しかしながら、上記従来技術のように複数の発光層を仕切る中間層を設けると、駆動電圧の増大や、好ましくない電圧上昇の発生を招く恐れがあり、また膜質の悪さによるショートサーキット等の欠陥発生の問題があり、更に蒸着プロセスとスパッタプロセスとを組み合わせる必要があるという製法上の問題も生じてしまう。
例えば、上記(1)に示す系の中間層では、V2O5層の膜質によるショートの問題が発生するおそれがある。
また上記(2)に示す系では、二つの層間で生じる副反応による電圧上昇の問題がある。すなわち、ルイス酸分子は電子輸送材料とも反応し、また、アルカリ金属はルイス塩基としてホール輸送材料とも反応し、これらの反応によって駆動電圧の増大が起こることが報告されている(参考文献:高分子学会有機EL研究会 平成17年12月9日講演会 マルチフォトン有機EL照明)。
また上記(3)に示す系では、その場反応生成物を得るために用いるLi錯体の有機配位子成分が、素子特性に悪影響を与えることがあることが問題となる。
また上記(4)の系では、中間層としてのITOからのホール輸送材料へのホール注入が必ずしも良好でなく、またITOをスパッタで形成するために、蒸着が可能な成膜雰囲気とスパッタが可能な成膜雰囲気への基板の移動が必要であり、生産プロセスの観点で問題がある。また、ITOなどの透明導電膜は導電率が高いために、厚み方向のみならず横方向にも電流が流れ、本来発光すべきでない領域も発光するという問題もある。
また上記(5)の系では、金属酸化物等の金属化合物を含む金属と有機物を混合して中間層を形成するために、中間層の熱安定性が低下し、特に大電流を通電した際の発熱に対する中間層の安定性が劣るという問題があった。
また上記(6)の系では、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含有する金属酸化物の中間層としての機能が必ずしも充分ではなく、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含有する金属酸化物以外の物質からなる層を積層して用いることが実質的に必要であり、中間層の構造が複雑になるという問題があった。
更に、上記(1)及び(4)の系では、特に大面積デバイスとなった際に、中間層を構成する膜内の応力によって、中間層周辺での欠陥が起こりうる可能性がある。
尚、特許文献3には、1種のマトリクスに添加剤を膜内のどの位置でもその濃度が0にはならないように添加することによって中間層を形成する方法が記載されているが、この場合にも前記参考文献に記載されているような問題のすべてを解決することはできないものである。
そこで、上記のように中間層を介して積層された複数の発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子を形成するにあたり、種々の問題を克服した中間層を実現することが望まれるようになってきている。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高輝度かつ高効率での発光が可能であり、且つ、駆動電圧の増大、好ましくない電圧上昇の発生、ショートサーキット等の欠陥発生を抑制すると共に生産性が良好な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とするものである。
請求項1に係る有機エレクトロルミネッセンス素子Aは、陽極1と陰極2との間に複数の発光層4が、その全体に金属又は金属酸化物を含む中間層3を介して積層された有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記中間層3が、導電性金属酸化物と無機絶縁物との混合物を含有する混合物層を含む複数の層で構成され、この中間層3における最も陽極1側の層が、最も陰極2側の層よりも高い電子注入性を有し、且つこの中間層3における最も陰極2側の層が、最も陽極1側の層よりも高いホール注入性を有することを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記混合物層中の導電性金属酸化物が、亜鉛、インジウム、スズ、カリウム、チタンの各金属酸化物から選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2において、中間層3における最も陰極側の層が、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、タンタル、ニッケル、亜鉛、スズ、ニオブの各金属酸化物から選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3において、中間層3における最も陰極側の層が、混合物層にて形成されていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項において、中間層3における最も陽極側の層が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属から選択される少なくとも一種の金属を含有することを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項5において、上記中間層3における最も陽極側の層が、混合物層にて形成されていることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか一項において、上記混合物層が、有機絶縁物を含有することを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか一項において、上記中間層3が、混合物層における導電性金属酸化物と絶縁物との混合比率が異なる複数の領域を有することを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項1乃至6のいずれか一項において、上記混合物層中の無機絶縁物が、金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素化合物、ケイ素化合物から選択される少なくとも一種を含有することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、導電性金属酸化物が絶縁物と混合されることによって、中間層3の膜質が向上し、中間層3の膜質の悪さに起因するショートサーキット等の欠陥の発生が抑制できると共に、この中間層3の導電率を適当な範囲にコントロールすることによって、所望の領域のみを発光させることが可能となる。