JP3969632B2 - 含ハロゲン有機化合物の分解処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境汚染物質である含ハロゲン有機化合物の分解処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境汚染物質である含ハロゲン有機化合物、例えばトリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、フロン、PCB、ダイオキシン類などの分解は、焼却処理の他、化学的な処理法が提案されている。化学的処理方法としては、含ハロゲン有機化合物に水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を加えて脱ハロゲン処理する方法が知られており、特開2001−104511号公報等において開示されている。この方法においては、イソプロピルアルコール等のアルカリを溶解させる高極性の溶媒の共存が必須であるため、処理する溶液量が非常に大きくなる。また脱ハロゲン処理により生成するハロゲン化水素等とアルカリとの中和反応により水が生成するため、反応終了後は溶媒に不溶な触媒を分離し、さらに生成した塩、水および有機物ならびに溶媒を分離する必要がある。
【0003】
一方、特開平9−194401号公報および特開2001−114704号公報には、多塩素化芳香族化合物を金属触媒および水素ガスにより水素化脱塩素して分解処理する方法が開示されており、その際生成する塩化水素ガスは苛性ソーダ水溶液に吸収させて塩化ナトリウムとして回収している。このように、反応系中でハロゲン化水素等を中和しない処理法においても、発生する有毒なハロゲン化水素ガスを別途中和処理する必要があり、それに伴い中和設備および中和により生じた排水の処理設備が必要となる。PCB類の分解処理においては、その環境基準が非常に厳しく、排水中に含まれるPCB類の濃度を環境基準以下にする排水処理設備は規模が大きくなる。また、反応の進行と共に、発生したハロゲン化水素等が触媒を被毒し、含ハロゲン有機化合物の分解効率が処理量に伴って著しく低下するという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、環境適応性および経済性を鑑み、中和処理および排水処理の不要化による立地面積および設備建設コストの低減、さらに触媒の活性低下抑制による分解率の向上および触媒コストの低減を同時に解決する、含ハロゲン有機化合物の効率的な分解処理方法を提供する事を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の手段により上記課題を解決した。
(1)含ハロゲン有機化合物を担体に担持させた金属触媒および水素ガスの存在下で水素化脱ハロゲン処理する際に、反応系に該金属触媒を担持させない活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤を分散状態で共存させることを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
【0006】
(2)担体に担持させた金属触媒と該金属触媒を担持させない活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤とを分散混合状態で充填した層を有する流通式固定床反応器中に水素ガスの存在下で含ハロゲン有機化合物を流通させて水素化脱ハロゲン処理することを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
【0007】
(3)含ハロゲン有機化合物を導入した回分式反応器中に、担体に担持させた金属触媒と該金属触媒を担持させない活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤とを分散混合状態で存在させ、水素ガスの存在下で水素化脱ハロゲン処理することを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
【0008】
(4)金属触媒として、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムおよびニッケルの少なくとも1種を含有する触媒を用いることを特徴とする上記の含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の分解処理方法の処理対象は、一般の含ハロゲン有機化合物であり、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどの脂肪族系炭化水素のハロゲン化物、クロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン等のベンゼン類のハロゲン化物、PCB等のビフェニルのハロゲン化物、ダイオキシン類、フロン類などが挙げられる。特に好ましくはハロゲン化炭化水素化合物である。
【0011】
本発明においては、上記の含ハロゲン有機化合物を単独あるいは溶剤等との混合物のいずれの状態においても、金属触媒および水素ガスの存在下でハロゲン除去剤を共存させることにより分解が可能である。上記溶剤としては、触媒を被毒しないものであり、飽和脂肪族、不飽和脂肪族または芳香族の炭化水素、あるいはそれらの混合物がよく、炭素−炭素不飽和結合の水素化の進行による水素の消費および水素化熱の発生を抑制するという観点から、飽和炭化水素が好ましい。
