JP4964623B2 - ねじ打ち込み機 - Google Patents
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Description
このねじ打ち込み機に関する技術として従来例えば下記の特許文献に開示された技術が公知になっている。これらの特許文献に開示されているように、一般にこの種のねじ打ち込み機では、ドライバビットを備えたピストンの下動動作(ねじの打ち込み動作)がシリンダ上室へ供給される圧縮空気によりなされ、ピストンの上動動作(戻し動作)が戻し空気室からシリンダ下室に供給される圧縮空気(戻しエア)によりなされる。
戻し空気室は通常シリンダの外周側に沿って設けられており、シリンダの下部側に設けた逆止弁(リターンエアポート)を経て当該シリンダ内周側と連通されている。ピストンが下動時にこの逆止弁を通過すると、シリンダ上室からこの逆止弁を経て戻し空気室に圧縮空気が流入する。戻し空気室に流入した圧縮空気は、シリンダの下端部に設けた戻し孔を経てピストンの下面(シリンダ下室)に作用する。このため、ねじの打ち込み完了後、使用者が起動操作用のトリガレバーを解除操作してシリンダ上室への圧縮空気の供給が遮断されるとともに当該シリンダ上室が大気開放されると、ピストンが戻し孔を経てその下面側に作用する戻し空気室の圧縮空気によって上動し、上死点に戻される。
また、例えば下記の特許文献1に開示されているように、ピストンが下動端近傍に至って戻し空気室に圧縮空気が流入すると、その空気圧により開閉弁が作動してエアモータへの圧縮空気の供給経路が閉じられ、これによりピストンが下動端に至るとともにエアモータが停止されるようになっていた。
本発明は、この問題に鑑みてなされたもので、ピストンの下面(シリンダ下室)に対して戻し空気が作用するタイミングを適切に設定することにより、従来のカムアウトやねじの締め残しを確実に防止できるようにすることを目的とする。
請求項1記載のねじ打ち込み機によれば、ピストンが下死点に至ると、エアモータに圧縮空気を供給するための流路からシリンダ下室(ピストンの下面側)に圧縮空気が供給され、この圧縮空気によってピストンが上動する。このことから、従来のようにシリンダに逆止弁を設けてピストンがこの逆止弁を通過した時点でシリンダ上室の圧縮空気を戻し空気室に流入させ、この戻し空気室内の圧縮空気をピストン上動用の圧縮空気として用いる必要がなくなる。
また、エアモータ駆動用の圧縮空気がピストン上動用の圧縮空気に転用される構成であるので、エアモータの停止動作とピストンの上動動作をいずれもピストンが下死点に至った後に、両動作を従来よりも時間的に接近させて(同時)に行うことができる。このことから、ピストンの推力を十分に発揮させた後に、エアモータが停止し、またピストンが上動するため、いわゆるカムアウトやねじの締め残しを確実に防止することができる。
請求項2記載のねじ打ち込み機によれば、エアモータの停止とピストン下室への戻し空気の供給が、単一の部材である流路切り換え弁の移動によりなされるため、上記の作用効果を簡易な構成で得ることができ、また誤作動の少ない機構とすることができる。
請求項3記載のねじ打ち込み機によれば、ダンパーに流路切り換え弁としての機能を併せ持たせることができ、構成の簡略化および誤作動の防止を一層図ることができる。
請求項4記載のねじ打ち込み機によれば、ピストンの下死点を規制するダンパーが、シリンダ下室を流路に対して開閉する開閉弁として機能する。単一の部材である流路切り換え弁としてのダンパーが上動すると、ピストン下室が流路から閉じられてピストンの下動(打ち込み推力の発生)がスムーズになされる一方、エアモータへ圧縮空気が供給されて当該エアモータが回転し、これによりねじの打ち込みが確実になされる。