特に絶縁物として無機絶縁物を用いることによって中間層3の耐熱性を高くすることが可能である。また、中間層3の内部応力を低減することが可能であり、中間層3の形成条件の自由度が向上すると共に、大面積の中間層3を形成する場合でも欠陥の発生を減少させることができる。また、中間層3の最も陽極1側に高い電子注入性を付与すると共に、最も陰極2側に高いホール注入性を付与するため、この陽極1や陰極2と電気的に接続していない中間層3によって接続される発光層4間の電気的接続を良好にして低電圧駆動を可能にすることができる。更に、この中間層3は光吸収率や屈折率が小さく、素子内部での反射や吸収を低減することができ、光学的にも有利である。従って、中間層3を設けることで高輝度かつ高効率での発光を可能にしつつ、駆動電圧の増大、好ましくない電圧上昇の発生、ショートサーキット等の欠陥発生等を抑制して、安定した特性を示す有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得ることができるものである。
請求項2に係る発明によれば、混合物層における導電性金属酸化物がそれ自体高い導電率を有し、混合物層を備える中間層3が、発光層4同士を接続すると共に所望の領域だけを発光させるのに適した比抵抗を有するものとして機能することが可能となり、特性および安定性が更に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得ることができるものである。
請求項3に係る発明によれば、中間層3からそれに陰極側で隣接する有機層へのホール注入特性をより高めることができ、特性及び安定性が更に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得ることができるものである。
請求項4に係る発明によれば、中間層3とそれに陰極側で隣接する有機層との相互作用や密着性がより高まり、中間層3から有機層へのホール注入特性を更に高めることができ、特性及び安定性が更に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得ることができるものである。
請求項5に係る発明によれば、中間層3からそれに陽極側で隣接する有機層への電子注入特性をより高めることができ、特性及び安定性が更に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得ることができるものである。
請求項6に係る発明によれば、中間層3とそれに陽極側で隣接する有機層との相互作用や密着性がより高まり、中間層3から有機層への電子注入特性を更に高めることができ、特性及び安定性が更に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得ることができるものである。
請求項7に係る発明によれば、中間層3の耐熱性を殆ど低下させることなく中間層3の膜質をより向上させることができ、中間層3の膜質の悪さに起因するショーサーキット等の欠陥の発生をより効果的に抑制できる。また、中間層3の内部応力をより効果的に低減することが可能であり、中間層3の形成条件の自由度が向上すると共に、大面積の中間層3を形成することができる。
請求項8に係る発明によれば、中間層3における複数の領域の導電率をそれぞれ適当な範囲にコントロールすることができ、所望の領域のみを、あるいは各領域を所望の輝度比で発光させることが可能となる。
請求項9に係る発明によれば、中間層3の耐熱を高くすると共に中間層3の透明性を高め或いは中間層3の屈折率を低減することなどによって、より寿命特性及び耐熱性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得ることが可能となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1に有機エレクトロルミネッセンス素子Aの構造の一例を示す。図示の例では、陽極1となる電極と陰極2となる電極の間に発光層4(有機発光層)及び中間層3を介在させている。発光層4としては複数の発光層4a,4bが電極の積層方向に積層して形成され、この複数の発光層4a,4bの間に中間層3が介在している。更に、一方の電極(陽極1)が、透明な基板5の表面に積層している。陽極1は光透過性の電極として、陰極2は光反射性の電極として形成してある。
図示の形態では、発光層4として二層の発光層4a,4bを設けているが、中間層3を介してさらに多層に積層した積層構成であってもよい。発光層4の積層数は特に制限されないが、層数が増大すると光学的及び電気的な素子設計の難易度が増大するので、五層以内とすることが好ましい。尚、一般的な有機エレクトロルミネッセンス素子Aと同様に発光層4a,4bと陽極1や陰極2の間にホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層等を設けても良いが、図1中では図示を省略してある。
本発明では、上記中間層3は、導電性金属酸化物と無機絶縁物との混合物を含有する混合物層を含む複数の層で構成されている。この中間層3は、その全体に金属又は金属酸化物を含むものである。中間層3を構成する複数の各層に含有されている金属又は金属酸化物の種類及び含有量は、それぞれ相違するものであっても良い。
ここで、混合物層には、金属単体のみで形成される層、金属酸化物のみで形成される層、金属単体と金属酸化物のうち少なくとも一方と有機化合物との混合物で形成される層が、含まれる。尚、前記の金属又は金属酸化物を「含む」とは、金属又は金属酸化物のみで構成されていること、或いは金属又は金属酸化物と他の物質とが反応することなく混合していることを、意味するものであり、金属キレートを形成する場合等のように金属等が反応により化学結合を形成した状態で含まれているものは除かれる。
また、中間層3は、この中間層3を構成する複数の層のうち最も陽極1側の層(陽極側層)が、最も陰極2側の層(陰極側層)に比して高い電子注入性を有し、且つ、陰極側層が陽極側層に比して高いホール注入性を有するものとして、形成される。
