JP4840270B2 - 熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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を有する。
まず、良好な強度−延性バランスが得られるSi含有型の550MPa以上の引張強度を有する高強度熱延鋼板を対象とし、数多くの実験結果から、良好な伸びフランジ性を実現するために必要な鋼組織として、フェライトの面積割合が70%以上であり、{311}<110>〜{211}<110>の方位を有する結晶の平均存在確率密度が10以下でかつ{100}<110>の存在確率密度の2.5倍以下であることが好適であることを見出した。
その結果、通常行われているような鋼板の代表温度(例えば幅方向中央部の温度)を指標として上記条件による圧下率規制を行ったのでは、熱間圧延後の熱延鋼板の表面性状に起因する冷却ムラにより、局所的に上記条件を外れる部分が生じてしまい、当該部分において上記組織が得られない場合があることを突き止めた。
(1)質量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.2〜1.5%、Mn:0.5%以上2.0%未満、Al:0.1%超1.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、N:0.01%以下、Ti:0.03〜0.2%、Nb:0.003〜0.1%およびV:0.003〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに、下記式(1)および(2)を満足する化学組成を有し、フェライトの面積割合が70%以上であり、{311}<110>〜{211}<110>の方位を有する結晶の平均存在確率密度が10以下でかつ{100}<110>の存在確率密度の2.5倍以下である鋼組織を有し、
引張強度TS(MPa)と全伸びEl(%)との積TS×Elが13500MPa・%以上であって、
さらに鋼板表面における島状スケールおよび島状スケール疵の面積率が10%以下であることを特徴とする熱延鋼板。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、Ca、MgおよびNdからなる群から選ばれる1種または2種以上を合計で0.1質量%以下含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の熱延鋼板。
(5)前記熱間圧延は粗熱間圧延と仕上熱間圧延とを備え、該粗熱間圧延により得られた粗バーに対して下記式(5)で規定される温度域TRD(℃)でデスケーリングを行い、当該デスケーリング後の粗バーに対して前記仕上圧延を行う上記(4)記載の熱延鋼板の製造方法。
本実施形態に係る鋼の化学組成について説明する。
C:0.02〜0.20%
Cは、鋼板の高強度化に有効な元素である。本実施形態に係る鋼においては、目的とする強度を得るためにC含有量を0.02%以上とする。一方、Cを過剰に含有させると、熱間圧延後のフェライト変態が遅延し、目的とするフェライト量を確保できずに伸びフランジ性の劣化を招く。このため、C含有量を0.20%以下とする。
Siは、高強度化に伴う延性劣化が比較的小さい有用な強化元素である。本実施形態に係る鋼においては、高強度化を目的としてSi含有量を0.2%以上とする。0.5%以上とすることが好ましい。一方、Siを過剰に含有させると、変態温度の上昇を招いて圧延設備の負荷が大きくなる。また、鋼組織中に残留オーステナイトが形成されやすくなるため、伸びフランジ性の低下をもたらす。このため、Si含有量を1.5 %以下とする。なお、Siには化成処理性を劣化させる作用も有するので、化成処理性が要求される場合にはSi含有量を1.0%以下とすることが好ましい。
Mnは、高強度化に有効な元素である。本実施形態に係る鋼においては、高強度化を目的としてMn含有量を0.5%以上とする。Mnは、オーステナイトからフェライトへの変態温度を低下させる作用を有するので、熱間圧延における仕上温度を低下させることが可能となる。仕上温度を低くするとフェライト結晶粒の微細化が促進されるため、鋼板の伸びフランジ性が向上する。
Al:0.1%超1.0%未満
Alは、鋼組織中のフェライト形成に有効な元素であり、本実施形態に係る鋼においては目的とするフェライト量を確保するために0.1 %を超えて含有させる。0.2%以上とすることが好ましい。一方、過剰に含有させると、変態温度の上昇を招いて操業負荷を増大させるとともに鋼中の清浄度を低下させる。このため、Al含有量を1.0 %未満とする。0.5%未満とすることが好ましい。
Tiは、フェライトを強化する作用を有する元素であり、本実施形態に係る鋼においては0.03%以上含有させる。一方、過剰に含有すると鋼中で粗大な炭窒化物を形成し、伸びフランジ性を低下させる。したがって、Ti含有量を0.2%以下とする。
Nbは、フェライトを強化する作用を有するとともに、組織を微細化して伸びフランジ性を向上させる作用を有するので、本実施形態に係る鋼においては0.003%以上含有させる。好ましくは0.005%以上である。一方、過剰に含有させると鋼の熱間変形抵抗を上昇させて操業負荷の増大を招く。このため、Nb含有量を0.1%以下とする。0.05%以下とすることが好ましい。
