JP4961762B2 - 酸性付着物除去剤及び酸性付着物の除去方法 - Google Patents

酸性付着物除去剤及び酸性付着物の除去方法 Download PDF

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Description

本発明は酸性付着物除去剤及び酸性付着物の除去方法、特にボイラ等の燃焼装置に付着する酸性付着物の除去に適した酸性付着物除去剤及び酸性付着物の除去方法に関する。
重油、残渣油、石炭などの燃料を燃焼させると、燃料に含有される硫黄が燃焼し、二酸化硫黄(SO)が生成する。さらに二酸化硫黄は一部酸化されて三酸化硫黄(SO)となり、これが燃焼排ガス中の水分と反応し硫酸(HSO)を生成する。したがってボイラの燃焼炉から煙突の間に設置される装置又は配管には、硫酸のような燃料由来の酸性成分と未燃灰などを含む混合物が付着しやすい。特に燃焼排ガスの温度が下がり、硫酸の露点以下になる温度領域での付着は顕著となる。装置又は配管等の洗浄は、安定な運転の維持に欠くことができない。
従来、工業用水を用いて設備等の酸性付着物を洗い流す洗浄手法が一般的に採用されていた。しかし、酸性付着物を水で洗浄すると、酸性成分が水に溶解して酸性水溶液が生成し、バルブや熱交換器、除塵設備等の燃焼炉から煙突の間に配置される機器に使用される金属製部分において、腐食が発生し、設備寿命や安定した運転を継続する上で大きな問題となる。
そこで、腐食を発生させることなく酸性付着物を効果的に洗浄する手法として、炭酸水素ナトリウムを使用し、中和反応を利用して洗浄する手法が見出され実用化されている(特許文献1)。
特開2001−348689号公報
しかしながら、特許文献1の方法でも、機器に使用される金属製部分の腐食を充分に防止しつつ洗浄することは困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、腐食を防止しつつ、酸性付着物を効果的に除去できる酸性付着物除去剤及び酸性付着物の除去方法を提供することを課題とする。
上記の課題を達成するために本発明者が検討した結果、ボイラの燃焼炉から煙突の間に設置された装置の洗浄を実施する際、洗浄液中に含まれるアルカリ成分の量が、被洗浄物に付着している酸性成分の量より少ない時期ないし領域が存在することが判明した。
特に、炭酸水素ナトリウムの水溶液を噴霧して洗浄する場合、その洗浄初期において、洗浄液中に含まれるアルカリ成分の量が、被洗浄物に付着している酸性成分の量より少ない時期が存在すること、また、ヒーティングエレメント(蓄熱要素部品)を有する蓄熱再生式回転型の熱交換器のように、複雑な形状の装置等では、狭隘部の洗浄液が置換しにくく、ある程度洗浄を継続した段階でも、洗浄液中に含まれるアルカリ成分の量が、被洗浄物に付着している酸性成分の量より少ない領域が存在することが分かった。
このように、洗浄液中に含まれるアルカリ成分の量が、被洗浄物に付着している酸性成分の量より少ない時期ないし領域では、洗浄液の水素イオン濃度(pH:ピーエイチ)が酸性領域となり、鉄系材質で構成される装置や機器は腐食環境にさらされることとなる。したがって、さらなる防錆対策を要することが判明した。
本発明者らは、さらに検討を進め、従来アルカリ性領域で使用されていた防錆剤であるケイ酸アルカリ金属塩が、上記のような酸性条件下でも、防錆効果を発揮することを見いだした。
すなわち、本発明は以下の構成を採用した。
[1]硫黄化合物を含有する酸性付着物の除去剤であって、アルカリ金属の炭酸塩及び/またはアルカリ金属の炭酸水素塩と、ケイ酸アルカリ金属塩とからなり、前記アルカリ金属の炭酸塩及び/またはアルカリ金属の炭酸水素塩に占める炭酸水素ナトリウムの割合が90質量%以上であることを特徴とする酸性付着物除去剤。
[2]前記ケイ酸アルカリ金属塩がケイ酸ナトリウムである[1]に記載の酸性付着物除去剤。