ここで、陽極側層と陰極側層の電子注入性を評価するにあたっては、例えばITO付きガラス基板上に、評価対象となる層(製造しようとする陽極側層もしくは陰極側層と同一組成の層)を所定厚み(製造しようとする素子の層の厚みに準じる)で成膜し、次いで、Alq3を100nm蒸着し、最後に金電極を80nm成膜する。そして、ITOを陰極、金を陽極として電流−電圧特性を評価することにより、定量的に評価することができる。また、ホール注入性を評価するにあたっては、例えばITO付きガラス基板上に、評価対象となる層(陽極側層もしくは陰極側層)を所定厚み(製造しようとする素子の層の厚みに準じる)で成膜し、次いで、α−NPDを100nm蒸着し、最後にAl電極を80nm成膜する。そして、ITOを陽極、Alを陰極とし、電流−電圧特性を評価することにより、定量的に評価することができる。尚、ここに挙げた評価方法はあくまで一例であり、他の材料系で評価したり、他に提案されている注入評価法を用いても構わない。
前記無機絶縁物としては、導電性金属酸化物と混合成膜できるものであれば特に限定はしないが、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウム等の金属フッ化物;塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等に代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物;アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、クロム、マンガン、ルテニウム、鉄、銅、ガリウム等の各種金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物等を挙げることができる。その具体例としては、Al2O3、MgO、酸化鉄、AlN、SiN、SiC、SiON、BN等の絶縁物となるもの、或いはSiO2やSiO等を始めとするケイ素化合物、炭素化合物など、無機系の絶縁物から任意に選択して用いることができる。
これらの絶縁物は、可視光領域の吸収が小さく、あるいは屈折率が低いものから選択することが好ましく、この際には混合物層の光吸収率や屈折率を低下させることができ、結果として素子内部での反射や吸収が少なくなる。このため、発光層4で生じた光が外部に放出される際のロスを低減することができる。特に、無機絶縁物が導電性を有しない金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素化合物、ケイ素化合物のいずれかであることが、耐熱性、安定性、光学的な観点から好ましい。
また、混合物層を構成する導電性金属酸化物としては、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタンのいずれかを含有する金属酸化物であることが好ましい。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、前記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であっても良い。各金属の酸化数や、複数の金属の混合比率は、当該金属酸化物の電気的特性が好ましい範囲になるように、特に導電率が高い領域になるように設定することが必要である。
混合物層中での導電性金属酸化物と無機絶縁物の混合比率は、得られる混合物層に求められる比抵抗に応じて任意に設定できるが、好ましくは導電性金属酸化物と無機絶縁物の重量比が99:1〜20:80の範囲、更に好ましくは99:1〜50:50の範囲となるようにする。このような範囲内で導電性金属酸化物の含有量を調整することで、混合物層の導電性を著しく低下させない範囲で中間層3の導電率を制御することができる。
ここで、混合物層の導電率は膜厚および平面方向へのシート抵抗によって適宜設定され、特に制限されないが、好ましくは10-2S/cm〜10-7S/cmの範囲とする。また混合物層の膜厚も特に限定するものではなく、適宜設定されるが、好ましくは1nm〜100nmの範囲であり、更に好ましくは5nm〜50nmの範囲とする。結果として、混合物層のシート抵抗は、106〜1012Ω/□程度といえる。このシート抵抗は、後述するように有機エレクトロルミネッセンス素子Aにおける所望の領域のみが発光することが可能な範囲で調整することができる。
また、混合物層には、有機絶縁物を含有させることもできる。この有機絶縁物の種類は特に制限されないが、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機材料、例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルべンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体などの多環芳香族化合物から選ばれるもの;ビフェニル、ターフェニル、フルオレンなどの絶縁性の非共役芳香族化合物から選ばれるもの;前記のような化合物の誘導体、例えばアルキル化物、エステル化物、エーテル化物などとして結晶性を抑制したものなど;ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリナフタレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、各種ポリエステルなどに代表される各種ポリマーやそれらの共重合体およびそれらのオリゴマーなどやパラフィンなどが挙げられる。この有機絶縁物は、特にガラス転移点が100℃以上であることが、耐熱性の観点から好ましい。
このようないわゆる有機半導体材料ではない有機分子を、中間層3の耐熱性を落とさない範囲で無機絶縁体と併用して混合物層に含有させることにより、中間層3の耐熱性をほとんど低下させることなく中間層3の膜質をより向上させることができる。
混合物層中の有機絶縁物の含有量は特に制限されないが、中間層3の耐熱性を落とさないためには、中間層3全体に対して好ましくは1〜40重量%、更に好ましくは1〜20重量%の範囲となるようにする。
混合物層の形成にあたっては、導電性金属化合物と絶縁物との混合物を任意の成膜方法によって薄膜化することができる。
