JP7483203B2 - 空気予熱器の洗浄方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ボイラ排ガスの余熱を利用して燃焼用空気を予熱する空気予熱器の洗浄方法に関する。
発電所のボイラ設備は、燃焼効率を高めるための空気予熱器(AH:エアヒーター)を備えている。空気予熱器は、ボイラ排ガスの余熱を利用して燃焼用空気を予熱する熱交換装置であり、発電所では回転再生式の空気予熱器が多く用いられる。回転再生式空気予熱器は、蓄熱体であるエレメントを回転させ、ボイラ排ガスの余熱を利用してエレメントを加熱し、加熱したエレメントに燃焼用空気を流通させることで燃焼用空気を予熱する。
ボイラ排ガスには、燃料中の灰分、未燃分、SO等が含まれ、これがエレメントに付着するため洗浄し、この付着物を除去する必要が生じる。発電所では、通常、発電設備の定期点検時にエレメントの洗浄が行われる。エレメントの洗浄は、薬剤を含む洗浄水を高温側・低温側に交互に複数回注水し、その後に無薬注水洗することが一般的である。
空気予熱器のエレメントの洗浄については、付着物の性状を解析し、それに応じた洗浄方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法は、空気予熱器に付着している付着物を解析し、バインダーがアルミニウムミョウバンであることを見出し、15℃以上100℃以下の温水で洗浄する方法である。
特開2009-168357号公報
空気予熱器の洗浄を行うと洗浄排水が発生するためこの排水の処理が必要となる。発電所に設置される空気予熱器の洗浄に伴い発生する排水量は、薬注水洗に伴うものだけで1500~2000tonであり非常に多い。発電所の発電設備の定期点検時には空気予熱器の洗浄排水の他に、他の設備・装置からも排水が発生するため排水処理が課題の1つとなっている。
空気予熱器の洗浄に関しては、これまでに腐食を防ぐための薬剤、洗浄性能に優れる薬剤及び洗浄方法、さらには洗浄装置に関して多くの提案がなされているが、洗浄に伴い発生する排水については特に考慮はなされていない。また空気予熱器の洗浄方法は、空気予熱器の運転期間、運転方法、さらには発電設備の運転状態等に応じた洗浄方法を採用することが好ましいが、この点に関してもこれまでに十分な検討は行われていない。
本発明の目的は、発電設備の状況に応じ発電設備に好適な空気予熱器の洗浄方法を提供することである。
本発明は、第1洗浄方法又は第2洗浄方法のいずれか1方が択一的に選択され実行される空気予熱器の洗浄方法であって、前記第1洗浄方法は、薬注水洗工程前記薬注水洗工程に引き続き実施される無薬注水洗工程、及び前記無薬注水洗工程完了後に実施される乾燥工程を備え、前記無薬注水洗工程は、洗浄排水のpHが5.0以上となった時点で完了し、前記第2洗浄方法は、無薬注水洗工程、及び前記無薬注水洗工程完了後に実施される乾燥工程を備え、前記無薬注水洗工程は、予め設定された洗浄時間・洗浄回数が実行された時点で完了し、前記第1洗浄方法及び前記第2洗浄方法の前記乾燥工程は、押込通風機から送られる燃焼用空気を加熱器で加熱し、この乾燥用空気を空気予熱器に送ることで行われることを特徴とする空気予熱器の洗浄方法である。
本発明の空気予熱器の洗浄方法において、前記第2洗浄方法は、前記空気予熱器を備える発電設備の保管工事時に選択されることを特徴とする。
本発明の空気予熱器の洗浄方法において、前記空気予熱器が、回転再生式空気予熱器であることを特徴とする。
本発明によれば、発電設備の状況に応じ発電設備に好適な空気予熱器の洗浄方法を提供することができる。
本発明の第1実施形態の空気予熱器の洗浄手順を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態の空気予熱器の洗浄方法を適用する空気予熱器1の構造を説明するための図である。