Vは、フェライトを強化する作用を有するため、本実施形態に係る鋼においては0.003 %以上含有させる。Vは、フェライト変態を促進する作用も有するので、目的とするフェライト量の確保を容易にするために0.005%以上含有させることが好ましい。900MPa以上の高強度を得る場合には、フェライトのさらなる強化が必要となるので、0.2%以上含有させることがさらに好ましい。一方、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和しいたずらにコスト増を招く。このため、V含有量は1.0%以下とする。Vは化成処理性を損なう作用も有するため、その含有量を0.5 %以下とすることが好ましい。
Pは、不純物として含有されるが、強化に有効な元素でもあるので含有させても構わない。しかしながら、粒界偏析傾向が強く、伸びフランジ性を劣化させる作用を有するので、P含有量は0.1%以下とする。0.05%以下とすることが好ましく、0.02%以下とすることがさらに好ましい。
Sは、硫化物系介在物を形成して加工性を低下させる不純物元素であるため、その含有量は0.01%以下とする。一段と優れた加工性を確保したい場合には、0.008%以下とすることが好ましく、0.003%以下とすることがさらに好ましい。
Nは、TiやNb等と窒化物を形成して加工性を低下させる不純物元素であるため、その含有量は0.01%以下とする。0.006%以下とすることが好ましい。
CrおよびMoから選ばれる1種または2種を合計で1.0%以下
CrおよびMoは、焼き入れ性を増加させ、ベイナイトの構造を微細化する作用を有する。また、適切な温度制御を行うことにより、微細な炭化物を形成して析出強化にも寄与する。このため、CrおよびMoから選ばれる1種または2種を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させると化成処理性を低下させるため、CrおよびMoから選ばれる1種または2種を含有させる場合にはその合計含有量を1.0%以下とする。上記作用による効果を確実に得るには、この合計含有量を0.2%以下とすることが好ましい。
Ca、MgおよびNdは、溶鋼が凝固する際に生成する酸化物や窒化物を微細化して、鋳片の健全性を向上させる作用を有する。このため、Ca、MgおよびNdからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和していたずらにコストを増加させるのみならず、鋼の清浄度を低下せしめて成形性を劣化させる。このため、Ca、MgおよびNdからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有させる場合にはその合計含有量を0.1%以下とする。上記作用による効果を確実に得るには、この合計含有量を0.0004%以上とすることが好ましい。
2.化学組成のバランス規定
(1)機械特性に関するバランス
本実施形態に係る鋼板は、優れた機械特性を実現すべく、Ti、Nb、Vの析出強化元素およびNとCとの含有量のバランスとして、下記式(1)を満たす。
本実施形態に係る鋼板は、鋼板表面の島状スケールの除去を容易にするために有効なAlおよびPとSiとの含有量のバランスとして、下記式(2)を満たす。
(1)フェライトの面積割合
本実施形態に係る鋼板は、Siによる強度−延性バランスの向上作用を効果的に得るために、鋼組織の70面積%以上をフェライトとする。好ましくは80面積%以上である。これに対し、パーライトの存在は伸びフランジ性の劣化を招くので、残部組織はパーライトを含まない組織であることが好ましい。さらに、残部組織は下部ベイナイトであることがより好ましい。
本実施形態に係る鋼板は、組織の結晶方位の存在確率密度を{鋼板板面と平行な結晶面方位}<鋼板圧延方向に平行な結晶方位>として記述すると、次の特徴を有する。
(ii){100}<110>の存在確率密度の2.5倍以下
鋼板がこのような鋼組織上の特徴を有することによって良好な伸びフランジ性が実現される。特に、鋼板圧延幅方向に伸び稜線を有する加工において伸びフランジ性の向上が顕著である。
本実施形態に係る鋼板は、その表面における島状スケールおよび島状スケール疵の面積率を10%以下とする。ここで規定する面積率は、熱延鋼板の非定常部分を除いた部分、すなわち圧延幅方向の両端部よりそれぞれ100mmおよび圧延方向の先端部および後端部よりそれぞれ30mを除いた部分における面積割合である。
本実施形態に係る熱延鋼板は、上記のような化学組成上の特徴および鋼組織上の特徴を有し、機械特性として、引張強度と全伸びとの積(TS×El、単位:MPa・%)が13500MPa・%以上であるならば、製造方法には特に限定されない。ただし、次のような製造方法を採用すれば、本実施形態に係る熱延鋼板を効率的に、かつ安定的に得ることが実現される。
上記化学組成を備える鋼塊または鋼片の温度を1250℃以上として熱間圧延に供し、粗大な炭窒化物を固溶させることが好ましい。粗大な炭窒化物は、伸びフランジ性を阻害するとともに、強度向上に寄与する微細な炭窒化物を形成する元素を消費する。したがって、1250℃以上とすることによって、強度低下や伸びフランジ性の低下などの機械特性の劣化が回避される。
粗熱間圧延により得られた粗バーにデスケーリングを施して仕上熱間圧延に供するにあたって、このデスケーリングを次式(5)で規定される温度域TRDで行うことが好ましい。
熱間圧延において、下記式(3)で規定される温度域TPTでの総圧下率を90%未満とすることが好ましい。
熱間圧延において、熱間圧延の完了温度を(Ae3点+100℃)〜(Ae3点−50℃)の温度域とすることが好ましい。
熱間圧延を上記の温度域で完了させたら、次のように、三段階で冷却を行って巻き取ることが好ましい。なお、下記の冷却を行うにあたって、冷却手段は、水冷却、ロール等の送板装置による接触抜熱、送風による冷却のいずれを採用しても構わない。また、これらの冷却手段を複数の組み合わせてもよい。
