JP5075027B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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本発明は、照明光源や液晶表示器用バックライト、フラットパネルディスプレイ等に用いられる有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関し、詳しくは、複数の有機発光層を備え、高輝度且つ高効率で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関するものである。
有機エレクトロルミネッセンス素子と称される有機発光素子として、陽極となる透明電極、ホール輸送層、有機発光層、電子注入層、陰極となる電極の順に、透明基板の片側の表面に積層した構成のものが、その一例として知られている。そして、陽極と陰極の間に電圧を印加することによって、電子注入層を介して有機発光層に注入された電子と、ホール輸送層を介して発光層に注入されたホールとが、有機発光層内で再結合して発光が起こるものであり、このように有機発光層で発光した光は、透明電極及び透明基板を通して取り出される。
この有機エレクトロルミネッセンス素子は、自発光であること、比較的高効率の発光特性を示すこと、各種の色調で発光可能であること等の特徴を有するものであり、表示装置、例えばフラットパネルディスプレイ等の発光体として、あるいは光源、例えば液晶表示機用バックライトや照明としての活用が期待されており、一部では既に実用化されている。
しかし、有機エレクトロルミネッセンス素子は、その輝度と寿命とがトレードオフの関係にあり、より鮮明な画像、あるいは明るい照明光を得るために輝度を増大させると、寿命が短くなるという問題点を有する。
この問題を解決するものとして、近年、陽極と陰極の間に有機発光層を複数備え、且つ各有機発光層を中間層で電気的に接続した構造の有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている(例えば特許文献1−6参照)。
図3はこのような有機エレクトロルミネッセンス素子の構造の一例を示すものであり、陽極1となる電極と陰極2となる電極の間に複数の有機発光層4a,4bを設けると共に、隣接する有機発光層4a,4bの間に中間層3を介在させた状態で積層し、これを透明な基板5の表面に積層したものである。ここで、陽極1は光透過性の電極として、陰極2は光反射性の電極として形成されている。
このものでは、複数層の有機発光層4a,4bを中間層3で電気的に接続することによって、陽極1と陰極2の間に電圧を印加した場合に、複数の有機発光層4a,4bがあたかも直列的に接続された状態で同時に発光し、各有機発光層4a,4bからの光が合算されるため、一定電流通電時には従来型の有機エレクトロルミネッセンス素子よりも高輝度で発光させることができ、上記のような輝度−寿命のトレードオフを回避することが可能になるものである。
ここで、上記の中間層3の構成として現在知られている一般的なものは、例えば、(1)BCP:Cs/V、(2)BCP:Cs/NPD:V、(3)Li錯体とAlのその場反応生成物、(4)Alq:Li/ITO/ホール輸送材料、(5)金属−有機混合層、(6)アルカリ金属およびアルカリ土類金属を含む酸化物等がある。尚、「:」の記載は2種の材料の混合を表し、「/」の記載は前後の組成物の積層を表す。
特許第3884564号公報 特許第3933591号公報 特開2005−135600号公報 特開2006−332048号公報 特開2006−173550号公報 特表2008−511100号公報
しかし、上記のように複数の有機発光層を仕切る中間層を設けると、駆動電圧の増大や、好ましくない電圧上昇の発生を招くおそれがあり、また膜質の悪さによるショートサーキット等の欠陥発生の問題なども生じてしまうおそれがある。
例えば、上記(1)に示す系の中間層では、V層の膜質によるショートの問題が発生するおそれがある。
また上記(2)に示す系では、二つの層間で生じる副反応による電圧上昇の問題がある。すなわち、ルイス酸分子は電子輸送材料とも反応し、またアルカリ金属はルイス塩基としてホール輸送材料とも反応し、これらの反応によって駆動電圧の増大が起こることが報告されている(参考文献:高分子学会有機EL研究会 平成17年12月9日講演会 マルチフォトン有機EL照明)。
また上記(3)に示す系では、その場反応生成物を得るために用いるLi錯体の有機配位子成分が、素子特性に悪影響を与えることがあることが問題となる。
また上記(4)の系では、中間層としてのITOからのホール輸送材料へのホール注入が必ずしも良好でなく、駆動電圧や素子特性の観点で問題がある。
また上記(5)の系では、金属酸化物等の金属化合物を含む金属と有機物を混合して中間層を形成するために、中間層の熱安定性が低下し、特に大電流を通電した際の発熱に対する中間層の安定性に劣るという問題があった。
また、上記(6)の系では、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含有する金属酸化物の中間層としての機能が必ずしも充分ではなく、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属を含有する金属酸化物以外の物質からなる層を積層して用いることが実質的に必要であり、中間層の構造が複雑になるという問題があった。
更に、上記(1)及び(4)の系では、特に大面積デバイスとなった際に、中間層を構成する膜内の応力によって、中間層周辺での欠陥が起こりうる可能性がある。
尚、特許文献3には、1種のマトリクスに添加剤を膜内のどの位置でもその濃度が0にはならないように添加することによって中間層を形成する方法が記載されているが、この場合にも前記参考文献に記載されているような問題のすべてを解決することはできないものである。