図1は、本発明の第1実施形態の空気予熱器の洗浄手順を示すフローチャートである。本発明の第1実施形態の空気予熱器の洗浄手順の説明に先立ち、図2を用いて、第1実施形態の空気予熱器の洗浄方法を適用する空気予熱器1の構造を説明する。
図2(A)は、発電設備の通風系統の概念図である。空気予熱器(AH:エアヒーター)1は、押込通風機(FDF)103を介して送られる燃焼用空気を、ボイラ101から排出される燃焼ガスの余熱を利用して予熱する装置である。
空気系統には、押込通風機(FDF)103と空気予熱器(AH)1との間に水蒸気式空気加熱器(SAH)105が設置されている。排ガス系統には、ボイラ101と空気予熱器(AH)1との間に脱硝装置107が設置され、空気予熱器(AH)1の下流側に脱硝通風機(DNF)109、電気集塵機(EP)111が設置されている。このほか発電設備の通風系統には、ガス再循環通風機(GRF)113、ガス混合通風機(GMF)115が含まれる。
図2(B)に示すように空気予熱器(AH)1は、ガスが流通可能な蓄熱体であるエレメント9を充填した複数のバケット11を円形に配置し形成されるロータ3を有し、ロータ3は、ロータ3を覆うように設けられたロータハウジング13内に収納されている。ロータ3は、中心部にロータ3を回転させるためのロータ軸15を有し、ロータ駆動装置31を介して所定の速度で回転する。
ロータ3の前面側にはロータ3の断面を上下に2分するように、ロータ3と所定の間隔を有する状態で低温側セクタープレート21が、同様に背面側にはロータ3の断面を上下に2分するように、ロータ3と所定の間隔を有する状態で高温側セクタープレート23が、ロータハウジング13に固定されている。ロータハウジング13の前面部は、低温側コネクチングダクト25と接続し、背面部は、高温側コネクチングダクト27と接続する。これらによりロータ3を上下に2分割する2つのガス流路28、29が形成される。
上側のガス流路28にはボイラ101から排出される燃焼ガスがロータ3の背面部側からロータ3の前面部側に流通する。一方、下側のガス流路29にはボイラ101へ送る燃焼用空気がロータ3の前面部側からロータ3の背面部側に流通する。燃焼ガスで加熱されたエレメント9は、ロータ3の回転に伴い下方で燃焼用空気と接触し、燃焼用空気を加熱する。このような空気予熱器(AH)1では、ロータ3の前面部側が背面部側に比較して温度が低いためロータ3の前面部側が低温側、ロータ3の背面部側が高温側となる。
次に、図1及び図2を用いて本発明の第1実施形態の空気予熱器の洗浄方法を説明する。本発明の第1実施形態の空気予熱器の洗浄方法は、第1洗浄方法及び第2洗浄方法を含み、いずれか一方が択一的に選択され実施される。本実施形態では、空気予熱器(AH)1の洗浄が、当該空気予熱器(AH)1を有する発電設備の保管工事に伴うものであれば、第2洗浄方法が選択実行され、当該空気予熱器(AH)1を有する発電設備の保管工事に伴うものでなければ第1洗浄方法が選択実行される(ステップS1)。
空気予熱器(AH)1は、エレメント9に燃料中の灰分、未燃分、SO等が付着・蓄積し、エレメント9に詰まりが発生するとドラフト差圧が上昇する。第1洗浄方法は、このようなエレメント9の詰まりによるドラフト差圧の上昇を予防すべくなされるものであり、主に発電設備の定期点検時に実施される。
第1洗浄方法は、薬剤を使用した薬注水洗工程(ステップS2)と薬剤を含まない水を使用した無薬注水洗工程(ステップS3)とを含む。
ステップS2の薬注水洗工程では、薬剤を含む水(薬注洗浄水)を用いてエレメント9を洗浄する。薬注水洗は、空気予熱器(AH)1に設置されている洗浄ノズル(図示を省略)から薬注洗浄水を噴射することで行う。
