本発明の基本成分であるが、さらに適宜以下の元素を添加することが可能である。
Tiは炭化物を生成し、析出強化の作用を有するので、鋼の強化には有効な元素である。この効果はTiが0.01%以上で発現するので、これを下限とする。また、0.5%を超えるような過多に添加した場合には炭化物TiCが粗大化するために靱性や延性が低下するなど好ましくなく、これを上限とする。
【0025】
Nbは炭化物形成元素であり、さらにフェライト変態の細粒化と析出強化の作用を有し、鋼を強化するのに有効である。この効果が発現するのが0.01%からであるためこれを下限とする。一方で過多に添加すると延性が低下し、またコストが悪化するので0.5%を上限とする。
【0028】
Bは熱間圧延後の冷却時にオーステナイトを安定化する働きがあり、焼き入れ性を向上させる働きがあるが、0.0001%未満ではこの作用による効果が現れず、一方0.001%を超えるとその効果が飽和するのでこれを上限とする。Caは、非金属介在物の形態を変えて加工性を向上させる元素である。CaはSと結合しCaSとなりMnSの生成を抑制するので、曲げ加工性を向上させる。これらの効果は、それぞれ0.0003%以上で発現するのでこれを下限とする。しかし0.01%を超えるとこれらの効果が期待できないばかりか、Caについては過多に添加すると溶接性を悪化させる。従って、0.01%を上限とする。
【0029】
次に、上述した製造条件の限定理由について説明する。
熱間圧延に供するスラブは特に限定するものではない。すなわち、連続鋳造や薄スラブキャスター等で製造したものであればよい。また、鋳造後直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直送圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。スラブは鋳造後、加熱炉に装入し必要温度まで加熱し圧延するか、あるいは加熱炉に装入することなく圧延する。加熱炉に装入する場合には、加熱温度については1300℃を超えると極端に酸化が進行し表層のスケールが厚くなるばかりでなく、加熱炉の燃料原単位も悪化するため上限を1300℃とする。
【0030】
仕上げ圧延直前に10MPa以上の高水圧によるデスケーリングを行う理由は、粗圧延から仕上げ圧延までの間に鋼板が比較的長い間高温に曝されるためスケールが生成するが、圧延によりスケールが剥離して粉状の酸化鉄が鋼板表面を覆いこの状態で圧延が継続されると鋼板表面の粗さが劣化するので、これを防ぐために仕上げ圧延直前に高圧水を噴射するものである。また仕上げ圧延中のデスケーリングについては特に限定しないが、タンデム圧延機での仕上げ圧延中においてスケールは生成するので、圧延中のデスケーリングは鋼板の表面性状を向上させるのに効果がある。
【0031】
仕上げ圧延後の冷却については、圧延終了後高温に曝す時間が長いほど2次スケールの成長が著しいため、速やかに冷却する必要がある。圧延終了後2秒以上放置すると、打ち抜き性を悪化する程度スケールが成長するために、2秒以内に冷却する必要がある。
冷速については、スケールの成長を抑えるため2℃/秒以上の冷速を必要とする。しかし冷速を著しく早くした場合に、低温生成する硬質相が過多に増え打ち抜き性を悪化させるので、50℃/秒以下にする必要がある。
巻き取り温度については650℃を超えた場合にはスケール生成量が多くなり表面性状が悪化するため650℃を上限とした。
【0032】
以上が本発明における基本製造方法であるが、必要に応じ以下のような製造条件を追加することができる。
熱間圧延後鋼帯を巻き取るまでランナウトテーブル上で板幅方向の冷却速度のばらつきが5℃/秒を超えると、板幅方向における鋼帯の成分の不均一さを生じたり、熱ひずみの不均一さによりランナウトテーブル上で鋼帯が蛇行したり、鋼帯の形状不良を生じたり、残留応力が増大するなど望ましくない。従って、熱間圧延後鋼帯を巻き取るまでランナウトテーブル上で板幅方向の冷却速度のばらつきは5℃/秒を上限とする。ランナウトテーブルで、上面または上下面に板幅方向及び圧延方向に複数備えたスプレーノズルによる水冷却を用いたり、鋼帯の板幅端部の過水冷を防止するエッジマスクを用いても良い。
【0033】
鋼帯をコイル状に巻き取った後に100℃以下までの冷却する間で、板幅方向での平均冷速のばらつきを5℃/分を超えて冷却した場合には、冷却過程での板幅方向の温度のばらつきが著しいものとなるため熱的なひずみを生じ、鋼帯が100℃以下になったときに鋼帯の形状不良を発生したり、鋼帯内に過大な残留応力を発生するなど好ましくないので、5℃/分を上限とする。
【0034】
鋼帯をコイル状に巻き取った後で切断工程までの間に調質圧延工程にて圧延率1.5%以下で調質圧延を行うと、鋼帯の形状不良が改善され、矯正・切断工程のロールレベラーによる残留応力の除去が著しく改善される。調質圧延は1回以上可能であるが合計の圧延率で1.5%を超えると鋼帯が硬化するために1.5%を上限とする。
鋼帯をコイル状に巻き取った後で切断工程までの間にテンションレベラーなどによる張力矯正工程にて張力矯正を行うと、板厚方向及び板幅方向での残留応力のばらつきを低減することができ、続く矯正・切断工程で残留応力を著しく低減することができる。張力矯正工程は1回以上可能であるが合計の伸び率で1.5%を超えると、鋼帯が硬化するために1.5%を上限とする。
【0035】
【実施例】
次に本発明を実施例にて説明するが、これにより本発明はなんら制限されるものではない。
表1に示す鋼を溶製、鋳造し、表2に示す条件で熱間圧延して熱延鋼帯とし、巻き取った後冷却した。常温まで冷却したコイルをロールレベラー2機有する剪断ラインに供し、ロールレベラーによる矯正後に切断し熱延鋼板となし、サンプルを採取した。引張り試験はJIS Z 2201の5号試験片を用いJIS Z 2241の方法で行った。採取したサンプルを板の圧延方向に条切りを行い、キャンバーと反りの測定を行い、また切断前に貼付したひずみゲージから残留応力を測定し、板幅方向の残留応力のばらつきを求めた。
