JP3806173B2 - 熱延連続化プロセスによる材質バラツキの小さい熱延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱延鋼板を製造する熱間圧延設備において、移動する鋼板の先行鋼板後端部と、これに続く後行鋼板先端部を接合し、複数の鋼板を連続して圧延するいわゆる熱延連続化プロセスによる熱延鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の熱延鋼板製造プロセスでは、スラブ毎での圧延を行うため鋼板の先端部と後端部は、鋼板が仕上圧延機を出た後に巻取られるまでの間においては、無張力状態のいわゆる、非定常部とならざるを得なかった。このため、この部分に該当する鋼板は擦り傷、形状不良、板幅不良、板厚不良等の鋼板表面品位および形状品位の劣化は避けられなかった。
また、上記形状品位の変化は鋼板の材質についても大きく影響し、冷却時の冷却ムラにより機械的性質(引張特性等)が大きくバラツキ、定常部分に比し良好な鋼板が得られなかった。そのため、不良部分の除去により鋼板歩留りの低下と共に、精整通板を必要とする等の作業付加があった。
また材質については、通板性等の操業上の観点からコイル(圧延された鋼板はスラブ単位に仕上圧延後は巻取機によって巻取られてコイル状となるので、以下単にコイルと称す)長手方向(圧延方向)で圧延速度が異なるため、単一コイル内の定常部であっても圧延温度等の熱延条件が変化し、機械的性質の変動が生じていた。
【0003】
このような状況下において、近年複数の粗圧延後のシートバー(以下、粗バーと称す)を順次接合して、連続して所定の速度で熱間圧延処理する、いわゆる熱延連続化プロセスが試みられている。
この熱延連続化プロセスは、一般に、粗バーを供給する工程、この粗バーの先端と後端を切断する工程、走行しながら先行粗バーの後端部と、後行粗バーの先端部を、各々クランプして突き合わせて接合する工程、複数のスタンドで該圧延用鋼板を所定の圧延スケジュールで、所定のサイズにする熱間仕上圧延工程、熱間仕上圧延工程を出た鋼板を冷却し巻取る工程、熱間仕上圧延工程と巻取り工程との間にあって、鋼板を所定の重量または長さ単位で切断する走間切断分割工程とから構成されている。
【0004】
このための粗バーの接合方法としては、各種の提案がなされており、例えば、特開平4−288906号公報には、先行材と後行材の端面接触領域を幅方向の少なくとも両端部域となるよう切断加工を施し、加熱と搬送速度を調整し両縁部近傍に圧縮応力を発生させて相互に密着させることが開示されており、また、特開平5−104107号公報では、先行材と後行材の端面幅方向両端部同士を圧延前に熱間溶接した後、幅方向中央の未接合部を圧延によって熱間圧接する方法が提案されている。また、特公平5−62035号公報では、長手方向で先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部を重ね合わせて切断し、切断面に直角に圧縮力を加えることにより、新生面同士の結合領域を拡げスケールの除去なしで両金属板を溶着し、厚み方向で全面接触して強固に結合する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
熱延連続化プロセスについて、その手段は上記のごとく種々の提案がなされているが、鋼板の材質面からの検討については一部なされているのみで、完全なる対策については多くの開発の余地が残されており、従来での鋼板の先・後端部における材質不良部を完全に解消するまでには到っていない。
本発明は前記した従来法でのコイル内での材質のバラツキを解消した熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その手段は、
(1)質量%で、C:0.01〜0.60%、Si:≦2.50%、Mn:0.05〜2.50%、P:≦0.050%、S:≦0.025%、Al:0.005〜0.100%、N:≦0.010%を含有し、残部Feと不可避的不純物からなる鋼板を、熱延連続化プロセスにより、コイル内仕上圧延温度差を50℃未満、仕上圧延機の入側と出側の温度差を100℃未満とし、かつコイル内仕上圧延速度差を400mpm未満としたことを特徴とする熱延連続化プロセスによる材質バラツキの小さい熱延鋼板の製造方法。
【0007】
(2)上記(1)において、鋼板はさらに質量%で、Nb:0.005〜0.060%、Ti:0.005〜0.150%、B:≦0.0050%、V:≦0.060%、Ca:≦0.0060%、Ni:≦0.50%、Cr:≦0.80%、Mo:≦0.70%のうち1種または2種以上を含むことを特徴とする熱延連続化プロセスによる材質バラツキの小さい熱延鋼板の製造方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は鋼板の圧延を熱延連続化プロセスで行うことにより、従来での圧延で発生していた鋼板の先・後端部の表面品位、形状品位の劣化を回避すると共に、鋼板定常部を含む鋼板コイル内の材質のバラツキを防ぐところに主眼があり、組成としては通常の鋼板に用いられている主要元素を含み、これに加えてその目的に応じ例えば高強度、高靱性、高耐食性等の特性を発揮する元素の添加を行うものである。
