JP6149451B2 - 高強度熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
一般的に、鋼のヤング率は206GPa程度と言われるが、圧延などによって鉄の結晶方位を特定の方向に揃えることにより、一方向のヤング率を高められることはよく知られている。例えば、大型クレーンのブームのような長尺部材の場合、熱延の圧延方向が部材長手方向になることから、圧延方向のヤング率を高めることで部材としての剛性を向上させることが出来る。このような、圧延方向のヤング率を高める技術としては、例えば、特許文献6、7等がある。
形状変動の抑制策としては、例えば特許文献8に、ロールレベラーによる矯正時の曲率半径をR、板厚をt、鋼鈑のヤング率をE、降伏応力をYPとした場合、加工度((t/2R)/(YP/E))が6以上になるような条件で矯正する事によって形状を改善する技術が開示されている。
また、特許文献8に記載の技術では、矯正工程であるレベラーで導入される予歪みはヤング率を低下させるおそれがあることから、元の素材のヤング率206GPaよりも低下させる場合がある。これは予歪みによって導入された可動転位によって弾性変形領域においても微小な降伏現象が起こる事に起因すると考えられる。そのため、熱延条件によって結晶方位を最適化してもヤング率を維持することは難しかった。
一方、レベラー加工の指標である加工度を3〜10に制御することで、平板の状態から切断した後における形状変動を抑制することができる。すなわち、前述のようなレベラー加工によるヤング率の低下が生じたとしても、矯正加工の前の熱延鋼板の状態において集合組織を制御させて圧延方向および幅方向の剛性を十分に高めておくことで、このような熱延鋼板から部材を製造する際に、鋼鈑を切断した後でも、高剛性と切断後の優れた形状性を両立することが可能となる。
つまり、本発明は、圧延方向と板幅方向のヤング率の平均値215GPaを超える剛性が高く切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板およびその製造方法を提供するものである。
本発明の剛性が高く切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板およびその製造方法の要旨は、以下の通りである。
C:0.03%以上、0.15%以下、
Si:0.01%以上、0.6%以下、
Mn:0.5%以上、2.2%以下、
P:0.001%以上、0.1%以下、
S:0.0005%以上、0.05%以下、
Al:0.01%以上、0.2%以下、
N:0.0001%以上、0.010%以下、
更に、
Nb:0.005%以上、0.1%以下、
Ti:0.040%以上、0.14%以下
のいずれか1種又は2種を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物から成る鋼組成を有し、
板厚が4〜10mm、引張強度590MPa以上、圧延方向のヤング率と幅方向のヤング率がいずれも207GPa以上かつこれらの平均値が215GPa以上であり、
板厚全厚で測定した{112}<110>強度比が2.5以上、6.0以下であることを特徴とする高強度熱延鋼板。
[2] さらに、質量%で、B:0.0003%以上、0.005%以下を含有することを特徴とする上記[1]に記載の高強度熱延鋼板。
[3] さらに、質量%で、
Cr:0.1%以上、5.0%以下、
Mo:0.01%以上、3.0%以下、
W:0.01%以上、2.0%以下、
Cu:0.04%以上、2.0%以下、
Ni:0.02%以上、1.0%以下、
V:0.001%以上、0.30%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の高強度熱延鋼板。
[4] さらに、質量%で、
Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を合計で0.0005%以上、0.05%以下で含有することを特徴とする上記[1]〜[3]の何れかに記載の高強度熱延鋼板。
[5] 上記[1]〜[4]の何れかに記載の高強度熱延鋼板を製造する方法であって、
上記[1]〜[4]のいずれかに記載の鋼組成を有するスラブを1150℃以上1250℃以下に加熱した後、1000℃以下でのトータル圧下率が20%以上、80%以下、仕上げ温度が850℃以上、930℃以下となる条件で熱間圧延を行い、得られた鋼帯を450〜650℃でコイル状に巻き取ってコイル状とし、その後コイルが100℃以下になるまで冷却した後に、1機以上のロールレベラーを有する切断ラインに供し、鋼帯の状態もしくは切断後鋼板とした状態で、ロールレベラーによる矯正を少なくとも1回以上、式(1)を満足する条件で施すことを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