そこで、上記のように中間層を介して積層された複数の有機発光層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子を製造するにあたり、上記のような種々の問題を克服した中間層を実現することが望まれるようになっているのが、現状である。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高輝度かつ高効率での発光が可能であり、且つ駆動電圧の増大、好ましくない電圧上昇の発生を抑制することができ、また生産性良好な有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、陽極1と陰極2の間に、中間層3を介して積層された複数の有機発光層4を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記中間層3を、前記有機発光層4の表面に電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aを形成する工程と、この層3aの表面に光透過性の金属酸化物を含有する層を蒸着により形成する工程と、この蒸着層3bの表面に光透過性金属酸化物の層をスパッタリングにより形成する工程で作製し、前記蒸着層3bの厚みと上記のスパッタリングにより形成したスパッタ層3cとの合計厚みを25〜50nmにすると共に、前記蒸着層3bの厚みをこの合計厚みの40〜90%にし、前記蒸着層3bが、両極性光透過性導電性金属酸化物を含有する層であり、かつ、前記スパッタ層3cが、前記蒸着層3bに含有される両極性光透過性導電性金属酸化物と同一の金属種の両極性光透過性導電性金属酸化物を含有する層であることを特徴とするものである。
この発明によれば、中間層3を、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aと、この層3aの上に形成される光透過性金属酸化物の蒸着層3b及びスパッタ層3cから作製すると共に、スパッタ層3cは蒸着層3bの上に形成するようにしているので、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aに接する蒸着層3bによってこの層3aと光透過性金属酸化物の層との界面での密着性が向上し、より安定な界面を形成できるものであり、効率や寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができるものである。また、電荷移動錯体または仕事関数が3.7eV以下の金属の層3a上には蒸着という成膜エネルギーの低い方法によって金属酸化物を含有する層3bを形成するようにしており、スパッタリングというエネルギーの高い成膜方法では直接膜を形成しないため、高エネルギー成膜に由来する金属酸化物と電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aとの混合を抑制できるものであり、また光透過性金属酸化物の層をスパッタリングで成膜する際に与えられるダメージに由来する駆動電圧の上昇などのデバイス特性の悪化を低減することができるものである。特に、蒸着層3bの厚みとスパッタ層3cとの合計厚みを25〜50nmにすると共に、蒸着層3bの厚みをこの合計厚みの40〜90%にすることで、スパッタ層3cを形成する際のスパッタダメージを抑制するのに必要な厚みを確保して蒸着層3bを形成することができると同時に、これら蒸着層3bとスパッタ層3cの光透過率を高く維持することできるものであり、この結果、光透過率が高く、また隣接する有機発光層4への電荷注入性の高い中間層3を得ることが可能となるものである。
また、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aと、スパッタによって形成される金属酸化物のスパッタ層3cとの間で、蒸着層3bがホール/電子の両電荷の授受を行ない、中間層3内での電荷移動に要する電圧を低減することができるものであり、素子の駆動電圧を低下させることが可能となるものである。
また、蒸着によって形成される金属酸化物の蒸着層3bと、スパッタ層3cの間での良好な両電荷授受が可能となり、中間層3内での電荷移動に要する電圧を低減することが可能となるものであり、加えて、スパッタ層3cとその上に形成される有機層との間の電荷注入障壁を低減することも同時に可能となり、結果として低駆動電圧の有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることが可能となるものである。
また発明において、上記のスパッタ層3cを形成するスパッタリングの工程が、酸化性気体を含有する雰囲気下で金属酸化物ターゲット又は金属ターゲットをターゲットとして行うと共に前記酸化性気体の割合が、前記金属酸化物ターゲットを用いる場合には0.1〜10%、前記金属ターゲットを用いる場合には5〜80%で行われることが好ましい。
この発明によれば、スパッタリングによって得られる金属酸化物の層の光透過性をより向上させることができ、スパッタ層3cによる光吸収を抑えて、効率の高い有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができるものである。尚、このスパッタ層3cと電荷移動錯体または3.7eV以下の金属の層3aの間に金属酸化物からなる蒸着層3bが設けられているため、スパッタリングの際の酸化性気体による、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aへの影響を抑制することができるものであり、このようなスパッタリングのプロセスの実施が可能になるものである。
また、本発明において、前記スパッタ層3cは、上記のスパッタ層3cに含有される両極性光透過性導電性金属酸化物が傾斜的な混合量を有するように形成されていることが好ましい。あるいは、本発明において、上記のスパッタ層3cに含有される両極性光透過性導電性金属酸化物は、前記陽極1側又は前記陰極2側の少なくとも一方側に部分的に含まれていることが好ましい。
