JP4966915B2 - 熱伝導性シート、熱伝導性シート積層体及びその製造方法 - Google Patents

熱伝導性シート、熱伝導性シート積層体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱伝導性シート、熱伝導性シート積層体及びその製造方法に関し、詳しくは、取扱作業性が優れ、発熱性の電気・電子部品を放熱フィンや金属製放熱板等のいわゆる放熱部材に取り付けるために、これらの部品を仮止めしたり、これらの部品を取り付けた後、これらの部品を容易に交換することができる熱伝導性シート、熱伝導性シート積層体及びその製造方法に関する。
シリコーンをシート状に硬化させて形成したシリコーンシートは、一般に、粘着性や形状追随性があるために、これを粘着シートとして使用したり、また、これに熱伝導性充填剤(フィラー)を配合して、パワートランジスタ、パワーモジュール、サイリスタ、整流器、トランス等の発熱性の電気・電子部品と放熱フィンや金属製放熱板に若干の加圧により十分に密着して、この電気・電子部品から発生する熱を効率良く放熱するための熱伝導性シリコーンシートとして使用している。
近年、熱伝導性シートのハンドリング性の観点から、シートの表裏異粘着処理のニーズが高くなっている。そのため、従来から、ゴムの非粘着化技術をベースに様々な方法が提案されている。例えば、シリコーンゴム皮膜形成などの表面処理剤(例えば、ハイドロジェンポリシロキサンなど)による表面改質が多く提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
しかし、表面処理剤による表面処理や表面改質の方法は、簡易的に熱伝導性シート表面にシリコーンゴム皮膜を形成できる(例えば、ハイドロジェンポリシロキサンで表面処理した例として図5参照。)という長所の半面、硬化皮膜が経時的に硬化進行して、表面クラックが生じ易く、また、僅かな塗布ムラにより、硬度や皮膜の厚みが変化し、シート皺が発生してしまう、硬さムラを発生してしまう、一部が裏面まで硬くなってしまうなどの問題も生じ易く、必ずしも容易な製法ではなかった。
一方、放熱シートの表層に非粘着性皮膜(本発明の非粘着性とは、シートを取り扱うにおいて、問題とならない程度までシート表面の粘着性を低下させた状態をいう。)を形成する方法も、提案されている(例えば、特許文献5参照。)が、非粘着性皮膜自体が熱抵抗成分になり、放熱シート全体の熱伝導性を低下させるという問題があった。特に、熱伝導性となる放熱シートの厚みが薄い場合に、その影響は顕著であった。
上記問題を解決する方法として、非粘着性皮膜に熱伝導性フィラーを充填する方法も提案されている(例えば、特許文献6、7参照。)。
しかし、非粘着性皮膜の原料にフィラーを添加する方法では、皮膜形成時に原料が高粘度になってしまい、薄い皮膜層の形成が困難であり、皮膜が厚く硬くなり、柔軟性や熱伝導性、着脱時のハンドリング性が損なわれる。また、予めフィラーを添加した非粘着性皮膜を作製しなければならず、工程が増えるため、量産性に劣り、コスト上昇になっていた。さらに、予め熱伝導特性を満足するに十分な量のフィラーを非粘着性皮膜に添加した場合は、ゲル層と非粘着性ゴム層界面の接着性に寄与する非粘着性皮膜中の反応性ポリマー成分が減少するため、予めフィラーが充填された非粘着性ゴム皮膜とゲル層の密着強度が十分でなかった。
そのため、熱伝導性が良好で、密着強度が高い非粘着性皮膜を片面に形成し、シートの表裏異粘着処理された熱伝導性シートが求められている。
特許第3280224号(特開平9−207275号)公報 特許第3434186号(特開平10−183110号)公報 特開平11−199690号公報 特開昭61−277414号公報 特開2003−133769号公報 特開2004−311577号公報 特開平2−196453号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、簡単に製造でき、かつ放熱特性、耐久性、密着性に優れた非粘着層を有した熱伝導性シート、熱伝導性シート積層体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、フィラーを含む熱伝導性ゲルの片面に、該熱伝導性ゲルを構成するシリコーンゲルとは、同じ反応硬化型の組成物ではあるが主に架橋密度が異なる、硬化時に非粘着性となるゴム層を積層し、その積層の際には、共に未硬化の状態で積層を行い、一体硬化させると、硬化時に、熱伝導性ゲル中のフィラーが自重沈降等して、非粘着性ゴム層に移行して、その結果、両者の積層界面の密着性に優れることを見出した。そして、本発明は、これらの知見に基づき、完成するに至ったものである。
なお、本明細書において、シリコーンゲルとは、JIS K6301に規定され、A型スプリング式硬度計で測定されたゴム硬度(デュロメータA硬度;通称JIS−A硬度)が0であるシリコーン硬化物を意味する。また、ゲル状とは、シリコーン硬化物がこのようなシリコーンゲルの状態にあることを意味する。かかるシリコーンゲルは、一般に、架橋度が低い3次元的網目構造を有し、応力により変形して振動を吸収し、流動性を示す。これに対し、エラストマーとは、前記ゴム硬度が0より大で、100未満の範囲の硬度を有する硬化物を意味し、レジンとは、前記ゴム硬度が100以上の硬度を有する硬化物を意味する。
また、本発明における非粘着(性)とは、非粘着性ゴム層(B)の粘着性が粘着性ゲル層(A)よりも小さい状態、すなわち熱伝導シートが表裏異粘着となる状態を意味し、シート表面の粘着性を低下させた微粘着状態を含むものである。
さらに、本発明における未硬化とは、硬化しない程度に架橋反応が進んだ半硬化の状態を含むものである。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)からなる粘着性ゲル層(A)に、シリコーンゴム原料(b)からなる非粘着性ゴム層(B)が接合されてなる熱伝導性シートであって、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)は、共に未硬化の状態で積層して一体硬化処理により接合され、且つ、粘着性ゲル層(A)中に予め充填された熱伝導性フィラー(c)の一部は、接合時に非粘着性ゴム層(B)に移行して存在することを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、非粘着性ゴム層(B)に移行した熱伝導性フィラー(c)は、該表面の少なくとも一部に、シリコーンゲル原料(a)からなるゲル皮膜を有することを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、粘着性ゲル層(A)は、未硬化状態ではJIS Z8803準拠の共軸二重円筒形回転粘度計で測定した25℃における粘度が10〜500Pa・sであり、且つ硬化後はJIS K2207に準拠した25℃における針入度が20〜200であることを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、粘着性ゲル層(A)は、硬化してゲル状の硬化物になる付加反応硬化型シリコーンゲル組成物から形成され、該シリコーンゲル組成物は、
(a−1)1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち平均0.025モル%以上がアルケニル基であり、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にある、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.1〜2個有するオルガノポリシロキサン、
(a−2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2〜50個有し、該水素原子の数が前記オルガノポリシロキサン(a−1)中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり0.3〜2.0個になるように配合され、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にあるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(a−3)付加反応触媒、並びに
熱伝導性フィラー(c)、
を含有することを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
本発明の第5の発明によれば、第1又は2の発明において、非粘着性ゴム層(B)は、未硬化状態ではJIS Z8803準拠の共軸二重円筒形回転粘度計で測定した25℃における粘度が0.1〜60Pa・sであり、且つ硬化後はJIS K6253に準拠したデュロメータA硬度が10〜100であることを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、非粘着性ゴム層(B)は、硬化してエラストマー状またはレジン状の硬化物になる付加反応硬化型シリコーンゴム組成物から形成され、該シリコーンゴム組成物は、
(b−1)1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち平均0.05モル%以上がアルケニル基であり、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にある、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(b−2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3〜100個有し、該水素原子の数が前記オルガノポリシロキサン(b−1)中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり0.3〜2.0個になるように配合されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
(b−3)付加反応触媒、