3.5≦(t/2R)/(YP/E)≦10 (1)
ここでt:板厚(mm)、R:ロールレベラー半径(mm)、YP:圧延方向の降伏強度(MPa)、E:圧延方向のヤング率(MPa)、である。
従って、例えば、本発明を大型クレーンのブームをはじめとする建機の構造用部材等に適用することにより、ブーム自体の軽量化、および、つり上げ運搬容量の拡大を図ることができ、作業効率が顕著に向上するメリットを十分に享受することができることから、その社会的貢献は計り知れない。
以下に、本発明における鋼特性および製造条件の限定理由について詳しく説明する。
本発明の高強度熱延鋼板における成分組成に関し、各元素の限定理由について以下に詳述する。なお、以下の説明においては、特に指定の無い限り、「%」は質量%を表すものとする。また、以下に示す基本成分及び選択元素の残部は、鉄及び不可避的不純物からなる。
Cは、安価に強度を確保出来る元素であり、本発明の必須元素である。Cの含有量が0.03%未満では本発明で規定している強度が満足できない。しかし、Cが0.15%を超えると強度が上がりすぎ、延性が低下すると共に、溶接性も劣化する。このため、本発明では、Cの含有量を0.05%以上、0.15%以下に規定した。なお、より安定して高い強度を確保する観点からは、Cの添加量を0.05%以上とすることが望ましく、0.07%以上とすることがより望ましい。また、強度の延性のバランスの観点からは、Cの添加量を0.13%以下とすることが望ましく、0.12%以下とすることがより望ましい。
Siは強度を確保するために0.01%以上添加する。また、溶接性の観点からは、Siを0.1%以上添加することが望ましく、更に望ましくは0.12%以上である。しかし、Siを0.6%超添加すると表面にSiスケールと呼ばれる欠陥が発生し、表面品位を著しく低下させることから、0.6%を上限とする。また、この観点から、Siの添加量は、より好ましくは0.3%以下、更に好ましくは0.15%以下である。
Mnは強度確保の観点から0.5%以上添加する。また、この観点からは、Mnは1.0%以上添加することが望ましく、更に望ましくは1.3%以上である。しかし、Mn添加量が2.2%を超えると、溶接割れ感受性が劣化することから上限を2.2%以下とする。この観点からはMnの添加量を2.0%以下とすることが望ましく、更に望ましくは1.8%以下である。
Pは鋼板の強度を上げる元素として必要な強度レベルに応じて添加する。しかしながら、Pの添加量が多いと粒界へ偏析するために局部延性、溶接性、靭性を劣化させる。従って、Pの添加量の上限値は0.1%とする。この観点からは、Pは0.05%以下とする事が望ましく、更に望ましくは0.02%以下である。一方、0.001%未満の添加量ではPの劣化効果は無視できる他、0.001%未満にするには製鋼工程でのコストの上昇を招くことから、Pは0.001%を下限とする。
Sは、MnSを生成することで局部延性、溶接性、靭性を劣化させる元素であり、鋼中に存在しない方が好ましい元素であることから、上限を0.05%とする。この観点からはSは0.01%以下とすることが望ましく、更に望ましくは0.005%以下である。一方、Sを0.0005%未満にするには製鋼工程でのコストの上昇を招くことから、Sは0.0005%を下限とする。
Alは脱酸材として0.01%以上添加する必要があり、望ましくは0.03%以上である。一方、Alを過度に添加しても、かえって鋼を脆化させるとともに、溶接性も低下させるため、0.2%を上限とする。この観点から望ましくは0.3%以下とする。
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、加工性を劣化させる事から、その含有量を0.010%以下とする。また、この観点からはNは0.006%以下の添加が望ましく、更に望ましくは0.004%以下である。一方、不必要にNを低減することは製鋼工程でのコストが増大するので、その含有量の下限は0.0001%とする。
(Ti:チタン) 0.040%以上、0.14%以下
NbとTiは、いずれも再結晶の抑制、組織の微細化、炭化物の析出を介して強度上昇、特に降伏強度の向上に寄与することから、いずれか1種または2種を添加する。
Nbは0.005%未満、Tiは0.04%未満の添加では上記の効果は十分得られない事から、それぞれ0.005%、0.04%を下限とする。上記効果を安定して確保するためには、NbとTiのそれぞれ0.015%、0.050%以上添加することが望ましく、更に望ましくは、NbとTiそれぞれ0.020%、0.060%以上である。