成膜方法の例としては、例えば蒸着、スパッタ、塗布、キャスティング、スプレー、CVD、転写等が挙げられ、素子特性を悪化させないような方法から適宜選定される。蒸着の場合には、金属酸化物、絶縁物あるいは金属等を蒸発物質とし、加熱蒸着法やEB蒸着法による共蒸着による成膜法が例として挙げられる。また、雰囲気をコントロールして、一部の物質を酸化させることも必要に応じて実施できる。スパッタの場合には、金属酸化物をターゲットとしても良いし、例えば金属をターゲットとして酸素含有雰囲気下での反応性スパッタで当該材料を成膜しても構わない。下地となる有機層に致命的なダメージを与える方法でなければ特に限定をする必要はなく、必要な膜の特性を得るための任意の方法を任意に使い分けることが可能である。またキャスティングや塗布等の湿式成膜の場合には、周辺の層に悪影響を与えない材料系を選定すればよい。転写に関しても、周辺の層に悪影響を与えない転写方法を選定すればよく、特に手段を限定するものではない。
ここで、成膜方法の選択にあたっては、下地へのダメージが小さく、且つ形成される混合物層の内部応力が小さくなるようにすることを考慮すべきであるが、本発明では混合物層は導電性金属酸化物と絶縁物とを含有することから、下地へのダメージが小さく、且つ形成される混合物層の内部応力を低減することが可能である。そのため、成膜法に応じて下地へのダメージを低減するためのバッファ層を設けたりダメージを低減するための成膜条件の調整を行ったりする必要性が少なく、下地へのダメージ発生の防止及び混合物層の内部応力の低減を容易に為すことができるものである。
また、陽極側層及び陰極側層は、例えば電気的な修飾を加える材料を混合した混合物層にて形成したり、或いは前記材料を混合物層に積層して形成した層にて形成したりすることができる。すなわち、中間層3の構成としては、陽極側層として形成される混合物層と陰極側層として形成される混合物層とを積層したもの、混合物層の両側に陽極側層と陰極側層とを積層したもの、陽極側層と陰極側層として形成された混合物層とを積層したもの、陽極側層として形成された混合物層と陰極側層とを積層したもの等が挙げられる。また、これらの構成に加えて、更に陽極側層及び陰極側層として機能しない混合物層を介在させても良い。
上記電気的な修飾を加える材料としては、例えば金属、金属酸化物半導体、塩化鉄や臭化鉄などの無機ドナーやアクセプタ、フッ素含有有機化合物、シアノ基含有有機化合物などの有機ドナーやアクセプタの混合や積層などが挙げられる。
このうち金属としては、陽極側層を形成する場合には仕事関数が小さいもの、例えば仕事関数が3.7eV以下のセリウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、サマリウム、イットリウム等を挙げることができる。また、陰極側層を形成する場合には、仕事関数が大きいもの、例えば仕事関数が5eV以上の金等を挙げることができる。
また、バナジウム、モリブデン、レニウム、タングステン、ニッケルなどの金属も必要に応じて陰極側層として用いることができる。
また、これらの金属は、特にこの金属を積層して陽極側層や陰極側層を形成する場合、2種以上の金属からなる合金であってもよい。例えば陽極側層として、AlとLiとの合金、AlとCsとの合金、AlとNaとの合金、AgとMgとの合金などのように単独では不安定な材料を合金化したり、Auのように単独では隣接層との相性の悪い材料を合金化して用いたりすることができる。
また、金属酸化物としては、特に限定はしないが、例えばバナジウム、モリブデン、レニウム、タングステン、ニッケル、亜鉛、スズ、ニオブの金属酸化物が好ましく用いられ、これらは陽極側層又は陰極側層として用いられる。
また、無機ドナーやアクセプタとしては、前記塩化鉄や臭化鉄などが、陰極側層として用いられる。
また、混合または積層される有機ドナーやアクセプタとしては、フッ素含有有機化合物、シアノ基含有有機化合物などから適宜選定されるが、例えばF4−TCNQ、DDQ、CF3TCNQ、F2TCNQ、あるいはこれらの誘導体などが、陰極側層として用いられ、電気的機能が同等のものであれば任意に用いることが可能である。
混合物層にて陽極側層又は陰極側層を形成する場合には、その混合物層中の金属等の電気的な修飾を加える材料の混合率は、前記材料の種類に応じて適宜設定すべきであるが、好ましくは0.1mol%〜80mol%の範囲であり、更に好ましくは1mol%〜50mol%の範囲である。また、この場合の陽極側層又は陰極側層の厚みは特に制限されないが、好ましくは0.1nm以上、且つ中間層3全体の厚みの90%以下の範囲とする。
また、金属等の電気的な修飾を加える材料を積層して陽極側層又は陰極側層を形成する場合、その厚みは光の透過率を考慮し適宜設定されるが、例えば0.1nm〜30nmの範囲であり、好ましくは0.5nm〜10nmの範囲とする。また必要に応じて、中間層3の反射率を考慮し、有機エレクトロルミネッセンス素子Aの光学的特性を満たせるような透過率や反射率を有する膜厚とすることも可能である。
このように陰極側層又は陽極側層を形成するにあたり、特に陰極側層に、モリブデン、タングステン、レニウム、バナジウム、タンタル、ニッケル、亜鉛、スズ、ニオブの各金属酸化物から選択される少なくとも一種を含有させることが好ましい。この場合の陰極側層の厚みは特に制限されないが、例えば1〜100nmの範囲が好ましく、特に好ましくは1〜10nmの範囲とする。
また、陰極側層に上記金属酸化物を含有させる場合において、この陰極側層に導電性金属酸化物と無機絶縁物との混合物を含有させることにより、混合物層にて陰極側層を形成しても良い。
このようにして陰極側層を混合物層にて形成する場合、混合物層を例えば前記金属酸化物を含有すると共にその含有量が異なる複数の領域を積層して設けても良く、また、前記金属酸化物を含有する一の混合物層を形成すると共にこの混合物層中の前記金属酸化物の含有量が混合物層の厚み方向で傾斜的に変化するようにしても良い。この場合、混合物層の最も陰極側に配置される領域で前記金属酸化物の含有量が最も大きくなるようにすることが好ましい。この場合の混合物層中での前記金属酸化物の含有量は特に制限されるものではないが、好ましくはこの混合物中の前記金属酸化物の割合が1〜80体積%、更に好ましくは5〜50体積%となるようにする。また、この混合物層の厚みは特に制限されず、適宜設定されるが、好ましくは前記金属酸化物の含有量が最も大きくなる領域の厚みが、混合物層全体に対して1〜50%の範囲となるようにする。