本発明によれば、中間層3を、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aと、この層3aの上に形成される光透過性金属酸化物の蒸着層3b及びスパッタ層3cから作製すると共に、スパッタ層3cは蒸着層3bの上に形成するようにしているので、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aに接する蒸着層3bによってこの層3aと光透過性金属酸化物の層との界面での密着性が向上し、より安定な界面を形成できるものであり、効率や寿命特性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができるものである。また、電荷移動錯体または仕事関数が3.7eV以下の金属の層3a上には蒸着という成膜エネルギーの低い方法によって金属酸化物を含有する層3bを形成するようにしており、スパッタリングというエネルギーの高い成膜方法では直接膜を形成しないため、高エネルギー成膜に由来する金属酸化物と電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aとの混合を抑制できるものであり、また光透過性金属酸化物の層をスパッタリングで成膜する際に与えられるダメージに由来する駆動電圧の上昇などのデバイス特性の悪化を低減することができるものである。特に、蒸着層3bの厚みとスパッタ層3cとの合計厚みを25〜50nmにすると共に、蒸着層3bの厚みをこの合計厚みの40〜90%にすることで、スパッタ層3cを形成する際のスパッタダメージを抑制するのに必要な厚みを確保して蒸着層3bを形成することができると同時に、これら蒸着層3bとスパッタ層3cの光透過率を高く維持することできるものであり、この結果、光透過率が高く、また隣接する有機発光層4への電荷注入性の高い中間層3を得ることが可能となるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の構造の一例を示すものであり、陽極1となる電極と陰極2となる電極の間に有機発光層4及び中間層3が設けてある。この有機発光層4は複数の有機発光層4a,4bからなるものであり、陽極1と陰極2の積層方向にこれらの有機発光層4a,4bを積層し、隣り合う有機発光層4a,4bの間に中間層3が介在させてある。また一方の電極(陽極1)は、透明な基板5の表面に積層するようにしてある。図1の実施の形態では、陽極1は光透過性の電極として、陰極2は光反射性の電極として形成してある。
図1に示す形態では、有機発光層4として中間層3を介して2層の有機発光層4a,4bを設けるようにしているが、中間層3を介して有機発光層4をさらに多層に積層した積層構成であってもよい。有機発光層4の積層数は特に制限されないが、層数が増大すると光学的及び電気的な素子設計の難易度が増大するので、5層以内とすることが好ましい。尚、一般的な有機エレクトロルミネッセンス素子と同様に、有機発光層4と陽極1や陰極2の間に、必要に応じてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層等を設けることができるものであり、図1ではこれらの層の図示を省略してある。また本明細書中において、有機発光層4とその両側に設けられたこれらのホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層を総称して有機層という。
本発明において、上記の中間層3は、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aと、蒸着によって形成される光透過性の金属酸化物を含有する蒸着層3bと、スパッタリングによって形成される光透過性金属酸化物のスパッタ層3cで構成されるものである。そして、隣り合う有機発光層4a,4bのうち一方、図1の例では有機発光層4aの表面に、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aを形成し、次にこの層3aの表面に光透過性の金属酸化物を含有する材料を蒸着して蒸着層3bを形成し、さらにこの蒸着層3bの表面に光透過性金属酸化物をスパッタリングしてスパッタ層3cを形成することによって、中間層3を作製することができるものである。
ここで、上記の電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aは、電荷移動錯体の層、あるいは3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層として形成されるものである。そして電荷移動錯体の層とは、一般的に電荷移動錯体系として知られ、電荷注入に寄与する物質系であればよく、例えば電子輸送材料に3.7eV以下の仕事関数を有する金属、例えばセリウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、ルビジウム、サマリウム、イットリウム等を混合することによって形成された層、電子輸送材料にこの電子輸送材料に電子を供与可能なエネルギー準位を有する有機材料または無機材料を混合して得られる層、などが挙げられる。電子輸送材料に電子を供与可能なエネルギー準位を有する有機材料または無機材料とは、例えば、一般に有機ドナーとして知られる有機材料(たとえばルテニウム錯体)、上記の仕事関数が3.7eV以下の金属、この金属を含有する金属酸化物半導体などが挙げられる。また仕事関数が3.7eV以下の金属の層とは、特に限定されないが、上記に例示したものを含む、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属の群から選ばれる金属を含有してなる層である。
またこの電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aは、電荷移動錯体あるいは仕事関数が3.7eV以下の金属の他に、他の有機化合物や無機物質、例えば、Al、Cu、Ni、Ag、Au、Tiなどの金属、LiF、LiO、NaF、CsF、SiO、SiOなどの金属ハロゲン化物や金属酸化物などを含有していてもよい。2種以上の材料を混合して成ることによって、単独では安定性が悪い材料の安定性を向上させたり、単独では膜質や隣接する層との密着性が悪い材料の成膜性を向上させたりすることが可能である。