【0012】
担体に担持された金属触媒としては、水素化脱ハロゲン能を有するものであれば特に制限されないが、担体に貴金属を担持させたものが好ましい。貴金属としては一般的な水素化触媒に含まれることが多いパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムまたはニッケル等が好ましい。担体としては活性炭、アルミナ、ゼオライト等が使用できるが、ハロゲン化水素に対する耐久性があるものが好ましい。貴金属の担体に対する担持率は特に制限はないが、調製上の技術的な観点から0.5〜5%が好ましい。
【0013】
ここで、水素化脱ハロゲン能とは、含ハロゲン有機化合物のすべてまたは一部をハロゲン化水素とハロゲンを含まない化合物に分解する能力をいう。ハロゲンを含まない化合物としては、含ハロゲン有機化合物のハロゲン元素が水素元素に置換した化合物および炭素−炭素二重結合に水素が付加した化合物が含まれる。
【0014】
ハロゲン除去剤としては、ハロゲン除去能を有する、活性炭あるいはアルミナ、ジルコニア、チタニア、カルシア、ナトリシア等の金属酸化物、あるいはそれらの2種以上の混合物を用いる。ここで、ハロゲン除去能とは、水素化脱ハロゲン処理で生じたハロゲン化水素等のハロゲン含有化合物を固定化して除去する能力のことをいう。ハロゲン除去剤の形状に特に制限はないが、有効表面積の観点から直径10mm以下、流通式で用いる場合は圧力損失の低減という観点から直径1mm以上が好ましい。
【0015】
本発明においては、上記の金属触媒およびハロゲン除去剤を共存させて分解反応を行う。特に、金属触媒とハロゲン除去剤を分散混合させることにより、触媒活性を高めることが可能であり、触媒寿命を延ばすことができるので好ましい。
【0016】
反応形式としては、固定床流通式または回分式のいずれでもよい。固定床流通式反応においては、金属触媒とハロゲン除去剤が分散混合状態で充填された層と、さらにハロゲン除去剤の層を設けてもよい。
【0017】
ここで、ハロゲン除去剤を共存させた場合の作用について説明する。
例えば、金属を活性炭に担持させた金属触媒だけを用いた場合、水素化脱ハロゲン反応により生成したハロゲン化水素が金属を被毒するため、水素化脱ハロゲン反応の活性が低下する。また、担体である活性炭もハロゲン化水素を固定化するため、ハロゲン化水素により被毒し、それにより触媒活性も低下する。ここで、金属を担持していない活性炭をハロゲン除去剤として反応系に共存させることにより、金属触媒中の金属および活性炭へのハロゲン化水素の被毒を抑制し、触媒の水素化脱ハロゲン反応の活性低下を抑制することが可能となる。さらに、処理する含ハロゲン有機化合物により、金属触媒中の金属と担体の最適な組み合わせの選択が可能となり、また、最適なハロゲン除去剤を独立に選択することが可能となる。以上の効果は、本発明において使用されるいずれの金属触媒およびハロゲン除去剤においても同様に期待されるものである。
【0018】
上記金属触媒とハロゲン除去剤を分散混合する際に、ハロゲン除去剤の量に特に制限はないが、金属触媒の重量の0.1〜100倍が好ましく、ハロゲン化水素の除去効率の観点から1〜100倍がより好ましく、ハロゲン除去剤の効率的な使用という観点から1〜10倍がより好ましい。これは流通式および回分式のいずれの場合であっても同様である。
【0019】
反応温度は特に制限されないが、通常20〜300℃の範囲であり、触媒寿命の観点から20〜200℃が好ましく、反応活性の観点から50〜200℃が好ましい。これは流通式および回分式のいずれの場合であっても同様である。
【0020】
反応圧力は特に制限されないが、通常は常圧〜3.5MPaであり、反応活性の観点から、0.1〜1.0MPaが好ましい。これは流通式および回分式のいずれの場合であっても同様である。
【0021】
水素の流通量は特に制限されないが、処理液1gあたり30〜500mL/分が好ましく、反応活性の観点から50〜200mL/分がより好ましい。これは流通式および回分式のいずれの場合であっても同様である。
【0022】
また、固定床流通式反応において、含ハロゲン有機化合物の触媒層中の流通速度は特に制限されないが、WHSVで0.01〜40程度が好ましく、反応活性および含ハロゲン有機化合物の処理速度の観点から0.1〜20程度がより好ましい。ここで、WHSVとは1時間に流通させる液体の重量を、充填された触媒の重量で割ったものである。
【0023】
【実施例】
以下に本発明を実施例にて説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
<実施例1>
パラジウムを0.5%担持させた活性炭2gと活性アルミナ2gを分散混合させた触媒層をもつ固定床触媒流通式反応装置に、炭素数12から14の直鎖状炭化水素を含む溶剤に1,3,5−トリクロロベンゼンを約2000ppm溶かした溶液を40g/hで導入し、同時に水素ガスを200mL/分で導入し、系内を約0.5MPaに維持した。触媒層の温度を130℃に設定し反応装置から排出された処理後の溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、99.9%以上のクロロベンゼンが水素化脱塩素化され、ベンゼンとシクロヘキサンが生成していた。99.9%以上の1,3,5−トリクロロベンゼンの分解率は、1,3,5−トリクロロベンゼン溶液の処理量が3000mLを超えるまで低下しなかった。