また、陽極側層に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属の群から選ばれる少なくとも一種の金属を含有させることも好ましい。この場合の陽極側層の厚みは特に制限されないが、例えば0.1〜40nmの範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜10nmの範囲とする。
また、陽極側層に上記金属を含有させる場合において、この陽極側層に導電性金属酸化物と無機絶縁物との混合物を含有させることにより、混合物層にて陽極側層を形成しても良い。
このようにして陽極側層を混合物層にて形成する場合、混合物層を例えば前記金属を含有すると共にその含有量が異なる複数の領域を積層して設けても良く、また、前記金属を含有する一の混合物層を形成すると共にこの混合物層中の前記金属の含有量が混合物層の厚み方向で傾斜的に変化するようにしても良い。この場合、混合物層の最も陽極側に配置される領域で前記金属の含有量が最も大きくなるようにすることが好ましい。この場合の混合物層中での前記金属の含有量は特に制限されるものではないが、好ましくはこの混合物中の前記金属の割合が1〜80体積%、更に好ましくは5〜50体積%となるようにする。また、この混合物層の厚みは特に制限されず、適宜設定されるが、好ましくは前記金属の含有量が最も大きくなる領域の厚みが、混合物層全体に対して1〜50%の範囲となるようにする。
また、これらの陰極側層や陽極側層は、一種のみの金属酸化物又は金属を含有するほか、二種以上の金属種を含有するものであっても良い。例えば陰極側層としてモリブデンとタングステンの酸化物を含有するもの等を形成することができ、また陽極側層としてAlとLiとを含有するもの、AlとCsを含有するもの、AlとNaとを含有するもの、AgとMgとを含有するもの等を形成することができる。このように二種以上の金属種を含有することで、単独では安定性が悪い材料の安定性を向上させたり、単独では膜質や隣接する層との密着性が悪い材料の成膜性を向上させたりすることが可能となる。
また、中間層3に陰極側層として上記金属酸化物を含有する混合物層を設けると共に、陽極側層として上記金属を含有する混合物層を設けるようにしても良い。
上記発光層4に使用できる材料としては、有機エレクトロルミネッセンス素子A用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体及び各種蛍光色素等、前述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。また、これらの材料からなる有機層は、蒸着、転写等乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビア印刷等、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを構成する他の部材である、積層された素子を保持する基板5や陽極1、陰極2等には、従来から使用されているものをそのまま使用することができる。
すなわち、上記基板5は、この基板5を通して光が出射される場合には光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂、フッ素系樹脂等から任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板5内に基板母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有し、あるいは表面に形状を付与することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。また、基板5を通さずに光を射出させる場合、基板5は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわず、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板5を使うことができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板5を使うこともできる。
上記陽極1は、発光層4中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極1の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO2、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、PEDOT、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極1は、例えば、これらの電極材料を、基板5の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、発光層4における発光を陽極1を透過させて外部に照射するためには、陽極1の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極1のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極1の膜厚は、陽極1の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。
また上記陰極2は、発光層4中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。このような陰極2の電極材料としては、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属等、およびこれらと他の金属との合金、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/LiF混合物を例として挙げることができる。またアルミニウム、Al/Al2O3混合物なども使用可能である。さらに、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極2の下地として用い、さらに金属等の導電材料を1層以上積層して用いてもよい。例えば、アルカリ金属/Alの積層、アルカリ金属のハロゲン化物/アルカリ土類金属/Alの積層、アルカリ金属の酸化物/Alの積層などが例として挙げられる。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極2側から光を取りだす構成としても良い。また陰極2の界面の有機物層にリチウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属をドープしても良い。