まず、第1次冷却として、熱間圧延完了後3秒間以内に冷却を開始して、30℃/秒以上の平均冷却速度で750〜550℃の温度域まで冷却することが好ましい。
第1次冷却として上記の温度域まで冷却したら、次に第2次冷却として、第1次冷却の冷却停止温度から30℃/秒以下の平均冷却速度で3〜20秒間冷却することが好ましい。
第2次冷却に続いて、第3次冷却として、第2次冷却の冷却停止温度から30℃/秒以上の平均冷却速度で550℃以下の温度域まで冷却して巻き取ることが好ましい。
熱間圧延開始から巻取までの鋼板の製造工程において、鋼板の1/2t位置における温度、すなわち板厚中心温度が、下記式(4)を満たすTpef(℃)以下、(Ae3点−50℃)以上の温度域にある滞留時間を、180秒間以下とすることが好ましい。
表1に示される複数の鋼種について、複数スタンドによるタンデム圧延可能な小型実験ミルを用いて幅200mm、長さ1500mmの鋼板の製造を実施した。また製造温度条件は表2に示されるとおりである。なお、第1次冷却の平均冷却速度は約70℃/秒、第2次冷却の平均冷却速度は約10℃/秒、第3次冷却の平均冷却速度は約45℃/秒であった。鋼材の途中加熱は大気雰囲気を模擬した小型炉により行った。デスケーリングは入側スタンド直前に設置された噴射孔からの加圧水により行い、実ライン製造を模擬した。なお、鋼板の温度はスタンド間に設置された放射温度計にて測定を行った。
2.評価
得られた熱延鋼板からJIS5号試験片を採取して、降伏応力YS(MPa)、引張強度TS(MPa)、全伸びEl(%)を測定し、この結果から強度−延性バランスTS×El(MPa・%)を求め、これらによって機械特性を評価した。また、圧延方向の中央部から90mm四方の試験片を1/4w、1/2w、3/4wの順番で圧延方向に90mmずつ幅方向位置を変更しながら各幅方向位置について3枚ずつ採取した。採取した試験片について日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001に準じて穴拡げ率HER(%)を測定し、これらの結果から平均HER(%)を求めるとともに、穴拡げ率の最大値と最小値との差をHERバラツキ幅(%)として求めることで、伸びフランジ性を評価した。
表3に実施により得られた鋼板の特性を示す。本発明で規定する範囲内の鋼種および製造条件を適用した鋼板(試番1〜8)は、本発明に定める鋼組織上の特徴を有し、優れた機械特性および表面性状を有することが確認された。
試験番号12は、温度域がTPTにおける総圧下率が90%の場合であり、この場合には本発明に規定される鋼組織が得られなかった。このため、伸びフランジ性およびそのばらつきが不芳であった。
試験番号15は、第2次冷却の冷却時間が短時間であったことから、フェライト面積率が低下した。このため、強度−延性バランスが不芳であった。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.2〜1.5%、Mn:0.5%以上2.0%未満、Al:0.1%超1.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、N:0.01%以下、Ti:0.03〜0.2%、Nb:0.003〜0.1%およびV:0.003〜1.0%を含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに、下記式(1)および(2)を満足する化学組成を有し、フェライトの面積割合が70%以上であり、{311}<110>〜{211}<110>の方位を有する結晶の平均存在確率密度が10以下でかつ{100}<110>の存在確率密度の2.5倍以下である鋼組織を有し、引張強度TS(MPa)と全伸びEl(%)との積TS×El値が13500MPa・%以上であって、さらに鋼板表面における島状スケールおよび島状スケール疵の面積率が10%以下であることを特徴とする熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、CrおよびMoから選ばれる1種または2種を合計で1.0質量%以下含有することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Ca、MgおよびNdからなる群から選ばれる1種または2種以上を合計で0.1質量%以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板。
- 請求項1〜3のいずれかに記載される化学組成を有する鋼塊または鋼片を1250℃以上としたのちに熱間圧延を施し、(Ae3点+100℃)〜(Ae3点−50℃)の温度域で熱間圧延を完了し、得られた熱延鋼板に前記熱間圧延完了後3秒間以内に冷却を開始して30℃/秒以上の平均冷却速度で750〜550℃の温度域まで冷却する第1次冷却を施し、前記第1次冷却の冷却停止温度から30℃/秒以下の平均冷却速度で3〜20秒間冷却する第2次冷却を施し、前記2次冷却の冷却停止温度から30℃/秒以上の平均冷却速度で550℃以下の温度域まで冷却する第3次冷却を施してから巻取を行うとともに、前記熱間圧延において下記式(3)で規定される温度域TPT(℃)における総圧下率を90%未満とし、さらに前記熱間圧延開始から前記巻取までの工程において、鋼板の板厚中心温度が下記式(4)で規定されるTpef(℃)以下(Ae3点−50℃)以上の温度域となる時間を180秒間以下とすることを特徴とする熱延鋼板の製造方法。
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