を含有することを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、熱伝導性フィラー(c)は、レーザー回折/散乱法による平均粒子径が10〜200μmであることを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明において、非粘着性ゴム層(B)は、厚みが0.001〜0.3mmであり、且つ粘着性ゲル層(A)より薄いことを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8のいずれかの発明において、粘着性ゲル層(A)は、熱伝導性フィラー(c)50〜95重量%を含むことを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
さらに、本発明の第10の発明によれば、第1〜9のいずれかの発明において、粘着性ゲル層(A)の片面に、非粘着性ゴム層(B)が面方向にパターン状に形成されてなることを特徴とする熱伝導性シートが提供される。
一方、本発明の第11の発明によれば、第1〜10のいずれかの発明に係る熱伝導性シートの両面に、剥離フィルム(C、C)を積層してなることを特徴とする熱伝導性シート積層体が提供される。
また、本発明の第12の発明によれば、第11の発明に係る熱伝導性シート積層体の製造方法であって、下記の(I)〜(V)の工程を含むことを特徴とする熱伝導性シート積層体の製造方法が提供される。
(I):剥離フィルム(C)の片面上に、シリコーンゴム原料(b)である未硬化のシリコーンゴム組成物を積層する、未硬化の非粘着性ゴム層(B)の積層工程
(II):未硬化の非粘着性ゴム層(B)に、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)との混合物である未硬化のシリコーンゲル組成物を積層する、未硬化の粘着性ゲル層(A)の積層工程
(III):未硬化の粘着性ゲル層(A)に、剥離フィルム(C)を積層する工程
(IV):工程(III)で得られた未硬化の積層体の粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)とを、加熱硬化させ一体化する工程
(V):工程(II)〜(IV)の少なくとも一工程において、自重沈降、加圧及び/又は振動にて、熱伝導性フィラー(c)の一部が非粘着性ゴム層(B)に移行する工程
さらに、本発明の第13の発明によれば、第12の発明において、(II)乃至至(III)の工程は、ロール加圧法であることを特徴とする熱伝導性シート積層体の製造方法が提供される。
本発明の熱伝導性シートは、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)からなる粘着性ゲル層(A)に、シリコーンゴム原料(b)からなる非粘着性ゴム層(B)が積層されたものであるから、従来の片面へのシリコーンゴム皮膜処理をしなくても、両面の粘着性が異なり、片面のタックコントロールが可能となり、また、非粘着性ゴム層(B)に、熱伝導性フィラー(c)が移行することにより、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の積層界面の接着性を高くでき、さらに、非粘着性ゴム層(B)の熱伝導性を高くできるので、熱伝導性シート全体の熱伝導性を良好なものにできる。
また、粘着性ゲル層(A)から非粘着性ゴム層(B)に移行した熱伝導性フィラー表面には、シリコーンゲル原料(a)からなるシリコーンゲルの皮膜が形成されているので、熱伝導シートへの外力(振動、屈曲等)が付加された場合でも、該ゲル皮膜が緩衝膜として作用するので、硬化後の粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)との密着耐久性が高くでき、使用時の信頼性を向上できる。
さらに、本発明の製造方法は、簡単な工程からなり、簡便であり、効率的で生産性の高い方法である。
本発明の熱伝導性シートは、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)からなる粘着性ゲル層(A)に、シリコーンゴム原料(b)からなる非粘着性ゴム層(B)が積層された熱伝導性シートであって、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)は、共に未硬化の状態で積層して一体硬化され、且つ粘着性ゲル層(A)に充填された熱伝導性フィラー(c)の一部が非粘着性ゴム層(B)に移行して存在してなることを特徴とするものである。
以下に、本発明の熱伝導性シート、熱伝導性シート積層体及びその製造方法などについて、詳細に説明する。
1.熱伝導性シートの構成成分
(1)粘着性ゲル層(A)
本発明の熱伝導性シートに用いられる粘着性を有する粘着性ゲル層(A)は、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)からなる。
粘着性ゲル層(A)は、未硬化状態ではJIS Z8803準拠の共軸二重円筒形回転粘度計で測定した25℃における粘度が10〜500Pa・sの範囲が好ましい。粘着性ゲル層(A)の未硬化粘度が10Pa・s未満の場合には、未硬化の粘着性ゲル層(A)内で著しく熱伝導性フィラー(c)の沈降分離が起こる場合があり、その場合に硬化後の粘着性ゲル層(A)の熱伝導性能が低くなり、好ましくない。他方、粘着性ゲル層(A)の未硬化粘度が500Pa・sを超える場合には、未硬化の粘着性ゲル層(A)内において熱伝導性フィラー(c)が移動し難くなり、その結果、非粘着性ゴム層(B)への熱伝導性フィラー(c)の移行が困難になるため、好ましくない。
さらに、粘着性ゲル層(A)は、硬化状態では、JIS K2207に準拠した25℃における針入度20〜200が好ましい。硬度が針入度20未満の場合は、熱伝導性シートの柔軟性が乏しくなり、一方、針入度200を超える場合には、反対に柔軟性が高すぎて、熱伝導性シートを使用する際の取扱い性が悪くなるので好ましくない。
(i)シリコーンゲル原料(a)
本発明に係るシリコーンゲルは、粘着性を有する付加反応型または縮合反応型シリコーンゲル原料(a)から形成される。
上記シリコーンゲルの硬度は、SRIS 0101規格のアスカーC硬度が0〜30であるか、またはJIS K2207「石油アスファルト」に準拠した針入度(25℃)が20〜200であることが望ましい。
上記付加反応型シリコーンゲル原料としては、従来から知られ、種々のシリコーン材料として市販されて、一般的に使用されているケイ素化合物を適宜選択して用いることができる。よって、加熱硬化型あるいは常温硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものなど、いずれも用いることができ、特に付加型シリコーン組成物から得られるシリコーンゲル原料が好ましい。また、ケイ素原子に結合する基も、特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基のほか、これらの基の水素原子が部分的に他の原子又は結合基で置換されたものを挙げることができる。
具体的な付加反応型シリコーンゲル材としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製の商品名:CF−5106(針入度が150)などが良好であり、このシリコーンゲル材は、原料であるシリコーン樹脂がA液とB液とに分れていて、この両液を所定比率で混合して加熱することにより、所望の針入度を有するシリコーンゲル材を得ることができるものである。
本発明で用いられる付加反応型(又は架橋)シリコーンゲルの製法は、特に限定されないが、通常は、後述するオルガノハイドロジエンポリシロキサンとアルケニルポリシロキサンとを原料とし、両者を触媒の存在下でハイドロシリル化反応(付加反応)させることにより得られる。
すなわち、シリコーンゲルは、硬化してゲル状の硬化物になる付加反応硬化型シリコーンゲル組成物から形成され、このシリコーンゲル組成物は、(a−1)1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち平均0.025モル%以上がアルケニル基であり、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にある、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.1〜2個有するオルガノポリシロキサン、(a−2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2〜50個有し、該水素原子の数が前記オルガノポリシロキサン(a−1)中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり0.3〜2.0個になるように配合され、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にあるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および(a−3)付加反応触媒、の3成分を必須成分として含むものである。
(a−1)オルガノポリシロキサン:
このオルガノポリシロキサン(a−1)は、1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち平均0.025モル%以上がアルケニル基であり、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にある、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均して0.1〜2個有するものである。1分子に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうちアルケニル基の割合が平均0.025モル%より少ないと、シリコーンゲルが得られにくい。かかるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。(a−1)成分の合成が容易であること、および多くの種類の触媒によって容易に反応することから、ビニル基が好ましい。
ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、等のアルキル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基、あるいはこれらの基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子等で置換したクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の、炭素原子数1〜10、好ましくは炭素原子数1〜8の非置換または置換の1価炭化水素基が挙げられる。合成が容易なこと、および得られるシリコーンゲルの耐熱性や物理的性質が優れたものであることから、メチル基が好ましい。
また、このオルガノポリシロキサンの25℃における粘度は、好ましくは0.01〜20Pa・s、より好ましくは1〜10Pa・sである。粘度が0.01Pa・sよりも低いと、得られるシリコーンゲル組成物が流れやすく、作業性が低下するし、さらに該組成物の硬化により得られる硬化物の損失正接等の物理的性質が不満足なものとなる。一方、粘度が100Pa・sよりも高いと、得られる組成物の取扱い作業性が悪くなり、また、十分に熱伝導性フィラー(c)を充填できず、熱伝導特性が不満足なものとなる。
シリコーンゲル組成物を硬化させて得られる硬化物がゲル状のものになるためには、(a−1)成分は、1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち、平均0.025モル%以上がアルケニル基であり、かつ、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.1〜2個有するものであることが必要である。さらに、このオルガノポリシロキサン(a−1)の分子構造は、直鎖状でも分岐状でもよい。これらの混合物の形でもよい。
以上に述べたような(a−1)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば下記の一般式で表されるものが挙げられる。
Figure 0004966915
〔ここで、x,yは0≦x≦1.9,0.1≦y≦2、x+y=2を満たす数で、nは正の整数である。〕
(a−2)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a−2)は、前記(a−1)成分中のアルケニル基と反応してシリコーンゲルを形成するもので、そのために、ケイ素原子に結合する水素原子が1分子中に1〜50個存在しなければならない。このような水素原子は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子鎖の末端、あるいは途中のいずれのケイ素原子に結合していてもよい。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a−2)のケイ素原子に結合した水素原子以外の1価の原子もしくは基としては、前記(a−1)のオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合したアルケニル基以外の基として例示されたものと同様のものを例示することができる。(a−1)成分を容易に合成することができること、および得られるシリコーンゲルの耐熱性がより優れたものとなることから、メチル基が好ましい。
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a−2)は、オルガノポリシロキサン(a−1)と相溶性を有する必要があり、そのためにはオルガノポリシロキサン(a−1)中のアルケニル基以外の有機基と、異なる種類の有機基を有するケイ素原子の数が(a−2)成分中に少なければよく、通常オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a−2)中の全ケイ素原子に対して、上記ケイ素原子が10モル%以下であることが好ましい。
(a−2)成分の配合量は、(a−1)成分中のケイ素原子に結合するアルケニル基1個に対して(a−2)成分中のケイ素原子に結合する水素原子が0.3〜2.0個、好ましくは0.5〜1.5個となる量である。0.3個より少ない量であると、得られるシリコーンゲル中に未反応アルケニル基が残存し、硬化物の耐熱性が低下する。また、2.0個より多い量であると、得られるシリコーンゲル組成物が硬化の際に発泡する恐れがある。
以上に述べたような(a−2)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記の一般式で表されるものが挙げられる。
Figure 0004966915
〔ここで、x,yはx≧0,y≧0,x+y=2の数であり、mとnは0<n≦250,0<m≦50,0<m+n≦250を満たす整数である。〕
(a−3)付加反応触媒:
付加反応触媒(a−3)は、(a−1)成分中のケイ素原子に結合するアルケニル基と、(a−2)成分中のケイ素原子に結合する水素原子との付加反応(ヒドロシリル化反応)を促進するものとして知られるいかなる触媒でもよい。通常、白金族金属系触媒が用いられ、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯体、塩化白金酸−2−エチルヘキサノール溶液等の白金系触媒、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、パラジウム黒とトリフェニルホスフィンとの混合物等のパラジウム系触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。中でも塩化白金酸−2−エチルヘキサノール溶液が好ましい。
これらの触媒の配合量は、いわゆる触媒量でよい。通常、(a−1)成分と(a−2)成分との合計量に対して、0.1〜100ppm(触媒金属元素換算)の範囲である。
本発明に係るシリコーンゲル原料(a)から形成されるシリコーンゲルは、表面の非架橋官能基に由来する粘着性を有するが、例えば、MQレジン型の粘着付与成分を配合したものや、非反応性の粘着成分の添加や、非架橋官能基の側鎖の長さや末端官能基の種類などを調整して、粘着性を発現させるなど、公知の粘着性付与方法を適用されたものも、用いることができる。
一方、本発明に用いられる縮合反応硬化型のシリコーンゲルは、縮合型の反応性シリコーンゲルであり、大気中の水分と反応することで硬化し、加水分解性官能基が水分と接触することによって、加水分解縮合反応を起こして架橋する。その加水分解官能基としては、例えば、メチルエチルケトオキシム基(脱オキシム型)、アセトキシ基(脱酢酸型)、アルコキシ基(脱アルコール型)、イソプロペノキシ基(脱アセトン型)などがあるが、放出される物質の腐食性、臭気の少ない脱アルコール型あるいは脱オキシム型が好ましい。
縮合型の反応性シリコーンゲルは、その組成としては、例えば、
(a)次の一般式で表されるα,ω−ジヒドロキシオルガノポリシロキサンと、
Figure 0004966915
(式中、Rは、置換または非置換の1価の有機基、nは、300〜3000を示す。)
(b)次の一般式で表されるオキシムシランと、
Figure 0004966915
(式中、R、R、Rは、置換または非置換の1価の有機基を示す。)
(c)シリカ等の補強性充填材、(d)有機金属等の硬化触媒、(e)接着向上剤、
からなる混合物であり、場合によっては有機溶剤に希釈して基材表面に施し、乾燥硬化した後に弾性のある皮膜を形成するものである。
前記の式の置換または非置換の1価の有機基は、炭素数10以下のものが好ましく、とくに、メチル、エチル、ビニルなどの化合物が好ましい。
上記オキシムシランは、架橋剤又は硬化剤であり、(a)と加水分解縮合反応をすることにより、ゲル弾性体を形成する。
オキシムシランとしては、例えば、メチル−トリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニル−トリス(メチルエチルケトオキシム)シランなどが好ましい。
適用できる縮合型シリコーンゲル材としては、例えば、市販の旭化成ワッカー社の二液縮合反応型液状シリコーンゲルRTV−2VP7550を用いることができる。
(ii)熱伝導性フィラー(c)
本発明に係る粘着性ゲル層(A)には、熱伝導性のために、熱伝導性フィラー(c)が用いられる。
熱伝導性フィラー(c)は、熱伝導性充填剤とも言われ、金属酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、フェライトなど公知のものを一種又は二種以上を混合して使用できる。例えば、シリカ(石英)、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、マグネシア、亜鉛華、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、雲母が挙げられる。中でも、シリコーンゴムに対する分散性がよく、安価で環境負荷が少ない観点から、水酸化アルミニウムやアルミナが好ましい。また、これらの熱伝導性フィラーは、必要に応じてシランカップリング剤などで表面処理をしてもよい。
また、熱伝導性フィラー(c)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(堀場製作所製LA−920相当)による積算D50で規定される平均粒子径が10〜200μmであることが好ましく、シリコーンゲルへの分散性や作業性のよい未架橋粘度の観点から、10〜50μmが特に好ましい。
また、熱伝導性フィラー(c)は、一般的に粒度分布を有しており、粒度分布によってシリコーンゲルへの充填性や充填後の未硬化熱伝導ゲル組成物の粘度が変わることから、前記レーザー回折式粒度分布測定器における粒度分布範囲が少なくとも1〜200μmであることが好ましい。平均粒子径が10μm未満であると、シリコーンゲルへの分散性と充填性が悪く、十分な熱伝導性が得られない。また、未硬化粘度が高くなり、10μm未満(特に1μm未満)のフィラーが非粘着性ゴム層へ移行しにくく、また、仮に移行したとしても、非粘着性ゴム層への分散性が悪く、密着性の向上が見られない。一方、平均粒子径が200μmを超えると、未硬化粘度は低くなり、非粘着性ゴム層への移行は容易になるが、シリコーンゲルへの充填性が悪く十分な熱伝導性が得られない。さらに、薄物の熱伝導性シートの引張り強度が低くなり、実用的ではない。