電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aの厚みは特に限定されないが、電荷移動錯体の層である場合には、大略1〜20nm程度が好ましく、3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層である場合には、0.1〜5nm程度が好ましい。またこの電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aを形成する方法は特に限定されるものではなく、蒸着など任意の成膜方法を採用することができる。
また、上記の、光透過性の金属酸化物を含有する蒸着層3bを構成する金属酸化物としては、電荷を輸送する能力を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物であることが好ましい。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、前記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であってもよい。各金属の酸化数や、複数の金属の混合比率は、金属酸化物の膜質や熱安定性、電気的特性が好ましい範囲になるように、任意に設定することが可能である。尚、この蒸着層3bの比抵抗は、10−5Ωcm〜10Ωcmのオーダーであることが好ましい。
またこの蒸着層3bを構成する金属酸化物は、両極性光透過性導電性金属酸化物であることがより好ましい。この両極性光透過性金属酸化物とは、当該金属酸化物が電子とホールの両電荷を輸送できるものであることを意味するものであり、例えば、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、バナジウム、タンタル、ニッケル、亜鉛、スズ、ニオブの金属酸化物がそれに該当する。
光透過性の金属酸化物を含有する蒸着層3bを形成するための蒸着方法としては、抵抗加熱、EB加熱、レーザー加熱、プラズマ加熱など、任意の蒸着方法を選定することが可能である。この蒸着層3bは、上記の電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aの表面に形成されるものであり、この蒸着層3bを形成する時のエネルギーの低い蒸着法を用いて形成することによって、この蒸着層3bの金属酸化物と、電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する層3aとの混合などを抑制することができるものであり、かつ形成される中間層3の内部応力を低くすることができるものである。このため、下地となる層3aへのダメージを低減するためのバッファ層を設けたり、ダメージを低減するための成膜条件の調整を行なったりする必要性がなくなるものである。
またこの蒸着層3bには、上記の金属酸化物の他に、有機化合物や非導電性の無機絶縁物などを含有していてもよい。この無機絶縁物としては、導電性金属酸化物と混合成膜できるものであれば特に限定されないが、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウム等の金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等に代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛等の各種金属の酸化物(両極性導電性金属酸化物に含まれるものを除く)、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えばAl、MgO、酸化鉄、AlN、SiN、SiC、SiON、BN等の絶縁物となるもの、あるいはSiOやSiOなどを始めとする珪素化合物、炭素化合物などがあり、これら無機系の絶縁物から任意に選択して用いることができる。
これらの絶縁物は、可視光領域の吸収が小さく、あるいは屈折率が低いものから選択することが好ましく、この場合には蒸着層3bの光吸収率や屈折率を低下させることができ、結果として素子内部での反射や吸収が少なくなるものであり、有機発光層4で発光した光が外部に放出される際のロスを低減することができるものである。特に、導電性を有しない金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素化合物、珪素化合物のいずれかであることが、耐熱性、安定性、光学的な観点から好ましい。蒸着層3bを混合物で形成する場合には、蒸着層3b中での導電性金属酸化物とその他の物質との混合比率は、得られる蒸着層3bに求められる比抵抗に応じて任意に設定できるが、好ましくは導電性金属酸化物とその他の物質の質量比が99:1〜20:80の範囲、更に好ましくは99:1〜50:50の範囲となるようにするのがよい。このような範囲で導電性金属酸化物の含有量を調整することによって、蒸着層3bの導電性を著しく低下させない範囲で中間層3の導電率を制御することができるものである。
また、上記の、光透過性金属酸化物のスパッタ層3cを構成する光透過性金属酸化物としては、実質的に前記の蒸着層3bに用いられる材料と同じものを用いることができる。具体的には、特に限定されるものではないが、例えば、モリブデン、レニウム、タングステン、バナジウム、亜鉛、インジウム、スズ、ガリウム、チタン、アルミニウムのいずれかを含有する金属酸化物であることが好ましい。また、1種の金属のみの酸化物ではなく、例えばインジウムとスズ、インジウムと亜鉛、アルミニウムとガリウム、ガリウムと亜鉛、チタンとニオブなど、前記のいずれかの金属を含有する複数の金属の酸化物であってもよい。各金属の酸化数や、複数の金属の混合比率は、スパッタ層3cの電気的特性が好ましい範囲になるように設定することが可能である。尚、スパッタ層3cの比抵抗は、10−5Ωcm〜10Ωcmのオーダーであればよく、特に限定されるものではない。
またスパッタ層3cを構成する金属酸化物は、両極性光透過性導電性金属酸化物であることがより好ましい。両極性光透過性金属酸化物とは既述のように電子とホールの両電荷を輸送できるものであることを意味するが、例えば、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、バナジウム、タンタル、ニッケル、亜鉛、スズ、ニオブの金属酸化物がそれに該当する。
