JP4963014B2 - 有機ハロゲン化合物の分解方法 - Google Patents

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Description

本発明は、有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン・無害化する分解方法に関する。
有機ハロゲン化合物には、クロロベンゼン類、ポリ塩化ビフェニル(PCB)のように人体に対する毒性が高いものが多く、しかも化学的に非常に安定であるため、いったん環境中に放出されると長期間残存し、蓄積される恐れがある。そのため、廃棄物として排出される有害な有機ハロゲン化合物を無害化処理する技術の開発が進められている。
有機ハロゲン化合物の無害化処理の主な方法としては従来、焼却処理、生物処理、化学処理等が提案されている。しかし、焼却処理では1100℃以上の高温を必要とし、ハロゲン化物の分解時に発生する塩酸等の強酸による装置の腐食に対する対策を講じなければならないのに加え、ダイオキシン類等の毒性の高い化学物質が生成する危険性がある。また、微生物を用いる生物処理では、分解が完了するまでに長時間を要するという欠点がある。
これに対し、化学処理法は、短時間で、しかも比較的低温で有機ハロゲン化合物を分解できるという特徴を有する。主な化学処理法としては、水素添加法、光照射法、超臨界水法などが提案されている。水素添加法は、貴金属触媒等の存在下で水素ガスを添加して脱ハロゲン化する方法であるが、水素ガスを用いるため爆発の危険があるのに加え、触媒の活性劣化の問題もある。光照射法は、常温で分解反応が進行するという利点はあるものの、反応の効率が低いという問題があり、生成物として有害なハロゲン化合物の重合体が生成する可能性もある。超臨界水法は、水を374℃、218気圧以上の超臨界状態にして加水分解する方法であるが、高温、高圧を必要とするため安全性に問題があり、装置の大型化も困難である。
本発明者等は、先に芳香族ハロゲン化合物、又はハロゲン化脂肪族炭化水素を、2−プロパノ−ルと、触媒及びアルカリ化合物の存在下に反応させることにより、脱ハロゲン、無害化する方法を提案した。(特許文献1及び2参照)
これらの方法は、従来技術に比較して有機ハロゲン化合物を低コストで処理することができるものであるが、さらに反応時間を短縮し、低コストで効率良く有機ハロゲン化合物を処理する方法が求められていた。
特開平8−266888号公報 特開平11−226399号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、有害な有機ハロゲン化合物を温和な条件で効率よく分解する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究した結果、2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液、触媒及びアルカリを用いると、温和な条件で、かつ、短時間で有機ハロゲン化合物を分解しうること見い出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
すなわち本発明は、次の1〜4の構成を採用するものである。
1.有機ハロゲン化合物を2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液と、触媒及びアルカリ化合物の存在下に反応させて脱ハロゲン・無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解方法。
2.前記2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液の全容積を100としたとき、メタノ−ルの混合割合が0.1〜50であることを特徴とする1に記載の有機ハロゲン化合物の分解方法。
3.前記触媒が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル又はそれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種を担体に担持させたものであることを特徴とする1又は2に記載の有機ハロゲン化合物の分解方法。
4.前記アルカリ化合物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物の分解方法。
本発明によれば、安価な2−プロパノ−ルとメタノ−ルを溶媒として用いて、常圧、83℃以下という温和な条件で有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン化して無害化することができる。そのため、省エネルギ−並びにランニングコストの低減を達成することができる。本発明においては、装置を腐食させる強酸の生成もなく、また、高価で爆発の危険性がある水素ガスを使用しないので、安全に、かつ低コストで実施できる。また本発明では、容易に触媒を分離、再使用できる。
本発明において無害化処理しうる化合物は、置換基としてハロゲン原子を少なくとも1つ有する有機化合物であり、芳香族炭化水素でも脂肪族炭化水素でもよい。また、ハロゲン原子以外の置換基を有していてもよい。炭素数1〜20程度の炭化水素が好ましく、炭素数1〜12がさらに好ましい。このようなものとして具体的には、例えば、クロロベンゼン、PCB、塩素化ダイオキシン、トリクロロエチレンなどがあげられる。
次に本発明を詳細に説明する。アルカリ化合物を溶解した2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液に有機ハロゲン化合物と触媒を添加した後、例えばスタ−ラ−と攪拌子を使用して、攪拌しながら反応を行う。反応温度は室温近傍でよいが、必要に応じて反応溶液は2−プロパノ−ルの沸点(83℃)以下に加熱される。
2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液は、全容積を100としたとき、メタノ−ルの混合割合が容積で0.1〜50、特に0.1〜25であるものが好ましい。反応溶液中の有機ハロゲン化合物濃度は特に制限はないが、通常5%重量以下であり、好ましくは0.1〜1重量%である。アルカリの添加量は、有機ハロゲン化合物中のハロゲン原子とのモル比で1.0以上であればよいが、2〜10程度が好適である。アルカリ化合物は反応開始前に全量を反応溶液に溶解させておくことが望ましいが、常にアルカリ化合物が飽和濃度に近い状態になるように適宜添加してもよく、あるいは完全に溶解しない場合には固体のまま添加してもよい。触媒の添加量は特に制限はないが、1〜50g/Lが好適である。
前記分解法において、触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、ニッケル又はそれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種からなるものが使用できる。通常、触媒には上記金属成分を担体に担持したものを用いる。担体としては、シリカゲル、アルミナ等の金属酸化物や活性炭を用いることができる。上記担体のなかでは、特に大きな表面積を有する活性炭が好ましい。金属の担持量には特に制限はないが、0.1〜10重量%担持したものが好適である。
