JP3969633B2 - 含ハロゲン有機化合物の分解処理方法 - Google Patents

含ハロゲン有機化合物の分解処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境汚染物質である含ハロゲン有機化合物の分解処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
環境汚染物質である含ハロゲン有機化合物、例えばトリクロロエチレン、トリクロロベンゼン、フロン、PCB、ダイオキシン類などの分解は、焼却処理の他、化学的な処理法が提案されている。化学的処理方法としては、含ハロゲン有機化合物に水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を加えて脱ハロゲン処理する方法が知られており、特開2001−104511号公報等において開示されている。この方法においては、イソプロピルアルコール等のアルカリを溶解させる高極性の溶媒の共存が必須であるため、処理する溶液量が非常に大きくなる。また脱ハロゲン処理により生成するハロゲン化水素等とアルカリとの中和反応により水が生成するため、反応終了後は溶媒に不溶な触媒を分離し、さらに生成した塩、水および有機物ならびに溶媒を分離する必要がある。
【0003】
一方、特開平9−194401号公報および特開2001−114704号公報には、多塩素化芳香族化合物を金属触媒および水素ガスにより水素化脱塩素して分解処理する方法が開示されており、その際生成する塩化水素ガスは苛性ソーダ水溶液に吸収させて塩化ナトリウムとして回収している。このように、反応系中でハロゲン化水素等を中和しない処理法においても、発生する有毒なハロゲン化水素ガスを別途中和処理をする必要があり、それに伴い中和設備および中和により生じた排水の処理設備が必要となる。PCB類の分解処理においては、その環境基準が非常に厳しく、排水中に含まれるPCB類の濃度を環境基準以下にする排水処理設備は規模が大きくなる。また、反応の進行と共に、発生したハロゲン化水素等が触媒を被毒し、含ハロゲン有機化合物の分解効率が処理量に伴って著しく低下するという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、環境適応性および経済性に鑑み、中和処理および排水処理の不要化による立地面積および設備建設コストの低減、さらに触媒の活性低下抑制による分解率の向上および触媒コストの低減を同時に解決する、含ハロゲン有機化合物の効率的な分解処理方法を提供する事を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の手段により上記課題を解決した。
(1)含ハロゲン有機化合物を液相で水素ガスの存在下に金属触媒層を流通させて水素化脱ハロゲン処理した後、活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤層を流通させることを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
【0006】
(2) 金属触媒層とハロゲン除去剤層とを交互に各々複数層設けることを特徴とする上記の含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
【0007】
(3)金属触媒として、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムおよびニッケルの少なくとも1種を含有する触媒を用いることを特徴とする(1)または(2)に記載の含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の分解処理方法の処理対象は、一般の含ハロゲン有機化合物であり、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレンなどの脂肪族系炭化水素のハロゲン化物、クロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン等のベンゼン類のハロゲン化物、PCB等のビフェニルのハロゲン化物、ダイオキシン類、フロン類などが挙げられる。特に好ましいのはハロゲン化炭化水素化合物である。
【0010】
本発明においては、上記の含ハロゲン有機化合物を単独あるいは溶剤等との混合物のいずれであっても処理が可能である。上記溶剤としては、触媒を被毒しないものであり、飽和脂肪族、不飽和脂肪族または芳香族の炭化水素、あるいはそれらの混合物がよく、炭素−炭素不飽和結合の水素化の進行による水素の消費および水素化熱の発生を抑制するという観点から、飽和炭化水素が好ましい。