ねじの打ち込みが完了してピストンが下死点に至ると、ダンパーが開かれて流路がエアモータ側に対して閉じられる一方、ピストン下室に対して開放され、これによりエアモータが停止すると同時に、戻し空気が供給される。このように、ねじの打ち込みが完了した後に、エアモータが停止され、また戻し空気がピストン下室に供給されることから、いわゆるカムアウトやねじの締め残しを確実に防止することができる。
請求項5記載のねじ打ち込み機によれば、単一の流路切り換え弁としてのダンパーが圧縮空気の圧力によって上動側に付勢された状態となる。このため、別途ばね等を用いてダンパーを上動側に付勢する必要がなく、この点で構成の簡略化を図ることができる。
使用者がトリガ5を引き操作すると本体部2の先端(図1において下端)から1本のねじSがねじ打ち込み材Wに打ち込まれる。ねじ打ち込み材Wは、上材W1と下地W2の二層構造を有するもので、上材W1は例えば石膏ボードで、下地W2は木板若しくは鋼板である。
ハンドル部3の先端には、当該ねじ打ち込み機1の動力源となる圧縮空気を供給するためのエアホース6が接続されている。このエアホース6からハンドル部3の内部の蓄圧室7に圧縮空気が供給される。また、このハンドル部3の内部には、排気管8がその長手方向に沿って取り付けられている。この排気管8の一端側(排気口8a)はハンドル部3の先端部で開口されている。排気管8の他端側は、本体部2内に設けた排気室8bに連通されている。
本体部2の下部とハンドル部3の先端部との間には、多数本のねじS〜Sを並列に保持したねじ連結帯(図示省略)を収容するマガジン11と、マガジン11から引き出したねじ連結帯を本体部2側へピッチ送りするためのねじ連結帯送り機構12が装備されている。
打撃機構部20は、シリンダ21とその内部に収容されたピストン22を備えている。ピストン22は、シリンダ21内を図示上下に往復動可能に収容されている。以下、シリンダ21内部の空気室であってピストン22により気密に区画される上側の室をシリンダ上室24と言い、下側の室をシリンダ下室25と言う。
シリンダ22は、保持スリーブ27の内側に移動不能に保持されている。保持スリーブ27は、本体部2の本体ハウジング2aに対して固定されている。
ピストン22の下面中心には、ドライバビット23の上端部がその軸回りに回転可能かつ軸方向へは移動不能に結合されている。ドライバビット23は、ピストン22の下面中心から下方(ねじ打ち込み方向)に向けて長く延びて本体部2の先端部付近に至っている。
保持スリーブ27の上部外周側には、円筒形状をなすヘッドバルブ30が配置されている。このヘッドバルブ30及びその周辺の詳細が図3に示されている。図3は、図1及び図2に示す初期状態からトリガ5を引き操作し始めてヘッドバルブ30が開き始め、これによりエアモータ50が回転し始め、またダンパー26が上動した状態を示している。これらの初期位置からの動作については後述する。
このヘッドバルブ30とヘッドハウジング2bとの間には圧縮ばね31〜31が介装されている。この圧縮ばね31〜31によってヘッドバルブ30は常時下向き(閉じ側)に付勢されている。また、このヘッドバルブ30の上面側(ヘッドバルブ上室30a)には、トリガバルブ4を経て蓄圧室7の圧縮空気が作用する状態と、大気開放されて圧縮空気が作用しない状態とに切り換えられる。このヘッドバルブ上室30aの空気圧作用状態の切り換えがトリガ5の操作及びトリガバルブ4の動作によりなされる。
トリガ5の引き操作によりトリガバルブ4がオン作動すると、ヘッドバルブ上室30aの圧縮空気が排気されて大気開放される。圧縮ばね31〜31の付勢力は、ヘッドバルブ30の受圧面30eに作用する圧縮空気の圧力よりも小さくなるように設定されている。このため、トリガバルブ4がオン作動すると、ヘッドバルブ30がその受圧面30eに作用する圧縮空気圧により圧縮ばね31〜31に抗して上動する。
ヘッドバルブ30が上動すると、その下端とバルブ台座部35の上面との間が開かれ始めた初期の段階(半開きの状態)で内周側の通気室30bが外周側のヘッドバルブ下室30dに連通され、その結果通気室30b内に圧縮空気が流入する。通気室30bは、通気室32を経てエアモータ50に連通されている。このため、ヘッドバルブ30が開き始めた初期の段階で、先ずエアモータ50が回転し始める。エアモータ50の詳細については後述する。