アルカリ化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができるが、特に安価でアルコ−ルに対して溶解度が高い水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。反応温度は2−プロパノ−ルの沸点である83℃を越えることはないが、室温(25℃程度)でも十分に反応が進行する。反応雰囲気には特に制限はないが、反応温度が高い場合には、安全性を考慮して窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。また、この分解反応は常圧で行うことができる。
一般に、反応時間は、有機ハロゲン化合物濃度、触媒量、反応温度に依存するが、これらの反応条件が同じ場合、本発明では、2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合溶媒を用いることにより、2−プロパノ−ルまたはメタノ−ルを単独で溶媒として用いる従来法より、反応時間を大幅に短縮することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(比較例1)
水酸化ナトリウム12mgを溶解した2−プロパノ−ル5mLを試験管に採り、パラ−クロロメトキシベンゼン8mgを加えた。さらに、触媒として活性炭上に5重量%のパラジウムを担持させたもの(Pd/C)を10mg加え、スタ−ラ−で撹拌しながら30℃で反応させた。ガスクロマトグラフ−質量分析計で反応を追跡したところ、パラ−クロロメトキシベンゼンの反応率が100%に達するのに、180分の反応時間を要した。脱塩素生成物としては、メトキシベンゼンのみが検出された。
(比較例2)
溶媒にメタノ−ルを用いた以外は、比較例1と同様にして、パラ−クロロメトキシベンゼンの脱塩素反応を行った。ガスクロマトグラフ−質量分析計で反応を追跡したところ、パラ−クロロメトキシベンゼンの反応率が100%に達するのに、180分の反応時間を要した。脱塩素生成物としては、メトキシベンゼンのみが検出された。
(実施例1)
溶媒として、2−プロパノールに代えて、混合液の全容積を100としたときメタノ−ルの混合割合が1である2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を使用した以外は、比較例1と同様にして、パラ−クロロメトキシベンゼンの脱塩素反応を行った。ガスクロマトグラフ−質量分析計で反応を追跡したところ、パラ−クロロメトキシベンゼンの反応率が100%に達するのに、20分の反応時間を要した。脱塩素生成物としては、メトキシベンゼンのみが検出された。このように、2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を用いると、比較例1及び2に比べ、反応時間を短縮することができた。
(実施例2)
溶媒として、2−プロパノールに代えて、混合液の全容積を100としたときメタノ−ルの混合割合が5である2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を使用した以外は、比較例1と同様にして、パラ−クロロメトキシベンゼンの脱塩素反応を行った。ガスクロマトグラフ−質量分析計で反応を追跡したところ、パラ−クロロメトキシベンゼンの反応率が100%に達するのに、30分の反応時間を要した。脱塩素生成物としては、メトキシベンゼンのみが検出された。このように、2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を用いると、比較例1及び2に比べ、反応時間を短縮することができた。
(実施例3)
溶媒として、2−プロパノールに代えて、混合液の全容積を100としたときメタノ−ルの混合割合が25である2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を使用した以外は、比較例1と同様にして、パラ−クロロメトキシベンゼンの脱塩素反応を行った。ガスクロマトグラフ−質量分析計で反応を追跡したところ、パラ−クロロメトキシベンゼンの反応率が100%に達するのに、60分の反応時間を要した。脱塩素生成物としては、メトキシベンゼンのみが検出された。このように、2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を用いると、比較例1及び2に比べ、反応時間を短縮することができた。
(実施例4)
溶媒として、2−プロパノールに代えて、混合液の全容積を100としたときメタノ−ルの混合割合が50である2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を使用した以外は、比較例1と同様にして、パラ−クロロメトキシベンゼンの脱塩素反応を行った。ガスクロマトグラフ−質量分析計で反応を追跡したところ、パラ−クロロメトキシベンゼンの反応率が100%に達するのに、120分の反応時間を要した。脱塩素生成物としては、メトキシベンゼンのみが検出された。このように、2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を用いると、比較例1及び2に比べ、反応時間を短縮することができた。
上記実施例1〜4及び比較例1,2における反応時間とパラ−クロロメトキシベンゼンの反応率の関係を図1に示した。
図1に見られるように、本発明では溶媒として2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液を用いることによって、2−プロパノール又はメタノールを単独で使用する場合に比較して、反応時間を大幅に短縮することができる。特に、2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液の全容積を100としたときに、メタノールの混合割合が1〜50、特に1〜25である混合液を使用した場合には、反応時間を一段と短縮することができる。
産業界では、有害な有機ハロゲン化合物が大量に用いられ、使用済みのものは廃棄されている。本発明方法によれば、このような有機ハロゲン化合物を温和な条件で効率よく脱ハロゲン・無害化することができる。
実施例1〜4及び比較例1,2における反応時間とパラ−クロロメトキシベンゼンの反応率の関係を示す図である。

Claims (3)

  1. 有機ハロゲン化合物を2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液と、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム又はそれらの酸化物から選ばれた少なくとも1種を担体に担持させた触媒及びアルカリ化合物の存在下に反応させて脱ハロゲン・無害化することを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解方法。
  2. 前記2−プロパノ−ル・メタノ−ル混合液の全容積を100としたとき、メタノ−ルの混合割合が0.1〜50であることを特徴とする請求項1記載の有機ハロゲン化合物の分解方法。
  3. 前記アルカリ化合物が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2記載の有機ハロゲン化合物の分解方法。
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