[3]全質量に対するケイ酸アルカリ金属塩の割合が、無水ケイ酸アルカリ金属塩換算で、0.4〜20質量%である[1]または[2]に記載の酸性付着物除去剤。
[4]水中に[1]〜[3]のいずれか一項に記載の酸性付着物除去剤と水からなる洗浄液を、硫黄化合物を含有する酸性付着物が付着した被洗浄物に噴霧することを特徴とする酸性付着物の除去方法。
[5]前記洗浄液のpHが6.5〜9.5である[4]に記載の酸性付着物の除去方法。
[6]前記洗浄液中のアルカリ金属の炭酸塩及び/またはアルカリ金属の炭酸水素塩の含有率が、3〜50質量%である[5]に記載の酸性付着物の除去方法。
[7]前記洗浄液中のケイ酸アルカリ金属塩の含有率が、無水ケイ酸アルカリ金属塩換算で0.04〜1質量%である[5]または[6]に記載の酸性付着物の除去方法。
[8]前記被洗浄物がボイラの燃焼炉から煙突までの間に配置された装置または配管である[5]〜[7]のいずれか一項に記載の酸性付着物の除去方法。
[9]前記ボイラの燃焼炉から煙突までの間に配置された装置又は配管が熱交換器または電気集塵機である[5]〜[8]のいずれか一項に記載の酸性付着物の除去方法。
本発明の酸性付着物除去剤及び酸性付着物の除去方法によれば、腐食を防止しつつ、酸性付着物を効果的に除去できる。
[酸性付着物除去剤]
本発明の酸性付着物除去剤は、アルカリ金属の炭酸塩及び/またはアルカリ金属の炭酸水素塩(以下総称して「アルカリ金属炭酸塩類」という。)と、ケイ酸アルカリ金属塩とを含有する。
アルカリ金属炭酸塩類は、酸性付着物と反応して、二酸化炭素ガスを発生し、発泡するので、酸性付着物を発泡の機械的作用により剥離しながら溶解する。酸性付着物中の鉄錆、粉塵及び煤等も同時に剥離して除去する。二酸化炭素の発泡により、洗浄効果が上がり、洗浄時間の短縮ができる。被洗浄物の形状が複雑で洗浄しにくいものであっても短時間に洗浄できる。
本発明におけるアルカリ金属炭酸塩類としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩、またはこれらの混合物が挙げられる。
このうち、炭酸水素塩は水に溶解させたときのpH値が低く弱アルカリ性であることから水質汚濁防止法に定められている水素イオン濃度の規制値を超えず、かつ、作業者が安全に取り扱うことができるので特に好ましい。また、炭酸水素塩は、アルカリ金属の炭酸塩に比べ、物質単位質量あたりの発生可能な二酸化炭素の量が多いので発泡による洗浄効果が高く好ましい。
炭酸水素塩の中でも特に、炭酸水素ナトリウムが好ましい。物質単位質量あたりの発生可能な二酸化炭素の量が炭酸水素カリウムよりも多いからである。
したがって、本発明におけるアルカリ金属炭酸塩類は、炭酸水素ナトリウムを主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは、全アルカリ金属炭酸塩類中に占める割合が50質量%以上であることをいう。本発明におけるアルカリ金属炭酸塩類は、炭酸水素ナトリウムの占める割合が、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
アルカリ金属炭酸塩類が、炭酸水素ナトリウムを主成分とすることにより、発泡による高い洗浄効果が得られる。また、炭酸水素ナトリウムは飽和濃度となってもpHが8.5を越えることがないので、洗浄液のpH値が高くなりすぎず、作業安全上かつ環境保全上好ましい。
本発明におけるケイ酸アルカリ金属塩としては、メタケイ酸アルカリ金属塩(MSiO、ただしMはアルカリ金属、以下同じ。)、オルトケイ酸アルカリ金属塩(MSiO)、二ケイ酸水素アルカリ金属塩(MHSi)、四ケイ酸アルカリ金属塩(MSiO)、またはこれらの混合物が挙げられる。
ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸ナトリウムが安価であることから好ましい。ケイ酸ナトリウムとしては、2NaO・SiO、3NaO・2SiO、NaO・SiO、NaO・2SiO、NaO・SiO・5HO、NaSiO・9HO、NaSiO・8HO、NaSiO・6HO、NaSiO・5HO、Na・13SiO・11HO等が挙げられる。このうち、メタケイ酸ナトリウム(NaSiO)が、アルカリ分(NaO分)の含有率が中庸で取り扱いやすく、かつ一般に安価に入手可能であり好ましい。
ケイ酸アルカリ金属塩は、無水和物から多水和物まで存在するが、無水和物や水和している水が少ないものは、使用の際、水への溶解速度が遅い傾向がある。一方、水和している水が多いほど、湿り気が多くアルカリ金属の炭酸塩またはアルカリ金属の炭酸水素塩と混合させにくい傾向がある。
メタケイ酸ナトリウム9水和物(NaSiO・9HO)が、若干湿り気はあるものの取扱い上の問題が少なく、かつ安価に入手可能であるため好ましい。
本発明の酸性付着物除去剤の全質量に対するケイ酸アルカリ金属塩の割合は、無水ケイ酸アルカリ金属塩換算で、0.4〜20質量%であることが好ましく、0.8〜10質量%であることがより好ましい。0.4質量%以上とすることにより、防錆効果が発現しやすい。また、20質量%以下とすることにより、アルカリ金属炭酸塩類が不足して酸性付着物の洗浄効果が低下することを防止できる。
本発明の酸性付着物除去剤は、アルカリ金属炭酸塩類とケイ酸アルカリ金属塩とが紙袋やフレキシブルコンテナーバックなどの一包装単位に共に充填されたものであっても、別個に包装されてセットとして取り扱われるものであってもよい。ただし、取り扱いの便宜上、両者が一包装単位に共に充填されたものが好ましい。
また、両者を一包装単位に共に充填する場合、両者は混合されていても混合されていなくてもよい。ただし、包装単位内での存在に偏りがあると、混合物を水に溶解させる際に溶け残りを生じたりする場合があるので、できるだけ均一に混合させることが好ましい。
アルカリ金属炭酸塩類とケイ酸アルカリ金属塩の混合の方法には特に限定はなく、V型混合器、リボンミキサー、遊星スクリュー型混合器など通常一般に工業的に使用される種々の混合機器を用いてよい。
混合の際の混合器への投入の順番には特に限定はなく、アルカリ金属炭酸塩類、ケイ酸アルカリ金属塩のいずれを先に混合器へ投入しても、同時に投入してもよい。
[洗浄液]
本発明の酸性付着物除去剤は、水に含有させて洗浄液として使用する。酸性付着物除去剤は水に含有させて、溶解された状態でも、一部溶解せずに、分散したスラリーの状態でもよいが、溶解された状態が特に好ましい。水としては、工業用水、水道水、井戸水等を適宜使用できる。海水は装置や配管の腐食の要因である塩化物イオンを含むので適当ではない。
本発明の洗浄液中のアルカリ金属炭酸塩類の含有率は、3〜50質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。アルカリ金属炭酸塩類の含有率を3質量%以上とすることにより、使用する水の量及び排水量が過大となることを防止できる。50質量%以下とすることにより、洗浄液中に未溶解のアルカリ金属炭酸塩類の割合を少なくでき、アルカリ金属炭酸塩類の固体が沈降して、例えば薬液槽などの底や配管中に滞留し、アルカリ金属炭酸塩類が洗浄に有効に利用されなくなることを回避できる。また、洗浄液中に未溶解のアルカリ金属炭酸塩類を存在させることで、排水量を少なくすることができる。アルカリ金属炭酸塩類が炭酸水素ナトリウムである場合は、3〜16質量%であることがより好ましく、5〜10質量%であることがさらに好ましい。
本発明の洗浄液中のケイ酸アルカリ金属塩の含有率は、良好な防錆効果と洗浄力とを両立させる観点から、無水ケイ酸アルカリ金属塩換算で、0.04〜1.0質量%であることが好ましく、0.08〜0.8質量%であることがより好ましい。0.04質量%以上であることにより、防錆効果が発現しやすいので好ましい。一方、1.0質量%より多くしなくても充分な防錆効果が得られるので、1.0質量%以下であることが好ましい。