通気室30b内に流入した圧縮空気は、ヘッドバルブ30の内周側の受圧面30fに作用するため、その後ヘッドバルブ30は一気に上動して全開される。ヘッドバルブ30が全開した状態が図7に示されている。ヘッドバルブ30が全開すると、保持スリーブ27の上部外周に装着したシールリング27aとの間に通気路が開かれて、ヘッドバルブ30の内周側の通気室30cが通気室30bに連通され、従ってこの通気室30cに圧縮空気が流入する。通気室30c内に流入した圧縮空気は、シリンダ21の上部に装着した流量切り換えバルブ40を経てシリンダ上室24内に流入する。こうしてシリンダ上室24内に圧縮空気が流入されるとピストン22が下動する。ピストン22が下動すると、ドライバビット23が一体でその軸方向に沿って下動する。
ドライバビット23が下動すると、その先端がマガジン11から供給されたねじ連結帯の1本のねじSの頭部に係合され、そのままこのねじSをねじ連結帯から外した後、ねじ打ち込み材Wに打ち込まれる。ドライバビット23の打ち込み力(ピストン22の推力)は、以下説明する流量切り換えバルブ40によりシリンダ上室24への吸気流量を切り換えることにより大小二段階に切り換えることができる。
バルブ台座部41は、すり鉢形に開いたシリンダ21の上端部に嵌め込まれ、かつ当該シリンダ21の上端部とヘッドハウジング2bとの間に気密に挟み込まれた状態で軸方向移動不能かつ軸回りに回転不能な状態に固定されている。このバルブ台座部41は、適度な弾性を有しており、ピストン22の上動端(上死点)を規制するとともに、その上動時の衝撃を吸収するダンパー(クッション体)としての機能をも有している。このバルブ台座部41には、その板厚方向に貫通する基準通気孔41a〜41aが設けられている。本実施形態では、3つの基準通気孔41a〜41aが周方向三等分位置(120°間隔)に配置されている。図12及び図15に示すように各基準通気孔41aは扇形に開口されており、その開口面積は比較的大きくなっている。
バルブ本体42は、バルブ台座部41の上面に対向するほぼ円板形状を有するもので、その上面中心には支軸部42cが一体に設けられている。この支軸部42cを介してバルブ本体42は、その軸心回りに回転可能かつ軸線方向に一定の範囲で平行移動可能な状態でヘッドハウジング2bに支持されている。支軸部42cは、ヘッドハウジング2bを貫通して、当該ヘッドハウジング2bの外面に設けた凹部2c内に突き出されている。この突き出し部分に切り換えレバー43が取り付けられている。切り換えレバー43は、支軸部42cの先端にビス45で固定されている。バルブ本体42の支軸部42c回りの位置は、この切り換えレバー43の回動操作によって外部から簡単に切り換えることができる。図10及び図13に示すように、ヘッドハウジング2bの凹部2cは、平面的に見て約60°に開く扇形に形成されている。切り換えレバー43は、この凹部2b内からほぼはみ出さない状態に収容されている。このため、切り換えレバー43は約60°の範囲で傾動操作される。切り換えレバー43を約60°だけ傾動操作することによりバルブ本体42が約60°の範囲で回転操作される。
バルブ台座部41の基準通気孔41a〜41aに対して大通気孔42a〜42aが位置合わせされた状態と、小通気孔42b〜42bが位置合わせされた状態とでは、ヘッドバルブ30の内周側の通気室30cと、シリンダ上室24との間の流路面積が大きく異なる。前者の場合よりも後者の場合の方が、流路面積は小さくなる。前者の場合は三つの大通気孔42a〜42aの合計面積(本実施形態の場合、三つの基準通気孔41a〜41aの合計面積にほぼ等しい)が流路面積となり、後者の場合は三つの小通気孔42b〜42bの合計面積が流路面積となる。