【0011】
金属触媒としては、水素化脱ハロゲン能を有するものであれば特に制限されないが、担体に貴金属を担持させたものが好ましい。貴金属としては一般的な水素化触媒に含まれることが多いパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムまたはニッケル等が好ましい。担体としては活性炭、アルミナ、ゼオライト等が使用できるが、ハロゲン化水素に対する耐久性があるものが好ましい。貴金属の担体に対する担持率は特に制限はないが、調製上の技術的な観点から0.5〜5%が好ましい。
【0012】
ここで、水素化脱ハロゲン能とは、含ハロゲン有機化合物のすべてまたは一部をハロゲン化水素とハロゲンを含まない化合物に分解する能力をいう。ハロゲンを含まない化合物としては、含ハロゲン有機化合物のハロゲン元素が水素元素に置換した化合物および炭素−炭素二重結合に水素が付加した化合物が含まれる。
【0013】
ハロゲン除去剤としては、ハロゲン除去能を有する活炭あるいはアルミナ、ジルコニア、チタニア、カルシア、ナトリシア等の金属酸化物、あるいはそれらの2種以上の混合物を用いる。ここで、ハロゲン除去能とは水素化脱ハロゲン処理で生じたハロゲン化水素等のハロゲン含有化合物を固定化して除去する能力のことをいう。ハロゲン除去剤の形状に特に制限はないが、有効表面積の観点から直径10mm以下、圧力損失の低減という観点から直径1mm以上が好ましい。
【0014】
本発明においては、含ハロゲン有機化合物を液相で水素ガスの存在下に上記の金属触媒層を通過させたのちハロゲン除去剤層を通過させる。金属触媒層では、含ハロゲン有機化合物のすべてまたは一部がハロゲン化水素とハロゲンを含まない炭化水素化合物とに分解される。これらの生成物は、水素と共に後段のハロゲン除去剤層を通過し、この際、主にハロゲン化水素が除去される。
【0015】
さらに金属触媒層とハロゲン除去剤層を繰り返し設けることにより、効率的に水素化脱ハロゲン反応を進行させることができる。水素化脱ハロゲン反応は金属触媒の総量に依存するが、同一量の金属触媒を用いた場合でも、金属触媒を複数層に分けて各金属触媒層の下流にハロゲン除去剤層を設けることで、各金属触媒層から生成したハロゲン化水素は次の段の金属触媒層中へ導入されることはなく、ハロゲン化水素による金属触媒の被毒は著しく小さくなる。
【0016】
金属触媒層とハロゲン除去剤層の組み合わせの繰り返し数は特に制限されないが、含ハロゲン有機化合物の分解効率の観点から2〜10が好ましく、さらには2〜5がより好ましい。
【0017】
金属触媒層とハロゲン除去剤層は同一の反応容器中に層状に設けてもよいが、別々の反応容器に設けてもよい。またこれらの組み合わせを繰り返し設ける場合、同一の反応容器中において交互に積層させてもよいし、別々の反応容器により交互に設けてもよい。
【0018】
金属触媒とハロゲン除去剤の全重量比は特に制限されないが、ハロゲン化水素の除去効率の観点から、ハロゲン除去剤を金属触媒に対して0.1〜100質量倍とするのが好ましく、より好ましくは1〜100質量倍、さらに好ましくは1〜10質量倍である。また、金属触媒層とハロゲン除去剤層の組み合わせを繰り返し設ける場合に、その中の任意の一組についても、前記と同様な重量比とするのが好ましい。
【0019】
反応温度は特に制限されないが、通常20〜300℃の範囲であり、触媒寿命の観点から20〜200℃が好ましく、反応活性の観点から50〜200℃が好ましい。
【0020】
反応圧力は特に制限されないが、通常は常圧〜3.5MPaであり、反応活性の観点から、0.1〜1.0MPaが好ましい。
【0021】
水素量は特に制限されないが、処理液1gあたり30〜500mL/分が好ましく、反応活性の観点から50〜200mL/分がより好ましい。
【0022】
また、含ハロゲン有機化合物の触媒層中の流通速度は特に制限されないが、WHSVで0.01〜40程度が好ましく、反応活性および含ハロゲン有機化合物の処理速度の観点から0.1〜20程度がより好ましい。ここで、WHSVとは1時間に流通させる液体の重量を、充填された触媒の重量で割ったものである。
【0023】
【実施例】
以下に本発明を実施例にて説明するが、実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0024】
<実施例1>