また上記陰極2は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。発光層4における発光を陽極1側から取り出す場合には、陰極2の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、透明電極を陰極2として陰極2側から発光を取りだす場合(陽極1と陰極2の両電極から光を取り出す場合も含む)には、陰極2の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極2の膜厚は、陰極2の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子Aの素子構成は、本発明の趣旨に反しない限り任意のものを用いることができる。例えば、前述の通り、図1の素子構成の例としては、ホール注入層やホール輸送層、電子輸送層や電子注入層を省略して記したが、必要に応じてこれらを適宜設けることができる。
ホール輸送材料が中間層3に接する部分には、中間層3と接触することによってこの中間層3を構成する成分と電荷移動錯体を形成する有機材料が配置されることが好ましい。電荷移動錯体を形成する有機材料は、例えばホール輸送性を有する化合物の群から選定することができるものであり、電子供与性を有し、また電子供与によりラジカルカチオン化した際にも安定である化合物が好ましい。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、トリアリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
また、電子輸送材料が中間層3に接する部分には、中間層3と接触することによってこの中間層3を構成する成分と電荷移動錯体を形成する有機材料が配置されることが好ましい。電荷移動錯体を形成する有機材料は、例えば電子輸送性を有する化合物の群から選定することができるものであり、正孔供与性を有し、また正孔供与によりラジカルアニオン化した際にも安定である化合物が好ましい。この種の化合物としては、Alq3等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体等のヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
このようにして構成される有機エレクトロルミネッセンス素子Aでは、複数の発光層4を積層していることから、高輝度発光を可能とすることができる。また、このとき、混合物層における導電性金属酸化物の含有量を調整することで、中間層3の導電率を所望の範囲にコントロールすることができ、これにより発光層4における発光輝度を調整することができる。また、このように混合物層の導電率を適宜調整することによって、有機エレクトロルミネッセンス素子Aの光学長を調整するための光学スペーサー層として用いることも可能である。更に、陰極側層によって中間層3の陰極2側に高いホール注入性を付与すると共に、陽極側層によって中間層3の陰極2側に高い電子注入性を付与することで、この中間層3を介した発光層4間の電気的接続を良好にし、低電圧駆動を可能とすることができる。
また、無機絶縁物と導電性金属酸化物とを含有する混合物層を形成する場合、形成される混合物層の凹凸形状を小さくしたり、膜密度を向上させることが可能となって、中間層3の膜質を向上することができ、このため、中間層3の膜質の悪化に起因するショートサーキット等の欠陥が発生することを抑制することができる。
また、このようにして形成される中間層3を、有機エレクトロルミネッセンス素子Aの発光領域の制御に利用することができる。
例えば、上記のように陽極1と陰極2の間に複数の発光層4と中間層3とを積層して有機エレクトロルミネッセンス素子Aを形成するにあたり、陽極1と陰極2とが重なった領域でのみ、発光層4に発光を生じさせたい場合において、中間層3が前記領域よりも広い領域に亘って形成されていても、中間層3を構成する混合物層中の導電性金属化合物と無機絶縁物との混合比率を調整することにより、この混合物層のシート抵抗を、中間層3における良好な導電性を維持することができると共に、中間層3内で電子やホールが平面方向に拡散しにくい範囲に調整することで、前記領域のみに発光が生じるように制御することができる。
また、陽極1と陰極2との間に複数の中間層3を平面方向に間隔をあけて並べて設ければ、この陽極1と陰極2の間における中間層3と重なる領域で発光層4に発光を生じさせることができ、複数箇所に分かれた領域でそれぞれ発光を生じさせることができる(図4参照)。また、このように複数箇所に中間層3を設ける場合に、各中間層3での混合物層中の導電性金属化合物と無機絶縁物との混合比率をそれぞれ異ならせることによって、その導電率を異ならせれば、各中間層3に対応する領域をそれぞれ所望の輝度比で発光させることが可能となる。
また、このような有機エレクトロルミネッセンス素子Aを作製するにあたり、発光層4を形成する場合、或いは更に電極を形成する場合と同一の成膜法を採用して中間層3を形成すれば、生産プロセスの効率化を達成することができる。このとき、特に蒸着法を採用することが好ましい。
ここで、一般に導電性金属酸化物を抵抗加熱蒸着、EB蒸着等の蒸着法によって成膜する場合には、膜表面の凹凸の大きな膜や、緻密でない膜が得られることが多く、この形状および膜質は、薄膜デバイスである有機エレクトロルミネッセンス素子Aにおいては、欠陥に直結する大きな問題となりうるが、無機絶縁物と導電性金属酸化物とを含有する混合物層を形成する場合には、蒸着法で形成する場合であっても、既述のように混合物層の凹凸形状を小さくしたり、膜密度を向上させることが可能となり、蒸着法を問題なく採用することができる。
また、蒸着法を用いた場合、例えば蒸発源を一列あるいは並置して並べ、その上を基板5を移動させながら成膜するいわゆるインラインプロセスが、非常に簡便に応用可能である。特に電極や発光層4と同等の雰囲気下で中間層3が形成可能となるため、雰囲気コントロールのための設備が不要となり、プロセスの簡略化を実現することが可能になるものである。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、特に明記がない限り、金属酸化物は加熱蒸発源もしくはEB蒸発源で蒸着させた。