また、熱伝導性フィラー(c)の形状は、特に限定しないが、充填性、流動性や非粘着性ゴム層への移行しやすさの観点から、球形(真球状のほか楕円、略球形の多面体を含む)が好ましい。
さらに、粘着性ゲル層(A)における熱伝導性フィラー(c)の含有量は、粘着性ゲル層(A)全量に対し、50〜95重量%である。また、十分な熱伝導特性の確保の観点と、未硬化の粘着性ゲル層(A)から熱伝導性フィラー(c)が未硬化の非粘着性ゴム層(B)に移行しやすい粘度を確保する観点から、70〜90重量%がより好ましい。熱伝導性フィラー(c)の含有量が50重量%未満であると、未硬化の粘着性ゲル層(A)中の熱伝導性フィラー(c)の分布密度が小さくなりすぎて、非粘着性ゴム層へ熱伝導性フィラー(c)が移行しにくく、また、十分な熱伝導性能が得られない。一方、含有量が95重量%を超えると、未硬化熱伝導ゲル組成物が高粘度となり、非粘着性ゴム層(B)へ熱伝導性フィラー(c)が移行しにくくなり、好ましくない。
(iii)その他の配合剤:
シリコーンゲル組成物には、さらに、熱伝導性フィラー(c)の非粘着性ゴム層(B)への移行を阻害しない範囲において、必要に応じて、前記の成分以外にも、硬化性シリコーン組成物に従来添加することが知られている添加剤を添加してよい。例えば、アセチレンアルコール化合物等の反応制御剤、炭酸マンガン、カーボンブラック等の難燃性付与剤、染料、顔料等の着色剤、耐熱安定剤、耐油安定剤等である。さらに、硬化して得られる硬化物の振動吸収性を向上させるために、内部に低沸点化合物を含む有機ポリマー充填剤等を必要に応じて配合してよい。
(2)非粘着性ゴム層(B)
本発明の熱伝導性シートに用いられる非粘着性ゴム層(B)は、シリコーンゴム原料(b)から形成されるシリコーンゴムを主成分とし、前記粘着性ゲル層(A)に充填された熱伝導性フィラー(c)の一部が非粘着性ゴム層(B)に移行して、存在してなることを特徴としている。
(i)シリコーンゴム原料(b):
本発明に係るシリコーンゴムは、硬化してエラストマー状またはレジン状の硬化物になる付加反応/または縮合反応硬化型シリコーンゴム組成物であるシリコーンゴム原料(b)から形成される。
上記シリコーンゴム組成物は、硬化により、シリコーンエラストマーまたはシリコーンレジンを生成する。付加反応硬化型のシリコーンゴム組成物は、硬化によりエラストマー状ないしはレジン状になる上で、(b−1)成分のオルガノポリシロキサンは、1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち、平均0.05モル%以上がアルケニル基であり、かつ、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するものであることが必要であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(b−2)は、ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3〜100個有するものであることが必要である。また、(b−3)付加反応触媒としては、前記の(a−3)付加反応触媒と同様のものが使用できる。
このような条件を備えたオルガノポリシロキサン(b−1)としては、下記の一般式で表されるものが挙げられる。
Figure 0004966915
〔ここで、mとnは0以上の整数である。〕
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(b−2)としては、下記の一般式で表されるものが挙げられる。
Figure 0004966915
〔ここで、x,yはx≧0,y≧0,x+y=2の数であり、mとnは、0≦m,3≦n≦100の整数である。〕
縮合反応硬化型のシリコーンゴムは、縮合型の反応性シリコーンゲルと同様に、大気中の水分と反応することで硬化し、加水分解性官能基が水分と接触することによって、加水分解縮合反応を起こして、ゲルよりも架橋密度が高い硬化物である。その加水分解官能基としては、脱オキシム型、脱酢酸型、脱アルコール型、脱アセトン型などいずれも用いることができるが、放出される物質の腐食性、臭気の少ない脱アルコール型あるいは脱オキシム型が好ましい。
これらのシリコーンゴムを主成分とする非粘着性ゴム層(B)の未硬化粘度は、粘着性ゲル層(A)から非粘着性ゴム層(B)への熱伝導性フィラー(c)の移行し易さと密接に関係している。さらに、未硬化非粘着性ゴムの塗布作業性や膜厚制御の容易性の観点から、25℃における粘度が0.1〜60Pa・sであることが好ましく、1〜10Pa・sがさらに好ましい。未硬化粘度が0.1Pa・s未満であると、流動性が良すぎて塗布面から流れ落ちて、非粘着性ゴム皮膜の膜厚を安定化できず、硬化時に皺等の不具合が発生して、好ましくない。また、未硬化粘度が60Pa・sを超えると、塗布作業性が悪くなるとともに安定した膜厚塗布が困難となるため、好ましくない。
非粘着性ゴム層(B)の未硬化粘度は、粘着性ゲル層(A)からの熱伝導性フィラー(c)の移行制御と、粘着性ゲル層(A)に積層したときの非粘着性ゴム層の厚み制御を同時に実現できることが安定生産において重要となるが、本発明によれば、非粘着性ゴム層(B)の厚みで硬化後の非粘着性ゴム層(B)の粘着性の制御が可能である。具体的には、非粘着性ゴム層(B)の厚みを薄くすると、粘着性が大きくなる。そして、非粘着性ゴム層(B)の厚みを薄くする場合には、低粘度のものが、膜厚を厚くする場合には高粘度のものが適していることから、0.1〜60Pa・sの範囲で適宜調整すればよい。
さらに、シリコーンゴムを主成分とする非粘着性ゴム層(B)の硬化した硬度は、JIS K6253のデュロメータA硬度が10〜100であることが好ましく、30〜70の範囲が特に好ましい。硬度が10未満であると、硬化時に粘着性ゲル層(A)の粘着性の影響から十分な非粘着効果が得られない。原因は不明であるが、低硬度の非粘着性ゴム組成物ほど架橋密度が小さい原料配合になっているため、同時に硬化される熱伝導性ゲル硬化物の反応機構と混在してしまうためと、推測される。よって、非粘着性ゴム層(B)の硬度によっても、非粘着性ゴム層(B)の粘着性を制御できる。一方、硬度が100を超えると、非粘着性ゴム層の弾性が大きくなるため、熱伝導性シートとしての柔軟性が損われるため、好ましくない。
硬化性シリコーンゴム組成物は、付加反応型、縮合反応型ともに組成、および該組成物の使用量を変化させることによって、非粘着性ゴム層(B)の硬度および厚さを調節することが可能である。付加反応型の場合においては、例えば、(b−1)成分中のアルケニル基量、(b−2)成分中のケイ素原子結合水素原子(Si−H基)の量を増加することにより、硬化物の硬度を上げることができ、また、組成物の使用量を増加することで、非粘着性ゴム層(B)の厚さを厚くすることができる。
また、硬化性シリコーンゴム組成物には、熱伝導性フィラー(c)の非粘着性ゴム層への移行を阻害しない範囲において、さらに、必要に応じて、前記の成分以外にも、硬化性シリコーン組成物に従来添加することが知られている添加剤を添加してよい。例えば、機械強度向上のためのシリカ系微粒子(ヒュームドシリカ等)、アセチレンアルコール化合物等の反応制御剤、炭酸マンガン、カーボンブラック等の難燃性付与剤、染料、顔料等の着色剤、耐熱安定剤、耐油安定剤等である。さらに、硬化して得られる硬化物の振動吸収性を向上させるために、内部に低沸点化合物を含む有機ポリマー充填剤等を必要に応じて配合してよい。さらに、未硬化の硬化性シリコーンゴム組成物の粘度調整(例えば、低粘度のシリコーンゴム原料にフィラー添加して粘度を高くする)や硬化して得られる硬化物の熱伝導特性向上のために、熱伝導性フィラー(c)を添加してもよい。熱伝導性フィラー(c)を添加するにおいては、粘着性ゲル層(A)に充填するものと同種でもよいし、異種のものでもよい。
粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の積層において、付加反応硬化型シリコーンに対して、縮合反応型シリコーンが硬化阻害性を有するため(縮合反応型シリコーン中のアミン系物質やスズ触媒等の影響による)、付加反応型と付加反応型、縮合反応型と縮合反応型の組合せの積層が好ましく、さらに反応副生物の発生がなく硬化収縮の小さい付加型/付加型の組合せがより好ましい。
未硬化の粘着性ゲル層(A)と未硬化の非粘着性ゴム層(B)の積層において、未硬化の粘着性ゲル層(A)と未硬化の非粘着性ゴム層(B)のそれぞれの粘度の組合せと、熱伝導性フィラー(c)の非粘着性ゴム層(B)への移行度合いは、密接に関係するが、粘着性ゲル組成物の粘度や熱伝導性フィラー(c)の充填量や比重、さらには非粘着性ゴム層の粘度等が複雑に作用した生成系であるため、材料の配合や特性の目的に合わせて、本発明の特定の熱伝導性シート構成条件の範囲内で、適宜調整すればよい。
2.熱伝導性シートの特徴、使用形態
(1)熱伝導性シートの特徴
本発明の熱伝導性シートでは、上記粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)は、共に未硬化の状態で積層して一体硬化され、且つ粘着性ゲル層(A)に充填された熱伝導性フィラー(c)の一部が非粘着性ゴム層(B)に移行して存在してなることを特徴としている(例えば、図1参照。)。すなわち、従来方法である硬化剤塗布による片面へのシリコーンゴム皮膜処理(例えば、図5参照。)などをしなくても、両面の粘着性が異なるように、片面のタックコントロールが容易に可能となり、また、非粘着性ゴム層(B)に熱伝導性フィラー(c)が移行することにより、移行および/または部分的に移行した熱伝導性フィラー(c)が粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の積層界面で、アンカー効果を発揮して、界面の接着性を高くでき、さらに、非粘着性ゴム層(B)の熱伝導性が高くなるので、非粘着性ゴム層を積層しても、熱伝導性シート本来の熱伝導性を維持して熱伝導性シート全体の熱伝導性を良好なものにできる。