このため、前者の場合には、シリンダ上室24に流入する単位時間当たりの圧縮空気の流入量が大きくなってピストン22の推力が大きくなり、従ってねじSの打ち込み力が大きくなる。後述するようにこの場合は、下地W2が鋼板である場合(鋼板モード)に適している。
このように、本実施形態のねじ打ち込み機1は、ねじSの打ち込み力を調整するための流量切り換えバルブ40を備えている。この流量切り換えバルブ40によれば、シリンダ上室24への圧縮空気の流入量を二段階で切り換えることができ、これによりいわゆる鋼板打ちの場合と木板打ちの場合のいずれにも最適な打ち込み力で打ち込み作業を行うことができるようになっている。図10は、切り換えレバー43を鋼板打ちに適した鋼板モードに切り換えた状態を示し、図11は、切り換えレバー43を木板打ちに適した木板モードに切り換えた状態を示している。
凹部2cの底部には、切り換えレバー43を鋼板モード位置と木板モード位置にそれぞれ保持するための、位置保持凸部2d,2eが設けられている。一方、バルブ本体42はヘッドハウジング2bとの間に介装した圧縮ばね44によりバルブ台座部41に押し付けられる方向(図において下向き)に付勢されている。このため、バルブ本体42の支軸部42cに一体に取り付けたレバー43は、この圧縮ばね44の付勢力によって凹部2cの位置保持凸部2d,2eに押し付けられる方向に付勢された状態となっている。この圧縮ばね44の付勢力によってレバー43の位置保持凸部2d,2eに対する弾性係合状態が保持されて適度な移動抵抗が与えられる。この移動抵抗が与えられることにより、切り換えレバー43がそれぞれの位置に弾性的に保持されてその不用意な移動が防止されるようになっている。
これに対して、図13〜図16に示す木板モードの場合には、バルブ台座部41の三つの基準通気孔41a〜41aに対してそれぞれこれよりも十分に小さな開口面積の小通気孔42b〜42bが位置合わせされている。このため、図14に示すように各基準通気孔41aにおいて、バルブ本体42の下面がシリンダ上室24内に露出された状態となっている。この露出された部分が、ピストン上動時におけるシリンダ上室24内の圧縮空気圧を受ける受圧面42dとして作用することから、シリンダ上室24内の圧縮空気圧がバルブ本体42に作用する。この場合、シリンダ上室24内の圧縮空気圧は、バルブ本体42を圧縮ばね44に抗して上動させる方向に作用する。圧縮ばね44の付勢力は、ピストン22が上動する際におけるシリンダ上室24内の圧縮空気圧によって当該バルブ本体42が上動し得るよう適切に設定されている。
図16に示すようにバルブ本体42が圧縮ばね44に抗して上動すると、当該バルブ本体42がバルブ台座部41の上面から離間して両者間に隙間42eが発生する。この隙間42eを経てピストン上室24がバルブ本体42の三つの小通気孔42b〜42bに加えて三つの大通気孔42a〜42aとも連通される。
このように図10〜図12に示す鋼板モードの場合には、バルブ台座部41の基準通気孔41a〜41aのそれぞれに対してバルブ本体42の大通気孔42aが位置合わせされているため、ピストン下動時におけるシリンダ上室24への単位時間当たりの吸気流量が多くなって大きな打ち込み力が得られるとともに、ピストン上動時におけるシリンダ上室24からの単位時間当たりの排気量が十分な量だけ確保され、これにより高い排気効率を確保してピストン22のスムーズな上動動作を得ることができる。
これに対して、図13〜図16に示す木板モードの場合には、ピストン下動時におけるシリンダ上室24への単位時間当たりの吸気流量が絞られて木板打ちに適した弱い打ち込み力を得ることができる一方、ピストン上動時にはバルブ本体42が圧縮ばね44に抗して移動することにより、流路面積が自動的に広げられて高い排気効率が確保され、従ってこの場合にもピストン22のスムーズな上動動作が確保されるようになっている。