洗浄液は、塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物の含有量が0.1質量%以下であることが好ましい。アルカリ金属塩化物の含有量を0.1質量%以下とすることにより、塩素イオンが装置や配管のステンレス鋼等を腐食させ、応力割れを起こす危険性を低減できる。アルカリ金属塩化物の含有量は、0.05質量%以下が特に好ましく、さらには0.01質量%以下であることがより好ましい。
洗浄液は、アルカリ金属炭酸塩類の水溶液にケイ酸アルカリ金属塩を添加して調製してもよいが、アルカリ金属炭酸塩類とケイ酸アルカリ金属塩を同時に水に含有させたほうが洗浄現場での調製作業の手間がかからず洗浄作業時間が短く済むため好ましい。特に、アルカリ金属炭酸塩類とケイ酸アルカリ金属塩とを予め充分に混合してから水に混合させることが、均一な溶解性又は分散性を確保する上で好ましい。
洗浄液の調製時の温度は80℃以下が好ましく60℃以下がより好ましい。また、洗浄液の調製時の温度は5℃以上が好ましく15℃以上がより好ましい。調製時の温度が低いほど安全に作業できる。また、調製時の温度が高いほど溶解しやすい。
洗浄に使用する際の洗浄液の温度は80℃以下が好ましく60℃以下がより好ましい。また、洗浄に使用する際の洗浄液の温度は5℃以上が好ましく15℃以上がより好ましい。洗浄に使用する際の温度が低いほど安全に作業できる。また、洗浄に使用する際の温度が高いほど洗浄効果が高い。
洗浄液は経時変化しにくいため、調製した水溶液又はスラリーの状態で保管しても構わない。
洗浄液を循環して洗浄に使用すると、組成が徐々に変化する。洗浄液の組成が洗浄に適切な範囲を保っているかどうかは、洗浄液のpHにより評価することができる。洗浄液のpHは、6.5〜9.5であることが好ましく、6.9〜9.0であることがより好ましく、6.9〜8.5であることが特に好ましい。
pHが6.5未満の場合、除去した酸性付着物との反応により、アルカリ金属炭酸塩類が不足していることが推定される。この場合、高濃度のアルカリ金属炭酸塩類の水溶液及び/または、粉末状のアルカリ金属炭酸塩類を添加することが好ましい。
pHが9.5を越える場合、被洗浄物がアルカリにより侵食される場合がある。特に、被洗浄物がほうろうコーティングされている場合はアルカリにより侵食されやすい。この場合、洗浄液中に水を添加することが好ましい。
循環使用する洗浄液には、ケイ酸アルカリ金属塩の粉末、又は水溶液を適宜添加することが好ましい。また、定期的に、洗浄液全体を交換することが好ましい。
[酸性付着物と被洗浄物]
本発明における酸性付着物は、アルカリ金属炭酸塩類で除去可能な酸性の付着物であれば特に限定はないが、硫黄化合物を含む酸性付着物であることが好ましい。
本発明は、燃焼排ガスに由来する酸性付着物に好適に適用できる。燃焼排ガスとしては、ボイラや焼却炉等の燃焼炉から発生する排ガスが挙げられる。特に、ボイラの燃焼排ガスに由来する酸性付着物に好適に適用できる。
ボイラ等の燃焼排ガスに由来する酸性付着物に含有されている硫黄化合物としては、硫酸または硫酸塩がある。すなわち、酸性付着物は未燃カーボンのほか、燃料に含まれる硫黄由来の硫酸(HSO)、硫酸水素アンモニウム(別名:酸性硫安、(NH)HSO)などを含み、水に溶解すると強酸性を示すものである。
本発明の被洗浄物としては、ボイラや焼却炉等の燃焼炉から発生する排ガスが接触する装置や配管等が挙げられる。本発明は、特に、ボイラの燃焼炉から煙突までの間に配置された装置(その構成部品を含む。)または配管が被洗浄物である場合に好適に適用できる。