スパッタ層3cは、上記の光透過性金属酸化物の他に、スパッタリングで同時に成膜が可能な非導電性の無機絶縁物などを含有していてもよい。この無機絶縁物としては、導電性金属酸化物と混合成膜できるものであればよく、特に限定されないが、例えば、フッ化リチウムやフッ化マグネシウム等の金属フッ化物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等に代表される金属塩化物などの金属ハロゲン化物や、アルミニウム、コバルト、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、クロム、タンタル、タングステン、マンガン、モリブデン、ルテニウム、鉄、ニッケル、銅、ガリウム、亜鉛などの各種金属の酸化物(両極性導電性金属酸化物に含まれるものを除く)、窒化物、炭化物、酸化窒化物など、例えばAl、MgO、酸化鉄、AlN、SiN、SiC、SiON、BNなどの絶縁物となるもの、あるいはSiOやSiOなどをはじめとする珪素化合物、炭素化合物などがあり、これら無機系の絶縁物から任意に選択して用いることができる。
これらの絶縁物は、可視光領域の吸収が小さく、あるいは屈折率が低いものから選択することが好ましく、この場合にはスパッタ層3cの光吸収率や屈折率を低下させることができ、結果として素子内部での反射や吸収が少なくなるものであり、有機発光層4で発光した光が外部に放出される際のロスを低減することができるものである。特に、導電性を有しない金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属窒化物、金属炭化物、炭素化合物、珪素化合物のいずれかであることが、耐熱性、安定性、光学的な観点から好ましい。スパッタ層3cを混合物で形成する場合には、スパッタ層3c中での導電性金属酸化物とその他の物質との混合比率は、得られるスパッタ層3cに求められる比抵抗に応じて任意に設定できるが、好ましくは導電性金属酸化物とその他の物質の重量比が99:1〜20:80の範囲、更に好ましくは99:1〜50:50の範囲となるようにするのがよい。このような範囲内で導電性金属酸化物の含有量を調整することによって、スパッタ層3cの導電性を著しく低下させない範囲で中間層3の導電率を制御することができるものである。
スパッタ層3cを構成する主成分である金属酸化物の金属種と蒸着層3bを構成する金属酸化物の金属種には同一種のものが含まれていることが好ましい。特に金属種が両極性導電性金属酸化物である例えばモリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、バナジウム、タンタル、ニッケル、亜鉛、スズ、ニオブの金属酸化物またはこれらの金属酸化物を構成する金属を含有することが好ましい。これらの金属酸化物または金属酸化物を構成する金属は、スパッタ層3cの全体に含まれていてよいし、部分的に含まれていてもよい。またスパッタ層3cが混合量の異なる複数の層や傾斜的な混合量を有するように形成されていてもよいが、部分的に含まれる場合には、スパッタ層3cの陰極2側に形成される有機層に接する位置およびスパッタ層3cの陽極1側の金属酸化物の蒸着層3bに接する位置に含有領域があることが好ましい。混合量や混合厚みは特に限定するものではないが、一般にスパッタ層3cに対して1〜80体積%の範囲であり、特に5〜50体積%が好ましい。
この光透過性金属酸化物のスパッタ層3c形成するスパッタリングは、金属酸化物をターゲットとして行なうようにしてよく、また金属をターゲットとして酸素含有雰囲気下で、反応性スパッタリングを行ない、金属酸化物を成膜するようにしてもよい。下地となる有機層に致命的なダメージを与える方法でなければ特に限定をする必要はなく、必要な膜の特性を得るための任意の方法を任意に使用することが可能である。
またスパッタ層3cを形成するスパッタリングの工程は、酸化性気体を含有する雰囲気下で行なってもよい。酸化性気体としては酸素が使用可能である。圧力は、ターゲットの種類や成膜装置によっても異なるため特に限定されないが、Arなどの不活性ガスを含むトータルガス圧力として0.3〜3Pa程度が一般に適当である。また、この圧力に占める酸化性気体の割合は、金属酸化物のターゲットを用いる場合には0.1〜10%程度、金属ターゲットを用いる場合には5〜80%程度が適当である。このように酸化性気体を含有する雰囲気下でスパッタ成膜を行うことによって、得られるスパッタ層3cの光透過率を向上させることが可能となるものである。
上記のように光透過性の金属酸化物の層を、蒸着層3bとスパッタ層3cで形成するにあたって、本発明では、蒸着層3bの厚みとスパッタ層3cとの合計厚みを25〜50nmにすると共に、蒸着層3bの厚みをこの合計厚みの40〜90%にするようにしてある。これにより、蒸着層3bの厚みは10nm〜約45nm、スパッタ層3cの厚みは約40nm〜5nmの範囲となるが、上記の厚みの蒸着層3bは、スパッタ層3cを形成する際の下地へのスパッタリングの影響を抑制する層として、またスパッタ層3cと電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aとの混合を抑制する層として良好に機能するものであり、また上記の厚みのスパッタ層3cは、スパッタ層3cが接する有機層に電荷を注入する層として良好に機能するものである。さらに、蒸着層3bとスパッタ層3cの光透過率を高いレベルに維持することも可能となるものである。蒸着層3bの厚みが上記より薄いと、スパッタ層3cを形成する際に下地にダメージが生じるおそれがあり、またスパッタ層3cの厚みが上記より薄いと、電荷注入特性が低下することになる。
本発明において、上記の有機発光層4の材料としては、有機エレクトロルミネッセンス素子用の材料として知られる任意の材料が使用可能である。例えばアントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、ジスチリルアミン誘導体及び各種蛍光色素等、前述の材料系およびその誘導体を始めとするものが挙げられるが、これらに限定するものではない。またこれらの化合物のうちから選択される発光材料を適宜混合して用いることも好ましい。また、前記化合物に代表される蛍光発光を生じる化合物のみならず、スピン多重項からの発光を示す材料系、例えば燐光発光を生じる燐光発光材料、およびそれらからなる部位を分子内の一部に有する化合物も好適に用いることができる。またこれらの材料からなる有機発光層4は、蒸着、転写等乾式プロセスによって成膜しても良いし、スピンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビア印刷等、湿式プロセスによって成膜するものであってもよい。