【0009】
本発明が対象としている鋼の成分限定理由について以下説明する。
Cは硬化元素であり、C量が少ない程加工性に有利であるが、C量を低下させる脱酸処理の経済性を考慮してC量の下限を0.01wt%とした。しかし、0.60wt%を超えると溶接性や低温靱性が劣化する。従って、その含有量は0.01wt%以上、0.60wt%以下とする。
Siは脱酸剤として有効であり、また強度向上の元素でもある。さらには鋼中のフェライトの生成を促進し、炭化物の生成を抑制することにより残留オーステナイトを確保する作用を有する。しかし、その含有量は2.50wt%を超えるとその効果は飽和し、かえって溶接性の劣化、また鋳造鋳片での割れ発生の原因ともなる。従って、その含有量は2.50wt%以下とする。
Mnは強度、靱性を向上させるために有効な成分で、0.05wt%以上を必要とする。しかし、2.50wt%を超えると溶接性が劣化する。従って、その含有量は0.05wt%以上、2.50wt%とする。
【0010】
Pは低温靱性を劣化させ、溶接時に高温割れを発生させることがあることから、その含有量は0.050wt%以下とする。ただし、鋼板表面のスケール疵防止の観点からは0.010wt〜0.020wt%が好ましい。
SはMnと結合してA系介在物を生じて、靱性、延性を劣化させることからその含有量は0.025wt%以下とする。
【0011】
Alは鋼の脱酸に用いられる。その効果は0.005wt%以上で生じ、0.100wt%を超えると飽和する。従って、その含有量は0.005wt%以上、0.100wt%以下とする。
Nは靱性を劣化させるため可能な限り少ない方がよいが、経済性を考慮し、その含有量は0.010wt%以下とする。
【0012】
さらに、本発明においては、上記の主要成分組成例に加えて、例えば、Nb,Ti,B,V,Ca,Ni,Cr,Moのうちから選んだ1種または2種以上を含有させることができる。
【0013】
Nbは微量添加で大幅に強度を上昇させ、かつ、固溶Nによる歪時効によって靱性の劣化を防止する好ましい成分である。その効果は、0.005wt%以上で期待できるが、0.060wt%を超えると飽和する。従って、その含有量は0.005wt%以上、0.060wt%以下とする。
TiはNbと同様、微量添加で大幅に強度を上昇させ、制御圧延との相乗効果により靱性を向上させる好ましい成分である。その効果は0.005wt%以上で期待できるが、0.150wt%を超えると飽和する。従って、その含有量は0.005wt%以上、0.150wt%以下とする。
【0014】
Bは微量の添加で大幅に延性の増大に寄与し、また、時効性の向上にも効果を有する好ましい成分であり、その効果は0.0050wt%で飽和するのでその上限を0.0050wt%とする。
Vは微量添加で大幅な強度の向上が期待できる成分であるが、0.060wt%を超えて含有するとその効果は飽和し、溶接性が劣化する。従って、上限を0.060wt%とする。
Caは介在物の形態制御により、低温靱性、延性に好ましいばかりでなく、セパレーション対策としても好ましい成分である。しかし、0.0060wt%を超えて含有すると、溶接性、および靱性の劣化をまねく。従って、上限を0.0060wt%とする。
【0015】
Niは、強度、靱性の向上に有効な成分であるが、0.50wt%を超えて含有すると溶接性が劣化する。従って、上限を0.50wt%とする。
CrはNiと共に強度、靱性の向上に有効な成分であるが、0.80wt%を超えて含有すると溶接性が劣化するので、上限を0.80wt%とする。
Moは強度、靱性の向上に有効な成分であるが、0.70wt%を超えて含有すると溶接性が劣化する。従って、上限を0.70wt%とする。
【0016】
次に、本発明の熱延連続化プロセスを工程順にその特徴部分と、その効果および熱延条件の限定理由について以下に説明する。
図1は本発明を実施するための設備配置の一例を示した図である。加熱炉で加熱されたスラブは、粗圧延機で圧延された後巻とられて粗圧延コイル(粗バー)となる。この粗圧延コイルが巻戻され、溶接用シャーにおいて先・後端部を切断された後、接合装置(接合装置については特に限定しないので、ここでは特に触れない。また、接合方法についても種々の方法が考えられるが、レーザー溶接方法が好ましい)により先行材の後端部と後行材の先端部が接合され、仕上圧延機で圧延される。したがって、最初の粗バーの先端部と最後の粗バーの後端部を除いた部分は仕上圧延において圧延端のない圧延ができる。
【0017】
さらに、仕上圧延速度を高速、かつその変動を小さく(400mpm未満)することができるため、圧延温度等の熱延条件の変動も小さくすることができる。最適な熱延仕上温度は、Ar3 〜900℃である。熱延仕上温度が、Ar3 変態点未満では延性が著しく低下し、900℃を超えると延性の劣化を来すためである。また、コイル内の仕上圧延温度差を50℃未満とすることができ、仕上圧延機の入側と出側の温度差を100℃未満にすることが可能である。これらの熱延条件の変動の減少は材質バラツキの低減につながる。
【0018】
さらにまた、従前は1コイル単位の圧延であったがため、コイル先端部がコイラーで巻取りを開始するまでは、仕上圧延機を抜け出たコイル先端部は無張力のまま冷却床を走り抜けるため、コイル先端部上下は大きく波打ち状態となり、特に薄鋼板については冷却床において冷却水の散布によるムラのない冷却を行うことはできなかった。