ボイラの燃焼炉から煙突までの間に配設された装置としては、ガスエアヒーター(GAH)、ガスガスヒーター(GGH)、排ガス熱回収器(例、SO凝縮器)、節炭器等の熱交換器、電機集塵機(EP)、排煙脱硫装置、排煙脱硝装置等が挙げられる。
中でも、熱交換器、特に蓄熱再生式回転型のガスエアヒーター又はガスガスヒーターが被洗浄物である場合は、ヒーティングエレメント(蓄熱要素部品)の形状が複雑であること、低温部が鉄系材質(ほうろう用鋼板)にエナメルコーティングされているか鉄系耐食鋼であること、高温部に鉄系耐食鋼もしくはマイルドスチール(SS400)が使用されている例が多いこと、等から、本発明の効果が顕著である。
また、電機集塵機は、設備から取り外して洗浄液中に浸漬して洗浄することができない。そのため、噴霧による洗浄しかできないため、本発明の被洗浄物として適している。
[酸性付着物の除去]
蓄熱再生式回転型熱交換器から酸性付着物する場合を例にとり、本発明の酸性付着物の除去方法について説明する。図1は、本発明の酸性付着物の除去方法を実施する設備の概略構成図である。
図1の設備は、蓄熱再生式回転型熱交換器のヒーティングエレメント1に対して、上方から洗浄液を噴霧する複数のノズル2、2・・・と、下方から洗浄液を噴霧する複数のノズル3、3・・・と、洗浄液が貯留される洗浄液槽5と、洗浄液槽5の洗浄液を上記ノズルに循環供給する循環ポンプ6と、酸性付着物除去剤を溶解して洗浄液槽5に供給する薬剤溶解槽7とから、概略構成されている。
循環ポンプ6は、一端が洗浄液槽5に挿入された主配管11に設けられている。主配管11の他端は、ノズル2、2・・・に洗浄液を供給する上側配管12とノズル3、3・・・に洗浄液を供給する下側配管13の双方の上流側に接続している。また、洗浄後の洗浄液を回収して洗浄液槽5に戻す戻り配管14が設けられている。さらに、工業用水を供給する水供給管15が、上側配管12と下側配管13の双方の上流側に接続している。薬剤溶解槽7には撹拌装置17が設けられている。また、薬剤溶解槽7から溶解液を洗浄液槽5に供給する溶解液供給管18が設けられている。
図1の設備でヒーティングエレメント1を洗浄するには、まず、薬剤溶解槽7で酸性付着物除去剤を溶解し、これを洗浄液槽5に供給する。そして、洗浄液槽5の洗浄液を循環ポンプ6により、ノズル2、2・・・及びノズル3、3・・・から噴霧する。噴霧の水圧は、0.1〜20MPaとすることが好ましい。0.1MPa以上とすることにより高い洗浄効果が得られる。一方、20MPa以下とすることによりヒーティングエレメント1を傷めにくくなる。なお、噴霧する洗浄液には、未溶解の酸性付着物除去剤成分が含まれていてもよい。
洗浄後の洗浄液は、戻り配管14により洗浄液槽5に戻され循環使用される。循環を繰り返すと、除去した酸性付着物の溶解等により組成が変化してpHが低下するので、適宜洗浄液の組成調整を行う。具体的には、pHが所定の基準値(例えばpH6.5)より低下した場合、薬剤溶解槽7から高濃度のアルカリ金属炭酸塩類の水溶液又は高濃度の酸性付着物除去剤の水溶液を洗浄液槽5に供給する。また、定期的に、洗浄液槽5の洗浄液全体を交換する。
洗浄液で洗浄した後は、循環ポンプ6による洗浄液の噴霧を中止し、代わりに工業用水をノズル2、2・・・及びノズル3、3・・・から噴霧し、水洗浄を行う。水洗浄は、洗浄後の水のpHが6.0〜8.0になるまで行う。洗浄後の水のpHが6.0未満では、酸性付着物が残留している可能性が高く、pHが8.0超であると、アルカリ金属炭酸塩類が残留している場合がある。洗浄後の水のpHは6.5〜7.5となることが特に好ましい。
なお、水洗浄は必須ではなく、アルカリ金属炭酸塩類が残留した状態のまま洗浄を終了してもよい。
[洗浄液1]
純水949gに、旭硝子株式会社製・炭酸水素ナトリウム(NaHCO、商品名:サンファイブパワー)の50g、洞海化学工業株式会社製・メタケイ酸ナトリウム9水和物(NaSiO・9HO)の1.0g(NaSiO換算、0.43g)を溶解し洗浄液1を調製した。