また、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する他の部材である、積層された素子を保持する基板5や陽極1、陰極2等には、従来から使用されているものをそのまま使用することができる。
すなわち、上記基板5は、この基板5を通して光が出射される場合には光透過性を有するものであり、無色透明の他に、多少着色されているものであっても、すりガラス状のものであってもよい。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラスなどの透明ガラス板や、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、エポキシ等の樹脂、フッ素系樹脂等から任意の方法によって作製されたプラスチックフィルムやプラスチック板などを用いることができる。またさらに、基板5内に基板母剤と屈折率の異なる粒子、粉体、泡等を含有し、あるいは表面に形状を付与することによって、光拡散効果を有するものも使用可能である。また、基板5を通さずに光を射出させる場合、基板5は必ずしも光透過性を有するものでなくてもかまわず、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、任意の基板5を使うことができる。特に、通電時の素子の発熱による温度上昇を軽減するために、熱伝導性の高い基板5を使うこともできる。
上記陽極1は、有機発光層4中にホールを注入するための電極であり、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、あるいはこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が4eV以上のものを用いるのがよい。このような陽極1の材料としては、例えば、金などの金属、CuI、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO2、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等、PEDOT、ポリアニリン等の導電性高分子及び任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子、カーボンナノチューブなどの導電性光透過性材料を挙げることができる。陽極1は、例えば、これらの電極材料を基板5の表面に真空蒸着法やスパッタリング法、塗布等の方法により薄膜に形成することによって作製することができる。また、有機発光層4における発光を陽極1を透過させて外部に照射するためには、陽極1の光透過率を70%以上にすることが好ましい。さらに、陽極1のシート抵抗は数百Ω/□以下とすることが好ましく、特に好ましくは100Ω/□以下とするものである。ここで、陽極1の膜厚は、陽極1の光透過率、シート抵抗等の特性を上記のように制御するために、材料により異なるが、500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲に設定するのがよい。
また上記陰極2は、有機発光層4中に電子を注入するための電極であり、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物からなる電極材料を用いることが好ましく、仕事関数が5eV以下のものであることが好ましい。このような陰極2の電極材料としては、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ土類金属等、およびこれらと他の金属との合金、例えばナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、マグネシウム、マグネシウム−銀混合物、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/LiF混合物を例として挙げることができる。またアルミニウム、Al/Al23混合物なども使用可能である。さらに、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属のハロゲン化物、あるいは金属酸化物を陰極2の下地として用い、さらに金属等の導電材料を1層以上積層して用いてもよい。例えば、アルカリ金属/Alの積層、アルカリ金属のハロゲン化物/アルカリ土類金属/Alの積層、アルカリ金属の酸化物/Alの積層などが例として挙げられる。また、ITO、IZOなどに代表される透明電極を用い、陰極2側から光を取りだす構成としても良い。また陰極2の界面の有機物層にリチウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属をドープしても良い。
また上記陰極2は、例えば、これらの電極材料を真空蒸着法やスパッタリング法等の方法により、薄膜に形成することによって作製することができる。有機発光層4における発光を陽極1側から取り出す場合には、陰極2の光透過率を10%以下にすることが好ましい。また反対に、透明電極を陰極2として陰極2側から発光を取りだす場合(陽極1と陰極2の両電極から光を取り出す場合も含む)には、陰極2の光透過率を70%以上にすることが好ましい。この場合の陰極2の膜厚は、陰極2の光透過率等の特性を制御するために、材料により異なるが、通常500nm以下、好ましくは100〜200nmの範囲とするのがよい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の素子構成は、本発明の趣旨に反しない限り任意のものを用いることができる。例えば既述のように図1は、ホール注入層やホール輸送層、電子輸送層や電子注入層の記載を省略しているが、必要に応じてこれらの層を適宜設けることができる。