また、シリンダ21の上部側の周面には複数の排気孔21a〜21aが設けられている。この排気孔21a〜21aは外周側に装着したシールリング28によって一方向(吸気側)にのみ気密に塞がれている(逆止弁)。このため、ピストン上動時におけるシリンダ上室24の排気は、上記流量切り換えバルブ40の他、この排気孔21a〜21aによってもなされる。排気孔21a〜21aから排気された圧縮空気は、流量切り換えバルブ40を経た排気と同じく通気室30c内に流入し、その後排気孔30g〜30gを経て排気室30hに排気される。
ピストン下動時におけるシリンダ下室25の排気は、シリンダ21の下部側の周面に設けた複数の戻し孔21b〜21bを経てなされる。この戻し孔21b〜21bは、シリンダ21と保持スリーブ27との間で気密に区画された戻し空気室29に開口されている。後述するようにこの戻し空気室29には、ピストン22が下死点に至ってダンパー26が開かれた段階で戻し孔21b〜21bを経て通気室33から圧縮空気が流入する。この戻し空気室29内に流入した圧縮空気は、ピストン22の上動時に再び戻し孔21bを経てシリンダ下室25内に戻されて、ピストン22を上動させるための作動源として利用される。
このダンパー26は、概ね円錐台形状の本体部26bと、本体部26bの下面中心から下方に延びる支軸部26cを備えている。本体部26bの上部は、その周面が上側に至るほど小径となる向きに傾斜する円錐台形状に形成されている。この本体部26bの周面がシリンダ21の下側開口部に形成した傾斜面21cに押圧されることにより、シリンダ下室25が後述する通気室33から気密にシールされる。
このダンパー26の支軸部26cは、本体ハウジング2aに固定した第1枠体61の挿通孔61aを経て、その下側において同じく本体ハウジング2aに固定した第2枠体60の支持孔60aに軸方向移動可能な状態で挿入支持されている。この第2枠体60には、軸受け53を介して後述するエアモータ50の上側の回転軸部51が回転可能に支持されている。
このダンパー26は、図9に示すようにピストン22が下動端位置に至った際の衝撃を吸収しつつ、当該ピストン22の推力により下側に変位する。本実施形態では、この下側に変位した位置がダンパー26の初期位置とされている。後述するようにピストン22が下死点に至ってダンパー26が下側に変位することによりシリンダ下室25が通気室33に連通され、これによりシリンダ下室25に通気室33から圧縮空気が供給され、これが戻し孔21bを経て戻し空気室29内に流入する。
本体部26bの下面であって支軸部26cの周囲には、断面半円形状の凸部26dが全周にわたって設けられている。この凸部26dの下方には、上記第1枠体61の上面61bが位置している。トリガ5の引き操作により図4に示すように当該ダンパー26が上側に変位することにより、その凸部26dが第1枠体61の上面61bから離間した状態となる。この状態では、凸部26dの外周側の通気室33と、挿通孔61a内が連通された状態となる。後述するように通気室33は通気室32を経てヘッドバルブ内周側の通気室30bに連通されている。このため、ヘッドバルブ30が開かれると開き始めた初期の段階で、通気室33に圧縮空気が供給されることから、ダンパー26が初期位置から上動した状態では、蓄圧室7からエアモータ50へ圧縮空気が供給され、これによりエアモータ50が回転し始める。
これに対して、図9に示すようにダンパー26が下側に変位すると、凸部26dが第1枠体61の上面61bに押し付けられた状態となる。この状態では、上記したように通気室33とシリンダ下室25が連通された状態となる一方、通気室33が挿通孔61a、通気室34、モータ通気口52に対して気密にシールされた状態となる。後述するようにこのシール状態では蓄圧室7からエアモータ50への圧縮空気の供給が遮断された状態となってエアモータ50が停止した状態となる。