[試験液1]
洗浄液1に硫酸水素アンモニウムを加え、洗浄初期や、被洗浄物の狭隘部分において、洗浄液中の中和に供するアルカリ金属炭酸塩類が消耗して酸性(pH約1.55)となった状況に相当する試験液1を調製した。
具体的には、洗浄液1の1,000gに、関東化学株式会社製・硫酸水素アンモニウム(酸性硫安:(NH)HSO)の85gを加えて溶解した。
[洗浄液2]
純水948gに、旭硝子株式会社製・炭酸水素ナトリウム(NaHCO、商品名:サンファイブパワー)の50g、洞海化学工業株式会社製・メタケイ酸ナトリウム9水和物(NaSiO・9HO)の2.0g(NaSiO換算、0.86g)を溶解し洗浄液2を調製した。
[試験液2]
洗浄液2に硫酸水素アンモニウムを加え、洗浄初期や、被洗浄物の狭隘部分において、洗浄液中の中和に供するアルカリ金属炭酸塩類が消耗して酸性(pH約1.55)となった状況に相当する試験液2を調製した。
具体的には、洗浄液2の1,000gに、関東化学株式会社製・硫酸水素アンモニウム(酸性硫安:(NH)HSO)の89gを加えて溶解した。
[洗浄液3]
純水945gに、旭硝子株式会社製・炭酸水素ナトリウム(NaHCO、商品名:サンファイブパワー)の50g、洞海化学工業株式会社製・メタケイ酸ナトリウム9水和物(NaSiO・9HO)の5.0g(NaSiO換算、2.15g)を溶解し洗浄液3を調製した。
[試験液3]
洗浄液3に硫酸水素アンモニウムを加え、洗浄初期や、被洗浄物の狭隘部分において、洗浄液中の中和に供するアルカリ金属炭酸塩類が消耗して酸性(pH約1.55)となった状況に相当する試験液3を調製した。
具体的には、洗浄液3の1,000gに、関東化学株式会社製・硫酸水素アンモニウム(酸性硫安:(NH)HSO)の96gを加えて溶解した。
[洗浄液4]
純水950gに、旭硝子株式会社製・炭酸水素ナトリウム(NaHCO、商品名:サンファイブパワー)の50gを溶解し洗浄液4を調製した。
[試験液4]
洗浄液4に硫酸水素アンモニウムを加え、洗浄初期や、被洗浄物の狭隘部分において、洗浄液中の中和に供するアルカリ金属炭酸塩類が消耗して酸性となった状況(pH約1.55)に相当する試験液4を調製した。
具体的には、洗浄液4の1,000gに、関東化学株式会社製・硫酸水素アンモニウム(酸性硫安:(NH)HSO)の84gを加えて溶解した。
[洗浄液5]
純水を洗浄液5とした。
[試験液5]
洗浄液5に硫酸水素アンモニウムを加え、工業用水のみを洗浄に使用した際の状況(pH約1.55)に相当する試験液5を調製した。
具体的には、洗浄液5の1,000gに、関東化学株式会社製・硫酸水素アンモニウム(酸性硫安:(NH)HSO)の15gを加えて溶解した。
[試験片の作成]
縦30mm、横14.65mm、厚み1.65mmのマイルドスチール(SS400)鋼板に、直径3.5mmの孔を2つ設け、アセトンで脱脂したもの(総表面積:10.52dm)を試験片とした。
[防錆効果の測定]
各試験液(22℃)の1Lを、溶出試験機(富山産業株式会社製:NTR−VS6P)のビーカーに充填した。あらかじめ質量を計測した試験片全体を通電性のない糸で吊るし、充填した試験液中に試験片全体を浸し、200(rpm)の回転数で回転する攪拌羽根により攪拌した。試験液の液温を22℃に保ったまま、この状態を2時間継続した。その後試験片を取り出して錆の部分を磨き落とした際の試験片の質量を計測し、試験液への浸漬前後の質量差を求めた。なお、攪拌羽は、日本薬局方一般試験法溶出試験法第2法(パドル法)で規定されているものを使用した。
[腐食量の計算]
以下の式により、各試験液について腐食量を求めた。結果を表1に示す。
腐食量[mg/(dm・day)]
=浸漬前後の試験片の質量差[mg]÷試験片の表面積[dm]÷浸漬時間[day]