【0036】
キャンバー及び反りについては以下の基準により評価を行った。
(キャンバー)
鋼板の圧延方向条切り後のキャンバーの曲率半径ρ
〇:5000m≧ρ
△:3500m≦ρ<5000m
×:ρ<3500m
(反り)
鋼板の圧延方向条切り後の反りδ
〇:15mm≦δC
△:15mm<ρδC ≦20mm
×:δC >20mm
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
表3から明らかなように、本発明試料である試料No.1、4、6、8、11、14、17、20は、板幅方向の残留応力のばらつきが良好であり、また、鋼板を圧延方向に切断したあとのキャンバーや反りなどの形状についても良好である。一方で仕上げ圧延から巻き取りまでの冷却の間や巻き取ったあと100℃以下までの冷却の間で幅方向の冷速のばらつきが大きかった、試料No.2、9、10、13、16、18は板幅方向での冷速の差のため十分な矯正をもっても残留応力の板幅方向のばらつきが大きく、切断後の形状が悪い。同様に、巻き取り温度が高い試料No.3も十分な矯正をもっても残留応力の板幅方向のばらつきが大きく、切断後の形状が悪い。
【0040】
一方、ロールレベラーでの矯正条件について(t/2R)/(YP/E)≧6の矯正を1度も施していない試料No.5、7、12、15、19については残留応力の除去が十分ではなく、その結果、残留応力の板幅方向のばらつきが大きく、切断後の形状も悪化している。また鋼中成分が本発明外である試料No.についても、残留応力の板幅方向のばらつきが大きい。
【0041】
【表3】
【0042】
【発明の効果】
上述したように、本発明により鋼板内部の残留応力とその分布および鋼板の製造方法の最適条件を規定することにより、鋼板の切断後の形状が良好な高強度鋼板及びその安定製造を提供することができる。本発明鋼により切断後の形状を安定的に確保することができるため、産業上極めて大きな効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板を圧延方向に切断後の反りの測定方法である。
【図2】鋼板を圧延方向に切断後のキャンバーの測定方法である。
【図3】残留応力分布の測定方法の説明図である。
【符号の説明】
1 鋼板
1a 切断後の鋼板
2 定盤
3 鋼板
3a 切断後の鋼板
4 定盤
5 鋼板
6 ひずみゲージ
Claims (7)
- 質量割合で、
C :0.03〜0.20%、
Si:≦2.3%、
Mn:0.5〜2.0%、
P :≦0.020%、
S :≦0.010%、
Al:0.005〜0.1%
と残部がFeおよび不可避的不純物からなり、板厚が3〜20mm、板幅が600〜2300mm、板長さが1500〜15000mmで引張り強さが410MPa以上であり、板厚方向に平均した圧延方向の残留応力の幅方向でのばらつきが30MPaの範囲内であることを特徴とする切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板。 - 質量割合で、
Ti:0.01〜0.5%、
Nb:0.01〜0.5%、
B :0.0001〜0.001%、
Ca:0.0001〜0.005%
を1種以上含む請求項1に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板。 - 溶湯を鋳造後そのまま熱間圧延に供するかまたは1300℃以下の温度に加熱した後に熱間圧延に供し、(Ar3 −50)℃以上の温度で仕上げ圧延を終了し、仕上げ圧延終了後10秒以内に平均2〜50℃/秒の冷却速度で冷却し650℃以下で巻き取って鋼帯をコイル状とし、その後コイルが100℃以下になるまで冷却した後に1機以上のロールレベラーを有する切断ラインに供し、鋼帯の状態もしくは切断後鋼板とした状態で、ロールレベラーによる矯正時の曲率半径Rについては少なくとも1回以上、板厚:t、鋼板のヤング率:E、鋼板の降伏強さ:YPとの関係について下記式を満たす条件で矯正することを特徴とする請求項1または2に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
(t/2R)/(YP/E)≧6 - 熱間圧延後巻き取るまでの間のランナウトテーブル上で、鋼帯の板幅方向の平均冷速差が5℃/秒以下であることを特徴とする請求項3記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
- 鋼帯をコイラーにより巻き取りコイルとした後、100℃以下まで冷却する時に、鋼帯の幅方向の平均冷速差が5℃/分以下であることを特徴とする請求項3または4に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
- コイラーで巻き取りコイル状とした鋼帯を圧下率1.5%以下で1回以上調質圧延を行った後に鋼帯をコイル状にして、その後切断ラインに供することを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
- コイラーで巻き取りコイル状とした鋼帯を伸び率1.5%以下で1回以上張力矯正を行った後に鋼帯をコイル状にして、その後切断ラインに供することを特徴とする、請求項3〜6のいずれか1項に記載の切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法。
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