(実施例1)
厚み110nm、幅5mm、シート抵抗約12Ω/□のITO膜(陽極1)が図2のパターンのように成膜された、0.7mm厚のガラス製の基板5を用意した。この基板5を、洗剤、イオン交換水、アセトンで各10分間超音波洗浄した後、IPA(イソプロピルアルコール)で蒸気洗浄して乾燥し、さらにUV/O3処理を施した。
次に、この基板5を真空蒸着装置にセットし、1×10-4Pa以下の減圧雰囲気下で、陽極1の上にホール注入層として、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)と酸化モリブデン(MoO3)の共蒸着体(モル比1:1)を30nmの膜厚で蒸着した。次にこの上にホール輸送層として、α−NPDを40nmの膜厚で蒸着した。
次いで、ホール輸送層の上に、発光層4aとしてAlq3にルブレンを7質量%共蒸着した層を40nmの膜厚で形成した。
次に発光層4aの上に電子輸送層としてAlq3を単独で30nmの厚みに成膜した。
次いで、AlとLiとのモル比1:1の合金の膜(陽極側層)を厚み5nm、混合物層としてIZO(インジウム亜鉛酸化物)とSiOと下記[化1]に示すジナフチルアントラセンとの重量比75:15:10の共蒸着膜を厚み35nm、MoO3の膜(陰極側層)を厚み10nmの膜厚に蒸着した。これにより、陽極側層が陰極側層よりも高い電子注入性を有し、かつ陰極側層が陽極側層よりも高いホール注入性を有する中間層3を形成した。
続いて中間層3の上に、ホール輸送層として、α−NPDを50nmの膜厚で蒸着した。
次いで、ホール輸送層の上に、発光層4bとしてAlq3にルブレンを7質量%共蒸着した層を40nmの膜厚で形成した。
次にこの発光層4bの上に電子輸送層としてAlq3を単独で30nm成膜した。続いて、LiFを0.5nm成膜した。
この後、図2のパターンのように陰極2となるアルミニウムを0.4nm/sの蒸着速度で5mm幅、100nm厚に蒸着し、発光層4が二層構成の、図2に示す構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。尚、ホール注入層、ホール輸送層及び電子輸送層は、図示を省略している。
(実施例2)
中間層3を形成するにあたり、蒸着によりLi単独の層(陽極側層)を厚み1nmに、スパッタリングによりITOとAl2O3を重量比で90:10の割合とした層を厚み30nmに、ITOとMoO3を重量比で8:2の割合とした層(陰極側層)を厚み20nmに、順次成膜した。
それ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(実施例3)
陽極1の上に設けるホール注入層を酸化モリブデンにて厚み10nmに形成し、このホール注入層の上に設けるホール輸送層をα−NPDにて厚み60nmに形成した。
また、中間層3を形成するにあたり、IZOとLiの重量比90:10の混合物の層(陽極側層)をスパッタにて厚み20nmに、IZOとフッ化マグネシウムの重量比70:30の混合物の層をスパッタにて厚み20nmに、IZOと酸化タングステンの重量比90:10の混合物の層(陰極側層)をスパッタにて厚み10nmに、順次成膜した。
また、中間層3の上に設けるホール輸送層をα−NPDにて厚み60nmに形成した。
それ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(実施例4)
中間層3を形成するにあたり、IZOとCsとのモル比95:5の共蒸着膜(陽極側層)を厚み5nmに、IZOとMgF2との重量比90:10の共蒸着膜を厚み25nmに、IZOとMoとの、Mo含有率が5〜10%程度の共スパッタ膜(陰極側層。尚、スパッタ雰囲気に酸素が含まれるためMoは酸化モリブデンとして含有される。)を厚み5nmに順次形成した。
それ以外は実施例3と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(実施例5)
中間層3を形成するにあたり、AlqとLiのモル比2:1の共蒸着膜(陽極側層)を厚み5nmに、SnO2とMgとのモル比95:5の共蒸着膜を厚み5nmに、ZnOとAl2O3と下記[化2]に示すコロネンとの重量比70:20:10の混合物の層を厚み25nmに、α−NPDとV2O5とのモル比2:1の共蒸着膜(陰極側層)を厚み10nmに順次形成した。
それ以外は実施例3と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(実施例6)
中間層3を形成するにあたり、IZOとMgとのモル比95:5の共蒸着膜(陽極側層)を厚み5nmに、IZOとSiOとパラフィンとの重量比60:35:5の混合物の層を厚み25nmに、α−NPDとMoO3とのモル比2:1の共蒸着膜(陰極側層)を厚み10nmに順次形成した。
それ以外は実施例3と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(従来例1)
実施例1と同様のITO膜(陽極1)を設けたガラス製の基板5の陽極1の上にホール注入層として、α−NPDとMoO3の共蒸着体(モル比1:1)を30nmの膜厚で蒸着し、この上にホール輸送層として、α−NPDを40nmの膜厚で蒸着した。
次いで、ホール輸送層の上に、発光層4aとしてAlq3にルブレンを7質量%共蒸着した層を40nmの膜厚で形成した。
次にこの上に電子輸送層としてAlq3を単独で30nm成膜し、続いて、LiFを0.5nm成膜した。
この後、陰極2となるアルミニウムを0.4nm/sの蒸着速度で5mm幅、100nm厚に蒸着し、発光層4が一層構成の有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(従来例2)
ホール注入層を酸化モリブデンにて厚み10nmに形成し、ホール輸送層をα−NPDにて厚み60nmに形成した以外は、従来例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子Aを形成した。
(比較例1)
中間層3を形成するにあたり、ITO単独からなる厚み30nmの膜のみを形成した。
それ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(比較例2)