トリガ5の引き操作によりヘッドバルブ上室30aが大気開放されてヘッドバルブ30が開き始めると、ヘッドバルブ30の外周側のヘッドバルブ下室30dが内周側の通気室30bに連通され、これにより通気室30bに圧縮空気が供給される。通気室30bへの圧縮空気の供給は、ヘッドバルブ30が上動してシールリング27aとヘッドバルブ30の内周面との間に隙間が発生し、これにより当該通気室30bがヘッドバルブ内周側の通気室30cに連通される前の段階、すなわち通気室30cに圧縮空気が供給されてピストン22が下動し始める前(開き始めの初期段階)から開始される。上記したように通気室30bは、通気室32を経て通気室33に連通されているため、通気室30bに圧縮空気が流入するとこれが通気室33に流入する。通気室33に流入した圧縮空気は、下側へ変位したダンパー26を上動させる作用をする。すなわち、初期状態において、下側に位置するダンパー26の本体部26bの下面であって凸部26dの外周側に通気室33の圧縮空気が上側へ変位させる方向に作用するため、この段階で当該ダンパー26がその初期位置から上動する。ダンパー26が上動すると、シリンダ下室25と通気室33との間が気密に遮断されるとともに、通気室33が通気室34に連通される。このため、通気室30bに流入した圧縮空気が通気室34及びモータ吸気口52を経てエアモータ50に供給され、これによりエアモータ50が回転し始める。すなわち、ヘッドバルブ30が開き始めた直後から先ずエアモータ50が回転し始める。
エアモータ50の回転軸部51には、断面円形のビット挿通孔51aがその全長にわたって貫通する状態に設けられている。ドライバビット23はこのビット挿通孔51aに軸回りに相対回転可能かつ軸方向に相対移動可能な状態に挿通されている。
なお、エアモータ50自体は、従来公知のいわゆるベーンモータであるので、その構成等については詳細な説明を省略する。
エアモータ50の下側の回転軸部53は、本体ハウジング2aの先端部に取り付けた第3枠体63に軸受け54を介して回転可能に支持されている。この第3枠体63と前記第2枠体60との間にエアモータ50が構成されている。
キャリア73の中心には、ドライバビット23を挿通するための挿通孔73aがその中心軸線に沿って貫通する状態に形成されている。この挿通孔73aにドライバビット23が軸方向相対移動可能で、軸回りには相対回転不能に一体化された状態で挿通されている。
キャリア73の挿通孔73aは、断面小判形を有している。これに対してドライバビット23の軸方向下側ほぼ半分の範囲には、上記挿通孔73aの断面小判形に対応して相互に平行でそれぞれ平坦な二面幅部23a,23aが軸方向に沿った長い範囲に設けられている。当該ドライバビット23がその軸方向に移動する全範囲において挿通孔73a内に常時二面幅部23a,23aが位置するように当該二面幅部23a,23aが軸線方向に長い範囲で設けられている。このようにキャリア73の挿通孔73aに常時二面幅部23a,23aが位置していることにより、キャリヤ73に対してドライバビット23がその軸心回りの回転について一体化され、これによりキャリヤ73を経て出力されるエアモータ50の回転トルクがドライバビット23に伝達される。
このように、エアモータ50の回転出力が減速機構部70により減速されてドライバビット23に伝達されるのであり、エアモータ50及び減速機構部70が本体部2の先端部であってねじSの打ち込み部位に最も近い部位において回転トルクがドライバビット23に伝達されることから、当該ドライバビット23の捩りを極力発生することなく回転トルク(ねじ締めトルク)を効率よくねじSに付加することができる。
本体部2の下端には、円筒形の打ち込み筒部13が設けられている。この打ち込み筒部13の内周側をドライバビット23が回転しながら往復動する。この打ち込み筒部13の長手方向中途位置には、前記ねじ連結帯送り機構12が接続されている。このねじ連結帯送り機構12によりねじ連結帯が1ピッチづつ送られて打ち込み筒部13内にねじSが本体部2側の打ち込み動作に連動して1本ずつ供給される。