一方、Nbの0.10%超の添加、またはTiの0.14%超の添加は靭性、溶接性、延性を著しく劣化させることからこれらの値を上限とする。この観点からはNbは0.06%以下、Tiは0.1%以下の添加が望ましい。更に望ましくは各々0.03%以下、0.08%以下である。
Bは安価な焼き入れ性向上元素であり、強度上昇に寄与する事から、必要に応じて0.0003%以上添加する事が望ましい。この観点からは、Bは0.0006%以上の添加がさらに望ましい。一方、Bを0.005%以上添加しても特段の効果が得られないばかりでなく、靭性の劣化を招くことから0.005%を上限とする事が望ましい。また、この観点からは、Bは0.003%以下の添加がさらに望ましい。
(Mo:モリブデン) 0.01%以上、3.0%以下
(W:タングステン) 0.01%以上、2.0%以下
Cr、Mo、Wはいずれも焼入性を向上させると共に炭化物を形成して強度を高める効果を有する元素である。そのため、各々0.1%(Cr)、0.01%(Mo)、0.01%(W)以上添加することが望ましい。上記効果を安定して確保するためには、それぞれ0.3%(Cr)、0.05%(Mo)、0.05%(W)以上添加することが更に望ましい。
一方、各々5.0%超(Cr)、3.0%超(Mo)、2.0%超(W)の添加は、延性や溶接性を低下させるおそれがあるため、これらを上限とすることが望ましく、4%(Cr)、2.0%(Mo)、1.5%(W)以下とすることが更に望ましい。
Cuは鋼板強度を上げると共に、耐食性やスケールの剥離性を向上させる元素であることから0.04%以上添加することが望ましく、更に望ましくは0.08%以上である。一方Cuの2.0%超の添加は表面疵の原因となるため、2.0%以下添加することが望ましく、更に望ましくは1.0%以下である。
Niは鋼板強度を上げると共に、靭性を向上させる元素であることから、0.02%以上添加することが望ましく、更に望ましくは0.04%以上である。一方、Niの1.0%超の添加は延性劣化の原因となるため、1.0%以下添加することが望ましく、更に望ましくは0.5%以下である。
Vは、炭化物を形成し強度を向上させる元素であることから、0.001%以上添加することが望ましい。この観点からは0.01%以上の添加がさらに望ましい。一方、0.30%を超える添加では、靱性の低下を招くため、0.30%以下添加することが望ましく、更に望ましくは0.15%以下である。
Ca、Mg、Zr、REMは、硫化物や酸化物の形状を制御して靭性を向上させる。この目的のためには、これらの元素の1種または2種以上を単独または合計で0.0005%以上添加することが望ましい。しかしながら、これらの元素の過度の添加は加工性を劣化させるため、その上限を0.05%とすることが望ましい。
また、本発明の高強度熱延鋼板は、以上の元素の他、Sn、Asなどの不可避的に混入する元素を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる。
本発明に係る高強度熱延鋼板は、板厚が4mm〜10mmの熱延鋼板である。板厚が4mm以下になるとレベラーでの歪みの導入が難しくなり、特に、鋼鈑の強度が高強度となるほど切断後の切断後の形状確保が困難となる事から、この板厚を下限とする。この観点からは板厚を4.5mm以上とする事が望ましい。更に望ましくは5mmである。
一方、板厚が10mm以上になると、熱間圧延中の集合組織の発達が不十分になると共に、レベラーで導入される予歪み量が高くなりすぎる事から、ヤング率が著しく劣化するおそれがある。そのため、板厚の上限は10mmとする。この観点から板厚は望ましくは8mm以下、更に望ましくは6mm以下である。
本発明では、鋼組成を上述した範囲に制御し、さらに、各製造条件を後述の条件とすることで、圧延方向の引張強度と幅方向の引張強度がいずれも590MPa以上の高強度熱延鋼板が実現できる。このように、強度クラスを590MPa以上とする事で、鋼板の板厚を薄肉化して部材として用いる場合であっても、十分に高い部材強度が確保できる。なお、圧延方向(L方向)とは鋼鈑の長さ方向であり、幅方向(C方向)とは、圧延方向に直角な方向であって板幅方向を指す。
本発明の高強度熱延鋼板においては、圧延方向および幅方向それぞれのヤング率において、最小値が207GPa以上、平均値が215GPa以上と規定し、高い剛性を確保している。なお、ヤング率には複数の測定方法があるが、本発明で述べる所のヤング率は各方向から切り出した引張試験片の歪み量0.05%以下での応力−歪み曲線の傾きから求める引張法によって算出したものを指す。