そして特筆すべきは、未硬化の粘着性ゲル層(A)から未硬化の非粘着性ゴム層(B)に移行した熱伝導性フィラー(c)の表面には、未硬化の粘着性ゲル層(A)中の未硬化シリコーンゲル原料(a)を纏いながら(例えば、模式的に図3(f)示したように、被覆されているため)、硬化した際には、熱伝導性フィラー(c)の表面に、シリコーンゲル原料(a)の硬化ゲル皮膜が形成され、さらに、前記ゲル皮膜と非粘着性ゴム層中の非粘着性ゴムとが化学的に接着されているので、移行および/または部分的に移行した熱伝導性フィラー(c)のアンカー効果をより強固にするとともに、非粘着性ゴムへの分散性が悪い熱伝導性フィラー(c)である場合であっても、熱伝導性フィラー(c)表面にゲル皮膜が形成されることにより、非粘着性ゴム層にも、容易に分散され、熱伝導性フィラー(c)が移行した非粘着性ゴム層の耐久性が向上する。その結果、熱伝導性シートの粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)との異種材からなる積層構造であるにもかかわらず、積層界面の強固な接着性と非粘着性ゴム層(B)中の熱伝導性フィラー(c)を被覆しているゲル皮膜層の緩衝作用により、繰返し曲げ耐久性にも著しく優れる。
さらに、熱伝導性フィラー(c)を、予め非粘着性ゴム層(B)に添加していた従来の方法と対比すると、粘着性ゲル層(A)から非粘着性ゴム層(B)に、熱伝導性フィラー(c)が移行することにより、従来の方法では成し得なかった熱伝導性フィラー(c)が充填された薄く均一な非粘着性ゴム層(B)を得ることができる。
粘着性ゲル層(A)から非粘着性ゴム層(B)への熱伝導性フィラー(c)の移行度合いは、少なくとも一部が非粘着性ゴム層(B)へ移行していればよく、厚み方向に対しては、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の界面から非粘着性ゴム層(B)の他の表面までの間に、均一または不均一状態で移行して存在できる。
さらに、本発明の優れた作用をより効率よく得るためには、非粘着性ゴム層への平均移行領域が厚み方向の略垂直断面において、非粘着性ゴム層厚みの5〜100%であることが望ましく、放熱特性の観点からは、50〜100%がより好ましい。なお、前記の5〜100%および50〜100%の意味するところは、厚み方向断面にフィラーが存在している領域部分の厚みの割合であり、後述する不均一な移行した場合のように必ずしもフィラーが充満している状態に限られない。
また、不均一状態の一例として、前記界面から非粘着性ゴム層(B)の他の表面に向かって移行した熱伝導性フィラー(c)の分散密度が小さくなるまたは大きくなる、いわゆる濃度傾斜したものがある。濃度傾斜している場合は、不均一分散系においても、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の界面接着強度を確保でき、また、熱履歴が掛かる実使用時においても、熱応力を緩和して優れた耐久性を奏する。これは、熱伝導性フィラー(c)の濃度傾斜に伴い、熱伝導性フィラーに形成されたシリコーンゲルを主成分とする皮膜存在領域が濃度傾斜的に存在した構成となることと、熱伝導性フィラー(c)の濃度傾斜の共動によるものである。
また、本発明の熱伝導性シートの寸法は、特に限定されず、用途によって適宜選択することができる。例えば、この熱伝導性シートを電気・電子部品と放熱フィンや金属性放熱板等と接合するための熱伝導性シリコーンシートとして使用する場合には、この厚さとしては、0.2〜5mmであることが好ましく、特に、0.3〜3mmであることが好ましい。
また、非粘着性ゴム層(B)の厚みは、非粘着性ゴムの性状(未硬化粘度、硬化後の硬度、粘着性等)に応じて適宜設定されるが、粘着性ゲル層(A)より薄いことを必須要件として、0.001〜0.3mmであることが好ましく、熱伝導性シートの厚みが0.3〜3mmである場合、有効な非粘着性能と熱伝導性能の実現の観点から、非粘着性ゴム層(B)の厚みは0.01〜0.1mmであることがより好ましい。非粘着性ゴム層(B)の厚みが0.001mmより小さいと、十分な非粘着性の作用が得られず、好ましくない。一方、厚みが0.3mmより大きいと、粘着性ゲル層(A)から移行した熱伝導性フィラー(c)が、非粘着性ゴム層中を移動する(分散する)距離が大きい条件となるため、非粘着性ゴム層中における熱伝導性フィラー(c)の分散密度を向上させ難く、その結果、非粘着性ゴム層(B)の熱伝導性が小さくなり(熱抵抗が大きくなり)、熱伝導性シートとしての熱伝導性能を低下させてしまうので、好ましくない。さらに、硬化後の非粘着性ゴム層の硬度が大きい場合には、非粘着性ゴム層(B)の厚みが0.3mmより大きいと、熱伝導性シートの柔軟性が損われる。
さらに、非粘着性ゴム層(B)は、粘着性ゲル層(A)の片面全体に積層するだけでなく、パターン状に積層して、粘着性ゲル層(A)の片面または両面に異なる被積層面積で積層することもできる。なお、ここでいうパターン状とは、粘着性ゲル層(A)表面に非粘着性ゴム層(B)を部分的に規則的または不規則的な配置で積層することをいう。例えば、図6(a)に例示したように、粘着性ゲル層(A)の片面にストライプ状に塗布することにより、剥離フィルムの剥離方向性を付与することができる。また、別の例では、図6(b)のように、ストライプの幅を段階的に変えることで剥離初期は軽剥離で、その後徐々に重剥離になるようにすることもできる。さらに、別の例では、図6(d)のように、ドット上に積層してドット密度で熱伝導性シートの粘着性と剥離性をより機能化できる。また、図6(c)及び(e)のように(b)及び(d)の非粘着性ゴム層の塗布領域を逆転させることもできる。さらには、粘着性ゲル層面に非粘着性ゴム層の厚みを傾斜的に変えて積層したり、ドット状に形成した非粘着性ゴム層の面積層密度を(グラデーションの様に)傾斜化させてもよい(図6(f)参照)。ここで具体的に例示した以外においても、本発明思想から逸脱しない範囲においては、熱伝導性シートの剥離特性を機能化できれば、非粘着性ゴム層は、如何なる形状・配置でもよい。そして、本発明により、特殊な剥離フィルムを使用しなくても、剥離制御が可能であり、さらに消耗品として廃棄される剥離フィルムを安価なもので代用でき、製造コストを低減できる。
(2)熱伝導性シート積層体とその使用形態
本発明の熱伝導性シートでは、その両面に、剥離フィルム(C、C)を密着させて熱伝導性シート積層体を構成する。
本発明において、剥離フィルム(C)と剥離フィルム(C)と定義しているが、一般に用いられている剥離シートや表面保護フィルムや剥離紙など全般を指すものである。この剥離フィルム(C、C)は、熱伝導性シートの接着面を塵芥より保護するものであり、使用する際に剥がす必要がある。
本発明においては、剥離フィルム(C)と剥離フィルム(C)は、特に限定されない。例えば、剥離フィルム(C、C)として、ポリエーテルスルホン樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)等の有機樹脂からなるフィルム;これらの有機樹脂が他の有機樹脂と積層してなるフィルム、あるいはこれらの有機樹脂が他の有機樹脂フィルムの表面を被覆してなるフィルムが挙げられる。
また、未硬化の非粘着性ゴム層の形成に支障が無い範囲で、湿式または乾式の剥離コート仕様のものやコロナ処理等の物理処理仕様の剥離フィルムも使用できる。さらに、剥離フィルム(C)と剥離フィルム(C)は、同類の組合せでも異種の組合せでもよい。
3.熱伝導性シート積層体及びその製造方法
本発明の熱伝導性シート積層体は、上記の熱伝導性シートの両面に、剥離フィルム(C、C)を積層してなるものである(例えば、図1参照。)。
また、本発明の熱伝導性シート積層体の製造方法としては、次の工程(I)〜(V)からなり、
(I):剥離フィルム(C)の片面上に、シリコーンゴム原料(b)である未硬化のシリコーンゴム組成物を積層する、未硬化の非粘着性ゴム層(B)の積層工程
(II):未硬化の非粘着性ゴム層(B)に、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)との混合物である未硬化のシリコーンゲル組成物を積層する、未硬化の粘着性ゲル層(A)の積層工程
(III):未硬化の粘着性ゲル層(A)に、剥離フィルム(C)を積層する工程
(IV):工程(III)で得られた未硬化の積層体の粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)とを、加熱硬化させ一体化する工程
(V):工程(II)〜(IV)の少なくとも一工程において、自重沈降、加圧及び/又は振動にて、熱伝導性フィラー(c)の一部が非粘着性ゴム層(B)に移行する工程
上記(I)工程は、剥離フィルム(C)の片面上に、例えば、ロールコーター等の公知の方法にて、未硬化の液状の付加反応型シリコーンゴム原料であるシリコーンゴム組成物を積層する、未硬化の非粘着性ゴム層(B)の積層工程である。
上記(I)工程は、未硬化の液状シリコーンゴム原料を剥離フィルム(C)上に、略均一厚みとなるように、未硬化の非粘着性ゴム層(B)を形成させる。厚み設定方法は、公知の塗布方法に準じて適宜適用できる。例えば、量産性に優れる方法としては、ブレード式コーター等が適用できる。
上記(II)工程は、前(I)工程で得られた未硬化の非粘着性ゴム層(B)に、例えば、シリコーンゲル原料(a)の未硬化の液状の付加反応型シリコーンゲル原料と熱伝導性フィラー(c)とを、予め公知の混合方法(例えばケミカルミキサー)で作製したシリコーンゲル組成物を積層する、未硬化の粘着性ゲル層(A)の積層工程である。
上記(III)工程は、前(II)工程で得られた未硬化の粘着性ゲル層(A)上に、例えば、ロール式フィルム供給機にて、剥離フィルム(C)を積層する工程である。
上記(IV)工程は、前工程(III)で得られた未硬化の積層体の粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)とを、加熱硬化させ一体化する工程である。
加熱硬化させ一体化する工程では、特に限定しないが、プレス方式やロール方式などを適用できる。また、加熱方法は、公知の加熱方法を適用できる。さらに、冷却工程は、自然冷却でもよいし、冷風を当てるなどの公知の冷却装置を適用することができる。また、硬化温度は、80〜100℃が好ましい。