ホール輸送層に用いる材料は、例えばホール輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、例えば、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、アリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物などを挙げることができるが、一般に知られる任意のホール輸送材料を用いることが可能である。
また、電子輸送層に用いる材料は、電子輸送性を有する化合物の群から選定することができる。この種の化合物としては、Alq等の電子輸送性材料として知られる金属錯体や、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、テトラジン誘導体、オキサジアゾール誘導体等のヘテロ環を有する化合物などが挙げられるが、この限りではなく、一般に知られる任意の電子輸送材料を用いることが可能である。
上記のように形成される本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子にあっては、中間層3を介して複数の有機発光層4を積層して設けているので、複数層の有機発光層4が中間層3によって電気的に直列に接続された状態で発光するものであり、高輝度で発光させることができるものである。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
陽極1として、厚み110nm、幅5mm、シート抵抗約12Ω/□のITO膜が図2のパターンのように成膜された、0.7mm厚のガラス製の基板5を用意した。そしてまず、この基板5を、洗剤、イオン交換水、アセトンで各10分間超音波洗浄した後、IPA(イソプロピルアルコール)で蒸気洗浄して乾燥し、さらにUV/O処理を施した。
次に、この基板5を真空蒸着装置にセットし、1×10−4Pa以下の減圧雰囲気下で、陽極1の上に、ホール注入層として、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)と酸化モリブデン(MoO3)の共蒸着体(モル比1:1)を30nmの膜厚で蒸着した。次にこの上にホール輸送層として、α−NPDを40nmの膜厚で蒸着した。
次いで、このホール輸送層の上に、有機発光層4aとして、Alqにルブレンを7質量%共蒸着した層を40nmの膜厚で形成した。
次にこの有機発光層4aの上に、電子輸送層としてAlqを単独で30nmの厚みに成膜した。
次いで、この電子輸送層の上に蒸着して、AlとLiとのモル比1:1の合金の層3aを厚み3nmで形成し、次にこの層3aの上に、金属酸化物であるMoOを抵抗加熱蒸着によって厚み10nmに成膜して蒸着層3bを形成し、さらにMo金属ペレットを配置したIZO(インジウム亜鉛酸化物)ターゲットを用いてスパッタリングすることによって、Moを含有するIZOからなるスパッタ層3cを厚み20nmに形成した。このようにして、3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aと、光透過性金属酸化物の蒸着層3bと、光透過性金属酸化物のスパッタ層3cとを積層して形成される中間層3を作製した。
続いて中間層3の上に、ホール注入層としてNPDと酸化モリブデンの共蒸着体(モル比1:1)を10nmの膜厚で、ホール輸送層としてα−NPDを40nmの膜厚で、それぞれ蒸着した。
次いで、ホール輸送層の上に、有機発光層4bとしてAlqにルブレンを7質量%共蒸着した層を40nmの膜厚で形成した。次にこの有機発光層4bの上に電子輸送層としてAlqを単独で蒸着して30nmの膜厚に成膜した。続いて、LiFを0.5nmの膜厚で成膜した。
この後、陰極2となるアルミニウムを、0.4nm/sの蒸着速度で図2のパターンのように5mm幅、100nm厚に蒸着した。
このようにして、有機発光層4が二層構成の図2に示す構造を有する有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。尚、ホール注入層、ホール輸送層及び電子輸送層の図示は図2において省略している。
(実施例2)
Liの蒸着によって3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層3aを1nmの膜厚に形成し、抵抗加熱蒸着によってMoOを厚み10nmに成膜して蒸着層3bを形成し、スパッタリングによってITOとMoOを質量比8:2で成膜して厚み20nmのスパッタ層3cを形成することで、中間層3を作製するようにした。また中間層3の上にホール注入層を形成せず、代わりにホール輸送層としてNPDを50nmの膜厚で形成するようにした。その他は実施例1と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例3)
蒸着層3bを、EB蒸着によってITOを膜厚10nmに成膜して形成するようにした他は、実施例2と同様にして中間層3を作製した。その他は実施例2と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例4)
蒸着層3bを、EB蒸着によってITOを膜厚20nmに成膜して形成し、スパッタ層3cを、ITOとMoOを質量比8:2で厚み25nmに成膜して形成するようにした他は、実施例2と同様にして中間層3を作製した。そしてホール輸送層を30nmの膜厚のNPDで形成するようにした他は実施例2と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(実施例5)
スパッタ層3cを、ターゲットとしてITO上にMo金属ペレットを乗せたものを用い、Oの含有率40%の酸化性反応ガスの雰囲気下で、全圧1Paの条件でスパッタリングすることによって形成するようにした他は、実施例3と同様にして中間層3を作製した。その他は実施例3と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(従来例)
実施例1と同様のITO膜(陽極1)を設けたガラス製の基板5の陽極1の上に、ホール注入層として、α−NPDとMoOの共蒸着体(モル比1:1)を30nmの膜厚で蒸着し、この上にホール輸送層として、α−NPDを40nmの膜厚で蒸着した。