また、後端部においても同様に仕上圧延機を抜けると張力が働かず同様の処置を取らざるを得ず、これらの部分は材質的にみてコイル中央部に比し材質の劣化は避けられず成品歩留りの低下となっていた。
【0019】
本発明においては、コイルを連続的に圧延するので仕上圧延機とピンチロール間で一定の張力を付与することが可能となり、上記の不都合な事態を回避できると共にコイル全長にわたっての水冷ができ、コイル内での材質のバラツキの小さい成品を得ることができるようになった。
さらに、ピンチロール後のシャーにより鋼板接合部を走行切断して巻取機にてコイルを巻取るため、従前コイル先・後端部で発生していたタング状、またはフィッシュテール状の形状不良部分が皆無となる。従って、従前の精整通板による形状不良部分の矯正、および先・後端部分を含んだ形状不良部の切捨てを大幅に減らすことができ、精整工程の削減、成品歩留りの向上が達成できる。
【0020】
以上、本発明の設備上での特徴部分の説明とそれによってもたらされる効果についての説明を行ったが、本発明においては従前の工程によって得られる鋼板に比し最も大きな効果の違いは本発明を実施することによって、鋼板の品質特性のバラツキ、すなわちコイル内のバラツキが著しく低下し、均一で安定した材質の成品が得られるところに大きな意義を有する。
【0021】
本発明では、最近の鋼板製造技術の急速な進歩に伴い、鋳片での偏析の改善、圧延での制御圧延の向上と相まって熱延連続化プロセスを採用することにより、これらコイル内の材質の変動を極く小さい範囲内に抑制することができるようになったものであり、それぞれの圧延上での限定値は熱延連続化プロセスの実施によって得られた実績からその範囲を導き出したものである。
この結果によって、需要家においては同一コイル内ではどの位置であっても、その部位を配慮することなくバラツキの少ない均一な材質の鋼板の使用が可能となった。
【0022】
【実施例】
以下、本発明における前述の効果を実施例によって具体的かつ、詳細に説明する。
本発明は殆ど全ての鋼種に適用できるが、その代表として普通加工用鋼板(A)と自動車用高張力鋼板(B)および鋼管用鋼板(C)の3種を選んで鋼板の化学組成を表1に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
この3種の鋼種から鋳造されたスラブを本発明によって表2に示す条件で鋼板に圧延し、圧延された成品について各鋼種毎に同一ロット(1回の圧延単位で鋼板が接合されて連続圧延されたもの)内からコイル1本(ただし、最先端、最後端コイル以外)をランダムに抽出し、コイル全長のうちの5個所(非定常部に該当する先・後端部および定常部に該当する中央部から均等距離を置いた3個所の部分)から試料を採取した。
【0025】
【表2】
【0026】
この試料について材質の調査をそれぞれ行い、コイル内での材質特性を表3に示した。なお、比較のために従来方法で圧延した鋼板についても同様に表2に圧延条件を表3に材質の調査結果を示した。
表3中Δとあるのはコイル内の変動(バラツキ)を示したもので、最大値−最小値で表した。
【0027】
【表3】
【0028】
表3から明らかなように、本発明によれば従来方法に比較して全ての材質特性においてコイル内の変動幅が少なくなっており、均一で安定した材質の鋼板が得られていることがわかる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば熱間圧延鋼板のコイル内での材質のバラツキが小さく、従来切捨てまたは格落ちになっていたコイル先・後端部分も成品として採用できる。
また、鋼板先・後端部の切捨て量が低減したため、歩留り面からは大きな向上がみられ、さらには鋼板巻取後の巻戻し精整工程を削減できる等多くの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施するための設備配置の一例を示す図
Claims (2)
- 質量%で、
C :0.01〜0.60%、
Si:≦2.50%、
Mn:0.05〜2.50%、
P :≦0.050%、
S :≦0.025%、
Al:0.005〜0.100%、
N :≦0.010%
を含有し、残部Feと不可避的不純物からなる鋼板を、熱延連続化プロセスにより、コイル内仕上圧延温度差を50℃未満、仕上圧延機の入側と出側の温度差を100℃未満とし、かつコイル内仕上圧延速度差を400mpm未満としたことを特徴とする熱延連続化プロセスによる材質バラツキの小さい熱延鋼板の製造方法。 - 鋼板はさらに質量%で
Nb:0.005〜0.060%、
Ti:0.005〜0.150%、
B :≦0.0050%、
V :≦0.060%、
Ca:≦0.0060%、
Ni:≦0.50%、
Cr:≦0.80%、
Mo:≦0.70%
のうち1種または2種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の熱延連続化プロセスによる材質バラツキの小さい熱延鋼板の製造方法。
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