さらに、上記(V)工程は、前工程(II)〜(IV)の少なくとも一工程において、自重沈降及び/又は成形時の押圧にて、或いは振動にて、熱伝導性フィラー(c)の一部を未硬化の非粘着性ゴム層(B)に移行させる工程である。
熱伝導性フィラー(c)の移行は、未硬化の粘着性ゲル組成物の配合、粘度、熱伝導性フィラー(c)の比重、さらには未硬化の非粘着性ゴム層の粘度といった諸要因により移行メカニズムが異なる。大別するとフィラーの自重沈降による移行と加圧による移行を適用できる。実際には、加圧方式においても、少なからず自重沈降も寄与していると推測される。したがって、複合方式でも可能であることはいうまでもない。
自重沈降方式の場合は、未硬化の非粘着性ゴム層(B)が未硬化の粘着性ゲル層(A)の下層となる場合に限られるが、熱伝導性フィラー(c)が高比重の場合に特に有効であり、軽比重のものを混在させることにより、フィラー偏在型の熱伝導性シートを作製することも可能である。自重沈降方式は、その原理上、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)が未硬化の状態において、粘着性ゲル層(A)から非粘着性ゴム層(B)へ沈降移行し、非粘着性ゴム層(B)の硬化を以って移行は完了するため、(II)〜(IV)工程において、熱伝導性フィラー(c)の移行が起こる。
加圧方式は、シート状成形においてはロール成形、プレス成形などが適用できるが、単に加圧して一体化すればよいということではなく、非粘着性ゴム層(B)の厚みや硬化後の非粘着性ゴム層(B)の粘着性、さらには熱伝導性フィラー(c)の移行度合いを制御することが重要である。これらの制御は、主に未硬化非粘着性ゴム組成物と未硬化粘着性ゲル組成物の粘度の組合せに応じた積層条件により、成し得る。
具体的には、非粘着性ゴム層の粘度と粘着性ゲル層の粘度の比率に応じて、加圧条件を設定する。一つの例としては、非粘着性ゴム層が高粘度で粘着性ゲル層の粘度が低い場合は、各層が同程度の粘度の場合に比べて高く設定し、逆の場合は、加圧力を低くする。ただし、各層の厚みや非粘着性ゴム層への熱伝導性フィラーを移行させる度合いにより、上記の加圧例から外れる場合もあり得るので、必ずしもこの加圧例に限定されるわけではない。
加圧方式の場合は、主に(III)の工程で、熱伝導性フィラーの移行が起こる。但し(II)の粘着性ゲル組成物の積層方法としてスキージ法の場合には(II)の工程でも熱伝導性フィラーの移行が起こる場合もある。さらに加圧前の(II)と加圧後の(IV)の工程で、自重沈降により熱伝導性フィラー(c)の移行が進行する場合もある。
さらに、単独または前記の自然沈降方式や加圧方式と組み合わせて、振動を加えてフィラーの移行を促進させてもよい。振動は、公知の振動装置を用いて(II)〜(IV)の工程で加えることができ(II)〜(III)が特に好ましい。
上記(I)〜(V)の各工程は、工程毎にバッチ式で行ってもよいが、図2に例示したように、ロール式の連続シート成形方式が生産性の観点から好ましい。ロール成形の場合は、多段式で徐々にロール間のクリアランスを小さくしながら、目的の熱伝導性シート厚みに成形することで、非粘着性ゴム層厚みを乱さずに粘着性ゲル層から熱伝導性フィラーを移行させることができ、均一な非粘着性ゴム層(B)を有する熱伝導性シートを得ることができる。
また、熱伝導性フィラー(c)として、球状系フィラーと板状系(偏平系)フィラーの混合系を適用する場合は、板状系フィラーを機械配向させる観点から、ロール式の加圧方式が特に最適である。球状系フィラーと板状系(偏平系)フィラーの混合系のうち、球状系フィラーよりも板状系フィラーのほうが容量少ない条件においては、板状系フィラーの配向によって、球状系フィラーが板状系フィラーに押されて、球状系フィラー同士で押すよりも移動効率がよくなり、その結果として、球状系フィラーの移行が容易になる作用がある。
4.熱伝導性シートの用途
本発明の熱伝導性シートは、家電製品やコンピュータ機器等の放熱用シートとして好適で、ICチップ等の半導体部品の表面とヒートシンクやヒートパイプ等の放熱部品の接合空隙を埋めるように挟設して用いられて、動作状態の半導体部品の発熱を放熱部材品に効率よく熱伝達するので、発熱による半導体部品の誤動作や故障を改善できる。また、本発明の熱伝導シートは、表裏で粘着性を異ならせているので、電子機器の組み立て工程においての作業性に優れ、さらに品質検査で不合格となった場合のリワーク性にも優れる。加えて、電子機器の動作、停止の状態ごとに加熱、冷却のヒートサイクルが加わる環境で使用される場合では、各部品の熱膨張収縮による熱応力の影響があり、特に異種素材を積層した構造の複合シートは、積層界面に熱応力が発生しやすく、その結果、前記複合シート構造からなる熱伝導性シートにおいては、熱伝導性シートの強度や放熱部品への密着性が経時的に低下することがあるが、本発明の熱伝導性シートは、積層構造でありながらも、非粘着性ゴム層中に熱伝導性フィラーが移行して存在するため、積層界面での熱応力の発生が低減されるので、ヒートサイクル耐久性が要求される用途に、特に最適である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
[実施例1]
(i)未硬化の粘着性ゲル組成物の作製
シリコーンゲル原料(a)として、二液付加反応型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製CF5106をA液/B液=50:50(重量比)にて混合)12重量%と、熱伝導性フィラー(c)としてアルミナ(マイクロン社製AH50−5)88重量%を、ケミカルミキサーで5分間混合後、10分間真空脱泡して25℃粘度が60Pa・sの未硬化の粘着性ゲル組成物を準備した。
(ii)未硬化の非粘着性ゴム組成物の作製
シリコーンゴム原料(b)として、硬化後の硬度が22(デュロメータA硬度)となる二液付加型シリコーンゴム(信越化学工業社製KE103)をA液/B液=100:5(重量比)で混合したのち、10分間真空脱泡して25℃粘度が1Pa・sの未硬化の非粘着性ゴム組成物を得た。
(iii)未硬化の熱伝導性シート積層体の作製
OPP/PET積層の剥離フィルムC(タカラインコーポレーション社製、75μm)のOPP積層側に、ロールコーター(自社製)で未硬化の非粘着性ゴム組成物を、硬化後の厚み0.1mmとなるように、300mm×300mmの範囲に塗布し、その上に未硬化の粘着性ゲル組成物を約250mm×250mm×0.5mmとなる容量分を流し乗せ、次いで、流し乗せた粘着性ゲル組成物の上に気泡が入らないように、OPP/PET積層の剥離フィルムC(タカラインコーポレーション社製、75μm)を積層し、二本ロール成形機にて2mmのクリアランスでロール間を通過させて成形し、1回成形ごとに0.5mmずつクリアランスを狭めて、最終的に厚み0.6mmの未硬化の熱伝導性シート積層体を得た。なお、剥離フィルムCへの未硬化の非粘着性ゴム組成物の塗布厚みは、微圧接触式膜厚計(キーエンス社製AT2−52膜厚測定ユニット)を用いて確認した。
(iv)熱伝導性シート積層体の作製
次いで、未硬化の熱伝導性シート積層体を100℃×1hrの条件で、温風式のバッチ型電気式硬化炉で硬化させて熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例2]
(i)未硬化の粘着性ゲル組成物の作製
シリコーンゲル原料(a)として、二液付加反応型シリコーンゲル(東レ・ダウコーニング社製CF5106をA液/B液=50:50(重量比)にて混合)20重量%と、熱伝導性フィラー(c)として水酸化アルミニウム(昭和電工社製HS341)80重量%を、ケミカルミキサーで5分間混合後、10分間真空脱泡して25℃粘度が50Pa・sの未硬化の粘着性ゲル組成物を準備した。
(ii)未硬化の非粘着性ゴム組成物の作製
シリコーンゴム原料(b)として、硬化後の硬度が62(デュロメータA硬度)となる二液付加型シリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製RT601)をA液/B液=90:10(重量比)で混合したのち、10分間真空脱泡して25℃粘度が3.5Pa・sの未硬化の非粘着性ゴム組成物を得た。
その後は、実施例1と同様にして(iii)〜(iv)の工程により、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例3]
実施例2と同様の配合で、未硬化の粘着性ゲル組成物を作成後、25℃で1時間放置して一部架橋させて粘度が100Pa・sの粘着性ゲル組成物としたこと、ならびに、シリコーンゴム原料(b)を、(東レ・ダウコーニング社製CF5058)をA液/B液=50:50(重量比)で混合したのち、10分間真空脱泡して25℃粘度が5Pa・sの未硬化の非粘着性ゴム組成物とした以外は、実施例2と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例4]
実施例3と同様の配合で、未硬化の粘着性ゲル組成物を作成後、25℃で4時間放置して一部架橋させて粘度300Pa・sの粘着性ゲル組成物とし、未硬化の熱伝導性シート積層体の作製工程を、ロール成形に替えてプレス成形(油圧制御型プレス機)としたこと以外は、実施例3と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例5]
シリコーンゴム原料(b)として、硬化後の硬度が70(デュロメータA硬度)となる二液付加型シリコーンゴム(信越化学工業社製KE1204)をA液/B液=50:50で混合したのち、10分間真空脱泡してから室温放置にて架橋反応を進めて、25℃粘度が15Pa・sの未硬化の非粘着性ゴム組成物とし、未硬化の熱伝導性シート積層体の作製工程を、ロール成形に替えてプレス成形(油圧制御型プレス機)としたこと以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例6]