【0025】
<実施例2>
パラジウムを5%担持させた活性炭2gと活性アルミナ2gを混合し、オートクレーブに導入した。このオートクレーブにクロロベンゼンを0.1%含有する炭素数12から14の直鎖状炭化水素溶液を加え、水素ガスを1.0MPa充填した。反応器温度を100℃に上げ、2時間反応させたところ、ガスクロマトグラフィーによる分析で99.9%以上のクロロベンゼンがシクロヘキサンおよびベンゼンになっていることがわかった。
【0026】
<比較例1>
パラジウムを0.5%担持させた活性炭2gを触媒層にもつ固定床触媒流通式反応装置に、炭素数12から14の直鎖状飽和炭化水素を含む溶剤に1,3,5−トリクロロベンゼンを約2000ppm溶かした溶液を40g/hで導入し、同時に水素ガスを200mL/分で導入し、系内を約0.5MPaに維持した。触媒層の温度を130℃に設定し反応装置から排出された溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、99.9%以上の1,3,5−トリクロロベンゼンが水素化脱塩素化され、ベンゼンとシクロヘキサンが生成していた。99.9%以上の1,3,5−トリクロロベンゼンの分解率は、1,3,5−トリクロロベンゼン溶液の処理量が300mLを超えると急激に低下した。
【0027】
<比較例2>
パラジウムを0.25%担持させた活性炭4gを触媒層にもつ固定床触媒流通式反応装置に、炭素数12から14の直鎖状飽和炭化水素を含む溶剤に1,3,5−トリクロロベンゼンを約2000ppm溶かした溶液を40g/hで導入し、同時に水素ガスを200mL/分で導入し、系内を約0.5MPaに維持した。触媒層の温度を130℃に設定し反応装置から排出された溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、99.9%以上の1,3,5−トリクロロベンゼンが水素化脱塩素化され、ベンゼンとシクロヘキサンが生成していた。99.9%以上の1,3,5−トリクロロベンゼンの分解率は、1,3,5−トリクロロベンゼン溶液の処理量が500mLを超えると急激に低下した。
【0028】
<比較例3>
パラジウムを5%担持させた活性炭2gをオートクレーブに導入し、クロロベンゼンを0.1%含有する炭素数12から14の直鎖状炭化水素溶液を加え、水素ガスを1.0MPa充填した。反応器温度を100℃に上げ、2時間反応させたところ、ガスクロマトグラフィーによる分析で92.5%のクロロベンゼンがシクロヘキサンおよびベンゼンになっていることがわかった。さらに2時間、同条件で反応させたがクロロベンゼンの添加率は95%を上回らなかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒の長寿命化が可能となり、触媒コストの低減および触媒交換の処理作業にかかる労力の低減につながり、より効率的に環境汚染物質の分解処理を行うことができる。また、アルカリを使用しないため、中和に伴う煩雑な処理や排水処理等が不要であり、分解処理の簡略化、立地面積および設備建設コストの低減が可能となる。
Claims (4)
- 含ハロゲン有機化合物を担体に担持させた金属触媒および水素ガスの存在下で水素化脱ハロゲン処理する際に、反応系に該金属触媒を担持させない活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤を分散状態で共存させることを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
- 担体に担持させた金属触媒と該金属触媒を担持させない活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤とを分散混合状態で充填した層を有する流通式固定床反応器中に水素ガスの存在下で含ハロゲン有機化合物を流通させて水素化脱ハロゲン処理することを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
- 含ハロゲン有機化合物を導入した回分式反応器中に、担体に担持させた金属触媒と該金属触媒を担持させない活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤とを分散混合状態で存在させ、水素ガスの存在下で水素化脱ハロゲン処理することを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
- 金属触媒として、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムおよびニッケルの少なくとも1種を含有する触媒を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
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