ここで、結晶の方位は、通常、板面に垂直な方位を[hkl]又は{hkl}、圧延方向に平行な方位を(uvw)又は<uvw>で表示する。{hkl},<uvw>は、等価な面の総称であり、[hkl],(uvw)は、個々の結晶面を指す。即ち、本発明においては主たる組織がフェライトでありbcc構造を対象としているため、例えば、(111),(−111),(1−11),(11−1),(−1−11),(−11−1),(1−1−1),(−1−1−1)面は等価であり、区別がつかない。このような場合、これらの方位を総称して{111}と称する。
まず、鋼板の圧延方向断面を研磨面および測定面とする。この面をコロイダルシリカ等の研磨液を用いて研磨する。必要に応じて、電解研磨をおこなってもよい。測定範囲は板厚全厚と圧延方向に1mm以上の範囲とする。測定は5μm程度の間隔を設けて1万点以上行う事が望ましい。
本発明に係る剛性が高く切断後の形状が良好な高強度熱延鋼板の製造方法について以下に説明する。
本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、上記鋼組成を有するスラブを1150℃以上1250℃以下に加熱した後、1000℃以下でのトータル圧下率(合計圧下率)が20%以上、80%以下、仕上げ温度が850℃以上、930℃以下となる条件で熱間圧延を行い、得られた鋼帯を450〜650℃で巻き取ってコイル状とし、その後コイルが100℃以下になるまで冷却した後に、1機以上のロールレベラーを有する切断ラインに供し、鋼帯の状態もしくは切断後鋼板とした状態で、ロールレベラーによる矯正を少なくとも1回以上、式(1)を満足する条件で施す方法である。
3.5≦(t/2R)/(YP/E)≦10 (1)
ここで、t:板厚(mm)、R:ロールレベラー半径(mm)、YP:圧延方向の降伏強度(MPa)、E:圧延方向のヤング率(MPa)である。
以下、上記製造方法の各条件について詳細に説明する。
加工度が3未満では十分な形状矯正が施されない事から、切断後に反りなどの形状不良が発生するおそれがある。この観点からは加工度を3.5以上にすることが望ましい。更に望ましくは4以上である。一方、加工度が10超となると曲げ加工によって加えられる曲げ歪みが高くなりすぎるために、ヤング率が低下するおそれがある。この観点からは加工度を9.5以下にする事が望ましい。更に望ましくは9以下である。
3.5≦(t/2R)/(YP/E)≦10 (1)
ここでt:板厚(mm)、R:ロールレベラー半径(mm)、YP:圧延方向の降伏強度(MPa)、E:圧延方向のヤング率(MPa)、である。
次に、常温まで冷却したコイルをロールレベラー2機を有する切断ラインに供し、ロールレベラーによる矯正後に3000mm長さに切断した。ロールレベラーの直径はいずれも370mm(半径Rは185mm)である。また、上記式(1)に用いるヤング率はいずれも圧延方向(L方向)ヤング率が206GPaよりも大きい場合は測定値、206GPa未満の場合は206GPaとした。なお、式(1)中のヤング率Eの単位はGPaからMPaに換算して計算した。下記表2には得られた熱延板の特性を調査した結果も併せて示す。
なお、表2に示す製造条件や特性等の各項目は以下の通りである。
SRT(℃):熱間圧延を行う際の鋼片(スラブ)の加熱温度
圧下率(%):1000℃以下でのトータル圧下率(合計圧下率)
FT(℃):熱間圧延終了温度(仕上げ温度)
CT(℃):巻取温度
加工度:(板厚t/2R)/(YP(L)/E(L))
E(L)(GPa):圧延方向のヤング率
E(C)(GPa):幅方向のヤング率
Ave.E(GPa):圧延方向及び幅方向のヤング率の平均値
YP(L)(MPa):圧延方向の降伏応力(降伏強度)
TS(L)(MPa):圧延方向の引張強度
YR(L) :圧延方向における降伏比(YP(L)/TS(L))
YP(C)(MPa):幅方向の降伏応力(降伏強度)
TS(C)(MPa):幅方向の引張強度
YR(C) :幅方向における降伏比(YP(C)/TS(C))
キャンバーは、曲率半径ρについて以下の基準により評価を行った。
○:5000m<ρ
△:3500m≦ρ≦5000m
×:ρ<5000m
また、表面性状についての評価基準は次のとおりである。
○:スケール起因の表面疵無し
△:スケール起因の表面疵発生箇所の面積率20%以下
×:スケール起因の表面疵発生箇所の面積率20%超
なお、キャンバー、表面性状ともに、「○」及び「△」を良好なもの、そして「×」を不良なものとして評価した。
まず、鋼板を圧延方向断面が研磨面となるように樹脂に埋め込み、機械研磨およびバフ研磨した後、コロイダルシリカで仕上げ研磨を行った。この試験片において、板厚の全厚×2mmの領域の結晶方位をEBSDで測定した。測定間隔は5μmとした。