実施例5と同様の配合で、未硬化の粘着性ゲル組成物を作製後、25℃で3時間放置して一部架橋させて粘度が200Pa・sの粘着性ゲル組成物とし、さらに、シリコーンゴム原料(b)として、硬化後の硬度が45(デュロメータA硬度)となる二液付加型シリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSE3450)をA液/B液=10:1(重量比)で混合したのち、10分間真空脱泡してから室温放置にて架橋反応を進めて、25℃粘度が60Pa・sの未硬化の非粘着性ゴム組成物とした以外は、実施例5と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例7]
粘着性ゲル層の厚さを0.3mmとしたことと、シリコーンゴム原料(b)として、硬化後の硬度が22(デュロメータA硬度)となる二液付加型シリコーンゴム(信越化学工業社製KE103)をA液/B液=100:5で混合したのち、10分間真空脱泡して25℃粘度が1Pa・sの未硬化の非粘着性ゴム組成物を用いて、未硬化の非粘着性ゴム組成物の塗布厚さを、硬化後の厚み0.001mmとなるように、塗布した以外は、実施例2と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例8]
未硬化の非粘着性ゴム組成物の塗布厚さを、硬化後の厚み0.01mmとなるように、塗布した以外は、実施例7と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例9]
粘着性ゲル層の厚さを3mmとしたことと、未硬化の非粘着性ゴム組成物の塗布厚さを、硬化後の厚み0.3mmとなるように、塗布した以外は、実施例3と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例10]
硬化後の硬度が10(デュロメータA硬度)となるように、シリコーンゴム原料(b)のA液/B液の配合を調整した以外は、実施例9と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例11]
硬化後の硬度が100(デュロメータA硬度)となるように、シリコーンゴム原料(b)のA液/B液の配合を調整した以外は、実施例2と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[実施例12]
(i)未硬化の粘着性ゲル組成物の作製
シリコーンゲル原料(a)として、二液縮合反応型シリコーンゲル(旭化成ワッカー社製VP7550、主剤:硬化剤=100:2(重量比)にて混合)25重量%と、熱伝導性フィラー(c)として水酸化アルミニウム(昭和電工社製 HS341)75重量%を、窒素雰囲気中でケミカルミキサーで5分間混合後、10分間真空脱泡して25℃粘度が100Pa・s(測定は窒素雰囲気中)の未硬化の粘着性ゲル組成物を得た。
(ii)未硬化の非粘着性ゴム組成物の作製
シリコーンゴム原料(b)として、硬化後の硬度が40(デュロメータA硬度)となる二液縮合型シリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製TSE3504)をA液/B液=100:0.5(重量比)で調合して窒素雰囲気中で混合したのち、10分間真空脱泡して25℃粘度が10Pa・s(測定は窒素雰囲気中)の未硬化の非粘着性ゴム組成物を得た。
その後は、実施例1と同様にして、未硬化の熱伝導性シート積層体の作製後、40℃で12hr硬化させて熱伝導性シート積層体を得た。
[比較例1]
非粘着性ゴム層を設けなかったこと以外は、実施例2と同様にして、剥離フィルムCと粘着性ゲルシートと剥離フィルムCの順に積層された熱伝導性シート積層体を得た。
[比較例2]
非粘着性ゴム層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、剥離フィルムCと粘着性ゲルシートと剥離フィルムCの順に積層された熱伝導性シート積層体を得た。
[比較例3]:(粘着性ゲル層を硬化させた後に未硬化の非粘着性ゴム層を塗布して非粘着性ゴム層ゴム層を硬化形成した場合)
比較例1で得た熱伝導性シート積層体の剥離フィルムCまたは剥離フィルムCのいずれか一方を、剥離除去した面と、未硬化の非粘着性ゴム組成物が硬化後の厚み0.1mmとなるように塗布された剥離フィルムCの未硬化の非粘着性ゴム組成物が塗布された面を接触させてから、粘着性ゲル層とともに硬化させて、非粘着性ゴム層を形成した熱伝導性シート積層体を得た。
なお、未硬化の非粘着性ゴム組成物は、シリコーンゴム原料(b)として、二液付加型の東レ・ダウコーニング社製CF5058を用いてA液/B液=50:50(重量比)で混合したのち、10分間真空脱泡して25℃粘度が5Pa・sとしたものとした。また、剥離フィルムCは、75μm厚のタカラインコーポレーション社製のOPP/PET積層の剥離フィルムを用い、未硬化の非粘着性ゴム組成物はOPP側に塗布した。
[比較例4]
実施例3の未硬化の粘着性ゲル組成物と未硬化の非粘着性ゴム組成物を用い、剥離フィルムCに未硬化の粘着性ゲル組成物を0.5mm厚で塗布して未硬化の粘着性ゲル層を形成したのち、未硬化の非粘着性ゴム組成物をスプレーコーティングして、前記の未硬化ゲル層表面に、硬化後の厚み0.1mmとなるように、未硬化の非粘着性ゴム層を積層し、さらに、前記未硬化の非粘着性ゴム層表面に、剥離フィルムC1を積層して、80℃硬化させて、従来の粘着性ゲル層にゴム層が積層されているが、熱伝導性フィラー(c)の移行がない熱伝導性シート積層体を得た。
[比較例5]
実施例12の未硬化の粘着性ゲル組成物と未硬化の非粘着性ゴム組成物を用いた以外は、比較例4と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
[比較例6]
硬化後の硬度が5(デュロメータA硬度)となるように、シリコーンゴム原料(b)のA液/B液の配合を調整した以外は、実施例1と同様にして、熱伝導性シート積層体を得た。
(評価):
実施例1〜12および比較例1〜6で作製した熱伝導性シート積層体について、上下の剥離シートを剥離除去して、熱伝導性シートとし、次の評価方法で性状、性能を測定した。その評価結果を表1〜6に示す。
(i)粘着性:
粘着性能は、傾斜式ボールタック試験におけるボールナンバー:JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」の傾斜式ボールタック試験に準拠して、30度の傾斜板に試験片を貼り付け、この試験片表面にボールを転がし、300秒後に測定部内で停止するボールのうち最大のボールナンバーを見出してボールタック性の値とした。ボールナンバーが小さいほど粘着性が小さい。
(ii)熱伝導率:
熱伝導率測定用に60mm×120mm×10mm厚のブロック状試料を作製し、前記ブロック状試料が25℃における熱伝導率をJIS R2616準拠の熱線法で測定した。
測定装置は、京都電子工業株式会社製の熱伝導率計(商品名:QTM−500 PD−11型プローブ)を用い、非粘着性ゴム層側に測定用プローブを接触させて熱伝導率を測定した。非粘着性ゴム層がない場合は、硬化時に下面とした方を測定面とした。
(iii)積層界面の接着性評価:
作製した熱伝導性シートの厚み方向に、30mm四方の格子状を形成するように配置されたトムソン刃の抜き型で垂直剪断力を印加して型抜きし、その剪断断面を目視または顕微鏡で観察した。抜き加工は、粘着性ゲル層(A)側から抜いた場合と非粘着性ゴム層(B)側から抜いた場合の両方を評価した。
(iv)繰返し曲げ耐久性試験:
社内製の平板プレス型の繰返し圧縮試験機を用いて、試料とする熱伝導性シートを湾曲させた状態で(完全に折りこまずに自然に湾曲した状態)で、ベースステージ(固定側)と平板型加圧子にセットし、ベースステージ(固定側)面を0mmとして、平板型加圧子を5mm〜50mmの位置を上下1サイクルとして、毎分10サイクルにて、1000サイクル行った。そして繰り返し屈曲させた部分を手で破いて破断面を形成し、厚み方向の破断面を、目視または顕微鏡で観察し、層剥離の有無を調べた。
試料は30mm幅×100mmとし、両端の20mmをそれぞれベースステージ(固定側)と平板型加圧子への取り付けシロとし、中央の60mm部分を評価部分とした。試験は、非粘着性ゴム層側を内折り(谷折様)とした場合と外折(山折様)にした場合ごとに夫々個別に実施した。
(v)熱伝導性シートの厚み測定:
熱伝導性シート積層体の厚さをデジタルマイクロメーター(ミツトヨ製、最小レンジ1μm仕様)で測定後、剥離フィルムC、Cの厚さを減じた数字を熱伝導性シート厚さとした。
また、硬化後の非粘着性ゴム層厚さは、熱伝導性シートを手で破いて破断面を形成し、厚み方向の破断面を測長機能付きの顕微鏡で観察・測定した。
(vi)粘度測定:
JIS Z8803準拠の共軸二重円筒形回転粘度計での25℃における粘度について、粘度の大きさに応じて二種類の機器で測定した。
粘度の範囲が10Pa・s以下の場合は、(株)マルコム社製PC−1TL(ロータータイプB)を用いて、回転数40rpmの条件で測定した。
粘度の範囲が10Pa・s超の場合は、(株)マルコム社製PCU−205(ロータータイプA)を用いて、回転数10rpmの条件で測定した。
なお、両測定の場合も試料量は100ml、試料温度は25℃±1℃とした。
(vii)その他の性能、性状:
硬度:JIS K6253規格のAタイプゴム硬度計(デュロメーター)による硬度測定法またはJIS K2207「石油アスファルト」に準拠した針入度測定法で求めた。硬度測定の使い分けは、針入度20未満の場合は、Aタイプゴム硬度計を適用し、デュロメータA硬度が0の場合は、針入度計(1/10mm)を適用した。
なお、非粘着性ゴム層(B)の硬度は、JIS K6253の試料形状での値とした。
また、粘着性ゲル層(A)の硬度は、各実施例ならびに比較例の粘着性ゲル組成物の一部を用いて60mm×60mm×5mm厚みで成形・加熱硬化(成形方法、硬化条件は各実施例および比較例を同様)した粘着性ゲルシートを作製し、前記粘着性ゲルシートを6枚重ねたものを測定試料とした。
Figure 0004966915