薬注水洗工程で使用する薬注洗浄水は、特に限定されるものではなく従来から空気予熱器(AH)1のエレメント9の洗浄に使用されているものを使用することができる。エレメント9の付着物には、SO等が含まるためエレメント9は強酸状態にある。よって従来より薬注洗浄水にはアルカリ性の洗浄水がよく使用されている。薬注洗浄水としては、アルカリ金属の炭酸水素塩及びキレート化合物を含む洗浄水、酸腐食抑制剤を含む薬注洗浄水が挙げられる。
薬注洗浄水の温度も特に限定されるものではなく、従来から空気予熱器(AH)1のエレメント9の洗浄で実施されている温度とすることができる。薬注洗浄水の温度を例示すれば15~100℃、好ましくは40℃~100℃である。薬注水洗工程の洗浄時間も特に限定されるものではないが、火力発電所で使用される空気予熱器であれば、高温側/低温側をそれぞれ交互に2回程度、時間にして高温側/低温側をそれぞれ2時間程度薬注水洗すればよい。
ステップS3の無薬注水洗工程では、薬剤を含まない水(無薬注洗浄水)を用いて、薬注水洗工程後のエレメメント9を洗浄する。無薬注水洗は、空気予熱器(AH)1に設置されている洗浄ノズル(図示を省略)から無薬注洗浄水を噴射することで行う。無薬注水洗工程の終点は、洗浄排水のpHが5.0以上となった時点である(ステップS4)。
無薬注洗浄水の温度も特に限定されるものではなく、40℃~100℃の温水を好適に使用することができる。無薬注水洗工程の終点は、洗浄排水のpHが5.0以上となった時点であるが、火力発電所で使用される空気予熱器であれば、高温側/低温側をそれぞれ交互に3回程度、時間にして高温側/低温側をそれぞれ3時間程度無薬注水洗すればよい。
ステップS2の薬注水洗工程及びステップS3、ステップS4の無薬注水洗工程を実施した後、空気予熱器(AH)1を放置しておくことは好ましくない。洗浄操作で除去しきれなかった付着物、さらには残存する洗浄水により、エレメント9が腐食する恐れがある。このため無薬注水洗工程後には、空気予熱器(AH)1を乾燥させることが重要である。本実施形態では、無薬注水洗工程完了後、乾燥操作(ステップS6,ステップS7)を実施する。この乾燥操作は、無薬注水洗完了後直ちに行うのがよい。
空気予熱器(AH)1の乾燥操作は、空気予熱器(AH)1を起動した状態で、水蒸気式空気加熱器(SAH)105を介して押込通風機(FDF)103から送られる燃焼用空気を加熱し、この乾燥用空気を空気予熱器(AH)1に送ることで実施できる。乾燥用空気の温度は100℃以上とする。火力発電所で使用される空気予熱器(AH)1の場合、空気予熱器(AH)1の入口温度が100℃以上に達し、さらに10時間経過すれば乾燥が終了したと判断できる(ステップS7)。
第2洗浄方法は、エレメント9の表面上の付着物の除去を主目的としてなされるものでり、発電設備の保管工事に伴い実施される。第2洗浄方法は、第1洗浄方法と異なり、エレメント9の詰まりによるドラフト差圧の上昇を予防すべくなされるものではないため洗浄工程は、水を使用した無薬注水洗工程(ステップS5)である。
無薬注水洗工程(ステップS5)の操作は、第1洗浄方法の無薬注水洗工程(ステップS3)と基本的に同じである。第2洗浄方法は、エレメント9の表面上の付着物の除去を主目的とし実施されるものであり、予め設定された洗浄時間・洗浄回数が実行された時点で完了する。この洗浄時間・洗浄回数は、過去の洗浄実績、洗浄結果に基づき決定すればよい。火力発電所で使用される空気予熱器(AH)1であれば、高温側/低温側をそれぞれ交互に2回程度、時間にして高温側/低温側をそれぞれ2時間程度無薬注水洗すればよい。
第2洗浄方法においても無薬注水洗工程を実施した後、空気予熱器(AH)1を放置しておくことは好ましくない。第2洗浄方法は、薬注水洗工程を備えていないため第1洗浄方法以上に洗浄操作で除去しきれなかった付着物、さらには残存する洗浄水により、エレメント9が腐食する恐れがある。このため第2洗浄方法においても無薬注水洗工程後に、空気予熱器(AH)1を乾燥させることが重要であり、本実施形態では、無薬注水洗工程完了後、乾燥操作(ステップS6,ステップS7)を実施する。この乾燥操作は、無薬注水洗工程完了後直ちに行うのがよい。乾燥操作は、第1洗浄方法で説明した通りである。