以下に、本実施例の結果の詳細について述べる。
製造No.2は、スラブの加熱温度、仕上温度のいずれもが高すぎるために、熱間圧延中の再結晶が過度に進み集合組織がランダム化したため、変態後の{112}<110>強度比が低下し、ヤング率が低下した。また、巻取温度が高すぎるために炭化物が粗大化してしまい、強度が低下した。
製造No.4は1000℃以下での圧下率が低すぎるために十分な熱延による集合組織が発達せず、ヤング率が低下している。
一方、製造No.12は1000℃以下での圧下率が高すぎたために、熱間再結晶が過度に促進され、集合組織がランダム化したため、変態後の{112}<110>強度比が低下し、圧延方向ならびに幅方向それぞれのヤング率の平均値が低下した例である。
製造No.18は仕上げ温度が高すぎるために熱間圧延中の再結晶が過度に促進されると共に、1000℃以下での圧下率も低すぎるために集合組織がランダム化したため、変態後の{112}<110>強度比が低下し、圧延方向ならびに幅方向それぞれのヤング率の平均値が低下した例である。
製造No.24は熱延の仕上げ温度が低すぎたために、変態点以下で熱延が行われた結果、異なる結晶方位が発達して結果として{112}<110>強度比が低下し、圧延方向ならびに幅方向それぞれのヤング率の平均値が低下した例である。
製造No.8は巻取温度が低すぎて強度が低下している。
また製造No.28は板厚薄すぎて加工度が低すぎるために形状が劣化した例である。
以上説明した実施例の結果より、本発明により、高い剛性を有し、かつ、切断後の形状が良好な延方向の剛性に優れた高強度熱延鋼板が実現可能となることが明らかである。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.03%以上、0.15%以下、
Si:0.01%以上、0.6%以下、
Mn:0.5%以上、2.2%以下、
P:0.001%以上、0.1%以下、
S:0.0005%以上、0.05%以下、
Al:0.01%以上、0.2%以下、
N:0.0001%以上、0.010%以下、
更に、
Nb:0.005%以上、0.1%以下、
Ti:0.040%以上、0.14%以下
のいずれか1種又は2種を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物から成る鋼組成を有し、
板厚が4〜10mm、引張強度590MPa以上、圧延方向のヤング率と幅方向のヤング率がいずれも207GPa以上かつこれらの平均値が215GPa以上であり、
板厚全厚で測定した{112}<110>強度比が2.5以上、6.0以下であることを特徴とする高強度熱延鋼板。 - さらに、質量%で、B:0.0003%以上、0.005%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度熱延鋼板。
- さらに、質量%で、
Cr:0.1%以上、5.0%以下、
Mo:0.01%以上、3.0%以下、
W:0.01%以上、2.0%以下、
Cu:0.04%以上、2.0%以下、
Ni:0.02%以上、1.0%以下、
V:0.001%以上、0.30%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の高強度熱延鋼板。 - さらに、質量%で、
Ca、Mg、Zr、REMの1種または2種以上を合計で0.0005%以上、0.05%以下で含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の高強度熱延鋼板。 - 請求項1〜4の何れかに記載の高強度熱延鋼板を製造する方法であって、
請求項1〜4のいずれかに記載の鋼組成を有するスラブを1150℃以上1250℃以下に加熱した後、1000℃以下でのトータル圧下率が20%以上、80%以下、仕上げ温度が850℃以上、930℃以下となる条件で熱間圧延を行い、得られた鋼帯を450〜650℃でコイル状に巻き取ってコイル状とし、その後コイルが100℃以下になるまで冷却した後に、1機以上のロールレベラーを有する切断ラインに供し、鋼帯の状態もしくは切断後鋼板とした状態で、ロールレベラーによる矯正を少なくとも1回以上、式(1)を満足する条件で施すことを特徴とする高強度熱延鋼板の製造方法。
3.5≦(t/2R)/(YP/E)≦10 (1)
ここでt:板厚(mm)、R:ロールレベラー半径(mm)、YP:圧延方向の降伏強度(MPa)、E:圧延方向のヤング率(MPa)、である。
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