次いで、ホール輸送層の上に、有機発光層4としてAlqにルブレンを7質量%共蒸着した層を40nmの膜厚で形成した。
次にこの上に電子輸送層としてAlqを単独で30nm成膜し、続いて、LiFを0.5nm成膜した。
この後、陰極2となるアルミニウムを0.4nm/sの蒸着速度で5mm幅、100nm厚に蒸着することによって、有機発光層4が一層構成の有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例1)
蒸着層3bを設けず、AlとLiとのモル比1:1の合金の層3aの上に、IZOをスパッタリングして膜厚30nmのスパッタ層3cを形成することによって、中間層3を作製するようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例2)
AlとLiとのモル比1:1の合金の層3aの上に、抵抗加熱蒸着で厚み30nmにITOを成膜して蒸着層3bを形成し、スパッタ層3cを設けないようにして中間層3を作製するようにした他は、実施例1と同様にして、有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例3)
蒸着層3bを設けず、Liの金属層3aの上にAr雰囲気でスパッタリングして、ITOとMoOを質量比で8:2とした厚み30nmのスパッタ層3cを形成するようにした他は実施例2と同様にして中間層3を形成し、その他は実施例2と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
(比較例4)
Liの金属層3aの上に、EB蒸着でITOを5nmの膜厚に成膜して蒸着層3bを形成し、この蒸着膜3bの上にスパッタリングすることによってITOとMoOを質量比8:2で成膜して厚み45nmのスパッタ層3cを形成するようにした他は、実施例2と同様にして中間層3を作製するようにした。そしてホール輸送層を厚み30nmのNPDで形成するようにした他は、実施例2と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
上記のようにして得た実施例1〜5、従来例、比較例1〜4で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子に、20mA/cmの電流を通電し、その際の電圧、輝度を測定した。結果を表1に示す。
Figure 0005075027
表1にみられるように、各実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光輝度及び駆動電圧ともに、1層の有機発光層を設けた従来例の概ね2倍であり、中間層3の存在によって2層の有機発光層4a,4bの電気的接続が良好に行なわれていることが確認された。
一方、比較例1では、IZOスパッタ時のダメージに由来すると思われる、電圧の上昇と発光効率の低下がみられた。また比較例2では、駆動電圧は低いものの、蒸着層4bの低い光透過率に由来すると思われる、発光輝度の低下が見られた。また比較例3では、スパッタ時のダメージに由来すると思われる電圧の上昇と発光効率の低下がみられた。さらに比較例4では、蒸着層3bの膜厚が薄いことに由来する高電圧化及び発光輝度の低下がみられた。
本発明の実施の形態の一例における層構成を示す概略断面図である。 実施例1で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の概略構成を示すものであり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A′線断面図である。 従来例における層構成を示す概略断面図である。
符号の説明
1 陽極
2 陰極
3 中間層
3a 電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層
3b 光透過性金属酸化物の蒸着層
3c 光透過性金属酸化物のスパッタ層
4(4a,4b) 有機発光層
5 基板

Claims (4)

  1. 陽極と陰極の間に、中間層を介して積層された複数の有機発光層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記中間層を、前記有機発光層の表面に電荷移動錯体または3.7eV以下の仕事関数を有する金属の層を形成する工程と、この層の表面に光透過性の金属酸化物を含有する層を蒸着により形成する工程と、この蒸着層の表面に光透過性金属酸化物の層をスパッタリングにより形成する工程で作製し、前記蒸着層の厚みと上記のスパッタリングにより形成したスパッタ層との合計厚みを25〜50nmにすると共に、前記蒸着層の厚みをこの合計厚みの40〜90%にし、前記蒸着層が、両極性光透過性導電性金属酸化物を含有する層であり、かつ、前記スパッタ層が、前記蒸着層に含有される両極性光透過性導電性金属酸化物と同一の金属種の両極性光透過性導電性金属酸化物を含有する層であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 上記のスパッタ層を形成するスパッタリングの工程が、酸化性気体を含有する雰囲気下で金属酸化物ターゲット又は金属ターゲットをターゲットとして行うと共に前記酸化性気体の割合が、前記金属酸化物ターゲットを用いる場合には0.1〜10%、前記金属ターゲットを用いる場合には5〜80%で行われることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 前記スパッタ層は、上記のスパッタ層に含有される両極性光透過性導電性金属酸化物が傾斜的な混合量を有するように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  4. 上記のスパッタ層に含有される両極性光透過性導電性金属酸化物は、前記陽極側又は前記陰極側の少なくとも一方側に部分的に含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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