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表1〜6の評価結果から明らかなように、実施例1〜12の熱伝導性シートでは、非粘着性ゴム層を積層した面は、非粘着性ゴム層を積層しない面に比べて粘着性が小さくなり、表裏で粘着性の異なる熱伝導シートが得られた。非粘着性ゴム層(B)の粘着性は、非粘着性ゴム層(B)の膜厚と硬度に依存し、硬度が小さいほど、粘着性は大きくなる。また膜厚が薄いほど粘着性は大きくなる。そして、図4に示すように、本発明思想の核である非粘着性ゴム層(B)に熱伝導性フィラー(c)の一部が移行して存在していることが実証されている。フィラーの移行の程度は、実施例1〜12では、50〜100%の移行度合いだった。この結果として、熱伝導性フィラー(c)の移行がない場合(比較例4ならびに比較例5)と、単純に非粘着性ゴム層を積層しただけの場合に比べて、非粘着性ゴム層(B)の熱抵抗が低減するので、熱伝導性シート全体としての熱伝導率が高くでき、さらに非粘着性ゴム層無しの熱伝導ゲルシートの熱伝導性能を維持できることがわかる。
また、非粘着性ゴム層(B)へ熱伝導性フィラー(c)が移行しない場合(単純に非粘着性ゴム層を積層しただけの場合)は、積層界面すなわち接合面から比較的容易に剥離したのに対して、本発明の実施例では、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の積層界面すなわち接合面は、強固に接着しており、全ての実施例において、強制分離させた場合には、何れかの層で材料破壊した。
さらに、繰返し耐久性試験においても、本発明の熱伝導性シートは、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の積層界面すなわち接合面の剥離は見られず、繰り返し耐久性にも優れていた。
また、実施例12のとおり付加型ゲル層と付加型ゴム層の積層のみならず、縮合型ゲル層と縮合型ゴム層の積層でも、同様の作用効果が得られた。
一方、比較例1〜6のとおり、本発明の規定範囲の構成要件を充足しないと、本発明の作用効果が得られなかった。
また、各実施例の未硬化の非粘着性ゴム組成物を、室温放置して25℃粘度が60Pa・sを超えたものは、剥離フィルムに均一に塗布することが極めて困難であった。
さらに、実施例1〜12に用いた未硬化の粘着性ゲル組成物と未硬化の非粘着性ゴム組成物の組合せにおいて、付加反応硬化型と縮合反応硬化型の組合せでは、付加反応硬化型組成物からなる層は、縮合反応硬化型の成分による硬化阻害により硬化不良を起こしており不適当であった。
本発明の熱伝導性シートは、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)からなる粘着性ゲル層(A)に、シリコーンゴム原料(b)からなる非粘着性ゴム層(B)が積層されたものであるから、従来の片面へのシリコーンゴム皮膜処理をしなくても、両面の粘着性が異なり、片面のタックコントロールが可能となり、また、非粘着性ゴム層(B)に熱伝導性フィラー(c)が移行することにより、粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)の積層界面すなわち接合面の密着性を高くでき、さらに、熱伝導性シート全体の熱伝導性を良好なものにできるので、広範囲の電気・電子機器製品の熱対策用のシート部品として、好適である。
本発明の熱伝導性シート及び熱伝導性シート積層体を説明する模式図である。 本発明の熱伝導性シート及び熱伝導性シート積層体の作製工程を説明する模式図である。 本発明の熱伝導性シート及び熱伝導性シート積層体の作製工程を説明するフローシートである。 本発明の熱伝導性シートにおいて、非粘着性ゴム層(B)へ熱伝導性フィラー(c)の移行を説明する厚み方向の断面写真である。 従来のハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理した熱伝導性ゲルシートの厚み方向の断面写真である。 本発明に係る非粘着性ゴム層(B)のパターン塗布例(平面図)を説明する図である。

Claims (13)

  1. シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)からなる粘着性ゲル層(A)に、シリコーンゴム原料(b)からなる非粘着性ゴム層(B)が接合されてなる熱伝導性シートであって、
    粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)は、共に未硬化の状態で積層して一体硬化処理により接合され、且つ、粘着性ゲル層(A)中に予め充填された熱伝導性フィラー(c)の一部は、接合時に非粘着性ゴム層(B)に移行して存在することを特徴とする熱伝導性シート。
  2. 非粘着性ゴム層(B)に移行した熱伝導性フィラー(c)は、該表面の少なくとも一部に、シリコーンゲル原料(a)からなるゲル皮膜を有することを特徴とする請求項1に記載の熱伝導性シート。
  3. 粘着性ゲル層(A)は、未硬化状態ではJIS Z8803準拠の共軸二重円筒形回転粘度計で測定した25℃における粘度が10〜500Pa・sであり、且つ硬化後はJIS K2207に準拠した25℃における針入度が20〜200であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
  4. 粘着性ゲル層(A)は、硬化してゲル状の硬化物になる付加反応硬化型シリコーンゲル組成物から形成され、該シリコーンゲル組成物は、
    (a−1)1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち平均0.025モル%以上がアルケニル基であり、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にある、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を平均0.1〜2個有するオルガノポリシロキサン、
    (a−2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に2〜50個有し、該水素原子の数が前記オルガノポリシロキサン(a−1)中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり0.3〜2.0個になるように配合され、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にあるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
    (a−3)付加反応触媒、並びに
    熱伝導性フィラー(c)、
    を含有することを特徴とする請求項3に記載の熱伝導性シート。
  5. 非粘着性ゴム層(B)は、未硬化状態ではJIS Z8803準拠の共軸二重円筒形回転粘度計で測定した25℃における粘度が0.1〜60Pa・sであり、且つ硬化後はJIS K6253に準拠したデュロメータA硬度が10〜100であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
  6. 非粘着性ゴム層(B)は、硬化してエラストマー状またはレジン状の硬化物になる付加反応硬化型シリコーンゴム組成物から形成され、該シリコーンゴム組成物は、
    (b−1)1分子中に含有されるケイ素原子に結合した全有機基のうち平均0.05モル%以上がアルケニル基であり、かつ25℃における粘度が0.01〜100Pa・sの範囲にある、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、
    (b−2)ケイ素原子に結合した水素原子を1分子中に3〜100個有し、該水素原子の数が前記オルガノポリシロキサン(b−1)中のケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たり0.3〜2.0個になるように配合されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、および
    (b−3)付加反応触媒、
    を含有することを特徴とする請求項5に記載の熱伝導性シート。
  7. 熱伝導性フィラー(c)は、レーザー回折/散乱法による平均粒子径が10〜200μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  8. 非粘着性ゴム層(B)は、厚みが0.001〜0.3mmであり、且つ粘着性ゲル層(A)より薄いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  9. 粘着性ゲル層(A)は、熱伝導性フィラー(c)50〜95重量%を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  10. 粘着性ゲル層(A)の片面に、非粘着性ゴム層(B)が面方向にパターン状に形成されてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの両面に、剥離フィルム(C、C)を積層してなることを特徴とする熱伝導性シート積層体。
  12. 請求項11に記載の熱伝導性シート積層体の製造方法であって、下記の(I)〜(V)の工程を含むことを特徴とする熱伝導性シート積層体の製造方法。
    (I):剥離フィルム(C)の片面上に、シリコーンゴム原料(b)である未硬化のシリコーンゴム組成物を積層する、未硬化の非粘着性ゴム層(B)の積層工程
    (II):未硬化の非粘着性ゴム層(B)に、シリコーンゲル原料(a)と熱伝導性フィラー(c)との混合物である未硬化のシリコーンゲル組成物を積層する、未硬化の粘着性ゲル層(A)の積層工程
    (III):未硬化の粘着性ゲル層(A)に、剥離フィルム(C)を積層する工程
    (IV):工程(III)で得られた未硬化の積層体の粘着性ゲル層(A)と非粘着性ゴム層(B)とを、加熱硬化させ一体化する工程
    (V):工程(II)〜(IV)の少なくとも一工程において、自重沈降、加圧及び/又は振動にて、熱伝導性フィラー(c)の一部が非粘着性ゴム層(B)に移行する工程
  13. (II)乃至至(III)の工程は、ロール加圧法であることを特徴とする請求項12に記載の熱伝導性シート積層体の製造方法。
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