=浸漬前後の試験片の質量差[mg]÷10.52[dm]÷2/24[day]
[防錆率の計算]
以下の式により、試験液1〜4について防錆率を求めた。結果を表1に示す。
試験液1の防錆率[%]
={試験液1への浸漬前後の試験片の質量差[mg]
−試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]}
÷試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]×100
試験液2の防錆率[%]
={試験液2への浸漬前後の試験片の質量差[mg]
−試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]}
÷試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]×100
試験液3の防錆率[%]
={試験液3への浸漬前後の試験片の質量差[mg]
−試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]}
÷試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]×100
試験液4の防錆率[%]
={試験液3への浸漬前後の試験片の質量差[mg]
−試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]}
÷試験液5への浸漬前後の試験片の質量差[mg]×100
Figure 0004961762
以上の結果より、洗浄初期や、被洗浄物の狭隘部分において、洗浄液中の中和に供するアルカリ金属炭酸塩類が消耗して酸性となった状況に相当する低いpHであっても、ケイ酸アルカリ金属塩が、腐食抑制効果を発揮することが分かった。
本発明の酸性付着物の除去方法を実施する設備の概略構成図である。
符号の説明
1…ヒーティングエレメント、2、3…ノズル、5…洗浄液槽、6…循環ポンプ、
7…薬剤溶解槽

Claims (9)

  1. 硫黄化合物を含有する酸性付着物の除去剤であって、アルカリ金属の炭酸塩及び/またはアルカリ金属の炭酸水素塩と、ケイ酸アルカリ金属塩とからなり、前記アルカリ金属の炭酸塩及び/またはアルカリ金属の炭酸水素塩に占める炭酸水素ナトリウムの割合が90質量%以上であることを特徴とする酸性付着物除去剤。
  2. 前記ケイ酸アルカリ金属塩がケイ酸ナトリウムである請求項1に記載の酸性付着物除去剤。
  3. 全質量に対するケイ酸アルカリ金属塩の割合が、無水ケイ酸アルカリ金属塩換算で、0.4〜20質量%である請求項1または2に記載の酸性付着物除去剤。
  4. 水中に請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸性付着物除去剤と水からなる洗浄液を、硫黄化合物を含有する酸性付着物が付着した被洗浄物に噴霧することを特徴とする酸性付着物の除去方法。
  5. 前記洗浄液のpHが6.5〜9.5である請求項4に記載の酸性付着物の除去方法。
  6. 前記洗浄液中のアルカリ金属の炭酸塩及び/またはアルカリ金属の炭酸水素塩の含有率が、3〜50質量%である請求項5に記載の酸性付着物の除去方法。
  7. 前記洗浄液中のケイ酸アルカリ金属塩の含有率が、無水ケイ酸アルカリ金属塩換算で0.04〜1質量%である請求項5または6に記載の酸性付着物の除去方法。
  8. 前記被洗浄物がボイラの燃焼炉から煙突までの間に配置された装置または配管である請求項5〜7のいずれか一項に記載の酸性付着物の除去方法。
  9. 前記ボイラの燃焼炉から煙突までの間に配置された装置又は配管が熱交換器または電気集塵機である請求項5〜8のいずれか一項に記載の酸性付着物の除去方法。
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