中間層3を形成するにあたり、ITOとMgとのモル比95:5の共蒸着膜を厚み10nmに、ITOとジナフチルアントラセンとの重量比75:25の共蒸着膜を厚み20nmに順次形成した。
それ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(比較例3)
中間層3を形成するにあたり、ZnOの単独層のみをスパッタリングにて厚み20nmに形成した。
それ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(比較例4)
中間層3を形成するにあたり、MoO3の単独層のみを蒸着により厚み30nmに形成した。
それ以外は実施例3と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(比較例5)
中間層3を形成するにあたり、ITOとMgとのモル比95:5の共蒸着膜を厚み10nmに、ITO単独の蒸着膜を厚み20nmに、ITOとMoO3との重量比90:10の共蒸着膜を厚み10nmにそれぞれ形成した。
それ以外は実施例3と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(比較例6)
中間層3を形成するにあたり、実施例1において、IZOとSiOとジナフチルアントラセンからなる混合層に代えて、IZOとジナフチルアントラセンとの重量比20:80の混合物の層を形成した。
それ以外は実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(実施例7)
基板5としては、図4に示すように平面視が矩形状に形成されたものを用いた。基板5の材質は実施例1と同様にガラス製であり、また実施例1と同様のITO膜(陽極1)が設けられているものを用いた。この基板5に、実施例1と同様の洗剤、イオン交換水、アセトンによる超音波洗浄と、IPAによる蒸気洗浄と、UV/O3処理とを順次施した。
この基板5に対し、実施例1と同様にして、ホール注入層、ホール輸送層、発光層4a、電子輸送層を順次形成した。
次に、7mm×5mmの寸法の開口部を有するマスクを用いて、実施例1の中間層3と同一の構造の中間層3(3a)、実施例1の中間層3においてIZOとSiOとジナフチルアントラセンとの混合比を65:25:10とした中間層3(3b)、前記混合比を55:35:10とした中間層3(3c)、前記混合比を100:0:0(IZO単独)とした中間層3(3d)を、それぞれ設けた。これらの中間層3a〜3dは上記電子輸送層の上に間隔をあけて一列に設けた。
次に、実施例1と同様にしてホール輸送層、発光層4b、電子輸送層を順次形成した。これにより、中間層3a〜3dにそれぞれ対応する四ヶ所の発光領域を有する、図4に示す構造の有機エレクトロルミネッセンス素子Aを得た。
(評価試験)
各実施例における、陽極側層と陰極側層における電子注入性及びホール注入性を、既述の手法で評価した。すなわち、実施例1で用いたものと同一のITO付きガラス基板上に、各実施例における陽極側層又は陰極側層を各実施例におけるものと同一の厚みで成膜した。次いで電子注入性の評価については、Alq3を100nm蒸着し、最後に金電極を80nm成膜し、ITOを陰極、金を陽極として電流−電圧特性を評価することにより行った。また、ホール注入性の評価については、α−NPDを100nm蒸着し、最後にAl電極を80nm成膜し、ITOを陽極、Alを陰極とし、電流−電圧特性を評価することにより行った。この結果、各実施例では陽極側層が陰極側層よりも高い電子注入性を有し、且つこの陰極側層が陽極側層よりも高いホール注入性を有することが確認された。
この各実施例、従来例及び比較例で得た有機エレクトロルミネッセンス素子Aを、電源(米国ケースレーインスツルメンツ社製のソースメータ、型番2400)に接続し、陽極1と陰極2の間に30mA/cm2の定電流を通電し、このときの有機エレクトロルミネッセンス素子Aの発光輝度と、陽極1と陰極2の間の電圧とを測定した。このとき、前記定電流値を確保するための上限電圧は25Vとした。また、輝度の測定には、トプコン株式会社製「BM−9」を使用した。結果を表1に示す。
また、実施例7の素子には、陽極1と陰極2の間に17Vの電圧を印加し、中間層3a〜3dに対応する四ヶ所の発光領域のそれぞれの輝度を測定した。結果は表2に示す。
表1にみられるように、各実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子Aは、発光輝度および駆動電圧とも、従来例1,2の場合の概ね二倍の電圧で、従来例1,2の概ね二倍の発光輝度が得られたものであり、中間層3の存在による二つの発光層4の電気的接続が良好に行われていることが確認された。
一方、比較例1では、中間層3の膜質の悪さに起因すると考えられるショートサーキットが発生し、比較例2では中間層3におけるホール注入性の悪さに起因すると考えられる大幅な電圧上昇がみられ、また比較例3、4では25Vの電圧を印加しても所定の電流量が確保できなかった。また、比較例5では、陽極1、発光層4a、中間層3、発光層4b、陰極2が全て重なっている領域だけでなく、図3に示す陰極2は重なっているが陽極1が重なっていない領域6にも発光が生じ、所望の領域での発光が得られず、更にしばらくすると中間層3の膜質の悪さに起因すると考えられるショートサーキットが発生した。また、比較例6の有機エレクトロルミネッセンス素子Aは良好に点灯したが、しばらく点灯しているうちに発光面の一部が部分的に明るくなり、部分でショートサーキットが発生した。これは、中間層3の耐熱性が充分でなかったために、点灯時に発生した熱によって中間層3が変質したことに由来すると考えられる。
また実施例7では、表2に示すように、導電性金属酸化物と絶縁物との混合物層を含む中間層3a〜3cに対応する発光領域では、それぞれ異なる輝度で発光した。また、これらの発光は、陽極1、発光層4a、中間層3、発光層4b、陰極2が全て重なっている領域でなされた。一方、前記混合物層に代えて導電性金属酸化物のみの層を含む中間層3dに対応する発光領域では、当初は陽極1、発光層4a、中間層3、発光層4b、陰極2が全て重なっている領域に加え、図4に示すような、陰極2は重なっているが陽極1が重なっていない領域7にも発光がみられ、その発光輝度は中間層3aに対応する発光領域よりも若干低輝度であった。その後、しばらくすると、ショートサーキットが生じ、全ての領域で発光が生じなくなった。