触媒層としてパラジウムを0.5%担持させた活性炭1gを使用し、ハロゲン除去剤層としてアルミナ1gを使用し、流れ方向に向かって触媒層/ハロゲン除去剤層/触媒層/ハロゲン除去剤層の順に交互に積層した固定床触媒流通式反応装置に、炭素数12から14の直鎖状飽和炭化水素を含む溶剤にクロロベンゼンを約2000ppm溶かした溶液を40g/hで導入し、同時に水素ガスを200mL/分で導入し、系内を約0.5MPaに維持した。触媒層の温度を130℃に設定し反応装置から流出する溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、99.9%以上のクロロベンゼンが水素化脱塩素化され、ベンゼンとシクロヘキサンが生成していた。99.9%以上のクロロベンゼンの分解率は、クロロベンゼン溶液の処理量が3000mLを超えるまで低下しなかった。
排出される液体に水を加え抽出し、水層のpHを測定したところ中性であり、生成した塩化水素はすべて除去されていることがわかった。また排出されるガスを水中にバブリングし、その水のpHを測定したところ中性となり、ガス中に含まれていた塩化水素も除去されていることが確認された。
【0025】
<比較例1>
触媒層としてパラジウムを0.5%担持させた活性炭1gを使用し、ハロゲン除去剤層としてアルミナ1gを使用し、流れ方向に向かって触媒層/ハロゲン除去剤層の順に積層した固定床触媒流通式反応装置に、炭素数12から14の直鎖状飽和炭化水素を含む溶剤にクロロベンゼンを約2000ppm溶かした溶液を40g/hで導入し、同時に水素ガスを200mL/分で導入し、系内を約0.5MPaに維持した。触媒層の温度を130℃に設定し反応装置から流出する溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、99.9%以上のクロロベンゼンが水素化脱塩素化され、ベンゼンとシクロヘキサンが生成していた。99.9%以上のクロロベンゼンの分解率は、クロロベンゼン溶液の処理量が300mLを超えると急激に低下した。
排出される液体に水を加え抽出し、水層のpHを測定したところ中性であり、生成した塩化水素はすべて除去されていることがわかった。また排出されるガスを水中にバブリングし、その水のpHを測定したところ中性となり、ガス中に含まれていた塩化水素も除去されていることが確認された。
【0026】
<比較例2>
パラジウムを0.5%担持させた活性炭1gを触媒層にもつ固定床触媒流通式反応装置に、炭素数12から14の直鎖状飽和炭化水素を含む溶剤にクロロベンゼンを約2000ppm溶かした溶液を40g/hで導入し、同時に水素ガスを200mL/分で導入し、系内を約0.5MPaに維持した。触媒層の温度を130℃に設定し反応装置から流出する溶液をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、99.9%以上のクロロベンゼンが水素化脱塩素化され、ベンゼンとシクロヘキサンが生成していた。99.9%以上のクロロベンゼンの分解率は、クロロベンゼン溶液の処理量が300mLを超えると低下した。
排出される液体に水を加え抽出し、水層のpHを測定したところ、pH=4.2となり、塩化水素が排出されていることが確認された。また排出されるガスを水中にバブリングし、その水のpHを測定したところpH=3.6となり、ガス中にも塩化水素が含まれていることが確認された。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒の長寿命化が可能となり、触媒コストの低減および触媒交換の処理作業にかかる労力の低減につながり、より効率的に環境汚染物質の分解処理を行うことができる。また、アルカリを使用しないため、中和に伴う煩雑な処理や排水処理等が不要であり、分解処理の簡略化、立地面積および設備建設コストの低減が可能となる。

Claims (3)

  1. 含ハロゲン有機化合物を液相で水素ガスの存在下に金属触媒層を流通させて水素化脱ハロゲン処理した後、活性炭あるいは金属酸化物の少なくとも1種からなるハロゲン除去剤層を流通させることを特徴とする含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
  2. 金属触媒層とハロゲン除去剤層とを交互に各々複数層設けることを特徴とする請求項1に記載の含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
  3. 金属触媒として、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウムおよびニッケルの少なくとも1種を含有する触媒を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の含ハロゲン有機化合物の分解処理方法。
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