本発明に係る空気予熱器の洗浄方法は、上記実施形態で説明の通り、洗浄要領の異なる2つの洗浄方法を備えるので、空気予熱器が設置されている発電設備の状況に応じ、発電設備に好適な洗浄方法を選択、実施することができる。
本発明に係る空気予熱器の洗浄方法は、洗浄工程の後に乾燥工程を備えるので空気予熱器の腐食を防ぐことができる。特に、エレメントの表面上の付着物の除去を主目的としてなされる第2洗浄方法においては、乾燥を行うことの意義は大きい。さらに空気予熱器の洗浄工程後に行う乾燥操作は、空気予熱器に接続する水蒸気式空気加熱器(SAH)、押込通風機(FDF)等を用いて行うことができるため容易に実施できる。
従来、空気予熱器の洗浄は、発電設備の状況に関わらず一律に薬注水洗及び薬注水洗後に無薬注水洗が実施されていた。このため発電設備の保管工事の際に、薬注水洗に伴う大量の排水が発生し、これの処理が課題となっていた。これに対して本発明に係る空気予熱器の洗浄方法では、発電設備の保管工事の際には無薬注水洗のみを実施する第2洗浄方法を選択することができるので、排水処理の問題が生じない。
実働している火力発電所において、本発明に係る空気予熱器の洗浄方法を採用することで、実績ベースで発電設備の保管工事の際に薬注水洗に伴う洗浄排水を約1600tonを削減し、さらに約7時間の時間短縮が可能となった。排水発生量が低減したことで、発電設備の保管工事を計画通り進めることができた。
以上、第1実施形態の空気予熱器の洗浄方法により、本発明に係る空気予熱器の洗浄方法を説明したが、本発明に係る空気予熱器の洗浄方法は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、空気予熱器にエレメントを装着した状態で洗浄・乾燥を行っているが、空気予熱器からエレメントを取外し、洗浄・乾燥を行ってもよい。また本発明に係る空気予熱器の洗浄方法を適用可能な空気予熱器の型式は特に問われず、縦型、横型、回転式、固定式など種々の型式の空気予熱器に適用することができる。
図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
1 空気予熱器(AH)
9 エレメント
101 ボイラ
103 押込通風機(FDF)
105 水蒸気式空気加熱器(SAH)

Claims (3)

  1. 第1洗浄方法又は第2洗浄方法のいずれか1方が択一的に選択され実行される空気予熱器の洗浄方法であって、
    前記第1洗浄方法は、薬注水洗工程前記薬注水洗工程に引き続き実施される無薬注水洗工程、及び前記無薬注水洗工程完了後に実施される乾燥工程を備え、前記無薬注水洗工程は、洗浄排水のpHが5.0以上となった時点で完了し、
    前記第2洗浄方法は、無薬注水洗工程、及び前記無薬注水洗工程完了後に実施される乾燥工程を備え、前記無薬注水洗工程は、予め設定された洗浄時間・洗浄回数が実行された時点で完了し、
    前記第1洗浄方法及び前記第2洗浄方法の前記乾燥工程は、押込通風機から送られる燃焼用空気を加熱器で加熱し、この乾燥用空気を空気予熱器に送ることで行われることを特徴とする空気予熱器の洗浄方法。
  2. 前記第2洗浄方法は、前記空気予熱器を備える発電設備の保管工事時に選択されることを特徴とする請求項1に記載の空気予熱器の洗浄方法。
  3. 前記空気予熱器が、回転再生式空気予熱器であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気予熱器の洗浄方法。
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