打ち込み筒部13の先端部には、ねじ打ち込み材Wの傷つきを防止するため弾性シート14aを取り付けたブラケット14が取り付けられている。このブラケット14を介して打ち込み筒部13がねじ打ち込み材Wに突き当てられ、この状態でねじSのねじ打ち込み材Wへの打ち込み(締め付け)がなされる。
また、ヘッドバルブ30が十分に開かれると、通気室30bを経て通気室30cに圧縮空気が供給され、これが流量切り換えバルブ40を経てシリンダ上室24内に供給され、これによりピストン22が下動する。ピストン22が下動すればドライバビット23が一体で下動する。従って、ドライバビット23は、エアモータ50によりねじ締め方向に回転しつつピストン22によりねじ打ち込み方向に下動し、これにより打ち込み筒部13内に供給された1本のねじSがドライバビット23によりねじ打ち込み材Wに打ち込まれながら締め付けられる。
ピストン22が下動する過程では、シリンダ下室25の圧縮空気の一部がドライバビット23の周囲であってダンパー26の挿通孔26a等を経て大気開放され、残余の部分が戻し孔21b〜21bを経て戻し空気室29内に流入して蓄圧されることによりピストン22がスムーズに下動する。ピストン22がスムーズに下動することによりねじSがドライバビット23によってねじ打ち込み材Wに打ち込まれる。
図9に示すようにピストン22がダンパー26に当接して下動端(下死点)に至ると、ねじSの打ち込み(締め込み)が完了する。図示するようにピストン22が下動端に至ってダンパー26に弾性的に当接することによってその衝撃が吸収される。また、ピストン22が当接すること(ピストン22の推力)によってダンパー26が下側に変位する。
ダンパー26が下側に変位すると、その本体部26bがシリンダ21の下側開口部から外れ、その結果ダンパー26と傾斜面21cとの間の全周にわたって隙間26eが発生し、この隙間26eを経てシリンダ下室25が通気室33に連通された状態となる。トリガ5を引き操作したままの状態では、通気室33には圧縮空気が供給された状態に維持されるため、この隙間26e、シリンダ下室25、戻し孔21bを経て戻し空気室29内には通気室33からピストン戻し用の十分な圧縮空気が供給される。
また、ピストン22の推力によってダンパー26が下側の初期位置に変位すると、その本体部26bの凸部26dが第1枠体61の上面に押し付けられて通気室33と通気室34との間の連通状態が遮断されるため、モータ吸気口52への圧縮空気の供給が遮断され、従ってエアモータ50の回転が自動的に停止される。このため、トリガ5を引き操作した状態のままであっても、ピストン22の下動端への到達タイミングとエアモータ50の停止タイミングが同期される(ほぼ同時に行われる)ことからねじSのねじ打ち込み材Wへの締め過ぎが防止される。
こうしてヘッドバルブ30が閉じられてシリンダ上室24への圧縮空気の供給が遮断される一方、当該シリンダ上室24が大気開放可能な状態となると、戻し空気室29内に蓄圧された圧縮空気によりピストン22が上死点まで戻される。
また、ヘッドバルブ30が閉じられた状態では、通気室33への圧縮空気の供給が遮断されていることから、ダンパー26は下側へ変位した状態(ダンパー26の初期位置)に維持される。
また、ダンパー26が下動すると、その凸部26dが第1枠体61の上面に押し付けられて通気室33と通気室34が遮断され、その結果エアモータ50への圧縮空気の供給が停止され、従ってエアモータ50が停止する。
以上のことから、ピストン22が下死点に至ってねじSの打ち込みが完了した後に、ピストン22の下面に戻し空気が作用し、かつエアモータ50が停止される。このため、従来のいわゆるカムアウトやねじSの締め残しを確実に防止することができる。
また、エアモータ50へ圧縮空気を供給するための流路である通気室33の圧縮空気をピストン上動用の戻し空気として利用する構成であるので、基本的に従来の逆止弁及び戻し空気室が不要になる。本実施形態では、戻し空気室29及び戻し孔21b〜21bが補助的に設けられている。
さらに、単一の部材であるダンパー26を流路切り換え弁として機能させる構成であることから、簡易な構成を維持しつつ確実なねじ打ち込み動作を行う(誤作動がない)ねじ打ち込み機1とすることができる。
また、別途圧縮ばねを用いてダンパー26を上動側に付勢する構成としてもよい。この場合には、凸部26を省略して、当該ダンパー26の下面側に通気室33の圧力を作用させて当該ダンパー26を初期位置から上動させる構成とする必要はなくなる。
2…本体部
2a…本体ハウジング、2b…ヘッドハウジング、2c…凹部
2d…位置保持凸部(鋼板モード用)、2e…位置保持凸部(木板モード用)
3…ハンドル部
4…トリガバルブ
5…トリガ
S…ねじ
W…ねじ打ち込み材
W1…上材(石膏ボード)
W2…下地(鋼板又は木板)
6…エアホース
7…蓄圧室
8…排気管、8a…排気口、8b…排気室
11…マガジン
12…ねじ連結帯送り機構
13…打ち込み筒部
14…ブラケット、14a…弾性シート
20…打撃機構部
21…シリンダ
21a…排気孔、21b…戻し孔、21c…傾斜面
22…ピストン
23…ドライバビット、23a…二面幅部
24…シリンダ上室
25…シリンダ下室
26…ダンパー(下死点側)
26a…挿通孔、26b…本体部、26c…支軸部、26d…凸部、26e…隙間
27…保持スリーブ、27a…シールリング
28…シールリング
29…戻し空気室
30…ヘッドバルブ
30a…ヘッドバルブ上室、30b…通気室、30c…通気室
30d…ヘッドバルブ下室、30e…受圧面(外周側)、30f…受圧面(内周側)
30g…排気孔、30h…排気室
31…圧縮ばね
32…通気室
33…通気室
34…通気室
35…バルブ台座部
40…流量切り換えバルブ
41…バルブ台座部、41a…基準通気孔
42…バルブ本体
42a…大通気孔、42b…小通気孔、42c…支軸部、42d…受圧面、42e…隙間
43…切り換えレバー
44…圧縮ばね
50…エアモータ
51…回転軸部、51a…ビット挿通孔
52…モータ通気口
53…軸受け
54…軸受け
55…回転軸部
60…第2枠体、60a…支持孔
61…第1枠体、61a…挿通孔、61b…上面
63…第3枠体
70…減速機構部
71…太陽ギヤ
72…遊星ギヤ
73…キャリア、73a…挿通孔
74…軸受け
75…インターナルギヤ
Claims (5)
- ねじ打ち込み用のドライバビットをねじ締め方向に回転させるエアモータと、前記ドライバビットをねじ打ち込み方向に移動させるピストンを備えたねじ打ち込み機であって、前記ピストンが下死点に至ると、前記エアモータを作動させる圧縮空気を供給するための通気室から前記ピストンの下面側に圧縮空気を供給して該ピストンを上動させるねじ打ち込み機。
- 請求項1記載のねじ打ち込み機であって、前記ピストンが下死点に至ると前記通気室の連通先を切り換える流路切り換え弁を備え、該流路切り換え弁の作動により前記エアモータへの圧縮空気の供給が停止されるとともに、前記ピストンの下面側に圧縮空気が供給されるねじ打ち込み機。
- 請求項2記載のねじ打ち込み機であって、前記流路切り換え弁として、前記ピストンの下死点を規制するダンパーを用いたねじ打ち込み機。
- 請求項3記載のねじ打ち込み機であって、前記ダンパーは、前記ピストンを収容するシリンダの下端部に対して前記ドライバビットの移動方向に沿って上下に移動可能に設けられており、該ダンパーが上動すると前記シリンダの下端部を気密に閉塞する一方、前記エアモータに圧縮空気を供給する通気室を該エアモータに対して開放し、
前記ピストンが下死点に至ると該ピストンの推力により下動して、前記エアモータに圧縮空気を供給する通気室を該エアモータに対して閉じる一方、該通気室を前記ピストンの下面側に開放するねじ打ち込み機。 - 請求項4記載のねじ打ち込み機であって、前記ダンパーの下面に前記通気室の圧縮空気を作用させて、該ダンパーを上動側に付勢したねじ打ち込み機。
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